り,国政の上で最大の尊重を必要とする。」)を根拠とする「新しい権利」 として提唱され,プライバシーは民法上・憲法上の法的権利として承認さ れるに至った(2)。 2.「古典的プライバシー権」の生成 プライバシーの権利は,19世紀末のアメリカで,二人の著名な弁護士, サムエル・D・ウォーレン(Smmuel D. Warren)とルイス・D・ブランダ イス(Luis D. Brandeis)により,はじめてプライバシーという言葉が用いら れ,法的な権利(とくに民事上の権利)としてのプライバシーの権利が提 唱された(3)。 そこでは,プライバシーの権利は,「ひとりにしておいてもらう権利 (Right to be let alone)」と定義され,その後アメリカ諸州の裁判所の判例
および制定法のなかで確立した。 プライバシーの権利は,当初,イエロー・ジャーナリズム(低俗な暴露 ジャーナリズム)による個人の私生活の暴露に対し,個人の平穏な私生活 を守るための民法上の人格権として位置づけられ,不法行為上の保護(損 害賠償あるいは出版の差止め)が与えられるというものであったが,20世 紀に入り,憲法上の人権とされるに至った。 3.「現代的プライバシー権」の展開 1960年代以降,急速なコンピュータの発達により情報化社会が進展し, 政府や地方自治体などの公共部門をはじめ,企業,学校,病院などの民間 (2) プライバシーの権利の生成と歴史的展開および内容について,内藤光博「高度 情報化社会におけるプライバシーの権利論」法学新報108巻3号(清水睦先生退職 記念号,2001年),同「情報社会と個人情報保護」梅本吉彦編著『情報社会と情報 倫理』(丸善株式会社,2002年)57頁以下参照。
部門などのあらゆる組織にコンピュータが導入された。現在のコンピュー タは,大量の個人情報を蓄積・保存・伝播することができる。そしてあら ゆる組織がデータ・バンク(個人データの銀行)となり,さらに通信回線 を通じてコンピュータがネットワーク化することによって個人情報が簡単 に伝達されることにより,本来自分のものである個人情報が,どこに,ど のような情報が蓄積され,誰によって,どのように使われているか,自分 では分からない状況が生まれた。そこでは,ジャーナリズムとの関係とは 異なる形で,プライバシー侵害の危険が生まれたのである。 そこで,プライバシーの権利の再定義の必要に迫られた。1970年代にア メリカの憲法学者アラン・F・ウエスティン(Alan F. Westin)は,プライバ シー権を再定義し,「個人が,自己に関する情報をいつ,どのように,ま た,どの程度に他人に伝えるかを自ら決定できる権利(4)」,いわゆる「自 己情報コントロール権」(情報プライバシー権)であるとした。この「自 己情報コントロール権」論のもとでは,プライバシーの権利を,これまで の個人情報の秘匿や平穏な個人生活を侵されない権利といった自由権的な 権利としてのみならず,積極的に自己の情報をみずから伝えること(ある いは伝えないこと)を決定する権利として理解され,政府に個人情報を保 護するための法律(個人情報保護法)を作ることにより,個人情報を保護 するための請求権的な側面を有する権利と考えられている。 国際的にも,1980年に OECD が,個人情報の保護に関する「OECD8 原則」を公表し,「自己情報コントロール権」に基づく諸原則を明らかに した。 日本の憲法学でも,個人の尊厳に基礎を置く人格的生存にかかわる権利 として,憲法13条の規定する「個人の尊重」と「幸福追求権」を根拠に, 「新しい権利」としてプライバシーの権利を位置づけ,個人の自律性を確