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[文献紹介] 鈴木祥蔵著「がんばれ若いお母さん 共 同『子育て』論」

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[文献紹介] 鈴木祥蔵著「がんばれ若いお母さん 共 同『子育て』論」

その他のタイトル [Book Review] Shozoh Suzuki : Hold out mother's : "On Joint Nursing"

著者 山下 栄一

雑誌名 教育科学セミナリー

巻 13

ページ 67‑68

発行年 1981‑12‑07

URL http://hdl.handle.net/10112/00019543

(2)

田民俗学的な方法意識での共同体と教育、民俗 カルテの作成事例その他が紹介されコメントさ

・習俗と教育を追求するという動向もあるが、 れている。

より以上に都市化の方向性が基本となっている 高度に発達した資本主義国における矛盾の解 現在、むしろ都市計画論=まちづくり論再構築 決のために教育における改革の自主プランを持 のなかでこそ、教育の再生が問われなくてはな つことの必要に重要な示唆を与える著者のこの らない」

(248

ページ)という問題意識が提起 提案に一度是非耳を傾け、論議を活性化させる され、ヨーロッパ,アメリカ,ソヴエト,その ことが必要である。

他の具体例は勿論、わがくにのコミュニティ・

鈴木祥蔵著

「がんばれ若いお母さん

共同『子育て』論」

山 下 栄 一

本書は著者鈴木祥蔵教授が、 『頑張れ、若い お母さん』と題して、

1977

1

月から

3

年に わたり毎日新聞の学芸欄に連載した記事を中心 「子育て」に関する著者の年来の主張をま とめたものである。

周知のように著者は、部落解放教育・保育の 理論的指導者として、常に解放運動と歩みを共 にしつつ、ご自身の教育哲学を創り出してこら れた。とりわけいわゆる「同和」保育運動にお いては、鈴木教授の存在なくして今日の発展は あり得なかったといってもよいほど、大きな役 割をになってこられた。大阪をはじめ福岡,高 知など、全国各地の「同和」保育所に足をはこ び、親しく子どもたちの生活にふれつつ、保母 さん、お母さんたちと情熱を傾けて教育・保 育につき、人間の解放につき、討議を重ねてこ られたのである。その豊かな体験から得られた 数多くの具体例が、本書をきわめて親しみやす

く、魅力あふれるものにしている。

共同『子育て』論 という標題にも示され ているように、本書の中心的な主張は、 子育て

の共同化 が今日の緊急の課題だというところ にある。現代では、 核家族化の進行とともに、

母親と子どもの場所が密室化し、母親と子ども だけが向き合っているという子育ての方法が一 般化 してしまった。子育てはもっぱら母親の 仕事とされ、しかもその母親自身が孤立させら れてしまっているのである。そこから母親は育 児に不安を抱き、 育児ノイローゼ におち入っ てしまう。こうした母親の不安に対し、世に氾 濫する育児書の多くは、問題をもっぱら母親の 育児態度のところに矯小化し、その誤りを指摘 することによって、むしろ母親たちの不安をか きたてているのである。それは育児をもっぱら 母親の責任に押しつけていく現代の社会意識に 迎合し、これを助長するものでしかない。保育 所の役割についても消極的な考え方が今なお広

くゆきわたっているのが現状である。

だが子育ては、もともと共同体の営みであっ た。 「私の子育ての頃には、いちいち手をかけ てやるなどということは考えられなかった。私 が育てたというよりは、まわりのひとがみんな

‑67‑

(3)

で育ててくれたようなものだ」 私の母はそん なことを私にいった。"と著者がはしがきの中に 記しておられるように、 家庭でも、学校でも、

地域でも子どもたちは多くの人びとの手によっ て育てられていた のである。だが 近代の資 本主義の発達とともに伝統的な「子育て共同体」

は崩壊して しまった。 本来、「共同体」の手 によって行なわれていた子育てが、資本制社会 の成立とその深化の過程で、次第に個人(母親 を中心とした)の責任のようにいわれはじめ たわけである。

このような見地からする子育ての共同化とい う主張は、とりもなおさず、子育ての見直しを 通して、私たちの暮らしのあり方そのものの変 革を迫っていくことにほかならない。気がつい てみると、私たちは、 「近代化」の過程の中で、

とりわけ

1960

年代以降の「高度経済成長」の 経過の中で、多くの貴重なものを失ってきた。

子育てに関する深い知恵もそのひとつである。

1

章 家庭における親子関係、にはじまり

2

しなやかなからだを育てるために

3

章子どもはよい環境のなかで育てられ

4

章子どもは集団のなかで育つ

5

章子どもをとりまく文化に目を向けよ

6

どの子にも保育所が必要だ という

6

つの章から成る本書の中には、

. .. あやしことば の大切さ

・子どもにとって貴重な すみっこ

・添い寝は決して悪くない(以上第

1

章)

. .. 這いはい の復活を・(第

2

章)

・子育てには季節感を(第 3章)

・伝承の掘り起こしを(第

5

章)

などの見出しに示されるように、古くから私た ちの社会に蓄積されてきた子育ての知恵の見直 しを求める提言が数多く認められる。だがそれ は決して、単純な 伝統志向 ではないことを 知らねばならない。

・「児童憲章」の精神

• いまこそ「戦争反対」の声を(第 3章)

・子どもの人権をいま一度(第6章)

といったテーマが扱われていることにもうかが えるように、著者の基本的立場は、反動的なイ デオローグたちが唱える国家主義的な伝統への 回帰とはまったく異質のものである。 「平和と 人権」の確立を基軸に、人間が人間らしく暮ら していける世の中、差別し差別されるというあ り方から解放された社会をつくり出していく方 向で、新たなる共同体の構築を目指しているの である。そのためにこそ、謙虚に過去の伝承に も学ぼうとしているのである。このようにみて くると本書は、 「子育て」を主題にしてはいる ものの、その視野はきわめて広く、そこに展開 されている思索は、すぐれて根源的である。私 たちが、現代の様々な問題にどう切りこみ、未 来をどのように切り開いていくべきかを考えて いくうえで、貴重な示唆を与えるものとなって いる。

本書はもともと、子育てに悩んでいる若いお 母さんや保母さんたちに向けて書かれたもので ある。だが、上述のような内容からして、教師 や保育者を目ざす人々はもち論、教育・保育の 研究にたずさわる人々にも、広くー読をおすす めしたいと思うのである。

(サンリード

1981

年)

‑68‑

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