1.はじめに
我が国の企業犯罪については,2003 年頃 の牛肉偽装表示問題以来,あまり表立って問 題となっておらず,企業のコンプライアンス への取組や順法意識が高まってきているので はないかと期待された。しかしながら,2004 年には再び,三菱自動車・ふそうのリコール 問題や西武鉄道の利益供与事件など,大手企 業の企業犯罪が明らかになり,社会全体とし てみると,企業倫理の確立や企業犯罪対策が まだ十分でないことが明らかとなった。米国 でも,2002 年のエンロン事件以来,企業犯 罪について各種の取組がなされてきている。
その結果についての評価は,後述のとおり一 様ではないが,我が国の今後の対策を考える 上でも参考となるものであると考えられる。
そ こ で , 本 稿 で は , 米 国 の
white collar
crime
・企業犯罪について,その歴史と現状,対策,そしてそれらに対する評価について サーベイを行うこととする。
2. white collar crimeとは
white collar crime
という言葉は 1939 年にSutherland
がアメリカ社会学会の講演の中で初めて使ったものである。その際には,
white collar crime
は「crime committed by a person of respectability and high social status in the course of his occupation
」とし て定義づけられた。その後,定義についても 論争があり,現在は,概ね,①ビジネスの中で,②被害者との信頼関係を持った個人あるいは 企業のマネージャーによってなされ,③利益 を求めてなされる犯罪とされて,下表のよう な犯罪のタイプが含まれるとされている1。 実際には,
white collar crime
か否かは手段米国 white collar crime・
企業犯罪の動向
*白石 賢
*** 本稿は,2004年7月3日に開催された「企 業と市場に係る刑事法制研究」において報告 したものである。
** 内閣府企画官・経済社会総合研究所特別 研究員
1 antitrust 2 bankruptcy 3 bribery
4 computer and internet fraud 5 credit card fraud
6 counterfeiting 7 trade secret theft 8 embezzlement
9 environmental law violations 10 financial crime
11 government fraud 12 healthcare fraud 13 identity theft 14 insider trading 15 insurance fraud 16 kickbacks 17 mail fraud 18 money laundering 19 public corruption 20 securities fraud 21 tax evasion 22 telemarketing fraud
ホワイトカラー犯罪のタイプ
出所)White Collar Crime FYI.com.
のユニークさというより被疑者の社会的地位 によるというのが適切なのかもしれない。い ずれにしても,これらの定義からは
white
collar crime
の中には,企業の中の「人」が処罰される場合と「企業」自体が処罰される 場合の両方が混在することになる。また,米 国では,法に
person
と規定されている場合 に は , ほ と ん ど の 裁 判 所 で はperson
に はcorporation
が含まれると解釈されている2 3 4。3.企業犯罪とは
企業が処罰される場合としては,
Model
Penal Code
では,①行政法で明確に責任が課されている場合で,従業員等が職務範囲内 で違法行為を行った場合,②法によって課さ れる積極的義務の懈怠,③違法行為が会社の ために行われ(企業の利益目的),それがマ ネージャーにより,容認され,行われ,ある いは寛大に扱われた場合があるとしている。
マネージャーの定義は曖昧であるが,彼らの 行為が当該企業の方針を代表していると公平 に認められる責任を持つ者とされる。ただし,
Model Criminal Code
はハイレベルにあるマ ネージャーの関与に焦点を当てているが,連 邦裁判所や実務では,ここでも従業員等が職 務範囲内で企業のために職務を行ったかのみ が主な基準とされている。かつては,特にmens rea
を必要とする犯罪に対しては,企業責任を認めるには企業にも刑事的な意思が 必要であるとされていた。それを認めるため には,マネージャーの命令など,ハイレベル にある職員の関与が必要と考えられていた5。 しかし,現在は米国でこの考え方をとるのは 少数派となっている6。なお,企業の犯罪意 思については,
collective knowledge
であっ ても企業責任が認められるが,企業内で情報 がきちんと分断されている場合にはこの論理 は不適当だとしている7。4.white collar crime・企業犯罪の現状
次に,これらの
white collar crime
の現状 をみてみよう。伝統的なサマリー・レポー ティング・システムによると,fraud
,偽造,横領などの分類データでとれるのは逮捕者の 性別,年齢,人種程度であり,それが
white
collar crime
に分類されるかは不明確である。し か し ,
NIBRS
(National Incident Based Reporting System
)によるwhite collar crime
についてのより詳細なデータ分析がある8 9。 これによると,FBI
が把握する犯罪の 3.
8%
がwhite collar crime
で あ り , そ の 多 く がfraud
と 偽 造 で あ る と さ れ て い る 。 ま た ,white collar crime
の 代 表 と も 言 え る コ ン ピュータ犯罪の 42%
が経済犯で,そのうち の9%
がfraud
となっている。white collar crime
の被害額は平均 9,
255 ドル,中央値は 210 ドルとなっている。これに対し,全犯罪 の被害額の平均は 1,
856 ドル,中央値は 160 ドルとされている。中央値でみるかぎり前者 の被害額が若干高い程度だが,平均値が高い のは高額の被害が出ている場合があるためで ある。white collar crime
の被疑者は 20 歳代 後半から 30 歳代前半となっている。ただし,NIBRS
のデータは刑事手続となったうちの「人」に関するデータのみである。
一方,企業が処罰された事件については米 国量刑委員会のデータがある10。これによる と,2001 年に量刑ガイドラインの第8章で 処罰された企業数は 238 件となっている。監 督官庁等の行政処分や民事訴訟があるため刑 事事件となっているものは意外に少ない。ま た,企業犯罪が増加しているとの一般的な印 象に比べても,2000 年比 21
.
7%
減,1999 年 比 6.
7%
減となっている。処罰された 238 件 の企業のうち罰金が課されたのは 186 企業で あり,そのうちの 92.
4%
が有罪答弁を行って いる11。罰金の平均額は 215 万ドル,賠償命 令 が 課 さ れ た 企 業 は 78 件 で そ の 平 均 額 は4
,
082 万ドルである12。犯罪内容は,fraud
が 238 件中 72 件(30.
3%
)でトップ,環境汚染 等が 21.
8%
,輸出入関係法,食品・薬事法,競争法違反がそれぞれ 6
.
7%
と続いている。このデータでも
fraud
が企業犯罪の主要位置 を占めていることがわかる。人,企業を合わせた
white Collar Crime
の データについては,2000 年にWhite Collar Crime Center
に よ り 行 わ れ た ケ ー ス ス タ ディがある。これによると,回答者の 36%
が世帯の誰かが被害を受けたと答えている。ま た , 2000 年 に 司 法 省 が 起 訴 し た 全 て の ケースの約 13
%
がwhite collar crime
で,そ の う ち の 36%
が 金 融 関 係 のfraud
( 抵 当 , ロ ー ンfraud
, 小 切 手 ・ 手 形fraud
, 証 券fraud
,マネー・ロンダリング等)であるとされている13。
企業犯罪について,行政処分も含めた時系 列的分析をしたものは一覧される公式データ からはとれないが,フォーチュン紙の企業犯 罪に関する調査では,過去 20 年間で大企業 の 11
%
が違法行為(corrupt practice
)にか かわっているとしている。また,U.S. News
& World Report
のサーベイによると過去 10 年間で米国の上位 500 社のうちの 23%
の企業 が有罪か 50,
000 ドル以上の罰金を課されてい る と し て い る 。 さ ら に ,Corporate Crime
and Violence
によると不起訴の犯罪を含むと全企業の 66
%
が違法行為を行っているとさ れている。最後に,
white collar crime
の代表的な犯 罪とされるコンピュータfraud
についてみて みる14。internet fraud
について,IFCC
が取 りまとめた 2002 年1年間の苦情受付件数は 36,
332 件となっている。そのうち,internet auction fraud
が全体の 46 %(前年比 7.
7 %増)となっており,そのなかでも,未配達がもっ とも多く問題とされている。そして,総被害 額は約 5
,
400 万ドル,1件当たりの平均被害 額は 1,
482 ドル,中央値は 299 ドルとなって いる。高額の被害は,Nigerian letter fraud
,check fraud
な ど で あ る が , 小 額 の 被 害 はcredit card fraud/debit card fraud
や未配達 となっている15。犯罪形態は,未配達,クレジットカードナ ンバーの取得,贋物・贓物を出品し支払い後 に警察当局が証拠として没収してしまうと いったもの,ブラック・マーケット・グッズ の出品,コピー・ソフトの出品,「買い手が 高い値段と低い値段の2つのビッドを入れて 他の買い手をおろした上で最終的に高値の ビッドを引っ込めて安値で買う」という詐欺 的な方法,売り手による偽のビッドにより高 く買わせる方法,売り手はすでに破産してい るが,買い手が売り手とコンタクトを取ると 期日を延期し続けるといったものとなってい る。被害者は 20 歳台,30 歳台,40 歳台がと もに 26 から 27
%
程度となっているが,老人 はコンピュータ自体をあまり使用しないため か被害のターゲットになっていることは少な い。5.white collar crimeのコスト
こ の よ う な
white collar crime
が 米 国 経 済・社会にどの程度の影響を与えているのか,つまりコストはどれぐらいかについて,犯罪 学者間では,
white collar crime
は物理的な 犯罪でなく報道もされにくいので正確なコス トはわからないが,white collar crime
のコ ストは莫大でありstreet crime
より高いこと については合意があるとしている16 17 18。実 際の司法省の 1995 年のサーベイデータでは,personal fraud
による年間のロスは 4,
000 万 ドルでサーベイの回答者のうちの 31%
が被 害を受けているとされている19 20。その他の データについても,正確さ,概念の同一さ,時期の違いを無視して,いくつかの試算を紹 介しておくことも有用であろう。例えば,
Koening
の試算によると欠陥商品,独占的行為やそれらと同様な行為による毎年の消費者 にかかるコストは1億 7
,
400 万ドルから 2 億3
,
100 万ドルとされている。また,政府規制 違反による納税者のコストは 1,
000 万ドルか ら 2,
000 万ドルとされている21。1976 年の連 邦議会の共同経済委員会の推計によると,競 争法・fraud
違反のwhite collar crime
の年間 のコストは,1970 年基準の実質価格で1億 ドルとされているが,これを 1990 年価格に 直すと年2億 500 万ドルになるとする22。ま た,企業が生じた健康,環境などを含む社会 的コストまで考慮し計算すると,毎年 2.
6 兆 ドルの被害が生じており,そのうち 1.
5 兆ド ルが犯罪に関するものであるとする推計もあ る23。6.企業犯罪の要因
このような
white collar crime
がなぜ起こ るかについての要因分析については,McK-
endall
らがサーベイを行っている24。これによると,企業犯罪が起こるのには3つの要因 があるとしている。第1は,モチベーション である。企業の収支状況が困難に陥った場合 には,企業は犯罪を起こす傾向が高いとして いる。第2は,犯罪機会の存在である。多く の研究では,大企業のほうが
legal fee
やille-
gal cost
を吸収しやすいため企業犯罪を起こしやすいとしている。また,市場集中度が高 いと競争法等での共謀が生じやすいとしてい る。さらに,企業組織との関係で,組織が複 雑化すると企業内でのコミュニケーションが しにくくなるため,経営的なコントロールが 困難になるとしている。また,意思決定の分 権化は,決定の自由度を高めるが,反面,各 人の責任が減少するため,違反行為が増える 傾向があるとしている。第3は,違法行為の コントロールの問題である。しかしこれにつ いては,倫理基準や経営委員会の構造など内 部コントロールに関する要因が違法行為を減 少させる要因となっているとする研究は少な いとしている25。さらに,最近の企業犯罪発 生の顕著化を捉え,マスコミなどでは,「早
く儲ける,株価を上昇させる」といった企業 のゲームマンシップ・カルチャーが問題であ るとしている。そのようなカルチャーをどの ように変えていくかが企業犯罪防止にとって は重要な課題であるとしている26。
7.米国企業犯罪の歴史
米国では,最近の企業犯罪の顕著化に対し て,刑事立法を強化(刑事罰化・厳罰化)し ようとの動きがみられる。このような動きに 対しては,企業犯罪とは何かといった問題や 刑事立法強化が企業犯罪抑止につながるのか といった実務的な問題も改めて問い直される ことになってきている。そこで,まず米国の 企業犯罪の歴史について犯罪意思を中心にみ てみることとする。
コモン・ローの時代には,企業犯罪で人を 処 罰 す る 場 合 に は ,
actus reus
と と も にmens rea
が要求された27。actus reus
との関 係では,過失犯については,行為の失敗が結 果として害悪を生ずる場合には処罰可能とさ れていたし,他人の行為に対する結果も共犯,幇助,間接正犯という形で認められていた。
しかし,
mens rea
との関係でみると,上司の命令や認容なしに部下が違法行為をした場 合には上司は免責されていた28。つまり,コ モン・ローの時代には,悪意がない,あるい は悪事を行っている意識がない者には責任が なく,アクシデントやミスというものに対し ては処罰はできないと考えられていた。
このような,コモン・ロー原理に対する最 初の例外は,
At Peril doctrine
(危険原理)である。これは公共的な福祉に関する行為規 制立法については,行為者は事実を知るべき 積極的義務が課されるという原理である。そ の結果,行為者は「知らなかった」(
good faith or ignorance
)ということを主張する 可能性がほとんどなくなり,たえず処罰され る危険にさらされることになった29。そして,その後,
Narcotic Act of
1914 において,コモン・ローで必要であった
scienter
は不要で あるとされたのである30 31。次に,20 世紀初めに出てきたのが,
public welfare offence
の語源ともなっているpublic welfare doctrine
という考え方である。これ は,故意など意思的な要素を排除した刑事法(
negligent
のみで処罰可能)も,憲法のdue
process
条項に違反しないとの原理である32。社会の健康や安全が重大に脅かされると考え られる場合には,合理的な人間であれば当然 知っているべきと考えられることについての
knowledge
に つ い て 事 実 証 明 を 求 め ず ,public danger
に対する責任のある者や規制に従うべきということを「知っていないふり」
をする者に負担を課すべきと考えたのであ る33。
white collar crime
法は,主に 4 つの期間に 成立したとされる。1920 年代の進歩主義の 時代,1930 年代のニューディールの時代,1960 年代の消費者保護の時代,1970 年代以 降の環境等への政府規制が増加する経済活動 の産業化に対応する時代である。その 1920 年代以降の
white collar crime
法の進化にと もない,企業犯罪についての刑事法もコモ ン・ロー的な伝統的なモデルからますます離 れるようになってきた。例えば,社長が違法 事実について全く知らなかったケースについ て責任を認めたケースが現れ34,その後,積 極的に違反を発見し措置する義務以上に,違 反が発生しないようにする手段を実行する義 務が社長にはあると認めるに至るのである35。現在
Model Penal Code
では,scienter
を,①
purpose
, ②knowledge
36, ③reckless
,④
negligence
37,の 4 つに分類しているが,⑤として
strict liability
の概念を追加すべき という者もいる。このstrict liability
は,専 ら行政犯で使われている概念で,actus reus
がありさえすれば,negligent
の証明なしに 罪責が認められることになる。最近では,こ のf a u l t
な し に 刑 事 責 任 を 課 す 刑 事 犯 罪(
criminal offence
)規定が多くなっており38 39,さらに,規定上は
knowingly
を求めていても,判決の結果として
strict liability
を 問 う こ と に な っ て い る も の が あ り40,特に,下級審判決ではpublic welfare offence
でstrict liability
となる範囲を拡大す るような解釈がなされている。strict liability
がpublic welfare offence
に 拡大している実質的な理由はいくつか考えら れる。第1は,危険な行為のリスク負担をそ れを防ぐことができる者にシフトさせようと していること,第2は,ハイリスクな行為をjury
が統一的に扱えるようにすること,第3 は,複雑なケースにおける意思の証明を緩和 させようとしていること,第4は,特定ケー スの迅速な起訴による社会防衛ニーズは不正 確な擬制によるリスクより小さいと考えてい ること41,第五は,strict liability
の実施が強 い社会のステートメントとなること42,など と整理される43。つまり,現代では,public welfare doctrine
を通じて刑事sanction
が拡 大 し , 社 会 の 中 に 浸 透 す る こ と に よ っ てcriminal law
自体がwrongful conduct
を処罰 するというよりは社会規範確立のツールとな り,その目的は社会を守ることにあるという 考えに立ったのである44 45 46 47。strict liability
は犯罪意思を求めないこと が特徴であるが,このことは本来意思を持た ない企業に対して刑事責任を課せるかという,そもそも論の問題にもかかわる。企業に刑事 責任を認めることができるかについては,
1909 年に企業処罰が初めて認められている が48,それ以前にも企業処罰について
Elkins Act
の規定に関する議論があった。それは,Elkins Act
の企業処罰規定は,無実の株主に対して罪を課すものであり,無実の推定に反 し , さ ら に , 聴 聞 の 機 会 を 奪 う な ど
due
process
なしに財産を奪うもので,同法には瑕疵があるというものであった。しかしこれ に対して判決は,
public policy
によることで 企業を有罪にできるとしていた。企業処罰で自然犯について問題となった
ケースでは,
States v. Ford Motor Company
事件がある49。フォード社が安全に関する装 置を装備するとコストが高くなるため,その 取付けをやめたことにより死亡事故が生じた ケースでフォード社が殺人罪で訴えられたと いうものである。最終的には,取付けをやめた事実は
criminal
だとはいえないとし,最終的に無罪となったが,本来殺人という人にし か犯すことができないと考えられていた犯罪 についても,企業が犯罪を犯し得るとされた こと,そして大きな利益を追求している企業 は,たとえ従業員の
criminal act
がなくても企業が
criminal
とされる可能性があるということがこの事件では示されたといえる。現在 では,
RICO
法(1970 年)などからみても企 業が犯罪能力を持つことについては異論がな い状況になっている。8.刑事法の厳罰化への動き
以上述べてきたように,経済活動の産業化 の中では,企業犯罪処罰は当然あり得るもの として,さらに意思の要求が必要ない
public welfare offence
が拡大してきているのであ る。ABA
の 1998 年の報告によると50,連邦 法には 3,
300 以上の刑事的な犯罪規定があり51,その 40
%
の規定はここ 30 年の間に成立し,これらの多くは
public welfare offence
であ るとされている。規制法の増加について,実 際の起訴件数で見てみると,2001 年3月か ら 2002 年3月までの1年間に連邦検察が起 訴したケースは 62,
957 件あり,個人の被告人 は 83,
809 人 と な っ て い る が , そ の う ち の 3,
100 人以上(約4%
)が連邦の規制法違反 となっているのである。この米国の規制法の 増 加 に つ い て は , ① 犯 罪 に 倫 理 的 に 悪 い(
morally wrong
)ものといえないものまでが 含まれるようになったこと,②単なるnegli-
gence
の犯罪化が容認されてきたこと,③部下の行為の監督の失敗についてマネージャー を処罰することが許されてきたことが要因で
あるとされる52。
しかし,犯罪意思を求めない傾向について は,一方で混乱をもたらしている。その理由 は,企業犯罪についての刑事ペナルティーが 厳しくなる傾向にあるからである。つまり歴 史的には法が犯罪意思を求めないときには,
刑 は 軽 い も の で あ っ た (
fine
やshort time jail
)が,現在は,犯罪意思を求めなく,あ るいは軽くしか求めなくなってきていても,企業犯罪たる規制法が重罪(
felony
)とされ るものが多くなっているのである。これはstrict liability
の実効性確保のためには重罪 化が必要であるとの考えによる。実は,企業犯罪に対する厳罰化が進んでき たのはエンロン事件などを受けた最近のこと ではなく,1980 年以前からの動きである53。 1980 年代には,企業犯罪に対する罰金の引 上げなどの厳格化が進むとともに,裁判所 も解釈の拡大により企業処罰を拡大してき
た54 55。過去 10 年間で以前のガイドラインの
レベルより 5 〜 10 倍にペナルティーが強化さ れているともいわれている56。また,
Water Gate
事件(1972 年)やS & L
危機に関する事 件(1980 年代後半)は,道徳的には望まし くないが違法でなかった行為についての事件 であったが57,これらの事件が処罰を厳格化 したともいわれている58。そして,ついには 企業処罰についても,量刑ガイドラインの改 訂により 1990 年に企業犯罪のセクションが 作られた。このような刑事法の厳罰化は,2002 年の エンロン事件発覚後に一層進んでいるように 見られている。その代表とされるのが
Sar- banes-Oxley
法(July
30,
2002. Pub. L. No.
107-
204,
116Stat.
745(2002))である。同法は,企業犯罪処罰について検察官に新たなツール を与えるとともに59,
SEC
の処罰・不法収益 の収奪についての権限を高めたものである60。 また,同法に応じて量刑ガイドライン改訂が 行われ収監期間が長くされた61。また,連邦 法ではないが,2003 年にはカリフォルニア州で企業に対する三振法が成立している。企 業 三 振 法 は , 法 の 施 行 後 1 0 年 間 に 犯 罪
(10
,
000 ドル以上の罰金,民事ペナルティー,賠償などか到死の結果を生じた事件)を意図 的あるいは,重大な過失(
grossly negligent
) によって起こした場合には,裁判所が1,2 回目は違法行為を州内の新聞に広告を命じ,3回目の違法行為で州内のビジネス活動を停 止させられるとしている。また,3 回以上企 業犯罪を犯した企業の取締役等が多数を占め ると認定された企業あるいは法的にコント ロールされていると認定された企業について もビジネスを行うことが禁じられる。三振法 はもともと
street crime
の常習犯人に対して の厳罰化を意図したものであったが,これが 企業にも拡大し,かつ,企業の消滅という人 に対する死刑判決と同様のことまでも導入し たのである。9.刑事法の厳罰化の理由
このカリフォルニア州の企業三振法の冒頭 では,「カリフォルニア州民は,統計上,企 業犯罪は個人犯罪より公に対してコストがか かるが,個人犯罪より厳しく罰せられていな いとの認識を持ち,宣言する」とされ,「企 業は「人」とされるが,それは
fiction
でしかなく,
imprison
できない点で刑事上意味がない。また,企業にビジネスを禁止させる 手段はあるがそれはめったに使われておらず,
それを実質化する必要がある」としている62。 これは,現在の刑事法の厳罰化において重要 な視点を示していると思われる。
刑事法の厳罰化の進展については,大きく 分けて2つの理由があると考えられる。第1 は,刑事法の中で,ビジネスピープルの違法 行為を十分に処罰していない(違法行為によ る利益を根こそぎに収奪していない)ことや 起訴されないケースが多いとの一般大衆から の批判があり,これに対する対応としての厳 罰化がある。第2は,高額化する企業に対す
る民事賠償(
sanction
)との比較の関係での 刑事法の厳罰化である。第1の点からみてみよう。最近の刑事法の 厳罰化は,
white collar crime
とstreet crime
の間で不平等があり,司法システムが偏向し ているとみられると司法システムが機能しな くなるため,white collar crime
を厳罰化し ようとしているという考えである。例えば,量刑ガイドラインの改訂の際には,ロビー活 動により量刑を緩めるファクターについては 多くの検討がなされたが,厳しくするファク ターについては検討がなされなかったとの批 判があった。また,エンロン事件後でその他
の企業の
fraud
がまだ明らかになっていない段階でも,フォーチュン紙は「少額を盗むと 刑務所行きだが,多額になると,再びしない との約束をすれば刑務所に行かずに済む」と 言って,刑事罰のダブル・スタンダードを批 判している。
そ れ で は , 実 際 に
white collar crime
とstreet crime
間で不平等があったのだろうか。連邦犯罪に関するデータで見てみると,2000 年には 5 万 8
,
636 人に有罪判決がなされてお り,伝統的犯罪では,麻薬等運搬 94%
,強盗 97%
,放火 93%
,殺人 97%
とほとんどが有罪 となっている。一方,white collar crime
に 含まれる犯罪では,fraud
54%
,横領 48%
, 規 制 法 (technical regulate offence
) 違 反 30%
と有罪率は低い。しかし,non-jail
の措 置があるケース(1 万 1,
137 人)での収監率 を見ると,不法滞在(immigration
)84%
, 麻薬等運搬 49%
,麻薬等不法所持 31%
,窃盗 20%
,文書偽造 29%
,fraud
36%
,横領 39%
, 不法滞在 84%
,その他 26%
となっており,不法滞在を除くと不平等さはあまりみられな くなる。収監の長さは,法定刑自体に差があ るため単純な比較はできないが,平均値と中 位値をみるとそれぞれ,強盗 110
.
6 月,77.
0 月,麻薬等運搬 75.
3 月,57.
0 月,麻薬等不法 所持 18.
5 月,6.
0 月,故殺(過失致死)26.
1 月,18.
0 月,窃盗 15.
6 月,12.
0 月であるのに対して,
fraud
18.
0 月,12.
0 月,横領 9.
9 月,5
.
0 月,贈賄 16.
2 月,12.
0 月,脱税等 16.
6 月,12
.
0 月,マネー・ロンダリング 46.
3 月,33.
0 月,環境規制違反 14.
5 月,9.
5 月,競争法違 反 12.
7 月,6.
5 月,食品衛生等 23.
1 月,12.
0 月となっており差がある。法定刑の影響を除 いてみるため,量刑が量刑ガイドラインに 沿 っ て な さ れ て い る か 否 か6 3, つ ま り ,white collar crime
を減刑しているかどうか をガイドラインからの逸脱率でみてみると,強盗 12
.
7%
,麻薬等運搬 4.
9%
,窃盗 6.
3%
で あ る の に 対 し て ,fraud
9.
2%
, 横 領 6.
2%
, 不法滞在 18.
8%
,firearm
10.
4%
,その他 9.
8%
となっており,差はみられなくなる。これか らわかることは,不平等さが生じているのは 立法での厳罰化がwhite collar crime
に対し て未だ十分でないからだと考えられる64。このような立法の不平等がある中で,例え ば,経済状況が悪化し企業の不正が多くなる と,被害者や一般人は刑事法の厳罰化や民事 制裁から刑事罰での
punishment
を望むこと になる。それを受け,立法府は新しいcrime
を作り,あるいは厳罰化を進めることにな る65。それが進みすぎると社会全体としてはover-climinalization
となる。本来はそれに対 す る 批 判 も 出 て く る は ず で あ る が ,over- climinalization
となっても,批判は法の執行 者たる検察に向けられるのに対して,立法者 には向けられないので,厳罰化の歯止めはあ まり効かないことになる66。また,企業犯罪の刑事罰化・厳罰化はその 全てがビジネスにとってマイナスとなるもの ではないという見解がなされることもある。
つまり,企業犯罪の刑事罰化・厳罰化は企業 にとって利益になる面もあるのでその立法に 反対しないというのである。当該立法が比較 的企業にとって低コストであり,さらに,そ の立法によってマネージャーが自分への処罰 の一部を企業へと転嫁することができれば,
企業のマネージャーはその厳罰化立法に反対 しない。実際,マネージャーのみが被告人と
なる場合より,マネージャーに加え企業が被 告人として加わる方が,たとえ有罪率が高く なろうとも,罪をシェアでき,マネージャー に対する罪が軽くなるあるいは罪を逃れやす い と さ れ る 。 こ の よ う な , 企 業 と 個 人 の
penalty
がコーディネートされる,つまり被告人として企業がいると個人の
penalty
が低 下するというimplicit
な証拠があるとの研究もある67 68。さらに,責任があると考えられ
た
agent
が無罪とされ,一方で企業が有罪となったというケースさえある69。また,起訴 の裁量性が非常に高いため,下級職の者だけ が起訴されて,トップが温存されていること も多いとされる。そのため,検察官は,後述 する企業を起訴するかどうかの判断について の原則(メモ)において,企業を有罪答弁さ せることにより
officer
や雇用者を守ろうと することについて注意を払わなければならな いとされているのである。第2の刑事法の厳罰化の理由,民事制裁と の関係についてはどうであろうか。民事制裁 との関係を見るために,企業犯罪の企業にか かるコストについてみてみよう。2002 年 12 月
SEC
が米国のトップテンの証券会社と和 解したケースでは,その和解金額は 14 億ド ルであったが,2000 年から 2001 年にかけて のシティーグループの引受けfee
は 400 億ド ルでシティーグループの和解金額 4 億ドルの 100 倍であった。そしてこれらの費用の多く は法人税控除の対象となる。前述のフォード 事件では,ガスタンクのリコール費用が1億 3,
700 万ドルかかるとされたが,それが年間 180 人死亡した場合の平均的な医療費,訴訟 費より高くつくため,フォード社はリコール を行わなかったとされる。このように,実際 には企業が刑事責任をとらされ罰金を支払っ たとしても民事制裁より費用がかなり小さけ れば,企業にとっては刑事罰化や厳罰化は何 ら問題はないことになる。むしろ刑事罰化に より民事責任が限定されるならば,その方が 企 業 に と っ て は 望 ま し い こ と と なる70 71。また,刑事訴訟の方が「合理的証明」
の必要から刑罰処罰が課される可能性は少な いし,会計士などの第三者の責任に及ぶこと も少ない。そして,前述のように,実際には 企業が起訴され,さらには刑事罰が課される ことは非常に少なく72,起訴される企業も小 企業に限られているため,ロビー活動をする ような企業にとっては,刑事罰化・厳罰化の 立法は脅威でないのである。
このような刑事罰化・厳罰化の理由・背景 を踏まえ上で,最近の刑事罰化・厳罰化を改 めて見てみると,例えば,1995 年の
The Pri- vate Securities Litigation Reform Act of
1995 の改正では,幇助・教唆ルールを取り 除き,会計士,弁護士のアドバイスに対して 責任を免除できるようになっている。Sar-
banes-Oxley
法についても,全体としては厳罰化の方向に向いているようにみえるが,議 会審議の過程で,
executive
のfraud
に対す る責任をreckless
からknowing
に要件が修正 されたり,disgorgement
についても,exec- utive
がfraud
から得たものを払い戻さなけれ ばならない場合について,違法行為を知って いたが直接それにかかわっていない役職員に は 適 用 し な い と し た り す る な ど , マ ネ ー ジャーに有利な法案修正がなされている。こ のような動きを見て,ビジネスウイーク紙や ワシントンポスト紙は,刑事罰化・厳罰化に ついては何も変わっていない,議会は既にエ ンロン事件からの流れを変える熱意を失って きているとしていると評している73 74。10.刑事罰と民事罰との関係
このように,刑事罰化・厳罰化については,
それが本当になされているのかどうか,さら に,企業犯罪抑止にとって高額化する民事制 裁との関係からみて刑事罰化・厳罰化は十分 意味があるのかどうかが,民事手続による抑 止の問題として,改めて取り上げられること が多くなっている75。民事手続との関係で取
り上げられるのは,以下の二点が理由として 考えられる。第1は刑事制裁の
overdeter- rence
の 問 題 で あ る 。 米 国 法 で は 同 一 のphrase
がcivil penalty
とcriminal sanction
を オーソライズしているものがあるが,そのような場合
sanction
の執行庁にどちらのサンクションを課すかの裁量が与えられる76 77。 そこで,検察官ないし執行庁が恣意的な刑事 起訴をしたりする結果78,刑事制裁と民事制 裁とが交互に利用されるようになっていると
すると
law enforce
に対する信頼を失わせることになる。その上,刑事罰に
overdeter-
rence
の効果があるとすれば,刑事制裁はwhite collar crime
を抑止する以上に,適切 な企業の生産的活動を阻害してしまうことに もなりかねない79 80。この点,民事制裁は,overdeterrence
の問題を引き起こしにくいと考えられる81。第2は,最近の企業犯罪の 増加が規制的犯罪であることと関係する。
white collar crime
でもfraud
と規制法違反は 本来区別すべきであると考えられるが,規制 法違反に対して警察力等のリソースを割くこ とは国民の不満を生むことになる。規制法違 反の抑止ということを目的とするならば,故 意等の精神的な状況面でそもそも刑事罰とす ること自体も不要と言え,civil tort law
でも 対応できると考えられるからである。現在の 状 況 は ,civil sanction
の 代 わ り にcriminal
sanction
があえて使われているように見えるのである82。
このように規制法の分野を中心に民事手続 きを使うことは,最終的には
tort
とcrime
の 違いをなくすことにつながる。tort law
はも ともと損害賠償のメカニズムであるが,それ が政府による行政手続や民事訴訟を通じてな されるcivil enforcement
であれば,それは 社会モラルを守らせるための手段として認知 されるのに十分である。民事訴訟の懲罰賠償 システムがそれに上乗せされるならばそのよ うな機能を一層果たすことになる。11.民事手続の問題点
ただし,民事制裁システムに頼ることは絶 対的に望ましいかというとそうでない面もあ る。民事制裁システムを使うと,弁護士とク ライアント間の特権により企業犯罪の内容が 表ざたにならない。そして裁判所も
protec-
tive order
によりその秘密を保護する傾向にある。つまり,損害賠償が支払われたときに は,事件の内容と和解額について公表しない との条件が付けられることが普通(
confi- dential settlement
)なのである。その結果,トライアルがなかったと同様の結果となって しまい,そのケースは将来のトライアルに対 しての証拠として使えないことになってしま う。つまり和解がなされると,事件について の情報が公とならない83。このことは企業犯 罪抑止の観点からは望ましいとはいえないで あろう。
12.民事システムでも揺れる企業処罰の 厳罰化
また,厳罰化の動きで揺れているのは刑事 法だけではない。民事制裁システムでも同様 である。以下では,その実例として,カリ フォルニアに独特の法,
Consumers Legal Remedies Act
,Unfair Business Practice Act
の最近の動きについて触れておく。両法 は,個人に他の消費者のために,認定を受け な い ク ラ ス に よ っ てequity
上 のremedy
action
を行うことを許すものである84。そして
Unfair Business Practice Act
は手続的に も緩和されたものとなっており,原告適格を 厳しく求めず,公衆のために行為する目的を 持つものであれば誰でも訴訟が可能であると されている85。つまり同法ではclass action
の手続的なセーフガード(クラス認定,代表 性,周知性等)なしに,一般大衆のためにclass action
を行えるのと同様の機能を持つのである。さらに,同法はその執行力につい て,差止命令と被害者が失ったものの賠償と 被告人の利益の回収ができるのみであるとさ れているが,判決ではより広い権限を行使し,
原告のみならず一般大衆で影響を受けた者に 対して,
fluid recovery
(cy pres
),つまり 被害者のためのファンドや大衆のベネフィッ トのためのリカバリー・ファンドを設定させ ることまで可能としていた86。このため,こ れらの法は消費者に企業に対する強力な武器 を与えるものであるとされた。しかし同法は,一方で,あいまいな
unfair
,unlawful busi- ness practice
という定義によりbusiness
を 萎縮させることにもなるとの批判がなされていた87 88。例えば,この法で,競争的価格よ
り価格が高ければ契約は非良心的であるとの 主張が原告側からなされ上訴審でこの主張が 認められたことがある。しかし市場は完全で ないため,経済学者が想定するような完全競 争価格までは価格は低下しないことは明白で ある。このため企業はたえず訴訟の危険から 逃れられないことになるのである89。そのた め,州最高裁判所も,この法律について「公 衆の利益なしに弁護士の
fee
を増加させ,濫 訴を増加させている」と指摘している90。こ のため判決でも,特定の法がsafe harbour
ルールを持っている際にはUnfair Business
Practice Act
を利用できないとして縛りをかけることとした91 92。さらに,
class
の認定な しに一般大衆に賠償をなしうるのかについて も合憲性の争いがなされた。その結果,2000 年 に はUnfair Competition Act
の 下 でclass
認定なしの賠償を将来の訴訟のためのfluid recovery fund
に回すことが否定された93 94。 これについては,Unfair Competition Act
の 下でのfluid recovery fund
が否定されただけ であり,逆に,法に基づいたfluid recovery
は 否 定 さ れ な い と 解 釈 す べ き で ,f l u i d
recovery
は今後の集団訴訟での現実的な解決法となるとの分析もある95 96。この法の曖 昧さの解決は本来立法を待たなければならな
いが,それまでは
due process
による解決し かないかもしれない。いずれにしても,民事 制裁システムの分野でも,企業に対して厳し い制裁を求めるのか否かが問題とされている のである。13.メモについて
以上見てきたような企業犯罪を巡る刑事罰 化・厳罰化での揺れる動きに対応して,改め て企業責任を考え直そうとする動きが検察当 局でも現れている。それは犯罪者個人との関 係も含め法人処罰をどうするのかの見直しの 問題である。特に,企業犯罪の場合の個人処 罰と企業処罰の裁量性の見直しである。この 基準とされるのが,2003 年1月に出された
「ビジネス組織に対する起訴に関する連邦政 府の原則(
principle of federal prosecution of business organizations
)」のメモである97。 このメモでは,まず,企業はlegal person
で あり,訴え,訴えられる能力があり,また,犯罪を犯すことができることが確認されてい る。そして,企業は,使用者責任原理(
doc- trine of respondeat superior
)の下,役職員,代理人の行為に対して刑事責任を負うことが あるとしている。そして企業責任を問うため には,①行為が職務範囲内であること,②行 為が企業の利益を目的としていること(一部 でもよいし個人の利益と競合してもよい98) を証明する必要があるとし99,そのような状 況があれば,検察官は行為者と同様に企業を 刑事被告人とすることを考えるべきであると されている。検察官が企業の責任を問う場合 には,個人を起訴するときと同様のファク ターを考慮すべきとされているが,企業の特 殊性から追加的に考慮すべきファクターがあ るとされる100。そこでは,企業犯罪の社会へ の影響と企業が刑事起訴をなされた場合の企 業への破壊的な影響のバランスを考えるとい うアプローチがとられている101。検察官が考 慮すべき事項は,以下のようにまとめられて
いる。
① 公共への害のリスクを含めた犯罪の性 質・重大性
② 企業の中での犯罪の拡散度(マネー ジャークラスの共犯や認容,従業員の間 に犯罪が拡散しているか否か。特に,マ ネージャーの関与が重要な要素となる。)
③ 刑事,民事,行政的なものも含めた同 様の行為の犯歴
④ 会社のタイムリーかつ自主的な犯罪の 公表(証人の提供,内部調査の開示),
捜 査 へ の 協 力 (
attorney-client and work product protection
の放棄も含む)102 103。コンプライアンス・プログラムの
存在とその適切さ104 105 106 107。
⑤ 企業の
remedy
行為(例えば,コンプライアンス・プログラムの実施・改良,
責任者の交代,損害賠償の支払い,関係 機関への協力)108
⑥ 付随的結果(被用者,株主への不相応 な不利益や起訴によって生じる公共への 不利益)109
⑦ 企業犯罪に対する行為者の責任の十分 さ
⑧ 民 事 , 行 政 ( 責 任 ) 訴 訟 に お け る
remedy
の十分さメモで重要な点は,今までの実務や判例と 異なり,ハイレベルのマネージャーが違法行 為に関与している場合とローレベルの者が関 与している場合を区別しようとしていること である。これは
Model Penal Code
の考え方 に近づいたことになる。ハイレベルの者の関 与は広範なcorporate fraud
となることが多 く , ロ ー レ ベ ル の 者 の 関 与 はemployee
fraud
といわれ,コンプライアンス・プログラムのある会社に生じることが多いとされる。
このことは実務の起訴に関しての違いと現れ る こ と に な る 。 例 え ば , 近 年 の 例 で は ,
Exide Corporation
が取引相手のSears, Roe-
back and Co.
に賄賂を供与した事件についてExide
は上級職員がかかわっていたため企業は有罪答弁を行ったが,
Sears
は違法行為が 特定部署のみに限定されていたため起訴前のdiversion agreement
の機会が与えられたの が典型である。また,メモで,コンプライア ンス・プログラムの存在が起訴に対して考慮 されることが明示的に示されたことも大きい。ただし,メモでは,企業とともに,個人の 犯罪追及の必要性が強調されていることは忘 れられてはならない。
14.企業犯罪への対策――コーポレー ト・フロード・タスクフォース
最後に,企業犯罪への対応策として刑事罰 化・厳罰化以外のこともあげておく必要があ る。それはコーポレート・フロード・タスク フォースであるが,これは,ブッシュ大統領 の命により 2002 年7月から実施されている ものである。このタスクフォースは,最近の 企業スキャンダルや法的あるいは倫理的なミ スコンダクトに対処する必要があるとして開 始されたものである。健全な経済の基礎を崩 壊させる重大な犯罪を処理するには時間をか けず短期間で処理しなければならないとし,
重点的対策を行うこととしたのである。タス クフォースは,司法省内のグループと省庁横 断的グループで構成されている。前者は,政 策的問題に対してコンサルテートすることが 主な目的であり,後者は,企業スキャンダ ル・企業犯罪についての省庁間協力体制の強 化のためのものである110。タスクフォースは 政策的イニシァティブと起訴の両面で成功を 収めたと評価されているが111,その成功は,
資源を集中的に投入したことによると考えら れる。タスクフォースは多くの企業犯罪の中 で
corporate fraud
を取り上げ,その中でも,①財務書類の偽造,②インサイダーによる自 己取引(インサイダー・トレーディング,
キックバック,自己のための会社財産の利用)
や脱税,③
SEC
等が捜査する際の隠蔽等の 不正行為に警察力などの資源を集中的に投下した。この結果としての起訴増加が,企業へ のアナウンスメント効果を大きくしたと思わ れ る 。 ま た ,
corporate fraud
は , 専 門 家(弁護士,会計士,機関投資家)の共謀がな いとできないとの結論から,専門家の行為を 対象とすべく伝統的な捜査の範囲を拡大した とされる112。このタスクフォースから得られ る企業犯罪対策の鍵は,①法の実行における 官庁間の協力であり,そのため,例えば,
Attorney General
の下にwhite collar crime
のカウンシルを置き,法の執行協力,新捜査 手法の検討,捜査トレーニングを省庁横断的 に行ったこと,②将来のcorruption
を減ら すため,現在のcorruption
への積極的な捜 査,起訴とこれらの犯罪を犯した者に対する 実刑を行ったことである。15.おわりに
white collar crime
・企業犯罪の動向とそ の対策について米国の例を見てきた。米国のwhite collar crime
については,最近は規制 法違反が多くなってきているとはいえ,その 多くは依然fraud
である。このことから考え ると,最も有効なwhite collar crime
対策は 消費者教育と消費者自身の注意であると考え られる。我が国でもinternet
の普及によってinternet fraud
が増加していることがマスコ ミでも取り上げられるようになってきている。米国でも,
internet fraud
の増加傾向に対す る対策として,それらの必要性が説かれてい るのである113。注
1 White Collar Crime, FYI.comより。
2 State v. Richard Knutson, Inc.(Wis. Ct.
App.1995).
3 State v. Shepherd Construction Co.
(Ga.1981)では,この法では懲役しか予定し ていないため,企業犯罪を予定していないと の主張があったが,法は懲役の一時停止と罰 金を課す権限を与えているとして企業犯罪を 認めた。
4 Podgor, E. S. & Israel, J. H.『White Collar Crime』, WEST(1997).
5 State v. Chapman Dodge Center, Inc.(La.
1983)では,マネージャーがディーラーに違 法行為をさせた件について,会社は日々のオ ペレーションまでは関知していないので会社 には責任はないとした。
6 State v. Christy Pontiac GMC, Inc.
(Minn.1984)では,セールスマンと下位のマ
ネージャークラスの違法行為について企業の 責任を認めている。
7 United States v. Bank of New England, N.A(1st Cir. 1987).
8 ただし,これはFBIが把握する犯罪の全体 の9%でしかなく,また,この 2002年のレ ポートのデータは 1997年から 1999年のデー タによるものとなっている。
9 Barnett, C. The Measurement of White- Collar Crime Using Uniform Crime Report- ing Data , U.S. Department of Justice, FBI White Collar Crime Study(2002).
10 U.S. Sentencing Commission,『 Source- book of Federal Sentencing Statistics Annu- al 2001』.
11 7.1%がトライアルの後の有罪,1件のみ が不抗争答弁である。
12 186企業のうち 118企業は罰金の支払いを 行っているが,残りの企業は罰金の減額がな されているか支払い不能とされている。
13 U.S. Department of Justice,『STRATE- GIC PLAN 2001-2006』.
14 The National White Collar Crime Center
『IFCC Internet Auction Fraud 2001』(2001). 15 internet auction犯罪の商品としては,コ ンピュータ,宝石,ビデオ・ゲーム等のソフ ト類などがある。
16 Ross A.C. “Corporate Crime”http://www.
biglowconsulting.com/CRAweb/essay28.htm
(1999)より。
17 Reiman J. 教授の推計によると,1997年の white collar crime犯罪は3億 3,800万ドルに なっているとされ,street crimeの 100倍で あるとされている。
18 Mokhiber, R Top 100 Corporate Crimi- nals of the Decade http://www.corporate predators.org/top100.htmlには,1990年代の 米国トップ 100企業の企業犯罪についてまと めている。
19 National Institute of Justice,『Victimiza- tion of Persons by Fraud』(1995).
20 前掲 注13。
21 Koening, T. & Rustad, M. Crime Torts’ as Corporate Just Deserts , 31University of Michigan Journal of Law Reform(1998). 22 Rossoff, et al.,『Profit Without Honor:
White-Collar Crime and The Looking of America』(1988).
23 Estes, R.『Tyranny of The Bottom Line』
(1996).
24 McKendall, M., Demarr, B., Jones− Rikkers, C. Ethical Compliance Programs and Corporate Illegality: Testing the Assumptions of the Corporate Sentencing Guidelines Journal of Business Ethics 37
(2002).
25 だ た し , 1991年 のcorporate sentencing
guidelineは,内部コントロールがあれば違
法行為を減少させるとの立場にたって制度設 計がなされている。
26 Washington Post, July 10, 2002.
27 コモン・ローの下では,明示的に法に示さ れていなくてもmens reaは必要であるとさ れていた。
28 Rex v. Hugging Ld. Raym. 1574, 92Eng.
Rep.518(1730).
29 Shevlin-Carpenter Co. v. Minnesota 218 U.S. 57(1910).
30 United States v. Balint 258 U.S. 250
(1922).
31 Capp B. A little Knowledge Can Be a Dangerous Thing: State of New Jersey v.
Robertson & The Freshwater Wetlands Pro- tection Act of 1987 PACE ENVIRONMEN- TAL LAW REVIEW vol.15no.2(1998). 32 Sayre F. B. Public welfare offence 33
Colombia Law Review 55,56(1933). 33 United States v. Dotterweich 320U.S. 277
(1943). 34 前掲 注33。
35 United States v. Park 421U.S. 658(1975)
36 To act knowinglyは法を違反する意図なし に 犯 罪 を 構 成 し て し ま う こ と で , 行 政 犯
(regulatory offence)によく使われている概 念である。ここでは,目的を持って行為を行 えばよく,法を犯す目的(purpose)は不要 とされる。
37 To act recklessly or negligentlyと は , knowinglyより一層purposefulnessの面が喪 失したものである。
38 United States v. FMC Corporation, 572F.
2d 902, 904(2d Cir. 1978)では,渡り鳥の死 亡について,死亡が,全くのアクシデントあ
るいは意図的でないものであっても企業の厳 格責任を認めた。
39 United States v. Hanousek, 528U.S. 1102
(2000)では,Clean Water Actの規制を知っ て汚染物質を排出したことについてnegli- gentで行為したとの反論はできないとした。
40 United States v. International Minerals &
Chemical Corp., 402U.S. 558, 569(1971). 41 Sayre F. B.supraで は ,public welfare
offenceに対してstrict liabilityが適用される 合法性の理由として,危険な行為に従事して いることで,被告人のknowledgeが擬制され るとしている。
42 Levenson, Laurie L., Good Faith Defens- es: Reshaping Strict Liability Crimes , 78 Cornel Law Review 401(1993)では,strict
liabilityの正当化原理として,これを課す犯
罪は社会規範違反に対するmorality crimeで あること自体とリスクある行為についている だけでその意思にかかわらず処罰されるべき 価値があるためであるとしている。
43 Capp B. A little Knowledge Can Be a Dangerous Thing: State of New Jersey v.
Robertson & The Freshwater Wetlands Pro- tection Act of 1987 , PACE ENVIRONMEN- TAL LAW REVIEW vol.15no.2(1998). 44 Coffee,『Tort/Crime Distinction』. 45 Barber M. D. Fair Warning: The Deterio-
ration of Scienter Under Environmental Criminal Statutes , 26 Loy. L.A. law rev.
105,111(1992).
46 Strict liabilityへ の 反 対 の 立 場 と し て は , 効用的な考え方や応報的な考え方に反すると いうものがある。Wayne R. Lafave & Austin W. Scott, Jr.,『Criminal Law』(1986). 47 ただし,このような法定刑の拡大に対して,
判例の中ではdue process条項により一定の 歯止めをかけようというものもある。つまり,
無実を思われる行為に関与した被告人は,自 身の行為が犯罪となる可能性について気付い たという事実を証明されなければならないと 要求するよう法を解釈しなければならないと するものである。United States v. x−Cite- ment Video,513U.S. 64,72(1994), Ratzlaff v.
United States, 510U.S. 135(1994), Staple v.
United States, 511U.S. 600(1994).
48 New York Central & Hudson River Rail- road Co. v. United States, 212 U.S. 481
(1909).
49 States v. Ford Motor Company, 5324
(Ind. Super. Ct. Sept. 3,(1978).
50 American Bar Association,『The Federal- ization of Criminal Law』( 1998)Appendix C.
51 そ れ は 連 邦 法 の 50 の タ イ ト ル 約 27,000 ページの法典の中に分散しているとされ,そ れらの行為の違法性について厳密に認識しよ うにも困難になりつつあることを示している。
52 Rosenzweig, P. “The Over-Criminalization of Social and Economic Conduct” Policy Research & Analysis, Heritage Foundation
(2003).
53 佐伯仁志『経済犯罪における重罰化の動向』
アメリカ法1998−Ⅱ(1999年)。
54 議会は 1980年代に 4つの環境法について修 正し,違反行為を刑事罰化,コンプライアン ス違反,あるいは報告違反に対し刑事責任を 課 す こ と と し た 。 ま た , 1986 年 にFalse Claim Actの修正,Anti−Kickback Enforce- ment Actの 制 定 , 1987年 にMedicare and Medicaid Program Protection Act of 1987の 制定,1988年にMajor Fraud Actの制定が行 われている。
55 Carpenter v. United States, 484 U.S. 19
(1987)では,mail & wire Fraudについてコ ンフィデンシャルな情報のミスユースに対し て刑事罰を課すように拡大解釈を行った。
56 Neumayr, M. B. An Examination of the Criminalization of Commercial Activity”, http:/www.fed-soc.org/pdf/CrimFinal.pdfよ り。
57 S & Lに関する行為の一部については詐欺 的行為があったが,これらについてもごく少 数の取締役しか懲役になっていない。
58 Jeffrey Reiman, Paul Leighton Getting Tough on Corporate Crime? Enron and Year of Corporate Financial Scandals , Paul’ s Justice Page httm://paulsjusticepage.com/
RichGetRicher/fraud/legislation.htmより。
59 新法では,証券fraudについて意思の要件 をwillfulnessからknowinglyへと変更し起訴 を し や す く し て い る 。 こ れ に よ りmail &
wire fraudと要件は同等となった。また新法
では計画が単に証券に関して生ずればよく,
証券の売買に関係して生じる必要はないとし た。これにより,現実に売買がなされない ケース,例えば,ヘッジ取引や抵当・保証を
利用したfraudをも犯罪に取り込めることと
なった。未遂規定についても明白な行為の要 求がなくなった。また,COE,CEOなどの 者によるfinancial statementの証明に関する 虚偽報告では,knowingの場合 100万ドルの
罰金か 10年未満の懲役,willfulの場合には 500万ドルの罰金か 20年の懲役とされた規定 が追加された。jailの期間は上限が 10年から 25年に変更となっている。
60 SECの新たな執行力については,①officer
やdirectorが違法行為を行ったときに職務停
止を裁判所に求めていたのが行政手続ででき るようになったこと,②株主の利益のために,
捜査の間(最高 90日)directorやofficerに支 払われる会社の財産等をfreezeすることを連 邦裁判所に求める権限をSECに与えたこと,
③違法行為により財務ステートメントをやり 直す場合には,CEO,CFOが違法行為にか かわっていなくても,12か月以内の株式の売 買からの利益やボーナスを没収できることと したことである。
61 量刑ガイドラインは 2003年1月にtempo- raryな修正が行われた。250人以上の被害を 出したsecurity fraudについて量刑ポイント が+8ポイントとなった(新規に+4,信頼 あるポジションの乱用がofficerによるsecu- rity fraudとされ,それが+2ポイント。250 人以上の被害の場合には 50人以上被害の+
4ポイントから+6ポイントへ。)。そのため,
例えば,300人の投資家に 50万ドルの被害を
生じたfraudについて,78〜 97か月の懲役が,
188〜235か月となった。
62 米国の 50州は全て,attorney generalに企 業の設立許可の取消権限を与えている。取消 理由となるのは,業法の重大な違反,あるい は企業の権利を詐欺的に利用した場合とされ ているが,これらはめったに発動されたこと はない。例えば,カリフォルニア州では1976 年に汚染された水を消費者に売った企業の設 立が取消されたものや,1998年にニューヨー ク州で税の免除の規定を濫用したためタバコ 研究委員会の設立の取り消しがなされている 程度である。
63 ガイドラインから乖離した量刑をjudgeは 言い渡すことができるが,その際にはその実 質的理由を文書で示す必要がある。
64 量刑ガイドラインは 40,000のケース・デー タを集め,地域間の不公平をなくして設定さ れているが,1987年改訂以前には不公正が あったとされ経済犯がより軽く処罰されてい る と さ れ た 。 1987年 改 訂 でwhite collar
crimeに対する処罰が重くされるようになっ
た。
65 検察官も公選か指名なので立法者と同様の 立場となり,有罪を人々が望んでいるので
「勝訴」するように行動することになる。そ
して検察官は1つの行為に対して広い処罰が あると有罪答弁を得やすいということで刑事 立法を望むことになる。
66 前掲 注52。
67 Atkins, R. A & Parker, J. S. Did the Cor- porate Criminal Sentencing Guideline Mat- ter? : Some Empirical Observations , 42 Journal of Law & Economics(1999). 68 Khanna, V. S. Corporate Crime Legisla-
tion: A Political Economy Analysis Discus- sion Papers The University of Michigan Law School.
69 Brickey, K. F.『Corporate Criminal Liabil- ity(2d.ed.)』(1992).
70 前掲 注68。
71 後述メモで,行政措置,民事措置やそれら
のremedyとの関係で刑事処罰が考えられる
なら,企業も民事の損害賠償と刑事罰金のバ ランスを考えた行動をとりうることになる。
72 なぜ起訴されないのかについては,被害が 小さく分散しているため,不起訴を問題とす る人が少ないためだとの考え方もある。逆に 大きな事件で被害が集中すると起訴される ケースが多い。
73 Business Week, February 25, 2002. 74 Washington Post, September 7, 2002. 75 民事手続による企業犯罪抑止の問題は法と
経済学の視点から 1970年以来取り上げられ てきてはいたが,最近の刑事罰化・厳罰化で あらためて脚光を浴びている。
76 United States v. Ward, 448U.S. 242, 249-51
(1980).
77 33U.S.C. §1319(g).
78 規制法が多くなりすぎ,法を認識できなく なると,検察官に裁量的な法の執行を許すこ とになり,民事制裁で十分と見られる時にも 刑事制裁を課す等が生ずるおそれが高くなる。
79 Rosenzweig, P. Sentencing and Enforce- ment of White Collar Crimes , Heritage Foundation, Policy Research & Analysis
(2002).
80 勿論,モデルの設計の仕方で必ずしも刑事 制裁がoverdeterenceを引き起こさない場合 もありうる。
81 民事制裁と刑事制裁の犯罪抑止の効果等に ついての詳細な議論はここではしない。詳細 な議論については法と経済学から優れた論文 が多くある。例えば,このような議論につい ての優れた論文としては,Fischel, D. and Sykes, A O. Corporate Crime The Journal of Legal Studies, vol. xxv June 1996Univer-