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「生活排水が引き起こす影響と浄化槽の適切な管理について」

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生活排水が引き起こす影響と浄化槽の適切な管理について

〈要旨〉 われわれが生活で使用した水は、公共下水道や農業集落排水、コミュニティプラント等に よる集合処理又は、浄化槽による個別処理が行われ、河川や用水路、側溝等に放流されてい る。浄化槽による個別処理は、下水道等の整備がされていない地域にて行われており、また、 下水道整備済地域においても、下水道に接続していない世帯は浄化槽を利用している。 浄化槽による処理は、適切に管理をされた合併浄化槽を使用すれば下水道と同程度の排 水処理能力を有し、環境面への影響はほとんど無いとされている。浄化槽の維持管理は設置 者である住民に任せられているが、その水準は浄化槽法第11 条に定められる検査の受検率 から見て十分とは言えない状態である。浄化槽の維持管理を個人に任せていては十分にで きないのであれば、より確実な維持管理の手法が必要であると考えられる。 本稿においては、研究対象を茨城県内の浄化槽とし、議論を進めた。まず、浄化槽が発生 させる恐れのある悪臭や河川景観の悪化という外部不経済がどの程度であるかを、ヘドニ ックアプローチを用い地価の下落状況により明らかにした。次に、浄化槽法第11 条検査の 受検率が低迷している状況に関し、受検率向上のために全国的に行われている政策の効果 についてパネルデータを用いて分析を行い、その効果と行うべき対策を明らかにした。また、 検査未受験者に対し罰則・罰金を施行することでの下水道接続増加への効果を考察した。 これらの結果から、浄化槽が発生させる外部不経済の内部化を図るため、行政は検査未受 験者への罰則・罰金の厳格な実行、もしくは適切な補助金政策の導入を選択する必要がある との政策提言を行った。 2016 年(平成 28 年)2 月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU15603 小澤 直利

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2 目次 第1章 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第2章 生活排水処理の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2-1 生活排水処理の方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2-2 浄化槽の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2-3 浄化槽の維持管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2-4 浄化槽の維持管理の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第3章 経済学的考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 3-1 浄化槽が発生させる外部不経済について ・・・・・・・・・・・・・・・5 3-2 外部不経済への対応と現行の法制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第4章 浄化槽が発生させる外部不経済についての実証分析 ・・・・・・・・・・・6 4-1 仮説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 4-2 分析の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 4-3 実証分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 4-4 地価を下落させる要因の考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 4-5 小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 4-6 補足 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 第5章 法11 条検査受検率向上のための政策についての実証分析 ・・・・・・・14 5-1 政策について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 5-2 各政策の内容について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 5-3 分析の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 5-4 実証分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 5-5 小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第6章 行政が行うべき政策について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 6-1 分析結果から導かれる政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 6-2 検討した政策のメリット・デメリット ・・・・・・・・・・・・・・・19 6-3 小結 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 第7章 政策提言と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 7-1 政策提言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 7-2 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 謝辞・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

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3 1章 はじめに 浄化槽による生活排水の処理は、平成 25 年度末において、全国で 20.9%、茨城県では 36.3%の住民が行っている1。浄化槽による処理は、単独浄化槽を使用せず、適切に管理を された合併浄化槽を使用すれば、下水道と同等程度の汚水処理能力を有し、環境面への影響 はほとんど無いとされている2。浄化槽の維持管理は設置者である住民に任せられているが、 その水準は浄化槽法第11 条に定められる検査3の受検率(平成 25 年度は全国平均で 36.3%、 茨城県で30.1%)から見て十分とは言えない状態である4。浄化槽の維持管理を個人に任せて いては十分にできないのであれば、より確実な維持管理の手法が必要であると考えられる。 本研究では、浄化槽が発生させる恐れのある悪臭や景観の悪化という外部不経済がどの 程度であるかを明らかにし、法11 条検査の受検率向上のために全国的に行われている政策 の効果について分析を行う。また、検査未受験者に対し行政が行うべき政策について考察し、 外部不経済を内部化する効果的、効率的な政策の提言を行うことを目的としている。 浄化槽を取り扱った研究は、石川(2007)のような現状の課題の整理を行ったもの、稲葉他 (2000)や田中他(2007)のように維持管理の効果や放流水質が及ぼす影響に関して科学的分 析を行ったものがあるが、その発生させる外部不経済についてヘドニックアプローチを用 いて分析した研究は見当たらない。 本研究の構成は次のとおりである。第2章においては、生活排水処理の概要及び浄化槽の 維持管理における問題点を明らかにする。第3章においては、浄化槽が発生させる外部不経 済とその対策に関する考察を行う。第4章においては、浄化槽が発生させる外部不経済を実 証分析により明らかにする。第5章においては、現状で行われている法11 条検査受検率向 上のための政策について、その効果を実証分析により明らかにする。第6章においては、前 章までの分析をうけ、行政が行うべき政策についての考察を行う。そして、第7章において は、政策提言と今後の課題を整理する。 第2章 生活排水処理の概要 2-1 生活排水処理の方式 家庭から出る生活排水は、公共下水道や農業集落排水、コミュニティプラント等による集 合処理、もしくは浄化槽による個別処理が行われている。環境省の行った「一般廃棄物処理 実態調査」では、平成 25 年度末で集合処理によって生活排水を処理している人口割合は、 全国で72.5%、茨城県では 55.1%、浄化槽により生活排水の処理を行っている人口割合は、 1 環境省「一般廃棄物処理実態調査」参照。 2 浄化槽読本、環境省パンフレット「快適な生活と美しい環境をつくる 合併処理浄化槽」及び、一般社団 法人浄化槽システム協会ホームページ「浄化槽のしくみ」より。 3 以降本論分では「法 11 条検査」と記す。 4 環境省「浄化槽行政組織等調査結果」参照。

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4 全国で20.9%、茨城県では 36.3%とされている56 集合処理と個別処理の区域は、各都道府県が策定する「都道府県構想」及び、各市町村に おいて策定される「生活排水処理基本計画」によって選定され、それぞれの区域に住む住民 は、これらの計画で適当とされた処理方式により生活排水を処理することとなる7。処理方 式の選定について簡潔に述べると、下水道や農業集落排水等の集合処理は人家の密集した 市街地や農村集落にて行われ、浄化槽による個別処理は、集合処理が行われない家屋間距離 の大きい、住宅密集度の低い地域にて行われる。ただし、集合処理が行われている地域にお いても、下水道等に接続していない住民や、集合処理区域に選定されてはいるが下水道の整 備が及んでいない地区の住民は浄化槽を利用している。 2-2 浄化槽の種類 浄化槽はその構造から、大きく合併浄化槽と単独浄化槽に分類することができる8。単独 浄化槽は水洗便所排水のみを処理の対象とし、台所や風呂場から排出される生活雑排水は 処理をせずにそのまま河川や用水路、側溝や地中等に放流するものである。合併浄化槽は水 洗便所排水、台所、風呂場等家庭から排出される生活排水全てを処理し、放流するものであ る。単独浄化槽は水洗便所排水以外の生活雑排水は処理をせずに放流するというその性質 上、環境への負荷が大きいことから、浄化槽法により平成13 年 4 月以降新規の設置、製造 が禁止されている。しかし改正以前に設置された単独浄化槽については、浄化槽法において 「浄化槽とみなす」と記され、使用が禁止されておらず、現在でも多くの単独浄化槽が使用 されている9 2-3 浄化槽の維持管理 浄化槽法では第10 条において、「毎年一回(環境省令で定める場合にあっては、環境省令 で定める回数)、浄化槽の保守点検及び浄化槽の清掃をしなければならない。」とされ、さら に第11 条にて、「毎年一回(環境省令で定める浄化槽については、環境省令で定める回数)、 指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。」とされており、浄化槽管 5 残る数%は汲み取り等にて処理を行っている。 6 生活排水処理方式別の普及率について、国土交通省、環境省、農水省がそれぞれの人口普及率を毎年発 表しているが、ここで発表される数値は、計画上整備できる人の割合として発表されている。環境省大 臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課が発表する「一般廃棄物処理実態調査」では、実際に処 理を行っている人数が示されており、こちらの数値がより実情に即しているため、使用割合等の数字は この調査を基にし、記載している。 7 各都道府県において策定される「都道府県構想」は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第 6 条 1 項に基 づき市町村が策定した「生活排水処理基本計画」を踏まえ、地域の特性に合わせた生活処理方式が策定さ れている。茨城県では「生活排水ベストプラン」として、地域の特性に合わせた最適な生活排水処理方式 の計画を定めている。 8 本来、「合併処理浄化槽」、「単独処理浄化槽」と記されるが、本論文では一般的な呼称から、「合併浄化 槽」、「単独浄化槽」と記す。 9 「一般廃棄物処理実態調査」の浄化槽使用人口から割り出すと、全国で 46.1%、茨城県で 46.2%の浄化槽 は単独浄化槽である。

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5 理者となる住民は、保守点検、清掃、法11 条検査の三点の維持管理義務を負う。この法 11 条検査は、第10 条で定められた清掃、保守点検が適切に行われ、浄化槽が正常な状態に維 持されていることを確認するために行われるものである。浄化槽法施行規則第1 条の 2 に おいて、浄化槽の放流水質の基準が定められている10が、この基準は自然の自浄能力に浄化 を期待して定められた数値である11。浄化槽の維持管理が適切に行われないと、基準を上回 る水質の放流水が自宅近くの側溝や用水路等に排出され、公共水域の水質の悪化、放流水の 悪臭、ヘドロ等の堆積による住宅近隣の用水路や河川等の景観の悪化等の影響が発生する 恐れがある1213 2-4 浄化槽の維持管理の現状 前項で浄化槽の維持管理の方法とその必要性について記したが、現状では全ての浄化槽 が適切に維持管理されているとは言えない状況である。環境省が発表する「浄化槽行政組織 等調査結果」によると、平成25 年度中の法 11 条検査の受検率は全国平均で 36.3%、茨城 県で30.1%となっており、全国の 60%以上の浄化槽について保守点検、清掃といった維持 管理が適切に行われているか、浄化槽が正常に機能しているかが把握できていない状態で ある。前項で述べたとおり、保守点検、清掃、法11 条検査の三点が適切に行われることで 浄化槽の機能は保障されるものであり、法11 条検査を受検していない現状からは、多くの 浄化槽は適切な維持管理がなされておらず、その放流水により環境面等への影響が発生し ていると考えられる1415 第3章 経済学的考察 3-1 浄化槽が発生させる外部不経済について 前章にて、現状で多くの浄化槽は適切な管理が行われていないため、水質汚染や悪臭、景 10 合併浄化槽の場合 BOD20mg/l 以下、BOD 除去率 90%以上とされている。単独浄化槽は環境省「浄化 槽法第七条及び第一一条に基づく浄化槽の水質に関する検査の検査内容及び方法、検査票、検査結果の 判定等について」(平成 7 年 06 月 20 日)において、BOD90mg/l 以下、BOD 除去率 65%以上が望ましい 範囲とされている。また、浄化槽の規模に応じて独自の基準を定めている自治体も存在する。 11 浄化槽読本より。 12 岡城他(2012)は、保守点検時の整備不良により機能を発揮できていない浄化槽が頻発したと記している。 13 国土交通省の発表した「汚水処理施設放流水質の状況<平成14年度認定>」においては、放流水の BOD が67 mg/l、150mg/l と測定された合併浄化槽が存在し、この原因が不適切な維持管理であると記されて いる。 14 検査を受検しないが、保守点検や清掃は行っている住民も存在すると考えられるが、前項の通り、浄化 槽の機能の保障には全ての管理上の義務を果たす必要がある。稲葉他(2000)は、検査受検により放流水 質が向上する傾向があること及び、検査、点検を行っていない浄化槽の水質が点検、検査をそれぞれ、 もしくは両方行っているものと比べて最も悪くなる傾向がある分析を示している。また、維持管理につ いて保守点検しか行っていない世帯が56.8%、検査も点検も行っていない世帯が 14.8%存在し、清掃を 行なっていない世帯は10.2%存在したとの調査が記されている。 15 ヒアリングより、茨城県及び、坂東市の浄化槽行政担当者の実感としては、約半数の浄化槽は点検、清 掃も含めた適切な管理がされていないのではないかとの回答を受けている。

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6 観の悪化等が発生していると考えられると記した。これらの浄化槽が発生させる影響のう ち、浄化槽使用世帯周辺や近隣河川の悪臭の発生、河川景観の悪化については地区の住民が 容易に認識でき、外部不経済が発生すると考えられる。 3-2 外部不経済への対応と現行の法制度 経済学の観点からは、外部不経済に対しては税金や補助金等の適切な金銭的インセンテ ィブ、又は規制によって状況を改善することができるとされている16。浄化槽法11 条にお いて検査の受検は義務化されており、検査の義務を果たさない者に対しては、第12 条の 2 にて、都道府県知事は検査を受ける指導・助言ができ、生活環境の保全及び公衆衛生上必要 があると認めるときは検査を受ける勧告、さらに命令まで行えるとされている。この命令に 従わない際には第66 条の 2 において 30 万円以下の過料が定められている。これらは外部 不経済を内部化するための罰則・罰金と考えられるが、検査を行わないことに対し罰金を課 した例は無く、法11 条検査未受検への罰則・罰金は形骸化している状況である17。また、 浄化槽検査への補助金は一部自治体で独自に行われており、茨城県と接する栃木県、埼玉県、 千葉県にて補助制度が行われている自治体毎の検査受検率について調査したが、いずれの 市も検査受検率は100%には遠い状態である18。この要因は、いずれの補助金も検査や維持 管理費用の一部を補助するものとなっており、社会的費用を完全に満たす補助金額とはな っていないためであると考えられる。これらの現状により、住民が浄化槽を適切に管理する インセンティブは弱まり、浄化槽の管理費用は私的費用まで下落し、外部不経済が発生して しまっていると考えられる。 住民が浄化槽の検査を受検せず浄化槽が適切に管理されていないことで外部不経済が発 生しているとすれば、現行の浄化槽法に規定されている、「生活環境の保全及び公衆衛生上 必要がある」と認められると考えられ、行政は検査未受験者に対し、罰則、罰金を厳密に課 すという対応、もしくは検査受検への補助金の制度を創設する等の対応が必要である。 第4章 浄化槽が発生させる外部不経済についての実証分析 浄化槽が発生させる外部不経済について、本章において実証分析を行う。 4-1 仮説 実証分析にあたり、以下の仮説を設定した。 16 「ケースからはじめよう法と経済学」p.8。 17 第 12 条の 2 の命令は平成 21 年に福島県で 1 件行ったのを最後に行われていない。茨城県へのヒアリ ングからも、命令違反への罰金を行った事例は全国的にもほぼ無いと思われるとのこと。 18 市毎の検査受検率を公表しているのは埼玉県のみであったが、最高で飯能市の 37.6%(H25 年度)であっ た。栃木県、茨城県では補助金を行っている自治体は見当たらない。千葉県は3 市で行われている。千 葉県全体の法11 条検査受検率は平成 25 年度で 7.7%であり、この 3 市が 100%に近いとは考えにくい。

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7 仮説 ①浄化槽が発生させる外部不経済は、合併浄化槽基数が増加した場合よりも、生活雑排水を そのまま放流する単独浄化槽基数が増加した場合の方が、大きくなるのではないか。 ②管理不全により放流水の悪臭や景観の悪化等が発生するため、法11 条検査を行っている 浄化槽基数が増加した場合よりも、行っていない浄化槽基数が増加した場合の方が外部 不経済は大きくなるのではないか。 4-2 分析の方法 地域の環境改善の便益は地価に反映されるという資本化仮説に基づき、ヘドニックアプ ローチを用いて浄化槽基数の増減による地価への影響を分析することにより、浄化槽が発 生させる外部不経済の規模を測定する。 4-2-1使用するデータ (1)公示地価データ 今回の研究では、国土数値情報ダウンロードサービスから公示地価データを入手し、使用 した。このデータを用いて、類似した傾向を持つ都市の地区同士を比較するために、茨城県 内の人口上位10 市に存在する地価ポイントを分析の対象とした。また、浄化槽が発生させ る外部不経済を臭気や近隣河川の景観の悪化とし、その影響が及ぶ範囲は同丁目内程度で あると想定しており、分析の制度を上げるため、地価ポイントの住居表示が丁目より大きな くくりでしか住所を特定できないサンプルを取り除いて分析を行った。なお、これらの地価 ポイントの同丁目内の下水道の整備状況について各市の下水道担当部署に確認を行い、全 ての地価ポイントにおいて、概ね下水道が整備されている地区であり、地区内の住民は浄化 槽も下水道も選択ができる状態であるということを確認している19 (2)浄化槽データ 浄化槽データについては、茨城県環境対策課が所有する浄化槽台帳より、番地以下が伏せ られたデータを入手した。データには浄化槽の合併、単独の別、直近の法11 条検査受検日 が含まれており、このデータから地価ポイントと同丁目内に存在する合併浄化槽、単独浄化 槽の基数、直近1 年度以内(平成 26 年 4 月 1 日以降)に検査を行った浄化槽の基数を数えた。 浄化槽台帳では、住居表示での記載と、地番での記載となっているデータが混在しており、 地番記載となっている浄化槽については県側でどの浄化槽がどの丁目に当てはまるかは完 全に補完できないとのことであった。ただし、地番記載となっている浄化槽について、どこ 19 つくば市については回答が得られなかったため、google マップのストリートビュー機能を用いて、対 象地価ポイントと同丁目内の道路状況を閲覧できるものについて全て確認した。マンホールの配置や路 面の工事跡等から、つくば市の対象地価ポイントについても、概ね下水道が整備されていることが確認 できた。また、公示地価データ内の下水道の状況の欄においても、つくば市の対象地価ポイントは全て 有となっている。これらより、対象地区内の下水道は概ね整備されているという前提で分析を行った。

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8 の丁目に入る可能性があるといった情報は把握しており、その情報を基に、地番記載となっ ている浄化槽基数を、それぞれ入る可能性のある丁目、及び元の大字の面積の総和で割り返 し、それぞれの丁目の面積に応じて分配を行ったうえで集計を行った。ある一定の地区だけ に地番記載となっている浄化槽が集中して存在しているとは考えにくいため、この分配方 法は概ね適正であると考えられる20。なお、浄化槽基数を数える方法について、丁目単位で 区切るのではなく、それぞれの丁目が含まれる大字単位で地区を区切り、その地区毎の浄化 槽基数を数える方法についても同様の分析を行い、同等の結果が得られている。詳しくは4 -6補足及び巻末付録を参照のこと。 (3)その他データ作成上の留意点 分析に用いるデータは主に国土数値情報の公示地価内に含まれるデータを使用している が、一部それ以外に作成したものがあるため、以下に記す。 東京駅までの所要時間については、公示地価データ内の最寄り駅をもとに、「Yahoo 路線 情報」にて、平成27 年 12 月 1 日午前 7 時最寄り駅発とし、新幹線、その他快速、特急、 高速バス等も使える設定にて検索した結果を使用した。また、上野東京ラインは平成27 年 3 月 14 日開業だが、Yahoo 路線情報の路線データは JR が平成 28 年 1 月 1 日、私鉄が平 成27 年 12 月 18 日現在となっており、それ以前の路線データが反映されない。今回対象の 多くのポイントにて、常磐線が使用されていること、上野駅から東京駅まで直通でも乗換え でも数分の影響しかないことから、現状の所要時間をそのまま利用した。 各丁目の面積については平成22 年度国政調査結果に基づき入力を行った。 湖沼ダミー、河川ダミーについては、湖沼、河川から500 メートル以内の地価ポイント を抽出し、作成した。作成に当たっては国土数値情報より湖沼データ、河川データを入手 し、GIS(地図情報システム)上でそれぞれの湖沼、河川から 500 メートルのバッファを 作成し、そこに含まれる地価ポイントを抽出した。 (4)作成した変数 上記の方法により、以下の表に示す被説明変数、説明変数、コントロール変数を作成した。 各変数の基本統計量は表4 の通りである。 表1 被説明変数(全ての分析で共通) 20 浄化槽の面積に応じての分配の際、神栖市平泉 12 入会については国勢調査から面積のデータが得られ なかったため、「インターネット道具」ホームページより、地図から同地区をトレースして面積を算出し た。平泉1 丁目も同様に、同サイトでトレースして面積を算出した。 変数名 内容 出典 ln地価 茨城県内人口上位10市における173地点の公示地価の対 数値。 国土数値情報

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9 表2 説明変数(各分析により組替) 表3 コントロール変数(全ての分析で共通) 変数名 内容 出典 ln浄化槽総数 地価ポイントと同丁目内に存在する全ての浄化槽基数の対数 値。 ln合併浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する合併浄化槽基数の対数 値。 ln単独浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する単独浄化槽基数の対数 値。 ln検査済浄化槽総数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検した浄化槽基数の対数 値。 ln未検査浄化槽総数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検していない浄化槽基数 の対数値。 ln検査済合併浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検した合併浄化槽基数の 対数値。 ln検査済単独浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検した単独浄化槽基数の 対数値。 ln未検査合併浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検していない合併浄化槽 基数の対数値。 ln未検査単独浄化槽数 地価ポイントと同丁目内に存在する浄化槽のうち、平成26 年4月1日以降に法11条検査を受検していない単独浄化槽 基数の対数値。 茨城県 浄化槽台帳 変数名 内容 出典 ひたちなかダミー 地価ポイントがひたちなか市内なら1、そうでなければ0を とるダミー変数。 牛久ダミー 地価ポイントが牛久市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 古河ダミー 地価ポイントが古河市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 取手ダミー 地価ポイントが取手市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 神栖ダミー 地価ポイントが神栖市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 水戸ダミー 地価ポイントが水戸市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 土浦ダミー 地価ポイントが土浦市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 日立ダミー 地価ポイントが日立市内なら1、そうでなければ0をとるダ ミー変数。 つくばダミー 地価ポイントがつくば市内なら1、そうでなければ0をとる ダミー変数。 つくばエクスプレスダミー地価ポイントの最寄り駅がつくばエクスプレスの駅であれば 1、そうでなければ0をとるダミー変数。 国土数値情報 (公示地価)

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10 表4 基本統計量 4-3 実証分析 4-3-1 推計式 前項で示したデータにより、以下の推計式を用いて重回帰分析により実証分析を行った。 地積 地価ポイントの地積。 容積率 地価ポイントの容積率。 建ぺい率 地価ポイントの建ぺい率。 前面道路の幅員 地価ポイント前面道路の幅員。 住居系用途地域ダミー 地価ポイントの用途地域が住居系であれば1、そうでなけれ ば0をとるダミー変数。 商業系用途地域ダミー 地価ポイントの用途地域が商業系であれば1、そうでなけれ ば0をとるダミー変数。 工業系用途地域ダミー 地価ポイントの用途地域が工業系であれば1、そうでなけれ ば0をとるダミー変数。 ln駅からの距離 地価ポイントから最寄り駅までの距離の対数値。 ln東京駅までの所要時間 地価ポイントの最寄り駅から東京駅までの所要時間の対数 値。 Yahoo 路線情報 湖沼ダミー 地下ポイントが湖沼から500メートル以内にあれば1、そ うでなければ0をとるダミー。 河川ダミー 地下ポイントが河川から500メートル以内にあれば1、そ うでなければ0をとるダミー。 地区の面積 地価ポイントが存在する丁目の面積。 H22国勢調査 国土数値情報 国土数値情報 変数名 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 ln地価 173 10.799 0.469 9.341 12.578 ln浄化槽総数 173 1.635 1.823 0 5.894 ln合併浄化槽数 173 0.958 1.389 0 4.920 ln単独浄化槽数 173 1.461 1.687 0 5.425 ln検査済浄化槽総数 173 0.759 1.122 0 4.372 ln未検査浄化槽総数 173 1.552 1.760 0 5.684 ln検査済合併浄化槽数 173 0.633 1.052 0 4.213 ln検査済単独浄化槽数 173 0.345 0.656 0 2.764 ln未検査合併浄化槽数 173 0.789 1.211 0 4.394 ln未検査単独浄化槽数 173 1.433 1.667 0 5.366 ひたちなかダミー 173 0.052 0.223 0 1 牛久ダミー 173 0.069 0.255 0 1 古河ダミー 173 0.046 0.211 0 1 取手ダミー 173 0.116 0.321 0 1 神栖ダミー 173 0.040 0.198 0 1 水戸ダミー 173 0.197 0.399 0 1 土浦ダミー 173 0.133 0.341 0 1 日立ダミー 173 0.243 0.430 0 1 つくばダミー 173 0.098 0.299 0 1 つくばエクスプレスダミー 173 0.087 0.282 0 1 地積 173 2815.324 31392.030 105.000 413215.000 容積率 173 226.994 122.143 80.000 600.000 建ぺい率 173 62.197 10.935 40.000 80.000 前面道路の幅員 173 10.076 8.196 0 40.000 住居系用途地域ダミー 173 0.717 0.452 0 1 商業系用途地域ダミー 173 0.225 0.419 0 1 工業系用途地域ダミー 173 0.046 0.211 0 1 ln駅からの距離 173 7.192 1.195 0 9.149 ln東京駅までの所要時間 173 4.476 0.304 3.970 4.942 湖沼ダミー 173 0.006 0.076 0 1 河川ダミー 173 0.376 0.486 0 1 地区の面積 173 220812.900 142937.600 49512.960 792084.400

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11 4-3-2 実証分析の結果 各分析の結果を表5 に、その解釈を下に示す。 (1)分析 1:浄化槽が増加することの地価への影響に関する実証分析 従属変数:ln地価 変数名 ln浄化槽総数 -0.084 (0.020) *** ln合併浄化槽数 -0.307 (0.034) ln単独浄化槽数 -0.066 (0.033) ** ln検査済浄化槽総数 -0.048 (0.037) ln未検査浄化槽総数 -0.062 (0.027) ** ln検査済合併浄化槽数 -0.039 (0.042) ln未検査合併浄化槽数 -0.071 (0.037) * ln検査済単独浄化槽数 -0.060 (0.040) ln未検査単独浄化槽数 -0.068 (0.025) *** ひたちなかダミー -0.423 (0.138) *** -0.426 (0.148) *** -0.389 (0.153) ** -0.468 (0.160) *** -0.462 (0.136) *** 牛久ダミー -0.254 (0.073) *** -0.263 (0.078) *** -0.235 (0.079) *** -0.240 (0.081) *** -0.295 (0.071) *** 古河ダミー 0.058 (0.115) 0.020 (0.126) 0.062 (0.117) -0.162 (0.091) * 0.043 (0.122) 取手ダミー 0.109 (0.118) 0.096 (0.118) 0.126 (0.120) 0.031 (0.115) 0.018 (0.121) 神栖ダミー -0.804 (0.180) *** -0.813 (0.187) *** -0.762 (0.194) *** -0.852 (0.193) *** -0.845 (0.177) *** 水戸ダミー -0.039 (0.121) -0.038 (0.129) 0.005 (0.139) -0.067 (0.144) -0.069 (0.126) 土浦ダミー -0.509 (0.083) *** -0.519 (0.084) *** -0.502 (0.087) *** -0.588 (0.085) *** -0.557 (0.082) *** 日立ダミー -0.495 (0.120) *** -0.494 (0.127) *** -0.458 (0.133) *** -0.512 (0.133) *** -0.515 (0.119) *** つくばダミー -0.462 (0.098) *** -0.472 (0.104) *** -0.456 (0.108) *** -0.511 (0.134) *** -0.498 (0.102) *** つくばエクスプレスダミー 0.615 (0.114) *** 0.628 (0.121) *** 0.630 (0.122) *** 0.689 (0.141) *** 0.627 (0.119) *** 地積 0.000 (0.000) *** 0.000 (0.000) *** 0.000 (0.000) *** 0.000 (0.000) *** 0.000 (0.000) *** 容積率 0.001 (0.000) *** 0.001 (0.000) *** 0.001 (0.000) *** 0.001 (0.000) *** 0.001 (0.000) *** 建ぺい率 0.001 (0.004) 0.001 (0.004) 0.001 (0.004) 0.000 (0.004) 0.001 (0.004) 前面道路の幅員 0.013 (0.003) *** 0.013 (0.003) *** 0.013 (0.003) *** 0.012 (0.003) *** 0.013 (0.003) *** 住居系用途地域ダミー 0.926 (0.068) *** 0.922 (0.073) *** 0.899 (0.080) *** 0.917 (0.081) *** 0.945 (0.066) *** 商業系用途地域ダミー 0.848 (0.108) *** 0.845 (0.109) *** 0.827 (0.115) *** 0.852 (0.123) *** 0.872 (0.106) *** 工業系用途地域ダミー 0.736 (0.102) *** 0.733 (0.107) *** 0.708 (0.112) *** 0.737 (0.119) *** 0.758 (0.101) *** ln駅からの距離 -0.116 (0.032) *** -0.117 (0.032) *** -0.118 (0.032) *** -0.116 (0.032) *** -0.116 (0.032) *** ln東京駅までの所要時間 0.007 (0.168) -0.005 (0.175) -0.029 (0.172) -0.003 (0.176) -0.011 (0.172) 湖沼ダミー -0.448 (0.085) *** -0.439 (0.089) *** -0.449 (0.086) *** -0.404 (0.080) *** -0.429 (0.095) *** 河川ダミー 0.040 (0.041) 0.040 (0.040) 0.040 (0.040) 0.044 (0.041) 0.037 (0.041) 地区の面積 0.000 (0.000) ** 0.000 (0.000) ** 0.000 (0.000) ** 0.000 (0.000) 0.000 (0.000) ** 定数項 10.590 (0.768) *** 10.660 (0.821) *** 10.780 (0.806) *** 10.720 (0.828) *** 10.690 (0.805) *** 観測数 173 173 173 173 173 決定係数 0.828 0.827 0.829 0.821 0.827 分析2 分析3 分析4 分析5 推計値 ***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す。 ()内は不均一分散頑健標準誤差を示す。 推計値 推計値 推計値 推計値 分析1 推計式 (ln 公示地価)i =β0+β1(各 ln 浄化槽数)i +β2~β10(自治体ダミー)i +β11(つくばエクスプレスダミー)i +β12~β14(用途地域ダミー)i +β15(地積)i +β16(容積率)i+β17(建ぺい率)i +β18(前面道路の幅員)i +β19(ln 駅からの距離)i +β20(ln 東京駅までの所要時間)i +β21(湖沼ダミー)i +β22(河川ダミー)i+β22(地区の面積)i +εi 表5 各分析の推計結果

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12 浄化槽総数の対数値を説明変数とし、分析を行った。地価ポイントと同丁目内の浄化槽基 数が1%増加した場合、1%有意水準で 0.084%地価が下落すると示された。 (2)分析 2:合併浄化槽と単独浄化槽の地価への影響に関する実証分析 浄化槽を単独浄化槽、合併浄化槽に区別し、それぞれの対数値を説明変数として分析を行 った。同丁目内に合併浄化槽基数が増加した場合の影響は、係数はマイナスとなるが有意に は示されなかった。同丁目内に単独浄化槽基数が1%増加した場合、5%有意水準で 0.066% 地価が下落すると示された。 この結果からは、(1)で示された浄化槽基数が増加することによる地価の下落の要因は、 単独浄化槽による影響が大きいと考えられる。 (3)分析 3:浄化槽が検査を行うことの地価への影響に関する実証分析 浄化槽を法11 条検査受検の有無で区別し、それぞれの対数値を説明変数として分析を行 った。同丁目内に検査を行っている浄化槽が増加した場合の影響は、係数はマイナスとなる が有意には示されなかった。同丁目内に検査を行っていない浄化槽が1%増加した場合、5% 有意水準で0.062%地価が下落すると示された。 この結果からは、(1)で示された浄化槽基数が増加することによる地価の下落の要因は、 法11 条検査未受検による影響も含まれると考えられる。 (4)分析 4:合併浄化槽が検査を行うことの地価への影響に関する実証分析 合併浄化槽を法11 条検査受検の有無で区別し、それぞれの対数値を説明変数として分析 を行った。同丁目内に検査を行っている合併浄化槽が増加した場合の影響は、係数はマイナ スとなるが有意には示されなかった。同丁目内に検査を行っていない合併浄化槽が1%増加 した場合、10%有意水準で 0.071%地価が下落すると示された。 (2)では合併浄化槽が増加した場合の影響について優位な結果が示されなかったが、この 分析からは、検査が行われていない合併浄化槽が多いほど地価が下がることが示された。 (5)分析 5:単独浄化槽が検査を行うことの地価への影響に関する実証分析 単独浄化槽を法11 条検査受検の有無で区別し、それぞれの対数値を説明変数として分析 を行った。同丁目内に検査を行っている単独浄化槽が増加した場合の影響は、係数はマイナ スとなるが有意には示されなかった。同丁目内に検査を行っていない単独浄化槽が1%増加 した場合、1%有意水準で 0.068%地価が下落すると示された。 この結果からは、(2)で示された単独浄化槽が地価を下落させるという結果は、法 11 条 検査を受検しないことによる影響がより大きいと考えられ、単独浄化槽自体が地価を下げ るとは言えないこととなる。

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13 4-4 地価を下落させる要因の考察 浄化槽が地価に与える影響について、その外部不経済により下落させるという仮説に基 づき、分析を行ったが、浄化槽に対する情報の非対称により地価を下落させる可能性も存在 するため、このことについて考察を行う。 4-4-1 情報の非対称が発生する前提 以下の①、②、③の前提が達成されると、住民はどの浄化槽が管理されているか、されて いないか分からないという情報の非対称により、「この地区にはこれだけ浄化槽が存在する からこれだけ土地や水が汚いはずだ。」と思い込み、その地区の地価を下げるということが 発生することも考えられる。この情報の非対称に対しては、各世帯の検査受検有無の公表が 対策として有効であると考えられる。 前提 ①ある一定数の浄化槽は適切に管理されていないという実態を住民が知っている。 ②住民は地区内に浄化槽がどれだけ存在するか知っている。もしくは浄化槽を使用してい る家が簡単に判別できる。 ③住民が適切に管理されていない浄化槽が水質汚染や地下水汚染を発生させ、その周囲の 土地が汚いのではないかと心理的に感じている。 4-4-2 実態及び今回の分析結果を踏まえた考察 前項で記した前提について実態を考慮すると、 ①実際に浄化槽を使用しているような住民は、他の浄化槽の検査受検率や管理状況につい て自分の管理状況から想像ができると考えられる。 ②住民はその地区内に浄化槽がどれだけ存在するか知ることは難しい。個々の家が浄化槽 を使っているか、下水道を使っているかについても、一般的な住民は簡単に判別できない。 ③行政側が浄化槽管理の重要性について周知を行っているため、管理されていない浄化槽 の影響を理解しており、土地や水が汚いと心理的に感じる住民が発生する可能性はある。 と考えられる。今回の実証分析は、下水道と浄化槽が混在している都市部で行っており、①、 ②、③の前提が全て達成されることは難しいため、情報の非対称による地価の下落の発生は 少ないと考えられる。ただし、下水道が整備されておらず、浄化槽のみで処理をしている地 区においては、地区内全ての家が浄化槽使用世帯となり、②の前提が達成されるため、情報 の非対称による地価の下落が発生する可能性もある。 また、今回の分析では浄化槽総数が増えることで地価が下がるという結果は有意に示さ れてはいるが、浄化槽を検査済、未検査に分けた場合に、未検査の浄化槽は地価を下げてい ると有意に示されたが、検査済の浄化槽については係数はマイナスであるが有意には示さ れていない。この結果からも、地価を下げる要因は管理されていない浄化槽の発生させる臭 気や景観悪化による外部不経済の部分が大きく、情報の非対称による要因はそれほど大き

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14 いものではないと考えられる。 4-5 小結 本章では、浄化槽が発生させる外部不経済について公示地価を用いて実証分析を行った。 分析からは、浄化槽基数が増加した際に発生する外部不経済の影響は、浄化槽の合併、単独 の別に限らず、法11 条検査を行っている、行っていないことの違いによるものが最も大き いものであると示された。分析を行う際に設定した仮説②は満たされたが、①については明 確な結果が出なかった。今回の分析からは、浄化槽を使用する住民に法11 条検査を確実に 受検させる必要があると言うことができる。 4-6 補足 浄化槽台帳データの取り扱いに際し、今回は地番表記となっているデータを、面積をもと に丁目に振り分けてデータを作成し分析を行ったが、丁目に振り分けずに、それぞれの丁目 が含まれる可能性のある大字単位でその浄化槽基数を数えたデータを作成した上での分析 もあわせて行った。結果としては今回の分析と係数の符合が同じ結果が示された。このこと からも、今回のデータ作成上の浄化槽の振り分けにより結果が大きく変わったとは考えに くい。この分析結果については巻末の付録に示す。また、地区の大きさによって浄化槽数が 増加してしまい、その影響を「地区の面積」の変数ではコントロールし切れていないのでは ないかと疑問が残ったため、説明変数を、浄化槽数を地区の面積で割った割合にして同用の 分析を行った。これについても、今回示した分析と係数の符号が同様の結果が示された。こ の分析結果についても巻末の付録の項に示す。 第5章 法11 条検査受検率向上のための政策についての実証分析 前章にて法11 条検査の受検の必要性が示されたが、現状で法 11 条検査の受検率を向上 させるために多くの自治体で行われている政策について、その効果を分析する。 5-1 政策について 受検率向上のために行われている政策については、平成 22 年 3 月に環境省が発表した 「浄化槽の法定検査の受検率向上に向けた取り組み事例」において、全国の都道府県で検査 受検率向上のためにどのような取り組みが行われているかが詳しく記載されている。これ によると、多くの都道府県で行われている政策として、BOD 検査の導入、効率化検査の導 入、一括契約制度の導入が挙げられている。また、環境省が毎年発表している「浄化槽行政 組織等調査結果」において、各都道府県のBOD 検査導入状況、効率化検査導入状況が発表 されていること、同じく環境省が毎年発表している「浄化槽行政に関する調査結果」におい て、一括契約の地方自治体毎の実施状況を発表していることからも、これら 3 つの政策が

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15 受検率向上のための主たる政策であるとし、分析の対象とする。また、検査員が少ないこと で検査受検率が下がっているのではないかという疑問もあり、検査員一人当たりの検査対 象基数が増えたときに受検率に影響があるのかについてもあわせて分析を行う。 5-2 各政策の内容について (1)BOD 検査 平成8 年度に法 11 条検査の水質検査項目として新たに位置付けられたものである。上記 「浄化槽の法定検査の受検率向上に向けた取り組み事例」においては、BOD 検査導入によ り、住民に対し検査と保守点検の差異の明確化が図られるという意見が記されている。この 検査の導入については、都道府県において検査体制の整備状況等の地域の実情を勘案して 導入の判断を行うことが可能であるとされており、導入を行っていない都道府県も存在す る。さらに、BOD 検査を導入することで、国と協議を行った上で、検査項目の一部を軽減 すること(効率化検査の導入)も可能であるとされている21 (2)効率化検査 上記BOD 検査を導入することで、BOD が設置及び維持管理の状況を総合的に示す指標 であるため、他の検査項目の一部を軽減して行われる検査である22。効率化検査導入により 検査員の検査 1 件あたりの作業量を削減することが可能であり、より多くの検査が行える ようになる。 (3)一括契約 浄化槽管理者は、義務となっている保守点検、清掃、法11 条検査を行う際、それぞれ個 別の保守点検業者、清掃業者、指定検査機関と契約を行わねばならない。この手続きを一度 の契約で三点全ての維持管理の契約が行えるとした仕組みであり、住民の手続きの負担を 軽減するために設けられた政策である。 5-3 分析の方法 以下に記すデータを用いて、固定効果モデルによりそれぞれの政策が受検率向上にどの 程度寄与しているのかを分析した。 5-3-1 使用するデータ (1)データの出典 「浄化槽行政組織等調査結果」より、各都道府県の法 11 条検査受検率、BOD 検査導入状 況、効率化検査導入状況、検査員の人数、検査対象浄化槽基数を入手、「浄化槽行政に関す 21 環境省「浄化槽法定検査ガイドライン」平成 14 年 2 月改訂版参照。 22 環境省「浄化槽法定検査ガイドライン」平成 14 年 2 月改訂版参照。

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16 る調査結果」より、各都道府県の一括契約の導入状況を入手した。それぞれ平成18 年度か ら平成25 年度までの 8 年分のデータを入手した。 (2)データ作成上の留意点 一括契約の導入時期について「浄化槽行政に関する調査結果」に記載がなかったため、導 入を行っている各県及び、各県指定検査機関のホームページからの調査、ホームページに記 載が無い場合は各県の浄化槽担当部署に電話にてヒアリングを行い、導入時期を確認しダ ミー変数を作成した。 BOD 検査導入、効率化検査導入については、県内の一部地域で先行的に行われ、その後 全県で行われたという実態がいくつかの都道府県で見られた。ダミー変数を作成する際に は、一部で導入されていれば1 とし、全く行われていなければ 0 とした。しかし、一括契約 導入ダミーについては、県内の一部地域で行われた際に 1 としてしまうと、入手したデー タの都合上、一括契約ではなく浄化槽市町村設置整備事業を行っている市町村が含まれて しまい、一括契約の効果が適切に測定できないため、県や県指定検査機関が県内全ての市町 村を対象に一括契約を導入した場合に1 となるダミー変数を作成した。 (3) 作成した変数 上記の方法により、以下の表に示す被説明変数、説明変数、コントロール変数を作成した。 各変数の基本統計量は表8 の通りである。 表6 被説明変数 表7 説明変数及びコントロール変数※ ※年次ダミーについては検討期間中の景気や社会情勢の変動をコントロールする目的で追加した。 変数名 内容 出典 法11条検査受検率 各都道府県における平成18年~平成25年までの年度毎の法11条検査受検率。 H18~H25年度の 浄化槽行政組織 等調査結果 変数名 内容 出典 BOD検査導入ダミー BOD検査を導入していれば1、していなければ0をとるダミー。 H18~H25年度の 浄化槽行政組織 等調査結果 効率化検査導入ダミー 効率化検査を導入していれば1、していなければ0をとるダミー。 H18~H25年度の 浄化槽行政組織 等調査結果 一括契約導入ダミー 効率化検査を導入していれば1、していなければ0をとるダミー。 H18~H25年度の 浄化槽行政に関 する調査結果 検査員一人当たり対象基数 法11条検査対象浄化槽基数を検査員数で割ったもの。 H18~H25年度の 浄化槽行政組織 等調査結果 年次ダミー 平成18年~平成25年の年ダミー

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17 表8 基本統計量 5-4 実証分析 5-4-1 仮説 分析に当たり、以下の仮説を設定した。 仮説 ①BOD 検査や効率化検査の導入による作業員側の効率化により、検査受検率が上がるので はないか。 ②一括契約の導入による住民側の手続きの簡素化によって検査受検率が上がるのではない か。 ③検査員一人当たりの検査対象浄化槽基数が増えることで、検査受検率は下がるのではな いか。 5-4-2 推計式 前項で示したデータにより、以下の推計式を用いて固定効果モデルにより分析を行った。 変数名 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 法11条検査受検率 376 0.378 0.256 0.033 0.924 BOD検査導入ダミー 376 0.769 0.422 0 1 効率化検査導入ダミー 376 0.535 0.499 0 1 一括契約導入ダミー 376 0.125 0.331 0 1 検査員一人当たり対象基数 376 8750.803 7731.453 1318.381 48003.000 年次ダミー 省略 推計式 (法 11 条検査受検率)it=β0+β1(BOD 検査導入ダミー)it +β2(効率化検査導入ダミー)it +β3(一括契約導入ダミー)it +β4(検査員一人当たり対象基数)it +β5(年次ダミー)t+θi+ε

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18 5-4-3 実証分析の結果 分析の結果を表9 に、その解釈を下に示す。 効率化検査導入により法 11 条検査受検率は 1%有意水準で 3.7%上昇すると示された。 BOD 検査、一括契約の導入に関しては有意な結果が得られなかった。検査員一人が行う浄 化槽検査基数が1 基増えると、法 11 条検査受検率は 1%有意水準で 0.0002%下がると結果 が出た。これは一人が行う検査数を1000 件減らすとすれば受検率が 0.2%上昇すると読み 替えることができる。分析を行う際に設定した仮説について、②については明確な結果が出 なかったが、①の一部と③については満たされることとなった。 この結果からは、住民は手続きが複雑であることが検査受検の障害となっているのでは ないこと、効率化検査導入や検査員の受持基数といった検査を行う側の作業効率化に関す る政策は、わずかに受検率向上に有意に働くことが判明した。 5-5 小結 本章では、現在多くの自治体で行われている法11 条検査受検率向上のための政策の効果 について実証分析を行った。分析結果からは、一括契約の導入、BOD 検査導入に関して有 意な結果が得られなかったが、効率化検査導入、検査員一人当たりの検査基数については有 意な結果が得られた。検査を行う側の作業を効率化する現状の政策を行いつつ、住民側へ検 査受検へのインセンティブを与える政策を行う必要があると言うことができる。 第6章 行政が行うべき政策について 6-1 分析結果から導かれる政策 第5章、第6章で行った分析から、法11 条検査を受検していない浄化槽が増加すること で外部不経済が発生しており、現在主に行われている法11 条検査受検率向上のための政策 従属変数:法11条検査受検率 変数名 BOD検査導入ダミー -0.017 (0.012) 効率化検査導入ダミー 0.037 (0.012) *** 一括契約導入ダミー -0.010 (0.019) 検査員一人当たり対象基数 -0.000002 (0.000) *** 年次ダミー 定数項 0.334 (0.012) *** 観測数 376 決定係数 0.609 ***、**、*はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を示す。 ()内は標準誤差を示す。 推定値 省略 表9 法 11 条検査受検率向上のための政策の効果に関する分析結果

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19 の効果はあまり大きいとは言えず、住民側に受検へのインセンティブを与える政策が必要 であることが判明した。 第3章で述べたとおり、経済学の観点からは、外部不経済に対しては税金や補助金等の金 銭的インセンティブ、又は規制によって状況を改善することができるため、浄化槽法第12 条の2 及び第 66 条の 2 において定められた罰則・罰金、もしくは補助金が適切に施行され れば、外部不経済は内部化されると考えられる。なお、いずれの政策を行う場合においても、 住民への十分な説明を行い、法定検査受検の意義を理解させる必要がある。 6-2 検討した政策のメリット・デメリット 検討した政策のメリット・デメリットについては、表10 の通りとなる。 罰則・罰金 補助金 メリット ・現行法を厳格に実施するのみで、導入コスト がかからず、早期の導入が可能である。 ・下水道整備済地域において、下水道の接続者 が増加する。 ・罰則・罰金と比較し、住 民からの理解が得られや すく、制度の導入が容易 である。 デメリット ・住民等からの反発、それに対応するコストが 発生する。 ・財政支出が確実に発生す る。 罰則・罰金の実行は現行法をより厳格に施行するということであり、導入コストがかから ないというメリット、また、下水道整備済地域において下水道接続者が増加するというメリ ットが存在する23。デメリットとしては、住民からの反発の発生、それに対応するコストの 発生が挙げられる24 補助金の実行は、住民から理解が得られやすく、スムーズに制度の導入が行えることがメ リットとして挙げられる。デメリットとしては、確実な財政支出が発生する点が挙げられる。 6-2-1 罰則・罰金の導入による下水道接続者の増加についての経済学的考察 住民は排水処理方式の選択にあたり、 ・浄化槽使用の余剰=(浄化槽から得られる便益-浄化槽使用にかかるコスト(維持管理費)) ・下水道使用の余剰=(下水道から得られる便益-下水道使用にかかるコスト(使用料、接続工事費)) を比べて、余剰がより大きい方式を選択する。図1 の JB は、上記式を並べ替えた (浄化槽から得られる便益-(下水道から得られる便益-下水道使用にかかるコスト)) が大きい世帯順に並べたものである。 罰則・罰金が行われていない場合、住民は適切な管理を行わないため、浄化槽の管理費用 23 ここでは下水道と表記しているが、これは農業集落排水等の集合処理全般を含む。 24 茨城県、坂東市へのヒアリングからも、現状の検査受検率では全ての未検査住民に罰金を課すことは あまり現実的ではない旨を伺っている。 表10 各政策のメリット・デメリット

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20 は私的費用(PC)まで下落し、q 世帯が浄化槽を使用することとなる。罰則・罰金により浄化 槽の適切な管理使用を求めることで、浄化槽使用にかかるコストがこれまでの私的費用か ら、社会的費用(SC)まで増加することとなり、浄化槽から下水道よりも大きな余剰を得る住 民は減少し、浄化槽を使用する住民はq*世帯となる。これにより、図の q-q*の住民が下水 道に切り替えると考えられる。 6-2-2 浄化槽使用コストと下水道使用コストの試算 罰則・罰金により浄化槽を使用する住民が下水道へ切り替わることとなるのかを検証す るため、浄化槽を適切に管理使用し続けるコストと、下水道に切り替えて使用し続けるコス トについて試算をし、比較を行った。 (1)試算の方法 将来的なコスト(浄化槽管理費用及び下水道使用料)は現在価値に割引いて計算を行った。 ①浄化槽使用コスト=𝛴浄化槽適切管理費用× 1/(1 +利子率)𝑡年後 ②下水道使用コスト=工事費用+ 𝛴下水道使用料× 1/(1 +利子率)𝑡年後 上記の式を用いて、1%、5%、10%の利子率を用いて算出し、①が②を上回る年数(t)を 算出した。なお、浄化槽を使用するものが下水道に切り替える際には自宅内排水設備の切り 替え工事費用が発生するため、下水道使用コストの初年度には工事費用を含めた。 (2)使用したデータ 浄化槽の維持管理コストについては、環境省が平成26 年 2 月に発表した「市町村浄化槽 整備計画策定マニュアル」において、モデルケースとして設定された浄化槽にかかるコスト が記載されており、5 人槽の場合、清掃 25,000 円、点検 12,000 円、11 条検査 5,000 円、 浄化槽消耗品代(ブロワ維持管理費)8,000 円、計 50,000 円が浄化槽の年間管理費用と挙げ られている。茨城県環境対策課に浄化槽管理の費用について確認したところ、概ね同程度の 費用・便益(p) JB SC PC 世帯数(q) p* p q* q 図1 罰則・罰金による生活排水処理方式選択の変化

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21 額であったため、このモデルケースの費用にて計算を行う。 下水道にかかるコストについて、下水道使用料は国土交通省ホームページ「下水道使用料 に関するデータ」より、一般家庭排水(20 ㎥/月使用)の平均使用料を一月 2,442 円、年間 29,304 円としているデータを参考にした。このデータは平成 12 年度と古いため、消費税改 定による値上げ、下水道経営上の値上げの分を加味し、値上げ率は10%程度であると考え、 29,304×1.1=32,234 円≒32,000 円とした。茨城県の人口上位 10 市の現行の下水道使用料 を調査したところ、20 ㎥使用時の平均額は 32,666 円であったため、上記使用料は妥当であ ると考える。また、浄化槽から下水道への接続工事費用は世帯面積や敷地構造等により異な るが、坂東市下水道課へのヒアリングからは平均すれば概ね30 万円程度になるのではない かとの意見があり、この額とした。 (3)試算の結果 利子率1%のときは、切り替え 18 年後に浄化槽の総費用が下水の総費用を上回る。利子 率5%のときは、切り替え 32 年後に浄化槽の総費用が下水の総費用を上回る。利子率 10% のときは、切り替え 100 年後にも浄化槽の総費用が下水の総費用を上回らない。との結果 となった。 この結果からは、罰則・罰金により浄化槽の適切な管理を徹底させることで、住民はその 将来的なコストと下水道の将来的なコストを比較し、長く住み続けると考える住民は下水 道への切り替えを行い、この先何年住むか分からない住民や高齢者等は、浄化槽を適切に管 理して使用する方が特になると考え、下水道が整備されても、下水道への接続は行わないと 利子率r:1% 接続後年数(t) 0 1 2 17 18 19 下水道コスト(初年度は接続工事費用発生) 300,000+32,000 31,683 31,369 27,020 26,753 26,488 浄化槽コスト 50,000 49,505 49,015 42,219 41,801 41,387 下水道コスト積算 332,000 363,683 395,053 829,992 856,745 883,232 浄化槽コスト積算 50,000 99,505 148,520 828,113 869,913 911,300 下水道積算コスト-浄化槽積算コスト -282,000 -264,178 -246,533 -1,879 13,169 28,068 利子率r:5% 接続後年数(t) 0 1 2 31 32 33 下水道コスト(初年度は接続工事費用発生) 300,000+32,000 30,476 29,025 7,052 6,716 6,396 浄化槽コスト 50,000 47,619 45,351 11,018 10,493 9,994 下水道コスト積算 332,000 362,476 391,501 830,970 837,686 844,082 浄化槽コスト積算 50,000 97,619 142,971 829,641 840,134 850,127 下水道積算コスト-浄化槽積算コスト -282,000 -264,857 -248,531 -1,329 2,448 6,046 利子率r:10% 接続後年数(t) 0 1 2 98 99 100 下水道コスト(初年度は接続工事費用発生) 300,000+32,000 29,091 26,446 3 3 2 浄化槽コスト 50,000 45,455 41,322 4 4 4 下水道コスト積算 332,000 361,091 387,537 651,972 651,974 651,977 浄化槽コスト積算 50,000 95,455 136,777 549,956 549,960 549,964 下水道積算コスト-浄化槽積算コスト -282,000 -265,636 -250,760 -102,016 -102,014 -102,013 省 略 省 略 省 略 表11 浄化槽使用コストと下水道使用コストの比較結果

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22 言うことができる。 6-2-3 下水道接続者が増加することのメリット 下水道接続者が増加することで、汚水処理費用が逓減し、効率的な集合処理が促され、下 水道事業の効率的な運営が図られる。これにより、住民は下水道使用料が安くなるという恩 恵が受けられるとも考えられる。また、多くの自治体では下水道使用量収入のみでは汚水処 理費用が賄えておらず、汚水処理費用に一般会計からの繰り入れが行われており、下水道か ら直接便益を受けない住民の税金が投入されている。下水道接続者が増えることで、一般会 計の繰り入れが減り、住民の税負担の公平性が改善されるという点も挙げられる25 6-3 小結 本章では、前章まで行った分析の結果を受け、経済学の視点から行うべき政策、そのメリ ット、デメリット、政策実行に伴う付随効果について考察を行った。本章での考察から、次 章において政策提言を行う。 第7章 政策提言と今後の課題 7-1 政策提言 法 11 条検査未受検の浄化槽が増加すると、その外部不経済により地価が下落するため、 効率化検査の導入、検査員の増加という検査を行う側の作業効率化を図りつつ、住民側には 検査の必要性を周知した上で、現行法に定められた法11 条検査未受検に対する指導、勧告、 命令、過料といった罰則・罰金の厳格な実行、もしくは適切な補助金政策の導入を行い、検 査を確実に受検するインセンティブを与えるべきである。実行に当たっては、それぞれの政 策のメリット・デメリットを十分に比較した上で最適な政策を選択することが必要である。 また、罰則・罰金の実行には、下水道整備済地域においては下水道接続者が増加するとい う付随効果も考えられるため、より効率的であるとも考えられる。 7-2 今後の課題 ・浄化槽データについて 今回浄化槽の外部不経済の分析に用いたデータからは、浄化槽の丁目毎の基数が完全に 把握できなかった。今後、より詳細な浄化槽データを用いることで、距離に応じた浄化槽の 外部不経済の比較や、都市部と農村部での比較等、より綿密な検証を行うことができ、今回 の研究をより頑健な結果として示すことができると考える。 ・行政が行うべき政策について 25 国土交通省ホームページ「下水道経営」より。

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23 法11 条検査未受検世帯に対し、代執行を含めた行政による強制的な浄化槽の維持管理と いう手法も考えられた。浄化槽法には代執行についての規定が無いため、行政代執行法に基 づき行われることとなるが、その要件について行政代執行法第2 条に、「法律(法律の委任 に基づく命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基づ き行政庁により命ぜられた行為(他人が代ってなすことのできる行為に限る。)について義 務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且 つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自 ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から 徴収することができる。」と規定されている。浄化槽の検査受検は、浄化槽法により命ぜら れ(浄化槽法第 11 条、第 12 条の 2)、他人が代わってなすことのできる行為であり、他の手 段(命令違反への過料という行政罰も含め)では履行を確保することが困難であると考えら れる。ただし、「その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるか」の部分 については、今回の分析から得られた地価を下げる要因(悪臭や景観悪化)がどの程度影響し ているかも含め、行政庁が浄化槽法の趣旨・目的に即した観点から誠実に判断しなければな らず、その要件が満たされるかの言及が難しい。また、前述した今回の分析のデータ上の問 題や、分析対象を茨城県に限定していることが、今回代執行の可能性について言及すること をより難しくしている。今後、より詳細及び広域におけるデータを用いて分析を行うことで、 代執行や、行政による強制的な浄化槽の維持管理の可能性についてもより踏み込んだ言及 を行うことができると考える。 謝辞 本稿の執筆に当たり、福井秀夫教授(プログラムディレクター)、小川博雅助教授(主査)、 下村郁夫教授(副査)、三井康壽客員教授(副査)、鶴田大輔客員教授(副査)から、丁寧か つ熱心なご指導をいただきました。また、まちづくりプログラムの教員の皆様からも、大変 貴重なご意見をいただきました。この場を借りて、心より御礼申し上げます。また、お忙し い中、データ提供やヒアリングにご対応くださった関係自治体、関係機関の皆様、本学にお いて研究の機会を与えて下さった派遣元に、厚く感謝申し上げます。そして、1 年を共に過 ごしたまちづくりプログラムの同期の皆様及び研究生活を支えてくれた家族に改めて感謝 申し上げます。 なお、本稿は、個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではあ りません。また、本稿における見解及び内容に関する誤り等は、全て筆者の責任にあること を申し添えます。 参考文献 ・福井秀夫(2007)「ケースからはじめよう 法と経済学」,日本評論社.

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24 ・八田達夫(2008)「ミクロ経済学Ⅰ」,東洋経済新報社. ・中川雅之(2008)「公共経済学と都市政策」,日本評論社. ・公益信託柴山大五郎記念合併処理浄化槽研究基金技術ワーキンググループ(2013) 「浄化槽読本~変化する時代の生活排水処理の切り札~」,公益財団法人日本環境整備教育センター. ・広岡隆(2007)「行政代執行法[新版]」,株式会社有斐閣. ・治田伸介・櫻井雄二・愛媛大学農学部(2007). 「農村地域における戸別合併浄化槽処理水質の実態解明」,農村計画学会誌,Vol.26,pp.215-220. ・田中恒夫・荻原健史・小林幸夫・木下恵理・杉山英行(2007) 「浄化槽から排出される汚濁負荷とその河川・沼水質への影響」,水環境学会誌,Vol.30(4),pp.219-225. ・稲葉章・山本康・海老原徳一・関根高彦・戸田義美・伊藤強・竹田茂(2000) 「法定検査の受検が浄化槽の処理水質に与える効果」,月間浄化槽,No.288,pp.14-18. ・岡城孝雄・櫛田陽明(2012)「浄化槽技術の特徴と意地管理の重要性」,環境技術,Vol.41,pp.722-727. ・石川千佳(2007)「汚水処理適正化に向けた浄化槽行政の課題」 東京大学大学院修士論文. ・金本良嗣・中村良平・矢澤則彦(1989) 「ヘドニック・アプローチによる環境の価値の測定」,環境科学会誌 2(4),pp.251-265. ・田中宏明(2014)「畜舎の外部性と臭気指数規制による規制基準の違いが地価に与えた影響について~埼玉 県における分析~」,政策研究大学院大学修士論文. ・環境省パンフレット(2002)「快適な生活と美しい環境をつくる 合併処理浄化槽」 . ・環境省「一般廃棄物処理実態調査結果」 http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/, アクセス日時:2016.2.12 9:41. ・環境省「浄化槽行政組織等調査結果」 http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/data/soshikitou_chousa/index.html, アクセス日時:2016.2.11 18:19. ・環境省「浄化槽行政に関する調査結果」 http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/data/gyousei_chousa/gyousei_chousa.html, アクセス日時:2016.2.11 18:20. ・国土交通省「汚水処理施設放流水質の状況<平成14年度認定>」 http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040822_4/05.pdf,アクセス日時:2016.2.11 17:58. ・国土交通省「下水道使用料に関するデータ」 http://www.mlit.go.jp/crd/city/sewerage/data/basic/gesui_siyouryou.html, アクセス日時:2016.2.6 18:26. ・国土交通省「下水道経営」 http://www.mlit.go.jp/crd/city/sewerage/data/keiei.html, アクセス日時:2016.2.6 18.24. ・一般社団法人浄化槽システム協会「浄化槽のしくみ」 http://www.jsa02.or.jp/01jyokaso/01_1a.html,アクセス日時:2016.2.11 12:32. ・google 「google マップ」 https://www.google.co.jp/maps,アクセス日時:2016.2.7 11:02.

(25)

25

・Yahoo! Japan「Yahoo 路線情報」 http://transit.yahoo.co.jp/,アクセス日時:2016.2.6 18.34. ・インターネット道具「地図から距離方角、面積を得る」

参照

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