九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ビスベンゾチエニルエテンのフォトクロミズムに関 する研究
内田, 欣吾
https://doi.org/10.11501/3111025
出版情報:Kyushu University, 1995, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
第4章 黄色に着色するジチエニルエテン
4. 1 序
近年、 非常に多くのフォトクロミック化合物が報告されているが、紫外光照射によ って黄色に着色するものは非常に稀である。 最近、 ある種のクロメン類1)やピラジ ン環をもっスピロナフトオキサジン2)が黄色に着色する例が 報告された。 フォトク ロミック化合物をフルカラー表示材料に応用しようと する際には黄色に着色する化 合物の開発が必須である。
ヘテロ環を有するジアリールエテンは、光照射により可逆的な電子環状反応により 更に長波長側に吸収をもっ閉環体を生成する。 3 - 9)赤、青、緑に着色するジアリー ルマレイン酸無水物、ジアリールペルフルオロシクロペンテン類は既に合成されてい る。 また、 800nm域まで吸収をもっジアリールエテン類も合成されている。 1 0, 1 1) この章では、uv照射により黄色に着色するジアリールペルフルオロシクロペンテン
とそのフォトクロミック反応について述べる。 チオフェン環上のエテン部との結合 位置がジアリールエテンのフォトクロミズムに及ぼす効果についても考察した。
4. 2 ジチエニルエテンの合成
この章で報告するジチエニルエテンは、 1,2-ビス(3,5-ジメチルチオフェンー2-イル) ペルフルオロシクロペンテン(45a)� 1-(2ヲ4-ジメチルチオフェンー3-イノレ)-2-(3,5-ジメチ ルチオフェンー2・イノレ)ペルフルオロシクロペンテン(46a)、 1,2・ビス(2,4-ジメチルチオ フェンふイノレ)ペルフルオロシクロペンテン(47a)の3つである(Fig.4-1)。 これらは、
チオフェン環上のペルフルオロシクロペンテン環との結合位置が異なる。 (45a)は2 章で述べたビスベンゾチエニルエテン誘導体等と異なり、エテン部とはチオフェン環 の2位(α位)が結合している。 (47a)は、 従来通りチオフェン環の3位(β位〉
が結合している。 (46a)は、分子の半分が(45a)の構造で、残り半分が(47a)の構造を 持ち、 いわば2つのジチエニルエテン(45a)と(47a)の中間の構造である。
1,2-ビス(3,5・ジメチルチオフェンー2-イノレ)ペルフルオロシクロペンテン(45a)は、次 のようにして合成した(Scheme4 -1)。市販の3-メチルチオフェンをテトラメチルエチ レンジアミン(T恥伍DA)の存在下、 乾燥エーテル中、 n-ブチルリチウムを作用させ、
2,4-ジメチルチオフェン(48)を合成した。これにn-ブチルリチウムを作用させた後、
半当量 のペル フルオロシクロペンテンを加えて化合物(45a)を合成した。 1司化合物 (47a)は�3-フ。ロモー2,4-ジメチルチオフェン(49)にn-ブチルリチウムを作用させた後、
半当量のペルフルオロシクロペンテンを加えて合成した。3-ブロモー2,4-ジメチルチオ フェンは、 2,4・ジメチルチオフェンを臭素化し、 2,4-ジブロモー3,5-ジメチルチオフェ ン(50)とし、 これに当量のn-ブチルリチウムを反応させた後、水を加えて合成した。
チオフェン環の2位へのリチオ化は、 エーテル溶液中でn-ブチルリチウムを加えて
53
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Fig. 4-1 Dithienylethenes.
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Scheme 4
-
155
1時間程加熱還流するだけで達成されたが 、 3位への リチオ化は、 3位へいったんハ ロゲンを導入後、 これにTHF中-60 ocでn-ブチルリチウムを作用させて行った。
(46a)は、2,4-ジメチルチオフェンにn-ブチルリチウムを作用させた後、 当量の ペル フルオロシクロペンテンを加えて合成した3,5-ジメチルチオフェンー2-イルペルフル オロシクロペンテン(51)を3-ブロモー2,4-ジメチルチオフェンにn- ブチルリチウムを 作用させた溶液に添加して合成した。
4. 3
ジチエニルエテンのフォトクロミック反応
Fig. 4-2 に化合物45a のヘキサン溶液(4.8 X 10-5 M-lcm-l)�こ紫外光を照射した 時の スペクトル変化を示した。 空気存在下、366nmの光を照射すると、336nmの吸 収(ε;1.3 X 104 M-1cm-1)が減少し、425nm (ε; 5.8 X 104 M-1cm-1)に新たな吸収 が現れ、 溶液は黄色に 着色した。 この吸収帯は、 閉環体45b に由来する。 紫外線を 照射すると、lHNMRに は1.39,2.02,5.29 ppmに新たな シクマナルが現れた。 これらは、
閉環体の2つの メチル基とオレフィンプロトンに帰属できた。 これらの lH Nl\侭シ グナルと新たな可視域の吸収帯は、440nmよりも長波長の光を照射すると消失した。
366nm光照射下での光定常状態、において、閉環体と開環体の比は77:23 であった。閉 環反応と開環反応の 反応量子収率は、 それぞれ0.40,0.58 であった。 これらの 量子収 率は、ヘキサンを溶媒に用いた時とメタノールを溶媒に用いた時とで同様の値を示し、
溶媒の極性に 影響を受けなかった。
一方、 化合物(47a)のヘキサン溶液に288nmの光を照射すると、 溶液は赤く(えmax' 534 nm, ε: 5.0 X 103 M-1cm-1)着色した(Fig. 4-4 )。 この 赤色は、 閉環体47bに起因す
る。7)閉環体の吸収極大波長は、 チオフェン環とエテン部の 置換位置に 大きく影響さ れた。
チオフェン環がその2位でエテン部に結合している誘導体の閉環体の吸収スペク トルは、チオフェン環がその3位でエテン部に結合しているジチエニルエテン閉環体 と比べて短波長化した。 この間環体45b で観測されたブルーシフトは、 この閉環体 のπ共役は、 シクロヘキサジエン構造に局在していることを示唆している。閉環する と きに生じる2つのSP3炭素は、 ベンゾ[2,1-b: 5,6-b']チオフェン構造のπ共役を切断 する。 π共役が2つの チエニル部に広がって、 赤く着色した47b とは大きく異なっ ている。
方、 開環体45aは、47aに比べて長波長側に吸収をもっ。 この レッドシフトは、
開環体のπ共役が分子全体に広がっていることを示している。 開環体47a では、 π 共役はヘキサトリエン構造に局在化しているのに対し、45aではπ共役はデカペンタ エン構造を持っている。
開環体46aは、45aと47aのハイブリッド構造であ る。開環体46aはその吸収帯 の極大波長を312nm(ε; 1.2 X 104 M-1 cm-引こ示すO この値は、45aの336nmと47a
_..・L
の234nmの聞に位置する。334nmの光を照射すると、無色の46aのヘキサン溶液は 、 オレンジ色を呈するようになり、 新たな吸収が469nmに現れる(Fig. 4-3)0 46 bの吸 収帯も45bと47bの聞に存在する。46bには、 ヘキサトリエン構造の共役があるが、
これは45bのブタジエン構造よりも長く、47b のオクタトリエン構造よりも短い。
このように、ジチエニルエテンの開環体と閉環体の吸収帯の位置は、それらのπ共役 の長さを考慮することにより説明できる。
ジチエニルエテン46aと47aの閉環反応の量子収率は、 それぞれ0.28, 0.21であ った。 ジチエニルエテン45aの収率は、0.40でこれらより大きかったo 2-チエニル 環を持つ45bと46bの開環反応の量子収率は、47bのそれより4倍近くも大きかっ た。これらの結果は、閉環体のシクロヘキサジエン構造に共役が局在している方が開 環反応の量子収率を増加するのに有効であることを示している。これらの量子収率と
開環体、 間環体の吸収極大波長、 それらの吸光係数は、 Table 4-1にまとめた。
閉環体45b-4 7bの熱安定性は、脱気下、ヘプタン溶液中、80 ocで測定した。500 時間加熱後のこれら閉環体の吸光度は、 ほとんど変わらなかった(Fig.4δ)。これらジ チエニルペルフルオロ シクロペンテン類の閉環体45b-47bは、チエニル環の置換位 置にかかわらず熱的に安定であった。 ロ)
57
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nmFig. ι2 Absorption spectra of hexane solution of
45
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8 x10-5 M) (一一一一), 45b ( ) ,
and出e photostationary state(ーーーーーー一)
upon 366 nm light irradiation.
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Fig. 4-3 Absorption spectra of hexane solution of
46a (4.8
x10-5 M) (一一一一), 46b ( ) ,
and出e photostationary state(一ーー一ーー一-)
upon 334 nm light irradiation.
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Table 4-1. Absorption maxima and their coefficients of the open-ring and closed-ring forms of dithieny lethenes, and the quan旬m yields in hexane.
45a 46a 47a
λmax
/nm(εmax) φa→b λπlax
/nm(εmax) φb→a
336 (1.3x104) 0.40a (366
nm)b 45b425 (5.8x103) 0.58a (425
nm)
b312 (1.2x104) 0.28a (340
nm)
b 46b 469(4.5x103) 0.57a (470 nm)b
234 (1.3x104) 0.21 a (280
nm)
b 47b534 (5.0x103) 0.13a (
492 nm)
ba
quanωm yields.b
irradiated wavelengths...-_
4. 4 実験
2,4-ジメチルチオフェン(48)
窒素雰囲気下、 乾燥エーテル 150 ml に3-メチルチオフェン 25 g (0.26 mol), テトラ メチルエチレンジアミン(TMEDA) 41.5 ml (0.28 mol)を溶解し、 これを氷浴上でo OCに
冷却した。 これに1.6 N n-BuLi ヘキサン溶液 172 ml (0.28 mol)を徐々に加え、 滴下終 了後2時間室温で撹排した。 再び氷浴上でo OCに 冷却した後、 ヨウ化メチル 17.2 ml (0.28 mol)を滴下し、 o OCで2時間撹枠を続け、 さらに室温で終夜撹詳した。 この反 応混合物に水を加えて有機層を分離した。 水層をジエチルエーテルで2回抽出し、有 機層と合わせて、 希塩酸、 水で順次洗浄し、 無水硫酸マクゃネシウム上で乾燥した。溶 媒のエーテルを留去後、蒸留精製に より 2,4-ジメチルチオフェン(48) 23.3 g を得た(収 率82%)。
48: colorless oil; bp 128 - 130oC. MS (m /今112 (M+); lH N民侭(CDC13) 2.18 (3H, s, Me),
2.38 (3H, s, Me), 6.48 (lH, s, aromatic proton), 6.50 (lH, s, aromatic proton).
1, 2-ビス(3,5-ジメチルー2-チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(45a) 100 mlの乾燥エーテルに2,4・ジメチルチオフェン 48(7.7 g, 69 mmol)を溶かした溶 液に窒素雰囲気下、 n-フeチルリチウム(15 % ヘキサン溶液, 45 ml, 72 mmol)を室温で‘
加えた。 その後、 反応混合物を1時間加熱還流した。これを-30 oCまで冷却した後、
4.6 ml(34 mmol)のペルフルオロシクロペンテンを加えた。反応混合物に希塩酸を加え た後、 エーテルで抽出した。無水硫酸マグネシウムでエーテル溶液を乾燥後、固形物 を11差別して 除き、エーテルを留去した。粗生成物はシリカゲルクロマトグラフィー(ヘ キサン)により分離精製し、 6.7 gの(45a)を得た(収率50 %)。
45a: pale yellow prisms; mp 129 - 130oC. Anal. Calcd for C17H14F6S2: C, 51.51; H, 3.53.
Found: C, 51.31; H, 3.66. MS (m /z) 396 (M+); lH NMR (CDC�) 1. 72 (6H, s, Me x 2), 2.44 (6H, s, Me x 2), 6.51 (2H, s, aromatic protons).
2,4-ジプロモ-3,5-ジメチルチオフェン(50)
2,4・ジメチルチオフェン(48) 22.0 g (0.11 mol)を酢酸 200 ml に溶かし、 これを氷浴 にて 5 oC位に冷却した。 これに臭素 35 g (0.22 mol)をゆっくり滴下し、 室温に戻しな がら終夜撹排した。この溶液にクロロホルムを加えて 2回抽出した。有機層を合わせ、
これを炭酸水素ナトリウム 水溶液で-数回洗浄して、有機層中の酢酸を除去し、 続いて チオ硫酸ナトリウム 水溶液で、2回洗浄して残存する臭素を除去した。 最後 に水洗し た後、 無水硫酸マグネシウムでクロロホルム溶液を乾燥後、 固形物を鴻別して 除き、
溶媒を留去した。 残さをシリカゲルクロマトグラフィーによりヘキサンを展開溶媒 に用いて精製し、 17.7 g の 2,4-ジブロモー3,5-ジメチルチオ フェン(50)を得 た(収率
63
61%)。
50 ; pale yellow oil; Anal. Calcd for C6H6Br2S: C, 26.69; H, 2.24. Found: C, 26.98; H, 2.21.
MS (m /z) 268, 270, 272 (M+); lH NMR (CDC13) 2.17 (3H, s, Me)ヲ2.34 (3H, s, Mc).
3-プロモー2,4-ジメチルチオフェン(49)
2,4-ジブロモー3,5-ジメチルチオフェン(50) 2.85 g (14.9 mmol)を無水 エーテル 25 ml に溶かし、 これを-60 ocに冷却した。これに1.6 Nのn - BuLiヘキサン 溶液 10凶(16 mmol)を滴下し、 2時間この温度で撹排した。 これに水を加えて反応を止め、 エーテ ル抽出した。 エーテル抽出液は、 水洗後、硫酸マクマネシウムで乾燥させた。硫酸マグ、
ネシウムを鴻過して除き、エーテルを留去して得た残さをシリカゲルクロマトグラフ ィーによりヘキサンを展開溶媒に用いて精製し、1.76gの 3-ジブロモー2,4-ジメチルチ オフェン(49)を得た(収率92%)。
49 ; pale yellow oil; Anal. Calcd for C6H7BrS: C, 37.71; H, 3.69. Found: C, 37.78; H, 3.53.
MS(m/坊190,192 (M+); lH NMR (CDC13) 2.19 (3H, s, Me), 2.39 (3H, s, Me), 6.70 (1H, s,
aromatic proton).
(3,5-ジメチルチオフェンー2-イル)ペルフルオロシクロペンテン(51)
化合物 45a の合成条件で当量のペルフルオロシクロペンテンを反応させて 75 %の 収率で(3ヲテジメチルチオフェンー2・イノレ)ペルフルオロシクロペンテン(51)を合成した。
51 ; pale yellow oil; Anal. Calcd for CUH7F7S: C, 43.42; H, 2.30. Found: C, 43.58; H, 2.36.
MS (m / z) 304 (M+); lH NMR (CDC13) 2.20 (3H, s, Mの, 2.49 (3H, s, Me), 6.67 (1H, s,
aromatic proton).
1, 2-ピス(2,4-ジメチルチオフェンー3-イル) ペルフ ル オロ シ クロペンテン (47a)
3・ジブロモー2,4-ジメチルチオフェン(49) 1.00 g(5.24 mmol)を窒素雰囲気下、 無水 THF に溶解し、 -60 ocに冷却した。 これに1.6Nのn-BuLiヘキサン 溶液(3.5 ml, 5.6 mmol)を滴下し、 1時間撹枠後、 0.5 gのペルフルオロシクロペンテン(2.4 mmol)を2
口lに分けて加えた。-60 oc で3時間撹排した後、7Jくを加えて反応を止めた。 エーテル で反応混合物を抽出して、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグ、ネシウム を鴻過して除き、エーテルを留去して得た残さをシリカゲルクロマトグラフィーによ りヘキサンを展開溶媒に用いて精製し、 0.58 gの 1,2・ビス(2,4-ジメチルチオフェンー 3-イノレ)ペルフルオロシクロペンテン(47a)を得た(収率56 %)。
47a: colorless prisms; mp 132 - 1340C. Anal. Calcd for C1ß14F6S2: C, 51.51; H, 3.53.
Found: C, 51.46; H, 3.62. MS (m /z) 396 (M+); lH N服(CDC�) 2.04 (6H, s, Me x 2), 2.29 (6H, s, Me x 2), 6.70 (2H, sヲaromaticprotons).
1-(2,4-ジメチルチオフェン-3-イル)-2-(3,5-ジメチル チオフェンー2-イル) ペルフルオロシクロペンテン(46a)
子ブロモ久4-ジメチルチオフェンに n-フ、チルリチウムを作用させて生成した3-リ チオー2,4-ジメチルチオフェン(化合物(47a)の合成参照)と(51)を反応させて1-(2,4-ジ
メチルチオフェンー3-イノレ)-2-(3,テジメチルチオフェンー2-イノレ)ペルフルオロシクロペ ンテン(46a)を60%の収率で得た。
46a: mp 35・370C.; Anal. Cal吋for C1.ß14F6S2: C, 51.51; H, 3.53. Found: C, 51.47; H,
3.64. MS (m /z) 396 (M+); lH NMR (CDC�) 1.99 (3H, sヲMe),2.00 (3H, s, Me), 2.25 (3H,
s, Me), 2.37 (3H, s, Me), 6.50 (lH, s, aromatic proton), 6.77 (lH, s, aromatic proton).
4. 5 まとめ
1. uv光照射により黄色に着色するジアリールエテンを合成した。
2. ジチエニルペルフルオロシクロペンテンのチオフェン環上のエテン部との結合 位置を変えると吸収帯の位置と 反応量子収率が大きく変化した。
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第5章 ジチエニルエテンの置換基効果ー吸光係数の増大一
5. 1 序
第2章で述べたように、 ジアリールエテンは、 熱安定性、 繰り返し耐久性をもち、
光記録材料への応用が期待されている。1-6)しかし、その代表的な化合物である2,3・
ビス(2, 4ヲテトリメチル チオフェン-3-イノレ)マレイン酸無水物の吸光係数は開環体で 6800(335 nm)、 閉環体で5200(560 nm)であり、4) チオフェン環にベンゼン環が縮環し
た2,3 - ビス(2-メチルベンゾ[b]チオフェンふイノレ)マレイン酸無水物は、共役が延びて しるにもかかわらずその吸光係数は開環体4で6800(417 nm)、 閉環体5で8700(544 nm)である。6) フォトクロミック分子を光記録材料に用いる場合には、薄膜化して利 用されるが、 その際大きな吸光係数をもつことが必須となる。友田らは、オキサゾイ ルフルギドのオキサゾール環の2位やチ エニルフルギドのチオフェン環の5位にp
N,N-ジメチルスチリル基を導入することに より、 その閉環体の吸光係数を3、 4倍 に増大させることに成功している。7)このような電子供与性クロモフォアの導入は吸 光係数を増大させるための分子設計として一般的である。8)著者らはまずジ0・チエ ニル)エテンのチオフェン環の5位にフェニル基等の置換基を導入して閉環体の共役 を延ばし、さらにフェニル基のパラ位にさらに置換基を導入し、吸光係数を増大させ ることをめざした。 9) 用いたビスチエニルエテン誘導体の構造を示す。
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5. 2 p-置換フェニル基を持つジチエニルエテン類の合成
フェニル基、p-メトキシフェニル基、p- N,N-ジエチルアミノフェニル基、p-シアノ フェニル基、をジチエニルエテンのそれぞれのチオフェン環の5位に持つ化合物52、
問、54、55をScheme5 - 1に従って合成した。 まず、52を代表例として説明する。
テメチルチオフェンをTMEDA存在下、IトBuLiヘキサン溶液を添加し、5位をリチオ 化した後、ヨウ化メチルを加えて、2,4 - ジメチルチオフェン48を得た。 この化合物 のα位を同様にリチオ化後、塩化亜鉛エーテル溶液を加え、トランスメチレーション を行った。 生成したチエニル亜鉛 塩化物に Pd(PPh)4(0)触媒の存在下、ヨードベンゼ ンを作用させて、フェニルチオフェンを合成した。ヨウ素ーヨウ素酸を用いてチオフ ェン環の残るβ位をヨウ素化した。 これに低温でn-BuLiヘキサン溶液を加え、ハロ ゲンーリチウム交換を行い、続いて0.5等量のペルフルオロシクロペンテンを作用さ せて、目的化合物であるビス(5-フェニノレー3- チエニノレ)ペルフルオロシクロペンテン ( 52a)を合成した。ヨードベンゼンに代えて p-ヨードアニソール、p-ヨード-N,N- ジエ チルアニリン、p-ブロモベンゾニトリルを使用することにより、他の誘導体も同様に 合成した。
5. 3 p-置換フェニル基を持つジチエニルエテン類のフォトクロミック反応
5. 3. 1 吸収極大波長と吸光係数
ビス(2,4-ジメチルチオフェンー3-イノレ)ペルフルオロシクロペンテン47a は、ヘキサ ン溶液中 では234nm(ε, 1.3 X 104 M-1 cm-1)に吸収極大を持つ。 280nm 光を照射す ると、開環体は534 nm(ε, 5 .0 X 103 M-lcm-l)�こ吸収極大を持つ閉環体47bに変換す る(第4章)。 着色体の吸光係数は小さい。 吸光係数を増大する最も有効な方法は、分 子に電子に富む発色団を導入しポリエン共役鎖を延ばすこと である。8)最初にチオフ ェン環の5,5'位の水素原子をフェニル基に置き換えた。 9)
Fig. 5-1 にビス(2,4-ジメチルー5-フェニルチオフェン-3-イノレ)ペルフルオロシクロペ ンテン 52a のヘキサン溶液中の吸収スペクトル変化を示す。化合物52a(3.3x 10-5附 を含む無色のヘキサン溶液に313nm光を照射すると、溶液は青紫に着色した。 この 時の吸収極大は、562nm に観察された。 吸収極大波長での吸光係数は、1.1 X 104 M-1 cm-1となり、これは47bの2倍の大きさ であった。 フェニル基を導入すること は吸光係数を増大するのに効果的であった。 その青紫色の着色は可視光(え>550nm) を照射すると消失した。
さらに吸光係数を増大させるために、フェニル環の p-位に電子供与基や電子吸引 基の導入を試みた。 フェニル基の p-位にメトキシ基、ジエチルアミノ基、シアノ基 を持つ化合物53-55をさらに合成した。化合物53-55のフォトクロミック特性は、
化合物52の特性に類似していた。 これらの化合物の溶液に紫外光(313 nm)を照射す ると青色に発色し、この色は可視光(え>550nm)照射により消失した。 着色した異性
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Table 5-1 Absorption Characteristics and Photoreactivity of Dithienylethenes
quantum yield compd εj104M-1Cm-1a cyclization r .工 n σo o p e n ・1ム n σb
conv.jおb
a b 220C 800C
47 1 .3 0.50 0.21 0.13 62
(234 nm)(534 nm)
52 2.8 1 . 1 0.46 0.015 0.037 79
(262 nm)(562 nm)
53 3.3 1 .4 0.48 0.0080 0.018 88
(270 nm)(597 nm)
54 4.0 1 . 8 0.37 0.0025 0.010 >99
(305 nm)(597 nm)
55 3.0 1 . 1 0.50 0.018 0.034 98
(300 nm)(570 nm)
a Absorption coefficient at the absorption maXlmum
b Conversion from the open- to the closed-ring forms in the
体は、安定でHPLCによって分取することができる。 Fig. 5-3,4,5に閉環体53 b, 54b,
55 bの吸 収スペクトルを示した。 これらのスペクトルからわかるように電子供与性 が増すと吸収極大波長は長波長化し、 吸光係数は増大した。電子吸引性基であるシア ノ基は、 吸収極大波長を長波長化させたが、 吸光係数は増大しなかった。 54b の吸 光係数は、47bの約3.7倍大きい。Table 5-1に吸 収極大波長と吸光係数をまとめて示
した。
5. 3. 2 量子収率
化合物47,52 -55 の閉環反応と開環反応の量子収率は、 室温下、 ヘキサン中で測 定した。 Table 5-1に示したように閉環反応と開環反応の量子収率は共に置換基の影 響を受ける。 化合物52 と53の閉環反応の量子収率はそれぞれ0.46と0.48であっ た。 ジアリールマレイン酸無水物の値に比べて、 これらの値はず、っと大きいo M)化 合物54の様に強力な電子供与性基であるジエチルアミノ基がフェニル基のP位を置 換した場合には、その量子収率はいくらか減少している。電子吸引性のシアノ基で置 換すると閉環反応の量子収率はもとにもどり、その収率は0.50程度の値が得られた。
ジアリールペルフルオロシクロペンテン類には2つのコンフォメーションがある (Fig. 5-5)0 1つは2つの芳香環が鏡像の関係にあるもので、 もう1つはこれらがC 2
対称の関係にあるもので、光閉環反応はC 2対象コンフォメーションからのみ許容で ある。 10) 2つのコンフォメーションの聞には平衡関係があり、 その比はNMRを測 定することによって見積もられる。 Fig.5- 6に52aのメチルプロトンを示した。2.09 と2.36ppmに2つのシグナルが観測され、 これらはすでに第2章で述べたようにそ れぞれanti-parallelとparallelコンフォーマーのチオフェン環の2、 3位のメチルプロ トンと帰属される。6) 2つのシグナルの強度比からその2つのコンフォメーションは ほぼ等しく存在することが示された。N民1Rで決定した 52a-55a の2つのコンフォ メーションの比を Table5-2に示した。
2つのコンフォメーションは、 1 : 1で存在する。2つのコンフォメーション聞の 変換速度は、 光励起状態、の寿命よりす.っと小さいと考えられるから、 6)光励起された 分子のうちanti-parallelコンフォーマーのみが閉環する可能性をもっ。 paraUelコンフ ォーマーには閉環体を生成する可能性はない。これは、 最大の量子収率は0.5である ことを意味する。 52a, 53a, 55aの量子収率は、 Table 5- 1に示したようにその最大 値に非常に近い値である。 これらの化合物では光励起した anti-parallel コンフォーマ ーは、 ほとんど全て閉環体に変換する。 つまり、 実際に量子収率は、 ほとんど 1.0と し1うことになる。
開環反応の量子収率は、電子供与性基にす‘っと強く影響を受ける。フェニル基をチ オフェン環の 5, 5'位に導入すると開環反応の量子収率は0.13から0.015にまで減少
した。この量子収率は、 フェニル環のp位に電子供与基が置換するとさらに減少した。
マ5
R
R Me
antl・parallel
R
F2
ユ/
F2 F2
R R
closed-rlng form
Fig. 5-5 Anti-parallel and parallel conformations of Bis
thieny lethenes.
parallel R
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。Emu-∞戸山
σ、
Table 5-2 Conformation ratio in the ground state
∞mpound parallel anti -parallel
52a 52 48
53a 52 48
54a 52 48
55a 50 50
5 4bの開環反応の量子収率は、52bの1/6であった。 しかし、55bの量チ収半は、
52bとほぼ同じであった。電子吸引性基であるシアノ基は、開環反応の量子収不には ほとんど影響を与えなかった。
開環体から閉環体への光平衡状態で‘の変換率(%)は、 その光照射条件下で次の比に 依存する。
ε札 否氏 x
100変換率(%)二
ξb をb 十ε札金ひ
ここで、 εa' εbは各々光照射波長での開環体a と閉環体bの吸光係数であるo ø a とゆbは、閉環反応と開環反応の量子収率を表す。 量子収率の比ゆa/φbが大きい時、
変換率は増大する。 化合物54では、313nmの光を照射すると変換率がほぼ100 %に なるのが観察された。
Table 5-1 �こ示すように、開環反応の量子収率は、反応温度に依存することが見出さ れた。 80 ocでの化合物54の量子収率は、 22 ocでの値の4倍もある。 この量子収率 の高さは、 熱的な戻り反応(開環反応)によるものではない。 というのは、 この閉環体 は熱的に安定で100 ocでも開環体に戻らなし、からである。
47bの開環反応の量子収率は、これらフェニル基を置換基に持つ化合物の開環反応 の量子収率に比べてす、っと大きい。フェニル環へπ共役が延びると収率が減少するよ うに見える。 より高い温度では、π共役の延長は、 フェニル環が回転することによっ てある程度抑制されていると考えられる。 これが量子収率を増加させていると考え られる。 この説明は、高い温度では閉環体の吸収極大波長がフ守ルーシフトすることか らも支持される。 トルエン中、22 ocで61 8nmであった54bの吸収極大波長が、80 oc では605nmにシフトした(Fig. 5-7)。 励起状態が不安定化したことが量子収率の増大 をもたらしたと考えられる。
5. 3. 3
プロトン化の効果
一多
色系
一化合物54のジエチルアミノ基がプロトン化された時、その電子供与性は失われる。
プロトン化は、強酸(または5郎、塩基)を加えることで可逆的に引き起こすことができ る。 このように化学的に54の色と反応性を制御することが期待される(Scheme5-2)。
Fig.5-8に酢酸エチル中でトリフルオロ酢酸を添加した時としない時の54bの吸収ス ペクトルを示した。 30倍モルのトリフルオロ酢酸を添加すると、閉環体の吸収極大 波長は618nmから5 8 2 nmまでシフトし、 εの値は中性のときの55 %にまで減少し た。 この時の吸光係数は、 フェニル基上に置換基を持たない52b の吸光係数とほぼ 等しい。トリエチルアミンのような塩基を過剰量加えることによって吸収強度は回復 することから、 このように吸光係数が減少したのは化合物が分解したためではない。
プロトン化によって吸収特性だけでなく光反応性も変化した。閉環反応と開環反応
79
の量子収率は共に増加し、開環反応の量子収率は4倍ほどになった。 これらの結果は 以前にのべた “電子供与性基は、 吸光係数を増大させ開環反応の量子収率を下げる"
としづ結論を支持する。
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83
V
5. 4
実験
吸収スペクトルは、 目立U-3410スペクトルメーターで測定した。IHNMRは、Varian 社製Gemini-200(200 1\但z)で測定した。 量子収率 はヘキサン中のジアリールエテン の異性化速度とトルエン中のフリルフルギドの異性化速度を比較して求めた。 ll,12)
サンプルは脱気していない。
3, 5-ジメチル-2-フェニルチオフェン(59a) .
2ヲ4・ジメチルチオフェン48を2.24 g (20.0 mmol), N,N,N',N',ーテトラメチノレエチレ ン ジアミン(TEお伍D)を2.55 g (22.0 mmol), 含む20 mlのエー テル溶液に13.7 ml (1.6 N, 22.0 mmol)のn- フゃチルリチウム ヘキサン 溶液を窒素雰囲気下、 室温で滴下し、
これをその温度で12時間撹排した。 その後、20 ml (1.0 M, 20 mmol)の塩化亜鉛エー テル溶液を加え、 4時間撹持した。別の乾燥した反応容器に、 4.08 g (20.0 mmol)の ヨードベンゼンと231 mg のテト ラキス( トリ フェニルホスフィン)パラジウム (0) を溶解した 20凶の無水THFを撹鉾しておき、 これに先のエーテル 溶液を室温で滴 下した。 反応混合物 は 50 ocで20 時間加熱撹排した 後、 室温で1晩撹排しておい た。 水を加えて反応を止め、反応混合物 は エーテルで抽出した。この有機層は水で、よ
く洗浄し、 これを無水 硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを鴻別後、 鴻液 から溶媒を留去した。 残さを、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン〉により
精製して3.66 gの3,トジメチルー2・フェニルチオフェン(59a)を得た(収率97 %)。
59a : 1 H NMR (200附Iz, CDC13., 1MS)δ2.22 (3H, s, 5-Me), 2.40 (3H, s, 3-Me),
6.48 (1H, s, 4-H), 7.09・7.38(5H, m,
Ph)
; MS m / z 188 (M+). Anal. Calcd for C1JI12S: C,76.55; H, 6.42. F ound: C, 76.49; H,6.60.
3-ヨード-2,4-ジメチル-5-フェニルチオフェン(60a) .
1.83 g (9.73 mmol)の化合物 (59a)、6.3凶の酢酸 、6.3 mlの四塩化炭 素の混合物に ヨウ素酸水 溶液 (0.370 g (2.10 mmol)のヨウ素酸を1 mlの水に 溶かしたもの)、と 0.850 g (3.35 mmol)のヨウ素を加え、 この溶液を2時間加熱還流した。反応終了後、
室温まで戻した反応混合物を氷水にあけ、 クロ ロ ホルムで抽出した。 有機層は、炭酸 ソータゃ水溶液 、 チオ硫酸ソーダ水溶液 、 水を用いて順次洗浄し、 その後、無水 硫酸マ
グネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを鴻別後、 鴻液から溶媒を留去した。 残さ を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン〉により精製して2.36 gの3- ヨー ド
ー2,4-ジメチルふフェニルチオフェン(60a)を得た(収率97 %)。
60a: 1 H NMR (200附fz, CDC�ヲ1MS)δ2.27(3H, S, 5-Me), 2.43 (3H, S, 3-Me),
7.36 (5H, m, Ph); MS m /z 315 (M+). Anal. Calcd for C12HllIS: C, 45.87; H, 3.53. Found:
C, 46.04; Hヲ3.54.
1, 2-ビス(2,4-ジメチル-5-フェニルチオフェン-3-イル)ペルフルオロシクロ ペンテン (52a ).
化合物 60a を2.08 g (6.60 rnmol)含む25 mlのテトラヒドロフラン(TH F) 溶液 に6.21 ml (1.6 N, 9.94 mmol)のn-フ、、チルリチウムヘキサン溶液を- 60 ocで滴下し、
これをその温度で1時間撹祥した。 その後、0.222 ml (1. 65 rnmol)のペルフルオロシ クロペンテンを- 60 ocで2度滴下し(全部で0.444 ml) 、さらに この混度で終夜撹持 した。希塩酸を加えて反応を止め、反応混合物はエーテルで抽出した。 この有機層は 水で、よく洗浄し、これを無水硫酸マグ、ネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを鴻別後、
鴻液から溶媒を留去した。残さを、シリ カゲルクロマトグラフィー(ヘキサン〉によ り精製して948 mgの1,2-ビス(2,4-ジメチル-5-フェニルチオフェンー3・イノレ〉ペルフ ルオロシクロ ペンテン(52a)を白色結晶と して得た(収率52 %)。
52a : mp 136 - 137 oC; 1 H NMR (200時Iz, CDC�., 1MS)δ2.09 (6H, S, 2-Me x 2),
2.36 (6H, S, 4-Me x 2), 7.35 (10Hヲ m, Ph x 2); MS m / z 548 (M+). Anal. Calcd for C29H22F6S2: C, 63.49; H, 4.04. Found: C, 63.58; H,4.28.
3, 5-ジメチル-2-(4-メトキシフェニル)チオフェン(59b).
2,4 -ジメチルチオフェン(48)(1.12 g , 10.0 mmol)と 4-ヨードアニソール(58b) (2.34 g , 10.0 mmol)とのカップリング 反応は、化合物(59a)の合成に従って行った。
粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロフォルム= 1/1) により精製して1.99 gの3,5 -ジメチルー2・(4-メトキシフェニノレ)フェニルチオフェン (59b)を得た(収率91 %)。
59b : 1 H NMR (200阻z, CDC13., 1MS)δ2.22 (3H, S, 5-Me), 2.40 (3H, S, 3拍),
3.83 (3H, S, MeO) , 6.48 (1H, S, 4 - H), 7.09 ・ 7.38(4H, m, Ph) ; MS m / z288 (M+). Anal.
Calcd for C13H140S: C, 71.52; H, 6.46. Found: C, 71.47; H,6.57.
3- ヨー ド-2,4-ジメチルー5-(4-メトキシフェニル)チオフェン (60b).
化合物(59b) (800 mg , 9.73 rnmol) を、 化合物(60a)の合成に従ってヨウ素化した。
粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム= 3/ 1)に より精製して900 mg の3-ヨードー2,4・ジメチル-5-(4-メトキシフェニノレ)チオフェン (60b) を得た(収率71 %)。
60b : 1 H N恥侭(200悶Izヲ CDC13.,刊1S)δ 2.23 (3H, S, 5-Me), 2.44 (3H, S, 3-Me),
3.83 (3H, S, MeO), 7.25 - 7.36 (4Hヲm, Ph) ; MS m / z 344 (M+). Anal. Calcd for C13H130IS:
C, 45.36; H, 3.81. Found: Cヲ45.89;H,3.91.
85
1,2-ビス[2,4-ジメチルー5-(4-メトキシフェニル)チオフェンー3-イル]ペル フルオロシクロペンテン(53a).
化合物60b (3.44 g , 10.0 mmol)と 、0.671 ml (5.00 mmol)のペルフルオロシクロペ ンテンを化合物52aの合成時と同様に反応させた。 粗生成物を、 シリカゲルクロ
マトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)により精製して1.40 gの1,2・
ビス(2,4-ジメチルー5-(4-メトキシフェニノレ)チオフェンー3-イノレ) ペルフルオロシクロペ ンテン(53a) を白色結晶として得た (収率46 %)。
53a : mp 100 - 101 oC; 1 H NMR (200 MHz, CDC13., TMS)δ2.05 (6H, S, 2-Me
x 2), 2.33 (6H, S, 4-Me x 2), 3.83 (6H, S, MeO x 2), 6.90 - 7.27 (8H, m, Ar町;MS
m/z608 (M+). Anal. Calcd for C31H26F602S2: C, 61.17; Hヲ4.31. Found: C, 61.34; H,4.55.
4-ヨード-N,Nージエチルアニリン(58c) .
N,N-ジエチルアニリン(1.47 g, 10 mmol)と酢酸 (6.30凶)、 四塩化炭素 (6.30 ml) の混合物に0.850 g (3.35 mmol)のヨウ素と ヨウ素酸 水溶液(0.370 g (2.10 mmol)のヨ
ウ素酸を0.90 mlの水に溶かしたもの)を加え、この溶液を2時間加熱還流した。反 応終了後、室温まで下げた 反応混合物を氷水にあけ、クロロホルムで抽出した。有機 層は、炭酸ソーダ水溶液、 チオ硫酸、ノーダ水溶液、水を用いて順次洗浄し、 その後、
無水 硫酸マ グネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを鴻別後、i慮液から溶媒を留去し た。 粗生成物を、 シリカゲルクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル=20 /1) により精製して 1.82 g の4-ヨードーN,N-ジエチルアニリン(58c)を得た (収率
66 %)。
58c : 1 H NMR (200悶Iz, CDC13., TMS)δ1.14 (6H, t, J=7 Hz, CH3), 3.31 (4H, q,
J=7 Hz, CH2), 7.36 (4H, ID, ArH) ;附m /z275 (M+). Anal. Calcd for C1J114NS: C, 43.66;
H, 5.13; N, 5.09. Found: C, 43.48; H, 5.05; N, 5.26.
3,5-ジメチル-2-(4-N,N-ジエチルアミノフェニル)チオフェン(59c).
2,4 -ジメチルチオフェン(48) (1.12 g , 10.0 mmol)と 4-ヨードー N,N-ジエチルア ニリン(58c) (2.75 g , 10.0 mmol)とのカップリング反応は、化合物(59a)の 合成に
従って行った。粗生成物を、 シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル
=30 /1)により精製して1 .85 gの3,5-ジメチルー2-(4 -N,N-ジエチルアミノフェニ ノレ)チオフェン(59c) を得た (収率71 %)。
59c : 1 H NMR (200 MHz, CDC13., TMS)δ1.18 (6H, t, J=7 Hz, CHJ, 2.23 (3H, S, 3- Me), 2.43 (3H, S, 5-Me), 3.37 (4H, q, J=7 Hz, CH2N), 6.55 (1H, S, 4-H), 6.68 (2H, d, J=9 Hz, ArH), 7.27 (2H, d, J=9 Hz, ArH) ; MS m / z 259 (M+). Anal. Calcd for C1凡lNS: C,
74.08; H, 8.16; N, 5.40. Found: C, 74.10; H,8.30; N, 5.50.
3-プロモ-2,4-ジメチル-5-C4-N,N-ジエチルアミノフェニル)チオフェン C60c).
化合物(59c) (1.00 g, 3.86 mmol) を 10 mlの二硫化炭素に溶解させた中に、0.200 ml (3.88 mmol)の臭素を滴下し、室温で48時間撹祥した。反応混合物を 水にあけ、
クロロフォルムで抽出した。有機層をチオ 硫酸ソーダ水溶液、水を用いて順次洗浄し、
その後、無水硫酸マクοネシウムで乾燥し、硫酸マ グネシウムを鴻別後、11養液から溶媒 を留去した。 粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/ベンゼン=
3/2 )により精製して 1.12 gの3・ブロモ久4ジメチル-5-(4-N,N-ジエチルアミノ フェニノレ)チオフェン( 60c) を得た(収率86 %) 。
60c : ] H NMR (200 MHz, CDC13., TMS)δ1.17 (6H, t, 1=7 Hz, CHふ2.22 (3H, S, 4- Me), 2.38 (3H, S, 2-Me), 3.35 (4H, q, 1=7 Hz, CH2N), 6.68 (2H, d, 1=9 Hz, ArH), 7.27 (2H, d, 1=9 Hz, ArH) ;附m/ z 337 (M+), 339 (M+ + 2). Anal. Calcd for C1凡aNBrS: C,
56.80; H, 5.96; N, 4.14. Found: C, 56.24; H,5.46; N, 3.90.
1, 2-ビス[2,4ージメチルー5-(4-N,Nージエチルアミノフェニル)チオフェンー3- イル]ペルフルオロシクロペンテン(54a).
化合物60c (1. 76 g, 5.22 mmol)と0.340 ml (2.53 mmol)のペルフルオロシクロペン テンを 化合物52aの 合成時と同様に反応させた。 粗生成物を、 シリカゲルクロマ ト グラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)により精製して1.40 gの 1, 2-ビ ス[2,4・ジメチノレ-5-(4-N,N-ジエチルアミノフェニノレ)チオフェン-3-イノレ]ペルフルオロ シクロペンテン(54a)を白色結晶として得た(収率46 %) 。
54a : mp 63 - 64 oC; 1 H NMR (200 MHz, CDC13., TMS)δ1.17 (12H, t, 1=7 Hz, CHム 2.06 (6H, s, 2・Me), 2.31 (6H, s, 4・Me), 3.35 (8H, q, 1=7 Hz, CH2N), 6.61 - 7.24 (8H, m,
ArH) ; MS m /z690 (M+). Anal. Calcd for C3fI40F6N2S2: C, 64.33; H, 5.84; N, 4.05. Found:
C, 64.23; H,6.03; N, 4.23.
3, 5-ジメチル-2-(4-シアノフェニル)チオフェン(59d).
2,4・ジメチルチオフェン(48)(2.69 g, 24.0 mmol)と 4-ブロモベンゾニトリル(3.64 g, 20.0 mmol)とのカップリング反応は、化合物(59a)の合成に従って行った。組生 成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製して4.14 gの3,5 -
ジメチルー2-(4-シアノフェニノレ)チオフェン(59d)を得た(収率97 %) 。
59d : mp 71 - 72 oC; 1 H NMR (200 MHz, CDC13., TMS)δ2.12 (3H, s, 3-Me), 2.39 (3H, S, 5-Me), 6.48 (1H, s, 4-H), 7.45 - 7.69 (4H, m, ArH) ;恥1s m / z 213 (M+). Anal.
Calcd for C13HllNS: (二73.20; H, 5.20; N, 6.57. Found: C, 72.91; H,5.04; N, 6.48.
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3-ヨード-2,4-ジメチルー5-(4-シアノフェニル)チオフェン(60d).
化合物(59d)(3. 97 g , 18.6 mmol) を化合物(60a)の合成例に従ってヨウ素化した。
得られた粗生成物を、 シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン〉により精製して 3.06 gの3・ヨードー2,4-ジメチル-5・(4-シアノフェニノレ)チオフェン(60d)を 得た(収率 49 %)。
60d : mp 136 - 137 oC; 1 H NMR (200 MHz, CDCl3., TMS)δ2.12 (3H, s, 4-Me), 2.39 (3H, s, 2-Me), 7.45 - 7.69 (4H, m, ArH) ; MS m / z 339 (M+). Anal. Calcd for C13H1
aN
1S: C,46.03; H, 2.97; N, 4.13. Found: C, 46.08; H,2.95; N, 4.09.
1, 2-ビス[2,4-ジメチルー5-(4-シアノフェニル)チオフェン-3-イル]ペルフ ルオロシクロペンテン(55a) .
化合物60d (3.06 g, 9.03 mmol)と0.600 ml (4.47 mmol)のペルフルオロシクロペン テンを化合物 52aの合成時と同様に反応させた。 粗生成物を、 シリカゲルクロマ トグラフィー(ヘキサン〉により精製して540mgの1ユービス(2,4-ジメチル- 5-(4-シア ノフェニノレ)チオフェン- 3-イノレ〉ペルフルオロシクロペンテン(55a)を白色結晶とし て得た(収率20 %)。
55a : mp 188 - 189 oC; 1 H NMR (200 MHz, CDC�., TMS)δ2.12 (6H, s, 2-Me), 2.39 ( 6H, S, 4・Me), 7.45・7.69 (8H, m, ArH) ; IR
(KBr)
2230 cm-1 (CN) ; MS m / z 690 (M+).Anal. Calcd for C3IH2aF6N2S2: C, 62.20; H, 3.37; N, 4.68. Found: C, 62.48; H,3.67; N,
4.43.
5. 5 まとめ
1 .ジアリールエテンにp-メトキシフェニル基、 p-N,N-ジエチルアミノフェニル基 等の電子供与性基を導入した誘導体が合成できた。
2. 電子供与性基を導入することにより、吸光係数が増大し、開環反応の量子収率が 減少することが認められた。
参考文献
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第6章 鍵機構をもっビスベンゾチエニルエテン 6. 1 序
フォトクロミック化合物は、通常光照射によりその色を変え、暗所下に放置してお くと元の色に戻る。最近、 熱では元の状態、に戻らず、光のみで色変化を起こすフォト クロミック化合物が開発されてきた。 同その中でも、 本論文で述べているヘテロ 5 員環をもっジアリールエテンは、繰り返し耐久性に優れるなどの特性を合わせ持って おり様々のオプトエレクトロニクス材料への応用が期待されている。例えば、1,2-ビ ス(2-メチルベンゾ[b]チオフェン-3-イノレ)ペルフルオロシクロペンテンは、着色/退色 のサイクルを 104回繰り返した後もフォトクロミック特性を保っている。 州しかし、
オプトエレクトロニクス材料にこれらの物質を使おうとすると、まだ幾つかの未解決 の問題が残っている。それらの1つは、フォトクロミック反応に反応しきい値がない ことである。光メモリ材料へ用いる場合、しきい値をもたないため、数回読み出しを 続けると記録が消えてし まうとしづ欠点をもっ。その欠点を克服するには、フォトク ロミック反応にゲート機能をもたせる必要がある。ゲート機能とは、どの波長の光を 照射しても色変化は起きないが、他の外部刺激を加えると、例えば他の波長の光、化 学物質、熱などが存在すると光照射によりフォトクロミック反応を起こすというもの である。 このような反応性にしきい値があることは、 光記録媒体に応用する際に必 要不可欠である。
反応性にし きい値を持たせる1例として2光子の光 を吸収して2段階で光異性化 する系が考えられる。6) 2光子で不可逆光反応を示す例はいくつか報告されているが、
下10)多光子でフォトクロミズムを示す例は限られている。もう1つの方法は、フォト クロミック化合物の反応性を化学的に制御する方法である。5位にジメチルアミノ基 を置換したインドール環をもっフルギドが酸の添加によりその開環反応の量子収率 を変えることが見出されている。 川
本章では、 コンフォメーションを制御することにより、ゲート機能を導入すること を試みた。 1,2-ジアリールエテンには2つのアトロープ異性体が存在し、anti-parallel 型は光閉環反応を起こすが、 parallel型からは光反応は起こらない。 1司そこで、 可逆 な分子内水素結合性基、s-s結合性基をジアリールエテンに導入して(Fig. 6-1)、 コン フォメーションを光反応性のない parallel型に固定化し、 光反応性を制御することを 試みた。 それらの模式図をScheme 6-1及びScheme 6-2に示した。