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(1)

非平衡ゆらぎが創り出すパターンダイナミクス :  実空間モデルによる研究

著者 鷹取 慧

学位名 博士(工学)

学位授与機関 同志社大学

学位授与年月日 2018‑09‑13 学位授与番号 34310甲第960号

URL http://doi.org/10.14988/di.2019.0000000284

(2)

非平衡ゆらぎが創り出す パターンダイナミクス : 実空間モデルによる研究

同志社大学大学院 生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻 医情報学コース

2015 年度 1004 番 鷹取慧

2018

(3)

目 次

1章 緒論 1

1.1 はじめに . . . 1

文献 . . . 5

2章 振動が引き起こす多体系のパターンダイナミクス 6 2.1 緒言 . . . 6

2.2 最小サイズの細胞による自己組織化 . . . 8

2.3 加振器を用いた様々な実験について . . . 9

2.4 加振器による非平衡ゆらぎ . . . 11

2.5 使用した実験機器 . . . 12

2.6 実験のセットアップ . . . 14

2.7 非対称な粒子の運動現象について . . . 15

2.8 多粒子による運動の伝播現象 . . . 18

2.9 加振前後での再帰と対称性の変化について . . . 21

2.10 数理モデルによる検討 . . . 25

2.11 伝播現象について . . . 29

2.12 結言 . . . 32

文献 . . . 34

3章 振動・回転の非線形カップリング(一体系) 38 3.1 緒言 . . . 38

3.2 オイラーディスクの実験 . . . 40 i

(4)

3.3 オイラーディスクのシミュレーション . . . 47

3.4 結言 . . . 51

文献 . . . 52

4章 混雑系:空間境界条件に注目して 53 4.1 緒言 . . . 53

4.2 実験方法 . . . 55

4.2.1 生体環境の模擬について . . . 55

4.3 実験セットアップ . . . 56

4.3.1 実験手順 . . . 58

4.4 結果 . . . 59

4.4.1 状態の変化 . . . 61

4.5 考察 . . . 62

4.5.1 circle数変化 . . . 62

4.5.2 曲率変化 . . . 62

4.5.3 初期条件依存性について . . . 62

4.5.4 ボールチェーンの特性 . . . 63

4.6 結言 . . . 65

文献 . . . 66

5章 燃焼ダイナミクス 67 5.1 緒言 . . . 67

5.2 実験器具 . . . 69

5.3 実験手順 . . . 70

5.4 研究の結果と考察 . . . 72

5.4.1 容器なしのとき . . . 72

5.4.2 小容器に入れたとき . . . 73

(5)

5.4.3 大容器に入れたとき . . . 75

5.4.4 ロウソクの振動分岐 . . . 76

5.4.5 シャドウグラフ撮影 . . . 77

5.5 結言 . . . 80

文献 . . . 81

6章 一分子DNAの蛍光顕微鏡像から求めるDNAの物性評価 82 6.1 緒言 . . . 82

6.2 手法 . . . 83

6.3 結言 . . . 85

文献 . . . 86

7章 結論 87

謝辞

iii

(6)

1 章 緒論

1.1 はじめに

微生物から人類まで、地球上のすべての生命体は、非平衡開放条件下で生命活 動を維持している。生物が織りなすさまざまな生命現象の基礎となり、生物を生 物たらしめている本質的なものは、非平衡開放条件下での「自己組織化現象」や

「時間発展的な自己秩序化現象」と言えるであろう[1]。

「自己組織化現象」では、細胞分裂、形態形成、自己修復等が挙げられる。い ずれも生命体特有の現象であるあるといえる。「時間発展する自己秩序化現象」で はサーガディアンリズムや心筋拍動、呼吸、脳波、神経興奮、そして発生過程で の細胞分裂等が挙げられ、生物が自ら作り出すリズム現象である。これらの現象 を考える時に重要なことは、「時間の矢」の存在である。例えば、屋外にたくさん の砂を山の様に積み上げたとしても、雨や風により時間が経つと崩れていく。こ れは熱力学第二法則でいうところの「エントロピー増大の法則」に従う為だ。同 様に生命活動を行わなくなった生物も時間の経過とともに体は崩れていく(無秩 序化する)。一方で生きている生物は生命活動を続ける限りは、その体を維持し続 ける。この様な 時間反転対称性が破れている ような、非平衡開放条件の下で 生命体は自己秩序形成を行っているわけではあるが、最新の研究でもっても、生 物で見られるような時空間の自己秩序形成のメカニズムの理解はまだ初歩的な段 階であるといえる。生命現象に限らず、また我々が住むこの世界の自然現象の大 部分は非平衡現象である。本論文は、生命体そのものではなく、その自己組織や 自己秩序化についての実空間の簡単なモデル系を取り上げて、研究を行った結果

(7)

をまとめたものである。実空間のモデル系を用いることにより、複雑な現象の背 景に横たわる本質を拾い出すことが、ひいては生命現象の本質に迫ることになる と考え、研究を実施した[2]。

無生物の系での、実空間上の自己組織化現象は、これまでに数多くのものが知 られてきている。一例として砂を大量に撒いた板をスピーカー等で振動させると、

振動の周波数に応じて様々な模様を見せる。模様はクラドニ図形と呼ばれており、

これは加振の周波数に対応して、板の振動パターンが変化し、振動の節の部分に 砂が集まり、結果として特徴的な定在パターンが生じるためである。[3]

第2章では、最大7 mmの振幅を作り出す事の出来る加振装置(以降、加振機)

の上に容器(以降、振動板)を取り付けて実験を行った結果を報告する。加振機 によって作り出される振動エネルギーを用いることで、実験室内で容易に非平衡 状態を作り出す事ができる。本章ではボルト状の非対称な粒子の単体運動が振動 強度(最大加速度を重力加速で無次元化した値)に応じてどのような挙動を見せ るのかについて述べる。また、振動板上を埋め尽くすように粒子を配置させると、

振動強度に応じてどのような挙動を見せるのかを実験的に調べ、得られた結果を 定量的に解析した。

第3章では第2章で使用した振動板の上に乗せた円盤の運動について報告する。

本実験では、振動板上に置かれた円板に、振動板の振動エネルギーを、円板の持 続的な回転運動に変換することを試みた。丸形水準器を乗せたまま振動板を動か したとき、期せずして、水準器が自発的に回りだしたことに着眼して、オイラー ディスクを用いて実験を行った。

第4章では第2章、第3章でも用いた加振器と振動板を用いて、生命の基本で ある生体高分子のDNAが細胞の中でどのような高次構造を持つのかを実空間モデ ルで検証した結果を報告する。近年、分子生物学の発展に伴い、細胞を構成して いる生体分子に関する知見は飛躍的に増大してきている。しかしながら、単に実 細胞を観測するだけでは、細胞の構造と機能の全てを理解することは難しく、自

2

(8)

律的に組織化するシステムをもつ細胞の生命機能の本質に迫ることは困難である。

特に、遺伝情報をもつDNAは、水溶液中では糸状の解けたcoil状態にあるが、生 体高分子が混雑に存在する環境下では、折り畳まれて粒状に凝縮したglobule状態 となる。特に、プラスミドDNAは円環状の構造を形成する。しかしながら、現在 の生体分子観察には、原子力間顕微鏡や電子顕微鏡のような基板上に吸着した方 法が用いられており、上述のような溶液中での熱ゆらぎのある環境での観察は困 難である。本学位論文では、溶液中のDNA構造を検証する方法として、従来の顕 微鏡などを用いた静的な観察ではなく、振動板を用いた運動論的な動的観察法を 創出し、実験を実施した。本研究で創出した手法は、加振機上に設置された容器 に小球とボールチェーンを入れ、振動を加えるというものである。加振機によっ て、振動を加えられた小球は、ランダムな運動をする。これは、溶液中をブラウン 運動する生体高分子の運動を模擬するものである。また、ボールチェーンはDNA と見なす。細胞内の分子のブラウン運動を模倣する粒子と高分子を模倣するボー ルチェーンの二つを直径6 cmの容器の中に収めて実験を行った。ボールチェーン の初期条件は直線状に伸ばした状態と渦巻き状の状態のそれぞれで実験を行った。

またその際に分子を模倣する粒子数(混雑度)を変化させることで、混雑度によっ て、DNAの高次構造が、どのように変化するか実験を行い、閉鎖空間での物質局 在化についての考察をすすめた。

第5章では一本のロウソクの燃焼が一定の条件を満たしたときに、定常的な燃 焼振動をする様子を観察し、そのメカニズムについて考察を行った。生命現象の 特徴として呼吸や心拍などの自律的なリズムの生成が挙げられる。実験室環境下 でそれらと似た振る舞いをするモデル実験系として、ペットボトル振動子やロウ ソク振動子が知られている。ペットボトル振動子とはペットボトルに水を入れペッ トボトルの口先に細いホースを取り付けることによって、ペットボトルの口先か ら水を一定リズムで射出できる装置である。ペットボトル振動子による振動は非 線形振動のリミットサイクル振動として知られている。ペットボトル振動子のリ

(9)

ミットサイクル振動は、ランニング後の心臓の拍動と同様に一時的にリズムは乱 れるがしばらくすると一定のリズムに戻る[4]。ロウソクの炎もまたリミットサイ クル振動の挙動を示すことが知られており、ロウソクを二本束ねた時に、ロウソ クの火炎が強くなったり弱くなったりする。これはロウソク振動子という名前で 知られている[5]。ロウソクが容器の底で燃えているとき、室内が乱れのない安定 した空気であっても、炎が乱れているときがある。本研究では、これに着想を得 てロウソク一本でも定常的な振動が生じることを見出し、研究を進めた。その結 果、定常燃焼⇒リミットサイクル振動⇒カオス的燃焼へと分岐現象がみられるこ とを明らかにした。容器に対するロウソク燃焼面の高さ及び、ロウソクの断面の 直径と、コップの内面の直径の間のアスペクト比が分岐現象の制御パラメータと して働くことも解明した。

第6章ではDNAの物性を一分子観察から求める方法について述べる。近年、遺 伝子やタンパク質の発現、核形成などへのDNAの高次構造の寄与が注目され始め ている。本研究では、より生体内部に近い環境でのDNAの物性評価手法として、

溶液中でブラウン運動するDNAの長軸長の時間ゆらぎを蛍光顕微鏡を用いて計測 し、計測データを解析することで、ゲノムサイズDNAの基本物性としてのバネと ダンパー成分を定量的に評価できることを創出した。このような評価手法は、今 後、ゲノムDNAの研究の発展に貢献するものと期待される。

本学位論文は、熱力学的に非平衡な条件下において、ゆらぎの中で時間的空間 的な秩序が自発的に生成するような現象を実際の実験系で構築することを目指し て研究を進めた結果をまとめたものである。生命体の特質である、動的な自己組 織化現象のメカニズムを今後明らかにするためにも、本研究でおこなった実空間 のモデル系での研究の意義は大きいものと考えられる。

4

(10)

文献

[1] 吉川研一, 非線形科学: 分子集合体のリズムとかたち, 学会出版センター, 1992.

[2] 北原和夫,吉川研一, 非平衡系の科学 反応・拡散・対流の現象論, 第1巻,講談 社, 1994.

[3] M. J. Gander and F. Kwok, SIAM Review54, 573 (2012).

[4] 小平I.將裕,北畑裕之, 数理解析研究所講究, 166, 2006.

[5] H. Kitahata, J. Taguchi, M. Nagayama, T. Sakurai, Y. Ikura, A. Osa, Y. Sumino, M. Tanaka, E. Yokoyama, and H. Miike, The Journal of Physical Chemistry A113, 8164 (2009).

(11)

2 章 振動が引き起こす多体系の パターンダイナミクス

2.1 緒言

夏の夕暮れ時に空を見上げると、無数の鳥が飛び交っている光景を目にするこ とがある。中でもムクドリという鳥は、Figure2.1に示すような数千から数万とい う膨大な数で群れを作ることが知られている。空を覆いつくすほどの鳥によって 作られた群れという塊は右へ左へと柔らかく形を変形させる。この変形のために ムクドリは高速で飛行や急な方向転換を行っている。我々人間からすると、この 現象の不思議な点の一つに、リーダーとなり群れを先導する存在がいないにも関 わらず、個々の鳥が自ら動きを決定し、群れ全体として多様なパターンの動きを 作り出すことが挙げられる[1]。このような個々の生物が集団として作り出す群れ のパターンの様に、個体一つ一つは勝手に動いているように見えても、系全体と してみたときに秩序をもった動きがみられるような自己組織化という現象が身近 には多数存在している。

6

(12)

Figure 2.1: Starling flock [2].

(13)

2.2 最小サイズの細胞による自己組織化

自己組織化の身近な例として生物を構成する細胞、またその細胞を構成する小 器官などが挙げられる。例えば心臓細胞は、個々の細胞は固有の周波数を持ってお り、単体として存在するならば、それぞれが好きなタイミングで拍動する。一方、

複数の心臓細胞が接触すると、細胞一つ一つが隣の細胞の拍動のタイミングを察 知したかのように一つの心臓として、規則正しいリズムを刻む。また、一つの細 胞に焦点を当てると、細胞内部では常にエネルギーの生産や消費が行われ、ブラ ウン運動などの平衡ゆらぎよりもはるかに大きい非平衡ゆらぎが自発的に作り出 されており、細胞を構成する小器官は常にそのゆらぎを受けて存在することにな る。そういった条件によって、各小器官は細胞質に張り付くのではなく細胞中の 真ん中に位置しやすくなるといったある種の秩序もみられる[3, 4]。

Figure 2.2: Characteristic image of a nucleus in a cell [3].

8

(14)

2.3 加振器を用いた様々な実験について

熱力学的に開放された条件で作り出す時空間パターンや自己組織化は、自然科 学の幅広い分野で関心が高まっている。非平衡状態の時空間ダイナミクスに関す る多くのモデル実験の中でも、加振器を用いた振動エネルギーによって物体が動 かされ、攪拌されてできるパターンは、その単純さと制御パラメータの変更が容 易なため、非常に興味の深い研究手法の一つである[5–12]。また、振動板を用い た実験としては、非対称な形状の単体粒子の運動に着目した実験も多く報告され ている。Khanらは湿った容器の中で大球と小球をつなげた二量体の粒子を、重力 方向に垂直に整列させた実験を行った。振動を加えると、粒子が容器を移動する 現象を報告している [5]。Yamadaらは2つのプレート間に閉じ込められた単体の 非対称ボルト状の粒子が、垂直振動の強さおよび周期に応じてランダム運動また は一方向運動を示し、この挙動は、粒子の詳細な形態には鈍感であることを報告

した[6]。Dorboloらは単体のダンベル状の粒子に鉛直方向の振動を加えると、一

方の端が振動板上にとどまり、もう片方の端が跳ねあがりながら、水平方向にド リフトしながら運動する現象を観測した[7]。Kuboらはダンベル状の粒子に非対 称性を導入し、ランダム変動、軌道運動および回転運動を含む非対称ダンベルの 明確な運動について特徴的なモード分岐を見出した[8]。Wrightらは1本のロッド が振動する挙動を調べ、振動の加速を増加させることにより、ロッドが周期運動か ら確率運動に移行することを見出した[13]。ロッドの特有の特性に関して、Trittel らは球状粒子と円筒の跳ねる統計量の間の著しい差を報告した[14]。単体の粒子 を振動させる研究に加えて、それらが集団としてどの様なふるまいをするかといっ

た実験や[13, 15–18]、Ebataらによる高密度の粉体よる研究、また、複数の粒子に

よる振動実験が行われている[19]。いくつかの研究では、物理学的に熱平衡条件 下と似た特性に着目して、結晶化 [20–23]、ガラス転移[24, 25]、および相共存に よる一次相転移での多数の粒子の動的挙動が報告されている [26]。いくつかの報 告では平衡熱力学における特徴との顕著な相違が報告されている[27–29]。Muller

(15)

らは、振動板の上で湿ったロッド状の多粒子で作られる単層が、粒子のアスペク ト比に依存して一軸性のネマチック相とテトラティック相を形成することを示し た[30]。Mayらは、湿った球体の粒子が創り出すパターンについて報告している。

2台の加振器を使用して、水平方向への振動を加えたとき、多粒子が平衡状態から 溶融するとき、すなわち結晶状態から液体状態になるときに、アモルフォス状態 を通過する必要があることを見出した [31]。また同様に湿った球体の粒子が、鉛 直振動下で起こる運動について、Zippeliusらは、半球のボール状の容器の中で振 動を加えたとき、粒子が縁の周りを回る波のように振る舞うことを確認した。正 面から見ると気相から液相への転移状態の様な現象が観測された [32]。容器の縁 に沿って起こる波は、実際に伝播する波が、空気の流れを介して流動化した粒状 ロッドの単層を用いることによっても同定された[33]。また、微小重力下での振 動実験は粒状の棒や球に用いられる。細いロッドでは、それらの並進運動エネル ギーと回転エネルギーは非ガウス分布であり、非平衡性を示している[14]。3D冷 却では、粒状ロッドの並進エネルギーと回転エネルギーとの間の等分配が破られ た[34]。粒状球については、Sackらは、高振幅振動では粒状粒子と動かされる壁 との間の同期運動を報告したが、低振幅振動では粒状粒子はガスの様な挙動を示 した[35]。密度が高くなると、粒子が低密度の領域に囲まれた静止したクラスター が形成されることを、Falconらは発見した[36]。Deseigneらは、極性非対称性を 有する振動ディスクの単層を調べ、振動の振幅が大きくなるにつれて、非対称な 極性粒子が配向状態から大きな揺らぎをもつ状態に変化することを発見した[9]。 Odaらは、円筒形容器内に閉じ込められたより大きな粒子と混合された小さな球状 顆粒の層の二次元構造を研究するために垂直振動を使用した[4]。彼らは、小さな 球の群集の大きさが増加するに伴い、大きな粒子の取りたがる位置が空洞壁の近 くの領域から空洞の内部に変化することを示した。さらに、波状伝播は、外部から の攪拌条件下で粒状粒子について生成されることが示されている[37, 38]。機械的 振動によって駆動される粒子も、いわゆる活性粒子の代表的なモデルである[39]。

10

(16)

2.4 加振器による非平衡ゆらぎ

ある程度の反発係数を持つボールが、水平な床に向かって落ちた場合、ボール は床とぶつかった後ある高さまで上昇する。しかしながら、再びボールが床とぶ つかった時には、一度目と同じ高さまでは上昇しない。そうして徐々に高さを下 げていき、最終的には床に静止した状態となる。これはボールと床が接触した際 にエネルギーが散逸しているからである。その結果、ボールはエネルギー的に安 定した状態となる。本研究では、垂直振動する板の上に乗った非対称なプラスチッ クボルト状の粒子の集合的動的挙動を調査した。 非対称な粒子は、ボルトの頭側 を下にした時に静止し、横倒しになっている時は、一方向の運動やランダムな運 動などの異なる状態を示す。 本研究では、運動の状態の変化を観察した。複数の 非対称な粒子は、垂直振動により、直立状態の粒子が転倒して、ほかの粒子へ衝 突する。その結果として、粒子は立っている状態から倒れた状態になり、さらに 振動を加えると再び立ち上がった状態へと変化をすることを発見した。 興味深い ことに、適切な振動強度の下で、この再帰性のある挙動、すなわち立ち上がった 状態の粒子は、最密な充填パターンを形成する。また一定の割合で粒子のミクロ 相分離を引き起こすことがわかった。 さらに、実験条件を変えた擬一次元の条件 下で、立っている状態、倒れた状態、立っている状態の再帰性を伴った興奮性の 波が観測された。

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2.5 使用した実験機器

• 単体電力増幅器(アンプ)

メーカー:エミック株式会社 型番:371-A/Gz

• 加振器

メーカー:エミック株式会社 型番:512-A

• チャージアンプ(加速度計)

メーカー:エミック株式会社 型番:505-CBP

• 振動板(振動板は以下の4つから構成されている。)

• 枠体(株式会社日本プレート精工製作)

• 壁付枠体(共栄化学工業株式会社製作)

• ガラス板(オーダーガラス板.COM製作)

• 基台(株式会社日本プレート精工製作)

• スペーサー(株式会社日本プレート精工製作)

• ファンクションジェネレーター

メーカー:株式会社 エヌエフ回路設計ブロック 型番:EZ1960

• 高速度カメラ メーカー:CASIO 型番:EX-FH25

12

(18)

• 自己推進粒子

メーカー:株式会社丸昌

型番:プラスチックリベット(Figure 2.4 (a))

(19)

2.6 実験のセットアップ

Figure 2.3: Vibrating plate experimental setup.

実験機器の操作について 機器の操作方法

1. ファンクションジェネレーターを用いて、加振機に入力する波形と周波数を 決める。

2. 単体電力増幅機で実験を行う電流値を決める。

※電流を変化させることで、加速度が変わる

3. 振動板の上に自己推進粒子を配置する。

4. 高速度カメラの録画を開始する。

5. 加振機を駆動させて振動板に振動を加える。十分な時間の中で物体の動きを 観察する。

14

(20)

2.7 非対称な粒子の運動現象について

Figure2.3に実験システムの概略図を示す。またFigure 2.4(a)に本研究で使用し

た非対称な粒子の写真を示す。振動によるエネルギーの強さを表すために、本論 文では、加振強度はΓという無次元化した数値を使用する。なお、Γは

Γ= A(2πf)2

g (2.1)

で求める。ここで、Aは振動の振幅、f は周波数、gは重力加速度である。Figure 2.4(b)にΓ=3.16(A=0.078mm, f =100Hz)と、Γ=3.57(A= 0.091mm, f =100 Hz)の2つに異なる条件下で見られた、非対称な単体粒子の自発的運動モード示す。

粒子は、Figure 2.4(a)に示すSide viewの状態を初期状態として配置している。こ の状態のことをHorizontal stateと定義した。これに対して、粒子が円盤を下にして 静止している状態、すなわちFigure 2.4(a)に示すBird’s-eye viewの様子をStanding

stateと定義した。粒子に振動を加えたとき、粒子が筒部分と床との接点は接地し

たまま円盤部分と床との接地部分のみを床から浮かし、円盤側を前として一方向に すすむ現象を確認した。ある程度Γが大きくなると、筒側の接点も少し浮かしなが ら、円盤側を前として一方向に進んだ。このように、円盤側を前として一方向に進

む運動をVectorial motionと定義した。さらにΓが大きくなると、振動によって筒

側が浮き上がり、Horizontal stateからVectorial motionを通してStanding stateへ移 行し、その後静止して動かないという現象が確認された。これをStationary motion と定義した。また、Γが非常に大きくなると、粒子は大きく跳ね上がったり一回転 したりと運動が定まらなくなった。この運動をTumbling motionと定義した。

Figure 2.4(c)に、周波数を100Hzに定め、振動の振幅を変えることでΓを変化さ

せたときのstateとmotionの移り変わりを示した。約2以下のΓでは、Horizontal stateからVectorial motionとなり、運動する様子が確認できた。約 2 以上、約3.7以 下のΓでは、粒子がHorizontal stateからVectorial motionを経て、最終的にStanding

stateとなった。Standing stateになった粒子はその状態で加振を加えられても安定

(21)

した状態となり、運動につながることはなかった。Γがそれより大きい場合では、

ランダムに粒子は動きまわり、加振中は安定した様子を見せないTumbling motion となった。加振を急に止めると粒子はHorizontal stateで落ち着くこと多くみられ た。これらの結果から、粒子のstateとmotionが加振強度に依存して変化すること が分かった。さらに、実験の範囲を広げて、周波数を100Hz以外に設定した条件 での実験も行った。実験は10Hz刻みで、30−100Hzまで行った。それらの周波 数すべてで、運動モードの分岐が確認できた。条件の変化による結果を縦軸に加 振強度、横軸に周波数で相図を作り、Figure 2.4(d)に示す。これらの結果に基づい て、周波数を100Hzとして実験を行ったときに、多粒子の運動モードの分岐が明 白になる。

16

(22)

Figure 2.4: Behavior of a single bolt-like particle driven by vertical vibration. (a) Photos of the bolt-like particle used in the present study; bar is 5 mm. (b) Examples of characteristic time traces of a single bolt-like particle at different Γ values. The vibration frequency of the plate was fixed at 100 Hz. The horizontal particle stands up spontaneously during tumbling motion at Γ= 3.16, whereas at Γ= 3.57 the horizontal state with tumbling motion continues during vertical agitation. It is noted that Standing and Horizontal correspond to the actual observation shown in the left and right of (b), respectively. The bottom picture are the overlaps of snapshots in the actual observations.

(c) The state of the motion of a single bolt-like particle as a function of Γ at a fixed frequency, f= 100 Hz. (d) The Phase diagram with Γ vs. frequency for the state of motion of a single bolt-like particle.

(23)

2.8 多粒子による運動の伝播現象

多粒子系の実験で用いる容器は、円形の振動板と、粒子が飛び出さないように周 囲を壁で囲った容器を用いた。Figure 2.5に示すように振動する容器の中には521 個の粒子を並べた。そのうち520個は円盤を下側にした状態(Standing State)で配 置し、中心の一つだけ(青色の部分)粒子を横倒しにした状態(Horizontal State)で 設置した。振動を加えると、中心の横倒しにした粒子が動き始め、周りの直立し ている粒子を倒す。このように運動が伝播していく現象が確認できた。直立した 状態の粒子が崩れていく様子は、中心から歪ながら、同心円状に広がっていく。こ の広がる速さは、Γを変えることで変化させることができた。

Figure 2.5: Schematic representation of the bolt-like particles (n = 521) arranged in a circular vessel with a diameter of 197 mm, which is placed on an aluminum plate.

Sinusoidal vibration was applied in the up-down direction.

多粒子が創り出す集団運動の様子をFigure 2.6に示す。Figure 2.6(a)は加振強度、

Γ=3.16、Figure 2.6(b)はΓ=3.57の条件で行った実験である。

0秒の時、Figure 2.6(a),(b)の両方が実験者の手によって、手作業で配置された状

態である。この条件は振動板の壁の周囲から並べていき、同心円状に粒子が並ぶ ように配置を行った結果である。

18

(24)

Γ=3.16の時、30秒と60秒では、粒子がTumbling motionとなり、ランダムに隣 接するStanding stateの粒子へ衝突しているのがよくわかる。このTumbling motion になった粒子は徐々に時間とともに増えていく。120秒後、中央の領域にいる粒子 は再び立った状態となり、粒子としては安定した状態となっている。時間が240 秒になると、いくつかの粒子がTumbling motionを続けているが、大部分の粒子は

Standing stateになっている。最終的に420秒の時点で粒子は安定した状態となり

Horizontal stateの粒子とStanding stateの粒子の二つとなり、すべての粒子が静止 状態となる。加振強度がより高いΓ=3.57ではFigure 2.6(b)に示すように、同様 の状況が起きているが、極端な速さでStanding stateの粒子がTumbling motionへ と移行していく事がわかる。これはΓの強さが状態の移行を加速させているため である。その為、30秒では殆どの粒子がTumbling motionになっている。大半の 粒子は30秒〜60秒の間にStanding stateへと変化していき、120秒から420秒ま でに、ほぼ全ての粒子が安定したStanding stateとなり幾つかの粒子がHorizontal

stateで静止状態となる。

実験に用いた容器の直径は197 mmである。直立させた粒子の直径は8 mmであ る。本実験で用いた粒子521個が埋める面積は約85.9%となり、最密充填構造で配 置した場合は90.7%が埋まることとなる。その為、本実験で完全に充填した場合 の個数は521・(90.7/85.9)=550と計算される。したがって521個の粒子を用いて いるが、実験装置の上では、29個の粒子をさらに収容できるスペースが存在して いる。しかしながら、Figure 2.6(a),(b)の双方420秒の赤枠に注目してみてみると、

Standing stateの粒子が密にパッキングした六方最密充填構造を作り出しているこ

とがわかる。この六方最密充填構造のクラスターが形成されることにより、加振 環境下でも安定した状態を作り出していることがわかる。

(25)

Figure 2.6: Time-successive snapshots of the behavior of 521 particles, indicating a reentrant transition. In the initial condition, t = 0 秒, a single particle was placed horizontaly. The frequency was fixed at 100Hz(a)Γ= 3.16(Amplitude,0.078mm), (b) Γ = 3.57(Amplitude, 0.091 mm). In both experiments, the particles initially tend to fall over into the horizontal state sate and undergo tumbling motion. Next, horizontal particles gradually change to the standing state through collisions with neighboring particles.

20

(26)

2.9 加振前後での再帰と対称性の変化について

加振前後での粒子の分布について考察する。Figure 2.6で0秒と420秒の時を比 べてみてみると、再帰することによる相転移現象が起きていることがわかる。こ のメカニズムを詳しく理解するために、初期状態である0秒の時と、420秒の時に おける充填構造の違いを評価することにした。

6個の最近接粒子の相関関係を以下の式を用いて評価した[40, 41]。

q(k)6 = 1 6

jN6

(k)ei6αk j (2.2)

qk = q6(k)2 ∈ [0,1] (2.3) 式2.3でのqkとは粒子kによる6回回転対称性による配向の秩序を反映するパ ラメータである。αは基準となる粒子kに対して最近接の粒子二つで構成する内 角を表す。便宜上、振動板の容器の壁に隣接する粒子を白い円で示す。これは、容 器の壁によって、六回回転対称性が作られないためである。Figure 2.7(a)に示す、

Γ=3.16の弱い加振強度の時、0秒での初期状態は、黄色と青で示されたランダム な様子が見て取れ、振動板上の弱い六方最密充填構造(緩いパッキング)を示す。

また420秒では、接近した粒子のパッキングのパターンは、黄色と青色で囲まれ てその内部は六方最密充填構造となり、赤と黄で示される「アイランド」として 現れる。Figure 2.7(b)で示すようにより高いΓ=3.57の場合では、Figure 2.7(a)と比 較して六方最密充填構造は小さい状態となっている。より高いΓの場合、Standing

stateへ再帰するときに衝撃が大きくなる。その為六方最密充填構造が大きく成長

するのを阻害することとなる。これは、六方稠性充填の大きな領域の形成を妨害 し得る。Figure 2.7では、対称性パラメータqkの測定値もt =0秒と420秒で与え られ、最終的な定常状態が一次相転移で生成された相分離と類似の特性を示すこ とを示唆している。

(27)

Figure 2.8(a)およびFigure 2.8(b)は、ランダムに運動している粒子数とStanding

stateの粒子数の経時変化を示す。再帰相転移の後に、より高い対称性または最密

充填構造を作る粒子の数が増加する。小さいΓの下でより多くの粒子が真の六方 最密充填構造を形成することは明らかである。 Γ = 3.16の場合、Figure 2.7(a)の ヒストグラムのように、6回回転対称性(qk)の分布は、0秒でのピークは一山し か存在しないが、420秒ではピークが二つの山へ転移していることを示す。Figure 2.7(b)、Γ= 3.57でも若干不明瞭ではあるが、Γ=3.16のヒストグラムで類似して いる傾向が見られる。

Figure 2.8(a)およびFigure 2.8(b)は、それぞれΓ = 3.16および3.57における粒

子のTumbling motionになっている数の時間変化を実線で示す。それぞれのΓの値

で実験結果から、400秒前後の時間で、振動板上の粒子の状態が静止した相(静 止相)に達することがわかる。目安として、より低い(qk <0.6)およびより高い 対称性(qk> 0.6)を有するStanding stateの粒子の時間経過を破線で示す。Figure 2.8(a),(b)の両方は、Horizontal stateの粒子、またはTumbling motionの粒子が少し 量の変動はあるものの、一山のピークを過ぎに徐々に減衰する様子を示す。Figure

2.8(a)では、弱いがわずかに広いピークを示している。約70秒で最大値をとる。

これはTumbling motionの粒子が全体の粒子に対して約15%に相当である。これ

に対し、Figure 2.8(b)では、約20秒付近で、急峻なピークを示している。これ

は全体の粒子の80%近くがTumbling motionであり、振動板全体にわたって均一 に変動する。少数のTumbling motionの粒子は、t = 300秒前後でかなり減衰し続 け、t = 420秒前には、振動板の上にはわずかなTumbling motionの粒子しか存在し なくなる。3.57より大きなΓでは粒子がランダム運動をする粒子が増加する。つ まりTumbling motionがより強く動き、多くの粒子が初期段階でTumbling motion に変化することを示す。Figure 2.8(a),(b)のそれぞれ、Standing stateの粒子の変化 の特徴を示す。振動が加えられ時間が経つと、Standing stateの数は最初に減少し ていく様子を示す。次にTumbling motionのピークを通過した後に再び増加する。

22

(28)

Tumbling motionによって衝撃を受ける粒子の数が減少すると、安定した静止相が 確立される。高いΓと比べて低いΓつまり弱い加振強度では、より多くの時間が 必要である。Standing stateの数を減らすよりも先にTumbling motionの粒子が先に Standing stateへと変化する。

最後に、最密充填構造によってStanding stateへ粒子が変化し、静止相を安定化 させる理由について考察する。再帰転移は非ブシネスク対流[42]やBZ反応等で もよく知られている、化学的振動反応[43]など、他の多くのシステムに見られる。

非ブシネスク対流の場合、温度勾配は、対流の開始時の流体の不安定性のために 六角形の形成を誘発する。システムが臨界点に近づくにつれて、六角形は狭い範 囲内にしか現れなくなる[42]。本実験システムでは、再帰転移は約3.2から3.6の Γの範囲で発生し、初期状態は振動に対して不安定であるが、Γ=3.16では粒子が 緩やかにパッキングした安定状態に変化するが、Γ=3.57では粒子のすべてがラン ダムに運動する状態となる。興味深いことに、本実験では、ゆらぎが規則的な六方 最密充填構造を誘導することによって再帰転移を引き起こすことを明らかにした。

(29)

Figure 2.7: Change in the symmetry parameter before and after the reentrant transition.

(a) Spatial distribution of the symmetry parameter qk for standing particles in the initial state

24

(30)

2.10 数理モデルによる検討

多粒子での実験観察を理解するために、3つの状態からなる単純な動力学モデル を確立した。

1. x:二次元六方最密充填を伴わない分散状態(Standing state)。 2. y:水平状態(Horizontal state)。

3. z:二次元六方最密充填により安定した状態(Standing state)。

再帰転移による多粒子状態の時間的変化を、以下の単純な運動モデルを元に考察 する。

dx

dt =−k1xy+k3yz (2.4)

dy

dt = k1xy+k2yz (2.5)

dz

dt = k2yz− k3yz (2.6)

ここで、k1k2およびk3は、3つの状態の分数を経時的に調節する3つの異な る運動経路の速度定数である。単純化のために、すべての運動過程が衝突の結果 であると近似して考える。すなわち、x +y+ z = 1という条件の下で、状態の転 移は変数x、y、zの積として与えられる。状態xの粒子は、Horizontal state(状態 y)の粒子に衝突されることによって状態yの粒子へと変化し減少するが、状態y の粒子が状態zの中でも比較的緩やかにパッキングした粒子を再びはじきとばす ことで状態zからxの粒子に変化し状態xが増加する。また、Standing stateのx 状態からyへの転移は、k1xyで表され、ランダムに転倒するHorizontal stateの粒 子(状態y)との衝突によって引き起こされる。衝突エネルギーが十分に高いと、

立っている粒子がHorizontal state状態yになる。Horizontal state の粒子yは、六

(31)

て、立った状態に転移すると仮定できる。また、Horizontal state状態yの粒子とと

Standing state状態zの粒子との衝突による緩やかにパッキングした立位状態を作り

出す衝突を、Horizontal stateの粒子が定常粒子zに変化するk3yzのように考える。

ここで、立っている粒子が衝突そのものにより完全な最密状態に移行することな く、最密状態よりはほんの少し分散した状態になる。言い換えれば、実験を注意 深く観察することによって、Horizontal stateであるyと六方最密充填である立位粒 子zのクラスターとの間の衝突は、2つの異なるプロセスを引き起こすことに留意 した。i)yが高密度パッキングの集合体に結合することによりHorizontal stateの 粒子yが立った状態に変化する。及びii)高密度パッキングのクラスターに属する 立方体粒子zは、比較的緩やかなパッキング状態で除去され、立った状態に転移す る。前者および後者のプロセスはそれぞれk2yzおよびk3yzに対応する。ここで、

本研究の実験条件下では、上記の3つのメカニズムよりも重要ではない粒子と閉 じ込め壁との間の衝突など、他の影響は無視されることに留意する。また、2つ以 上の物体の衝突を伴わないという仮定を採用する。 最小変数を持つこの単純モデ ルでは、3つの異なる状態の確率の時間依存変化を計算する。Figure 2.7では、壁 に隣接する粒子を除去して対称性パラメータqkを算出した。したがって、Figure

2.8(a),(b)の異なる状態の確率は、466個の粒子について計算された。本研究は、x

およびzの確率に対応して、より低い(qk < 0.6)およびより高い対称性(qk > 0.6) を有する定常粒子を暫定的に分類した。したがって、数値シミュレーションの初 期条件として、xt = 0)= 0.9、y(t = 0)= 0.01、z = 0とした。Figure 2.8(c)で は、Γ= 3.16、k1 =7、k2=29、k3=20の実験に対応する数値結果を示している。

(d)は時間発展はΓ = 3.57の実験に対応しており、k1 = 50、k2 = 150、k3 = 148 である。適合パラメータを見つけるために、最初に初期段階から定常段階に近づ く適切なパラメータk1k3を探索した。次に、パラメータk2を変更することに より、実験の傾向を再現するために最良のパラメータを見つけようとした。Figure 2.8は、Γ =3.16(Figure 2.8(a))および3.57(Figure 2.8(b))に対する時間の関数

26

(32)

としてのx、yおよびzの確率を示す。Figure 2.8(c),(d)の計算は、モデルがFigure

2.8(a),(b)に示すように実験と質的に一致することを示している。Γがより大きい

場合、yのピークに達するまでにはより短い時間で十分であり、さらに、ピーク 自体がより大きくなる。Horizontal stateの粒子がより迅速に出現することを示す。

モデルではさらに xとyがどのように時間変化するかを予測する。Γの増加に伴 い、システムはより迅速に定常状態に到達し、密にパッキングしたStanding state の粒子と接触するStanding stateの数が増加する。本研究で提案する数理モデルを 用いた考察から、速度定数k2は、安定した定常位相への再帰転移の速度を決定す るために重要であることがわかる。さらに、k2は定常状態に直接的な影響を与え る。k2がより小さいときはΓがより小さいときに対応し、振動によって与えられ るエネルギーが小さくなるために、衝突によるエネルギーも小さくなり、システ ム全体として変動が少なくなる。その結果、よりゆるく充填された定在粒子がシ ステム内に残っており、より頻繁な変換と、より多くの数の共存する定在粒子お

よびHorizontal stateの粒子との関連がある。対して、k2がより大きいときはΓが

より大きいときに対応し、振動板全体にわたるより大きな程度の変動が起こるこ とに関連する。これによって、再帰転移後に、立っている粒子の中で間に緊密に 詰め込まれた六角形配列の粒子の割合がより小さくなる。

(33)

Figure 2.8: Experiments (a, b) and numerical simulations (c, d) on the time-development of the states of the particles. (a, b) The solid line represents the probability of tumbling particles. The broken blue and red lines are guides for the eye to show the changes in the number of standing particles below and above a value of 0.6 for the symmetry parameter qk, which correspond to disordered and ordered states, respectively. (c, d) Numerical results for the time evolution of the three different states: standing with low symmetry, horizontal with tumbling motion, and standing stationary with six-fold rotational symmetry.

28

(34)

2.11 伝播現象について

本研究の実験結果から、振動を加えられた非対称な粒子は運動状態が伝播してい くことを明らかにした。これらのシステムは二次元の実験系であった。本節では、

非対称な粒子の1次元の運動について検証した。擬一次元化システムにおける進 行波、Standing state−Horizontal state−Standing stateへと変化する粒子の動きは、

神経パルスの信号励起のものと幾分類似した特性を示す。そこで、次の目的とし て、神経細胞の軸索を模した容器と粒子の運動が興奮波の伝播になるように考え、

Figure 2.9のような擬一次元システムを構築、実験を行い、興奮性の波や進行波の

発生を調べた。本実験は加振強度をΓ = 2.75(A = 0.078mm, f = 100Hz)を設 定して実験を行った。Figure 2.9の左上の画像のように、複数の粒子をこれまで同 様にStanding stateで配置、単体の粒子をHorizontal stateとして置くことによって 初期上状態とした。振動実験を開始すると、10〜30秒の間にTumbling motionの 粒子の伝播が観察される。Standing stateからTumbling motionへの移行後、再び立 ち上がる様子は顕著にみられた訳ではないが、一か所を抜き出してみると、再帰 性のある伝播も見られた。最終的に、250秒後に、Standing stateの粒子によって 規則的なパターンが生成され、定常的に続く。本実験は予備実験として、擬一次 元システムの進行波の生成を観測した。進行波は、一般に、局所的な要素が興奮 性を示す空間的に分散したシステムのために誘導される。 前のセクションで説明 したように、適切な条件下で、非対称な粒子は、Standing state - Tumbling motion - Standing stateへと変化する。 最終的なStanding stateは、高い空間的対称性を持っ た最密充填構造を作る。なお初期状態は空間的対称性がより少ない。したがって、

本研究は興奮性のシステムと同じと考えられる。 励起の本質的な特徴は、自由エ ネルギープロファイルにおいて二峰性または二重最小を有する動的系として記述 することができる。 興奮性を記述するために、次の非線形運動方程式[44]を採用

(35)

することができる。

u

t =−δF

δu ∼ σu(ua) (u−1) (2.7) 1/2 <a <1である。励起下での時間発展をu = 0からu = 1まで考えることができる。

1次元伝播のために、uの空間微分で自由エネルギー関数を考慮することによって、

u

t = D2u

x2 −σu(ua) (u−1) (2.8) このようにして、一定速度の進行波の解を得ることができる [44]。レート決定速 度定数k0を導入することにより、式2.8を大まかに書き換えることができる[45]。

c∼ √

k0D (2.9)

Tumbling motionの粒子に隣接する粒子がStanding stateの場合、k0が0.1s1の オーダーである。Tumbling motionの拡散速度から、拡散定数Dが1cm2/sのオー ダーであると仮定してもよい。したがって、式(9)から、速度cは数十 cm/sの オーダーでなければならない。時空間プロットは、c ≈ 0.5cm/sであることを示 し、これは上記の予想と一致する。ドミノの転倒による実験では、固体粒子の定 速進行波の生成が観測されている[46, 47]。しかし、私が知っている限り、固形物 体による再帰性を伴う進行波の発生については報告されていない。興奮性の進行 波の観測はまだ早い段階であるが、より洗練された実験システムで興奮性の進行 波を構築するための将来の研究を促すことが期待される。この興奮性の波はまた、

ノイマン型で非チューリング型の新しいタイプとして、興奮性媒体を用いた情報 操作に関する研究の発展にも貢献する可能性がある[48, 49]。

30

(36)

Figure 2.9: Appearance of a traveling wave in a quasi-one-dimensional system. The upper pictures are the actual arrangements of the particles that change with time under external vibration, and the bottom picture is a spatiotemporal diagram. The vibration frequency is100Hz andΓ= 2.75.

(37)

2.12 結言

本研究では、水平な板上に2つの異なる状態(Standing stateとHorizontal state)

の多くの非対称な粒子に垂直の振動を加えた。初期状態では、振動板の中央付近 の1つの粒子がHorizontal stateで置かれ、他の粒子はStanding stateで、緩い充填 構造であった。垂直に振動すると、これらのゆるく充填されたStanding stateの粒

子はTumbling motionの粒子の衝突もあり、不安定になる。本実験およびモデルの

研究に基づいて、Tumbling motionの強さが、システムが安定した静止相に再び変 化(再帰転移)する時間を決定することが明らかになった。再帰転移による静止 相は、結晶化がかなり強い条件下でも安定になるためにStanding stateの粒子を助 け、エネルギー散逸経路をとして結晶ドメインとして、最密充填構造の形成によっ て安定化がなされる。従って、観察された結晶ドメインの形成は、ミニ結晶を取 り囲む分散領域の生成を伴う一次相転移によるスピノーダル分解に類似している。

さらに実験では、Figure 2.9に示すように擬一次元システムにおける固体粒子の配 置における励起進行波の生成を観察した。最近の研究とは対照的に、1次元および 2次元振動実験における球状粒状粒子が作る単層の相転移については、2つの相間 の明確な界面 [50, 51]を有しており、本研究における再入射転移は分岐過程に関 連している。強い加振強度Γでは、非対称な粒子は、共存する固体および液体相 の形成がない場合、液体のように一定の転倒状態にある。狭い範囲のΓでは、こ れらの粒子は、ほぼ全ての粒子が立った状態で固相に入る。ミクロ相分離は、固 相中に密集した緩やかにパッキングした領域を伴って形成されるが、明確な境界 面は見られない。本研究のシステムのソリッドステートは、準安定状態、または 遠くから平衡状態の下で生成される一種の散逸構造であると主張することができ、

オリエンテーションの順序付けと関連して独自の(エネルギー散逸)経路が必要 である。振動板を用いた実験は、非平衡プロセス中にシステムが不安定状態から 定常状態にどのように転移を起こすのか理解するために用いることが出来ると考 えている。 将来的には、粒子の円盤の直径を変更したときに起きる、分岐の再帰

32

(38)

転移の変化、動的システムなど、粒子の数密度による構造の影響を調べる必要が あると考えている。

(39)

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(43)

3 章 振動・回転の非線形カップリ ング(一体系)

3.1 緒言

自然科学における熱力学的に開放された条件下での時空間自己組織化への関心 が高まっている。 平衡状態から離れた時空間ダイナミクスに関する多くの実験シ ステムの中で、機械的振動によって生成される振動板上の物体の挙動は、制御パラ メータを変更することで簡単に運動の挙動を変更出来るために大きな関心を集め

ている[1–4]. 高調波振動の状況下では、非対称粒子、極性円板、ダンベル状、非

対称性をもったダンベルのような物体は不思議な運動現象を示す[5–8]。他方、粗 い表面上で回転する円形ディスクは、通常、自然界で観察される。たとえば、「オ イラーディスク」は優れた科学のおもちゃである。Moffattの記事では、オイラー の円板が定常的な回転運動の途中で突然停止することが、回転円板の有限時間特 異点の特性と関連しているとして、数理物理的な熱い議論の対象となっているこ とが紹介されている [9–12]。次に、ディスクが振動板上に置かれると、ディスク は振動板からエネルギーを得て回転を続けることが予想される。本章では、振動 板上のディスクの連続回転の運動に関して実験を進めると共に、得られた結果を 理論的にシミュレーションすることを試みた。この動作を連続回転モード(以降 CRモード)と呼称する。Figure 3.1は、振動したプレート上を回転する円柱状の ディスクの写真とスケッチを示している。

38

(44)

Figure 3.1: Behavior of a stainless disk rotated by the vertical vibration. (a)Photo of the experimental setup in side view. (b)Schematic representation of the stainless disk and vibrating plate wherel is radius andhis height.

(45)

3.2 オイラーディスクの実験

本実験では、直径25 mm、高さ4.95 mmのステンレスディスクを用いて行った。

ディスクは、加振器および正弦波形発生器を用いて、振動するアクリル板上に置 いた。

独立したパラメータとして、発振周波数 fr とプレート振動 Aの振幅を採用し た。プレートが振動していないとき、回転したディスクは10秒以内に停止してい る。一方、周波数と振幅が適切な値をとると、1分以上の連続的な回転が観察され

る。Figure 3.2は、時間間隔が1/240秒のCRモードの一連のスナップショットを示

す。振幅 Aは0.25mmとし、周波数は1Hz刻みで変化させた。CRモードは周波 数13Hzから15Hz、21Hzから27Hzで観測された。これは、CRモードが生じ る2つの周波数帯域があることを示している。これらの2つのバンドの間で16Hz から20Hzまで定常的な回転運動が生じないことを確認した。無次元振動の大き さΓ= A(2πf)2

g は13Hzと27Hzの間で1未満の値をとる。したがって、ディスク はプレート上に残り、ホッピングが起こらなくなる。0.25mmと0.5 mmの他の振 幅でも、2つの周波数領域で連続的な回転が観察されるが、0.15mmの振幅でCR モードは観察されない。0.25mmの振幅については、13,14,15Hzおよび21Hzか ら27Hzで連続的な回転が観察される。振幅が0.5mmの場合、CRモードは10Hz から14Hz、18Hzから22Hzで観測された。22Hzの周波数では、無次元化加速 度 Γ = 4π2A fr2/g は0.97の値をとるため、1に近づき、不連続な変化を引き起こ す。

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(46)

Figure 3.2: A series of snapshots of the CR mode with a time interval of 2.4ms. The frequency fr and the Aare19Hz and0.375mm, respectively.

これらの現象を調べるために、Figure 3.3(a)(b)に示すように振動板上のディス クの回転運動を考察する。

(47)

Figure 3.3: Definition of some kinematical quantities associated with a disk.

テーブルには絶対座標軸(O,W1,W2,W3)が付けられ、振動板には座標軸(O,E1,E2,E3) が付いている。我々は、半径 l と高さ 2h のディスクを考える。重心はG で示さ れ、ディスクとプレートの接点は P で示す。 P 点上のディスクの底面を囲む円 の接線は S で示す。ベクトル (O,E1,E2,E3) の方向が E1 は行 S に平行である。

このフレームは、フレームの EiE3 の周りの角度 α の上で回転させることに よって得られる。すなわちE1 = cosαE1+sinαE2E2 = −sinαE1+cosαE2E3 = E3。さらに、単位ベクトルを含むフレームを導入するei フレームを回転さ せて得られるEi角度を超えてβまわりE1Figure 3.3(b)に示すように、すなわち e2=cosβE2+sinβE3、 e3= −sinβE2+cosβE3e1 = E1 。単位ベクトルei はディスクの主軸に沿っており、単位ベクトルei角度を超えてγまわりに e2= e2

、すなわちe1 =cosγe1+sinγe3e3= −sinγe1+cosγe3e2 = e2となる。

ディスクの質量をmとすると、重心 G に対する主慣性モーメントはI1 = I3 = ml2k1I2 = ml2k2 。ここで k114 + 12lh22k212 は次元が少ないパラメータ となる。重力加速度gは負のE3方向である。位置ベクトルrtrr0Rg

Figure 3.3に示す。ベクトルrtは原点Oから接点Pへの位置ベクトルであり、以

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Figure 2.1: Starling flock [2].
Figure 2.2: Characteristic image of a nucleus in a cell [3].
Figure 2.4: Behavior of a single bolt-like particle driven by vertical vibration. (a) Photos of the bolt-like particle used in the present study; bar is 5 mm
Figure 2.5: Schematic representation of the bolt-like particles (n = 521) arranged in a circular vessel with a diameter of 197 mm, which is placed on an aluminum plate.
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参照

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