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応益課税としての法人事業税の検証

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著者 伊多波 良雄

雑誌名 經濟學論叢

巻 64

号 3

ページ 679‑695

発行年 2013‑03‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013750

(2)

【論 説】

応益課税としての法人事業税の検証

伊 多 波 良 雄  

は じ め に

 事業税は,1878年に公布された「地方税規則」の中で,府県税として組み 入れられた営業税にその起源がある.地方税として出発した営業税は,日清 戦争後増大した国の財政需要を賄うため国税に移譲された.1896年に従来府 県税が課していた営業のうち,物品販売業,銀行業,製造業等24種について 国税営業税が課されることになった.この際,府県においいては10分の2を 限度として附加税を課すことが許されると同時に,免税店以下の小売業には 府県が別に課税することが許された.さらに,市町村制の規定に基づき国税 営業税に対して100分の50を制限率として附加税を課すことができた.国が 営業税を国税に移譲した理由は,弾力性に富みかつ確実な財源の確保,地域 間の負担の公平性,農民と商工業の間の国費分担の均衡の確保などが挙げら れる1)

 その後,1926年3月営業収益税法が制定され,営業税法は廃止された.営 業収益税法は1927年1月から施行されている.従来の営業税法は主に外形 標準(建物の賃貸価格,建物の大きさ,従業員の数など)によって賦課したのに対 し,営業収益税は営業の純益に賦課することになった.営業収益税は,1940 年に営業税に改められている.このとき,地方分与税法により還付税となる.

1947年には地方分与税法の改正において還付税が廃止され,営業税は府県税

1) 本節は藤田(1949)18―21頁を参考にしている.

(3)

の独立税となる.1948年には,営業税は国税営業税附加税に引き継がれ現在 の事業税に名称を変えている.そして,1954年には特別所得税が事業税に統 合され現在に至っている.

 1926年に廃止された営業税は外形標準課税であったが,その後外形標準課 税は行われていない.戦後,シャウプ勧告は付加価値を課税標準とする事業 税,すなわち事業税の外形標準課税を勧告する.政府はこれに従い事業税の 外形標準課税を提案するが,地方制度調査会や税制調査会の反対論に押され,

その実施に至っていない.

 その後,事業税の外形標準課税に関して議論が行われ,法人事業税に関し て2004年度から外形標準課税が導入されている.しかし,資本金が1億円以 上の法人に適用されており,限定的である.

 法人事業税が地方税として位置づけられている根拠は,行政サービスから の利益を企業活動が受けているという点に求められる.つまり,課税根拠と して利益説が考えられている.この際,法人事業税の負担配分としては受け ている受益に応じて負担するという応益原則を採用するのが適当である.法 人事業税の場合,企業が受けている受益を何で測定するのかというのが大き な問題である.

 戸谷(1994)は,都道府県ごとに所得と付加価値のいずれが公共サービスと 関連しているかを,公共サービスと所得および公共サービスと付加価値の相 関係数を求めることによって検証している.そこでは,所得として企業所得を,

付加価値として県内純生産を用いている.また,公共サービスとして,生活 基盤投資,産業基盤投資,農林水産投資,国土保全投資およびその他の投資 の5つを用いている.その結果,5つの投資のいずれの場合も企業所得より 県内純生産との関係がより大きいことを指摘している.

 さらに,投資の代わりに社会資本ストックを用いた場合も検証しており,

やはり県内純生産との関係がより強いことを確認している.

 戸谷(1994)では社会資本ストックと付加価値との関係を見ているが,本来

(4)

は社会資本ストックのもたらす便益と付加価値の関係を見る必要がある.本稿 では,社会資本ストックの便益と付加価値の関係,さらに2004年度から導入さ れた外形標準課税で用いられている付加価値割,所得割および資本割と社会資 本ストックの便益との関係を求め,応益税としての法人事業税の検証を試みる.

 本稿の構成は次のとおりである.第1節で簡単なモデルを用いて,社会資 本ストックの便益と付加価値の関係を示す.第2節では,社会資本ストック の便益の推定を試みる.第4節で,法人事業税と社会資本ストックおよび社 会資本ストックの便益の関係を確認し,第5節で3つの外形基準と社会資本 ストックの便益との関係を見る.最後に,簡単にまとめる.

1 社会資本ストックの便益と付加価値の関係

 ここでは,簡単なモデルを想定し,社会資本ストックの便益を求め,これ と付加価値との関係を見る.

1. 1 モ デ ル

 経済主体が家計と企業からなるある経済を仮定する.主な変数と記号は表 のとおりである.

 それぞれの経済主体の活動および均衡体系は次のとおりである.

家 計

 家計は予算制約と時間制約の下で効用を最大にするようにx1, x2, x4を決定 するものとし,次のように定式化する.

需 要 供 給 価 格 初期賦与領量

家 計 企 業 家 計 企 業

合 成 財 x1 y1 p1

土  地 x2 y2 p2 (地 価) −x2 労  働 y3 x3 p3 (賃金率) −x3 レジャー x4

(5)

    v=max

x1, x2, x4

u(x1, x2, x4) (1)  

    s. t. p1x1+p2x2+p3x4=I (2)  

    Ip3x3p2x2+π (3)  

 効用関数u(・)は狭義準凹関数(strictly quasi-concave function)であり,それぞ れの変数の限界効用は正で,逓減するものとする.さらに,ここではホモセ テックな効用関数を仮定し,集計の問題は発生しないものとする.Iは所得を 示しており,具体的には(3)式で表される.(3)式右辺第1項は,労働の初期 賦与量(24時間)を市場で販売することによって得られる収入である.(3)式 右辺第2項は,土地を販売して得られる収入である.家計は土地を所有して おり,これを企業と当該家計に販売すると仮定されている.(3)式右辺第3項 のπは合成財を生産している企業からの利潤の配当である.vは間接効用関 数で,p(=(p1, p2, p3))を価格ベクトルとすると,効用最大化の下ではvは次の ように示される.

    v(p, I) (4)  

企 業

 企業は,利潤最大化行動の下で合成財を生産するものとし,次のように定 式化される.

    π=max

y1, y2, y3

p1y1-p2y2-p3y3 (5)  

    s. t. y1=f(y2, y3, G) (6)  

企業は合成財を生産する際,合成財を用いないで土地y2と労働y3を用いてい る.通常の性質を持っている生産関数f(・)は(6)式で示されており,公共財 Gが生産に貢献している.

 πは利潤関数を示し,次のように表される.

    π(p, G) (7)  

(6)

均 衡 体 系

 均衡体系は,次のような合成財,土地および労働の各市場の均衡条件から なる.

    合成財市場 x1-y1=0 (8)  

    土地市場  x2y2-−x2=0 (9)  

    労働市場  y3-x3=0 (10)  

各市場にそれぞれp1p2p3を掛け,家計の時間制約−x3x3x4を考慮する と家計の予算制約式が得られるので,3本の均衡条件式のうち独立な式は2 本だけである.他方,内生変数はp1p2p3の3つである.ここで,後の分 析の事を考えて,p1=1とする.p2,p3の解は唯1つ存在するものとする.

1. 2 社会資本ストックの便益の導出

 公共財の変化(GAからGB)によって,経済の状態がAからBに変化すると するとき,家計の効用水準は,vAからvBになる.ここで,vA=v(pA, IA), vBv(pB, IB)である.pApBは状態ABにおける価格ベクトルである.

 公共財の変化による純便益は等価変分EVによって測られるものとする.

等価変分EVは,e(・)を支出関数とすると,次のように定義される.

    EV=e(pA, v(pB, IB))-e(pA, v(pA, IA)) (11)  

(11)式は,次のように展開される.

    EV

vA

vBe

vdv     =

A→B

3k=2evpv

k

dpk+∂e

v

v

∂IdI (12)  

記号

は線積分を,AB(pA, IA)→(pB, IB)をそれぞれ示している.ここで,

分析を簡単にするため次のような準線形効用関数を仮定する.

    u=x1+u(x2, x4) (13)  

p1=1を仮定しているので,貨幣の限界効用は1,∂e

v=1となる.ロワの

(7)

恒等式を用いると(12)式は次のように展開される.

    EV=

A→B{-x2dp2-x4dp3+dI} (14)  

dIdπは(3),(5)を用いると次のようになる.

    dI=−x3dp3+−x2dp2+dπ (15)  

    dπ=-y2dp2y3dp3fGdG (16)  

(15)式を(14)式に代入すると,EVは次のとおりである.

    EV

A→B{-x2dp2-x4dp3x3dp3x2dp2+dπ} (17)  

x3=x3+x4を用いると,(17)式は次式になる.

    EV=

A→B{-x2dp2+x3dp3x2dp2+dπ} (18)  

       ①   ②   ③  ④ 括弧内の項の解釈は次のとおりである.

① 借地人としての地代上昇による余剰の減少

② 賃金上昇による余剰の増分

③ 地主としての地代上昇による余剰

④ 企業の所得増

(15)式と(16)式を(14)に代入し,整理すると次のようになる.

    EV=

A→B{(−x2-x2-y2)dp2+(x3-y3)dp3+fGdG}

0 0

(19)  

(19)式は土地と労働市場の均衡条件式を用いると,{ }内の第1,2項目は ゼロとなるので,次のようになる.

    EV=

A→B fGdG (20)  

この式は,公共財を増加させるとき,EVは企業が生産する際に公共財がもた らす生産の増大であることが分かる.このように,社会資本ストックの便益 はその限界生産性であることが分かる.

 ところで,社会資本ストックの限界生産性と付加価値との関係は次のよう に考えることができる.本モデルでは,付加価値は賃金増,地代増および企

(8)

業利潤であり,積分記号を無視するとd(p3x3)+−x2p2dπ となる.これは(16)

式を用いると次のようになる.

    付加価値=d(p3x3)+−x2p2y2dp2y3dp3fGdG (21)  

したがって,付加価値と社会資本ストックの便益fGdGは等しくならず,付加 価値の一部を社会資本ストックの便益が構成している.

2 社会資本ストックの便益の推定

 社会資本ストックの便益は伊多波(2012)の結果を用いる.簡単に推定の考 えを示すと次のようになる.(22)式のようなコブ・ダグラス型の生産関数を 想定する.

    YiANαiKβiGγiu (22)  

iは都道府県,Yは県内総支出,Nは民間資本ストック,Kは民間資本ストッ ク,Gは社会資本ストック,uは誤差項をそれぞれ示している.環境創出型

+β=1)の生産関数を想定し,対数変換すると(23)式のようになる.

    ln Yi

Niai+βln Ki

Ni+γ ln Gi+ui (23)  

 (23)式から,労働限界生産性,民間資本ストックの限界生産性及び社会資 本ストックの限界生産性は次のようにして求められる.

    労働限界生産性=(1-β) Yi

Ni (24)  

    民間資本ストックの限界生産性=βYi Ki

(25)  

    社会資本ストックの限界生産性=γYi

Gi (26)  

2. 1 デ ー タ

 データの簡単な説明を行う.

(1)社会資本ストック(G)

(9)

 最近の年度まで社会資本ストックのデータをカバーしているのは内閣府政策 統括(2007)と電力中央研究所の推計である.前者は2003年度まで,後者は 2006年度までである.本稿ではより最近の年度までカバーしている電力中央 研究所の推計を用いる2).電力中央研究所では,今まで『公共工事着工統計年 度報告』(国土交通省)を用いて都道府県別社会資本ストックデータを推計して きた.しかし,1999年度で『公共工事着工統計年度報告』(国土交通省)の刊行 が中止になったので,代わりに『建設総合統計年度報告』(国土交通省)を用い て新たに推計している3).推計年度は1980年度から2006年度までである.

 電力中央研究所のデータは鉄道軌道や電信電話などの民間資本も含まれて いるが,本稿では,農林漁業,道路,港湾,上水道,治山治水のデータを用いる.

(2)県内就業者数(N

 経済企画庁『県民経済計算年報』の県内就業者数を使用した.

(3)県内総支出(Y

 経済企画庁『県民経済計算年報』から得ている.1964年度までは旧SNA,

1975年度から平成元年度までは68SNA(新SNA),1990年度以降は93SNA(改 訂SNA)による数値を用いている.

(4)民間資本ストック(K

 民間資本ストックは内閣府HP4)より得ている.都道府県ごとの値はないの で,総民間資本ストックを都道府県に振り分ける必要がある.ベンチマーク として土居データ5)の1980年度の都道府県比率を使用し,1981年度以降の年 度の数値は,当該年度の『県民経済計算年報』の総固定資本形成(民間)の都 道府県比率を民間資本ストック額の増分に乗じた値を積み上げて求めた.

2) 電力中央研究所による推計データは,財団法人電力中央研究所と伊多波とのソフトウエア使 用許諾契約に基づいて使用している.

3) http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/Y08006.pdfを参照せよ.

4) http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html.年度取り付けベースを使用している.

5) 土居丈朗慶応大学教授のHP を参照せよ.

  http://web.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/index-J.html

(10)

2. 2 推 定 結 果

 1980年度から2006年度まで都道府県を対象とする最小二乗法による推計結 果は、第 1 表のようになる.修正済みR2は0.5から0.62の値をとっている.

1人当たり民間資本ストックの係数は,1997年度から99年度にかけて一時低 下するが,全体としては増加傾向である.社会資本ストックの係数は約0.1で 推移してきたが,1990年度から1994年度にかけて低下し,その後ほんと変化

第 1 表 生産関数の推計結果(2000年度価格):電中研データ 定数 t値 民間資本

ストック t値 社会資本

ストック t値 修正済み

R2 サンプル数 1980年度 5.5295 [4.49]** 0.4464 [6.07]** 0.0949 [3.26]** 0.5663 47 1981年度 5.679 [4.41]** 0.4465 [5.77]** 0.0898 [3.01]** 0.5365 47 1982年度 5.1607 [3.91]** 0.4698 [5.95]** 0.0954 [3.18]** 0.5534 47 1983年度 5.3282 [3.97]** 0.4595 [5.72]** 0.096 [3.19]** 0.5381 47 1984年度 5.4628 [4.05]** 0.4516 [5.59]** 0.0964 [3.23]** 0.5314 47 1985年度 4.6415 [3.23]** 0.4948 [5.73]** 0.1007 [3.27]** 0.5422 47 1986年度 5.0916 [3.44]** 0.4786 [5.39]** 0.0939 [3.01]** 0.5058 47 1987年度 4.5639 [2.97]** 0.5132 [5.56]** 0.0936 [2.96]** 0.5158 47 1988年度 4.2835 [2.59]* 0.5359 [5.37]** 0.0921 [2.77]** 0.4929 47 1989年度 4.0618 [2.45]* 0.5516 [5.52]** 0.092 [2.84]** 0.5069 47 1990年度 3.7852 [2.29]* 0.5589 [5.64]** 0.0969 [3.12]** 0.5232 47 1991年度 3.6026 [2.17]* 0.5817 [5.89]** 0.0895 [2.97]** 0.5281 47 1992年度 4.2784 [2.78]** 0.5561 [6.08]** 0.0796 [2.94]** 0.5373 47 1993年度 4.7759 [3.21]** 0.5402 [6.08]** 0.0707 [2.75]** 0.5301 47 1994年度 4.9491 [3.92]** 0.5681 [7.52]** 0.0506 [2.34]* 0.6064 47 1995年度 4.9914 [4.02]** 0.5627 [7.39]** 0.052 [2.43]* 0.6145 47 1996年度 4.3789 [3.38]** 0.6004 [7.59]** 0.0522 [2.35]* 0.6219 47 1997年度 4.3632 [3.35]** 0.5975 [7.46]** 0.0532 [2.38]* 0.6196 47 1998年度 5.13 [4.27]** 0.5466 [7.41]** 0.055 [2.68]* 0.6257 47 1999年度 5.695 [4.51]** 0.5134 [6.61]** 0.0542 [2.51]* 0.5755 47 2000年度 5.4425 [4.21]** 0.529 [6.67]** 0.0545 [2.47]* 0.5772 47 2001年度 5.2442 [4.10]** 0.5372 [6.85]** 0.0558 [2.56]* 0.5918 47 2002年度 4.5541 [3.47]** 0.5902 [7.35]** 0.0497 [2.23]* 0.6094 47 2003年度 4.6692 [3.47]** 0.5845 [7.09]** 0.0493 [2.21]* 0.5925 47 2004年度 4.1154 [2.95]** 0.6085 [7.12]** 0.0545 [2.37]* 0.6003 47 2005年度 3.2127 [2.07]* 0.6626 [6.99]** 0.055 [2.16]* 0.5842 47 2006年度 3.4231 [2.19]* 0.6443 [6.75]** 0.058 [2.29]* 0.5738 47

(注)***は,それぞれ5%と1%水準で有意であることを示す.単位は円.

(出所)筆者による推計結果.

(11)

していない.

2. 3 社会資本ストックの限界生産性

 第 1 図には社会資本ストックの限界生産性の都道府県の平均値が描かれて いる.参考として民間資本ストックの限界生産性も描かれている.民間資本 ストックの限界生産性は,0.3前後を推移している.1990年度前後のバブル 期はやや上昇している.その後,1996年度頃には一時高くなるが低下傾向が

第 1 図 民間資本ストックと社会資本ストックの限界生産性(都道府県の平均)

(出所)筆者による推計結果.

第 2 図 社会資本ストックの限界生産性

(出所)筆者による推計結果.

(12)

2000年度頃まで続き,2000年度からは上昇傾向を維持している.社会資本ス トックの限界生産性は1990年度までは0.13前後を推移するが,バブルがは じけた1990年度頃から低下し,1994年度頃から0.05前後を推移している.

 第 2 図には1980年度と2006年度の社会資本ストックの限界生産性が都道 府県別に描かれている.1980年度と2006年度において都道府県間の相対的 関係はほとんど変わっていない.栃木,埼玉,東京,神奈川,京都,大阪,

福岡などの値は大きい.北海道,岩手,秋田などの東北地方,新潟,富山,

石川,山梨,長野などの北陸・甲信越地方,鳥取,島根,徳島,高知,福岡 を除く九州地方などで値が比較的小さい.

3 法人事業税と社会資本ストックおよび社会資本ストックの便益の関係

 社会資本ストックと法人事業税および社会資本ストックの便益と法人事業

第 3 図 社会資本ストック(の便益)と法人事業税との散布図(1980年度)

(出所)筆者による推計結果を用いて作成.

(13)

税のそれぞれの散布図を第 3 図(1980年度)と第 4 図(2000年度)で描いている.

1980年度以降の法人事業税は『地方財政統計年報』から得ている.

 1980年度においては社会資本ストックの便益と法人事業税の相関係数

は0.988,社会資本ストックと法人事業税の相関係数は0.678である.ま

た,2000年度においては社会資本ストックの便益と法人事業税の相関係数は

0.985,社会資本ストックと法人事業税の相関係数は0.58である.このことか

ら,1980年度と2000年度において社会資本ストックの便益と法人事業税の 相関係数が,社会資本ストックの便益と法人事業税の相関係数より高いこと が分かる.

 社会資本ストックの便益と法人事業税の相関係数と社会資本ストックと法 人事業税の相関係数を,1980年度から2008年度まで描いたのが第 5 図である.

社会資本ストックの便益と法人事業税の相関係数は一貫して高い相関係数を 第 4 図 社会資本ストック(の便益)と法人事業税との散布図(2000年度)

(出所)筆者による推計結果を用いて作成.

(14)

維持している.社会資本ストックと法人事業税の相関係数は低下傾向を示し ながら,0.5から0.7の間を推移している.

4 外形基準と社会資本ストックの便益との関係

 2004年度から外形標準課税が導入されている.外形基準としては付加価値 割,所得割および資本割が用いられている.ここではそれらと社会資本ストッ クの便益との関係を見る.法人事業税のデータが信頼できる年度は2006年度 からであることと,直近で社会資本ストックの便益が得られる年度は2006年 度であることを考慮し,2006年度に注目して,法人事業税の応益税の性格を 検討する.また,2006年度の外形標準基準の課税標準額と税額は総務省への

第 5 図 法人事業税と社会資本ストックおよびその便益の相関係数

(出所)筆者による推計結果を用いて作成.

(15)

情報開示請求により得ている.

 3つの外形基準の標準課税額と社会資本ストックの便益を関係を示してい る第 6 図から,社会資本ストックの便益と3つの外形基準の相関は,付加価 値割(0.991),所得割(0.984),資本割(0.975)の順に高いのが分かる.また,

3つの外形基準の法人事業税と社会資本ストックの便益の関係を示した第 7 図からも,社会資本ストックの便益と3つの外形基準の法人事業税の相関は,

付加価値割(0.990),所得割(0.984),資本割(0.971)の順に高いのが分かる.

お わ り に

 法人事業税には税収の地域間偏在や分割基準などの問題がある.本稿では,

応益税としての法人事業税の検証を試みた.法人事業税は地方公共財の便益 第 6 図 外形基準と社会資本ストックの便益の関係:2006年度

(注) 社会資本ストックの便益との相関係数は,所得割=0.984,付加価値割=0.991,

資本割=0.975.

(出所)筆者による推計結果を用いて作成.

(16)

の対価として位置付けられているが,このことを示すためこれまでは社会資 本ストックと法人事業税との関係に焦点が当てられてきた.地方公共財の便 益としては社会資本ストックの便益を使用するのが本来の姿であるが,この ことがこれまで十分行われてこなかった.

 本稿は,社会資本ストックの便益と付加価値との関係を理論的に明らかに した上で,社会資本ストックの便益を実証的に求め,これと付加価値との関 係を見てきた.この結果,1980年度以降社会資本ストックの便益と付加価値 の相関係数はかなり高いことが分かった.

 また,2004年度から外形標準課税が導入されているが,外形基準としては 付加価値割,所得割および資本割が用いられている.

 3つの外形基準の標準課税額と社会資本ストックの便益を関係をみると,

第 7 図 3つの外形基準による法人事業税と社会資本ストックの便益の関係:2006年度

(注) 社会資本ストックの便益との相関係数は,所得割=0.984,付加価値割=

0.990,資本割=0.971.

(出所)筆者による推計結果を用いて作成.

(17)

2006年度において社会資本ストックの便益と3つの外形基準の相関は,付加 価値割,所得割,資本割の順に高いのが分かる.このことから,応益税とし て法人事業税を見た場合,外形基準として付加価値割を今後拡大することが 望ましい.

【参考文献】

伊多波良雄(2012)「就業者,社会資本ストックおよび民間資本ストックの限界生産性 の推計:都道府県のケース」『経済学論叢』(同志社大学)第64巻第1号,19―47頁.

戸谷裕之(1994)『日本型企業課税の分析と改革』中央経済社.

内閣府(2007)『日本の社会資本2007』国立印刷局.

藤田武夫(1949)『日本地方財政発展史』文生書院.

(いたば よしお・同志社大学経済学部)

(18)

The Doshisha University Economic Review, Vol.64 No.3 Abstract

Yoshio ITABA, Is the Corporation Enterprise Tax a Benefit Tax?

  The basis by which the corporate enterprise tax is positioned as a local tax is often questioned, given that corporate enterprises receive benefits from administrative services. There is much debate as to what should be used as a proxy variable for the benefits from administrative services. This study finds that value added can readily serve as a proxy variable for the benefits from administrative services.

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