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[文献紹介] 鈴木祥蔵著「同和」保育と子どもの人 権

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[文献紹介] 鈴木祥蔵著「同和」保育と子どもの人

著者 田中 欣和

雑誌名 教育科学セミナリー

巻 17

ページ 29‑29

発行年 1985‑12‑07

URL http://hdl.handle.net/10112/00019520

(2)

鈴 木 祥 蔵 著

「同和」保育と子どもの人権

部落解放教育・ 「同和」保育運動に広く影響 力をもつ著者が近年雑誌等に書いてこられたも ののうち「同和」保育・幼児教育に関するもの をあつめて編まれたのが本書。

本学教育学科・教育学会の代表的人物である 著者の識見やお人柄は本学会会員には周知のこ とながら、そのしなやかな人間観、 リベラルな 思想と不退転の理想主義とが、もっともよく表 現されているのが近年では「同和」保育運動に かかわってのおしごとである。

14編の文章が整理されて単行本になった訳だ が、著者の近年の強調点をひとまず理解しょう と思えば、序章の「『同和』保育の基本認識」と 補遣の「感性の意味するもの」とから読むことも、

すでに教育・教育問題にかかわって考えてこら れた読者には許されよう。自然的・社会的存在 としての人間のよき可能性をおしつぶす差別ヘ の怒りは、氏の場合すぐれて教育思想的である。

そこから出発して「被形成者から主体的自己変 革者へ」という基本テーゼを通って実践的提言 に至る氏の思想の骨組はここで示されている。

もう 1つの強調点として「感性」を「理性」よ り低次のものと考える毛沢東的認識段階論やそ れを経験主義としてのみ批判する「科学主義」

とはちがって、全人格的な理解における「感 性」の意義をとらえ、感性の階級的被形成から 目を離さないで、しかも感性や共通感情を育て るということを重大な課題としていく。その回 路においてワロンの「融即」概念からうけた示 唆は重要であったろう。

明石書店

( 1 9 8 5 .   7) 

そのあたりを示すには著者のあげられる事例 の一、二を見ればよい。たとえば保母さんが子 どもを連れて散歩するとき、犬のふんがあるた びに「汚ない汚ない」といって避けて歩く。子 どもたちもみんなその通りにまねをする。著者 はその一面性を指摘して、バキューム・カーの 運転手を父にもつ小学生の作文の話を保母さん にする。しばらくしてその保育所にいくと大き なチューリップの花が咲いている。保母さんは 子どもたちとの散歩のとき犬のふんをひろって きて苗床にいれたのだった。「今年は特別大き く咲きました」という。子どもたちも著者を追 いかけて来て「先生、知ってるか、これな、犬 のふんの肥料やで、大きく咲いたやろう」とい う。著者のいう「感性を開いていく保育」の一 例である。

同じ観点をまとめて示しているのは「子ども の美意識とは何か」であり、「汚ない」と「きれ い」、「きれい」と「美しい」といった観念をと きほぐしながら、子どもの感性を「きれい」

「かっこいい」にとどめて「美しい」ものから 切り離ずコマーシャルや政策への批判が述べら れる。

著者は革新的な教育学者として知られている が、その革新性は限定された意味での政治的な 次元においてよりも、美的・倫理的・ 教育的な ものであることによって批判カ・変革力を持っ ているのだと思う。

(田中欣和)

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