研究 ノー ト
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環境 法上 の基 本原 則と 法典 化へ の課 題
︱︱ ドイ ツ参 事官 草案 を素 材と して
︱︱
髙 橋 信 隆
は じ め に
Ⅰ 参事 官草 案に おけ る環 境原 則︱
︱概 観︱
︱ 一 参事 官草 案第 一条 の構 造 二 参事 官草 案第 一条 の意 義
Ⅱ 参事 官草 案に おけ る環 境原 則
︱︱ その 基本 的意 義と 性格
︱︱ 一 事前 配慮 原則
︵V or so rg ep ri nz ip
︶ 二 原因 者負 担原 則︵ Ve ru rs ac he rp ri nz ip
︶ 三 協働 原則
︵K oo pe ra ti on sp ri nz ip
︶ 四 統合 原則
︵I nt eg ra ti on sp ri nz ip
︶
Ⅲ 環境 原則 の法 的意 義
︱︱ 今後 の検 討に 向け て︱
︱ 結び に代 えて
は じ め に
⑴ ドイ ツ連 邦環 境省
︵B un de sm in is te ri um fü rU mw el t, Na tu rs ch ut zu nd Re ak to rs ic he rh ei t︶ は、 二〇
〇八 年五 月二
〇日
、こ れま での ドイ ツに おけ る環 境関 連の 法制 度お よび そ
れを めぐ る諸 議論
、更 には
、一 連の 環境 法典 (U mw el tg es et z- bu ch
︶編 纂化 作業 の成 果を 示す もの とし て、 環境 法典 参事 官草 案︵ Re fe re nt en en tw ur f︶
︵以 下、
﹁参 事官 草案
﹂あ るい は﹁ 本草 案﹂ など とい う︶ を公 表
( )
した
。そ れは
、い うま でも
&
なく
、こ れま での 法典 編纂 化
( )
作業 の延 長線 上に 位置 づけ られ
'
るも ので ある し、 その 集大 成も しく は到 達点 とで もい うべ き 性格 およ び内 容を 有す る。 その うち
、第
( )
一編
︵B uc hI
︶第 一
(
条に は、 まず 第一 項に 目的 規定 が置 かれ
、続 く第 二項 では
、 後に 詳述 する よう に、 右の 目的 規定 を前 提と して
、こ れま で の法 典編 纂化 作業 およ び学 説上 の議 論に おい て承 認さ れて き た環 境法 上の 基本 原則
︵U mw el tp ri nz ip
;u mw el tr ec ht li ch es Pr in zi p︶
︵以 下、
﹁環 境原 則﹂ とい う︶
、す なわ ち事 前配 慮原 則︵ Vo rs or ge pr in zi p︶
、原 因者 負担 原則
︵V er ur sa ch er pr in - zi p︶ およ び協 働原 則︵ Ko op er at io ns pr in zi p︶ を、 改め て明 確に 規定 して いる
。し かし
、参 事官 草案 は、 それ にと どま ら ず、 部分 的に は欧 州法 によ り確 立さ れつ つあ る環 境原 則に 関
連す る規 定も 同時 に置 いて おり
、そ れら の規 定を みる 限り で は、 本草 案は これ まで の法 典化 に関 する 議論 の延 長線 上に あ ると いう より も、 むし ろ、 更な る発 展形 態と して 理解 する こ とも でき る。 そこ で、 本稿 では
、参 事官 草案 の第 一条 とり わけ そこ で示 され てい る環 境原 則に 焦点 を当 て、 その 規定 内容 とこ れま で の議 論と の異 同を 確認 し、 参事 官草 案自 体が 環境 法上 の基 本 原則 をど のよ うに 位置 づけ よう とし てい るの かを 明ら かに す ると とも に、 法典 化に 向け ての 今後 の課 題を 探っ てみ たい
。 環境 法上 の基 本原 則に 関し ては
、そ れが 法原 則と して の意 義 を有 する のか どう かに つき
、こ れま でに もさ まざ まな 議論 が 存し たと ころ であ るし
、参 事官 草案 の規 定を めぐ って も同 様 の議 論が 繰り 返さ れよ うと して いる が、 ここ では
、さ しあ た り、 その 法理 論的 な内 容お よび 位置 づけ を明 らか にす るた め の前 提的 作業 とし て参 事官 草案 の規 定内 容を 確認 する こと と し、 今後 の議 論の 素材 を素 描す るに とど めた い。 とい うの も、 右に 述べ たよ うに
、参 事官 草案 にお ける 環境 原則 の記 述 内容 およ びそ の規 範構 造は
、必 ずし も従 来の 議論 の枠 にと ど まら ない もの とな って いる ため
、ま ずは
、そ の規 定内 容と 規 範化 の趣 旨を 確認 する こと が必 要で ある と考 えら れる から で
( )
ある
。
⑵ +
とこ ろで
、環 境政 策を 主導 する 観念 とし ての 環境 原則 が連 邦政 府の 公式 文書 で語 られ たの は、 一九 七一 年の 環境 行
動
( )
計画
︵U mw el tp ro gr am m︶ に端 を発 する
。そ こで は、 事
-
前配 慮原 則、 原因 者負 担原 則お よび 協働 原則 が、 いわ ば﹁ 法 政策 上の 行動 原則
﹂︵ re ch ts po li ti sc he Ha nd lu ng sm ax im e︶ とし ての 性格 を有 する もの とし て明 示さ れた が、 その 後、 一 九七 六年 の環 境報
( )
告書
︵U mw el tb er ic ht
︶に おい ても
、こ れ
0
ら各 原則 につ いて は同 様の 性格 づけ がな され てい る。 した が って
、各 個別 法に おい て特 別の 規定 が存 する 場合 はと もか く とし て、 一般 には
、こ れら の環 境原 則は 行政 や私 人に 対す る 直接 的な 法的 拘束 力を 有し ない もの
、あ るい は、
﹁実 定法 に よら ない 指導 的観 念﹂
︵a uß er ge se tz li ch eL ei tv or st el lu ng
︶ とし て特 徴づ けら れ、 理解 され てき て
( )
いる
。
4
もっ とも
、他 方で は、 環境 原則 の考 え方 や理 念を さま ざま な形 式お よび 内容 をも って 実体 環境 法規 に反 映さ せよ うと す る試 みも 継続 的に 行わ れて おり
、た とえ ば原 因者 負担 原則 と の関 係で
﹁公 共負 担原 則﹂
︵G em ei nl as tp ri nz ip
︶が 語ら れた り、 事前 配慮 原則 との 関連 では
﹁退 行禁 止﹂
︵R üc ks ch ri tt s- ve rb ot
︶も しく は﹁ 悪化 禁止
﹂︵ Ve rs ch le ch te ru ng sv er bo t︶
、 更に は持 続性 原則
︵P ri nz ip de rN ac hh al ti gk ei t; Na ch ha lt ig - ke it sg ru nd sa tz
︶を 具体 化し た内 容を 明文 で規 定す る例 も散 見さ れる し、 環境 法典 編纂 の一 連の 作業 にお いて も、 その 傾 向に 変化 はみ られ ない
。た だ、 その よう な状 況に もか かわ ら ず、 それ らの 個別 規定 につ いて は、 基本 的に は、 主要 原則
︵H au pt pr in zi p︶ たる 右の 諸原 則の 具体 化も しく は例 外と し
ての 位置 づけ がな され てお り、 結局 は、 主要 原則 に還 元で き るも のと され て
( )
きた
。そ れゆ え、 その よう な理 解を 前提 とす
6
る限 りは
、環 境原 則の 内容 を反 映さ せた もの と理 解さ れる そ れら の規 定も
、結 局は
、環 境政 策を 実施 して いく うえ での
﹁指 導原 理﹂ もし くは
﹁指 導的 観念
﹂︵ Le it vo rs te ll un g︶ にす ぎず
、そ れ自 体と して 実体 的法 効果 とり わけ 法的 拘束 力は 有 しな いこ とに なる
。ま た、 更に 進ん で、 ディ
・フ ァビ オ︵ U. Di Fa bi o︶ のよ うに
、環 境法 はそ れら の原 則を 中心 とし て総 論部 分が 構築 され よう とし てい るし
、多 くの 文献 にお いて も それ らに 関心 が集 中し てい るが
、少 なく とも
、そ れら は﹁ 美 しい 顔を して いる が、 しか し実 体の ない
、ポ チョ ムキ ンの 村﹂
︵P ot em ki ns ch eD ör fe r, mi ts ch ön eF as sa de ,a be ro hn e Su bs ta nz
︶で あり
、法 原則 とし ては 欺瞞 であ るに すぎ ない とい う
( )
主張 すら 存在 する
。
=
もち ろん
、他 方で
、た とえ ば連 邦イ ンミ ッシ オン 防
( )
止法10
︵B un de s- Im mi ss io ns sc hu tz ge se tz
︶五 条一 項一 文二 号な どの よう に事 前配 慮原 則を 許認 可等 の要 件と 結び つけ てい る場 合 には
、当 該規 定が 直接 的な 法的 拘束 性を 有す るこ とに つい て も、 ほぼ 異論 をみ ない よう であ る。
⑶ さて
、デ ィ・ ファ ビオ の右 の主 張の 妥当 性如 何は とも かく とし て、 これ らの 環境 原則 は参 事官 草案 にお いて も﹁ 人 間と 環境 の保 護﹂
︵S ch ut zv on Me ns ch un dU mw el t︶ を実 現 して いく ため の基 本原 則と して 明記 され てい るが
、参 事官 草
案で は、 更に
、統 合原 則︵ In te gr at io ns pr in zi p︶ や持 続性 原 則ま でも が新 たに 付け 加え られ るに 至っ てい る。 その ため
、 環境 原則 の法 的意 義お よび 実効 性等 につ きさ まざ まな 批判 的 見解 が存 する こと は承 知し つつ も、 参事 官草 案に それ らの 諸 原則 が明 記さ れた こと の意 義、 とり わけ
、そ の法 的な 内容 お よび 性格
、更 には
、今 後の 展開 可能 性に つき
、あ る程 度の 見 通し を示 して おく こと は、 その 法的 位置 づけ のみ では なく
、 環境 法典 の法 典化 の意 義そ れ自 体を 考え るう えで も、 そし て また
、そ れに 基づ く環 境政 策を 法的 視点 から 分析 する うえ で も極 めて 重要 であ ると 考え られ る。 もち ろん
、こ の点 につ いて は、 すで にい くつ かの 見解 が示 され てお り、 参事 官草 案の 起草 主体 であ る連 邦は
、そ れら を 法典 の冒 頭に 置か れる にす ぎな い﹁ 基本 政策 命題
﹂︵ Pr o- gr am ms at z︶ とみ
( )
なし
、各 州も それ を支 持す る見 解を 表明
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して いる が、 他方 で、 経済 界か らは
、こ れら が実 際に は単 に その よう な意 味で の基 本政 策命 題に 止ま るこ とな く、 行政 上 の具 体的 決定 や裁 判所 によ る法 的判 断に 際し ての 法解 釈上 の 基準 とし て援 用さ れる こと にな りか ねな いと いう 不安 から
、 連邦 の見 解に は極 めて 消極 的で ある など
、い くつ かの 対立 や 相違 点も 表面 化し はじ めて
( )
いる
。
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そも そも
、環 境法 典編 纂化 の意 義は
、他 の法 分野 の法 典化 と同 様、 一般 には
、個 別の 立法
、学 説お よび 判例 によ って 形 成さ れ、 解決 され てき た諸 課題 を統 一的
、調 和的
、体 系的