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機能的僧帽弁逆流を伴う2歳未満心室中隔欠損症の

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日本小児循環器学会雑誌 10巻2号 257〜261頁(1994年)

機能的僧帽弁逆流を伴う2歳未満心室中隔欠損症の 左室機能と左室形態

(平成5年11,月25日受付)

(平成6年3月7日受理)

男出

江三

近吉

   東北大学胸部外科

逢坂 研志  秋野 能久 羽根田 潔  毛利  平

   東北大学小児科

 柿 澤  秀 行

key words:心室中隔欠損症,機能的僧帽弁逆流,左室機能,球形化

伊藤 康博

      要  旨

 2歳未満のVSDで,機能的MRを合併したMR(+)群(7例)と,有意のMRのないMR(一)

群(21例)で左室機能と左室形態を比較した.結果:1)Pp/Ps, Qp/Qs, Rp/Rsは2群間で差はなかっ

た.2)LVEDVは2群間で差はなかったが,両群とも対照の約2倍に拡大していた.3)EFはMR(+)

群で0.62と,対照の0.70に比し有意の低値であった.4)離心率はMR(+)群で収縮および拡張末期と も対照に比して有意の低値を示し,MR(一)群は収縮末期で対照に対し有意の低値を示した.5)短軸/

長軸比は2群とも収縮および拡張末期で対照に比し有意の高値を示し,収縮末期ではMR(+)群はMR

(一)群に比して有意の高値であった.6)局所駆出分画はMR(+)群は, anterolateral〜apicalの2

領域で対照に対し有意の低値を示し,さらに,apical領域でMR(+)群はMR(一)群に対し有意の

低値を示した.結論:過大な容量負荷による左室の拡大に加え,より高度の左室の球形化とanterolater−

al〜apical領域の局所壁運動の低下が機能的MRの発生に関連している可能性があると考えられた.

         はじめに

 心室中隔欠損症(VSD)は先天性心疾患の中で最も 発生頻度が高く,左右短絡の多い症例では心肺不全に 伴い呼吸器感染を繰り返し発育不全に陥る,又,閉塞 性肺血管病変が進行することから,乳児期早期の診断 と手術が必要となる.今回,我々は大量の左室容量負 荷を受ける本症に合併した機能的僧帽弁逆流に注目

し,2歳未満症例における左室機能と左室形態を検討 し,2,3の知見を得たので若干の考察を加えて報告

する.

         対象と方法

 対象は心臓カテーテル及び心血管造影を受け,開心 根治手術が施行された2歳未満のVSD 27例である.

別刷請求先:(〒980−77)仙台市青葉区星陵町1−1      東北大学胸部外科     近江三喜男

左室造影でSellers II度以上の僧帽弁逆流(MR)を認 めた7例(II度5例, III度2例,月齢8−一 16ヵ月,平 均10.4±4.3ヵ月)をMR(十)群とした. MRの全く

ない15例と,カテーテルに起因するMRを考慮し

MRI度の6例を含めた計21例(月齢2〜21ヵ月,平均 10.4±4.8ヵ月)をMR(一)群とした.対照は2歳未 満の健丈例を得られなかったので,心疾患のない5

6歳児5例を用いた.

 尚,MR合併例において,心エコー及び左室造影診 断で,腱索断裂や僧帽弁逸脱,亀裂などによる器質的 なMRは否定された.又,術前の左室造影でII度の

MRがあったDown症候群の女児の手術中に僧帽弁

を検索したが,器質的変化はなく,弁葉のcoaptation も良好であったのでVSD閉鎖術のみを施行した.し かし,本症例は術後3年に,MRの進行により弁置換 を余儀なくされた.その他の症例では術中の僧帽弁の

(2)

258−(28)

検索は行っておらず,術後経過もMRが問題になるこ とはなかった.

      測定項目

 (1)Pp/Ps,(2)Qp/Qs,(3)Rp/Rsを心カテーテ ル検査による体血圧,肺動脈圧とFick法により算出

した心内短絡量から求めた.

 (4)左室拡張末期容量(LVEDV)は2方向左室造影 からDodge法1}により求め,以下の式から計算した正 常予測値に対する百分率で表現した.

  LVEDV=72.5×(体表面積)1・43

 (5)左室駆出率(EF)は左室造影から計算した左室 1回拍出量/左室拡張末期容量として求めた.

 (6)離心率(E:eccentricity)は以下の式により求

めた.

  E=π/L

 但し,L:右前斜位左室造影における左室長軸長(実 測),D:算出左室短軸長(D=4×実測左室面積/πL)

とした.

 (7)左室短軸/長軸比は30度右前斜位左室造影にお ける短軸,長軸比で表現した.

 (8)左室局所駆出分画はGelberら2)のarea

methodに準じ,右前及び左前左室造影像を8領域に 分割し,各領域における(拡張末期面積一収縮末期面 積)/拡張末期面積×100(%)を算出した.

 尚,本文及び図中の測定値は平均値±標準偏差で表 現し,統計学的検討は,一元配置分散分析とScheff6の 多重比較を用い,p<0,05を有意差ありと判断した.

      結  果

 (1)Pp/Ps:MR(十)群は0.86±0.11, MR(一)

群は0.75±0.2で有意差はなかった.

 (2)Qp/Qs:MR(+)群は2.28±0.42, MR(一)

群は2.50±0.96で有意差はなかった.

 (3)Rp/Rs:MR(十)群は0.34±0.12, MR(一)

群は0.25±0.14で有意差はなかった.

 (4)左室拡張末期容量:MR(+)群は233±53%,

MR(一)群は213±62%で有意差はなかったが,両群 とも対照の108±16%に対し有意差を認めた(図1).

 (5)左室駆出率:MR(+)群は0.62±0.05, MR(一)

群は0.67±0.05で有意差はなかったが,MR(+)群は 対照のO.70±0.03に対し有意の低値を示した(図2).

 (6)離心率:収縮末期はMR(+)群0.76±0.03,

MR(一)群0.80±0.06で有意差はなかったが,対照の 0.87±0,03とは両群とも有意差を示した.また,拡張 末期ではMR(+)群は0.64±0.08で,対照の0.78±

(%of normaD

300

200

100

a・1

日小循誌 10(2),1994

    i王

  P<0.Ol P<O.Ol

●●

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0.8

0.7

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 MR{十) MR〔一} 対照 図1 左室拡張末期容量

・・ゐ

︷ LL°戸

●●

P・

  P<0.05

MR(十} MR(一) 対照 図2 左室駆出率

0.05に対し有意差を示した(図3).

 (7)左室短軸/長軸比:収縮末期ではMR(+)群は 0.67±0.03で,MR(一)群の0.59±0,06に対し有意差 を認めた.また,両群とも対照の0.50±0.08に対し,

有意の高値を示した.拡張末期ではMR(+)群は 0.76±0.08,MR(一)群は0.71±0.06と有意差を認め なかったが,両群とも対照の0.60±0.07に対し,有意 の高値を示した(図4).

 (8)左室局所駆出分画:8領域で各群を比較する と,領域2(anterolateral)においてMR(十)群は 45±6%と,対照群の61±4%に対し有意の低値を示 した.又,領域3(apical)でMR(十)群は36±13%

とMR(一)群の47±7%及び対照群の54±3%に比 して有意の低値を示した.その他の領域においては各 群間に有意差は認められなかった(図5).

      考  察

 大量の左右短絡を有するVSDでは,左室は慢性的

(3)

平成6年8月1日 259−(29)

1 .0

o.9

0.8

0.7

0.6

0.5

収縮末期

8● 8

8■°・p°°・8°

1

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1.0

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MR(十)MR(一) 対照

拡張末期

  P<0.05

1

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1

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MR(十)MR(一) 対照

図3 左室離心率

収縮末期 拡張末期

0.9

0.8

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0.4

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P<0.01

   P<0.01

L___ 1−__

  MR(十)MR(一) 対照

      MR(十)MR(一) 対照 図4 左室短軸長軸比

に過大な容量負荷を受けることから,左室機能及び左 室形態の変化に興味が持たれる.又,本症にしぼしぼ 合併するMRの発生機序として,僧帽弁の器質的病変 を除けぽ,左右短絡により左室が拡大するに伴い,僧 帽弁輪が拡大し機能的MRを生ずる可能性が考えら れる.Boltwoodら3)は,心筋症における左室の拡大に 伴う僧帽弁輪拡大とMRの関連性を述べたが,弁輪拡

大とMRの発生とは関連がないとする報告も多

い4)5).Brock6)は僧帽弁の前尖と後尖の面積の合計は,

弁輪の面積の1.5〜2.2倍もあると述べており,弁輪拡 大だけでは弁尖のcoaptationが障害されMRが発生 すると単純には考え難い.

 PerloffとRoberts7)は, MRと僧帽弁の弁葉,腱索,

乳頭筋および左室形態の関連性に注目し,左室不全に よる左室の拡大と球形化は,乳頭筋起始部を側方に変 化させ,乳頭筋一腱索一弁葉にかかる張力に歪みを生

じさせ,その結果MRが生じると述べている.左室の 球形化の指標としては,L/D ratio8), shape index9),

sphericity index1°)やeccentricityii)12)などがあり,心 筋症,心筋梗塞,MR,大動脈弁逆流などにおける左室 機能不全の重要な指標とされる.Sabbahら13)は,実験 的に冠動脈に微小塞栓術を行い,EF20〜30%の左室不 全モデルを作成し,MR(+)とMR(一)の2群で比 較を行った.LVEDV, LVESV, LVEF, CO, SVRや 血漿ノルエピネフリンは2群間で有意差はなかった が,長軸/短軸比とsphericity indexに有意差があり,

(4)

260−(30)

(%)

::翻

(%)

::櫨

     楓

跳 UOU5

(%)

1:槻

樋圃

(%)

:櫨 UOO5 ㎞

図5 左室局所駆出分画

MR MR対

(+)(一}田

ボP<005 ホ*:p<001

MR(+)群では左室の球形化が高度であった.つまり,

左室容量や左室機能は2群間で有意差がないことか ら,MRの発生には左室の球形化が関与している可能 性があると報告した.

 VSDの左室機能不全の原因は,大量の左右短絡によ る左室容量負荷の結果に他ならない.Yoshikawaと Sato14)は,左右短絡が中等度以上の症例ではshape indexが異常を示し,特に,短絡率が50%以上になる

と,収縮末期のshape indexとLV wall stress/LV volume indexが異常を示す特徴的な左室機能不全を 呈したと報告した.渡部ユ5)の2歳末満例の根治手術後

1年の左室機能の検討では,術前の容量負荷の影響が 残存し,離心率も正常化せず,左室形態の球形化と収 縮様式の異常があったと報告した.

 現在我々の知る限り,VSDに合併した機能的MR

における左室機能と左室形態に関する報告はない.本 症では大量の左右短絡による容量負荷を受けている左 室が,MRの合併により一層の容量負荷を受けると予

日本小児循環器学会雑誌 第10巻 第2号

想された.しかし,MR(十)群, MR(一)群でLVEDV はそれぞれ233,213%of normalと有意差はなかった.

これは,単なる左室の拡大だけではMR発症の原因に はならないことを示唆している,さらに,離心率,短 軸/長軸比で示された如く,左室の球形化はMR(+)

群でより高度であり,Sabbahら13)が報告したように,

MRの発生に左室の拡大のみならず,左室の球形化が 関与している可能性が考えられる.

 又,Godleyら16)は,乳頭筋機能不全に伴うMR発生 の機序として,乳頭筋自体の病変よりは,乳頭筋起始 部(乳頭筋は心基部〜心尖部の間,心尖より1/3から 起始している)周囲の左室壁のdyskinetic wall motionに原因があると報告した.この観点で今回の結 果を検討すると,MR(+)群のanterolateralとapical の2領域における左室局所駆出分画が対照群に比して 有意に低値であり,さらに,apical領域ではMR(+)

群はMR(一)群に比しても有意の低値を示した.

      おわりに

 2歳未満のVSDに合併する機能的MRに注目し,

MR(+)群とMR(一)群における左室機能と左室形 態を比較し,以下の結論を得た.1)左室拡張末期容量 と駆出率は2群間に有意差を認めなかった,2)左室の 球形化はMR(+)群がより高度であった.3)左室の 局所壁運動はanterolateral〜apical領域でMR(ヰ)

群が低下していた.

 つまり,過大な容量負荷による左室の拡大に加え,

より高度の球形化とanterolateral〜apical領域の局 所壁運動の低下が,機能的MRの発生に関連している 可能性があると考えられた.

 本稿の要旨は第29回小児循環器学会総会(1993年7月,横 浜)で報告した.

      文  献

 1)Dodge HT, Sandler H, Ballew DW, et al:The   use of biplane angiocardiography for the mea−

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 2)Gelberg HJ, Brundage BH, Glantz S, et al:

  Quantative left ventricular wall motion analy−

  sis:Acomparison of area, chord and radial   methods. Circulation l979;59:991−1000  3)Boltweed CM, Tei C, Wong M, et a1:Quanti−

  tative echocardiography of the mitral complex    in dilated cardiomyopathy:The mechanism of   functional mitral regurgitation. Circulation    1983;68:498−508

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(5)

平成6年8月1日 261 (31)

   tion. Am J Med 1975;59:457−463

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   valve ring in normal vs dilated left ventricle,

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8)Borow KM, Lang RM, Neumaqnn A, et al:

   Physiologic mechanisms governing

   hemodynamic responses to positive inotropic    therapy in patients with dilated cardiomyopath−

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10)Lamas GA, Vaughan DE, Parisi AF, et al:

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16)Godley RW, Wann LS, Rogers EW, et al:

   Incomplete mitral leaflet closure in patients    with papillary muscle dysfunction、 Circulation    1981;63:565−571

Left Ventricular Function and Shape in Reference to the Etiology of Functional         Mitral Regurgitation in Children Under 2 Years of Age with

      Large Ventricular Septal Defect

Mikio Ohmi*, Kenji Ohsaka*, Yoshihisa Akino*, Yasuhiro Itoh*, Izuru Yoshida*,

        Kiyoshi Haneda*, Hitoshi Mohri*and Hideyuki Kakizawa**

 Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery*and Department of Pediatrics**,

       Tohoku University School of Medicine

   To determine the etiologic factors of functional MR in patients under 2 years of age with VSD,

function and shape of the LV were analyzed. Twenty−eight patients with VSD were divided into the MR(十)group(n=7)and the MR(一)group(n=21). The control group consisted of 5 patients without heart disease. Results:(1)There were no differences in Pp/Ps, Qp/Qs and Rp/Rs between the MR(+)

and MR(一)groups.(2)LVEDVs were markedly increased in the MR(十)and MR(一)groups registering 223 and 2130ro of normal, respectively.(3)There were no differences in LVEFs between the MR(十)and MR(一)groups. Eccentricities showed significantly smaller values of O.76 and O.64 in the MR(十>group at end−systole and・diastole, respectively, compared with those in the control group.(5)Ratio of the minor−to−major axis at end・systole showed a significantly greater value of O.67 in the MR(+)group compared with O.59 in the MR(一)and O.50 in the control groups.(6)Regional EFs in segment 2

(anterolateral)were significantly depressed in the MR(十)group(45%)compared with the control group

(61%).In segment 3(apical), the value of the MR(十)group(36%)was significantly smaller compared with both the MR(一)(47%)and control(54%)groups. In conclusion, spherical changes and regional wall motion abnormality of the LV accompanied with LV dilatation may be the etiologic factors responsible for functional MR in children under 2 years of age with large VSD.

参照

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