症 例
症 例:76歳女性。 主 訴:浮腫。 既往歴:25歳時:妊娠高血圧症候群。 家族歴:兄:関節リウマチ。 生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴ほぼなし,常 用 薬 バ イ ア ス ピ リ ン100mg1T, ブ シ ラ ミ ン 100mg3T。 現病歴:毎年健診を受診していたが,尿所 見異常の指摘は無かった。2011年12月より, DIP関節,右腫関節に自発痛が出現したため 12年1月に近医を受診して,ブシラミン300mg が開始された。2月に当院膠原病内科を受診し て,その時点では,sCr0.52mg/dl,尿所見異常 は認めなかった。3月23日より眼瞼浮腫,下腿 浮腫が出現し,約5kgの体重増加を認めた。3 月30日の膠原病内科外来にて,sCr0.63mg/dl, sAlb1.9g/dl,u-RBC30-49/HPF,u-Pro9.4g/gCr であり,ネフローゼ症候群の疑いで当科入院と なった。 入院時現症:身長142.0cm,体重43.0kg, BMI21.3,BT37.0℃,BP130/77mmHg,HR69/ min,RR12/min. 身体所見:皮疹なし,表在リンパ節腫脹なし。 頭頚部:眼瞼浮腫あり。胸部:心雑音なし,過 剰心音なし,呼吸音清。腹部:圧痛なし,肝脾 腫なし。四肢:関節腫脹なし,圧痛なし。下腿 に圧痕性浮腫あり。神経:特記事項なし。考 察
1) ブシラミン腎症は膜性腎症を呈し,薬剤の 中止と共に腎障害を来す事無く軽快する。 軽快までに必要な期間は,膜性腎症の病期 に依存するとされている。 本症例では、ブシラミンの中止に伴い,尿 蛋白は明らかな減少を認め,ネフローゼ領 域の蛋白尿,腎生検での膜性腎症の原因は ブシラミン腎症に矛盾しないと考えた。Nephron Clin Pract 2006;104:15-19.
2)半月体形成のetiologyは不明であったが, ・pauchi-immune型の半月体形成性腎炎の合併。 ・ Rheumatic vasculitis,RAに合併する半月体 形成性腎炎。 ・Lupus nephritisの合併。 ・ (IgA腎症等の)メサンギウム増殖性糸球体 腎炎の合併。 ・ ブシラミン腎症としての(免疫複合体型) 半月体形成性腎炎。等を鑑別として考慮し た。
Clin J Am Soc Nephrol 2009;4:299-308, Q J Med 1997;90:125-132, 3) ANCA陰性のpauchi-immune型の半月体形成 性腎炎。 ANCA陰性の定義は報告により異なるが, 間接蛍光抗体法,または,間接蛍光抗体法,
ブシラミン内服開始後に発症した半月体形成を伴う膜性腎症の一例
眞 部 俊 伴 野 麻悠子 大 島 康 子
波多野 道 康
ELISA法の両者での陰性例とされている。 ・ pauchi-immune型半月体形成性糸球体腎炎のう ち,20-30%程度がANCA陰性であり,ANCA 陽性例に比較して,上気道や腎外症状に乏し いとの報告もあるが,その病態を含めて,一 定の見解は得られていない。
Nephrol Dial Transplant 2005:20:1392-1399, Nephrol Dial Transplant 2000:15:1593-1599, J Am Soc Nephrol 2007:18:299-605.
4)RAに合併する半月体形成性腎炎。
Happerら は,RAに 合 併 し たvasculitic glo-merulonephritis10例 の う ち,ANCAを 評 価 した5例のうち4例で陽性と報告し,全例 がp-ANCA陽性である。また,Qarniらは, Rheumatic vasculitisによる全身症状が明ら か で な いvasculitic glomerulonephritis2例 両 者でp-ANCA陽性であったと報告している。 Q J Med1997;90:125-132, Clin Nephrol 2000;54:54-58. 5)(IgA腎症等の)メサンギウム増殖性糸球体 腎炎の合併。 Irieらはブシラミン内服中に発症した半月 体形成を伴う膜性腎症で,メサンギウム領 域へのIgA沈着,EMにて傍メサンギウム領 域にEDDを認める症例を報告している。 Nephrol Dial Transplant 1996:11:1338-1341
6)ブシラミン腎症としての(免疫複合体型)
半月体形成性腎炎。
ブシラミンとの関連が示唆される半月体 形成性腎炎は,我々の調べた限りでは英文 にて2例が報告されているに過ぎず,1例 はANCA陰 性,1例 はANCA未 検
のpauchi-immune型の半月体形成性糸球体腎炎であ る。 Am J Kidney Disease 1992:411-413, Clin Investig 1992:70:1036-1042. ブシラミン腎症の報告は,いずれも膜性腎 症であり,その臨床経過も尿蛋白,腎機能 の推移に焦点が当たっている。一方で,報 告によっては,22%,65%,61%に血尿の 出現を認めており,基底膜の障害の合併は 否定できない。 Am J Nephrol1991;11:284-288, Nephron Clin Pract 2006;104:15-19, リウマチ1993;33:215-222.
結 語
・ ブシラミン内服開始後に発症したANCA陰 性,抗GBM抗体陰性の半月体形成を伴う膜 性腎症の1例を経験した。 ・ ブシラミンによる膜性腎症は一般的に休薬に て自然軽快するが,本症例では,尿蛋白は速 やかに減少したものの,臨床的にRPGNを呈 し,腎生検にて半月体形成を確認したため, CS,IVCYにて加療を行った。 ・ 半月体形成のetiologyは不明であり,基底膜 への免疫グロブリン等の沈着と半月体形成の 関連をどのように捉えるべきか更なる検討が 必要と考えられた。図1 図2 <Urinalysis> Gravity 1.016 Protein 4+ Occultblood 3+ Erythrocytes 30-49 /HPF DisformicRBC 1+ Fattycast 10-49 /AVF Protein 6.39 g/gCr Protein 4.67 g/D <Hematology> WBC 6000 /μl Neut 77 % Lymph 13 % Eosino 3 % Baso 1 % Mono 6 % RBC 384 ×104/μl Hb 11 g/dl Hct 33.8 % Plt 28.5 ×104/μl <Biochemistry> TP 4.8 g/dl Alb 1.9 g/dl T-Bil 0.16 mg/dl AST 35 U/l ALT 26 U/l ALP 200 mg/dl LDH 191 mg/dl BUN 22.4 mg/dl Cr 0.63 mg/dl Na 142 mEq/l K 4.4 mEq/l Cl 107 mEq/l Ca 8.9 mg/dl iP 3.8 mg/dl T-Chol 261 mg/dl TG 111 mg/dl HDL-C 63 mg/dl CRP 1.04 mg/dl <Serologicaltest> ASO 28 IU/ml IgG 876 mg/dl IgA 284 mg/dl IgM 59 mg/dl C3 111.9 mg/dl C4 29.7 mg/dl CH50 35.6 mg/dl IgM-RF 29 IU/ml IgG-RF - RAPA 40 MMP-3 85.5 ng/ml 抗CCP抗体 300 U/ml <Serologicaltest> ANA 40 Homo + Speckled + SS-A - SS-B - MPO-ANCA 10> EU/ml PR3-ANCA 10> EU/ml P-ANCA - C-ANCA - GBM 10> EU/ml CIC(C1q) 1.5> μg/ml Cryo - M-pro - HBsAb - HBsAg - HBcAb - HCVAb - 表1.検査所見
図3 図4 図5 図6 図7 図8
図9
図10
図11
図12
討 論
眞部 よろしくお願いします。横浜労災病院腎 臓内科の眞部と申します。 症例は76歳の女性です。主訴は眼瞼,下腿 の浮腫で,既往に25歳時の妊娠高血圧症候群 があります。 現病歴ですが,毎年健診を受診されていま したが,尿所見異常の指摘はありませんでし た。2011年12月より,関節腫脹を自覚され, 2012年の1月,近医を受診されました。その時 点でRAPAが160倍,抗CCP抗体が300u/ml以 上,MMP-3が58ng/ml,CRP0.38mg/dlと い う ことで,関節リウマチが疑われ,ブシラミンが 300mgで開始されました。 同年の2月に当院膠原病内科を紹介受診とな りまして,その時点では血清アルブミンが3.9g/ dl,クレアチニンが0.52mg/dl,尿潜血,尿蛋 白ともに陰性でした。3月23日より,眼瞼の浮 腫,下腿浮腫が出現し,約5kgの体重増加を認 めました,3月30日の膠原病外来受診時にアル ブミンが1.9g/dl,血清クレアチニンが0.63mg/ dl,尿中赤血球を毎視野30から49を認め,尿 蛋白が9.4g/gCreであり,ネフローゼ症候群の 疑いで,当科入院となりました。 入院時現症ですが,身長は142cm,体重は 43kgで,日ごろより約5kgの体重増加を認めて いました。vital signsに特記すべき異常は認め ず,身体所見では,眼瞼浮腫,下腿性浮腫を認 めましたが,関節痛や関節炎,皮疹や神経障害 は認めませんでした。 入院時の検査所見ですが,尿検査では変形赤 血球を伴う尿中赤血球を毎視野30から49と蓄 尿で4.67gの尿蛋白を認めました。血算ではリ ンパ球は少ないものの,前後の採血では異常を 認めず,生化学ではアルブミンが1カ月で3.9g/ dlから1.9g/dlへ低下。クレアチニンが0.52mg/ dlから0.63mg/dlへ上昇を認めていました。 免疫学的検査では,免疫グロブリン,補体 に増減を認めず,リウマチ因子,抗CCP抗体 は上昇を認めていました。抗核抗体は40倍で, MPO-ANCA,PR3-ANCA,間接蛍光抗体法で のANCAはそれぞれ陰性でした。 手のレントゲン検査では,明らかな軟部組織 の腫脹や,関節周囲の骨密度の低下,骨びらん 等の変化を認めず,胸部CTでも,間質性肺炎 や,胸膜心膜炎を示唆する所見は認めませんで した。 腎生検になります。検体は2本で,皮質:髄 質は8:2でした。糸球体は18個採取され,う ち2個に全節性の硬化を認めています。半月体 を3個の糸球体に認め,小動脈に肥厚を認めま したが,腎内に明らかな血管炎を示唆する所見 は認めませんでした。 半月体形成を伴う糸球体ですが,細胞性半月 体と考えました。基底膜の一部断裂も認めまし た。 また,画像ではっきりお示しできませんが, masson,PAMでは明らかなspike形成は認めな いものの,massonで基底膜上皮側に赤染性の 沈着物を認めています。 続いて,もう一つ糸球体をお示ししますが, こちらも管外増殖を伴う糸球体ですが,基底内 への好中球の浸潤を思わせる多核白血球を認 め,droplet proteinを認めています。 IFになりますが,IgG,C3を有意に係蹄壁に 顆粒状に沈着を認め,C1qも弱いながら沈着を 認めました。IgAはmesangiumに軽度の沈着を 認めています。 IgGの分画の染色ですが,IgG1,IgC4を有意 にIgG2,IgG3も染色を認めています。 電子顕微鏡になりますが,ご覧いただくよう に,上皮側にelectron dense depositを認めてい ます。 これは同じ糸球体のやや下方になるんです が,沈着物を認める領域と,あまり認めない領 域に分かれていて,沈着物はやや分節性という 印象をうけました。 こちらの上の部分は,沈着物の多い領域の拡 大したものですが,係蹄壁の断裂と血小板の凝集を認めています。 続いて,臨床の経過です。入院時,これはご 本人の判断で,入院数日前からブシラミンの内 服を中止されていました。入院後,服薬を中止 して経過を観察したところ,速やかに尿蛋白 の減少を認めました。その一方で血尿は,継 続,増悪しており,腎機能障害もクレアチニ ン0.63mg/dlから0.84mg/dlと進行を認めたこと から,腎生検を施行しました。前記の腎生検 所見を得たことから,メチルプレドニゾロン 500mg,3日間で治療を開始しました。その後 も尿所見の改善が乏しかったため,2度目のパ ルス療法を施行して,その後は腎障害の進行は 止まりました。 プレドニン20mgで外来経過観察としていま したが,抑うつ傾向を主体とした精神症状が出 現してしまったため,IVCYを投与,プレドニ ンを減量して終了としています。その後も尿蛋 白,血尿,蛋白尿ともに寛解を維持しています。 考察です。ブシラミンの中止に伴い,尿蛋白 は明らかな減少を認め,ネフローゼ領域の蛋白 尿,腎生検での膜性腎症の原因は,ブシラミン 腎症に矛盾しないと考えました。 ブシラミン腎症は膜性腎症を呈して,薬剤の 中止とともに腎障害を来すことなく軽快しま す。軽快までに必要な期間は,膜性腎症の病期 に依存すると考えられており,尿蛋白の速やか な減りに,矛盾しないと考えました。 続いて,半月体形成のetiologyですが,まず はpauci-immune型の半月体形成性腎炎の合併を 考えました。その中では,悪性関節リウマチ, lupusnephritisは臨床的に示唆する所見がないと 考えました。 ANCA陰性の半月体形成性の腎炎ですが, ANCA陰 性 の 定 義 は 報 告 に よ り 異 な り ま す が,間接蛍光抗体法,または間接蛍光抗体法, ELISA法の両者での陰性例とされています。 pauci-immune型の半月体形成性腎炎のうち, 20から30%程度がANCA陰性であり,ANCA 陽性に比較して,上気道や腎外症状に乏しいと の報告もありますが,その病態を含めて一定の 見解は得られていません。 RAを合併する半月体形成性腎炎なんです が,先ほど申し上げたように,悪性関節リ ウマチは,この症例では否定的と考えまし た。pauci-immune 型 の vasculitis,vasculitic glomerulonephritisを合併したRAも報告されて いますが,それらはいずれもp-ANCA陽性であ り,本症例では否定的と考えています。 IgA腎 症 等 のmesangium増 殖 性 腎 炎 の 合 併 も考えました。入江先生らはブシラミン内服 中に発症した,半月体形成を伴う膜性腎症で, mesangium領域のIgA沈着と電子顕微鏡で,上
皮下にelectron dense depositを認める症例を認 める症例を報告されています。本症例ではIgA 腎症を積極的に疑う,para mesangium領域への electron dense depositの沈着はなく,積極的に 疑うものではないと考えました。 ブシラミン腎症,免疫複合体型の半月体形成 性腎炎の可能性も考えました。ブシラミンとの 関連が示唆される半月体形成腎炎は,われわ れの調べたかぎりでは,英文では2例が報告さ れているに過ぎず,1例はANCA陰性,1例は ANCA未検のpauci-immune型の半月体形成腎炎 でした。 一方で,ブシラミン腎症の報告は,ケースシ リーズとなっているものは基本的には全て膜性 腎症であり,その臨床経過も尿蛋白,腎機能の 推移に焦点が当たっています。一方で,報告に よっては,その2割から6割に血尿の出現を認 めていて,実は本症例のような基底膜への障害 があったことは否定できないと考えます。 結語です。ブシラミン内服後に発症した ANCA陰性,抗GBM抗体陰性の半月体形成を 伴う膜性腎症の一例を経験しました。ブシラミ ンによる膜性腎症は一般的に休薬にて自然軽快 しますが,本症例では尿蛋白は速やかに減少 したものの,臨床的にはRPGNを呈し,腎生検 にて半月体形成を確認したため,ステロイド, IVCYで加療を行いました。
半月体形成のetiologyは不明であり,基底膜 への免疫グロブリン等の沈着と半月体形成の関 連をどのように捉えるべきか,さらなる検討が 必要と考えられました。 ありがとうございました。 座長 ありがとうございました。ブシラミンの 治療中に発症した半月体形成を伴う膜性腎症と いうことですね。臨床経過を中心に,ご質問が ございましたら,よろしくお願いいたします。 こ れ は ア ミ ロ イ ド は 染 め た ん で し た か。 congo red染色はいかがだったでしょうか。 眞部 この症例はcongo redは染めていないで す。 座長 それっぽいところはなかったので,染め なかったんですか。 眞部 はい。なかったことで。 座長 血管あたりはどうですか。ちょっと分厚 く見えたとこもあったような気がしたんですけ ど。 眞部 明らかな沈着物がということと,あとは リウマチの発症から非常に短いということがあ りまして,染色は行っていません。 座長 ほかにコメントはありませんか。 IVCYも施行したということだったんですけ れども,なかなか免疫抑制薬は長濱先生が発表 された報告もあったと思うんですけど,治療に より,蛋白尿の改善するまでの時間は変わらな いようです。今回は,半月体形成しているから ということでIVCYを施行したということです ね。 眞部 そうですね。あとはステロイドで,病勢 のコントロールはついていたんですが,それに 伴う精神症状が出てしまって,仕方なく行っ たというふうに解釈していただければと思いま す。 座長 はい。どうぞ,木村先生。 木村 聖マリアンナ医科大学の木村です。 先生,RPGNとおっしゃっていますが,臨床 的にRPGNと考えられたんですか。 眞部 はい。臨床的にRPGNと考えました。非 常に体格が小さい方なので,クレアチニンの上 がりで見ると少ないんですが,eGFR,CCrで 見ると,もともとの80,90から,約半分まで, 2カ月の間で下がっています。 木村 クレアチニンの値の推移はどうでした か。 眞部 最初の来院時が,クレアチニンで0.5の 方です。その方が,2カ月の経過で,クレアチ ニンが1まで上昇しています。 木村 確かに腎機能は低下しています。それか ら,血尿もあって,蛋白尿もあるということで すが,この症例をRPGN症候群と言っていいか どうか疑問です。定義の問題ですけれど。 もう一つ,半月体形成腎炎と,半月体形成を すごく強調されていますけれど,それ程大きな 半月体ではないですね。何%の糸球体に半月 体が見られましたか? 眞部 一応20%なので,半月体形成性腎炎で は,なく。 木村 そうですね。半月体を伴う腎炎というべ きですね。 眞部 半月体形成を伴う膜性腎症と。 木村 後で病理の先生からお話はあると思いま すが,係蹄壁の破壊がありますので,血尿があっ たり,半月体ができてもおかしくはないだろう と思います。経過としても,ブシラミンによる 膜性腎症でいいように,私は思いましたけれど も,ほかの先生方はどうでしょうか。 座長 ありがとうございました。確かに腎機能 の悪化に関してはネフローゼもありますので, AKIみたいなものが載っかってきてもいいのか もしれないですね。 他にコメント,あるいはご質問はありません でしょうか。よろしければ,では病理のほうを 解説をお願いしたいと思います。では,山口先 生お願いいたします。 山口 ブシラミンによる膜性腎症は,エピデポ が非常に数が少ないことが多いんです。ですか ら,この疾患を膜性腎症と言っていいのかどう かという,一つ問題があります。
【 ス ラ イ ド01】 糸 球 体 は 全 体 にhypercellular で,少し管腔内も見づらくなって,外来性の 細胞がちょっと入っているのかなという印象 です。crescent様のものがこの辺にあるんです が,そんなに大きなものではないわけです。 periglomerularに少し細胞浸潤があります。 【スライド02】PASで見ますと,確かに少し間 質炎があって,peritubular capillaries的なところ もあります。糸球体は比較的おとなしいところ と,分節状に先ほどsmall crescentを思わせるよ うな,大したことはないんですが,上皮細胞の 変性,脱落もある。それから,尿細管系は少し, こういうふうに上皮の剥離,扁平化が軽度ある ということだろうと思います。 【スライド03】ここはちょっと円柱が目立って いるんですが,この糸球体を見ると,そんなに 全体に細胞が多いようには見えないです。部分 的に管内に入り込んで,少しpodocyteが二層, crescentlikeになりつつあるようなところだろう と思います。 【スライド04】それで,PAMを見ますと,ちょっ と銀が厚いともう見えないことがよくあります けれども,あまりはっきりしたspike,bubbling 等ははっきりしません。 【スライド05】ちょっと暗くて申し訳ないんで すが,こういうようにhumpを思わせるような 上皮下沈着がまばらなんですけれど。あともう 1カ所ぐらいあったように。ちょっと忘れてし まったんですが,こういうような上皮下沈着物 はまれに見られると。少しendocapillaryな変化 で,smallcrescentを伴っているということだろ うと思います。 【スライド06】管内に少し細胞が入り込んで, ちょっと二重化が来ているようなところもあり ます。 【スライド07】結局,このIFをどう見るかなん です。確かにgranularなんですが,membranous というのは,顆粒がある程度つながってloopを 形成してくるわけなんで,一部確かに連続性が あるような感じのところもあるんですが,必ず しもどうも。ですから,C3のほうがdominantで, mesangiumとperipheralに一部つながっている んですが,やや顆粒が大きいです。どちらかと いうと,僕はstarry-sky様の沈着で,これは両 方ともκもλも同じようなパターンで陽性とい うことです。hump様のものが出ているように 思います。 【スライド08】膜性腎症で,ブシラミンのとき にsubtypeがどれかというのを,僕も調べてい ないので,誰か知っている人がいれば教えて いただきたいんですが,この症例はG1,G4が 優位で,G2,G3は弱いということが言えると 思います。もちろんhumpもIgGなんで,以前 にここでcrescenticになった膜性腎症なのか, PSAGNでcrescenticになったのか。問題になっ た例も,やはりIg1全て陽性だったような記憶 があります。われわれもhumpのsubtypeを正確 には染めていないんですが,大体はG1優位だ というようなことが言われています。 【スライド09】一つブシラミンのときに特徴は 何かというと,エピデポはシンボリックにあ るだけなんです。いわゆるminimalchange的な foot process fusionがびまん性にあるというの が,ブシラミンのときの特徴なんです。比較的 これも意外と付いてはいるんです。エピデポの ないようなところでも。付いていないところも ありますが。 それから,エピデポがspikeの形成はないん です。そうすると,humpとの鑑別がもう一つ 問題になる。 それから,Intermembraneにもdepositがあっ て,ここは,dense depositではないにしても, なんとなくcontinuanceな膜の変性があるんで すかね。ちょっと変性像が膜そのものに見ら れます。そうすると,ここだけだと,こうい うintramembranous depositは 普 通 は ブ シ ラ ミ ンだと出ないです。もちろん,post-infectious と 言 い ま す か,PSAGNの と き に は, こ の intramembranous depositがもわもわとしたもの が出るのが特徴なんで,そっちには,そうする
とhumpともわもわでいいのかなということに もなります。 【スライド10】エピデポがこういうふうにある んですが,並んでいますと,みんな膜性にして しまうんですが,ここはちょっと膜の反応があ るんじゃないかと言われそうですが,ほとんど 膜の反応がないんです。よくhumpが多発して くる場合,Garland typeといわれるものに相当 する可能性があるように思います。mesangium の増殖と内皮の腫大増生があって,ここは外来 性の細胞は来ていないですが,確かにfusionは だいぶ目立ってはいます。microvilli formation もだいぶ際立っています。ここはcontinuousに ずっとつながっているのですが,あまり膜の反 応がないのです。もちろんstage1の膜という可 能性も否定はできないように思います。 【スライド11】こういうようにintramembranous depositがあって,上皮下にもちょっとspikeを つくるような傾向がある。ちょっとがたがたし ています。これが上皮下で,humpなのか,こ このlamina rara externaが少しlucentなところが わずかに残っていると,これはhumpとしか言 いようがなくなります。ただ,それ以外にちょっ とざらざらしているのもある。 そうすると,AGN post-infectiousと言います か。endocapillaryのhumpとプラス何か,ブシ ラミンのエピデポみたいなものが混ざっている というふうに考えるべきなのか,ちょっと迷う ところです。こういうちょっとspike formation もありますので。このintramembranous deposit は,通常はブシラミンでは出ないように思いま す。 【 ス ラ イ ド12】 僕 は ち ょ っ と 迷 っ た ん で す が, 基 本 的 に は 軽 い で す が,endocapillary proliferativeで,smallcrescentを 伴 っ て い る か た ち と い う こ と で, あ ま りcontinuanceな peripheral granularの パ タ ー ン と 言 う よ り は, ち ょ っ とmesangiumが 出 て い る ん で,starry-skylikeで, も ち ろ んimmune,IgGのsubtypeも 特にG1,G4が優位ということで,どちらかと いうと,感染関連腎炎で,ちょっと変なエピデ ポがありますから,ブシラミンの関与も否定は できないのかなと思っています。ただ,主体は こちらだろうと思います。以上です。 座長 ありがとうございました。では,また重 松先生お願いします。 重松 山口先生とちょっと意見が違いますけ ど。 【スライド01】この症例の組織像をざっとまと めていいますと,管外増殖がある糸球体が四つ と,中に管内増殖も目立つのがある,全節硬化 になったものが一つ。それから,尿細管のほう は間質炎があって,尿細管の萎縮とか,線維化 が伴っている変化であります。 【スライド02】それと,cellular lesionです。管 外性の変化で,これは半月体と言っていいのか, あるいは,かなりフレッシュな管内のものが, 管外へ出てきた,炎症性のものでできたのか, なかなか難しいですけれども,管外性の増殖性 の変化がある。 それから,こちらは比較的軽いですが,管内 性の変化がメーンである。間質には,間質炎と tubulitisが見られます。 【スライド03】ここでも軽いextracellularの細胞 増生がある。ここもそうです。 【スライド04】それから,これは端っこのほ うですけれども,血管に何か変化があるかな と思ったんです,内皮の肥厚があるようなと ころが一部見られました。あとは少し大きな macrophage様の細胞が増えているような間質 炎が見られるところもあります。 【スライド05】それから,ここではかなり古く なってしまった管外性病変です。線維細胞性の 半月体があって,係蹄が虚脱してしまい,かな り長い変化の後の残骸が残っているところがあ る。あと,フレッシュな尿細管炎がある。 【スライド06】マッソン染色ですがちょっと画 像が暗くて申し訳ないのですけれども,血管は 静脈と動脈はちゃんとお互いにくっつきあって 見えます。わずかに走行に乱れがありますけれ
ども,血管炎を考えるほどのものではないと思 いました。 【スライド07】それで,ちょっと糸球体の病変 を追跡して見てみたいと思うんですけれども。 ここに尿管腔があります。ここはmacula densa があり輸入血管が入ってくるところです。ここ で尿円柱ができているんですけれども,ちょっ と糸球体とmacula densaとの仕切りがよく分か らなくなっているところがあります。この糸球 体を見ていきます。ここをいろいろな断面で見 ていきます。 【スライド08】そうしますと,これはPAM染色 ですが,ちょっと変化が出てくるのは,ここら 辺なんです。ここら辺をちょっと注目しておい てください。 【スライド09】ここでちょっと変なのが出てき ています。係蹄の基底膜のところで分断されて います。だから,ここら辺で,segmentalだけ れども基底膜の変化が起こって,ここから管外 性の変化が起こる可能性が強く示唆されます。 【スライド10】マッソン染色で見ると,ここに 恐らくfibrinだと思われるが,管腔内に出でい るわけです。だから,その辺りの壊れた血管壁 から滲出が起こっているということが言えま す。 【スライド11】これもちょっと違うステップ切 片です。山口先生の最初,HEで出されたとこ ろに,すごくいいショットがあって,「あれ!」 と思ったんですけれども,やはり,こういうふ うに管外性のフレッシュな変化があります。 【スライド12】ここでは,管外性病変に少し線 維化がかかわっているところです。 【スライド13】それから,もうちょっと巣状, segmentalの異常な変化として,こういうちょっ とnodularな変化が見えるところもあります。 【スライド14】これもその一部です。 【スライド15】それで,蛍光抗体ではIgGとC3 が,私の目にはかなりgranularで有意な染色か なと思いました。 【スライド16】電顕なんですけども,確かに山 口先生がおっしゃるようにhump様の少しごつ いdepositがsubepithelialに散在性に見られます。 ここにもあります。 【スライド17】ここにもあります。ずっと基底 膜を追っても,あまり強いdepositionはほかに はあまり見られません。 【スライド18】これはepithelial cell障害です。 この基底膜の走行が非常に不規則になっている ところが出ています。 【スライド19】ここもdepositionでsubepithelial, intramembranousのdepositです。 【スライド20】これはかなり明瞭なsubepithelial deposit。 【スライド21】さて,ここでpodocyteがずっと 入ってきているんです。ここで,基底膜が分断 されているわけです。ここにはdepositがあり ませんから,何かの原因でここの基底膜が障害 されて,そして補修的にpodocyteが中に入った。 これは収縮蛋白が増えて,中に入り込んで,ま だ内皮細胞と接着はしていませんけども,かな り近づいている。これは修復的な変化だと思い ます。 【スライド22】それから,間質のほうでも, tubulitisがあります。macrophagesが入ったりし ているところはあります。 ということで,この症例は,管内増殖のある糸 球体で,膜性変化はちょっと光顕では分かりま せんけども,電顕的には上皮下の沈着物があっ て,IF上はIgGとC3は顆粒状のパターンを示 している。
それから,分節病変があって,それが管外性 増殖と関係して,中には線維性の半月体もあっ た。こんなふうな基底膜への沈着性の変化と, 管外性の変化と尿細管間質変化があったわけで す。 これを,私は一元的に考えたい。ブシラミン という薬は一つは膜型の腎症を起こす,それか ら血管炎を起こすことがあると書いてありま す。そういうわけで,この症例はブシラミンに よって,尿細管間質炎も起こっているし,膜 性腎炎様の症状もあるし,それから,あまり immune depositが見られないかたちで遅延型の アレルギー機序で起こされた管外性病変が三つ 重なったのではないかと考えました。以上です。 座長 ありがとうございました。だいぶ読みが 違うようなので,難しくて。この臨床の経過, 病理のコメントを聞かれたうえで,ご質問とか, コメントをいただければと思うんですが,いか がでしょうか。どうぞ。 佐藤 菊名記念病院の佐藤といいます。 昔の話で申し訳ないんですが,1992年だっ たと思いますけど,私はブシラミンを投与して 尿所見異常を呈した症例,五十何例をまとめて 報告しました。その内訳では最初からネフロー ゼを呈するというのは,まずありません。それ で,最初のうちは血尿とか蛋白尿で,そのまま ブシラミンを使っているとネフローゼ症候群 になる。ネフローゼ症候群になるのに,ブシラ ミンを使ってから大体1年ぐらい要していまし た。この症例は2カ月弱だったでしょうかね。 しかも,その投与量がこの症例も300mgでした が,当初,厚生省で300mgまで一応オーケーだ ということもあり,開業医の先生方がことごと く,300mgのMAXまで使用したために,尿所 見異常が非常に多く出てきたました。300mg投 与しなくとも,100mgぐらいでもブシラミンは なんとか効果があるということが分かってきた ものですから,300mg投与をなるべくしないよ うにしようということになりました。 その当時まとめたときに,300mgを投与して 約1年以上たつと,蛋白尿を呈する頻度が多く なってきていました。 それから,最初の先生の発表のときの電顕の 写真がちょっと見えなかったものですから言わ なかったんですけれども,今,病理の重松先 生のスライドで,hump様のdepositということ だったんですけれども,そういうdepositを呈 してくるものは1例もなかったです。というの は,drag induceの膜性腎症ですので,非常に小 さなdepositが,それもdiffuseに基底膜の外側 にぽっぽっと載せたような感じで,それで膜 のほうの反応はほとんどないというのが特徴 だったんです。ですから,蛍光抗体を見ますと, fine granularなんですけれども,ほとんどlineal に近いようなかたちで認められるというのが特 徴でした。ですから,この症例は2カ月弱でネ フローゼ症候群になるというのは,あってもい いのかもしれませんけれども,ちょっとブシラ ミン以外の原因を考えておいたほうがいいん じゃないかなと思って聞かせてもらいました。 座長 ありがとうございました。非常に素晴ら しいコメントをありがとうございました。 ほかにどうぞ,木村先生。 木村 聖マリアンナ医科大学の木村です。 佐藤先生,血尿を呈した症例というのはどの ぐらいあるのでしょうか。 佐藤 すみません。昔のことなのではっきり 覚えていないのですが,30,40%ぐらいあった と思います。代表的なものは,ブシラミンを 300mgの投与でネフローゼ症候群になって,そ の後もさらにどんどん使っていて紹介されまし た。biopsyした結果は間質の変化が明らかに出 ていました。ですから,ブシラミンの投与量が 長くなればなるほど,糸球体の変化もあります けれども,間質の変化も起こしてくるというこ とでした。血尿は30%か,40%だったと思いま す。 木村 どうもありがとうございます。 座長 ありがとうございました。ほかにコメン ト,ご質問はよろしいでしょうか。
時間も若干過ぎてしまいましたので,この セッションはこれで終わりたいと思います。先 生,ご発表ありがとうございました。 眞部 ありがとうございました。 座長 皆さんのご協力で,あまり遅れずに済み ましたので,後半,あと15分ほど休みだと思 いますので,ぜひまた後半も活発なご討議をお 願いしたいと思います。ご協力ありがとうござ いました。
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