五百済(いおずみ)凝灰岩層に見られる乱堆積につい て
著者 白井 久雄
雑誌名 静岡地学
巻 76
ページ 21‑34
発行年 1997‑11‑30
出版者 静岡県地学会
URL http://doi.org/10.14945/00025188
静 岡 地 学 第 7 6 号 ( 1 9 9 7 )
い お ず 、 み
五百済凝灰岩層に ら について
白 井 久 雄 *
1 はじめに
掛川市、菊川町、大東町北部一帯には、砂岩@泥岩のリズミカノレ を 中 心 と す る 鮮 新 一 初 期 更 新統の掛Jf
[J習群が広く分布している(図 1)
0掛Jf l 層 群 の 分 布 す る 掛 J I [ 地 域 で は 、 横 山 ( 1 9 2 5 曹 1 9 2 8 ) 、 千谷 ( 1 9 2 6 ) 、 Makiyama ( 1 9 3 1)の先進的な研究に続き、横山@坂本(1 9 5 7 ) 、 斎 藤 ( 1 9 6 0 ) 、 Tsuchi ( 1 9 6 1 ) 、 U j i i e( 1 9 6 2 ) 、 横 山 ( 1 9 6 3 ) などの精力的な研究が行われた結果、掛Jf[層群の基本的な層序 が 明 ら か に な り 、 当 地 域 は 倉 真 @ 西 郷 @ 相 良 層 群 と と も に 、 日 本 の 新 第 三 系 の 模 式 地 と な っ た 。 そ の 後 も 、 当 地 域 で は 活 発 に 研 究 が 行 わ れ て い る
Oそ れ ら は 古 生 物 学 的 資 料 か ら 、 よ り 詳 し い 層 序 の 確 立 に努めたもの(加藤宮 1 9 7 3; l b a r a k i and Tsuchi , 1 9 7 4 曹 1 9 7 6 :茨木事 1 9 8 6: l b a r a k i , 1 9 8 6 ) と、堆 を 明 ら か に し た も の ( C h i n z e iand Aoshima , 1 9 7 6 ; Aoshima , 1 9 7 8 :間嶋他ヲ 1 9 9 0 ;間嶋@本
民 1 9 9 3 ) とに分けられる
O更に、堆積相解析の手法を用いた研究が行われたり(牧野他曹 1 9 7 9 :牧 野@椎名, 1 9 8 3 : Makino and Seki , 1 9 8 4 :牧野雪 1 9 8 5 :石橋ヲ 1 9 8 6 ;白井
e木宮警 1 9 8 ふ 1 9 8 7: I s h i b a s h i , 1 9 8 9 :白井@木宮雪 1 9 9 0 :木宮@白井曹 1 9 9 1)、シーケンス層序学の手法を取り入れた研究が行われた
り ( S a k a iand Masu 白 1 9 9 5 ) 、 掛 川 層 群 中 の タ ー ピ ダ イ ト の 古 流 速 を 求 め る 研 究 が 行 わ れ た り ( 久 保他警 1 9 9 5 ) している
Oまた、掛Jf[層群には、よく連続し、鍵層となる何枚かの凝灰岩層が存在する
こ と は 古 く か ら 知 ら れ て い る
Oところで、
には「土地のっくり j によると 1 0
させ、
とから、掛j[[地域 そこで、
削って土産積していること 1 9 9 0 ) では数多く
を 示 し た り 、 ブ レ
について
って、
し 、 6 る(本校では f 大日
フィーノレドと言えよう
Oきたりすることが明らかに/ぽぷつ 噌 ル 、 」
J八 るととも;にこ、
るの
は
可ヂ
'‑
した(図 2 )。しかも、
8
らの乱堆 にし
していただいた。
? 議
。 忠 良
s 2
議
.
・
国 l
1 . 調こ舟
5芝 府 (‑合宿 慢強@西部
R層君主)ヌ 休日展 3.
踊7内 層ヰー 日 5.
6.
T 1. 出 品1 臨む‑c府組 ↑つ 古 田 溶 〉 器 I i k
県 関 Tス T 4. T 5.
2 2
静 問 地 学 第 7 6 号 ( 1 9 9 7 )
2 地質機説
掛 J I [層群の岩棺は、掛川市中心部を 境としてかなり異なっている(図 1)
0そのため、東部地域と西部地域では異 なった地層名が使われている
O東部地域は、下位より を呈する塀之内層、泥層を 方層、シルト
の三層に大きく分けられる
Oいずれも にあるとされ、
約 4 , 4 0 0 m と の駿河湾に似た、
る れている 中には、
もられている
Oに近く急に深くな ると ら
いて、
る
Oいずれも 地域を除き、
となっている
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図 3 地震柱状図
1 . 凝灰岩 2 . 軽石凝灰岩 3 .凝灰質砂岩 4 .砂岩 5 . 砂質シルト岩 以上 1 ' " " ' ‑ ' 5 は岩椙を示す
06. 明瞭 7 .侵食 8 . 漸 移 以 上 6 ' " " ' ‑ ' 8 は単層の下底面状態を示す。
9 .平行葉理 1 0 . 波状葉理 1 l.カレントリップル 1 2 . 斜交葉理 1 3 . 塊状 1 4 . コンボリュート構造 1 5 . フレーム構造 .軽石 1 7 . レンズ状の極細粒砂径凝灰岩層 1 8 . レンズ状のシルト径凝灰岩麗 1 9 . シノレト径凝灰岩の探 2 0 . 木片
9 ' " " ' ‑ ' 2 0 は増積構造及び含有物を示す。
柱状図の右側は岩相を表し、在{期は堆積構造、含有物及び粒径を表す。
粒径は、 S . ニシルト径、 v .f.=極紹粒砂径、 f . = 細粒砂径、 f f i . 二中粒砂径、 C.= 粗粒砂径、 v . C . ニ極粗粒砂径を表す
の 1' " " ' ‑ ' 1 6 、ア タについては本文参照。
静 岡 地 学 第 7 6 号 ( 1 9 9 7 )
5
で観察できる
Oレンズ状のシノレト
が引きちぎられたように見える(下の矢印で示 した部分)。また一部はバラバラに破断されてい る(上の矢印で示した部分)。
たよう 上位のシルト
きる
Oしユる
O8
26‑
静岡地学 7 6 号(1 9 9 7 )
れているのが分かる
Oフ
曲がりく
@ セ
7最上部で観察できる
Oシルト
位の極結粒砂径凝灰岩層が堆積中に、シルト しぽり出されながら流れの方向に曲 げられた堆積構造である
O写真では、左から が流れの方向になる
O9 で観察できる
O径凝灰岩層が下方にたわみ、
込んでいる(矢印で示した部分)。
1 6 が 8‑ 1 5 を削って ょう
28‑
している 0 1 6 の内部には
4本観察きできる
O静 問 地 学 第 7 6 号 ( 1 9 9 7 )
3 露鎮の記載
本論に記載する露頭は百図 2 ~こ示したように JR 菊川駅から南に約 6.5km、東名高速道路菊Jf l イン
タ…チェンジから需に約 4.3km の地点、に位置していて、白井@木宮 ( 1 9 9 0 の図 2 )で述べた L o c . 1 3
くさ~え
とほぼ同じ位置である
O公共の交通機関を利用すると、 JR 菊川駅より静岡鉄道パス@御前崎線「草笛 共同作業所j停留所より 2.8km 、 JR 掛1 1 1駅より静間鉄道ノてス
e大坂線「井崎 J 停留所より 2.6km の 位置にある
Oこの露頭は、最近できたばかりであり、露頭面はごくわずかに草で被われているのみである
Oは高さ約 12m 、幅約 23m である(写真 1)
0走向は N 5 " ‑ ' 1 0 W 、西に 1 0 " " ' ‑ ' 2 0 度前後傾斜している
Oこの露頭は最下部に堀之内層の砂泥互層が露出するほかは、全て五百済凝灰岩層上部(
1 9 9 0 ) よりなる
O本露頭での詳細な観察を基に作成した柱状図を図 3 に示す。なお図 3V こ表したア タ は、以下に記載した乱堆積や級化構造、プレーム構造などが観察できる層準を示す(ただし
1可能な 限り柱状図中に乱堆積や級化構造、プレーム構造などを記載した)。
次に、
1
きる 1 から 1 6 について述べる
Oと る
Oる
Oしている
O平行葉理にそってグラニューノレ径の んぜいるところがある
O厚さ 2cm のシノレト径凝灰岩層をレンズ状に挟んでいるところがあ ところがある
O厚さ 15cm の極細粒砂箆凝灰岩層では、下位から上位ヘカレ
塊状へと変化している
Oカレントリップルは波長 1 0 " ‑ ' 2 0cm 、波高 2" ‑ ' 3 cm ントリップノレ、
である
Oさ 8cm のシノレト 2 = J 審 理 1 8 5c n 1
0はコンボリュート構造を示し、
る細粒砂径凝灰岩層で、
にはプレー ユ 粒
きる
Gの外
〉 る
O下 はまるでゴマシオをかけたようである
O5cm は塊状である。
は lと似ており、
にそってグラニュ
3 とシノレト控凝灰岩麗との互層である
Oにそってグラニュール径の軽石が並んでい
る
Oる。下誌面は侵食を示すところがある
Oシルト ;まかは塊状である
Oまた、その上下に挟まれている したり(イ@写真 3 、 )
2 )している
O上面にブレ る
O2cm している
O194cm 。
; ァ
5mm の軽石が並んでい く径 5mm 一 一
︑
4 が る
る
し、下部より 6 0 " ‑ ' 7 0cm の
5 3 と よく似ており、 とシルト と
きる O 平行葉理では、グラニューノレ径の軽石が葉理にそって並んでいることがある O 厚さ 1~2
cm の極細粒砂径凝灰岩層がレンズ状を呈することがある
O下底面は侵食を示すことがある
Oさ 13cm 、平行業理の発達する極細粒砂径凝灰岩麿では、贈自体が変形され紡垂形を呈し、上下の シノレト径凝灰岩層とともにコンボリュート構造を示す。そして、くびれた部分に割れ目が生じ、その 割れ目に極細粒砂径凝灰岩層が落ち込んでいるのが観察できる(キ@写真 6)
0シルト径凝灰岩層は塊状である O 厚さ 1~2cm のシルト径凝灰岩層がレンズ状 ることカまあ る
Oレンズ状のシノレト径凝灰岩躍が引きちぎられたような産状を呈するものがある
O一部はバラバラに 破断されたような印象を受けるほどである(才、カ@写真 5)
0極縮粒砂径凝灰岩層とシノレト径凝灰岩層が破断され発生した割れ目を充填していることを示す乱堆 きる
Oこの堆積物の基質は破断された極細粒砂径凝灰岩層が落ち込んだ、ものであり可シノレ ト径凝灰岩層が破断されて生じた擦も数多く含んでいる(ウ@写真 4)
0また、割れ目が?の最下部か ら 6、更に 5の最上部にかけて存在し、軽石凝灰岩ブ口ツクも割れ目を充填していること
きる(ケ@写真 8)
0極細粒砂径凝灰岩層とシルト径凝灰岩層が大きく変形を受け、層自体が上方に昇ったよう きる(ク@写真 7 ) 0
にプレー し 2 枚ある
OG 8cm 、レンズ状 る
O4cm は極細粒砂径凝灰岩層、
5mm は 、
に含んでいる
O7 膳厚 8 1cm 。岩栢は 3と非常によく似ており、極細粒砂径凝灰岩層とシルト である
Oし 4cm
と し 、
極細粒砂径凝灰岩層では平行葉理、波状葉理、斜交葉理が観察できる
Oにそって並んでいることがある O 厚さ 1~2cm
することがある
O下底面は侵食を示すことがある
Oはグラニュール レンズ状
シノレト径凝灰岩層は塊状である
O(そのうちの一つがセ@写真 1 3 ) 0
に ブ レ しているシルト 2 枚ある
とシノレト径凝灰岩層が破断され発生した割れ目を充填していること
積が 5カ所で観察できる
Oそのうちの一つは、?の最下部で観察でき、破断された極細粒砂径凝灰岩 と、シルト径凝灰岩躍が破軒されて生じた擦が 8 の軽石凝灰岩層にまで落ち込んでいる(コ@
9 )。また、一見するとコンボリュート構造のように極細粒砂径凝灰岩層とシルト径凝灰岩層が波打つ
(シ@
えるものがあったり(サ
e写真 1 0 ) 、流れ落ちたような跡を示す葉理が観察できたり 1 2 ) 、 8 の軽お凝灰岩躍を取り込んだ、と考えられるものがあったりする
O10cm は塊状の極細粒砂径凝灰岩層、漸移して上部 25cm は軽石凝灰岩層、
8cm は塊状の極細粒砂径凝灰岩摺よりなる
Oでは級化構造が顕著である O すなわち、下部 5cm は径 10~30mm、 70mm の
30‑
静 開 地 学 第 7 6 号 ( 1 9 9 7 )
軽石よりなるが、上部 20cm は径 5mm 前後の軽石(ところどころに径 10~30mm の軽石が散らば
る)よりなる(ソ@写真 1 4 ) 0
9= 層厚 36cm 。岩棺は 3 と非常によく似ており、極細粒砂径凝灰岩層とシルト径凝灰岩層との互層 である
O極細粒砂径凝灰岩層では平行葉理、斜交葉理が観察できる
O平行葉理ではグラニュール径の軽石が 葉理にそって並んでいることがある
O厚さ 1cm の極細粒砂径凝灰岩層がレンズ状を呈することがあ
る
O下底面は侵食を示すことがある
Oシルト径凝灰岩層は塊状である。上面にフレーム構造が発達しているシルト径凝灰岩層が 1枚ある
O極細粒砂径凝灰岩層とシルト径凝灰岩層が幅 40cm にわたり下方にたわみ、最下部は 8 に落ち込ん でいる乱堆積が観察できる(夕@写真 1 5 ) 0
10 層摩 33cm。下部 15cm は径 1~5mm の軽石よりなる軽石凝灰岩層、漸移して上部 18cm は平 にそって径 1~5mm の軽石が並ぶ、極細粒砂径凝灰岩躍である O 下底面は侵食を
示す。
1 1 は 3 と非常によく似ており、極細粒砂径凝灰岩層とシルト径凝灰岩躍と
である
Oでは平行葉理が発達し、レンズ状を呈するものがある
O下底面が侵食を 示すものがある
Oシルト
1 2 態 厚 25cm 、
1 3 層厚 30cm 、コンボリュート 1 4 ニ 層 摩 8 5cm 、
1 5 層淳 30cm
不可能なため詳細は不明である
Oは塊状である
Oるシノレト よりなる とシルト
る
Oである
Oを示す。
と る カ 宝 、
1 6 るの
はおの上位に しているが、西側では 8 ‑ 1 5 を削って してい 1 6 ) 0
コンボリュート きる
Oま ア こ 、
ブロック、シルト とシルト
して言し堆積の印象 1 6 が 8‑ 1 5 を割っている からペブルサイズのシルト 1 6 の内部には断層のよう
ると幅 3~13 の間を、
ロックが充填している
O4 きる
Oしかもそのうちの 1本は、
とシノレト との互麗ブロックを切って発達している
Oまた、そのうちの 2 は流動化したように変形している
Oト
ヰ
1 6 は、北部地域 したであろう 10~15
ブロック
グラニュール
まれたシル
きる 1 6 が 8 を削っている境は、上述の再堆積が単に 1 5 の上に したのみで はなく、 8‑ 1 5 を削って再堆積したことを示している
O一方、五百済凝灰岩層上部 5 のウ@キ@ケと五百済凝灰岩麿上部 7 のコ@サ@シ
eスは、規模こそ うがその産状は 1 6と類似している
O受けた力の大きさが違うのだろうが、興味深い事実である
Oまた、本論で記載した乱堆積は、全て極細粒砂径凝灰岩層やシルト
形を受けて、波打ったり曲がったり破断されたりしている
Oに、プレーム構造もよく観察できる
Oこの構造は、シルト
シルト径凝灰岩層がしぼり出されながら流れの方向に告げられた る
Oしぼり出されたと いう点、では、五百済凝灰岩層上部 5 のクはプレーム構造と似ていると言えよう
Oこのようなことから、これらは堆積したものが間結する前に何らかの力が加わり変形するのが可能 したのだろう
Oところで、五百済凝灰岩躍を挟む堀之内層の砂層では波状葉理やコンボリュート葉理が観察でき、
内部での変形が指摘されている(例えば牧野他, 1 9 7 9 ) 0 また、 andMasuda ( 1 9 9 5 ) は 、 本地域の堀之内層は、海底扇状地のチャネノレ堆積物及び海底窮状地の自然堤防堆積物であり、
状地のチャネノレ堆積物である はターピダイトの特徴を示し、こ は液状化を示す血状構造 やコンボリュート構造などが観察できると述べている
O誌には盟状構造が非常によく発達している
Oこれは、
に堆積したために、堆積物中にとりこま る
Oこのことは、牧野他
している
O以上のことを考慮、しながら検討し
特異的であることが浮かび上がる
Oれは百
る
3
傷5 7" 9 内吉山ことどまら とシノレト って行われていることが一般的だからである
Oに排水され ( 1 9 9 5 ) の指
きる乱堆積は 極細粒砂径 も
ターピダイトであるが、 にこのよう きるのかもしれない。
5 ま と
( 1 )
( 2 ) ( 3 )
Aoshima , Jou r .
きる しん
Oし , < ‑ 3 " 5 " 7 " 9
8 で観察できる
1 6 は 1 5 の上 したのみではなく、 8 ‑ 1 5 を削っ
1 9 7 8 : D e p o s i t i o n a l e n v i r o n m e n t P l i o
叩P l e i s t o c e n e Tokyo , 2 , 1 9 , 4 0 1 ‑ 4 4 1 .
もしている
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