富LIJ大 学教 育学 部 研 究者 集 No.6 : 1
‑
l l (2 0 0 3)総 合的 な学 習 の 教 育 課 程 開発 の 一 事例 と そ の 質的分 析
一
教 師 集 団 の 協 働 性 に 焦 点 を 当 て て
一黒 羽 正 見
A n Ex a m ple o n the Co m pr eh e n siv e stud ie s of Cu r ric ulu m De v elopm e nt a nd the
Q
u alitativ e Re s e a r ch: W ith a Fo c u s o n Te a ch e r s
' Collabo r atio n in a n E le m e nta ry Scho ol
M a s a mi K U R O H A
E
‑
m ail.ku r oha @ edu.toya m a‑
u.a cjPA bstr a ct
Th is pape r is bas ed o n the pa rticipa nt obs e Ⅳatio n a nd inte Ⅳie ws with a n ele m e nta ry s cho ol te a che r a nd trie sto cla r
‑
ify the c o nte nts of th e c ollabo r atio nin c u r ric ulu m de v elop m e nt・ A cc o rding to res e a r ch m aterials, the char a cte ristic s ofthe c ollabor atio n are a sfollow;
1 T he collegiality is indispe n sable fo rthe s earch fo r collab o r atio n .
2 T he te a ch e r s
'belief of s ea rch for collabor atio n is in volv ed in cu r ric ulu m dev elop m ent.
3 T h e r e a re priv ate beliefs in c u r riculu m de v elop m e nt・ T he s e beliefs c on v e rge c olle ctiv e belief thatis
j
ointed bys chool te a che rs th r o ugh c u r riculu m de v elop m e nt.
4 T he c u r riculu m de v elop m e nt needs the c o m m on of c olle ctive belief a s the s e a r ch fo r c ollabo r atio n .
Se c o ndly, t he fu nda m ental guidelin e s to the cu r ric ulu m dev elopm ent of co m prehe n sive studie s a re a s follo w; 1 W e m u st c ultiv ate c om p lete beliefs as a prin ciple s of life with affir m ativ e s elf in ou r s cho ol.
2 W e m u st e stablish a n a ctiv efe eling of mis sio n with s elf‑e ste e m and efficie n cy in o u r s cho ol.
F in ally, the c u r riculu m dev elopm e nt of co m preh e n sive studie s thr ough this c a se study holds the key of the c om m o n of c o m plete beliefs fo rthe s e arch fo r collabor atio n ・ A nd the e s sential u nd e r stand of collabo ratio n thr o ugh ethn ography bring o ut po s sibility of the rev olutio n in s ch ool c ultu r e s thatis obstr uctiv efa cto r s of cu r riculu m develop m ent in ou r s cho ol .
キ ー ワ ー ド: 総
合
的 な 学 習,教 育
課 程 開発
,教 師
の信念
,協働 性
, 同僚 性
Ke w w o rds :C o m preh e n siv e Studie s, Cu r ric ulu m Dev elopm e nt, T e a che r,
s B eliefs' C ollabo r atio n' Colleg ialit y
Ⅰ
問 題 の 所 在 と 本 稿 の 意 図
昨
年
度 か ら, 小 ・ 中 学校
の最 大の関 心 事であった 総合
的 な 学 習の時 間 ( 以 下, 「総合
的 な 学 習」 という) が, 新 学 習指
導要 領体 制
の下で本格
的 に 開始
さ れ た。 そ して,個
々 の学校
で積 極
的 に教 育
課 程 が 開発
さ れて いる。 しか しな が ら, その教育
課 程 開 発の現 状 と 言 え ば, 完 全 学校
週 五 日制
の実
施に伴
う 教育内 容
の厳 選に対し て, 学 力 低 下の問 題 が 懸念
さ れ 始 め,その中心 と して総
合
的 な 学 習の導 入 が 学 力の低 下に つな が るのでは という 見 方 が な さ れて いる。
ま た 昨
年
,筆者
が各
学 校の総合
的 な 学 習の教 育
課 程 開発
や 校内
研修
の助 言 指 導 に携
わっ た 結 果, 最 も 頻 繁にみ ら れ た 問 題 状 況に次のよ う な 内容
例 が挙
げ ら れ る。 まず
各 学校
の研 究協
議では, 決 まって次のよ うな 疑 問 が 提 示 さ れ た。 す な わ ち,「子 ど も に は き ち ん と
体 験
活動
を さ せてき たっも
りです
。 でも
, その体験
で子 ども
にど ん な 学力
がつ いた か という と, はっき り と し た 手 応 え が ないんで
す
。 本 当に, こ の活動
を やっ て よ かっ たのか, 迷っ てし まいます
」 と。 ま た, 定期
的 な 研修 会
(1)では, 「総 合
は 子 ど もの主体 性
を 大 切 に した 活動
と 分 かって いな が ら, い つ の間にか 教 師の用 意 した 主 体 性のレ ー ル上 を 走 ら せ, 子 ど もの十 分 な 試 行
錯
誤の時 間 を 奪っ ている よ う な 気 がし てな り ま せ ん」 と。上 述のよ う に, 個々の教 師 は, 「総
合
的 な 学 習の導 入‑ 学 力 低 下」 という 言 説 に振
り 回 さ れ, 総合
的 な 学 習に否 定 的 な 見 解 を 提 示 した り, 総合
的 な 学 習の本質
を 見 失った り して いる傾 向
が窺
え る。 筆者
は, こ のよ う な 原 因 を教 師集
団の緊密
な協
力 体制
を 欠いた教
育 課 程 開発
の閉 塞 状 況 に あ る と 考 えている。 な ぜ な ら, 個々の教 師 は 文 部 科 学 省の 「
確
かな 学 力の向
上のた めの 2 0 0 2 アピー ル
『
学 びのす す め』
」 の大 号令
が か か る や, 早 速 総合
的 な 学 習 と確
か な 学 力 との関係
を二項 対
立 的 に捉
え る よ うにな り,自校
の総合
的 な 学 習の教育
課 程 開 発 を 学年
・ 学級
レベ ル の開発
に止 め, そこか ら 学校
の教育
目標
の効
果 的 な 達 成 を め ざした 教育
課 程 を 開 発 し得ていないか らであ る。そこ で本 稿では, 上 述の
教 育
課 程 開 発の現 状 を 踏 ま え,実 際
に総合
的 な 学 習の教育
課 程 を 開発
して いる 学 校のリアリ ティ に踏
み 込 んで, 個々 の教 師の協
働 性 が どのよ うに機 能し て いる か を 明 らかに した 上で, 総
合
的 な 学 習の教育
課 程 開発
に 関す
る 示 唆 を得 たい。Ⅱ
先 行 研 究 の 検 討
従
前
の総合
的 な 学 習に関 す る 研 究の多
く は, 方 法論
一 般 や 成 果の記 述 に 止 ま り,総 合
的 な 学 習の実
践 に迷いな が らも
主 体 的に取 り 組 んでいる教
師 や 児 童の実
態に踏 み 込 ん だ,実
践 感覚
の豊 か な 研究
は 見 出 し難い(2)。 そこ で, わ が 国の最 近の総合
的 な 学 習に関 す る 研 究 か ら,教 育
課 程 開 発 を 促 進す
る 要 因 とし て教師
の意識
・ 態度
に着
目 して いる 栗 原幸
正(3)と 中留 武 昭 等(4)の研 究に注 目したい(5)。 そし て, この二つ の先 行 研 究の検 討 を通 して, わ が 国の総合
的 な 学 習 に 関 す る 研究
の現 状
を確
認 して, 本 研 究 との異 同 を 明 らか に したい。
ま
ず
栗 原幸
正 は教 育
方 法 学 的 な視
点 か ら,教育
課 程 開発
研 究校
の『
研究
紀 要』
(6)を 基 本資
料 とす
る 因 子 分 析 を 通 して教育
課 程 開発
の規定要
因 を 明 ら か に し た。 栗 原の研究
で評価
でき るのは, 各 学校
の教育
課 程 開発
の実際
的 な示唆
を得
る た めに,統
計
的 分 析で抽
出 さ れ た 教育
課 程 開発
の構
成 因 子 を 基 に, 先 進 的 な教 育
課 程 開 発 研 究校
を抽
出 した 上で, 当該校
の教育
課 程 開 発 担 当者
( 主に校 長, 研 究 主 任 等) に面 接 調 査 を実
施す
る 手続
き を採
用した 点であ る。 さ らに, 開発
研究校
が授 業実
践 を 基に学校 組織
全体
を包括
す る教育
課 程 開 発 を め ざす た め には,教
師 間の協
働 性 ・信 頼
関係
, 教師自 身
の意識 改
革 と専
門 性 を培
う 姿 勢 が 不 可 欠 だ と す る 見 解 は 注 目に値す
る。筆 者
も,教 育
課 程開 発
は最終
的に学校 自身
, と り わけ教 職 員自 身
が 主 体 と なって常にその学 校の課 題 を 捉 え, 解 決し て いこう とす
る内発
的 な 努 力の過 程 が 重要
であ る と 考 えて いる。 な ぜ な ら, その教師 集
団の内 発
的 な 努 力の過 程に教 育
課 程 開発
を 力 強 く推
進 す る協
働性
が機能
している と み な し得 る か らであ る。 た だ 栗 原の研究
に 代 表 さ れ る演
緯 型の分 析では, 研究
対 象の意味
の多
様性
が デ ー タ 収集
の際
に排
除 さ れて しま う 恐 れ が あ る。 現実
の教 師
の生 活 や 学校 教 育事 象
は そ う し た 意味
の多様 性
の中で展 開 さ れてお り, その意味
の多様
性に注 目 して,そこか ら理
論
や 仮 説 を構築
すべきであ る と 考 え る。 そ れ ゆ え,統 計 的 分 析 を
補 完す
る た めに 一過性
の面
接 調 査 を 行い,質
的 に教 師 を把 握しよ う とし ても, 教 師の同 僚 性 や協
働 性の動 態 的 な 過 程 までは 追究
し得
ないと 思 わ れ る。次 に 中
留
武 昭等
は教 育
経 営 学 的 な 視 点 か ら,総 合
的 な 学 習の
教育
課 程 開 発に着
手 して いる先 進 校 と 未実
施校
に 大 別 して,当
該校
を規定 す
る経営
的要
因の実
態の抽 出
を 通 して,総 合
的‑
2‑
な 学 習の
教 育
課 程 開発
を効 果 的に機能
さ せていく 規定要
因 を探
求 し た。 中留
等の研究
で高
く 評 価でき るのは,教 育
課 程 開発
を 規 定 す る 組織
的 ・制
度 的要
因 を 整 理した 上で, さ ら に 学校
文 化の視 点(7)か ら総合
的 な 学 習の意識
・ 態度
の実
態 を 明 らか に した 点であ る。 そ して,今 後
総合
的 な 学 習の教 育
課 程 開 発 に 取 り 組 む 学 校では, 教 務 主任
や 研究
主任
が ボ トムアップ 方向
でリ ー ダ ー シップ を発 揮
し, 同 僚 性 や協
働 性 との関 連から「同僚
性
文 化」 (8)の形 成に最 大の関 心 を 払 うべきだ と す る指摘
は 示 唆 的であ る。 し か し栗 原 と 同 様に,協
働 性 や 同 僚 性の動 態 的 な 過 程 は, 人 間の動 き を 具 体 的 に 捉 え た 上で の組織 構
造 や機
能 分析
, す な わ ち 他者
との関 係 性 や 価 値の世
界 に着
目 し た ミ クロ レ ベル で の経験
的多様性
に 基 づいた 分 析 が 必要
であ る と 考 え る。 ま た 学 校 文 化の枠 組 み は, 生 徒 文 化, 学 級 文 化,教 師文
化等
の様
々な下 位 文 化 を内
包 してお り(9), 本 質 的に 「同僚
性 文 化」 の重 要性
を論 じ る という 点では や や 不 十 分 さ を 残す
と言
わざ
る を得
ない。そ れ ゆ え, 複 雑 な
様
相 を 呈 す る 教師
文 化 や 生徒
文 化, 学級
文 化等
を内
包 した 学 校 文 化の基 底にあ る潜
在 的 な教
師の価値
・信
念の内 実
に まで踏 み 込 んで 「同 僚 怪 文 化」 を捉
え る 方 法 が 必要
であ る と 考 え る。 た だ, 両者
が指摘
す る 総合
的 な 学 習 を 研 究 す る 視 点, す な わ ち, 教育
課 程 開 発 を 対 立 ・ 葛藤
・ 順 応 な ど を内
包 し た極
めて複雑
な 学校
組織
の構
造 や 過 程の機軸
と な る 人 間 ( 教職員
や 児 童 ・ 生 徒) の意識
・ 態 度 を 対 象 化した点
は 重要
であ る。 ま た総 合
的 な 学 習に関す
る 研究
の現状
と し て, 栗 原 が今 後
の課 題で指摘
し て いる通 り,今
日の教育 現場
全 体 が 閉鎖
的であ る た め, 教育現場
の授 業
中の児
童 に 関 す る 研究
は 豊富
に あ る が, 肝 心の教育
現 場 や 学校
全 体の内実
に 迫 る 研 究 が 十 分にな さ れ難
いとす
る見
解にも 首 肯でき る(1 0)。Ⅲ
総 合 的 な 学 習 の 教 育 課 程 開 発 に 関 す る研 究 の 視 座
1
教 育課
程 開 発の意味
従
来
の教育
課 程の考 え 方 は, 学 習指
導要 領
に基 づいて作 成 さ れ た 学 校の教育
課 程であ り,年
間指
導計
画 や教 育
活 動 に 先 立って作 成 さ れ る 計 画の意味
で用いら れて いた(l l)。 しかし,総
合
的 な 学 習の中 核 は, 「個々の児 童 が 自 ら 課 題 を 見 付け
, 自 ら 学 び,自
ら考 え る」 という 主 体 的 な児
童の追究
活動
であ る。した が って,
教
師 は個
々の児
童の経験
の軌
跡 や 足 ど りにまで降
り 立 ち,児
童の学 び や 教師
の支援
の在 り 方 を児 童
の学 習経 験
の事実
に即 して絶 えず
見 直 して いく 姿 勢 が 求 め ら れている。佐
藤
学によれ ば,教 育
課 程 は, 「教師
が 組織
して子 ど も達
が体験
している 学 びの経験
( 履 歴) であ る」 (1 2)と 定義
して いる。こ の佐
藤
の考 え は,個
々 の児 童の思いや願
いか ら 出発
す る 総合
的 な 学 習の教 育
課 程 開発
にとっ て示唆
的であ る。 そこ で,個・k の児 童の経 験 を 児 童の追 究の筋 道に沿って組 織し て いく 活
動
を 総合
的 な 学 習であ る と捉
え る。 ま た教 育
課 程 開発
は,校
長 を 中 心 とす
る 全教 職員
が教 育
目標
を 効 果 的に達成
す る た め に, その学 校の教育
課 程の編
成 ・実
施 ・ 評価
の 一連の諸
活動
を 主体
的 に 展 開 して いくことであ る。 つま り,教 育
目標
の総 合 的 な 学 習の教 育 課 程 開発の ‑ 事 例 と その質 的 分析
再検 討
に始
ま り,教育 内 容
の選択
,教 材
,教 授
・学
習の手続
き, 評 価 方 法 等の計
画 や構
成 を含
む概
念であ る(1 3)。 こ の意味
から す れ ば, 教
育
課 程 開発
と は, 学 校の中 心 的領域
の活 動で あ り,自律 性
を 具 え た教 師
の役割
であ る。ま た 安
彦
は かつて次のよ うに述べ, 個々 の学校
に おけ
る教 師個
々人 が 一 つの教 師 集団
と して学校
全体
の教 育
課 程 を 開発 す
ること が 重要
であ る との見解
を提 出
し た。す
な わ ち 「教育
課 程に生命
を与 え, 時にそ れ を診 断 評価
し て改善
, 再構
成 し,常
に新
た な 生命
を注 ぎ
込 んで いくのは, ほか なら
ぬ教 師個
々 人であ る」 (1 4)と。 こ の見解
は, ま さ し く各
学校
の教 育
課 程 を 開発す
る教 師自 身
の重要性
を指 摘
して いる。した がって, 以 上の認
識
に 立つな ら ば,教 育
課 程 開発
は 従 来の教育
課 程の編成
や構
成 という概
念 よ り も, よ り 広い意味
を有す
る 学校 組 織
に よ る 一 連の計画
的 な教育
課 程改 革
の行動
であ り, あ る 一 定
期
間の行動
で終
わ るの では な く, 継続
的 ・循
環 的 に続 け
ら れ ること を意 味 す
る。す
な わ ち,教 育
課 程 開発
と は, 編 成 ・実
施・ 評 価 ・改善
の循
環 サ イ クル描
き な が ら,個々の教
師
が 教育
目標
の達成
を図
って協 働性
を追 求 してくこ とであ る。 そ れ ゆ え,教 育
課 程 開発
の顕 在 的 な事 象
の中
心で あ る 児 童の学 び と その学 び を創
り 出 し た教 師
の実
践の底 に横
た わ る潜
在 的 な教 師
の価 値
・信 念
の内実
をも含
め た教 育
課 程 開発
の事
象に焦 点 を 当てる 必要
が あ る と考
え る。2
協
働性
と 同僚 性
の 関 係協
働 性の意 味
を米 国の教育
研究者
グッ ドラッド ( Goodlad,∫
.Ⅰ.) の見
解(1 5)を踏
ま えて, 次のよ う に定義
し たい。す
な わ ち,協
働性
と は 「異質
な 人々の集
団 が 学校
の共 通 目標
を 達 成す
る た め に, 各々組織 内
外で の位 置
と役割
を 認識
し,児 童
の 学 習の支 援者
と して教 育
活 動 に積 極
的 に協 力
して いる状
態 をいう。 しか も,
個
々 の教 師
の職
能発達
を促す
と 同 時に, 地域
の人々との
信 頼
関 係 を 深 め, 彼 らの教 育
活動
‑ の積極
的 な参
加 を促 進す
ること にも
つな が る」 と。一方 同
僚 性
と は,授 業
実
践 を 中 心に相
互に観 察
・ 批 評 し合
い, 共 に 学 び合
い,高
め合
う 目 的で連帯
す る教
師集団
の在 り 方 を捉
え る概
念 と して,教
師
は職 場
に関 わ る多 様
な 同僚 集
団に属 して いる が, そこ で の専
門家
と して の対等
な成 員
関 係の質 を 示す概 念
であ る(1 6)0した がって,
教 育
課 程 開発
が 日々 の授業 実
践の改 善
を 通 し て促 進 さ れ ること を考 慮
す る と, 個々 の教師
が,教 育
目標
の 効 果 的 な 達 成 を め ざ して協
働 性 を追
求 して いる 状 態 にこそ,教
師
の同僚
性の本 質 が 見出
し得 る と 考 え ら れ る。3 協 働 性の基 底に
あ
る教師
の価値
・ 信 念の析 出 ・ 分析
の方 法 学 校 組 織 体には, 教育
課 程 開発
に抵抗
意 識 とし て作 用す
る 傾 向にあ る 一 定の行 動 様 式 ない し生 活様
式 が 認 め ら れ るのは 周知
の通 りであ る(1 7)。 す な わ ち, こ のよ う な 抵 抗 意識
の基 底 に教 師の価 値 ・ 信 念 が存
在 して いるの であ る。 学 校教育 事象
が 人 間の行 為に関 わ る 現 象であ り, 人 間行
為 が 行 為者
の価 値 ・ 信 念 といった 主 観 的 ・ 内面
的 要 素によって決 定 さ れ ること が 否 定でき ない以 上, 学 校教 育
事象
の対 象 を客 観
的 な 方 法のみ によっ て追 究 す ること は, 表 面 的 ・ 外 面 的に捉
えて しま う 危険 性
が想 定
でき る。 そ れ ゆ え,外
部 か ら観 察
さ れ 得 ないよ う な行
為者
の主観
的「意味
」 の世
界, つま り行
為者
の行
動 や 認 識の奥
深 く を 探 り, 意識
の底で混 沌 と している ものを 精 細に捉
えて いく 方 法 が 必 要であ る と考 え る。そこ で
筆 者
は, エ スノ グ ラフ イ ‑ によ る教 師
の 「挿
話 的 語 り」 (‑ 8)を 学校
文 脈において生 き 生 き と 記 述 し, その 「挿
話 的 語 り」 に 表出す
る信 念
を その教 師
の 「内
な る声
」 (1 9〕とし て洞察す
る 方 法 を採
用す
る。 これ は,教 師
の信 念
が 「挿
話」 という
形 態で個
人 的 に 組織
さ れ, その対 象
に 関 連 あ るいは対象
を 包括 す
る 「価 値
」 と結
びつ いた 時 に, その人特 有
の 「規範
的行動
」 であ る挿話
的 語 り と して表 出
さ れ る(2 0), という特 質
を持
って いる か らであ る。Ⅳ
総 合 的 な 学 習 の 教 育 課 程 開 発 の 具 体 的 事 例 の 分 析
・考 察
1
本 事 例
調 査の対象
と 方 法本
事例
調 査 は,教 師
の価 値 ・信
念 に 焦点
を 当て,教 育
課 程 開発
に教 師
集 団の協
働性
が どのよ う に機能
して いるのか を 明 ら かにした 上で, 「総合
的 な 学 習」 の教育
課 程 開発
に 関す
る 示唆
を 得 ること を 目 的 とし ている。S小 学
校
は 平成
1 3年
4月 現 在,児
童数
7 1 3名
, 1 ・ 2 ・ 4 学年
が各
3 学級
の 9 学級
, 3 ・ 5 ・ 6学年
が 各4 学級
の1 2学級
,合 計
2 1学級
で構
成 さ れている。教職 員
は4 1名
で, こ のう ち教 科指
導 に は2 8名
(内講 師
2名
を含
む) の教
師 が 当 たっている。こ の S 小 学
校
は, 学 校 経営
の中核
に 「学年
研究
によ る毎
日の 授業 実
践」 を据
え, その授業実
践の検
討 ・ 吟味
を 通し て絶
えず 自 身
の有
り様
や実
践 を 問い質
しつ つ,今
日 まで の 3 5年
間 に 亘 り 「学 習 意 欲の育 成
」 という教育
課題
を一貫
して掲 げ
, 同僚 教 師
との協
働 関 係 を維
持しな が ら,教育
課 程 を 開発
してき て いる(2 1)。 その間,総 合
的 な 学 習(
平成
7年
よ り)
の教 育
課 程 開発
にも着
手 し, 平成
1 0年
か ら国
語 ・算 数
の教
科 と 並行
し て総合
的 な 学 習の公 開授 業
研究
も実
施 して,着実
に 取 り組
んで いる。 ま た, P T A のボ ランティ ア活
動
を含
む 学校
との協 働
関 係 は, 昭 和4 2年
の第1 回 公 開 授業
研究 会
よ り今
日 まで維持
さ れて いる。し た がって, S 小 学
校
の総合
的 な 学 習の教育
課 程 開発
の具体
的様 相
を探
ること は,教育
課 程 開発
に 取 り 組 む 教師集 団
の協働 性
に 関す
る 示唆
を 得 る 上で適
して いる と考
え,事 例
調 査対象 校
と して選定
し た。方
法 と しては,平成
9年
5 月1日 よ り1 0年
3 月3 1日 に 亘 り 月 平 均1 2日の割で参
与観
察 ( 通 常午
前7 時3 0分から 午 後6 暗 まで) お よ び 平 成1 0年
4 月1 日 か ら平成
1 3年
1 0月2 9日の第3 5 回 公 開授 業
研 究 まで の不 定期
な参
与観察
を行
って収
集 した デ ー タ を 分 析した。 な お, 授業参観
記 録 や 面 接 記 録 等に関 しては,調 査
者
であ る筆 者
が簡潔
な 記 録 を 取 る 他, 記録
の正確
を 期 す た め, 調 査 対象 教 師
の承 諾 を 得 た 上で適 宜テ ー プレコ ー ダ ー に録 音し,後
で文 章に起こ した。 ま た, 論 文の都合
上, 人 名 はす
べて仮名
と した。2 公 立S 小 学 校の総 合 的 な学 習の教
育
課 程 開 発の全般
的特
徴 (1)教 育
課 程の全 体 的 特 徴S 小学 校 は, 3 0
余年
に亘 り 「自
分に問いか け,自
分で考 え,自 ら 進 んで行 動 す る, 健 康で品
性
の高い子 ど も」 という 教育
目標
を‑
‑質 して掲
げて いる。 そ して, その具 現 化 を図
る た めに, S 小 学 校 独
自
の学 習 プロ グ ラム ( 図1) を 中 心に据
え( 2 2 ),個 性 化 ・ 個 別 化
教 育
の推
進 と 学 習 意 欲の育
成 に 努 めて いる。特 色 的 な
教 育
活 動 と しては, 指 導の個
別 化 を 通し て学 力 向 上 を図
る た め, ボ ラン テ ィ ア活 動 を積 極 的に導 人したT ・ T を 基 本 と している。 と り わけ
, 週 間 プロ グ ラム (単
元内 自
由 進 度 学 習) , マ スタ リ ー ラー ニ ング (完
全 習 得 学 習), ス テ ップ 学 習 ( 各シ ー ト2 0間の 3 0ステ ップの漢字
・計算
ドリル) な ど 教 科の特 性 や 学 習内 容
を 考慮
した 学 習であ る。 ま た1年
生から6
年
生 までの縦割
り 生 活 団 を 基 盤 とした 体育会
, 清 掃 活 動,ペア活
動
( 異 学年
交 流),食
堂 給食
な どの異 学年 児
童の人 間 的 交流
を 深 め る 総合
的 な 学 習 な どであ る。 さ らに, このよ う な 児 童 側に立つ個性
化 ・個
別 化教 育
を展 開 す る た めに, 1単
位 時 間の弾 力 的 運 用 を 図 り, 1 ブロ ック 1 0 0分の ノ ー チャイム を 基 本 とす
る 週 時 程 を 組織
し て いる。 そし て, 児 童の実
態 や 学 習内 容
に応 じて柔 軟 に 時 間の運 用 が図
れ る よ う に, 週1 回の学
年会
で授業 実
践の反省
, 進度
や 時数
の調 整 な どに関 して 話 し合
い, 学級
担 任 が協
働 ・自律
的に教育
課程 ( 週 指 導 計 匝f) を編
成・実
施 している。 そし てま た, 以 上のよ う な 学 習 プロ グ ラム の内 容
は, S 小 学 校 が3 0余年
に亘 り 継続
的に追究
して き た教育
課 題 「学 習 意 欲の育 成」 に収 赦 さ れている。教 育 目 標
自 分 に 問
いか け
,自 分
で考 え
,自 ら 進 ん
で行 動 す る 健 康
で品 性
の高
い子 ど も
〔注〕 ニ U)学 習プロ グ ラムがS小学 校の教 育 課 程の中 核であ る。 平成1 3 年 度の S 小学 校 『研究 紀 要』p 2 よ り抜 粋。
図1 学 習 プロ
グ
ラム の位 置 づ け(2) 総
合
的 な 学 習の特 徴S小 学
校
の総合
的 な 学 習 は, 生 活 を 対象
とす
る体 験
学 習,現 代
社 会
の課 題 と向
き合
う 問 題 解 決 学 習 を 通 して, 具体
的 な 活動
や 体験
を自
分自身
の生 活に生か し てい こう と す る 意 欲 や実
践 力 を育
てること を ね らいと している。総
合
的 な 学 習 は, ペア 活動
( 縦割
り 生 活 団 活 動) を 中 心に据
え た 生 活 を対 象
と す る 体験
学 習 を 「ふ れ あいタ イム 1 」, 覗 代社
会の課 題 と 向 き合
う 問 題 解 決 学 習 を 「ふ れ あいタ イム 2 」と 考 え, 両 方 を
合
わ せ た ものを 総合
的 な 学 習 と 位 置 づ けている。
総
合
的 な 学 習の活 動 計 画内
容に関して, 「ふ れ あいタイム 1 」 は, 原 則 とし て 1年
生から6 年 生 までの縦割
り 生 活 団 を 基 盤 と す るペア活動
が 中 心であ る。 縦 割 り 集FJJ には4 色の色 を命
名し, 四 色の帽 子 をかぶ り な が ら, ふ れ あいハイ キング, 清 掃 活 動, 体育
会参
加, な どの異 学年交
流 を 行っ て いる。一 方
「ふ れ あいタ イム 2 」 は, 児 童の発 達 段 階 を 考 慮し て, 3 学 年 は 郷 土 観 を 深 め る 学 習 とし て の 「0 0 市の名 物 を 作 る 名 人 にな ろ う」, 4 学
年
は 環 境観
を 深める 学 習 とし ての 「 ほく らは‑
4一
環
境
探 検 隊」, 5 ・ 6 学年
は 人 間 観 ・ 環境
観・ 国際観
を 深 め る 学 習 と して の 「い のち を 探 ろ う (5年
)」, 「生 き方 を 探 ろ う (6午
)」 な ど を 設 定 している。 ま た 心の教 育
との関 連 を 図 り, 道 徳 的 価 値の内 面
化 を 強 化 す る 体験
学 習 も実
施し ている。実際
には, 各 学
年
で重 点 価 値 項 目 を設 定し, 各 学 期1恒r, 年 間で 1 5時 間 程 度, 道 徳 的 な 体験
活動
を 取 り 入 れ た ダ イ ナミ ック な 学 習 を 展 開 し, 総合
的 な 学 習 との関 連 を 図 る よ うにしている。(3) 総
合
的 な 学 習の進 め 方①
ふ れ あいタ イム1 ( 生 活 を 対 象 と す る 体 験 学 習) 学 校 行 事, ふ れ あい行 事 等‑ の主 体 的参
加, 企 画 ・ 運 営のた めの準 備 活 動異 学
年 交
流の推 進日常 活 動 ( 清 掃 活 動, 給 食) を 通した 人 間 関 係 調 整 能 力の