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〇年六月一一日判決の位置づけ

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(1)

弁済業務保証金制度(宅地建物取引業法第六四条の 八第一項)をめぐる法律上の問題 : 最高裁平成一

〇年六月一一日判決の位置づけ

その他のタイトル On Security Money for Repayment Business of Realty Dealer

著者 明石 三郎, 岡本 正治

雑誌名 關西大學法學論集

49

2‑3

ページ 155‑210

発行年 1999‑09‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024470

(2)

一問題の所在 1宅地建物取引業に対する業規制

2宅地建物取引紛争に対する損害補填制度

二営業保証金制度と弁済業務保証金制度 1営業保証金制度の概要 2営業保証金の大幅な増額と宅地建物取引業保証

協会の設置

3弁済業務と認証手続

4営業保証金と弁済業務保証金分担金の増額

弁済業務保証金制度の実情と問題点 ー最高裁平成一

0

三弁済対象債権に関する法律上の問題 1

2弁済対象債権の要件と具体例

3宅地建物取引業者に対する認証拒否

4違約金・損害賠償額の予定に対する認証拒否

四今後の残された問題 1最高裁平成一

0年六月︱一日判決が実務に及ぼす影響

裁判管轄に関する問題

弁済対象債権の発生時点に関する問題

弁済を受ける優先順位に関する問題

迅速な弁済業務の必要

一日判決の位置づけ││

本 石

弁済業務保証金制度︵宅地建物取引業法第六四条の八第一項︶

をめぐる法律上の問題

治 郎

(3)

第四九巻第ニ・三合併号

戦後の不動産業の軌跡

わが国は︑第二次世界大戦により多くの住宅・工場等が被災し︵昭和二0年八月当時︑約四二0万戸︶︑海外からの引

揚者︑ベビープーム等により人口が急増し未曾有の住宅難に陥った︒しかし︑戦後の経済復興はめざましく︑昭和==

0年代後半から四0年代にかけて高度経済成長が本格化し大都市への人口流入と産業集中が顕著に見られ︑民間によ

る宅地造成・建て売り・分譲マンション等の開発・分譲販売が盛んに行われ不動産業が飛躍的に発展し︑かつ多様化

昭和四三年にはわが国の

GNP

が米国に次いで世界第二位となり︑昭和四七年六月に発表された田中角栄・列島改

造論に象徴されるように不動産開発が全国的に過熱したが︑昭和四八年一0月の石油ショックを契機に経済実質成長

率が戦後はじめてマイナスとなり経済不況の深刻化と不動産需要の後退がみられた︒しかし︑昭和五0年代に入って

社会の高齢化と核家族化︑生活様式の変化が始まり︑不動産業界では中古住宅を中心とした不動産流通︵仲介︶も成

長・拡大し︑建設省の指導による不動産流通市場の整備と不動産流通業界の近代化が推し進められるに至った︒

昭和六二年四月には東京圏の地価が大幅に上昇したのをきっかけに︑金融超緩和を背景に大阪圏等へ地価高騰が波

及し地上げ等の土地問題を生み出し︑これが社会問題にまで発展した︒政府は地価高騰を抑制する施策を取り始めた

が︑必ずしも効果的に働かず︑平成二年三月の公定歩合の引き上げに続き四月には不動産融資への総量規制が導入さ

(

  宅地建物取引業に対する業規制 関法

(4)

れ︑結果的には約一年九ヶ月にも及ぶ総量規制は不動産市場を急激に冷え込ませ︑バプル経済の崩壊とともに地価が

下落の一途をたどり始め︑いまだ長引く不況から脱し切れていないのが今日の状況と言える︒

このような戦後の不動産取引の増大に伴い取引をめぐる苦情・紛争が相当頻発している︒もともと宅地建物取引は︑

他の商取引と比較して︑取引対象の権利関係・契約条件等が複雑であり︑しかも︑その取引価格が相当高額であるた

め︑当事者が取引で授受する手付金︑売買代金等も多額となり︑ひとたび取引がこじれると︑高額な財産をめぐる係

争に発展し深刻な問題となるケースが多い︒これに加えて︑最近は︑急激な地価高騰と急落︑経済不況等の経済事情

このような取引紛争を未然に防止するには︑不動産取引に関する専門的な知識と豊富な経験︑慎重な調査︑適正な

取引が強く望まれる︒しかし︑実際には不動産取引の権利関係・契約条件が複雑︑難解であるという固有の事情に加

え︑購入者等︵消費者側︶の取引経験と取引知識の欠如︑生活や経済活動の基盤である不動産という重要な財産取引

であるにもかかわらず︑ややもすると衝動的に取引に入る購入者等の心理行動︵消費者行動︶︑取引関係者の契約意

識の乏しさ︑営業マン等をはじめとする業者側の職業倫理の低さ等がこの種の苦情・紛争を相変わらず数多く発生さ

征 一

11

11

調

0

調

調

1平成

せる要因となっている︵明石三郎

11

11

を反映した取引紛争が複雑化する様相を呈している︒

︵ 二 ︶

不動産取引紛争の要因

(5)

第四九巻第ニ・三合併号

る規制として宅地建物取引業法︵以下﹁宅建業法﹂という︒︶がある︒同法は︑昭和二七年六月に制定されて以来︑約四

八年を経過する間に大幅な改正が一一回も行われ︑当初全文わずか五章二八ケ条であったものが今や九章一六五ケ条

に及んでいるだけでなく︑同法施行令︑施行規則︑告示︑行政通達︑照会回答等を含め相当複雑な関係法令等で構成︑

しかも︑宅建業法は︑当初行政的取締法規として制定されたにもかかわらず︑改正を重ねるごとに取締法規として

充実︑強化がなされているだけでなく︑昭和四六年六月改正において同法の目的として﹁購入者等の利益の保護﹂と

いう消費者の利益保護が加わったことに伴い︵第一条︶︑取引条件や契約内容の適正化を図るために私法上の効力に対

し直接規制が行われるようになり︑効力規定や民法の適用を除外する特別規定が相当数設けられた︵損害賠償額の予定

0

和五五年五月改正においては︑同法第一条の目的として﹁宅地建物取引業の健全な発達を促進すること﹂を追加し︑

(2 ) 

これまでの警察行政からの業規制だけでなく宅地建物取引業者︵以下﹁宅建業者﹂という︒︶の健全な経営の確保と資質

の一層の向上を図るという振興行政的な趣旨をも加味した︒そして︑媒介契約の規制︵第三四条の二︶に関する規定

を設けたほか︑クーリング・オフに関する規定︵第三七条の二︶のように民法の特別規定をも盛り込むようになった

(1 )

不動産取引の分野における業規制としては︑不動産取引業全般に対する規制は存しないが︑宅地建物取引業に対す ︵ 三 ︶

宅地建物取引業法による業規制

洋・大河内

(6)

ところで︑不動産業界の実態をみると︑平成九年度の宅建業者数で一四万一五四七︵個人業者二三

O

パーセント︑法

人業者七七

O

セントに対し︑六

O

バーセント︶︑規模的には中小零細性が著しく︵従業者五人未満の事務所が八七パーセントを占める︶︑

業界への新規参入と退出率が高い︵平成九年度の新規免許取得率は四・七パーセント︑廃業率は四・七パーセント︶という特性

(

 

(1

) 宅建業法の規制対象である﹁宅地﹂とは︑単なる住宅地ではなく︑①﹁建物の敷地に供せられる土地﹂︵第二条第一号前 段︶であり︑これは現に建物の敷地に供されている土地だけでなく︑不動産登記法上の地目や現況が田︑山林等であって宅 地でなくても将来建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地も宅地とされる︵明石三郎ほか前掲書改訂版二九頁︑

広島高裁岡山支判昭和三九年一0

月八日高裁刑集一七巻六号六一五頁等︶︒さらに②﹁都市計画法第八条第一項第一号の用 途地域内のその他の土地﹂は︑たとえ建物の敷地に供せられていない土地であっても︑宅地に含まれる︵ただし︑道路︑公 園︑河川その他政令で定める公共施設の用に供せられているものは除く︒︶︵第二条第一号後段︑施行令第一条︶︒また︑宅 地建物の﹁取引﹂とは︑①宅地または建物の売買︑②宅地または建物の交換︑③宅地または建物の売買︑交換もしくは貸借 の代理︑④宅地または建物の売買︑交換もしくは貸借の媒介︵仲介︶に限り︵第二条第二号︶︑宅地建物の賃貸業︑建設業︑

管理業は規制の対象外である︵明石三郎ほか前掲書三一頁以下︶︒

(2

) 宅建業法第三条第一項にいう建設大臣または都道府県知事の免許を受けて宅地建物取引業を営む者を宅地建物取引業者と いう︵第二条第三号︶︒しばしば不動産業者︑不動産会社という表現が使用されるが︑不動産業者のすぺてが宅建業法の規 定にいう免許を受けた宅建業者に該当するものではないので︑用語の表現は厳密に行なう必要がある︒

損害補填制度の必要性

であるが︑不動産業は︑他の産業と比較して自己資本比率が低く︵全産業平均が一九・九パー

弁済業務保証金制度︵宅地建物取引業法第六四条の八第一項︶をめぐる法律上の問題 2

宅地建物取引紛争に対する損害補填制度

(7)

0年度版五四八頁︑五五一頁︶︒そのため取引の相手方が宅建業者との取引紛争に巻き込

まれ宅建業者に対して手付金︑売買代金の返還や損害賠償を請求しても︑宅建業者に支払能力が乏しいため損害補填

が全うされないまま取引の相手方が多大な損害を被る場合が往々にして存する︒

宅建業者との取引が原因で取引の相手方が被った損害について︑速やかに補填されるべきことは消費者の利益保護

の観点から当然の要請であることは言うまでもない︒わが国においては不動産取引紛争に関する損害保険制度がいま

だ整備されていないことを考えると︑宅地建物取引が円滑に行われ︑ひいては宅建業者と宅地建物取引業に対する社

会的な信頼を確保するためにも︑損害補填と取引保証の制度的な整備・充実が強く望まれる︒

弁済業務保証金制度の問題点

宅建業法には︑宅地建物取引紛争による損害補填制度として︑現在︑①宅建業者に一定額の営業保証金の供託を義

務づけ︑取引の相手方が宅建業者との宅地建物取引により損害を被ったときには︑これから弁済を受けることができ

る営業保証金制度を設けている︵第二五条以下︒営業保証供託制度とも呼ばれる︒︶とともに︑②不動産業界の集団的な保

証として︑多数の宅建業者を結集して社団法人組織の宅地建物取引業保証協会︵以下﹁保証協会﹂という︒︶を設立し︑

保証協会が宅建業者に代わって損害補填のために営業保証金相当額を弁済する業務︵これを弁済業務という︒︶を取り

扱う制度を設けている︵第六四条の二以下︶︒これが弁済業務保証金制度と呼ばれるものである︒

しかし︑弁済業務保証金制度は︑これまで一般になじみが薄く︑保証協会が弁済業務に関する内部規約をもって︑

弁済を受けようとする者に対し一定の制限を加えており︑これが法律上相当問題を含んでいた︒にもかかわらず︑弁

済業務保証金制度を利用する側の弁護士ですら︑これに対する理解が疎く︑そのため保証協会の内部規約の当否を裁

︵ 二 ︶

関法

︵ 一

0)

(8)

(

 

判で真っ向から争うようなケースも非常に少なかった︒しかし︑その後︑少しずつ裁判事例が散見されるようになり︑

特にここ数年に至り︑保証協会の内部規約により弁済業務に関する取り扱いの可否を争点とする下級裁判例が出るよ

うになり︑ついに最高裁平成一0

10

法務事情一五三一号五五頁︶において︑保証協会が内部規約に基づき長年にわたり行ってきた弁済業務に関する一定の

制限を否定するという注目すべき判決が言い渡されるに及び︑ようやく弁済業務保証金制度とその問題点が関心を呼

ところで︑弁済業務保証金制度の実務上の取り扱い処理に関し批判的検討を加えるにあたり︑まず営業保証金制度

が設置された経過︑これとは別に保証協会が設立され弁済業務保証金制度が設けられた趣旨︑両制度の関係︑弁済業

務の概要等を理解しておく必要があり︑そのうえで保証協会における内部規約とこれまで実施されてきた実務的な取

り扱いにつき︑どのような法律上の問題があるのかについて触れ︑さらに前記最高裁判例の評価とこれを契機として

弁済業務の実務上の取り扱いがどこまで見直されるべきか︑今後弁済業務保証金制度についてどのような問題が残さ

れているのか等について︑できる限り言及したいと思う︒

制度の趣旨

営業保証金制度と弁済業務保証金制度

営業保証金制度の概要

宅建業法は︑昭和︱︱︱二年五月改正で営業保証金制度を設置し︑宅建業者に一定額の営業保証金の供託を義務づけ︑

(9)

第四九巻第ニ・三合併号

取引の相手方が宅建業者との宅地建物取引により損害を被ったときには供託金から弁済を受けることができることと

ところで︑営業保証金制度は︑不特定多数の者を相手方として反復継続して行なうことが予定される取引業のうち︑

一定のものについては営業を開始するにあたり︑これに携わる業者に対し供託所に一定額の金銭または有価証券を供

託することを義務づけ︑もし業者がその取引の相手方に対し損害を与えた場合には供託金によって損害を補填するも

このような制度は︑積立式宅地建物販売業法第一九条︑旅行業法第七条︑割賦販売法第一六条等の規定によっても

立法政策的に︑その取引業者に営業保証金の供託を義務づけるかどうかは︑個々の取引業の特質等に鑑みて行われ

ているが︑宅地建物取引業について言えば︑不特定多数の者を取引の相手方として反復継続して取引活動を行なうこ

とに加えて、他の取引に比べて取引物件の権利関係•取引条件が複雑であり宅建業者の債務不履行、調査・説明義務

違反による損害賠償等の紛争が往々にして存すること︑取引の相手方が宅建業者との間で授受する手付金︑内金等の

取引代金が相当高額であり︑ひとたび紛争が生じ宅建業者がその責任を履行しない場合に取引の相手方に多大な財産

上の損害を与える危険があること︑宅建業者に零細な中小業者が多いこともあって必ずしも損害が補填されない場合

があること︑取引に携わる宅建業者に対する社会一般からの信用を確保し︑もって宅地建物取引の促進を図る必要が

( 3)

4

) 

のとして法律により設けられた保証︵担保︶供託制度である︒ 関法

(10)

(5 ) 

宅建業者は︑営業の開始にあたって︑主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託することが義務づけられ る︒宅建業者は︑営業保証金を供託すれば供託物受入れの記載のある供託書の写しを添付して︑その旨を︑その宅建

業者が免許を受けた建設大臣または都道府県知事︵これを免許権者という︒︶に届け出なければならず︑この届出をし

た後でなければ宅地建物取引業を開始することはできない︵旧宅建業法第ニ一条の二以下︑現行宅建業法第二五条第一項︑

第四項︑第五項︒後記の図示は総務庁行政監察局編﹁宅地建物取引の現状と問題点﹂一0五頁より引用︒ただし︑供託額は現行宅

︵ 二 ︶ (3)当時の立法担当者は営業保証金制度の目的について﹁業者の取引により相手方に生ずるかも知れない損害に対しその債務

の支払に充てるために営業保証金を供託して営業活動の社会的安全を確保し︑これにより取引の相手方の利益を保護すると

ともに業者の信用を確保し︑もって宅地建物の利用の促進を図ること﹂であるとする︵鬼丸勝之編﹁宅地建物取引業法解

(4

)

0

0号ニ︱四三頁︵同旨最判昭和三九年五月二三日刑集一五一号ニニ九頁︶は﹁宅地建物取引業者の業務は一般国民の日常生活に欠くことのできない住居等の取引に関するものであり︑その取扱い金額も比較的大きいものであるから︑業務運営の適正を欠くときは一般社会に与える損害は甚大であり︑公共の福祉を害する虞あることは明白

である︒かような事情にかんがみれば︑⁝⁝前記の趣旨および程度の営業保証金制度を設け︑業者と取引する関係者に対し不測の経済的損害を蒙る虞を除去し︑その信頼度を高めることとしたことは︑公共の福祉を維持するための必要な規制措置

として是認さるべきものである﹂として憲法第二二条︑第一三条に違反するものではないと判示している︵判例評釈として明石三郎・民商法雑誌四九巻一号一0二頁、渡部吉隆•最高裁判所判例解説民事編昭和一二七年度四00頁)。

営業保証金の供託と営業の開始

弁済業務保証金制度︵宅地建物取引業法第六四条の八第一項︶をめぐる法律上の問題

(11)

宅地建物取引業者

酎 主 た る 事 務 所 1000万円

金 そ の 他1事務所当り 500万円

営業保証金の供託

① 供 託

⑤追加供託

(④の実行後の不足分の

追加 ) 

②宅地建物取引

(債権、債務発生)

法務局(主たる事 務所の管轄地)

関法

取 引

る 債 権 を 有 す る 者

第四九巻第ニ・三合併号

右供託額は︑昭和三二年五月の改正当時︑宅建業者の主たる事務所につき一〇

万円︑その他の事務所ごとに五万円であった︒例えば宅建業者Aが甲県内に本店

のほか支店三ケ所を有して宅地建物取引業を営んでいる場合︑A

0万円に五

万円x三ケ所を加算した二五万円を供託所に供託することとなる︒ただし︑昭和

三二年五月改正当時︑供託の限度額は三0万円とされていた︵この供託限度額は昭

なお︑免許業者が免許を受けたにもかかわらず営業保証金を供託しない者につ

いては︑現行宅建業法では︑免許権者は︑その免許をした日から三ヶ月以内に宅

建業者が営業保証金を供託した旨の届出をしないときは︑その届出をすべき旨の

僅告をしなければならず︑この催告にもかかわらず︑催告が到達した日から一ケ

月以内に宅建業者が右届出をしないときは︑その免許を取り消すことができる

(5

)

または支店︵商人以外の者にあっては︑主たる事務所または従たる事務所︶②

e )

使

10

 

(12)

使

営業保証金の還付

取引の相手方が営業保証金に対し権利を行使する要件としては︑﹁宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引

をした者は︑その取引により生じた債権に関し︑宅地建物取引業者が供託した営業保証金について︑その債権の弁済

例えば︑宅建業者Aと買主Bとの間で宅地建物の売買契約を締結しBAに対し手付金を支払ったところ︑A

務不履行を理由にBが契約を解除したにもかかわらずABに手付金を返還しない場合とか︑依頼者Cが媒介︵仲

介︶業者Aに宅地建物の買受方の媒介を依頼しDと売買契約を締結したが︑Aが媒介業者として宅地建物の権利関係

等の調査義務を怠るという過失のためCが損害を被った場合に︑買主が宅建業者に対し有する手付金返還請求権や依

頼者が媒介業者に対し有する損害賠償請求権は︑いずれも宅地建物取引業に関する﹁取引により生じた債権﹂として︑

当該宅建業者が供託した営業保証金から弁済を受けることができる︵これを営業保証金の還付という︒︶︒

言い換えれば︑営業保証金から弁済︵還付︶を受けることができる対象債権︵還付請求権︶は︑宅地建物取引業に関 ︵ 三 ︶

(13)

営業保証金の大幅な増額の要請と業界からの反対 2営業保証金の大幅な増額と宅地建物取引業保証協会の設置

0 なう︵供託規則第二四条第二号︑営業保証金規則第一条︶︒ 第四九巻第一一・三合併号

する﹁取引により生じた債権﹂であって︑これ以外の債権︵例えば金融機関の宅建業者に対する貸付債権︑賃貸人の宅建業

11

に振り出した手形等︶は︑たとえ宅建業者との間で生じた債権であったとしても右対象債権には該当しない︵鬼丸勝之

編前掲書一三四頁︑明石三郎ほか前掲書改訂版︱二八頁以下︑建設省監修前掲書一三四頁︶︒

権利の実行方法

営業保証金から還付を受ける方法は︑供託規則及び宅地建物取引業者営業保証金規則に基づき︑権利を実行する者

が供託物払渡請求書に供託書正本または供託通知書︑﹁供託物の還付を受ける権利を有することを証する書面﹂︵還付

権証書とも呼ばれる︒確定判決︑和解調書︑調停調書︑公正証書等︶の書類を添付して供託官に直接供託金の払渡請求を行

なお︑供託物還付請求についての供託官吏の審査権限はいわゆる形式的審査権限を有するにとどまる︵東京高判昭

昭和四0年代に入ってわが国の経済成長に伴い不動産取引はますます活発に行われ取引価格も高額になり︑

これに関する取引紛争も増え始めた︒そして︑営業保証金制度の目的が取引により生じた手付金等の支払いや損害賠

償を担保することにある以上︑取引価格の上昇に比例してその引き当てとなるべき営業保証金を増額させるぺきこと

関法

(14)

昭和三二年五月改正により定められた営業保証金の額は︑その後一0年以上も据置きの状態にあったところ︑昭和

四五年︱二月に住宅宅地審議会は︑﹁不動産の流通機構の整備改善を図るため︑宅地建物取引業制度上講ずべき措置

についての答申﹂を出し︑改正すべき事項として不動産取引業の多様化に対応して免許の類別化︵不動産仲介業︑売買

業︑開発業︶とこれに応じた営業保証金の額の引き上げを答申した︵建設省住宅局住宅政策課監修﹁住宅宅地審議会答申集﹂

0二頁︶︒しかし︑不動産業界は︑前記のように︑規模的に零細な中小業者が相当数占めていることもあって︑営業

保証金の引き上げは経済的負担が過重となるとの理由から激しく反対し︑立法化に至らなかった︒

同審議会は︑改めて昭和四七年四月に﹁宅地建物取引損害補てん制度について講ずべき措置についての答申﹂を出

0八頁︶︑これを受けて同年六月改正により︑営業保証金の額を大幅に引き上げる︵主たる

0万円︑その他の事務所ごとに二五万円︶ことで消菅釜某ッ利益保護を図るとともに︑個々の宅建業者の経済的負

担を軽減して︑不動産業界が集団的な保証を行なえるよう︑多数の宅建業者を結集して社団法人組織の宅地建物取引

業保証協会を創設し︑これに加入した社員︵宅建業者︶に代わって︑保証協会が損害補填のために営業保証金相当額

(6 ) 

を弁済する業務を取り扱う︑弁済業務保証金制度を導入した︵第六四条の七以下︶︒

(6

)

︵ 二 ︶

宅地建物取引業保証協会の設立 は当然の要請であった︒

参照

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