【原著・臨床】
血液透析患者における pazufloxacin mesilate 反復投与時の体内動態
古 久 保 拓 白鷺病院薬剤科*
(平成
19
年12
月17
日受付・平成20
年3
月19
日受理)ニューキノロン系合成抗菌薬の
pazufloxacin mesilate
(PZFX)の腎不全患者における体内動態に関す る検討は十分でない。今回,のう胞腎感染症と診断された4
名(年齢65.3±9.7
歳,体重49.0±4.1 kg,男 1
名)の血液透析(HD)患者を対象として,PZFX 300 mgを週3
回HD
後に投与し,体内動態を評価し た。初回投与時のPZFX
のCmax
は10.47±2.19 µ g! mL,AUC
(0―∞)は421±175 µ g・h! mL
であり,腎機 能正常者に比べ消失の著しい遅延が認められた。一方で,3
回目投与時の投与終了2
時間後の血漿濃度は11.12±2.30 µ g! mL
であり,この値は健常成人に常用量を反復投与した成績と同レベルであり,消失の遅延から予測される程度には上昇していなかった。HD除去率は
4
時間のHD
によりみかけ上58.7±7.7%
であったが,HD終了
1
時間後までに認められた平均13.5% のリバウンド現象を考慮すると 45.2±5.9%
と算出された。全例において治療期間内に血漿濃度依存的な毒性は認めなかった。以上より,
HD
患者に おけるPZFX
の消失は腎機能正常患者に比べ大幅に遅延しているものの,HD除去性が高いために血漿 濃度の蓄積性は小さいと考えられ,毎HD
後の投与が合理的であると考えられた。Key words: pazufloxacin,hemodialysis,pharmacokinetics,renal failure
ニューキノロン系合成抗菌薬である
pazufloxacin mesilate
(PZFX)は,腎機能正常者の尿中未変化体排泄率が投与
24
時間以内に約90% と報告
1,2)されている腎排泄型薬物である ため,腎機能に応じた投与法の設定が必要とされている。これ までに血液透析(hemodialysis:HD)患者におけるPZFX
の体内動態は,石田ら3)が3
例における単回投与成績を報告し ており,透析患者には消失の遅延を考慮して投与間隔の延長 が必要であると述べている。それらの報告をもとに,現在のPZFX
添付文書には,透析患者では3
日に1
回300 mg
投与が 示されているが,症例数が少なく,あくまでも目安としての記 載である。また,維持HD
は通常週3
回行われるため,この添 付文書の記載はHD
実施タイミングを考慮していない。われ われは,PZFXのHD
除去性が高い3)ことを考慮して,維持HD
患者にPZFX
を投与する際には週3
回HD
後の投与が合 理的であると推測した。そこで,維持HD
患者において,PZFX
の週3
回HD
後の繰り返し投与時の体内動態を評価す ることを目的として検討を行った。I. 対 象 と 方 法 1.対象および投与方法
対象症例は,2005年
6
月から2007
年3
月までに当院 に入院した維持HD
施行中患者のうち,他の抗菌薬で十 分な効果が得られずPZFX
を投与したのう胞腎感染患 者とした。PZFX(パシルⓇ点滴静注液:富山化学工業株 式会社)は300 mg! 100 mL
を30
分かけて静脈内に点滴投与した。対象患者
4
名中2
名はHD
終了後に初回投与 し,2
名はHD
非実施日に初回投与を行った。2
回目以降 の投与は各HD
終了後に実施した。2.研究の倫理性
当研究計画は,
2005
年5
月に施設内倫理委員会にて審 査・承認された。対象患者には文書にて研究の目的・方 法等について説明を行い自由意思による同意を得た。血 漿濃度測定は富山化学工業株式会社および株式会社JCL
バイオアッセイに委託し,研究開始に先立った2005
年6
月に,両社との間に研究計画および患者情報保護に関す る契約書を交わし,適切な倫理基準に従って研究は遂行 された。3.採血および測定方法
血漿濃度測定のための採血は,初回投与終了直後(C
1),初回投与終了後 2
時間(C2),次回HD
前(C3),HD 後(C4),3回目投与 終 了 後2
時 間(C5),次 回HD
前(C6),HD後(C7),HD終了後
1
時間(C8)の計8
点と した(Fig. 1)。EDTA・2Na
入りの採血管に2 mL
を採血 し,遠心後に血漿分離し,測定まで−40˚Cにて凍結保存 した。なお,HD
前およびHD
後の採血はHD
回路の動脈 側より行った。血漿0.3 mL
に50 mM NaOH
溶液10 µ L
およびメタノール0.3 mL
を添加し,30秒の攪拌後,15,000 rpm
で10
分間遠心分離し,上清50 µ L
をHPLC
による測定に用いた。*大阪府大阪市東住吉区杭全
7―11―23
Fi g . 1 . PZFX dos i ng a nd bl ood s a mpl i ng pr ot oc ol .
Infusion time: 30 min (after each HD) After HD
After HD
Before HD Before HD
Cmax (just after completing infusion)
3rd 2nd
1st Dosing
1 h after HD 2 h after completing infusion
C8 C7
C6 C5
C4 C3 C2 C1 Blood sampling
(point)
HD HD
HD Hemodialysis
2 h after completing infusion
Ta bl e 1 . Pa t i e nt pr of i l e s
he modi a l y s i s pr oc e dur e PZFX
dos e ( mg / kg ) RRT
dur a t i on ( mont h) We i g ht
( kg ) Ge nde r
Ag e ( y e a r )
Ca s e Di a l y z e r
Q
D( mL/ mi n) Q
B( mL/ mi n) Ti me
( h) Ar e a
( m
2) Ma t e r i a l
1 . 5 modi f i e d
c e l l ul os e 5 0 0
2 2 0 4
6 . 5 9 8
4 6 . 3 F
7 3 1
1 . 5 pol y s ul f one 5 0 0
1 8 0 4
6 . 7 3 5 4
4 5 . 0 F
7 3 2
1 . 3 pol y s ul f one 5 0 0
1 8 0 4
5 . 9 4 7
5 0 . 5 F
6 2 3
1 . 5 modi f i e d
c e l l ul os e 5 0 0
2 0 0 4
5 . 6 1 7 0
5 4 . 0 M
5 3 4
RRT: r e na l r e pl a c e me nt t he r a py QB: bl ood f l ow QD: di a l y s a t e f l ow
4.体内動態の評価
初回投与終了時の
Cmax(C1)は実測値を用い,みか
けの分布容積(V1)は体重あたりの投与量をC1
で除して 求めた。体内動態解析はモーメ ン ト 法 に よ り 行 い,AUC
(0―∞)算出はβ
相の2
点の外挿により,全身クリアランス(total clearance:CL)は投与量を
AUC
で除して算 出した。平均滞留時間(mean residence time:MRT)は1
次モーメント下面積(area under the moment curve:AUMC)を AUC
で除して求め,定常状態の分布容積(volume of distribution at steady state:Vss)は
MRT×
CL
にて算出した。また,β
相の実測消失半減期の評価 は,投与終了2
時間後の血漿濃度がβ
相にあるものとみ なして次回HD
前の血漿濃度との間で1
次速度式により 算出した。5.HD
除去性の検討透析性の評価は
3
回目投与後のHD
施行時に,透析回 路の動脈側より採血して行った。みかけのHD
除去率は,HD
前後の血漿濃度低下率で示し(C6―C7),HD
後に発生 する組織中から血中へのPZFX
の再分布(リバウンド現 象4〜6))を評価するために,HD終了から1
時間経過後に血漿濃度を測定し,HD前からの差を
HD
除去率と定義 した(C6―C8)。なお,HD除去率の算出時には,HDを4
時間,透析液流量500 mL! min
の条件で実施した。II. 結
果1.患者背景および治療効果・安全性
対象となった
4
名の患者背景をTable 1
に示す。対象 患者の年齢は65.3±9.7
歳であった。治療効果はPZFX 300 mg
をHD
後に3〜7
回投与により,全例において炎 症所見の低下を認めた。また,症例1
において,PZFX投与中に
Clostridium difficile
腸炎の発症を認めたが,中枢神経系の副作用は発現しなかった。
2.PZFX
の体内動態PZFX 300 mg
(6.2±0.5 mg!kg)投与による Cmax(C 1)は 10.47
±2.19µ g ! mL,V1
は0.61
±0.11 L! kg
,AUC
(0−∞)は421±175 µ g・ h! mL
で あ っ た(Table 2,3)。投与終了後 2
時間(C2)値は8.31±1.27 µ g! mL
であ り,次回HD
前(C3)までのT
1!2(C2―C3)は31.9±10.7
h
であった。また,3回目投与時の投与終了後2
時間(C5)値 は 11.12±2.30 µ g! mL
で あ り,C2値 に 比 べ1.33
倍高値であった。投与終了後2
時間(C5)値と次回HD
Ta bl e 2 . PZFX pl a s ma c onc e nt r a t i ons i n he modi a l y s i s pa t i e nt s 3 r d 1 s t
Dos i ng
1 h a f t e r HD Pos t - HD
Pr e - HD 2 h a f t e r
c ompl e t i ng i nf us i on Pos t - HD
Pr e - HD 2 h a f t e r
c ompl e t i ng i nf us i on Cma x
C8 C7
C6 C5
C4 C3
C2 C1
Ca s e
1 4 4 . 7 1 4 3 . 6
1 3 9 . 6 7 5 . 3
2 2 . 3 1 9 . 5
2 . 5 0 . 5
t i me 1
3 . 6 6 1 . 7 7
5 . 8 6 1 3 . 3 1
5 . 2 3 6 . 3 3
9 . 4 9 1 1 . 0 2
Cp
1 4 2 . 4 1 4 1 . 4
1 3 7 . 4 7 3 . 5
2 0 . 8 1 7 . 7
2 . 4 0 . 5
t i me 2
2 . 6 3 2 . 3 7
4 . 9 5 1 0 . 4 1
2 . 3 9 5 . 2 6
7 . 5 5 1 0 . 0 7
Cp
1 6 6 . 2 1 6 5 . 0
1 6 1 . 0 9 6 . 7
4 4 . 7 4 1 . 0
2 . 5 0 . 5
t i me 3
2 . 4 0 2 . 1 6
4 . 9 7 1 2 . 5 6
2 . 5 7 5 . 2 6
9 . 2 8 1 3 . 0 4
Cp
1 6 8 . 6 1 6 7 . 5
1 6 3 . 5 9 9 . 6
4 7 . 3 4 3 . 2
2 . 6 0 . 5
t i me 4
1 . 3 1 1 . 0 3
2 . 3 6 8 . 2 0
0 . 7 8 1 . 9 3
6 . 9 2 7 . 7 6
Cp
2 . 5 0 1 . 8 3
4 . 5 4 1 1 . 1 2
2 . 7 4 4 . 7 0
8 . 3 1 1 0 . 4 7
me a n Cp
0 . 9 6 0 . 5 9
1 . 5 1 2 . 3 0
1 . 8 4 1 . 9 1
1 . 2 7 2 . 1 9
S . D.
t i me : t i me a f t e r 1 s t dos a g e ( h) Cp: pl a s ma c onc e nt r a t i on ( μ g / mL)
Ta bl e 3 . PZFX pha r ma c oki ne t i c pa r a me t e r s i n he modi a l y s i s pa t i e nt s 3 r d 1 s t
Dos i ng
He modi a l y s i s r e mov a l R ( C5 / C2 )
T
1/2( C5 ― C6 ) ( h) non c ompa r t me nt a l a na l y s i s
T
1/2( C2 ― C3 ) ( h) V1
( L/ kg ) C6 ― C8
( %) C6 ― C7
( %) Vs s
( L/ kg ) MRT
( h) CL ( L/ h/ kg ) AUC ( 0 ―∞ )
( μ g ・ h/ mL) Ca s e
3 7 . 5 6 9 . 8
1 . 4 0 5 4 . 2
0 . 6 4 4 1 . 5 0 . 0 1 5 4 4 2 3
2 9 . 1 0 . 5 9
1
4 6 . 9 5 2 . 1
1 . 3 8 5 9 . 8
0 . 8 3 4 1 . 8 0 . 0 1 9 8 3 3 9
2 9 . 4 0 . 6 6
2
5 1 . 7 5 6 . 5
1 . 3 5 4 8 . 1
0 . 5 8 6 5 . 6 0 . 0 0 8 9 6 6 2
4 7 . 2 0 . 4 6
3
4 4 . 5 5 6 . 4
1 . 1 8 3 5 . 5
0 . 5 6 2 5 . 9 0 . 0 2 1 7 2 5 8
2 2 . 0 0 . 7 2
4
4 5 . 2 5 8 . 7
1 . 3 3 4 9 . 4
0 . 6 5 4 3 . 7 0 . 0 1 6 5 4 2 1
3 1 . 9 0 . 6 1
me a n
5 . 9 7 . 7
0 . 1 0 1 0 . 4
0 . 1 2 1 6 . 4 0 . 0 0 5 7 1 7 5
1 0 . 7 0 . 1 1
S . D.
V1 ( a ppa r e nt ) : Dos e pe r body we i g ht / Cma x R: Ac c umul a t i on r a t i o of C5 v e r s us C2
前(C6)値 か ら 算 出 し た
T
1!2(C5―C6)は49.4±10.4 h
であった。3.HD
除去性HD
除去性は,ほぼ定常状態と見なして問題ないと考 えられる3
回目投与から64.1±0.2
時間経過した週初め のHD
実施時に評価した。PZFXの血漿濃度は4
時間のHD
終了直後(C7)にHD
前に比べ58.7±7.7% 低下した
が,HD終了1
時間後(C8)までにリバウンド現象を13.5±12.9% 認め,補正後の HD
除去率は45.2±5.9% で
あった(Table 3)。III. 考
察PZFX
は腎排泄型薬物であるため,その体内動態は腎 機能障害による影響を受けやすく,腎不全患者において は血漿濃度が過度に上昇しないために,適切な用量を設 定する必要がある。PZFX
の添付文書には,透析患者に対 する投与法の目安として3
日に1
回300 mg
が示されて いるが,HD
実施のタイミングを考慮していない。今回は 週3
回HD
後投与時の体内動態を検討することで,その 投与法の妥当性を評価した。健 常 成 人 に
PZFX 300 mg
を 単 回 投 与 し た 際 のCmax,T
1!2お よ びAUC
(0―∞)は そ れ ぞ れ8.99±0.59 µ g!
mL,1.65±0.27 h,13.33±2.45 µ g・ h! mL
と 報 告1,7)さ れているが,今回検討したHD
患者におけるCmax
(C1)はそれと比較して
1.2
倍高値であり,健常成人に500 mg
投与した際(11.03±2.39µ g! mL)
1,7)と同レベルの血漿濃 度であった。この原因として,高齢者では分布容積(vol-ume of distribution:Vd)が小さくなることに加え,腎機
能の廃絶したHD
患者では点滴中のPZFX
の消失がご くわずかであることが影響していると考えられた。事実,高齢者では
PZFX
のVd
が小さくなることが報告8)され て い る。ま た,石 田 ら が 検 討3)し たHD
患 者3
症 例 のCmax
は平均13.03 µ g ! mL
(12.5〜13.3µ g ! mL)であった
のに比べ,今回のCmax
はやや低値であったが,体重あ たりの投与量をCmax
で除したみかけのVd
は同程度で あり,体格の違いを反映していると思われた。HD
患者におけるT
1!(31.9±10.7 h)は,腎機能正常者2に比べ約
20
倍に延長し,AUC(0―∞)は421±175 µ g・ h!
mL
と高値を示した。これは繰り返し投与時には投与間隔の延長が必要であることを示している。一方で,
PZFX
の血清蛋白結合率は30.7±8.9% と低く
7),Vd
も健常成人 に対する500 mg
投与時で0.87±0.13 L! kg
と比較的小 さいため8),HDにより除去されやすい薬物と考えられ る9)。HD前とHD
終了1
時間後におけ るPZFX
のHD
除去率は45.2±5.9% であり,石田らの報告
3)より算出し た除去率57.7±4.4% に比べ,12.5% 低値であった。この
相違は,HD後に組織中から血管内への薬物の再分布過 程(リバウンド現象4〜6))が存在し,HD終了直後の血漿 濃度を用いた場合にはHD
除去率が高く計算されること が原因と考えられる。今回,HD終了直後からHD
終了1
時間後までに平均13.5% の血漿濃度上昇が認められて
いるが,この変化は,石田らの報告値3)との差に近似して おり,PZFXにはリバウンド現象が存在することを示唆 している。HD
除去に関する他の要因として,HD
施行時 間,血流量,透析膜素材,膜面積などが考えられるが,今回は検討していない。しかしながら,
HD
除去性が著し く低値や高値となった症例は認められなかったため,PZFX
の血漿濃度は通常の維持HD
により40〜50% 低
下すると考えてよいと思われる。HD
患者にPZFX
を投与する際には,繰り返し投与時 の蓄積性がどの程度存在するのかを評価することが重要 と考えられた。例えば,非HD
時のT
1!2を約2
日と仮定 し,毎HD
後の投与を設定した場合においても,4
時間のHD
により45% の血漿濃度低下が得られるため,T
1!2の2
倍の投与間隔と概算すれば,蓄積率(初回濃度に対する 定常状態濃度の比)は1.33
と算出される。今回得られた3
回目投与終了2
時間後のPZFX
血漿濃度(C5)は,初 回投与時(C2)に比べ平均1.3
倍高値となっており,推定 される蓄積率に近似していた。このことは,HD
患者に対 して週3
回HD
後の投与を設定しても,定常状態では初 回血漿濃度の1.3
倍程度にしか上昇しないことを示して おり,健常成人に対する最高用量投与時に得られる血漿 濃度を大きく上回るような上昇は,定期的にHD
を施行 している限り起こりえないと推測される。一方で,非HD
時の消失速度の個人差はCmax
よりもHD
前の血漿濃 度(トラフ濃度)に大きな影響を及ぼすため,Cmaxの過 剰上昇というよりはむしろ比較的高い濃度が長時間持続 することによるAUC
の増大がHD
患者において認めら れる体内動態の特徴であると考えられ,この点が有効性 だけでなく有害事象の発現に関連しているのかを評価す る必要があると思われる。腎機能の廃絶した
HD
患者においてもPZFX
の消失 の個人差は比較的大きかったが,その原因は現在のとこ ろ明らかでない。石田らが報告3)したHD
患者の3
症例と 比較すると,今回のデータでは消失速度の遅延およびAUC
の増大傾向が認められたが,今回の検討には70
歳 以上の高齢者2
症例が含まれており,加齢による非腎ク リアランスの低下が存在する可能性が考えられる。しかしながら,その評価には肝機能,分布容積,その他の患 者背景を含めた解析が必要であり,消失における個人差 の原因解明は,透析患者だけでなく腎機能の低下した患 者に
PZFX
を適用する際にも有用な情報になると思わ れる。以 上,HD患 者 に 対 し て
PZFX 300 mg
を 週3
回HD
後に繰り返し投与しても,HDによる除去率が高いため に蓄積性は低いことが示された。よって,現在PZFX
添付文書に示されている3
日に1
回300 mg
投与より も,HDの実施を考慮したHD
後の投与法は合理的であ ると考えられた。ただし,PZFX
の消失は健常成人に比べ 著しく延長しており,かつ比較的大きな個人差が存在し,繰り返し投与時の血漿濃度は腎機能正常患者に比べ高値 に推移するため,有効性や安全性に関する検討を行う必 要がある。
謝 辞
本研究は仁真会白鷺病院診療部および薬剤科にて行わ れ,診療部の河野かおり先生,坪庭直樹先生,大村崇先 生,長末京子先生,田部茂先生,前川きよし先生,山川 智之先生,薬剤科の松永千春先生,根来早紀子先生,和 泉智先生に感謝いたします。また,協力いただいた大正 富山医薬品株式会社ならびに富山化学工業株式会社に深 謝いたします。
文 献
1) 中島光好,梅村和夫,小菅和仁,植松俊彦:Pazuflox-
acin
注射薬の臨床第I
相試験。日本化学療法学会雑誌1999; 47 (S-1): 141-75
2) 早川大善,藤巻久美,清水祐子,田井 賢,今泉弘之,
中島良文,他:Pazufloxacin注射薬の動物およびヒト における代謝。日本化学療法学会雑誌
1999; 47 (S-1):
81-7
3) 石田裕一郎,桜井 磐,岡本日出数,高橋孝行,森田 雅之,松本文夫:腎機能低下患者における
pazuflox- acin
注射薬の体内動態。日本化学療法学会雑誌2000;
48: 645-53
4)
Keller F, Offermann G, Scholle J: Kinetics of the re- distribution phenomenon after extracorporeal elimi- nation. Int J Artif Organs 1984; 7: 181-8
5)
Halstenson C E, Berkseth R O, Mann H J, Matzke G R: Aminoglycoside redistribution phenomenon after hemodialysis: netilmicin and tobramycin. Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol 1987; 25: 50-5
6)
De Bock V, Verbeelen D, Maes V, Sennesael J: Phar- macokinetics of vancomycin in patients undergoing haemodialysis and haemofiltration. Nephrol Dial Transplant 1989; 4: 635-9
7) 大正富山医薬品株式会社:パシル点滴静注液 イン タビューフォーム
2007
年,第10
版8) 高 木 健 三,矢 島 洋 一,吉 澤 久 雄:高 齢 者 に お け る
pazufloxacin
注射薬の体内動態。日本化学療法学会雑誌
2000; 48: 633-44
9) 平田純生,和泉 智,古久保拓,太田美由希,藤田み のり,山川智之:血液透析による薬物除去率に影響す る要因。日本透析医学会雑誌