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「農学国際協力」の視座

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J Intl Cooper Agric Dev 2020 1 Journal of

International Cooperation for Agricultural Development

J Intl Cooper Agric Dev 2020; 18: 1

 巻頭言 

「農学国際協力」の視座

小山 修

国立研究開発法人国際農林水産業研究センター理事

最近つくづく感じるのは人類社会の変化の速度である。生物学的には縄文・弥生時代の先祖とさほど 違いはないのに、デジタル革命だのサイバー空間だのに対応した技術開発や社会制度が求められる。地 球規模の知識や思考が必要になったり、極めて短期間で研究課題が入れ替わったりする。変化は加速度 的であり、農学国際協力とて例外ではあり得ない。日本では生き残りをかけてスマート農業が推進され、

海外の食料市場の開拓にも積極的である。一方では、異常気象の頻発など気候変動の脅威が身近なもの となり、プラネットバウンダリーズの議論に見られるような地球システムの限界が認識され、長期に持 続可能な社会の構築に向けた農学研究の重要性が日々強調されている。

農学は身近な生活必需品である食料の生産・流通・消費を対象とする実学であるため、もともと学問 の地域性や独立性がある程度維持されてきたが、国や経済、学問や文化のボーダーレス化が進むなか で、国際的な連携や異分野間の連携が農学の分野でも必然・不可欠なものとなりつつある。もはや一国・

一分野の研究者では解決できない複雑な問題が山積している。しかし、国際共著論文の割合などの「エ ビデンス」でみると日本の国際連携は不十分であり、医学、工学等との異分野連携もどんどん進めてい く必要がある。このような中で農学分野の国際協力はどこを目指していくのか。日本の農学研究者は世 界にどう貢献できるのか。国際共同研究をミッションとして50周年を迎える国際農研(JIRCAS)に席 を置く身の私は、日々そのようなことに小さな頭を悩ませている。

私の見るところ、国際社会における日本の立ち位置は、かつてのお金持ちの工業製品の輸出国と いうイメージから、高齢化など多くの先進国型課題を抱える不思議な文化を持つ極東の島国というイ メージになりつつある。国際協力も経済的・地政学的条件の変化に伴って、その物量も、内容も、態 様も変化して行かざるを得ない。では、どこに日本の農学の特色を見いだせるであろうか。私の考え るキーワードは比較を超えた「多様性」である。日本の食文化も農林水産業も、どこか世界標準とは 一線を画している。私は、その違いこそが、世界貢献につながるのではないかと思う。論文数は他国 より少ないかもしれないが、それだけで研究の質が低いということにはならない。コツコツと続けた ガラパゴス的研究が人類の将来を左右するイノベーションの起点にならないとも限らない。異文化と の違いを柔軟に吸収し融合することも得意分野ではないだろうか。かつて農林10号が世界の飢餓を防 いだように、日本発の特色ある研究が人類と地球の将来に貢献していくことを信じている。

参照

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