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平成 29 年度 九州地区におけるスモン患者の現状調査

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A. 研究目的

平成 29 年度の九州地区におけるスモン患者の現状 を、 「スモン現状調査個人票」 と 「ADL および介護に 関する現状調査」 を用いて検討した。

B. 研究方法

スモンに関する調査研究斑の 「スモン現状調査個人 票」 と 「ADL および介護に関する現状調査」 を用い て、 九州地区各県毎 (福岡県は更に 3 地区に分割) に 検診を実施した。 検診は九州地区研究斑の各メンバー の所蔵する医療施設や、 スモン患者の生活する自宅や 施設で行われた。 H29 年度の検診結果を、 H19 年度及 び H24 年 度 の 検 診 結 果 と 比 較 検 討 し た 。 Body mass index (以下 BMI) は厚生労働省の国民健康栄養調査 データを対照に比較した。

C. 研究結果

1 . 九州地区のスモン患者 (平成 29 年 4 月 1 日健康 管理手当等支払い対象者) 数は 102 名であった。 こ れは平成 28 年度と比較し 13 名少なかった。 このう ち、 29 年度の検診を受けた患者数は 49 名 (男性 14 名、 女性 35 名、 前年度比計 17 名減) であった。 検 診受診率は 48.0% (前年度 57.4%) であり、 前年度 に比し 9.4 ポイントの減少であった (図 1)。 検診者 の平均年齢 81.0 歳 (63 歳〜98 歳) で、 前年度の平 均年齢 80.7 歳から僅かに上昇した (図 2)。

2 . 身体状況:

「視力」:全盲 0 名 0%、 明暗のみ〜指数弁 3 名 6.3

%、 新聞の大見出しが読める〜新聞の細かい字が読 みにくい 43 名 89.6%であった。 正常は 2 名 4.2%で

― 78 ―

平成 29 年度 九州地区におけるスモン患者の現状調査

笹ケ迫直一 (国立病院機構大牟田病院神経内科) 佐伯 覚 (産業医科大学リハビリテーション医学) 吉良 潤一 (九州大学大学院医学研究院神経内科) 原 英夫 (佐賀大学医学部内科学講座神経内科)

松尾 秀徳 (国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科) 山下 賢 (熊本大学大学院生命科学研究部神経内科) 軸丸 美香 (大分大学医学部神経内科)

杉本精一郎 (国立病院機構宮崎東病院神経内科)

高嶋 博 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科)

研究要旨

九州地区のスモン患者の H29 検診受診率は 102 名の対象者の内、 49 名 (48%) であった。

検診受診者の平均年齢は 81.0 歳で年々上昇して来ている。 検診時の臨床的重症度では極めて 重度および重度に相当する人数は 15 名 (31.2%) で、 H19 年、 H24 年と比べて割合が増加し ていた。 原因をスモン単独とするケースは 4 名で、 残り 11 名は併発症合併か併発症そのも のによるとされていた。 併発症は脳血管障害、 認知症、 パーキンソン病関連疾患、 変形性関 節症や脊椎疾患などが大半であった。 介護保険申請率も 63.3%へと増加していた。 栄養状態 の指標である BMI を検討すると、 やせとされる BMI 18.5 未満の検診受診者が国民健康栄養 調査データと比べると多かった。

(2)

あった。

「歩行」:不能 7 名 14.3%、 車椅子〜杖使用 26 名 53.1%。 独歩可能だが不安定 13 名 26.5%、 ふつう 3 名 6.1%であった。

「 外 出 」 : 不 能 7 名 14.3% 、 介 助 ・ 車 椅 子 20 名 40.8%、 一人で可 22 名 44.9%であった。

「異常知覚」:高度〜中等度 25 名 52.1%、 軽度 19 名 39.6%、 ほとんどなし 4 名 8.3%であった。

「胃腸症状」:ひどい〜軽いが気になる 26 名 55.3

%、 気にしない 11 名 23.4%、 なし 10 名 21.3%であっ た。

「 精 神 症 候 」 : あ り が 21 名 43.8% 、 な し が 27 名 56.3%であった。

3 . 診察時の障害度分布:極めて重度 4 (8.3%)、 重 度 11 名 (22.9%)、 中 等 度 22 名 (45.8%)、 軽 度 9 名 (18.8%) 、 極 め て 軽 度 2 名 (4.2%) で あ っ た (図 3)。 重 度 以 上 の 15 名 の 内 、 障 害 要 因 を ス モ ン とした症例は 4 名、 スモンに併発症が関連した症例 は 10 名、 加齢が関連した症例が 1 名であった。 併

発症は脳血管障害後遺症 3 名、 脊柱管狭窄症・圧迫 骨折などの脊椎疾患 3 名、 変形性関節症などの関節 疾患 2 名、 認知症 2 名、 パーキンソン病関連疾患 2 名、 潰瘍性大腸炎 2 名などであった (重複有り)。

中等度の 23 名ではスモンが主要因の症例は 4 名、

併発症が関連する症例は 19 名であった。 併発症は 脊椎疾患 10 名、 認知症 3 名、 関節疾患 3 名、 胃が んなどの悪性腫瘍 3 名であった。 H19 年度、 H24 年 度と比べて重度以上の割合が増加している。

4 . 日常生活動作 Barthel インデックス:100 点 8 名 16.3% 、 99〜80 点 21 名 42.9% 、 79〜60 点 8 名 16.3

%、 59〜40 点 6 名 12.2%、 39〜20 点 3 名 6.1%、 20 点未満 3 名 6.1%の分布であった (図 4)。 H19 年、

H24 年と比べて Barthel インデックスの低下してい

― 79 ―

68 70 72 74 76 78 80 82

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図 2 受診者平均年齢 (歳)

4.2 6.3 6.3

18.8 23.8 23.8

45.8 47.6 48.8

22.9 15.9 15.0

8.3 6.3 6.3

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

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図 3 診察時の障害度

16.3 33.8 32.9

42.9 30.8

34.1

16.3 13.8

14.6

12.2 3.1

7.3

6.1 4.6

3.7

6.1 13.8

7.3

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図 4 Barthel index

269 260

250 238

227 211

196 185 179

170 156 149

137 123

115 102 103 96 100

92 90 82

74 73 70 75

65 65 61 64 66

38.3 49 36.9

40.0 38.7

39.6 38.9

37.8 39.539.1

44.1 41.7

43.644.5 52.0

57.4

48.0

32.0 34.0 36.0 38.0 40.0 42.0 44.0 46.0 48.0 50.0 52.0 54.0 56.0 58.0 60.0 62.0

0 50 100 150 200 250 300

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16ᐕᐲ 17ᐕᐲ

18ᐕᐲ 19ᐕᐲ

20ᐕᐲ 21ᐕᐲ

22ᐕᐲ 23ᐕᐲ

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26ᐕᐲ 27ᐕᐲ

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図 1 患者数、 受診者数、 受診率

21.7 18.0

20.5

23.9 31.1 34.6

4.3 13.1

6.4

32.6 23.0 24.4

6.5 6.6

7.7

10.9 8.2

6.4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

29ᐕᐲ 24ᐕᐲ 19ᐕᐲ

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図 5 一日の生活 (動き)

(3)

るスモン患者数の割合が増加している。

5 . 一日の生活 (動き):終日臥床 5 名 10.9%、 寝具 の上で身を起こす 3 名 6.5%、 殆ど座位 15 名 32.6

%、 屋内移動のみ 2 名 4.3%、 時々外出 11 名 23.9

%、 殆ど毎日外出 10 名 21.7%であった (図 5)。

6 . 最近 5 年間の療養状況:長期入院・入所 7 名 15.3

%、 時々入院 3 名 6.7%、 在宅 35 名 37.8%であっ た。

7 . 日常生活での介護では、 毎日介護 18 名、 必要な 時に介護 16 名、 必要だが介護者がいない 2 名、 介 護の必要なし 13 名であった (図 6)。 介護保険制度 利用の申請は、 申請した 31 名、 していない 27 名、

不明 1 名であった。 介護を必要とする割合は 73.5%

であり、 H19 年度の 61%、 H24 年度の 61.5%と比べ て増えていて、 介護保険申請率も 63.3%へと増加し ている (図 7)。

介護保険申請した 31 名の要介護度の内訳は、 自 立:1 名、 要支援 1:5 名、 要支援 2:8 名、 要介護 1:4 名、 要介護 2:6 名、 要介護 3:2 名、 要介護 4:

3 名、 要介護 5:1 名であった (図 8)。 H19 年に比

べて H24 年は要介護 4、 5 の重度者の割合が多かっ たが、 H29 年度は要支援 1〜要介護 1 の軽度者の割 合が増え、 要介護 4、 5 の重度者の割合が減ってい た。

8 . 生活の満足度では満足 17 名 (36.2%)、 なんとも 言 え な い 16 名 (34%)、 不 満 足 14 名 (29.8%) で

― 80 ―

36.2 45.3

46.3

34.0 34.4 30.5

29.8 20.3 23.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

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図 9 生活の満足度

63.3 46.2 41.5

34.7 53.8 58.5

2.0 0.0 0.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

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図 7 介護保険申請率

26.5 38.5 39.0

4.1 1.5

7.3

32.7 30.8

31.7

36.7 29.2

22.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

29ᐕᐲ 24ᐕᐲ 19ᐕᐲ

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図 6 日常生活での介護

3.3 0.0 0.0

16.7 13.3 12.1

26.7 16.7

24.2

13.3 13.3

21.2

20.0 20.0

18.2

6.7 6.7

15.2

10.0 16.7

3.0

3.3 10.0

3.0

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0.0 3.3 3.0

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図 8 要介護度

0 5 10 15 20 25 30

55 65 75 85 95 105

BMI

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a

0 5 10 15 20 25 30

55 60 65 70 75 80 85 90 95

BMI

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図 10 BMI b

(4)

H19 年度、 H24 年度と比べて不満足の割合が増えて いた (図 9)。

9 . 65 歳 以 上 の 受 診 者 で BMI 18.5 未 満 の 割 合 は 男 性 31.3%、 女性 14.8%であった (図 10 a, b)。 現在 参照できる最新の 2015 年厚生労働省国民健康栄養 調査のデータでは 65 歳以上の対象者で BMI 18.5 未 満の割合は男性 4.6%、 女性 9.5%であり、 年齢調整 して比較してもスモン患者はやせの割合が多かった。

H24 年度の 65 歳以上の受診者で BMI 18.5 未満の割 合は男性 16%、 女性 21%、 H19 年度ではそれぞれ 15.2%、 17.5%であった。

D, E. 結論・考察

九 州 地 区 の H29 年 度 の ス モ ン 患 者 数 は 102 名 で 前 年度と比べて 13 名の減少であった。 検診受診者は 49 名で、 H19 年度の 82 名、 H24 年度の 65 名と比べ、 年 ごとに若干の増減はあるが長期的に減少している。

診察時の障害度は、 重度、 極めて重度の割合が増加 していた。 障害の原因がスモン単独の場合よりも併発 症の合併や併発症単独による場合の方が多かった。 併 発症は脳血管障害、 認知症、 パーキンソン病関連疾患、

変形性関節症や脊椎疾患などが大半であった。 高齢化 に伴い、 様々な疾患の合併がスモン患者の重症度に影 響している。

介護保険申請率は 63.3%であり、 H19 年度、 H24 年 度と比べて増加していた。 一方、 要介護度は軽度が増 え、 重度が減少していた。 重度者の利用減少と比較的 介護必要度の低い方の申請が増えたためと考えられる。

BMI の 検 討 で は 国 民 健 康 栄 養 調 査 の デ ー タ と 比 較 し て 、 や せ と さ れ る BMI18.5 未 満 の 検 診 受 診 者 が 多 かった。 国民健康栄養調査は世帯調査であり主に在宅 生活出来ている住民が対象で、 疾病のため長期入院・

入所している場合は調査対象となりにくいと思われる。

スモン患者のやせと診察時の重症度、 消化器症状や併 発症等との関連を検討する必要がある。

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