アナログ実験による柱状節理の形態的遷移について の研究
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(2) 論文内容の要旨 溶岩流および溶結凝灰岩に見られる柱状節理には、一層の岩体内でコラムの幅、コラム の形状、コラムの発達方向が明瞭に異なる2つの形態が隣接して観察される。コラムの幅 が比較的大きく、直線的な形態で、規則的な配列をしているものを Colonnade(コロネー ド) 、これに対し、柱の幅が比較的小さく、曲線的な形態で、不規則な配列をしているもの を Entablature(エンタブラチャー)と呼んでいる。Entablature の形態には多様性がある ことが指摘されている。柱状節理は、冷却固結にともない熱応力が蓄積された結果、ある 等温面に対して垂直にクラックが形成すると考えられているが、形態遷移の再現を試みた アナログ実験例はなく、Entablature のような曲線的で方向性の変化に富んだ形態の領域に おいても、上記のクラックの形成過程が適用されるのかは明らかではない。本研究ではア ナログ物質として片栗粉と水の混合物を用いた乾燥実験によって曲線的な構造の再現を行 い、X 線 CT 撮影画像をもとに、クラックの伸展過程および水の濃度分布とクラックの関係 について調べた。さらに、コラムの幅の変化を再現した実験結果の幾何学的解析も合わせ て、天然で見られる柱状節理の Colonnade-Entablature 形態遷移の概念モデルを提案する。 実験1では、片栗粉と水の混合物の上方からランプを点灯して乾燥させ、混合物中を伸 展するクラックと混合物内の水の濃度分布の時間変化を X 線 CT 解析装置で撮影し観察し た。混合物の質量変化より算出した乾燥速度の変化には、(1)上澄み液の蒸発(2)混合 物表面からの一定な蒸発(3)クラックの伸展に伴う混合物内部での水の移動を伴う蒸発、 の3つの時間領域があることが分かった。(3)の時間領域では混合物内には直線的なクラ ックが内部に向かって伸展し、乾燥速度が時間の-1/2 乗に比例することがわかった。この ことから、混合物中の水の移動は、拡散過程で進行していることがわかった。クラックフ ロントは、時間の 1/2 乗に比例して進行していることから、クラックの伸展はある決まった 水の濃度において起こることがわかった。 実験2では、混合物を直角三角柱型の容器に入れ、一つの面を樹脂で塞いで、直角をな す他の2つの乾燥面を通してのみ乾燥が起こるようにした。クラックの時間発展を X 線 CT 解析装置で観察したところ、クラックはそれぞれの乾燥面に垂直に伸展し始め、直線的に 伸展したあと、二つの乾燥面の2等分面付近で交わることなく、曲がった構造が形成され た。混合物内の水の移動が拡散過程で進行すると仮定し、ある等濃度面に垂直にクラック が伸展するとした場合のクラックの形態計算結果と比較したところ、クラックの伸展は初 期濃度の 0.6 倍程度の濃度で起こることが分かった。 実験3では、一方向からの乾燥によるクラックの発達途中で乾燥速度を瞬間的に増加さ せた場合に、混合物に形成される形態の変化を調べた。乾燥が完了した後の実験サンプル を CT で撮影した結果、乾燥速度増加後のコラムの数は増加し、コラムの断面積は減少した。 乾燥速度強制増加後には、既存のコラムの 3 重点もしくは 4 重点において新しいコラムの 形成(コラムの核形成)が起こっていることが分かった。.
(3) 以上の3つの乾燥過程を利用したアナログ実験結果から、天然のマグマの冷却に伴う柱状 節理の形成に関して以下のことが示唆される。 1、クラックフロントの伸展は拡散過程で進行する。 2、2つの冷却面から冷却する矩形領域において熱が拡散過程で進行すると、ある等温度 面に垂直に節理形成が起こり、その節理が出会う岩体の中央付近では曲がった構造が 形成される。 3、冷却速度の急激な増加はコラムの核形成を起こし、コラムの幅を小さくする 上記の結果および岩体最上部を冷却面として岩体内部を鉛直方向に伝わる熱輸送𝑄1 および クラックを冷却面として岩体内部を水平方向に伝わる熱輸送𝑄2 を仮定して、大分県豊後大 野市杓子岩に見られる柱状節理の形態遷移のシナリオを提案する。 大分県豊後大野市杓子岩は高さ約 100m の一層の火砕流堆積物(阿蘇4溶結凝灰岩)内 の上部に Colonnade、中央に Entablature、下部に Colonnade の順番に配列した形態的に 異なる3つの部分から成る構造(Upper Colonnade-Entablature-Lower Colonnade)が見ら れる。Entablature は Upper Colonnade から発達する直線的なクラックを起点にクラック が発達し放射状の構造を作り出している。この放射状構造は水平方向にいくつか隣接して 見られる。Upper Colonnade および Entablature の形成過程は以下のように説明できる。 ①Upper Colonnade の冷却は、岩体最上部を冷却面としてより高温の岩体内部から鉛直上 方向に伝わる熱輸送𝑄1が拡散過程により進行し、温度𝑇がある温度𝑇𝑐 になった位置でクラッ クが等温面に垂直に進展し、Colonnade が形成される。 ②クラックが Upper Colonnade 内を Entablature の上部まで伸展するとクラック自身が新 たな冷却面となり、熱輸送𝑄1に加えて水平方向に伝わる熱輸送𝑄2が卓越してくる。すると、 クラック先端付近の等温面の形状が下に凸になり、温度𝑇 = 𝑇𝑐 となる等温面に対して垂直に クラックが伸展する。この際、𝑄1から𝑄1 + 𝑄2の熱輸送に遷移することで、急激な冷却が起 こり、コラムの核形成が誘発され、Upper Colonnade よりも幅の小さなコラムが放射状構 造を形成した。これは、天然の観察事実と調和的である。 また①、②の過程の進行と同時に、Lower Colonnade の冷却は岩体最下部を冷却面としてよ り高温の岩体内部に向かって鉛直上向きに進行し、クラックも鉛直上向きに伸展する。 Lower Colonnade の上部は、Entablature 下部の放射状構造と接し、一連の形態的に異な る3つの部分から成る柱状節理が形成される。.
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