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Academic year: 2021

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論文内容要旨

HILIC-MS/MS 法によるヒト涙液中 tegafur 及び 5-fluorouracil の高感度 分析法

昭和学士会雑誌第 76 巻第 2 号 2016 年掲載予定

社会医学系法医学専攻 小渕 律子

口抗癌薬 TS-1は,テガフール(FT)・ギメラシル・オテラシルカリウム の合剤である. FT は,肝臓で 5-フルオロウラシル(5-FU)に代謝され,抗 腫瘍効果を発揮する.しかし,近年 TS-1療法による涙道閉塞,角膜炎など の眼合併症が報告されている.眼合併症の成因は,投与した TS-1の主成 分である未変化体の FT 及び活性代謝物である 5-FU が涙液中に高濃度に存 在することが関与していると考えられているが,未だ明らかになっていな い.涙液中の FT 及び 5-FU の薬物解析は眼合併症の成因を知ることや治療 法の選択に必要であるが,涙液中の薬物濃度の定量法は確立されていない.

本研究では,ヒト涙液中 FT 及び 5-FU について,順相カラムを用いた親水性 相互 作用 液 体ク ロ マト グラ フ ィー ( Hydrophilic interaction liquid chromatography, HILIC)−タンデム質量分析(MS/MS)による簡便かつ高 感度な分析法を確立した.涙液 10 µl に薬物を添加した後,2M 酢酸アンモ ニウム溶液 40 µl,2%ギ酸アセトニトリル 250 µl を加えて液―液抽出を 行い,遠心分離した上清 15 µl をダイレクトに分析システムにアプライし て分析を行った.分離カラムには Imtakt 社製の順相カラム UK-Amino(長

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さ 50 mm,内径 3 mm,粒径 3 µm)を使用し,移動相はアセトニトリルを ベースにした 10 mM 酢酸アンモニウム溶液のリニアグラジエントを用いた.

その結果,FT 及び 5-FU はネガティブ大気圧化学イオン化法(APCI)を用 いた多重反応モニタリング(MRM)測定により, 涙液から 1 分以内に感度 よく検出された.両薬物の検量線は 0.04~4.0 µg/ml の範囲で相関係数が 0.9978 以上の良好な直線性が得られ,検出限界は 0.04 µg/ml であった.回 収率は 99-128%で,再現性を示す精度は 5.2%以下であった.本法を用いて TS-1投与患者の涙液中 FT 及び 5-FU の分析を試みたところ,未変化体 FT だけでなく,活性代謝物 5-FU も同定かつ定量が可能であった. TS-1® 60 mg を最終服薬してから 5 時間後に採取した涙液中 FT 及び 5-FU の濃度は,患 者 A がそれぞれ 3.0 µg/ml 及び 0.57µg/ml で,患者 B がそれぞれ 3.1 µg/ml および 0.44 µg/ml であった.

本法は微量生体試料中薬物成分について高感度ハイスループット分析 が可能であり,眼科をはじめとする臨床領域及び法医学領域における薬物 及び代謝物の微量分析に有用である.今後より多くの患者涙液中の FT と 5-FU を定量することは,TS-1による眼合併症の発症要因や発症時期が明 らかになり,眼合併症の発症を予防し、患者 QOL の向上に寄与すると考え られる.

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