運動トレーニングによるメタボリックシンドロ ーム改善の機序解明
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(2) 本博士論文「運動トレーニングによるメタボリックシンドローム改善の機序解明」は、 慢性炎症モデルマウスにおける運動トレーニングによる作用機序を real-time PCR 法、フロ ーサイトメトリー法および組織免疫染色法などの分子生物学的実験手法を用いて解析・検 討した論文である。 第1章の Back ground においては、総説論文の引用を中心に、慢性炎症の機序に関する知 見についてまず整理した。メタボリックシンドローム発症には全身性の軽微な慢性炎症が 関与することが知られているが、マクロファージや好中球、リンパ球などの免疫細胞を介 した自然免疫システムが病態基盤であることが近年明らかにされている。さらに、慢性炎 症には脂肪組織や肝臓での局所炎症反応が重要であるとされており、組織常在性のマクロ ファージが様々な炎症性サイトカインや活性酸素を産生することで全身性の炎症や酸化ス トレスを誘導することが明らかにされている。一方で、定期的な運動トレーニングにより 血中の炎症性サイトカイン濃度や酸化ストレス指標が低下するなど慢性炎症を改善する可 能性が示唆されている。しかしながら、運動トレーニングによる慢性炎症改善の機序につ いては十分明らかにはされていない。そこで本研究では、慢性炎症モデルマウスを用いて、 運動トレーニングによる慢性炎症改善の機序についてマクロファージの機能変化を中心に 検討した。 第2章では、運動トレーニングがマクロファージ活性化型変化を介して脂肪組織の炎症 状態に及ぼす影響について、肥満マウスを用いて検討した。高脂肪食餌誘導性肥満マウス の脂肪組織では炎症性サイトカインの遺伝子発現が増加したが、運動トレーニングにより 減少した。また、マクロファージの組織浸潤を促進する接着分子の遺伝子発現は高脂肪食 餌により有意に増加したが、運動トレーニングにより有意に減少した。加えて、炎症性マ クロファージの局在を示す CD11c および TLR4 の遺伝発現は高脂肪食餌により有意に増加 したが、運動トレーニングにより有意に減少した。したがって、運動トレーニングによる 炎症状態の改善には接着分子発現抑制を介したマクロファージの活性化型の変化が関与す る可能性が示された。 第3章は運動トレーニングが CD36 発現抑制を介して肝線維化に及ぼす影響について検 討した。繊維化マーカーの遺伝子発現は高脂肪食餌負荷により有意に増加したが、運動ト レーニングにより有意に減少した。さらに、線維化の進展を調節するとされる CD36 遺伝子 発現は高脂肪食餌負荷により有意に増加したが、運動トレーニングにより有意に減少した。 また、高脂肪食餌および運動がマクロファージの CD36 発現を調節する作用機序を明らかに するために、培養細胞実験を行った。腹腔マクロファージ細胞における CD36 遺伝子発現は オレイン酸刺激によって有意に増加した。しかしながら、オレイン酸存在下でのデキサメ タゾン刺激は CD36 遺伝子発現を有意に減少した。したがって、運動トレーニングは肥満マ ウスにおける繊維化を抑制する可能性が示され、この現象にはマクロファージの CD36 発現 の変化が関与する可能性が示された。.
(3) 第4章では運動トレーニングがクッパー細胞の機能調節を介して肝障害や炎症、線維化 に及ぼす影響について、高脂肪食餌および高フルクトース飲料を負荷することにより非ア ルコール脂肪性肝炎を誘導したマウスを用いて検討した。運動トレーニング Non-Alcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) activity score の低下や TUNEL 陽性細胞数およびアポトーシス促 進タンパク質(Bak)の遺伝子発現を減少させた。加えて、運動トレーニングは肝組織の Sirius red 陽性面積の低下や繊維化マーカーの遺伝子発現を減少させた。加えて、運動トレーニン グは炎症性サイトカインの遺伝子発現および肝臓のマクロファージ浸潤を減少させた。さ らに、マクロファージの組織浸潤を特異的に促進させるケモカインの遺伝子発現は運動ト レーニングにより減少した。一方で、マクロファージの浸潤を促進することで組織の炎症 を亢進させる細胞傷害性 T 細胞の変化は見られず、T 細胞由来のマクロファージ遊走促進因 子である RANTES の遺伝子発現も変化しなかった。したがって、運動トレーニングは細胞 傷害性 T 細胞非依存性のケモカイン産生の抑制を介してマクロファージ浸潤を抑制するこ とで炎症状態を減少させ、その結果としてアポトーシス由来の肝障害と線維化を改善する 可能性が示唆された。 以上の知見により、運動トレーニングは脂肪組織や肝臓のマクロファージ浸潤および機 能を調節することにより炎症状態を抑制して、非アルコール脂肪性肝炎などの慢性炎症性 疾患を改善する可能性が示された。.
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