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光太郎
空間点分布を考慮したコンビニエンスストアの立地モデルの研究
A Study of Locational Model for Convenience Stores Considering Spatial Point Patterns
情報工学専攻 小池 光太郎
Kohtaro Koike1 はじめに
コンビニエンスストア(以下,コンビニ)を経営す るにあたり,立地は利益の最大化を実現するための重 要な問題の
1つである.立地に適している場所にコン ビニを建てれば,利用客が多く訪れ,購買する機会も 多くなる.すなわち,立地の良し悪しによって店舗の 利益が左右される.
本研究では,実際に立地しているコンビニの分布に 対し,立地に適する要因を考察する.そして,考察に 基づいてコンビニの立地を定める立地モデルを提案 し,実際に立地しているコンビニの分布を再現するこ とを目的とする.また,各地域のコンビニの立地特性 を考察する.
2 コンビニエンスストアの立地傾向
本研究では,立地傾向をチェーン別で考えずに,全 ての店舗を同列で扱い,コンビニの立地傾向を分析す る.そして,立地に適する要因を考察する.
2.1 コンビニエンスストアに適する立地
[2]によると,コンビニの立地は,徒歩客が目的地に
移動する動線上にあり,店舗を中心として半径
300mから
500m以内に2,000 人から
3,000人の中所得者層 が住居または勤務していることが望ましい.
2.2 地図データから見た立地傾向
地図データを用いて実際のコンビニの立地傾向を 分析する.地図データとして,MAPPLE10000 から コンビニや各施設,道路リンク等の位置データを用い る.他には人口データとして,平成
12年度国勢調査 を基に,
300m正方メッシュ単位で集計した夜間人口 を用いる.対象地域は立川・八王子,横浜,大宮の
3地域とする.以降では,紙面の都合上,立川・八王子 のデータを扱い,分析する.
コンビニと各施設,人口との近接性に注目して分析 すると,コンビニの立地は駅やマンションなど多くの
人が訪れる,または住居している場所が適していると 推測される.
3 立地モデル
コンビニの立地を定める立地モデルの提案を行う.
本研究では,人口,道路が多く集まる場所が立地に適 していると仮定する.また,立地に適している場所に 店舗が集まることにより,顧客の奪い合いが生じる.
そのため,1 店舗あたりの利益が減少し,立地の魅力 も減少すると仮定する.
コンビニ各店舗が立地を定めるために, “立地の良 さ”を数値で表す.この数値をポテンシャル値と定義 して,ポテンシャル値を表現するためにカーネルを用 いる.ポテンシャル値が小さいほど立地に適している とするとき,コンビニ各店舗はポテンシャル値が局所 的に最小である場所に立地すると仮定する.
3.1 カーネル密度推定
2
次元ガウス分布で表現されたカーネルを用いてポ テンシャル値を求める.カーネルの対象である点が
n個のとき,任意の場所
xのポテンシャル値 は以 下の式で表される.カーネル密度推定については[3]
を参考にされたい.
) ˆh(x e
( )
∑
∑
=
=
⎭⎬
⎫
⎩⎨
⎧− −
=
=
n
i
i i
h
h h
K e
1
2 2
2 n
1 i
2 exp 1 2
1 ) ˆ (
X x x
x
π
また,パラメータ
hはバンド幅と呼ばれ,カーネルの 形状に影響を及ぼす.
3.2 線分を対象とするカーネル密度推定
カーネルは本来,点を対象としている.よって,道 路リンクなどの線分に対応するために,線分を対象と するカーネルを提案する.
点p
iを対象とするカーネルを考える.このカーネル
を,点p
iを通るように
2等分する.それにより,点
piが
2/4 小池
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二つの点a
iと点b
iに分割される.そして,点a
iと点b
iの 間に線分を引き,線分の距離を とする.このとき,
線分を対象とするカーネルの形状は図
1のように表 される.線分を対象とするカーネルは以上の手順によ り得られ,任意の地点xのポテンシャル値 は以 下の式で表される.case1 は,
xから線分への最短距離がa
li
) ˆl(x f
i
との距離,
case2は,
xから線分への最短距離が biとの距離,case3 は,xから線分への最短距離が
xから線分へ垂線を下ろした位置ベクトルL
iとの距離で
る.また,
caseの判別は[1]を参考にされたい.あ
( ) ( )
⎟⎟
⎟⎟
⎟⎟
⎟⎟
⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎜⎜
⎜⎜
⎜⎜
⎜
⎝
⎛
⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
=
⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
=
⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
=
= ∑
=
) 3 case 2 (
exp 1 ) (
) 2 case ( 2
exp 1 ) (
) 1 case ( 2
exp 1 ) (
2 ˆ 1
2 2
2 2
2 2
1 2
i i
i i
i i
n
i i l
Q h
h Q
h Q
h Q f
L x x
b x x
a x x
x
x π
p a b
l
i i
i
p ai b
l
p
p a b
l
a b
l
i i
i
i
図
1 線分を対象とするカーネル3.3 ポテンシャル場の形成
人口,道路,店舗のポテンシャル値を定式化する.
そして,最終的に
1つのポテンシャルに結合する.
人口ポテンシャル
はメッシュ総数, はメッシュi に含まれる人 口,
np pi
MESHi
x−
は点
xとメッシュ の代表点とのユ ークリッド距離を表わす.
i
∑ ⎭⎬⎫
⎩⎨
⎧ ⎟⎟⎠⋅
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ ⋅ −
−
= np
i
i i
p p
h
f h2 2 2
2 exp 1 2
) 1
ˆ (x x MESH
π
道路ポテンシャル
3.2
節で述べた,線分を対象とするカーネルから道 路ポテンシャル値 を計算する. 本は道路リン ク数を表す.
) ˆr(x
f nr
⎟⎟
⎟⎟
⎟⎟
⎟⎟
⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎜⎜
⎜⎜
⎜⎜
⎜
⎝
⎛
⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
=
⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛− ⋅ −
=
⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
=
−
= ∑
) 3 case 2 (
exp 1 ) (
) 2 case 2 (
exp 1 ) (
) 1 case 2 (
exp 1 ) (
) 2 (
) 1 ˆ (
2 2
2 2
2 2
2
i i
i i
i i
n
i i r
Q h Q h Q h
h Q f
r
L x x
b x x
a x x
x
x π
店舗ポテンシャル
nc
は対象地域内の総店舗数,
CVSj −CVSi(た だし,
i≠ j)は店舗
jと店舗 とのユークリッド距離 を表わす.
i
∑≠ ⎟⎟⎠
⎞
⎜⎜⎝
⎛− ⋅ −
= nc
j i i
i j
j
c h h
f
) (
2 2
2 2
exp 1 2
) 1
ˆ (CVS CVS CVS
π
店舗ポテンシャルは,各点が移動するたびに,コン ビニの分布状況が変化するので,ポテンシャル値を逐 次計算する必要がある.
ポテンシャルの結合
人口,道路,店舗の各ポテンシャルを線形結合によ り
1つのポテンシャルに結合する.任意の地点
xでの ポテンシャル値
fˆ(x)は以下の式で表される.
) ˆ ( ) ˆ ( ) ˆ ( )
ˆ(x fp x fr x fc x
f =α +β +γ
(
α >0,
β >0,
γ >0)
α
は人口,
βは道路,
γは店舗の影響の度合いを示 す.これらのパラメータを基に,各地域の立地の特徴 を考察する.
3.4 ポテンシャル場における点の移動方法
コンビニ各店舗が立地に適している場所,すなわち ポテンシャル値が局所的に最小である場所に立地を 定めるための方法について述べる.任意の地点xにお ける勾配ベクトル を求め, の逆方向であ る移動ベクトルdの方向に進むことによって局所的な 最小値となる地点を探索し,立地を定める.適当な初 期地点x
) ˆ(x
∇f ∇fˆ(x)
(0)
から以下のようにxを更新する.
) ( ()
) (
) ( ) 1 (
i i
i i
f a a
x x
d x
x
∇
⋅
−
=
⋅ +
=
+
aは更新によりx(i)
から移動する大きさを表すパラメー
3/4 小池
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タで,非負の実数である.
立地モデルの終了条件は,対象地域における全ての コンビニ各店舗の移動ベクトルの大きさ
dが
0とな るときである.このとき,全ての店舗が立地を定めて いる,とみなす.
4 地域への適用
ここでは,
3章で提案した立地モデルを立川・八王 子に適用する.まず,計算機実験の設定を行い,立地 モデルによる分布(以下,モデル分布)を求める.次 に,実分布との類似性を客観的に評価するための手法 をモデル分布に適用する.そして,手法に従ったとき の評価が最も良い分布を実分布に類似しているとみ なし,地域の立地特性を考察する.
4.1 計算機実験
3
章で説明した立地モデルを計算機に実装し,数値 実験を行うための設定について述べる.
初期分布
一様乱数を用いて,領域内に対象地域の店舗数と同 数の点を発生させる.
終了条件
1全ての店舗の
diを求め,その平均が微小な値
εよ り小さいとき終了とする.
ε =10−6とする.
終了条件
2位置ベクトルの更新回数 が
2,000回を越えたら 更新を打ち切り,終了する.
k
は パラメータの決定
本研究では,人口ポテンシャルのバンド幅 ,道 路ポテンシャルのバンド幅
h, 店舗ポテンシャルのバ ンド幅
hcそれぞれ
300.0(m)とする.hp r
パラメータ
α,
β,
γの組み合わせとして,人口 の影響が強い,道路の影響が強い,店舗の影響が強い 等のケースを想定し,200 通り設定する.
フローチャート
以下に,モデル分布を得るためのフローチャートを 図
2に示す.
4.2 評価方法
モデル分布を客観的に評価するための手法につい て述べる.
Yes 初期分布作成
各ポテンシャル場の結合
移動ベクトルの大きさの平均がε以下,
もしくは反復回数が2000回以上
終了
各点が移動 ポテンシャル場の再結合
No
k:=k+1 k=0
各点の移動ベクトル算出
Yes 初期分布作成
各ポテンシャル場の結合
移動ベクトルの大きさの平均がε以下,
もしくは反復回数が2000回以上
終了
各点が移動 ポテンシャル場の再結合
No
k:=k+1 k=0
各点の移動ベクトル算出
図
2 フローチャートセルカウント法
実分布とモデル分布に対して,領域をセルと呼ばれ る比較的小さい面積の正方区画に分割し,セルに含ま れる点の度数を調べる.このとき,セルの度数が
0個,
1
個,2 個,・・・,10 個,11 個以上の
12階級に分け る.そして,階級
iにおける実分布のセルの度数を
,モデル分布のセルの度数を
modelとする とき,以下の式によって得られる評価値 によりモデ ル分布を評価する.
) (i
real (i)
S
( ) ( )
( )
∑=
−
= 12
1
2
12 1
i
i model i
real S
これにより,各階級で実分布とモデル分布のセルの 度数は平均してどの程度の“ずれ”が生じているのか が分かる.すなわち,
Sが小さい程,実分布とモデル 分布のずれも小さいことが分かる.
4.3 実験結果
4.1
節の設定に基づき,モデル分布を構築し,その 結果を示す.そして,結果を考察する.
ポテンシャルの影響力
立地を決定する各要因がモデル分布に対してどの 程度影響を及ぼしているか考察するために,各ポテン シャルの影響力を数値化する.まず,カーネルの体積 の総和を求める.そして,総和をカーネルの総数で割 り,人口は
α,道路は
β,店舗は
γをかける.これ により,1 人あたりの影響力 ,道路
1mあたりの 影響力 ,
1店舗あたりの影響力 が得られる.
Ip
Ir Ic
4/4 小池
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立川・八王子における立地特性
立川・八王子における実験結果を示す.評価値
Sが 最も小さいときのパラメータ
α,
β,
γを表
1に,
ポテンシャルの影響力 , , を表
2に示す.図
3(a)に立川・八王子の実分布,図 3(b)にモデル
分布を示す.
Ip Ir Ic
表
1 立川・八王子における各要因のパラメータα
(人口)
β(道路)
γ(店舗)
4.0 635.0 7749.0
表
2 立川・八王子におけるポテンシャルの影響力Ip
(人口)
Ir(道路)
Ic(店舗)
4.0 12.7 7,749.0
モデル分布の評価値 は
8.2である.図
3(a)と(b)から分布全体を見ると,ほぼ類似していること が分かる.八王子での凝集は,実分布とモデル分布と もに見られる.ただし,実分布に比べてモデル分布の 凝集は広域に分布している.また,モデル分布には立 川での凝集が見られない.実分布における八王子と立 川の凝集の中心には,八王子駅と立川駅が存在するこ とから駅の影響が考えられ
S
る.
表
2を見ると,まず,道路の影響力は人口の影響力 の約
3.2倍に相当する.このことから,コンビニは道 路沿いに立地しやすいことが分かる.次に,
1店舗あ たりの影響力は,約
1,937人分の影響力に相当する.
これは,店舗が1店建つと,他の店舗はその商圏に
1,937
人以上が住居していなければ立地しにくいこと
を示す.以上のことから,立川・八王子におけるコン ビニの立地特性は,道路沿いに立地しやすく,店舗が 立地すると,
1,937人以上存在していなければ立地し にくいことが分かる.
5 まとめ
本研究では,カーネルを用いたポテンシャル値によ って,コンビニの立地を定める立地モデルを提案した.
立地モデルによってモデル分布を構築し,実分布との 類似性を検証し,地域における立地特性の考察した.
立川
八王子
(
a)実分布
立川
八王子
(
b)モデル分布
図
3 立川・八王子の分布立川・八王子の立地特性は,道路沿いに立地しやす く,店舗が立地すると,その立地に
1,937人以上存在 していなければ,他の店舗は立地しないことが分かっ た.今後は,分布を成す要因を新たに考慮することや,
パラメータ
α,
β,
γの推定手法を提案すること等 が挙げられる.
参考文献
[1] 伊理
正夫(監修) ,腰塚 武志(編集)他,計算 幾何学と地理情報システム【第
2版】 ,共立出版,
東京,1983.
[2] 木下
安司,コンビニエンスストアの知識,日本
経済新聞社,東京,2002.
[3] 下原