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(1)

児童・生徒の基礎学力の形成と指導方法との関連に 関する総合的研究 : 算数・数学

著者 長崎 栄三

雑誌名 国立教育研究所紀要

巻 123

ページ 53‑104

発行年 1994‑03

出版者 国立教育研究所

URL http://hdl.handle.net/10297/7636

(2)

第 2 章 算 数 ・ 数 学

1.  調査のねらいと問題等の構成

1) 

算数・数学の問題等の構成とねらいについては,すでに報告されているが,それらは,主に,次 のような点からまとめられている。

・基礎学カを考える基本的立場 .基礎学カの枠組み

‑基礎学力の評価にかかわる問題点

本論においては,これらを現時点での視点から新たにまとめ直すとともに,さらに,研究の進め 方・手順,$数・数学における基礎学力の歴史的考察や比較教育的考察を加えて述べることにする。

1.1 算数・数学の基礎学力の研究の基本方針

国立教育研究所内で基礎学力研究のプロジェクトが発足したのは1989年10月であり,その後,算 数・数学委員会はその年の12月から研究を開始した。

算数・数学では,研究を始めるに当たり,第一に,これまでに行われてきた rIEA国際数学教育 調査J,r理数長期追跡研究」などの様々な調査研究の経験や成果を踏まえつつ,それ以上の知見を 得るには,十分議論に耐え得る基礎学力の概念規定や枠組みの作成が大切であると考えた。第二に,

研究が始められた1989年は,わが国においては新しい学習指導要領の告示された年であり,同時に,

アメリカ・イギリス等て噺い、算数・数学カリキュラムカま提案・実施に移された年でもあった。そ こで,このような世界的な数学教育改革の方向を念頭におきつつ,わが国の実情に応じた21世紀を 目指した基礎学カを考えることにした。そこで,まず,学力や基礎学力の捉え方について,日本の 歴史的変遷,及0',国際的な動向について明らかにしておく。

1.2  わが国における算数・数学の学カ鎮の変遷

算数・数学の学カや基礎学力については,わが国においても,いろいろな立場から述べられてい るが,ここでは,本調査研究との関連から,大規模調査研究における学カ・基礎学力の捉え方に限 定することにする。ただし,ここでの大規模調査研究とは,複数の県にまたがって大親族に実施さ れた調査とする。

戦前(明治,大正,昭和)には,選兵のための徴兵検査があり,大正から昭和にかけては標準学 カテストの研究がさかんになされ,このような中に,算数(算術)等の学力問題も含まれていたが,

ここでは,戦後についてのみを対象とする。戦後の25の算数・数学に関する大規模調査研究の調査 対象や特徴を年代版にまとめると,表1の通りである。

‑53

(3)

実施年 調

表1 算数・数学に関する戦後の大規模な調査研究

対象学校・学年

│ 

調 査 の 特 徴 小学校j中 学 校 ! 高 校 │ 次 元 ! 態 度 ; 教 師

1951  1文部省計算力調査 11‑6 i  日本教育学会学力調査

3  1952 

I

国立教育研究斯学力水準調査

3  1953  1国立教育研究所学力水準調査 1 6  ! 3  日本教職員組合算数・数学学力調査

, 

1954  1国立教育研究所学力水準調査

1956  1文部省全国学力調査 1 6 

, 

3  '3・4 1959  1文部省全国学カ調査 1 6  ! 3  ! 3・4 1961  1文部省全国学力調査 1 6  '2・3 1962  1:文部省全国学カ調査 15・6!2・3

3・4 羽田│文部省全国学力調査 2・3 1964  1文部省全国学カ調査 15・6

23

IEA第1回国際数学教育調査

12・3

(2)  1 0  1965  1文部省全国学カ調査

I  i 

2・3

1966  1文部省全国学力調査 1 5  '1・3 1975  1国立教育研究所学習到達度調査 1 6  ! 3 

日本教職員組合学カ実態調査 1 5 '  1  1976  1国立教育研究所学習能カ習得吠況調査

6  1 2  1977 

I

国立教育研究所学習能力習得状況調査 │  j 3 

1980  1 IEA第2回国際数学教育調査 1  ! 1  ! 3 1 2   1981  1文部省小学校算数達成度調置 15・6

i  , 

1 2  1982  1文部省中学校数学達成度調査 1  11・2・31 1 2 

ωl

国立教育研究所理数長期追跡研究継続中) 15(6)!2(l‑3)!Z(l‑司

I

i  0  i  0 

i 9 i i i T i i i i 教育問活躍酔ヵ語   l ‑ ij  2 1   ‑13‑i‑075 

1992 

I

国立教育研究所基礎学力調査

I  i  i 

3  1 @  1 

︒ ︒

。。

注1) 対象学年の高4は定時制4年。

注2) 次元主l主、算数・数学問題の分類の観点、空欄は分類が1次元的。

注3) 態度とは、児童・生徒に対する態度質問紙を実施。

注4) 教師とは、教師に対する教師質問紙を実施。

大規模な調査の必要性は戦後直後,久保舜ーによる計算カ調査に端を発する学力低下論争によっ て始まったと言える。その後,文部省の全国学カ調査が始まるが,これは諸々の理由から1967年 以 降実施されなくなる。そしてこの後, r学力」という表現に取って代わって,「学習到達度J,r学習 能力習得状況J,r達成度」などが使われるようになり,また,「基礎学力」については「基礎・基本」

という言い方が広〈使われるようになった。

戦後の大規模調査研究の特徴を明らかにするために,最近の教育についての課題の指標となると 思われる,次元,態度,教師という三点から分析した。なお,これらについては,本研究の枠組み 等との関係でも後に詳しく述べる。

第一の指標,「次元』とは,調査の内容的妥当性を確かめるために,算数・数学問題を,数学内容,

‑54‑

(4)

教育目標などの観点で分類しているかどうかを見るものであり,分類の観点が,例えば, r数学内容,

教育目標」と二つある場合に2次元と呼ぶことにする。表1では,この次元の数を表記した。 1次 元の場合は空欄である。2次元による捉え方の萌芽は,第l回IEA国際数学教育調査にみられ,はっ

2l 

きりと枠組み作りが行われたのは,第2回IEA国際数学教育調査(内容X目標)においてである。

そして, 2次元による捉え方は文部省達成度調査{観点×領域)でも取り入れられた。本研究は,

それらを拡張・発展させて3次元(行動類型×数学内容×数学過程)とした。なお, 1991年から準 備が始められた第3困IEA国際数学理科教育調査は,本調査と同じように, 3次元の枠組みを用い

ようとしているが,次元の立て方(内容X目標X態度)が異なっている。

第二の指標,「態度Jとは,関心・怠欲・態度に注目して,児童・生徒に算数・数学問題だけでは なく態度質問紙を実施したかどうかを見るものであ1),実施した場合に

O

と記しである。これも第 1図IEA国際数学教育調査から始まる。本研究の場合には,関心・態度等の情意商を,態度質問紙 だけではなく,算数・数学問題でも評価しようと試みたので。としてある。

第三の指標, r教師」とは,児童・生徒だけでなく教師にも調査を実施したかどうかを見るもので あり,実施した場合にOと記してあるeこれも同様に第1回IEA国際数学教育調査から始まる。本 研究仏教師に調査を実施している。

1.3  国際的視野から見た算数・数学の基礎学力の捉え方

諸外国においても算数・数学の基礎学力について,調査や報告書,また,カリキュラムの形て示 されている。それらを簡単にまとめておく。

イギリスでは, 1982年に,世界的に有名で現在もイギリスの数学教育のパイプルと言われるコッ ククロフト委員会報告書 F数学は重要であるaが発刊され,その中で,次のような,すべての子供 が修得すべき算数・数学の「基礎内容Jカ惨げられている。それは,

数,お金,百分率,電卓の使用,時間,測定ふグラフや絵による表現,

空間観念,比と比例,統計的な考え

の十の領域で構成されている。日本の内容と比較すると中学校1年くらいまでであり,日本の中学 校にある代数や図形の論証は含まれていない。 1985年に出された義務教育終了時に受ける中等教育 一般証明書試験の r全国基準』には,評価目標に日本の数学的な考え方に近い「数学的な手法」が 詳しく列挙されている。 1989年の r国定カリキュラム』では算数・数学の内容は「到達目標J(AT) 

とr段階」から構成され,到達目標は,

数学の利用・応用,数,代数,図形と空間,資料の扱い

の五つの領域からなっている。ここでは,数学の利用・応用は,他の数学内容のすべてにかかわる 数学的な方法として捉えられている。

アメリカでは,全米数学教師協議会 (NCTM)が, 1989年の全国基準 r算数・数学カリキュラム と評価のスタンダ‑f<Jにおいて,小中高に共通の内容として,

問題解決,コミュニケーション,推論,数学と数学や他とのつながり

の四つを提案し,全米数樹首導主事会議 (NCSM)は,同年 r21世記に向けての算数・数学の12の 基礎技能」として,

‑55‑

(5)

問題解決,コミュニケーション,推論,応用,結果の妥当性,見積り,

適切な計算技能,代数的思考,測定,幾何,統計,確率

を提案した。後者は rスタンダ

‑ r J

にかなり準じた内容である。いずれにおいても,問題解決,

コミュニケーションなど,「方法的」内容が,代数,幾何などの「内容的」内容よりも重要項目とし てあげら札ている。また,全米教育進歩評価 (NAEP)の1990年用の算数・数学制面l,土

数学的能力(概念的理解,手続き的知識,問題解決)

内容(数と計算,測定,幾何,データの分析と確率・統計,代数と関数)

の2次元の枠組みからなっている。なお, 20か国の参加が見込まれた第2回国際教育進歩評価 (IAEP)の枠組みは上記の枠組みをそのまま採用している。

最も新しい枠組みは,現在準備中の第3回IEA国際数学理科教育調査の提案である。前回の第2 回数学教育調査の枠組みは(内容X白標)であったが,今回は,新たに態度の次元を加えている。

各次元の領域は以前より細分化され複雑になっており,

内容(数,測定,図形の基礎,幾何,比例,関数・関係・式,

データの表現と確率・統計,基礎解析,数学的構造,その他)

B標(知識,きまりきった手順の使用,探究と問題解決,数学的推論,

コミュニケーション)

態度(数学に対する肯定的な態度,職業と数学,特別なグループ(少数民族や女子) への窓識の高揚,スポーツなど特別な話題による数学への関心,

数学的精神) から構成されている。

これらの国際的動向と上国立してみると,本研究の基礎学カの捉え方の特徴は,今後重視したい事 柄として後に詳述してある,思考や関心や態度,数学

f

じゃ検証の活動,既習のことをもとに新しく 考えていくこと,にある。特に,数学化や検証の活動の:ilt祝は,数学が実世界と分離しているわが 国特有の問題点を補おうとしたものである。

1.4  算数・数学科にお付る基礎学力の3次元ゆ枠組み

~数・数学科における基礎学カとは「学校及び社会において事象を数学的に処理するのに必要不 互生で,しかも,新しいことに対処できるような塗星生主盆金している能力」とする。そして,そ のための教育内容は,児童・生徒の発達からみて,学校教育において指導・舗装習得可能であっ て,しかも,学校教育における方が効果的に習得されるものであると考えた。この記述は,基礎学 力が,学校や社会などの環境,数学,児童・生徒,教育学などの諸要因によって決定され,それら の要因が時代とともに変化することによって,変化する可能性のあることを含んでいる。

基礎浮力をさらに具体的に考えるとともに,JJ̲数・数学問題の内容的妥当性を明示するために,

3次元の枠組みを考案した。なお,この枠組みは,前以て作成されたものではなし後に述べる算 数・数学問題の閲発・分類と並行して,多くの議論を経て考案されたものである。

~数・数学科における基礎学カに関する 3 次元の枠組みは,次の三つの次元からなる。第 1 の次 元は,行動噺裂,すなわち,算数・数学教育の教育目標を行動化し類型イじした,「知識,理解,思考,

‑56‑

(6)

技能,態度」の五領域からなり,第 Zの次元は, f数学内容J,すなわち,数学の内容を関連分野毎 に大きくまとめた, r数式的,図形的,関係的Jの三領域からなり,第3の次元l,ま r数学過程J,す なわち,数学的活動を段階毎に大きく分けた,「数学化,数学的処理,数学的検証」の三領域からな る。これらの関係を図に表すと,図1の通りである。

第3の次元:数学過程

「すす τ

数学的処理 数学的検証

図1 算数・数学科における基礎学カの枠組み

1.5 基礎学力の3次元の領域

(1)  第lの次元:行動類型

算数・数学科の教育呂標では,知識や技能が偏重されていると言われる。計算ができるようにな ればよいという風潮である。一方で,数学的な考え方や発展的な見方などは基礎学カよりも高次な ものであると考えがちである。しかし,本研究では,基礎学力にとっては,この両者とも無視しで はならないという立場に立つ。そこで,このことを明確にするために,次のように,算数・数学科 の教育目標を行動化して類型化した行動類型を考え,それらを,知識,理解,思考,技能,態度の 五つに分けて考える。前者の三つは,認知商であり,後の二つはそれぞれ技能面,情意面である。

A)

知識(認知面)::意味がわかっていて,必要に応じて適用できるように記憶されている内容 のことであり,例えば,記号・用語の知識,計算手続きの知識などがある。

B)理解(認知面):全体と部分の関係や従属関係など,個々の内容の背後にある内部的な関係 を把握した状態であり,例えば,

Z E ;

味・概念・原理・法制の理解などがある。

C )

思考(認知商):新しい問題場面において、既有の知識・原理を使ってこれを解決したり、

解釈したりする能力である。例えば、問題や佐賀の発見・解釈などがある。

D )

技能(技能面):知識・理解が一定の目的を達するのにうまく適合するように形式化された 行動様式であり,例えli.計算技能,作図技能などがある。

E )

態度(情意茄):見方や考え方の傾向であって,自分の行動に対して指示カをもっ情意的組JI

面である。例えば,統合的・発展的な見方を持とうとしているかなどである。

‑ 57

(7)

(2) 2の次元:数学内容

数学内容については,いるいろな領域の分類の仕方があるが,算数・数特ヰにおける基礎学力と して,内容を小中高ー貸して考えることができるようにするため,及ぴ,できるだけ包括的にとら えるために,数式的内容,図形的内容,関係的内容の三つに大きく分けて考えることにする。これ らのうち,関係的内容とは,数式的内容や図形的内容に含めにくい集合や関数や確率などの内容を 総称したものである。それぞれの更に詳しい内容は,概ね,次のように対応するものとする。

P )

数式的内容:数,計算,式,代数

Q)図形的内容:図形,図形と計量,解析幾何,三角比 R)関係的内容:集合,測定,比・比伊L関数,確率,統計

(3)  第3の次元:数学過程

算数・数学科の指導においては,ともすると,指導の対象が既成の数学の理論的な内容だけに限 定され,主主数・数学が児童・生徒を取り巻く自然や社会から敵されがちである。一方で,数学の内 容を理解しそのよさが分かるということは,数学的活動を生成的にとらえることによってより効果 的になると考えられる。そこで,ここでは,数学の静的な成果である内容だけではなく数学の動的 な過程に目を向け,それを,次のように,数学ft..数学的処理」数学的検証の三つの段階に分けて

5) 

考えることにする。

X)数学化:事象を主主数・数学の対象とする。つまり,数学的構造に乗せる過程であり,例えば,

仮説や予想の設定,関数の設定,文字での表現, ?,賞.'fr.の決定,日常事象への応用な どと言われているものである。次の二つの場面がある。

iXl 生の事象を数学の舞台に釆せる場面。一般には,この過程を狭義の意味での数学化と呼

ょ。他殺科と内容が重複するということや鮮以外の知識が必要であるということ,ま た,数学化の対象となる開題を開発する難しさから,現在では,特に中学校J;L上では,

殆ど,この場面は実現されていない。

iX2 既に数学化された問題をその解決に都合のよいようにほかの数学的構造を持つ問題に変

換する場面白

Y) 数学的処理:数学的精迭のもとでの数学的操作を施す場面であり,例えば,計算や操作の実 行,論理的な推論,公理の選択などと言われているものである。次の二つの場面が

ある。

iYl 個々の計算の実行や命題を証明する場面。一般の算数・数学の授業では,殆どがこの場

!  函であろう。

iY2 個々の知識をまとめて,数学理論に体系化する場面。現代数学では,公理化に当たる。

ただし,現在では,一般には,高等学校の数学までには含まれていないであろう。

Z)数学的検証:数学的処理が妥当であったかどうかを確かめる場面であり,例えば,計算結果 の確かめ,解の吟味,解とデータとの突き合わせなどと言われているものである。

次の二つの場面がある。

iZl 数学的処理の結果がもとの現実的な事象や問題に適合しているかどうかを検証する場 面。ここでは,現実問題の知識が必要となるので,現在では,この検証は,普通,算数・

数学の授業では敬遠されることが多い。

iZ2  数学的処理の過程が間違っていなかったかを検証する場面。計算した結果が正しいかを

確かめることなどである。

‑58

(8)

1.6  算数・数学問題の開発の手順

本研究においては,基礎学力の枠組みと算数・数学問題の開発を並行して進めてきたことを先に 述べたが,ここでは,本調査問題の開発の手順を明らかにしておく。

研究委員は, r基礎学力を評価すると恩われる問題J,rこれから授業で使ってみたい問題J,r児童・

生徒にとって学習することが重要だと思われる問題Jを,提案理由とともに研究会に提案し,そし て,研究会では,その問題の価値,問題の内容などについて検討した。このような手順を一年以上 にわたって繰り返し,それによって,本調査に必要な問題数の三倍程度の問題を収集するとともに,

基礎学力の怠味を帰納的に探り,基礎学力の枠組みを考案していった。

収集した問題を本調査の候補問題とするために,それぞれの問題を,選択肢形式に変え,基礎学 力の3次元の枠組みにそって分類をした。そして,予備調査を二回行い,その結果をもとに,本調 査問題を選択した。分類・選択においては,委員会員の一致を原則とし,委員一人でも基礎学力に そぐわないと判定したものは,本調査問題から除いた。

本調査問題の選択の過程は,まず第一段階として,各委員の基準に従って選択し,ただし,その 際,基礎学力を評価する問題ではないと判断した場合にはその理由を明記することとした。次に,

第二段階として,各委員の選択結果を集計して,それをもとに委員会員で判断した。望ましくない 問題の基準としては,例えば,①内容が高度過ぎる,②表現は正しいが難しすぎる,③問題の怠図 が数学からずれて物理的などになる可能性がある,④表現に二重性がある,⑤問題が生すぎる,⑥ 計算が大変である,⑦内容が対象学年にとっては基本的すぎる,③解が複数になる可抱性がある,

などが挙げられた。望ましくない問題の基準の中には,ペーパーテストによる時間制限のもとでの 選択肢形式という今回の調査形式から派生したものもあるが,それらを別にすると, 3次元の枠組 みからして基礎学力を評価するのにはふさわしくない問題の基準を,次のようにまとめることがで

きる。

それは,数学内容からすれば,数学の理論的系統性の大筋からはずれた問題であり,数学過程か らすれば,数学以外の社会や理科の知識を過度に必要とする問題であり,行動類型かちすれば,特 別な訓練が必要な複雑な問題などである。

1.7 算数・数学問題と質問紙の構成

調査は,「算数・数学問題J(児童・生徒用), r児童・生徒質問紙J(児童・生徒用), r,教師質問紙」

(対象となった児童・生徒を指導している教師用)から成っている。それらの構成を簡単に記してお

(1) 算数・数学問題

算数・数学問題は,本研究の中で作成された多くの問題の中から,小6,中2,高1の段階での 基礎学力を評価するのに適している代表的な問題として選んだ。それらをさらに,行動類型,数学 内容,数学過程の枠組みに従って,分類・整理した。算数問題を例にとり,その分類伊jを示すと,

図2の通りである。

‑ 59

(9)

領 域 問 題 f日l 知識・技能 問題1 次の計算をします。

数学的処理 34.0474.6 

数式的 答えを,① ⑤の中から1つ選ぴなさい。

① 0.69 ② 0.74③ 6.9④ 7.4⑤ 74  理解 問題2 0.32XO.28の答えは,およそどれくらいですか。

数学的処理 ①一⑤の中から1つ選ぴなさい。

数式的 ①  9 ② 0.9 ③ O.ω ④ 0.009 ⑤ 0.0009 

思考 問題3 AからBまでの道のりのすを行くのに十時間かかりました。この逮 数学化 きで行くとすると. AからBまで行くのにかかる時間は全部でどのくらいで 数式的 すか。その時間を求めるのに用いる式を,① ⑤の中から1つ選ぴなさい。

① ̲ Lv 2 ② 一3一 一2一 ③ … 一2一一.一3一 4"3 =  4 ' 3   ""  3 ' 4  

④ 一3一一一2ー ⑤ ー

3

ー+一2一 4  3  ""  4 ' 3  

問題4 右の図のような動物の顔の形を厚紙から切り取りま

思考・態度 した。その重さは.150gでした。この形の面績を求めたい 数学化 と思います。あと,どんなことがわかったら,この形の商 図形的 積を求めることができますか。①一⑤の中から1つ選ぴな

さい。

①  同じ厚紙で作った正方形の,面積と重さ。

②  閃ヒ厚紙で作った正方形の,面積と厚さ。

③  同ヒ厚紙で作った正方形の,厚さと重さ。

④同ヒ厚紙で作った正方形の,厚さと 1辺の長さ。

⑤① ④のどれでもない。

問題5 右の図のように,長方形の紙のはしをそろえて4つ

E

理解 におり,ななめの線がはいったところの台形を切りとりま 数学的検証 した。広げたときにできる形はどれですか。①一⑤の中か 図形的 ら1つ選ぴなさい。

多量 z 喜 す

⑤ ① ④ のどれでもない

図2 算数問題の分類例

各学校段階別の問題数は,小6は36題,中2は40題,高1は24題であり,それらをまとめると表 2の通りである。

小中の問題数が多いのは,算数・数学の基礎学カをできるだけ網羅的に調べるために. 2セット の調査用紙を作成したからである。高1は調査学校数が小中の半数なので1セットにした。なお,

調査問題全体のパランスを考えて行われた問題セットとしての調整は,次のようである。全体の平 均正答率が60%程度になるようにする。小中高の共通問題を入れる。過去との比較の問題(文部省

‑60‑

(10)

の学カ調査,達成度調査)を入れる。 45分 (50分)の範囲で終わるように問題数を考える。 3次元 の各領域における問題数の偏りができるだけ少なくなるようにする。作図技能を見るための自由記 述式の問題を入れる。なお,調査の形式の制限によって,電車やコンビュータなどテクノロジーの 利用は今回見送られた。

表2 算数・数学問題の分類と問題数

次 元 世寓 域 問 題 数

‑一題題題‑題一題

高 一

B U 3

一 一

64 2一題題題一題一週一

中 一

umu

一9一6一 6一題題題一題一題一

的一的一的一 知一能一度一 認一技一態一

議解考‑能‑度

知恵忠一技一態

行動類型

式 形 係 数 図 関

容内学数

題 題 題 79nu ii

h v

h

h v

由 自 由

15題 14題 11題

題 題 題

0 0

題 題 題 4 9 1   題

題 題

︒ ︒

n

q o   題 題 題

1nA

円 ︒

19

化 現 証 処 検 学 的 的 学 学 数 数 数

程過学数

全 体 過 去 と の 比 較 の 問 題

自 由 記 述 式 の 問 題

題一 題一 題

aa aE nU E 唱 止

L

題一 題一 題

AU

n MU

n 4  aa

題一 題一 題

po

A U

︒ ︐

u

qu

1

i小中高

I

3題

学 年 間 共 通 の 問 題 ! 小 中

I

5題 !  ‑

トーーー』 ---~

中 高

I ‑ !  

1題

(2) 児童・生徒質問紙

児童・生徒に対する質問項目は,算数・数学科における基礎学カのうち,主として,算数・数学 問題で覆いきれないような,考え方や態度等について問うものである。質問項目は,いずれも選択 肢形式であり,主な質問項目の内容と数は,次の通りである。

①関心・態度・意欲に関する質問 (小中高とも20項目)

②授業への取り組みに関する質問

③発展的に考察する態度に関する質問

@証明や文字に対する意識に関する質問

⑤数学像

(小中高とも 3項目) (小中4項目,高6項目}

(中6項目) (高10項目)

る。

さらに. 5教科共通に,児童・生徒の背景や考え方などを問う質問項目が,約20項目合ま札てい

‑61‑

(11)

(3) 教師質問紙

教師に対する質問項目は,児童・生徒の基礎学力の形成に影響があると思われる,教師の算数・

数学についての教育緩や指導についての質問からなっている。質問の内容と項目数は,次の通りで ある。

①算数・数学についての教育績に関する質問(選択肢形式) (小中高とも10項目}

②算数・数学についての基礎学力綴に関する質問(選択肢形式)

(小36項目,中40項目,高24項目)

③算数・数学の基礎学カについての指導法に関する質問(自由記述形式)

@教師の生徒像(選択肢形式)

⑤授業への集中度(選択肢形式)

(小中 3項目,高 4項目) (高11項目) (高1項目)

なお,②の基礎学力観に関する質問は,各学校段階とも算数・数学問題のすべてについて, (7)こ れからの基礎学力として重要かどうかを答える重要度, (のそれらの問題を指導したかということを 答える履修率, ~坊対象児童・生徒のでき具合を予想する予想平均正答率,の三つの綴点から回答す

る形式である。

さらに,全教科共通に教師の指導などを問う質問項目が, 10項目含まれていた。

1.8 情意面の評価

本研究の特徴の一つが,関心・態度を基礎学力と見なしたことにあることは既に述べた。しかし,

このことによって,それのヨ訓面をどうするかという大きな問題に直面した。このとき取る立場は,

二つある。一つは,関心・態度はペーパーテストでは評価できないとする立場である。もう一つは,

たとえ完全な評価はできないとしても,可能な限り評価を試みようとする立場である。本研究にお いては,後者の立場を取り,情意函の評価について,三つのタイプの評価方法を工夫した。

第一は,算数・数学に関する一般的な態度に関する意見を問くものである。「数学は好きですかJ

「数学は発展していると思いますか」などのような質問への窓見を過して,態度を見ょうとするもの である。児童・生徒質問紙の多くの質問が,これに当たる。第二は,ある数学の問題を実際に発展 させることに関する怠見を聞くものである。実際の問題を解いた後で,示された複数の発展の方向 の中から,自分が発展させたい方向を選択するものである。これらは,児童・生徒質問紙の中の「カ レンダーの問題J,r平行四辺形の問題J,r二次関数の問題J(高校のみ)と呼んでいるものである。

第三は,算数・数学問題で「行動類型」の「態度」と分類さ札た問題に対する反応を見るものであ る。これらの問題は,多様な見方やものごとを関係づけて考えることを促L..,また,そのような態 度が,特に必要とされる問題と考えた。ただし,この第三のタイプの問題は,正答を求める閑題で あり,多様な見方そのものを評価の対象とはできなかった。

これらの三つのタイプは独立に行われるものではなく,互いに補うものであると考えている。な お,第二・三の試みは,本研究において初めて行われたが,これらの妥当性については,児童・生 徒の反応結果を詳しく分析することによって調べていきたい。それでもなお,関心・態度の評価方 法としては,児童・生徒がよりよい数学的活動に没頭できる場面での綴祭がもっとも望ましいとい

一 一62‑ー

(12)

うことが,研究会でも数皮にわたり議論に上ったことを付言しておし

2.  算数・数学問題の成績

'tf.数・数学問題の一次集計の結果の分析については,すでに報告されているが,それらのうち小 中高校にわたる共通な傾向は,概ね,次のようにまとめられる。'tf.数・数学問題の結果からすると,

児童・生徒は,

・知識・技能の問題のできはよいが,理解・思考の問題のできはよくない。

・数式の問題のできはよいカち図形・関数の問題のできはよくない。

・数学的処理の問題のできはよい。

さらに.'!f.数・数学問題については,既刊の報告書・論文において,三つの調査対象学年をもとに 次のような重点事項別に詳しく分析されている。

[小学校6年] 数の理解,計'tf.の技能と意味の理解,数量感覚と見絞り,問題解決場面における 立式,きまりを見つけることと文字を用いた式,図形の性質,図形についての計 量,立f科惑党,グラフや表の読み取り,比・比例の考え,場合の数と確率の考え [中学校2年] 数の理解,数式の技能と意味の理解,問題解決場面での式による表現,いろいろ な表現,図形の基本性質,図形の証明,空間図形,関数関係の発見,関数のグラ フ,一次関数の性質,統計的処理と確率の考え

[高等学校1年] 公式の適用,表現の解釈,式の見方,関数の見方,図形の見方,場合の数と確 率の考え

本研究では,算数・数学の基礎学カを小中高を通した3次元の枠組みをもとに分析しているが,

これらの重点事項の観点は,各学校段階での算数・数学のとらえ方の特徴を示していると言えよう。

これらの一次集計結果をもとに,本章においては,算数・数学問題の結果について,さらに詳し く分析することにする。なお,分析においては,算数・数学問題と児童・生徒質問紙の両方に回答 した児童・生徒を分析対象とする。

ところで,算数・数学では,基礎学カの全体像を採るためにできるだけ多くの問題を調査しよう と考えた。しかし,調査時間は限られているので,小学校・中学校の場合には,調査問題を二つの 問題セットに分けて,各学級では半数の児童・生徒毎にそれぞれの問題セットを調査実施した。そ こで,以下では,それぞれの問題セットを,小学校(1991年3学期に調査実施)では,「算数Aj(児 童数719名). r算数Bj(児童数709名).中学校 (1991年3学期に調査実施)では「数学Cj(生徒数

719名).r数学Dj(生徒数707名)と呼よことにする。なお,高等学校 (1992年3学期に調査実施) は調査対象者数の関係で,複数のセットに分けなかったカ九これを「数学Ej(生徒数827名)と呼 ぶことにする。なお,各問題毎の選択肢別反応率等の基本統言七置を,本論末の伴表

1 . 2 .   3

に挙

tfてある。

2.1  得点分布

児童・生徒の総得点及ぴ領域得点の分布(平均・標準偏差・満点人数)を,問題セット毎にまと めると,表3の通りである。領域得点とは,三つの次元の中の領域毎の得点であり,総得点とは問

一 ‑

63ーー

(13)

算 数A 総得点 (719名)

Il.

s (

問酉監) 20  ..・ーーーー..ー.‑̲. 平均 11.8  標準偏差 3.9  ...幽・a崎司ーー・.・・唱F・幽園町句・... 満点人数 1.1% 

算 数B 総得点 (709名)

配制問題散) 20 

‑・・ーーーーーー・‑‑"̲ 平 均 11.2  標準偏差 4.4 

‑・ー‑‑‑‑‑‑‑‑・・.. 満点人数 1.7% 

数学C 総得点 (719名)

配点(問題紛 22  ー‑‑‑‑‑‑‑圃園、.・.. 平 均 12.7  標準偏差 4.5 

‑‑‑‑・ーー‑‑‑‑・・・ ..・・ー... 満点人数 0.0% 

数 学

DI

総得点

(707.名)

~

表3 得 点 分 布

領 域 得 点

行 動 類 型 数 学 内 容 数 学 過 程 知識 理 解 思考 技 能 態度 数式 図形 関係 数 化 処 理 検 証

7  5  8  6  4  10  5  5  7  11  2  ー・ー...ー・・,・・・・・・・ーーー...唱‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・・司・ー・・・・・・ーーー・ーー・ ...・・・・・・・・ーー‑‑‑‑‑‑‑・・・・邑・・ーー,

4.8  3.0  4.0  4.4  1.8  6.4  2.9  2.4  3.3  7.2  1.3  1.6  1.2  1.9  1.4  1.1  2.1  1.3  1.4  1.6  2.5  0.6 

‑‑‑‑‑‑・ーーー‑‑‑‑‑‑‑‑ーー・ー・ー..a・・̲‑‑‑ー..・ー司...・・・aE・...̲‑・・・・・ーー・...ー.ー‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ーー.ー・ー‑‑‑‑‑‑‑‑‑ーー 14.2% 11.7%  3.1% 23.8%  7.4%  5.4% 10.0% 10.2%  3.2%  6.4% 35.7% 

領 域 5耳

行 動 類 型 数 学 内 容 数 学 過 程 知 識 理解 思考 技 能 態 度 数式 図形 関係 数 化 処 理 検証

5  9  6  6  5  11  4  5  5  14  1  園町圃・・ha・・・・ー・白白骨・ー..曹司・・・・・・・ーー.‑‑‑‑‑‑・・・a・・ーーーーー...E・‑‑‑‑‑、・‑‑‑‑‑‑・・ーー』ーーー‑̲‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・ー・・.ー‑‑‑‑‑‑‑‑

3.4  4.9  3.0  4.0  2.6  7.1  1.7  2.5  2.8  8.1  0.3  1.2  2.3  1.7  1.4  1.5  2.5  1.2  1.4  1.3  3.2  0.5 

‑・ー‑ー・『司司・・・・・・・』値伊...・・E・・・・・ーー ‑ーーー...・・・・・・‑‑‑‑ー司唱曲 ...ー..・..ーー‑‑‑‑‑・凶『・・・・・ー・M回畠崎曲ー ..ー...・a・‑‑‑.̲‑・・E・・・・ー.ーー『・・・ 18.2%  5.6%  7.2% 13.7% 13.8%  9.3%  9.6% 10.0% 12.6%  3.5% 33.3% 

領 域 4尋 点

行 動 類 型 数 学 内 容 数 学 過 程 知識 理 解 思考 技 能 態 度 数式 図形 関係 数 化 処 理 検 証

9  7  6  7  4  10  7  5  3  19  0  ー・・・ーーーー・.ー‑‑‑‑‑‑‑‑ー..ー..ー・・・ー..‑‑̲‑‑・‑‑‑̲・・..司回‑‑‑‑・ ー』・ー司‑‑‑‑‑・・a・ー‑ー.司..・・・・・・・・a ..ー・・・・・・・ー・・‑‑̲‑‑‑・・・・・・ーー・ー・.

6.1  3.7  3.0  4.8  2.0  6.9  3.4  2.3  1.5  11.2  2.1  1.8  1.5  1.8  1.2  2.5  1.7  1.4  1.0  4.0 

'明‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑"ー・・幽・・・・ーーー...・・・・・・..幽‑‑‑̲‑‑‑・ ー・・・・,ーー‑‑‑‑‑‑‑・・圃‑‑‑‑・ー‑‑‑‑‑‑ー・ー・F明圃圃"・・・・・・・.ーーーーー...・・・・ーー. 11.3%  4.7%  4.0% 18.9% 12.0% 14.7%  2.9%  5.7% 16.8%  0.3%ーー

領 域 f尋

行 動 類 型 │ 数 学 内 容 │ 数 学 過 程

知 識 理 解 思 考 │ 技 能 態 度 │ 数 式 図 形 関 係 │ 数 化 処 理 椀

l

標準偏差

Z

1 2

│ι311

I

3.3

i

  1 

:

51..3 

41..3 

: :

31.

i

.6  1 31..

74  0 

; │

0

;

..69

;

   1

;

;

2ト } ト

; ; 二

1. 13..0

j

:

12

:

..33

:

  1 

: ;

03..

;

95  ‑ 

! :

ーー

満点人数 10.4%1 6.8% 3.7%  11.5%135.8% 14.7%118.1%  5.8%  2.7%1 3.5%  3.1%一ー

数 学E 総得点 領 域 得

(827名) 行 動 類 型 数 学 内 容 数 学 過 程 知 議 理 解 思 考 技 能 態 度 数式 図形 関係 数 化 処 理 検 証 島点(問閣直) 24  8  13  3  6  4  8  9  7  4  19  1  ーー...司・F・・・・・・・ ー‑‑‑‑‑‑・・・a・・ーーー岬‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ー・,ー...・・・・・・ー...ーー 唱‑‑‑‑‑‑‑‑‑ー‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・ー..ー,唱圃.‑‑‑‑色‑‑‑‑‑・・・・・ーーー.開'・・・・・・・ーー. 平 均 15.3  6.5  7.1  1.8  4.8  2.3  5.3  5.5  4.6  2.4  12.1  0.8  標準偏差 4.1  1.4  2.7  0.9  1.1  1.2  1.4  2.0  1.7  1.1  3.4  0.4 

‑・ーー‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ .・・ーー...・・・ーーーー・,ー・・・・・・・・ー ー̲‑‑‑ー・ー‑‑‑‑‑‑ー..・.・ 事・・・・ーーー‑ー‑‑̲‑‑‑‑‑‑‑‑白血ーー‑‑‑‑‑..̲.‑圃ー.圃亭司唱...園、...・・ー... 満点人数 0.6% 26.4% 1.3%  21.4% 32.4% 17.5%  4.5%  4.6% 11.7% 19.8%  06% 81.1% 

‑64 

(14)

20 

数 10

2  4 

20 

数 10

, , 

, 

‑ ‑

2  4 

20 

数 10

, , 

,  J

, ・

一/,

‑‑‑‑ーー・'

, 

,  , 

, 

, 

, , 

三̲.

ら ' 一

・ーーー司句・、、、

t

・ 、

一 一 一 算 数A

‑一一ー算数B

、、

¥ 晶

10  12  14  16  18  20 

得 点

, , 

, 

--~ .. 、、‑

.

. . . . . . ̲

::.‑‑‑・ーーーーム

、 、

一 一 一 数 学C 一一ー数学D

、 、

6  8  10  12  14  16  18  20  22 

得 点

一一一一数学E

10  12  14  16  18  20  22  24 

得 点

図3 得点分布

‑65‑

(15)

L...̲ 

題セットについての得点である。また,総得点の得点段階別の分布告折れ線グラフにしたのが,図 3である。なお,本研究における得点とは,各問題の正答に1点を配点したものであり,問題の質 による得点の重み付けはしていない。

それぞれの問題セットの平均総得点は,次の通りである。ただし, ( )内は配点(満点)。小学 校6年の算数Aは11.8点 (20点), rr.数Bは11.2点 (20点),中学校2年の数学Cは12.7点 (22点),

数学Dは13.3点 (22点),高校1年の数学Eは15.3点 (24点)である。いずれも,平均総得点の配点 (満点)に対する割合は,約60%である。換言すると,そ札ぞれの問題セットの平均正答率は,約 60%ということを表しでいる。

グラフを見ると,小中学校は平均を峰としたなだらかな山状の単峰分布であるが,高校1年は平 均付近が若干へこんだ山状の分布となっている。なお,表の平均・標準偏差から変iF.IJ1革数を求めて みると,小中学校は0.20‑0.22であるが,高校は0.17であり,高校の方がバラツキが少ないようで ある。

2.2  総得点・領域得点の間の関係

総得点及ぴ領域得点の闘の関係を見るために,三つの次元,すなわち,行動類型(教育目標),数 学内容,数学過程のそれぞれの次元毎に,領域得点の聞の相関係数を求め,さらにそれらの領域得 点と総得点との棺関係数を求めてまとめると,表4の通りである。ただし,小中学校の場合は,表 の右斜め上の数値は算数A,数学Cの相関係数であり,左斜め下の数値はrr.数B,数学Dの相関係 数である。

表4 総得点・領域得点の関の関係 小学校6年

行動類型 数学内容 数学過程

算数A 算数A 算数A

|~知識醜 J思考蹴態度|蹴点II~I 蹴図形鵬|総得者|六両市樹|糊

算│知識ト¥札.50 0.52一 ー ‑I 0.81  I耳│数式卜"0.43 0.5

0.87I 算数割~['-.__ O.日 0.30I 0.82  註│理解10.55

" ' ‑ 止

56一 一 ーI0.78  I剣 図 形I0.51  "'‑ 0.4什 0.711数│処理1

. o 関 " ' ‑

0.291 

. o

BI思 考ι.51ι55

" ' ‑ 一 一 ‑

0.87  I BI関 係10.56 0.46  "'1 0.78I BI検証川.担 0.43" "  I 0必

技能卜一一 ~o.叫 0.76 I  I

総得点│ω1 0.73 

0 叩 I~II糊10.行 0.96 0.521~

態 度 ト ー 一 ‑ ‑ ‑0.51  "'‑1 O.ωl  僻 点│ι76 0.89  0.81  0.81  0.80 

~

‑ 6 6 ‑

(16)

中学校2年

行動類型 数学C

百五一醐思考技能態度│総得点

数学内容 数学C

数学過程 数学C 教

DW

0 0 0 0  

6 4 0 

敢式図曹関悟 総得点 0.49  0.54 

邸 。

図 形 0.49 

.47 0.78 

凶 器 0.45 0.46  0.76  総i時点

. o

ぉ 0.800.751 

教 学

D

員判じ処理検証 総持点

r

判じ 0.50  0.65 

処 理

.53 0.98 

検 証

総得点 0.72  0.96 

同¥ハ川一

態 度

I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

0.17  総時点10.84 O. 0.82 0.78  0.39  高等学校1年

行部J類型 数学E

0.55  0 23  034 

数学内容 数 学E

数学過程 数学E

監学化処理検証 総得点 数字化 0.38  0.11  0.60  処 理 0.24  0.96  検 証

総得点 解

考 能 度 一

‑ a m 点

程 恩 誼 態 一 総

0.92 

24 

0.67

什 扇

叶オg.. ~1 0.69 

,φ2 D.J

全体的に見ると,三つの次元内の領域得点閲の相関係数は,約0.5であり,一方,領域得点と総得 点との相関係数は,約0.8である。なお,これらの数値から大きくはずれている態度や検証などの数 値は,問題数が少ないことが影響しているとも思われる。

各領域の得点が,総得点と高い相関があるということは,学力構造としては,それぞれの領域の 得点が高くなればなるほど,総得点も高くなっているということであり,一部の領域だけの得点の 高さが総得点に大きな影響を与えているということはなさそうである。本研究における基礎学カは,

知識・理解・思考が総合されたものとなっていると言えよう。

2.3  概念の理解と技能の修得

算数・数学の概念の理解と技能の修得というこつの教育目標の関係は,一次分析における大きな 主題の一つであった。例えば,計算の技能l判断号Lているのに計算の意味は理解していないことを,

どのように考えればよいのかということである。このことをさらに詳しく見るために,個々の問題 について事例的に分析することにした。そこで,小中高校で,概念の翠解と技能の修得に相当する 問題を,次のように六組選択した。

整数・小数の釆法(変数番号:小学校1,4)  小数の除法(変数番号:小学校7,8)  分数の釆法(変数番号:小学校11,12)  正負の数の四sll(変数番号:中学校3,4) 

‑ 67

(17)

表5 概 念 の 理 解 と 技 能 の 修 得

l 学年 概念正答・技能正答概念正答、・技能誤答概念宮崎・技能正答概念議答・技能誤答 整数・小数の乗法 ,j6 13.9 (48%) 10.7 (8%) 10.2点 。1%} 7.7.点(13%) 小数の除法 6 13.8 (51%) 9.8 (8%) 10.5 (30%) 6.8 (ll%) 分数の釆法 6 13.7 (53%) 9.9.¥¥¥  (4%)  9.0 (32%) 6.1 (ll%) 正負の数 2 14.7 (61%) > 1l.2 (6%) 10.1 (24%) 6.2点 (9%)  文字式・方程式 2 14.5 (63%)10.0 (9%) 10.5 (18%) 6.7 (10%) 2次方程式 2 16.5 (69%)14.1 (6%)12.8 (21%) 9.0点 (4%) 

注:( )内は、児童・生徒数の訓告

〉は、その両培の平均値に、その向暑に5%有官:*準で差があることを示す。

問 題 く 概 念 の 理 解 〉

く 技 能 の 修 得 〉 整 数 ・ 小 数

[1] 右のかけざんで,かける数の

m

のとこ

ろが4になったら.答えはどれだけ大きくを × 包6 : 9.3xO.82 

りますか。①一⑤の中から1つ退。なさい。 1302  答えを,① ⑤の中からlつ選ぴをさい.

10 46 217  @) 2170  QP  9982  651 

0.7626  @  7.426 7.626 

@) 74.26  76.26 

[5]  0.874+3.8と悶じ答えになる宮i慌を2つずつ集めましたo[4]  次の計算をします。

正しいものを,①ー@町中から1つ選ぴなさい。 34.04+ι6

答えを,① ⑤町中からlつ選ぴなさい.

8.74+38  87.4i38 8.74+38  8.74+380 

@  87.4+38  874+380  @) 874+38  874+380 0.69 0.74 6.9  @)  7.4 74 

8.74+38  87 4i380  分 数 の 釆 法

[7]吾についての,次の叩帥で,一番大きい数になるのは [6]次 の 蹄 を し 杭 どれですか。① ⑤町中から1つ選ぴなさい. ‑56‑‑z‑

56X11 ~ー6 ト- 56一‑i‑l+ 答えを,①ー⑤の中からlつ選ぴをさい。

@ 一65一 ‑ ⑤決められない. ① す10② す20 @124 5 @  11「 ⑤

任 す

正 負 の 数

[2] 次の中で,いつでも正 しいとはいえない場合があるのはど [1] 次の計算をします。

札ですか。① ⑤の中からlつ選びなさい。 9+(+4)X(‑5) 

答えを,①一@の中からlつ選ぴなさい.

①  {正の数)+(宣の数)

CiEの数)

②恨の数)+偵の数:)=偵の紛 8 @  ‑9 @  ‑11  @) ‑25 ‑65 

③  {正の数)ー(宣の数)

(正の数3

@)(買の数)ー{正の数)

(宣の数}

⑤  (宜の数)(王町数)

(:11.3

‑68

(18)

文字式・方程式

[61  方程式を次のようにして解きました.

0.3x‑0.15=0 9‑0.2x  30x‑15=90‑20x 

50x=105 

… 

...(7)  105 

x=50  21  x=‑:ー‑10 

このとき.(吋から(イ)に変形するのに使ったのは,どのような ことですか.①ー@町中から1つ選ぴなさい。

次の計算をします。

(4a‑6) ‑2(a‑3) 

答えを,① ⑤町中から1つ選びをさい.

[31 

:① 2a② 2a‑3 @ 2a‑12  .⑤ 3a‑ll 

3a‑9 

両辺から同じ故をひいた。

同類項をまとめた.

② 

両辺に同じ数をたした。

両辺を同じ数て・わった。

文字と数の項を移項した。

⑤  

次の2次方程式を解きます.

2計十3x+4=0

答えを,① ⑤の中から1つ選ぴなさい。

[ 41  2次方程式

[51  2つの解がιβとなるx2次方程式を,①ー⑤町中から 1つ選ぴなさい。

‑3li3i x=ー 4一一

x=二 呉 盆τi

‑3J23 x=

‑ 4 ‑ x‑

‑3+A 

①‑@のど札でもをい。

② 

⑤   x2‑asx+{a+β)=0 

x2‑{a+β)x+as=O 

x2‑ax+s=O 

x2+{a+β)x+as=O  (x+α)(x+β)=0 

@

@  

文字式・方程式(変数番号.中学校10,12)  2次方程式(変数番号:高校5,6)  そして,それらの正答X誤答の組合せを考え,両方正答,概念正答・技能誤答,概念誤答・技能 正答,両方誤答のそれぞれの場合の児童・生徒の平均総得点を求め,その差を検定することにした。

それらの結果をまとめると,表5の通りである。

概念を理解し,技能を修得している児童・生徒は50‑60%であるが,概念正答・技能誤答の児童・

生徒は,いずれも全体の10%以下であり,一方,概念誤答・技能正答の児童・生徒は20‑30%いる。

それぞれの平均総得点を見ると,整数・小数の采法,分数の乗法,正負の数の四則, 2次方程式の 四組は,いずれも,両方正答,概念正答・技能誤答,概念誤答・技能正答,両方誤答の順に総得点 が下がってきている。このうち,概念正答・技能誤答と概念誤答・技能正答の場合の平均総得点に 5 %有意水準で差が認められたのは, 2次方程式だけであったロこの問題の場合には,技能よりも 概念が総合的な理解については,優位性を示しているようである。

しかしながら,ほかの五例の概念・技能の組では,概念正答・技能誤答,概念誤答・技能正答の 総得点の間に差が認められない。概念の理解,例えば,怠昧指示をより重視するとともに,概念の 理解に関する評価問題をもっと多〈作る必要があろう。

得点・正答率の男女差

算数・数学問題の得点の男女差を見るために,問題セット毎に男女別平均総得点を求め,

の差を検定すると,次の遜りである。( )内は調査対象者数であり, *印は, 5 %有意水準で,男 それら 2.4 

‑ 69

(19)

女差が無いという仮説が楽却されたことを表す。

小学校6年 算数A:男 (369名)12.0,女 (350名)11.6  t=0.73  算数

B:

男 (373名)11.5,女 (336名)11.0  t=1.38  中学校2年 数学

C:

男 (384名)12.5,女 (335名)12.8  t=0.80  数 学

D:

男 (351名)13.5,女 (356名)13.0  t=1.42  高等学校1王子 数 学

E:

男 (439名)15.9,女 (388名)14.7  *t=4.26 

小中学校では男女の得点平均に差は見られないが,高校1年で男女の得点に差が認められる。し かしながら,高校の男女差は,発達灼に生ずるものなのか,それとも高校の学校格差とそれへの進 学状況から生ずるのかは定かではない。

次に,個々の問題の正答率の男女差を見るために,カイ 2乗の値を求めた。それらの数値は,付 表1,2, 3にまとめて挙げてある。 5%有意水準(自由度1でX'=3.84)で,男女差が無いとい う仮説が棄却されたのは,小学校6年で4題,中学校2年で7題,高校1年で11題であり,それら の小中学校の男女別の正答率は,次の通りである。( )内は変数番号であり, *が正答率が高いこ とを示す。

小学校

中学校

小数の采除 (9) 点対称 (25)

関数グラフの読み (31) 統計グラフの読み (34)

男子 56.8%*  女子 47.9%

男子 56.4%* 女子 48.9%

男子 71.0%* 女子 56.0% 

男子 49.1%* 女子 34.2%

連立方程式の計算 (13) 男子 72.9% 女子 80.3%* 

図形の基本性質 (23) 男子 40.1% 女子 50.4%* 

四角形の性質 (26) 男子 56.5% 女子 69.0% *  相似・中点を結ぶ図形 (29) 男子 50.3%*  女子 42.1%

表 現 (30) 男子 57.8%  女子 65.1%* 

1次関数のグラフ (36) 男子 70.7%* 女子 62.4%

統計衰の読み・平均値 (38) 男子 58.4%*  女子 48.6% 

小学校では,いずれも男子の方が正答率は高しそれらは理解・J恩湾ーの問題であり, 4題中2題 は,グラフに関係した問題である。中学校では, 7建中4題は女子の正答率が高い。女子は,連立 方程式を解くことや図形の基本性質の問題の正答率が高<,一方,男子は,関数のグラフや統計表 の問題の正答率が高い。高校1年では,いずれも男子の正答率がおし特に図形や関数の問題の正 答率が高い。

2.5  問題セットの信頼度・問題の識別怯

算数・数学問題のそれぞれの問題セットの信頼度を調べるために,各問題セット毎に,キュー ダー・リチャードソンの第20公式を使って,信頼度係数を求めた。それぞれの値は,次の通りであ る。

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