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フランスにおける選挙報道の自由とインターネット

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(1)

フランスにおける選挙報道の自由とインターネット

その他のタイトル Internet et interdiction de la publication des sondages d'opinion

著者 村田 尚紀

雑誌名 關西大學法學論集

巻 47

号 4

ページ 586‑609

発行年 1997‑10‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00024520

(2)

二 つ

表現の自由の優越性の根拠の一っとして民主的政治過程と表現の自由との密接な関係を挙げるのは︑今日それに対

するさまざまな疑問があるにせよ︑なお通説的な立場であろう︒そのような立場からすれば︑政治的表現の自由は︑

なかんずく手厚く保障すべき権利であり︑その取り扱いはとりわけ慎重になされるべきものであることになるであろ

二、一九七七年七月一九日法の構造と実態~フランスにおける投票前一週間の世論調査の公表禁止

三︑インターネットと一九七七年七月一九日法︱一条

村 田

フランスにおける選挙報道の自由とインターネット

(3)

フランスにおける選挙報道の自由とインターネット

フランスの場合︑政治的表現の自由︑選挙運動に関しては規制がわが国に比べはるかに少ないといってよ

く︑インターネットを利用した政治活動︑選挙キャンペーンも自由に行われている︒一九九七年五月二五日ー六月一

(1 ) 

日の国民議会選挙に向けたキャンペーンでは︑各党がホームページ上で宣伝や論戦を繰り広げ︑電子メールで有権者

通説上それじたい表現の自由とされる報道の自由は︑国民の知る権利を空洞化させないための自由として︑その保

障の意義が強調される︒政治的言説を報道する場合︑報道の自由は︑国民の知る権利のためのみならず︑政治的表現

の自由のためにも保障されなければならないといえる︒そしてまさに報道の自由にこのような意義があるからこそ︑

その現実の主要な担い手である巨大メディアは︑その社会的権力性がチェックされなければならないということにも

なり︑そのかぎりで報道の自由の規制が正当化されるわけである︒

政治的言説を報道する際︑ とコンタクトをとっていた︒

メディアには︑中立性が要請されるといわれる︒すなわち国家権力や政治的支配勢力に い直されなければならないであろう︒

ところが︑わが国の政治的表現の自由は︑肝心の選挙期間になると公選法一四二条によって厳しく制限される︒最

近︑各党や政治家個人がインターネット上にホームページを開いているが︑これについて自治省は︑インターネット

画像の選挙運動への利用は︑ホームページが政党機関紙のような定期刊行物ではないので現行公選法の文書図画制限

に触れると解し︑選挙期間中であるか否かを問わずインターネット上で選挙運動や立候補予定者の

P

Rを行うことは

できないという立場をとっている︒その一方で︑自治省は︑政治活動としてのインターネットの使用は認めるともし

ている︒しかし政治活動と選挙活動の厳密な区別は絶望的に困難である︒自治省の解釈や公選法の制限そのものが問

(4)

屈服するようなことがあってはならず︑また特定の政治的立場に加担するようなこともあってはならないとされるの である︒しかしいうまでもなく︑ここにはきわめて困難な問題がある︒政治的中立性の基準という問題︑公権力がメ ディアの活動内容を評価したりそれに介入することの是非と程度という問題である︒また政治的中立とは何かという 問題ともからんで︑報道の真実性という要請は︑真実が持ちうる党派性のゆえに︑考えようによっては中立性の要請 と相容れないという問題もある︒いわゆるテレビ朝日問題であらためて広く注目された放送法は︑かかる厄介な問題

(2 ) 

を抱えている︒すなわち郵政大臣による放送内容の中立性の判断とそれに基づく処分の危険性という問題である︒

ふたたび翻ってフランスの場合︑選挙運動への規制が少ないのと対照的に︑政治報道とりわけ選挙報道に関するメ ディアヘの公的規制は︑少なくない︒たとえば一九九七年五月二五日ー六月一日国民議会選挙の際には︑

挙報道に関して︑放送メディア高等評議会

( C o n

s e i l

S u p e

r i e u

d r  

e  l

' A u d

i o v i

s u e l

.  

メントを発表した︒五月一二日の最初のコメントでは︑テレビで発言する時間の与野党間のバランスはとれているが︑

与党内部では

RPR

UDF

よりも優遇されており︑野党側では社会党が共産党に比べて優遇されていることが指摘 一週間後のコメントでは︑同じことが述べられたうえ︑さらに国民議会に議席を持たない政党がテレビで発

(3 ) 

言する機会が少ないことが指摘された︒また

C S

Aは︑五月二三日に第二回投票に向けた各党の政見放送を国営のフ

(4 ) 

2とフランス

3

のニチャンネルで一日三回同時に放送すべきことを決定した︒選挙法は︑多数派と少数派に平 等に放送時間を与えるべきことやラジオ・テレビの国営放送局が同時に政見放送を流すべきことを規定しており︑こ

( 5)  

うしたことを監視する

C S

Aの権限が一九八六年九月三0日法に定められているのである︒

フランスにおける選挙報道の規制は右にとどまらない︒各種選挙の投票一週間前から選挙に関する世論調壺の結果

テレビの選

C S

Aと略記︶が︑二度コ

(5)

規制するべきだという見解がないわげではない︒その意味でも︑

一九七七年七月一九日法の構造

を公表することが禁止されているのである︒わが国でも︑世論調査や予測報道のアナウンス効果を問題としてそれを

フランスにおけるこのような規制は注目されるとこ

ろである9そして︑右に紹介した

CSA

による規制に対しては今のところさほど異論が見られないのに対して︑世論

調査結果の公表禁止には批判的見解がかなり目立っている︒議論の大きなきっかけとなったのがインターネットであ

る︒そこで本稿は︑この禁止の根拠法である一九七七年七月一九日法の憲法上の問題とインターネットの登場によっ

(6 ) 

てそれが今日直面する問題に若干の考察を加えようとするものである︒

一九七七年七月一九日法の構造と実能宇│̲フランスにおける投票前一週間の世論調査の公表禁止

(7 ) 

フランスの﹁世論調査の公表と普及に関する一九七七年七月一九日法﹂は︑各種選挙の投票前一週間︑選挙に関す

まず第一条によれば︑﹁レフェランダムまたは大統領選挙または選挙法に基づく各種選挙およびヨーロッパ議会選

挙と直接または間接に関係するあらゆる世論調査の公表および普及は本法の規定によって規制される﹂︵一項︶︑﹁世

論調査に基づく選挙のシミュレーションは世論調査とみなす﹂︵二項︶︒

これを受けて第一一条一項は︑﹁投票に先行する一週間および投票期間中︑第一条に定められた調査の公表

(p ub

l i c a

t i o n

)

および普及

( d i f

f u s i

o n )

する﹂と規定する︒ および解説

(c

om

me

nt

ai

re

)

る世論調査の結果の公表を禁止している︒

(1) 

二 ︑

は︑いかなる方法によるものであれ︑これを一切禁止

(6)

0)

第︱二条によれば︑この禁止に違反した場合︑最高五0万フランの罰金が科せられることになっている︒

選挙に関する世論調査を監督する機関が世論調査委員会

(C

om

mi

ss

io

d n

es

  son

da

ge

s)

 

一九七七年七月一九日法と二つの同法施行デクレ

基づくものである︒委員は全員で九人である︒委員は︑ である︒その組織と権限は︑

(9 ) 

0年五月一六日デクレ︶に

コンセイユ"デタ・破毀院・会計検査院のそれぞれから三人

ずつ内閣によって任命されるが︑内閣による任命はそれぞれの機関からの提案に基づくものであり︑しかも委員には

身分保障があるので︑この委員会は一種の独立行政機関

( a u t

o r i t

a d e

m in i s tr a t iv e   i nd

ep

en

da

nt

e)

 

はいえない︒これが報道の自由ないし表現の自由を萎縮させないとはいえないであろう︒ であるといえる

一九七七年七月一九日法第

一条に定められた世論調査の﹁客観性と質﹂を確保するために規範を定立し︑監視する権限を持つ

など︶︒その種の世論調査を行う者は︑委員会に届け出なければならず︑発表の基礎資料を委員会に提出しなければ

( 10 )  

︵同法四条・七条︶︒たしかに﹁西欧の民主主義大国には類似のものがない﹂といえよう︒

第一に︑文言の明確性が問題になる︒そもそも﹁世論調査﹂の明確な定義がない︒各種選挙に﹁間接に﹂関係する

世論調査とは︑いかなる世論調査のことか︒世論調査結果に基づくシミュレーションとは何か︒さらには︑その﹁公

表﹂︑﹁普及﹂﹁解説﹂の意味については︑出版の自由に関する一八八一年七月二九日法の枠組みによって明確にされ

( 11 )  

ているので特別な困難はないともいわれるが︑どこまでが︱二条の禁止の対象になるのか︑いずれもただちに明確と

第二に︑そもそも当該禁止規定の目的が問われなければならない︒通常これは︑有害と考えられる世論調査の影響 以上の一九七七年七月一九日法の規定を簡単に検討してみよう︒ ならない 一九七八年一月二五日デクレ一条・ニ条︶︒委員会は︑ 関法第四七巻第四号

(7)

(2) 

第四に︑静かに一人で判断したい有権者の﹁知りたくない権利﹂を保障するためなら︑本法のような禁止は行きす

ぎということになる︒﹁より制限的でない他の選びうる手段﹂が考えられるからである︒最も問題となりうるテレビ

放送の場合でも︑フランスでは暴力描写や性描写のある番組があらかじめ

CSA

のコードを明示したうえで放送され

ていることからすれば︑同様に放送内容を予告のうえ世論調査結果を公表するという方法が考えうる︒

第五に︑世論調査委員会が独立行政機関であるのは︑報道の自由や放送の自由に介入する公権力機関のありかたと

してミニマムの条件である︒問題は︑この委員会に大きな権限が与えられているにもかかわらず︑委員会にチェック

をかけられるのがコンセイユ

1 1デタだけであるということである

る政府の対議会責任を別にして︑議会や国民による特別のコントロールがあるとはいえない︒このため独立機関であ

る世論調査委員会の暴走にたいする歯止めが不十分といえる︒

一九七七年七月一九日法の実態

一九七七年七月一九日法には︑少なくとも以上のような問題点の指摘が可能であると考えられるが︑これがすべて いることにならないかが問題である︒

( 1

2 ) 

を遮断して︑有権者が自己の内面に沈潜し静かに考える時間を保障するためだと説明される︒しかし︑世論調査の公

表がはたして有害なのかがまずもって問題である︒必ずしも明確でない有害性を理由に報道の自由を制限することが

第三に︑第二点と表裏をなす問題だが︑投票前一週間の有権者の知る権利が︑明確な合理的理由もなく制限されて

︵一九七七年七月一九日法一0条︶︒委員を任命す

(8)

まず﹁世論調査﹂の意味について︑破毀院は︑刑罰法規の厳格な解釈の要請から︑﹁すべてのジャーナリストや政

党が自由に公表する権利を持つ﹂単なる調査

( en q u et e )

を世論調査

(s

on

da

ge

d 'o p i ni o

n ) 

( 13 )  

一九七七年七月一九日法が狙いとしているのは︑科学的な世論調査のことであって︑科学的厳密さに欠け

( 14 )  

る単なる調査は︱一条一項の公表禁止の対象外だとしたのである︒同法が表現の自由を規制するものである以上︑か

かる厳格な解釈が必要であろう︒しかし︑両者の区別が依然として困難であることにかわりはなく︑かえって難しい

( 15 )  

問題がふえたという批判的なコメントも出されることになる︒

調

︱一条三項が投票終了後有権者に速報を提供する目的で行う予測報道を例外的に認めているにすぎな

( 16 )  

いことを理由に︑出口調査にも一一条一項の公表禁止が及ぶとした︒﹁間接的に選挙に関係する﹂ということの意味

が明確でない以上︑この論法でいくと︑かなりの範囲の﹁調査﹂が一九七七年七月一九日法の対象になりかねないで

﹁シミュレーション﹂や﹁解説﹂の意味は明確にされていないが︑前者について︑破毀院は︑

かなる世論調査に基づいて行われる投票シミュレーションにも適用すべきである﹂とし︑たとえ禁止期間以前に公表

同法の運用の現実の中で実際に問題になったわけでは必ずしもない︒それでは︑実際には何が問題となり︑それはい

と区別しなければならな

コンセイユ"デタは︑世論調査の意味をかなり広く解するようにみえる︒すなわち︑いわゆる出口

コンセイユ"デタは︑﹁有権者の動機を把握するための﹂出口調査は︑﹁少なくとも間接的に選挙に関 かに扱われてきたのか︒若干の判例や実態を眺めておく︒

(9)

② 

( 17 )  

された世論調査結果に基づくシミュレーションでも一一条は適用されるとした︒

その一方で︑禁止期間以前に公表された世論調査結果を禁止期間中に新聞紙上に繰り返し掲載したり︑それにコメ

( 18 )  

ントを加えることは︑投票に影響を与えるものではないとのコンセイユ

1 1デタの判断がある︒

あらためていうまでもなく︑破毀院にせよコンセイユ"デタにせよ違憲立法審査権を持たないから︑法律そのもの

の合憲性ないし正当性を論じることはできない︒したがって︑ありうるのはいわば合憲限定解釈であるが︑判例自身

も首尾一貰しているとはいいがたく︑しかも問題の概念を明確にすることには成功しえていないと思われる︒

世論調査委員会の見解

世論調査委員会の若干の見解もみておこう︒電話などによる即席の世論調査は捕捉できないため一九七七年七月一

九日法上の届け出義務を無意味にするが︑同委員会は︑このような調査について一般的な注意を促すだけにとどまった︒

一九七七年七月一九日法︱一条の禁止の対象に関して︑世論調査委員会が一定の見解を示している︒輸送に時間が

かかるために世論調査の普及に数日かかり︑公表禁止期間に抵触してしまうというケース︑すでに普及している世論

調査結果をより広い範囲の人に知らせるぺ<繰り返し発表するケース︑これら二つのケースに対しては︑同委員会は

容認の立場をとる︒しかし︑公表が禁止されている世論調査結果を知っている新聞が︑それをふまえて有権者の傾向

を論じ︑暗に情報を提供するというケースに対しては︑禁止されている情報が流されていないかを警戒する立場を

( 19 )  

世論調査委員会は︑必ずしも法をもっぱら権威主義的に解釈しているとはいえず︑その機能には消極・積極の両面

があり︑簡単に評価できないが︑﹁世論調査﹂の意味︑﹁解説﹂の意味については︑やはり明確にできていないといえ

(10)

それでも一九八八年時点では︑ らざるをえない︒ 集中化する世論調査機関の幹部と委員会の常任の職員との間には﹁信頼関係﹂が築かれるが︑それに対して︑メ

( 21 )  

ディアは﹁情報の自由を侵害すると非難される﹂委員会をあまり信用しないため︑世論調査委員会の活動は困難にな

といわれていた︒︱一条に関しても︑同条は遵守されるだけでなく︑世論からますます受け入れられるようになって

( 2 2 )  

一九七七年七月一九日法は全体としてうまく適用され︑同法違反はきわめて少ない

一九七七年七月一九日法︱一条の正当性がまったく疑われていなかったわけではない︒同条は︑

投票前一週間の選挙に関する世論調査の公表を禁止してはいるが︑世論調査そのものを禁止しているわけではない︒ はますます多くが世論調査結果を報道するようになった︒ 一九八八年大統領選挙のキャンペーンは︑政治に関する世論調査がますます重要になり︑多様化したことを印象づ( 2 0 )  

けた︒この年の一月から五月までに世論調査委員会に届け出られ監督を受けた世論調査は一五三にのぼり︑前回の一

九八一年の大統領選挙時の一︱一を大きく上回った︒民間の世論調査機関は集中化の傾向を示し︑世論調査委員会に

届け出た機関のうち選挙運動期間中も継続的に調査を行うのは六機関にすぎなかったが︑調査内容は多様化し︑方法

も電話やミニテル︑街頭での質問︑出口調査などがとられた︒世論調査機関の集中化傾向と対照的にメディアのほう

③ 

る ︒一九七七年七月一九日法下の世論調査報道の実態

一九七七年七月一九日法の下で世論調査とその報道は︑実際にどのように行われてきたのか︒

(11)

世論調査を禁止することは︑よほど厳重な取り締まりをしないかぎり不可能であろう︒そもそも法の目的が有権者の﹁知らされない﹂権利の保障にあるかぎり︑当該期間中も世論調査そのものを禁止する正当な必要性はないといえよ

( 23 )  

う︒実際に︑投票前の一週間も世論調査活動は行われてきた︒そしてここから︱つの問題が生じることになる︒世論

調査機関に調壺を依頼するのは︑もちろん個人ではない︒かつては選挙結果に最も直接的な関心を持つ政党が調査を

依頼していた︒近年は金融機関も依頼するようになった︒かかる事態は︑

不平等だとして非難されることになるのである︒また近年︑

フランス国外の新聞がフランスの世論調査機関に依頼す

るケースも生じた︒外国紙は︑さらに結果を投票直前に紙上で公表してフランスでの売れ行きを伸ばしたのである︒

一九九七年五月二五日ー六月一日国民議会選挙のなかの一九七七年七月一九日法︱一条

一九七七年七月一九日法︱一条はさまざまな問題を芋んでいた︒そしてその一部は現実に

も現れていたわけであるが︑従来はまだマージナルな問題にすぎないとみなされていた︒

( 24 )  

一九九五年の大統領選挙以降である︒このときの第二回投票直前︑スイスの

(T ri bu ne   de   Ge ne ve

)﹄が︑新聞紙上のみならず同紙のインターネット

1 1

ホームページで世論調査結果を公表した︒この措置は︑第一回投票時に同紙を入手できなかった各国からの問い合わ

せに応じて急遠とられたもので︑当時多くのフランス人はまだ新聞からの情報を待っているだけだったという︒

それから二年経過して状況はさらに進展した︒この間に世界でもフランスでもインターネットが普及し︑それに 日刊紙﹃トリビューヌ

1 1

1 1ジュネーヴ それが重大な問題となり始めたのは︑ 以上に垣間見たように︑ (1) 

一 条

一部の特権階級による情報の独占であり︑

(12)

よってかつてマージナルとみなされた問題が一変して大きな問題になったのである︒もちろん現在でも発達した諸国

と比較すれば︑フランスでのインターネットの普及はまだかなり遅れているといえよう︒

字であるが︑電子メールの利用者が四0万人ないし五0

w w

の利用者が一0w 万人ないし一五万人︑うち個人

でプロバイダーに加入する者が九万五千人、フランスにあるホスト11コンピュータは一五万台で世界の一•四パーセ

ントにすぎないといわれ酎︒しかしこの数字も︑たとえば一九九五年のルモンドの発行部数が五一万部︑フィガロが

( 26 )  

三九万部︑リベラシオンが一七万部という数字と比較するとすでに相当な値であるともいえ︑今後も増加することは

( 27 )  

確実である︒またフランスでは︑ミニテルが七四0万台普及しており︑これを通じてインターネットのホームページ

にアクセスすることができる場合も少なくないから︑世界的なインターネットの普及の影響は︑やはり大きい︒

このようなインターネットの発展・普及という環境の変化を背景に一九九七年国民議会選挙は行われた︒この選挙

では︑すでに述べたようにインターネットがキャンペーンに活用されただけでなく︑選挙報道にも利用され︑

七年七月一九日法︱一条が大きく揺さぶられることになったのである︒

今回︑トリビューヌ"ド"ジュネーヴは第一回投票時から︑紙面のみならず同紙のホームページ上でフランスの世

( 28 )  

論調査機関である

CSA

に依頼した直前の世論調査結果を公表した︒五月ニ︱日と二二日に行われた世論調査の結果

( 29 )  

が二二日午後七時にホームページ上に公開される前後︑予想通りアクセスが殺到し︑接続不能の状態が長時間続いた︒

公表された世論調査の内容は︑来る二五日の投票の際どの政党に入れるか︑当日までに考えを変える可能性があるか

というものであり︑性別・年齢別・職業別などの政党支持率が示され︑その結果に基づく議席のシミュレーションも

掲載されていた︒このシミュレーションの結果は︑

フランス本国で左翼が二五四議席︑右翼が三0一議席というもの

一九九六年春の不正確な数

(13)

フランスにおける選挙報道の自由とインターネット

ることになったからである︒ 九五年大統領選挙時と違って︑今回は︑トリビューヌ

1 1

1 1ジュネーヴの動きに他の多くのメディアが続いた︒活

(L a  R ep ub li qu e  d es   Py re ne es

)﹄が世論調査結果に言及し︑ラジオのフランス

1 1キュルチュール

( 30 )  

が新聞批評の形でそれらを取り上げた︒

インターネットでは︑フランス国内にあるリベラシオン

( 31 )  

載する海外のサイトにリンクを張った︒海外サイトでは︑トリビューヌ

1 1

1 1ジュネーヴのほかにイギリスのデイ

(D ai ly   Te le gr ap h)

が五月ニニーニ︳︱‑日にイギリスの銀行からの依頼でフランスの調査機関であ

IPSOS

が行った世論調査をホームページに掲載したほか︑いくつかの個人のホームページが教育目的や情報提

( 32 )  

供目的で同様の情報を流した︒ちなみに

IPSOS

の調査結果でも

CSA

の調査とほぼ同様の結果が予測されていた︒

( 33 )  

これらのホームページにはミニテルを通じてアクセスできるようになっていた︒海外の少なからぬサイトにこうした

情報が掲載される一方で︑

徴的なのは︑ フランス国内のサイトは投票一週間前から新たな調査の結果を掲載することをやめた︒象

IPSOS

(L ib er at io n)  

フランス国内にある

IPSOS

のサイトは︑五月︱︱︱‑│︱四日に行った調査の結

( 34 )  

果を公表したのち新たな調査結果の公表をやめたのである︒一九七七年七月一九日法の下で起きるべくして起きた事

態であるが︑インターネットの世界では同法︱一条の禁止が無意味なことを如実に示す事態であった︒

ターや広く普及しているミニテルを使って海外のサイトにアクセスすれば︑国内で得られない情報を誰でも入手でき リー

1 1テレグラフ

﹃パリジアン

(L e  P ar is ie n)

﹃トリビューヌ

(F ra nc

e  , 

Cu lt ur e)  

のホームページが︑直前世論調査結果を掲

コンピュー

(L a  T ri bu ne

) で︑周知の最終結果と正反対の予測をしていた︒

(14)

五月二三日︑世論調査委員会は︑﹃パリジアン﹄﹃トリビューヌ﹄﹃レビュプリーク

1 1

フランス

1 1

キュルチュールを訴追することを司法大臣に対して要求し︑リベラシオンのサイトに関しては外国のサーバーのアド

( 35 )  

レスを知らせたとして﹁共犯

( c o m

p l i c

i t e )

﹂の成立する可能性を検討しつつ監視することにした︒

第二回投票が行われる六月一日直前にも第一回とほぼ同様の事態が展開した︒トリビューヌ"ド"ジュネーヴは︑

五月二八日と二九日に世論調査機関の

CSA

と共同で行った世論調査の結果と最終結果のシミュレーションを二九日

( 36 )  

夜にホームページに公開した︒このシミュレーションは︑左翼一=︱五議席︑右翼二六0議席︑国民戦線一議席︑諸派

1 0

議席︑右翼二五六議席︑国民戦線一議席︶に近い予測をした︒インター

ネット上の他のホームページにも同様の情報が掲載され︑活字メディアではさらに﹁フランス

1 1

( 37 )  

S o i r

) ﹄も加わって︑各種世論調査の結果を紹介した︒

(F

ra

nc

e 

このようなメディアの動きに対して︑五月二九日夜︑証券取引委員会

(C

om

mi

ss

io

d n

es

  op e r at i o ns  

de

  Bo

ur

se

)

世論調査委員会が共同コミュニケを発表し︑新聞に対して一九七七年七月一九日法︱一条をあらためて想起させ︑

﹁世論調査を実施した者とその利用者は︑調査の秘密性を自覚すべきであり︑噂によって市場に混乱をきたすことが

( 38 )  

ないようにコミュニケーションのプロセスをしっかりとコントロールするべきである﹂と述べた︒

以上の経緯に即して少なくとも次の三つのことが指摘できるであろう︒

第一に︑ネット上の情報の規制は困難を極めるとしても︑活字情報は従来から規制の対象となっているし︑またた

とえ伝聞情報にせよ世論調査結果を報道することは禁止されているにもかかわらず︑罰金覚悟で少なからぬ活字メ

ディアが一九七七年七月一九日法︱一条に挑戦したという事実は︑同条の文面のもつ萎縮効果が薄れ︑それだけその

(15)

! 'i n f or m a ti o n ) 

である︒すなわち﹁世論調査は︑

(2)  正当性が揺らいでいることを示しているといえよう︒

( 39 )  

︵ミニテル経由を含む︶︑さらには

CNN

を通じて多くの有権者が禁止さ

れている情報にアクセスしたと考えられる︒このことから︑

なくクローズアップされてくるであろう︒これもまた︑

︱一条が前提とする世 第三に︑第二回投票直前に公表されたトリビューヌ

1 1

1 1ジュネーヴのシミュレーション予測は実際の最終結果に

かなり近かったとはいえ︑第一回投票直前のそれは実際の最終結果と正反対であったことは︑

論調査の公表の投票への影響なるものが少なくとも疑わしいことを明らかにしたといえる︒また五月二九日の証券取

引委員会と世論調査委員会の共同コミュニケは︑市場の混乱を懸念しているが︑市場の混乱の予防はそもそも︱一条

の目的ではない︒世論調査委員会がそのような懸念を表明するのは︑権限の逸脱といわざるをえないであろう︒

一九七七年七月一九日法︱一条をめぐる議論

一九七七年七月一九日法︱一条をめぐって選挙期間中にあらわれた言説をフォローしておこう︒

0

日︑バリジアンは︑前夜公表されたトリビューヌ"ド

1 1ジュネーヴのシミュレーションを掲載したホーム

ページとそこに接続できるミニテルのパリジアンの画面を写真で紹介し︑このことが一九七七年七月一九日法︱一条

( 40 )  

に違反することを認めたうえで︑あえて同条違反を犯した理由を三点あげている︒第一は情報の自由

( l a l ib e r te   de  

一定の時点における一定の状況の評価を可能にする一要素であり︑

解釈すべきパラメーターであり︑要するにごく簡単に言えば︱つの情報である﹂︑そして﹁情報は選挙の期間であれ

第二に︑活字メディアやインターネット

︱一条の正当性を揺るがさざるをえないであろう︒ ︱一条が有権者の知る権利を考慮していないことが否応

(16)

前の情報しかない︒ロゼは︑ 機関の

CSA

民間の世論調査機関は︑ を公表するというのである︒

(R om ai n  P ac he ) 

( Pi e r re   Gi ac om et ti ) 

はしばしば そうでなかれ自由に流通すべきである﹂という︒第二は平等である︒すなわち﹁この情報を技術的な手段あるいは何らかの手段を持つ者だけが享受できるというのは許されないことである﹂︑﹁今日の情報流通︑とりわけインターネットとミニテルがこの法律を無意味︑適用不能︑差別的︑非民主的なものにしていることは明白である﹂という︒第三の理由とされているのは︑情報の自由を保障するローマ条約である︒﹁民主主義の実践とほとんど合わなくなっており︑かつ古臭くなっている法律が一般化されることなどありえないヨーロッパの名において﹂︑同紙は世論調査結果

一九七七年七月一九日法︱一条の禁止のおかげで多くの注文を受け利益を上げているにも

( 41 )  

かかわらず︑同条に対して否定的である︒

IPSOS

のピエール

1 1ジャコメッティ

いわれる﹁秘密を知る者と知らざる者﹂の事実上の不平等を批判する︒

BVA

のロマン

1 1

は︑同条が有権者を子供扱いしていることを批判し︑さまざまな情報のうちの︱つにすぎない世論調査の結果だけを

規制するのは不合理だとする︒すなわち﹁たとえばメディアの解説も有権者に影響を与える︒だからといって解説の

公表を禁止しなければならないか︒明らかに馬鹿げている︒世論調査はさまざまな情報の︱つである﹂と︒世論調査

(S te ph an e  R oz es )

は︑ある時点から情報を提供しないことの政治的意味を指摘

する︒すなわち一九七七年七月一九日法︱一条によって︑候補者別支持率に関して︑投票日の有権者の念頭には八日

一九九五年の大統領選挙の際︑有権者が最後の週に行われた調査を知っていたら︑ジョ

スパン支持がふえ︑シラク支持が落ちていることを知って﹁有権者はたぶん第.一回投票の選択を変えていたであろ

0

0

(17)

(1) 

至っていない︒

︑ む す び

ネットや国境のないコミュニケーションの時代に今なお有効か

世論調査委員会は︑

︵⁝⁝︶︑禁止が市民とよりよく情報を受けている一

( 42 )  

部の人々の間により大きな不均衡をもたらしていないか﹂と︑同条に批判的な見解を示した︒

メンバーが﹁法律がインターネットを予想していなかった﹂と簡単に認め︑委員長もこの問題

( 43 )  

に見解を持っていないと述べるにとどまった︒しかし︑委員会は︑もともと一九九八年三月に予定されていた国民議 会選挙に備えて一九九七年秋に報告書を首相に提出する予定であった︒報告書の内容がどうなるかはまだ明らかでな

︵一九九七年七月現在︶︑調査の信頼性をチェックする機関を設けて公表を許可制のもとに置くという方向を検

( 44 )  

討しているようである︒

政治過程には全面解禁論と選挙期間中の世論調査そのものの全面禁止論が現れているが︑本格的な議論にはまだ 一九七七年七月一九日法︱一条に批判的な見解が︑全体としてその問題点を突いているといえる︒同条を従来どお

り維持しようとする傾向はわずかといってよく︑同条は文面あるいは少なくとも運用上変化を余儀なくされていると いえよう︒予想されている世論調査委員会の検討方向も︑

一九七七年七月一九日法︱一条の直面する問題の性質

エルヴェ

1 1 ブルジュ

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︱一条への批判を一定程度受け入れたうえでとられるもの

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︵放送メディア高等評議会︶議長は︑︱一条の禁止が﹁インター

(18)

いうまでもなく︑一九七七年七月一九日法︱一条が制定された時点で︑インターネットの登場は予想されていな

かった︒しかし同条は︑投票前一週間の世論調査の公表を禁止するのみであって︑公表の手段を問うものではない︒

したがって︑インターネットを利用した﹁不正行為﹂も︑同条に基づいて取り締まることはできる︒しかしながら︑ は事実上も重大なものになった︒ それでは︑本稿がみてきたフランスの一九七七年七月一九日法︱一条が今日直面している問題は︑いかなる性質の

問題といえるか︒すでにこれまでの叙述から明らかなように︑同条はまったく新しい問題に直面しているわけではな

を規制していればよかった頃は︑外国紙の国内流入があったにせよ︑ い︒もともと同条は︑報道の自由︑情報の自由︑平等との関連で問題を卒んでいた︒活字メディアやテレビ・ラジオ

︱一条の禁止をめぐる問題は事実上マージナル

な問題にすぎなかった︒インターネットによる国境を越えた自由な情報の流通が可能になることによって︑この問題 かからざるをえないことである︒ 今日インターネットの諸問題がセンセーショナルに扱われている︒インターネットが現実の社会関係を一変するかのごとき言説すらないわけではない︒たしかに従来はありえなかった人と人のさまざまな交通関係がこれによって成立するようになり︑それにともなって各国で新しい法的問題が発生している︒しかし︑だからといってそれが現実の社会関係そのものを変えるわけではない︒インターネットは現実の社会関係を媒介する新しい手段にすぎない︒その新しさを無視することはできないとしても︑現実社会における利害関係が変わらないとすれば︑そのかぎりで﹁あく

( 45 )  

までも現実社会における既存の法律がそのまま適用されるというのが原則である﹂というのは当然であろう︒法の帰

趨は︑無論直接的には法の担い手の価値判断によるが︑

つまるところ現実社会における利害関係すなわち立法事実に 0

二 ︶

(19)

題を簡単に検討しておこう︒ インターネット規制の問題

以上のように︑今日一九七七年七月一九日法︱一条の正当性が疑われている︒そのような立場は︑

行き着くであろう︒それに対して同条を何らかの仕方で維持しようとするなら︑世論調査委員会のように︑インター

ネット規制のための法的整備を考えざるをえない︒それも一国内での規制にとどまることができず︑ここにおいて

ワールドワイドなインターネット規制という新たな問題が惹起されることになる︒

そこで︑最後に︑すでにフランスで現れているインターネット規制をめぐる議論を手がかりに︑新たに生じうる問

第一に︑もしも投票前一週間の期間の新たな世論調査の結果公表が有権者に有害なのだとしたら︑海外から入って

(2)  なっているといえる︒ のを問い直すことに導くであろう︒ 基づいて取り締まると︑海外のサイトから世論調査結果が自由に発信され︑

六 一

︵ 六

0

三 ︶

︱一条廃止論に 困難な問題がここから生じる︒違反者の特定や証拠の保全が困難なことはいうまでもない︒また違法行為の取り締まり・捜査が行えるのはフランスの国境の内側にかぎられる︒外国のサイトにまで︱一条の効力を及ぼすことは現在のところ不可能であり︑将来もきわめて困難であろう︒この結果︑インターネットを利用した﹁不正行為﹂を︱一条に

フランス国内で自由に受信できるにもか

かわらず︑同じ情報をフランス国内で発信すると違法になるという事態が生じる︒当該﹁不正行為﹂がいわゆる自然

犯ならまだともかく︑かかる事態は︑当該期間中の国内における世論調査の公表禁止すなわち︱一条の正当性そのも

︱一条の規定と運用を従来どおりに続けていくことは︑いずれにしても困難に

(20)

くるその種の情報を規制することにも合理的な理由があるということになり︑インターネットというメディアを特別

扱いすべきでないということになる︒そうすると︑海外のサイトを何らかの方法で規制しなければならないというこ

とになる︒たとえば一九九七年三月五日いわゆるボーサン委員会

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がフランソワ

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( 46 )  

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郵政・電気通信大臣の諮問に答えて提出した﹁インターネット憲章

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案 ﹂

は︑﹁インターネットの調和的な発展﹂を促進するため︑﹁法律と条約の枠内﹂でプロバイダーなどの守るぺき規範と

慣習を明確にするというもので︑憲章の施行のために﹁インターネット評議会

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﹂という民間

の自主規制機関を提唱している︒この憲章は︑フランス国内のサイトだけでなくフランスに住む人を対象に情報を提

供する海外のサイトも名宛人とすることを目論むものである︒インターネット評議会は︑﹁明白に違法﹂と認定した

情報を掲載したサイトの作成者・責任者に内容の変更または削除を勧告することができ︑合理的な期間内にこれに従

わなかった場合はプロバイダーに対して当該情報へのアクセスを取り消したりあるいはプロックするよう勧告できる

とされている︒しかし︑憲章案が想定する﹁︹インターネット評議会︺と同様の目的を持つ各国の機関との国際的な

( 47 )  

協力﹂はけっして容易ではない︒また﹁明白に違法﹂な情報の範囲の確定も容易ではない︒選挙直前の世論調査の公

( 48 )  

フランスのように規制する国は少数であり︑それを違法な情報として国際的に取り決めることは表に関していえば︑

きわめて困難である︒この問題について︑ボーサンは︑インターネット評議会が﹁この種の混乱にかかわってはなら

( 49 )  

ないであろうし︑決定すべきではない﹂と述べざるをえなかったのである︒

第二に︑インターネットの情報を規制することがそもそも技術的に可能かという問題もある︒この点については︑

海外のサイトをページごとにフィルターにかけ︑プロックすることができるという主張とできないという主張に分か

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四 ︶

参照