中 学 校
平 成
15
年 度教 育 研 究 員 研 究 報 告 書
理 科
東 京 都 教 職 員 研 修 セ ン タ ー
平成15年度
教 育 研 究 員 名 簿 (理科)
分科 区市町村名 学 校 名 氏 名
第 中 野 区 第 三 中 学 校 ◎ 大 熊 一 正 1 足 立 区 蒲 原 中 学 校 本 杉 貴 保 分 江 戸 川 区 篠 崎 中 学 校 菊 本 巧 科 八 王 子 市 第 二 中 学 校 田 代 京 平 会 東久留米市 東 中 学 校 小 澤 秋 仁 神 津 島 村 神 津 中 学 校 牧 野 聡
第 台 東 区 駒 形 中 学 校 沼 本 謙 一 2 品 川 区 平 塚 中 学 校 岸 本 覚 分 大 田 区 蒲 田 中 学 校 大 山 茂 登 科 北 区 飛 鳥 中 学 校 岡 田 俊 樹 会 板 橋 区 板 橋 第 一 中 学 校 ○ 黒 崎 良 雄 調 布 市 調 布 中 学 校 大 堀 輝 喜
◎世話人 ○副世話人
(担当) 東京都教職員研修センター 指導主事 阿部 善雄
研 究 主 題
目的意識をもって観察、実験などを行うための学習指導法と評価の工夫
目 次
2
Ⅰ 主題設定の理由
Ⅱ 「化学変化と物質の質量」において、目的意識をもって観察、実験などを行うための学習 指導法と評価の工夫 〜「定比例の法則」の生徒実験の改良〜
1 研究のねらい 3
2 研究の方法 3
3 研究内容
(1) 実態調査 4
(2) 教材の開発 定比例の法則の実験の改良( ) 7
(3) 学習指導計画 8
(4) 評価計画 9
(5) 学習展開 11
(6) 事後調査 12
4 研究のまとめと今後の課題 13
Ⅲ 「大地の変化」において、目的意識をもって観察、実験などを行うための学習指導法と評 価の工夫 〜ゼリー地層モデルとコンピュータの活用〜
1 研究のねらい 14
2 研究の方法 14
3 研究内容
(1) 実態調査 15
(2) 教材の開発(ゼリー地層モデルとコンピュータの活用) 16
(3) 学習指導計画 19
(4) 評価計画 20
(5) 学習展開 21
(6) 事後調査 22
4 研究のまとめと今後の課題 24
Ⅰ 主題設定の理由
中学校学習指導要領の理科の目標には「自然に対する関心を高め、目的意識をもって観察、
実験などを行い、科学的に調べる能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理 解を深め、科学的な見方や考え方を養う。」とある。また、内容の項目には、「観察、実験を通 して」と表記されており、理科の学習では、観察、実験は学習内容と一体となって扱うもので ある。そして、すべての単元で実施されている実験、観察については、生徒自身が「目的意識 をもって」取り組むことが大切である。
本研究の教員対象の事前調査の結果によると、目的意識をもたせるために、「実験の前に目的 を説明しワークシート・ノート等に記入させる。」「予想をたててから実験を行い、結果から考 察とまとめをする。」等の指導を約8割の教員が実践していることが分かった。
しかし、生徒対象の事前調査の結果からは、日常生活との関連がない分野や直接目に見えな い事象・現象について興味・関心がもてない生徒、実験技能の未熟さにより観察、実験に目的 意識をもって主体的に取り組めない生徒がいることが明らかになった。このように教師と生徒 の間に認識の差は大きく、前述の指導法だけではその差を埋めるには不十分である。
生徒が目的意識をもった学習を展開するためには、生徒が学習の主体者であることを改めて 認識することが重要である。私たちは、学習への内発的な動機付けを大切にし、目的意識をも った主体的な観察、実験を行うことが一層重要であると考えた。観察、実験を行う際、生徒自 身がその観察や実験を何のために行うのか、その観察や実験ではどのような結果が予想される のかなど見通しをもって行うことを重視した学習指導法と評価の工夫が必要である。
そのためには、生徒が自ら問題を見いだし、解決するための観察、実験などを一層重視する ことや生徒の日常生活と関連付けた理解を図ること、生徒が自ら観察や実験の方法を工夫して 探究する活動を行うことなどがより必要になる。
これらのことから、生徒自身が目的意識をもって観察、実験などに取り組むことが、科学的 に調べる能力と態度を育て、自然の事物・現象についての理解を深め、その積み重ねが科学的 な見方や考え方を養うことになると考え、本主題を設定した。
本研究では上記の研究主題のもとに、第1分野分科会と第 2 分野分科会を設け、以下のよう に研究を推進した。
第 1 分野分科会では、「化学変化と物質の質量」の単元で学習する「定比例の法則」を取り上 げた。学習の主体者である生徒が、自らの実験の結果を基に学習が展開されるように、実験結 果が理論値に近い値になるような実験装置の開発を中心に研究を進めた。
第 2 分野分科会では、「大地の変化」の単元で学習する「地層の広がり」を取り上げた。空間 的な概念形成ができにくい1年生が、3次元の空間的な広がりが認識できるような地層モデル とコンピューターの表計算ソフトを用いた学習指導法を中心に研究を進めた。
目的意識をもって観察、実験などを行うための学習指導法と評価の工夫
研 究 主 題
‑ 3 ‑
Ⅱ 「化学変化と物質の質量」において、目的意識をもって観察、実験などを行 うための学習指導法と評価の工夫 〜「定比例の法則」の生徒実験の改良〜
1 研究のねらい
「化学変化と物質の質量」の単元では、学習指導要領において「化学変化に関係する物質の 質量を測定する実験を行い、反応の前後では物質の質量の総和が等しいこと及び反応する物質 の質量の間には一定の関係があることを見いだすこと。」とある。「一定の関係」とは、一定 の質量の物質に反応する他方の物質の質量には限度があり、その限度の質量は一方の質量に比 例することである。つまりここでは化学変化の質量に関する関係を、生徒自身が実験の結果を 基に発見し、それが化学変化全般に成り立つ法則であることを導き出すことが指導のねらいと なる。
本研究の実態調査の結果により以下の事が分かった。質量保存の法則は、密閉した容器の中 で化学変化を起こし、全体の質量を反応前後で比較することで容易に実験ができ、実験結果が 正確に得られやすいため、生徒の実験結果を基に学習を進めていくことが容易である。
一方、定比例の法則は、多くの学校で銅やマグネシウムを加熱し酸化させ、増加した酸化物 の質量を測定する実験を行い、結合した酸素の質量を求めている。ところが生徒実験において は、「実験操作が難しく、授業時間内に実験が終わらない。」「完全に酸化させることが難し く、結果から関係が導き出せない。」といった現状がある。
これらのことから、定比例の法則の指導については、十分な実験結果を得ることができない ために、実験後の教師の説明や、化学式や化学反応式から生徒に学習内容を教えることになり、
実験を通して関係を導き出すことができていない。そのために、生徒が見通しをもって実験を 行ったり、最後まで目的意識をもって学習に取り組むことができない原因の一つになっている と考えた。
そこで、多くの教員が困難と感じている定比例の法則の生徒実験において、実験方法や実験 装置の工夫や改良を行い、生徒自らが実験により理論値に近い結果が得ることを中心に学習指 導法や評価の工夫を行った。
2 研究の方法
研究の方法は以下の6点である。
(1) 「化学変化と物質の質量」の学習に関する課題を把握するために、教員対象の調査及び 生徒の理解状況の調査(生徒対象)を行った。
(2) 生徒実験の結果が、理論値に近づくように、実験方法や実験装置の工夫と改良を行った。
(3) 目的意識をもって観察、実験を行うために、学習指導法の工夫を行った。
(4) 指導と評価の一体化を図るための評価計画を作成した。
(5) 検証授業を実施し、学習後の理解状況を調べるために生徒対象の調査と分析を行った。
(6) 研究の成果をまとめ、今後の課題を検討した。
3 研究の内容 (1) 実態調査
① 教員アンケートの主な内容と結果(対象:中学校理科教員104名)
「化学変化と物質と質量」の単元に関する指導の実態を明らかにするために、観察、実 験の実施状況を中心に調査を行った。内容と結果は次の通りである。
1 化学変化を指導する上でもっとも重視することは次のどれですか。
① 実験から導き出せることを重視する 50.7%
② 講義により、規則性を習得させることを重視する 10.6%
③ 規則性の習得が主だが、粒子モデルを用いて理解させることを重視する 30.3%
④ その他 8.4%
2 燃焼(酸化)の単元の生徒実験の際に使用する物質は何ですか。(複数回答有)
① 鉄(スチールウール) 93.7% ④ ろうそく 38.7% ⑦その他 3.4%
② エタノール 43.8% ⑤ マグネシウム 77.5%
③ 砂糖 38.0% ⑥ 銅 53.5%
3 質量保存の法則の実験ではどのような実験を行いますか。(複数回答有)
① 硫酸銅水溶液と塩化バリウム水溶液を反応させる 60.6%
② 空気中で石灰石と塩酸を反応させる 51.4%
③ 空気中で銅を酸化させる 34.5%
④ 密閉した容器の中で鉄(スチールウール)を酸化させる 10.6%
⑤ 密閉した容器の中で銅を酸化させる 6.3%
⑥ 密閉した容器の中で石灰石と塩酸を反応させる 54.2%
⑦ その他 18.3%
4 定比例の法則の実験ではどのような実験を行いますか。(複数回答有)
① 銅の酸化 73.2% ② マグネシウムの酸化 59.9%
③ その他 2.8%
5 化学変化の規則性を生徒に理解させることが難しいと考えられる実験をあげてください。
定比例の法則(成分比一定の法則)の実験の記述 <63%> その他(無回答も含む) <37%>
・銅の酸化…完全に酸化できない。実験に時間がかかる。結果が正確に出ない。 (主な内容のみ記載)
・マグネシウムの酸化…別の物質が発生してしまう。予想した値にならない。
② アンケートのまとめ
実態調査の結果から以下のことが明らかになった。化学変化と物質の質量の関係を指導 する上では、約5割の教員が生徒の実験データを基に法則等を導き出すことや約3割の教 員が、目に見えないものをモデル化して指導することに重点を置いていることが分かった。
このことよりこの単元においては、生徒の実験結果を基に、質量保存の法則や定比例の 法則を見いださせ、目に見えない世界を原子・分子のモデルと関連付けながら、指導して いることが分かる。
化学変化の規則性を生徒に理解させることが難しいと考えられる実験では、約6割の教 員が定比例の法則の実験を挙げており、質量保存の法則については、特にその記述がなか った。定比例の法則については、銅とマグネシウムが多くの実験に使用されており、マグ ネシウムについては、燃焼中に空気中の窒素と反応するため正確な結果が出ないことが考 えられる。銅を用いての実験においても、銅が十分に酸化することができず、理論値に近 い結果が出ないために、指導に困難を感じている教員が多いことが分かった。
これらのことから、定比例の法則については、実験の結果を基に生徒が規則性や法則を 見いだすのではなく、実験結果の理論値や法則を教師が説明することによって授業が展開 していると考えられる。
③ 生徒アンケートの内容と結果(実施日:平成15年7月、対象:3年生999名)
ア 生徒アンケートの内容
定比例の法則に関する生徒の詳細な理解状況を調べるために、本単元を既に学習した3 年生対象に以下の問題の調査を行った。問題は、定比例に関する目的意識、実験の操作、
規則性の発見、計算能力、グラフの作成などの学習状況がわかるように7問作成した。
☆ これはテストではありません。また、成績にも関係ありません。
☆ 化学変化に関する次の質問をよく読んで答えてください。
銅の粉末とマグネシウムの粉末のそれぞれについて、加熱前の質量と加熱してできた酸化物の質量を比べるた めに、次のように実験を行い、下の表に示す結果を得た。次の問いに答えなさい。解答は解答欄に書きなさい。
( )1 銅の粉末を1.20gはかり、ステンレス皿に入れた。
( )2 図1のように銅の粉末を薬さじ(薬品さじ)でうすく広げ、かき混ぜなが ら飛び散らないようにして、ガスバーナーで十分に加熱した。
( )3 ステンレス皿が十分に冷えたあと、ステンレス皿の中にある物質の質量を はかった。
( )4 ( )の物質をうすく広げ、( )と( )の操作を繰り返し、質量が変化しなく3 2 3 なるまで加熱してできた黒色の酸化銅の質量をはかった。
( )5 銅の粉末1.80g、2.40gのそれぞれについて、( )から( )と同様の操作を1 4 行い、質量が変化しなくなるまで加熱してできた黒色の酸化銅の質量をは かった。
( ) マグネシウムの粉末6 1.20g、1.80g、2.40gのそれぞれについて( )から( )1 4 と同様の操作を行い、質量が変化しなくなるまで加熱してできた白色の酸 化マグネシウムの質量をはかった。
<結果>
1.20 1.80 2.40 加熱前の銅の粉末の質量〔g〕
質量が変化しなくなるまで加熱して
1.50 2.25 3.00 できた黒色の酸化銅の質量〔g〕
1.20 1.80 2.40 加熱前のマグネシウムの粉末の質量〔g〕
質量が変化しなくなるまで加熱してでき
2.00 3.00 4.00 た白色の酸化マグネシウムの質量〔g〕
問1 この実験の目的を述べたものとして適切なのは、つぎのうちどれか。
ア 空気中で、銅とマグネシウムを加熱しても、物質の色は変化しないことを確かめる。
イ 空気中で、銅とマグネシウムを加熱すると、物質の色が変化することを確かめる。
ウ 空気中で、銅とマグネシウムを加熱しても、物質の質量は変化しないことを確かめる。
エ 空気中で、銅とマグネシウムを加熱すると、物質の質量が変化することを確かめる。
問2 銅の粉末をうすく広げた理由として正しいものは、次のどれか。
ア 発生した熱を空気中へ逃がすため。
イ 発生した気体を空気中へ逃がすため。
ウ 銅の粉末どうしを化合させるため。
エ 銅の粉末と空気をふれやすくするため。
問3 銅の粉末を熱したときのようすを正しく説明しているのは、次のどれか。
ア 明るい光は出さず、白っぽい物質に変化した。
イ 明るい光は出さず、黒っぽい物質に変化した。
ウ 明るい光を出して、白っぽい物質に変化した。
エ 明るい光を出して、黒っぽい物質に変化した。
問4 実験で、銅の粉末を加熱してできた物質について述べたものとして適切なのは、次のうちではどれか。
ア 酸化銅は、銅と酸素の混合物であり、加熱前の銅と同じ物質である。
イ 酸化銅は、銅と酸素の混合物であり、加熱前の銅とはちがう別の物質である。
ウ 酸化銅は、銅と酸素の化合物であり、加熱前の銅と同じ物質である。
エ 酸化銅は、銅と酸素の化合物であり、加熱前の銅とはちがう別の物質である。
問5 結果より、銅の粉末とマグネシウムの粉末のそれぞれで、加熱前の質量を変えたとき、
○ 加熱してできた黒色の酸化銅の、銅の質量と酸素の質量との割合
○ 加熱してできた白色の酸化マグネシウムの、マグネシウムの質量と酸素の質量との割合について、
それぞれの割合が変化するかどうかを組み合わせたものとして適切なのは、次の表のア〜エのうちで はどれか。
黒色の酸化銅の、銅の質量と 白色の酸化マグネシウムの、マグネシウムの質量と 酸素の質量との割合 酸素の質量との割合
ア 変化する 変化する
イ 変化しない 変化しない
ウ 変化する 変化しない
エ 変化しない 変化する
問6 銅の粉末10gを完全に酸化させた場合、酸化銅は何gできるか。表をもとに計算せよ。
問7 表をもとに、銅の質量と銅と化合した酸素の質量との関係を表すグラフを図2(略)に書き入れよ。
イ 生徒アンケートの結果
定比例の法則に関する学習内容と問1から問7の対応は以下の通りである。
問1・・・・実験の目的を理解している。
問2・・・・実験の目的を理解しているので、正しい実験の操作ができる。
問3・・・・実験中の物質の変化の様子を観察している。
問4・・・・酸化・燃焼の意味を理解している。
問5・・・・実験結果より一定の関係を発見できる。
問6・・・・発見した関係を一般化できる。酸化銅の質量を求める計算ができる。
問7・・・・結果をグラフに表すことができる。
< 結 果 >
問題番号 問1 問2 問3 問4 問5 問6 問7 実験の目的 実験の目的 実験の観察 酸化の意味 定比例の法則 酸化銅の計算 グラフ作成) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) (
正答 エ エ エ エ イ 12.5g (略)
正答率〔%〕 76 70 49 65 29 22 15 ウ アンケートのまとめ
上記の結果より、問1、問2の回答率から実験の目的を理解していると考えられる生徒 の割合は、約7割で他に比べて高いのに対し、実験結果から、比例関係を発見することや グラフを作成することができる生徒は約2〜3割であることが分かった。また、実験中に 銅から酸化銅への化学変化の様子を観察している生徒は約5割であった。この単元の学習 時期は2年生であり、学習して1年近く経ていることもあるが、約7割の生徒が、本単元 のねらいである実験結果から一定の関係を見いだすことができないことが分かった。
これらのことから、この単元における指導上の課題と今後の研究への取り組みについて 以下のように考えた。
定比例の法則の学習に関する課題 今後の研究への取り組み
約7割の生徒は、実験の目的は理解して実験を行 実験操作が複雑であるために、化学変化の様子を っているが、約5割の生徒は、銅から酸化銅への物 観察できていないことが考える。実験の正しい技能 質の変化を観察していない。 を習得させるとともに、実験方法の改良を図り観察
する場面、時間等を設定する。
約4割の生徒は、定比例の法則についての学習前 既習事項の定着を図った上で、定比例の法則につ の段階で、酸化や燃焼、化合物と混合物の違いにつ いての学習に取り組めるよう、単元全体の学習指導
いて理解できていない。 計画を作成する。
約7割の生徒が、実験結果を基に、一定の関係を 教 師 の説 明 で 定比 例の 法 則を 学 習す るの ではな 見いだすことができない。 く、生徒実験の結果を理論値に、近づけることによ
り関係を発見できるようにする。
約7割の生徒が、実験結果を基に、一定の関係を 生徒実験で理論値が出ても、銅:酸化銅=4:5 見いだすことができないため、実験値以外の値での の関係が求められない生徒には、比の学習指導を行 計算ができない。約8割の生徒は、実験の結果をグ う。
ラフに表現することができない 。。 理論値に近い自分の実験結果を基にして、グラフ の作成の方法を指導する。
(2) 教材の開発(定比例の実験の改良)
本研究の実態調査から、定比例の実験では、理論値に近い実験結果が出ず、指導に困難を 感じている教員が多いことが分かった。そこで生徒が、授業時間内に実験を完了し、生徒実 験において、理論値に近い値を得るために実験の工夫・改良を行う必要がある。
銅粉は加熱すると焼結し固まりになる。現在の教科書でも、固まりを崩すことは注意して いるが、一度焼結した固まりを崩すのは非常に困難で、酸素と触れ合いにくい状態になる。
そのため、銅を加熱しても十分に酸化せず、強熱するだけでは解決できない。改善策として 銅に二酸化珪素を混合する等の報告もある。これらの先行研究等を参考に中学校の理科室で 容易にできる実験方法や実験装置等について
以下の4点の工夫・改良を行った。
① 銅が焼結し、固まらないようにするため の改良点
銅粉に炭酸カルシウムを混ぜることによ って、焼結し固まりになることを防ぐ。炭 酸カルシウムは、他の実験等でも使用する ことから、多くの理科室にあり、ガスバー ナーで加熱しても化学変化せず、質量も変
化しない。銅粉とよく混ぜ合わせることに (写真1)
よって炭酸カルシウムが、銅粉同士が熱により固まるのを妨ぐことになる。この改良によ り、銅と空気中の酸素が触れ合いやすくなり酸化しやすくなる。
② 生徒の実験ミスを少なくし、化学変化の様子を観察させるための工夫
ア 銅粉を加熱するステンレス皿(写真1)は、深く底の広い物を用いる。生徒が、かき 混ぜるときに底が広いので、銅粉がこぼれない。酸化銅のかたまりをつぶすようにかき 混ぜるとよい。(ステンレス皿は安価で購入でき、焼き入れ後使用したが質量の変化は ほとんどなかった。)
イ 加熱中にかき混ぜるのではなく、冷やしている時にかき混ぜる。このことより、加熱 中の銅から酸化銅への化学変化の様子も観察できる。
③ 質量の測定時の誤差を少なくする工夫
ア 測定には、班の数に関係なく、1台の電子上皿天秤を使用する。また、1回ごとに0g 補正をして測定するよう指導する。
イ 熱することにより、ステンレス皿や銅粉が乾燥するため、最初物質に含まれていた水分 が蒸発し質量が軽くなる。上図(写真1)の金属スタンドの土台などを使い、常温でよく 冷やしてから質量を測定する。
④ 授業時間内に実験を完了させるための工夫
ア 熱する時間は3分、回数は3回が適当であり、3分以上時間を増やしても実験結果に 変化はない。3分2回でも可能だが、熱する回数を少なくすると、結び付く酸素の質量 に限度があることを指導できない。
イ 安全に配慮した上で、測定物を強熱し効率的に酸化させ、実験の時間の短縮を図る。
(3) 学習指導計画(11時間)
実態調査の結果より、実験で理論値に近い結果が得られても、生徒が酸化や燃焼等の化 学変化に関する事項を身に付けていなければ、定比例の法則を見いだすことはできないこ とが分かった。これらのことから、改良・工夫した生徒実験を組み合わせ、次のような学 習指導計画を立てた。
時 学習項目 主な学習活動 備考・留意点
1 鉄と硫黄の化合 生徒実験「鉄と硫黄の化合」 ワークシートを用意する。
2 水 素 と 酸 素 の 化 合 の 前時の復習をする。 簡 易 ユ ー ジ オ メ ー タ ー を 使 用
説明 演示実験「水素と酸素の化合」 する。
3 物 質 が 燃 え る と い う 生徒実験「スチールウールの燃焼」 ワークシートを用意する。
ことについて
4 実験結果まとめ 金属と酸素の化合について説明する。 酸化、燃焼についてまとめる。
5 化 学 変 化 の 前 後 で 質 生徒実験「空気中での銅の燃焼」 ワークシートを用意する。
量は変化するか ・実験結果から、銅は空気中で熱すると質 ・ こ の 実 験 で も 深 皿 の ス テ ン 量が増えることを理解する。 レ ス 皿 、 炭 酸 カ ル シ ウ ム を
・なぜ質量が増えたのかを推論する。 使用する。
・ か き 混 ぜ 方 、 ガ ス バ ー ナ ー の 炎 の 色 や 大 き さ 、 自 動 上 皿 て ん び ん の 使 い 方 な ど 、 実 験 の 手 順 を 指 導 す る 。 ワークシートに記入・提出 6 実験結果まとめ ・銅を空気中で熱すると、結びついた酸素
の分だけ質量が増えることを理解する。
密 閉 し た 容 器 内 で 化 演示実験
学 変 化 さ せ た と き の ・物質の出入りがなければ質量保存の法則が 質量の変化 成り立つことを理解する。
。 7 化学反応式の説明 化学反応を化学式で表す方法の説明を聞く
8 化 学 反 応 式 か ら 分 か ・次回実験の説明を聞く。 ワークシートを用意する。
ること ・ワークシートへ予想を記入 ・実験方法をよく確認してお
①銅と化合する酸素の質量に限度はある く (第5時の実験と異なる。 金 属 を 熱 し 続 け た と か。 と こ ろ を 特 に 説 明 す る 。 次 きの質量の変化 ②銅の質量を増やしていくと、化合する酸 回の授業内容を予告する )。
素の質量はどうなるか。 ・ねらいをはっきりさせる。
・ 予 想 を ワ ー ク シ ー ト に 記 入 し提出させる。
9 銅と酸素の化合 生徒実験「銅と酸素の化合」 ワークシート配布する。
・銅を熱したときの、結びつく酸素の質量 実験終了後提出させる。
を調べる。
(本 時)
実験結果まとめ ・各班の銅の質量の変化を加熱前から順に 板書の例 1 0
発表し、黒板に板書する (加熱を繰り返。 1班 1.2gの銅 すと、だんだん質量の変化が少なくなっ 質量の変化
54.4 54.6 54.7 54.7 銅 と 化 合 す る 酸 素 の ていくのが分かる)また、最終的に化合 → → → 質量に限界はあるか した酸素の質量を班ごとに発表する。 結びついた酸素・・0.3g
・実験結果から、銅と化合する酸素の質量
に限度があることを発見する。 ・実験結果が理想値と離れた
・化合物の原子が決まった割合で結びつい 場合は考察、補正をする。
ていることを推論する。
銅 の 質 量 を 増 や し て ・実験結果から、銅を増やしていくと化合 1 1
い く と 、 化 合 す る 酸 する酸素の質量が比例して増えることを 素 の 質 量 は ど う な る 発見する。
か ・化合物の原子が決まった割合で結びつい ていると推論できる。
・銅と酸素から化合物ができるときの、質量 の割合の比を推論する。
・マグネシウムと酸素との化合やその他の化 合をモデルで考察する。
(4) 評価計画(第8時〜第10時)
次に学習指導計画に基づき適切な評価を行うため、定比例の法則の学習に関する第8時 から第10時について、ワークシートの記述と関連した以下のような評価計画を立てた。
① 学習目標
化学反応に関係する物質の質量を測定する実験を行い、互いに反応する物質の質量の 間には一定の関係があることを見いだす。
② 評価規準
自然事象への 科学的な思考 観察・実験 自然事象についての
関心・意欲・態度 の技能・表現 知識・理解
銅と酸素の化合する 今までの学習より、 銅を熱して、反応前後 一 定 の 質 量の 銅 に 反 応 実験を進んで行い、規 銅と酸素の化合する実 の質量を正しく測定し、 す る 酸 素 の 質量 に は 限 度 則性を見いだそうとす 験についてその質量の その結果をグラフに表す があり、その限度の質量 る。 関係を予想、考察し、 ことができる。 は 銅 の 質 量 に比 例 す る こ
化学変化における物質 とを理解できる。
の質量の関係を見いだ す。
③ 具体的な評価の視点とワークシートの記述欄との関連
時 観点別学習状況を判断する具体的な視点 ワークシートの 間 十分満足できる(A)状況 おおむね満足できる(B)状況 記述箇所
・実験前の予想欄に自分の考え記述す ・ワークシートにねらいを記入するこ ①【関】
ることができる。 とができる。
・銅と化合する酸素の質量には限度が ・銅と化合する酸素の質量には関係が
あることが予想できる。その関係を あることが予想できる。 ②【思】
原子・分子のモデルと関連付けて説明 その理由を今まで学習した酸化や化合 第 することができる。 の実験から説明することができる。
8 ・銅が増加すると、化合する酸素の質 ・銅が増加すると、化合する酸素の質 時 量も一定の割合で増加することを予想 量も増加することを予想できる。
できる。 その理由を原子・分子のモデ その理由を今まで学習した酸化や化合 ③【思】
ルと関連付けて説明することができる。の実験から説明することができる。
・ワークシートの実験方法の欄(略) ・ワークシートの実験方法の欄(略)
に、板書以外の内容や諸注意等も記入 に、板書した内容を記入できる。 【関】
できる。
・実験上の注意を守りながら正しく実
験できる (行動観察 【技】。 ) ・ 第9時については、ワークシートの結 第 ・結果を表に記入できる。 果欄(略)に記入する。
9 (行動観察・ワークシート 【技】) ・ 観察・実験の技能・表現の観点につい 時 ・他の班の結果をワークシートに記入 ては、ワークシートの各項目の記述と
し、グラフを作成できる。 行動観察から評価する。
(行動観察・ワークシート 【技】)
【 】
・新しい疑問等の記述がある。 ・実験を振り返ることができる。 ⑧ 関
時 観点別学習状況を判断する具体的な視点 ワークシートの 間 十分満足できる(A)状況 おおむね満足できる(B)状況 記述箇所
・加熱後の物質名が酸化銅であると分 ・加熱後の物質名が酸化銅であると分
かり、化学反応式等の記述や酸化につ かる。 ④【知】
いての説明がある。
・加熱回数と質量変化の関係について、・加熱回 数と質 量変化の 関係に つい 第 増加後一定になる記述がある。その理 て、増加後一定になる記述がある。
由を実験結果や原子・分子のモデルと その理由として、銅が酸化して酸化銅 ⑤【思】
10
時 関連付けて説明することができる。 になる等の記述がある。
・銅の質量と酸素の質量は比例してい ・銅の質量と酸素の質量は比例関係に
ることを理解している。その割合や銅 あることを理解している。 ⑥【知】
以外の金属について記述がある。
・銅と酸素の質量比が4:1の割合で ・一定の関係で結び付いていることを ⑦【知】
結び付いていることを理解している。 記入している。
<指導内容と評価を関連させたワークシート(一部抜粋)>
金属を熱したときの質量変化
ねらい ①【自然事象への関心・意欲・態度】 を調べる
■ 予 想■
一定量の金属の質量と、結びつく酸素の質量にはどんな関係があると思いますか。
1
【科学的な思考】
なぜ、このように考えましたか。 ② 2
銅の質量を増やしていくと、結び付く酸素の質量はどうなるでしょうか。
3
【科学的な思考】
4 なぜこのように考えましたか。 ③
■ まとめ ■
加熱後の物質は何ですか (また、その理由は )。 。
1 ④【自然事象についての知識・理解】
熱する回数を増やすと質量の変化はどうなりましたか。
2
【科学的な思考】
それはなぜですか。 ⑤
3
グラフからもとの銅の質量と,化合した酸素の質量の関係について答えなさい。
4 ⑥【自然事象についての知識・理解】
銅と化合した酸素の質量比はいくつでしょうか。
☆
【自然事象についての知識・理解】
銅 : 酸 素= : ⑦
A…たいへんよくできた B…できた C…あまりできなかった】
■実験を振り返って■ 【
①自分の仮説をもって実験しましたか。 A B C
】
②班で協力して実験は行いましたか。 A B C ⑧【自然事象の関心・意欲・態度
③準備・片付けは分担して行いましたか。A B C 実験を通しての新しい発見・疑問
(5) 学習展開
学習指導計画に基づき、本時の学習展開を次のようにし、定比例の法則に関する実験の改 良点や評価方法の工夫を検証することとした。
ア 目標
銅の酸化の実験を行い、化学変化後にできた酸化銅の質量を正確に測定し、反応前の銅 の質量と反応後の質量の間に一定の関係があることを見いだす。
イ 学習の展開
時 生徒の学習活動 教師の指導・援助 備考・留意点
○金属の燃焼について学習し ○以前学習したことを振 ○金属の酸化、燃焼に たことを確認する。 り返り確認させる。 ついて確認する。
導 5 ○実験の目的を確認する。 ○ワークシートの記入を ○ワークシートの未記
入 分 確認する。 入の生徒には、個別に
○実験の結果を予想し、発表 ○数名の生徒に予想を発 指導する。
する。 表させる。
○実験の方法を聞く。 ○方法を説明し、注意事 ○発問し、説明の内容
①銅粉はよく広げる。 項を確認する。 を確認する。
②かき混ぜる際は、こぼさ ○正確に実験できない例 ○やけどに注意するよ ないようにする。 を、生徒の発言から取り う指示する。
③ある程度冷えてから質量 上げる。 ○銅の量は0.4g 0.8g 展 を測定する。 ○電子上皿天秤を1台教 1.2g 1.6g 2.0gとし複
35 室の中央に用意し、操作 数班で分担する。
の仕方を確認する。測定 ○銅と同量の炭酸カル
分 ごとに0g補正を行うよ シウムを混ぜる。炭酸
う指示する。 カルシウムを混ぜる理
開 由について深入りしな
○実験を開始する。 ○正しい実験の技能を身 い。
・3分間加熱する。 に付けるよう個別に指導
・5分間かき混ぜながら冷 する。
却する。 ○全部の班の結果が確
・質量を測定する。 認できるよう、黒板に
以上の作業を3回繰り返す。 表を作成する。
○測定が終わった班は代表生 ○黒板の結果欄を見なが ○板書を見ながら、実 徒が、随時自分の班の結果を ら理論値から大きく離れ 験の遅れている班を支 板書する。 ている班について実験方 援する。
法等再確認する。
○片付ける際、加熱し
○実験を終了し、片付けを行 たステンレス皿等での
う。 やけどを注意する。
○他の班の実験結果をワーク ○ワークシートのグラ シートに写し、銅と酸素の関 フが未記入の生徒には
ま 係を見いだす。 個別に指導する。
と 10 ○実験データから銅と化合し ○予想、結果に基づいて ○実験データから生徒 め 分 た酸素のグラフを作成する。 考察するよう、個々のワ が導き出すよう説明等
○このグラフから言えること ークシートで指導する。 はしない。
をワークシートに記入する。
(6) 事後調査
① 定比例の法則の実験結果(対象中学2年生 2学級)
銅の質量 化合した酸素の質量(g)
生徒実験の各班の結果は、左の(表1)の通り (表1)
班番号 A組 B組
である また この結果をグラフにしたものが。 、 、 (g)
1 班 0.4 0.1 0.2
下 の A 組 、 B 組 の グ ラ フ で あ る ( 4 学 級 で 実。
2 班 0.4 0.1 0.1
施したが、他の学級もほぼ同様の結果であるた
3 班 0.8 0.2 0.2
め2学級のみ掲載する )。
4 班 1.2 0.3 0.3
多少の誤差等はあるが、理論値に近いデータ
5 班 1.2 0.2 0.2
が得られていると考える。グラフは右上がりの
6 班 1.6 0.3 0.4
比例を表すグラフになっている。
7 班 2.0 0.5 0.5
8 班 2.0 0.4 0.5
また、この実験を終えて生徒がワークシートに記述した、実験を通しての新しい発見や疑 問は以下の通りである (主なものを記載する。ただし 「銅と結びつく酸素の量に限度が。 、
。」 「 」 。)
ある と 銅と結びつく酸素の量は比例する の意見については多数あったので省略する
定比例の法則に関するワークシート(10ページ参照 「実験を通しての新しい発見・疑問」欄の主な記述内容)
・グラフに書くことで、比例していることが見えてくることが分かった。
・燃焼の化学変化だけでなく、他の化学変化で質量の変化をみてみたい。
・紙を燃やしたら(質量の変化は)どうなるのか。
・虹みたいにきれいな色になりながら反応するのはどうしてか。
・自分で前にやった実験などをもとに、予想を立てられるようになって嬉しい。
・見えないし、重さもにおいも全く感じない酸素だけど、原子からできていて、他のものと化合できてすごい。
・酸素が空気中にないと質量の変化はどうなるかと思った。どうして熱すると酸素と銅が結び付いたのか。
A組
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0 0.5 1 1.5 2 2.5
銅の質量(g) 化
合 し た 酸 素 の 質 量
(g) B組
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0 0.5 1 1.5 2 2.5
銅の質量(g) 化
合 し た 酸 素 の 質 量
(g)
② 授業後の生徒アンケート結果(対象中学2年生 101名)
さらに生徒の変容を検証するために、実態調査(5ページ参照)で実施した生徒アンケ ートと同じ問題を、本研究で学習した生徒を対象に実施した。結果は以下の通りである。
問題の内容から分かる 今回の 前回の
主な理解内容等 正答率(単位%) 正答率(単位%)
問1 実験の目的を理解している。 81 76
問2 実験の目的を理解しているので、正しい実験の操作ができる。 72 70
問3 実験中の物質の変化の様子を観察している。 82 49
問4 酸化・燃焼の意味を理解している。 84 65
問5 実験結果より一定の関係を発見できる。 37 29
問6 発見した関係を一般化できる。酸化銅の計算ができる。 32 22
問7 結果をグラフで表すことができる。 40 15
両者を比較すると、従来の方法よりも今回の実験方法で学習した後の正答率の方が、す べての理解内容で明らかに高いことが分かった。特に、問7のグラフを書く設問では2倍 以上の高い数字の値が示されている。また、上記の結果には示されないが、不正解である が比例のグラフを記入した生徒は60%であった。
4 研究のまとめと今後の課題 ( )1 研究のまとめ
① 教材の開発について
銅粉に炭酸カルシウムを混ぜることや燃焼時に底が広く、深いステンレス皿を使用す ること等により、銅粉が焼結して固まるのを防ぎ、人為的なミスを少なくし、安全に実 験ができるようになった。このことにより従前の実験より銅粉が酸化しやすくなり理論 値に近い値が得られた。
② 指導計画・指導法の工夫について
ア 実験結果を基に、生徒が自ら課題を見つける学習を展開していくことにより、生徒 の学習意欲が高まり、生徒は最後まで目的意識をもって学習に取り組む姿勢が見られ た。
イ 多くの教員が困難を感じていた実験を改良・工夫することによって、生徒の定比例 の法則に関する内容の理解が深まった。
③ 評価の工夫について
ワークシートの記述部分を工夫することにより、生徒の学習状況を評価する具体的な 視点を知ることができた。また、単元のワークシート等を総括することにより観点別学 習状況を的確に評価することができた。
(2) 今後の課題
① 生徒実験の際に、多くの学校では0 1g単位の電子上皿天秤を使用しているため、. 0 1g単位での誤差が生じる。複数の班で同じ質量で実験を行わせることや、グラフ. 作成の際の縦軸、横軸の単位等に工夫が必要である。
② 「努力を要する」状況(C)と判断した生徒への具体的な指導の手だてについてまと め 「おおむね満足できる」状況(B)への段階的な指導の在り方について指導計画を、 作成する。特に比例の計算式やグラフの作成については、数学科との連携を図り指導し ていくことが必要である。
Ⅲ 「大地の変化」において、目的意識をもって観察、実験などを行うための学習 指導法と評価の工夫 〜ゼリー地層モデルとコンピュータの活用〜
1 研究のねらい
現行の中学校学習指導要領では、「大地の変化」は学習する時期が第3学年から第1学年に移 行された。「大地の変化」の単元にある「地層の広がり」の学習では空間的な思考力が必要とさ れ、第1学年に空間的な広がりを認識させるためには指導の工夫が必要となる。また、「大地の 変化」の単元では、「野外観察を行い、観察記録を基に、地層のでき方を考察し、重なり方の規 則性を見いだす。」とあり、野外観察を前提とした配当指導時間数が設定されている。
本研究の実態調査の結果によると、野外観察の実施による指導で、生徒は「地層の重なり」
は比較的理解していると言えるが、「地層の広がり」については、空間的な思考を要するため、
理解が難しいことが分かった。また、東京都内には観察に適している露頭が少なく野外観察の 実施が難しい。野外観察の実施が困難である場合は、校外学習を活用して観察を行ったり、博 物館等の施設を活用したりするなどの工夫が必要とされるが、全ての学校で、校外学習中に野 外観察を行うことや博物館等の施設を活用することを年間学習計画の中に位置付けることは難 しい状況にある。
そこで本研究部会では、ゼリーによる立体的な地層のモデルである簡易実験装置(ゼリー地 層モデル)を開発し、コンピュータの表計算ソフトを用いて実験結果を処理できるように工夫 し、生徒が主体的かつ目的意識をもって観察、実験を行うことをねらいとし本研究を行うこと とした。
研究を進めるにあたり、以下の3点を教材開発の視点とした。
(1) 生徒がゼリー地層モデルを作製することにより、地層の重なり方の規則性や地層の広が りを体験的に学習できること。
(2) 地質調査の主な方法であるボーリングを、ゼリー地層モデルで模擬的に行うことにより、
見えない地下のつくり、地層の広がりを調べる方法を体験的に学習できること。
(3) ボーリング調査で得られた結果をコンピュータの表計算ソフトにより処理し、生徒達が 調べたゼリー地層モデルと照合し、地層の広がりを認識できること。
2 研究の方法
次のような方法で研究を進めた。
(1) 「地層の広がり」の学習における問題点を把握するために、理科教員対象、生徒対象の 調査を行った。
(2) 3次元の空間的な広がりを認識させるために、簡易実験装置の工夫及びコンピュータの 表計算ソフトによるデータ処理の工夫を行った。
(3) 目的意識をもって観察、実験を行うために、学習指導計画の作成を行った。
(4) 指導と評価の一体化を図る評価計画の作成を行った。
(5) 研究成果を調べるために、検証授業を実施し、学習後の調査を行った。
(6) 研究の成果をまとめ、今後の課題を検討した。
3 研究の内容 (1) 実態調査
① アンケート調査の内容と結果(対象:公立中学校理科教員 112名)
「大地の変化」の単元にある野外観察や地層の学習についての指導の実態を把握する ためにアンケート調査を行った。主な内容と結果は以下の通りである。
1 学習指導要領では「学校周辺で地層の様子を観察すること事」と記されていますが、学校周辺の地層の野外観察を 実施していますか。
・実施していない 97% ・未回答 3% ・実施している 0%
、「 、 、
2 学習指導要領解説−理科編−では 野外観察については 地形や露頭の観察に適した場所がないような地域では 校外学習を行ったり、博物館の施設を活用するなどの工夫が必要である 」と記されています。学校周辺の地層の野。 外観察を実施していない場合、どのような工夫をしていますか。
・視聴覚教材(ビデオ・パソコンなど)の活用 49% ・特別なことはしていない 17% ・その他 15%
・移動教室などの校外学習の利用 13% ・博物館などの活用 3% ・未回答 3%
3 学校周辺の野外観察や上記2の取り組みをされている方
① 学校周辺の野外観察や代替学習で、生徒は「地層の重なり方」について理解できましたか。
・かなり理解した 2% ・おおむね理解した 61%
・やや理解していない 7% ・あまり理解していない 11% ・未回答 19%
② 学校周辺の野外学習や代替学習で、生徒は「地層の空間的な広がり」について理解できましたか。
・かなり理解した 2% ・おおむね理解した 47%
・やや理解していない 20% ・あまり理解していない 10% ・未回答 21%
4 「地層の空間的な広がり」を理解するために簡易な教材の必要性を感じますか。
・はい 72% ・いいえ 16% ・未回答 12%
② アンケートのまとめ
実態調査から以下のことが明らかになった。学習指導要領によると 「野外観察」につ、 いては 「学校の周辺で地層の様子を観察する活動を行うこと 」とされている。しかし、 。 今回のアンケートによると野外観察による「地層の観察」を実施している学校は0%であ った。実施できない理由としては、適切な観察場所がなかったり、校外学習は特別な設定 をする必要があり時間の確保が難しいなどであった。都市部にあっては、地層の観察の実 施は厳しい現状にあると言える。
このような状況を改善するための学習方法の工夫として 約5割の教員が視聴覚教材 ビ、 ( デオ・コンピュータなど)を活用し、約2割の教員が、移動教室等での野外観察の実施や 博物館などを活用していることが明らかになった。
「地層の重なり方」と 「地層の空間的な広がり」を、教員からみた生徒の理解度で比、 較すると 「地層の重なり方」の理解度(かなり理解した、おおむね理解した)は63%、 であったのに対し 「地層の空間的な広がり」の理解度は49%であった。これは3次元、 的な思考が必要となる「地層の空間的な広がり」が特に1年生の発達段階や実体験不足に より、認識しにくいためであると考えられる。
地層の空間的な広がりを理解するための教材の必要性を約7割の教員が感じているが、
都市部では、野外観察が十分に実施できない現状からも、地層の空間的な広がりを認識 できる指導法の開発が必要であると考えられる。