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4. 知識差と経験差による安心感への影響

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情報セキュリティ技術の安心感における経験差の影響

西岡 大 藤原 康宏 村山 優子 岩手県立大学大学院 ソフトウェア情報学研究科

1. はじめに

従来の情報セキュリティでは,技術的な面での安 全性を高めたシステムを提供する事がユーザに安心 感を与えると考えられてきた.しかし,システムの 安全性が高ければユーザは安心するとは必ずしも言 えないため,安全性を高めるだけでなく,安心とは 何かを明確にすることが必要ある.本論文では,情 報セキュリティ技術に関する知識のないユーザの意 見を反映した質問紙を利用し,専門知識のない一般 的なユーザのオンラインショッピング時の情報セキ ュリティ技術に関する安心の要因について報告する.

一般的なユーザは,情報セキュリティ技術に関する 専門知識はないが,ユーザごとに知識に差がある.

また,オンラインショッピングの利用頻度について も差がある.そこで,専門知識のないユーザの知識 の差や経験の差がどのように安心の要因に影響を及 ぼすかについて報告する.

2. 関連研究

欧米では,安心の類似表現としてトラストがあり,

心理学や社会学の分野で研究が行われている.トラ ストを確立するためには,トラストされる者やサー ビスに関する十分な情報を得て知識を貯める必要が あるとされている[1].また,トラストはユーザ自 身の経験の蓄積により変化するとれ[2],吉川ら[3]

は,ユーザに知識がなく安心している状態を「無知 型安心」,ユーザがリスクについての情報取得を経 た状態を「能動型安心」と定めている.無知型安心 より能動型安心が望ましい状態だとし,安心につい て知識が重要性である事を述べている.以上の既存 研究の知見から,トラストの研究では,ユーザの知 識や経験によってトラストが変動することは報告さ れているが,知識レベルの差や経験の差からどの様 に変化するのか等の調査は行われていない.そこで,

本研究では,安心やトラストするための要因に影響 を及ぼすとされている,知識や経験がユーザの安心 にどの様な影響を及ぼすか調査を行う.

3. 先行研究

本研究は,情報セキュリティに関する安心感につ いて,質問紙調査を行い,因子分析を用いて安心の 要因の抽出を行ってきた[5][6].しかし,先行研究

で作成した質問紙は,知識のあるユーザの意見は反 映されているが,知識のないユーザの意見は反映さ れていない. 情報セキュリティを利用する多くのユ ーザは知識が無いため,知識がないユーザが求める 安心についても調査する必要がある.そこで,知識 のないユーザの意見を反映した34問からなる質問紙 を作成し,情報セキュリティ技術に関する知識のな いユーザの安心の要因の抽出を,888名を対象に行 った[7][8].調査の結果,「善意の認知」, 「能力 や誠実さの認知」, 「ユーザの心象」, 「第3者か ら提供される企業の周辺情報」の4つの安心の因子 を抽出した.また,情報セキュリティ技術に関する 知識のないユーザの意見は,「善意の認知」と「第 3者から提供される企業の周辺情報」に含まれ,特 に,第3者から提供される企業の周辺情報」は知識 のないユーザの意見で構成されたため,「第3者か ら提供される企業の周辺情報」は知識のないユーザ 独特の安心の要因であることが判明した.

4. 知識差と経験差による安心感への影響

本調査の対象者は,専門知識のない一般的なユー ザではあるが,各ユーザで知識レベルが異なる.ま た,安心の類似研究である Trust に関する調査では ユーザの経験が Trust に影響を及ぼすことが示され ている [9] [10].これらのことから,安心の調査 においても,ユーザの知識やユーザの経験が安心感 に影響を及ぼす可能性があると考えられる.そこで,

本調査では,知識と経験に着目し各因子におけるユ ーザの特徴の分析を行った.

本調査では,知識の差について,ユーザが脅威を 説明できる項目を 2 問,ユーザが脅威を説明できな い項目を 2 問,セキュリティ対策を行っている項目 を 2 問,セキュリティ対策を行っていない項目を 2 問尋ねた.各設問において説明できる,または対策 を行っていると回答した項目を 1 点,説明できない,

または対策を行っていないと回答した項目を 0 点と し,その合計を求めた.8 点のユーザに関しては,

情報セキュリティ技術に関する知識のあるユーザと して,分析対象から除いた.各ユーザの知識の差を 表 1 に示す通りに 3 つに分類した.次に,経験の差 について,オンラインショッピングの年間の利用数 を尋ねた.オンラインショッピングの年間の利用数 をオンラインショッピングの利用経験とし,表 2.

に示す通りに利用経験の差を 3 つに分類した.

情報セキュリティ技術の知識の差とオンラインシ ョッピングの経験の差から各因子に有意な差が認め Influence of user experience on Anshin for information security

technology

Dai Nishioka†, Yasuhiro Fujihara† and Yuko Murayama†

†Graduate School of Softwre and Information Science Iwate Prefectural University

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情報処理学会第 74 回全国大会

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られるか検証する為に,因子得点を従属変数,知識 の差と経験の差を独立変数とした多変量分散分析を 行った.分析の結果,多変量主効果は知識の差にお いて 0.1%水準で有意な差が認められた. 次に,知 識の差と経験の差との 2 要因交互作用を確認したと ころ,有意が 0.075 であり,有意傾向であった.知 識の差において,第 3 因子に 5%水準で有意差が認 められ,第 4 因子に 0.1%水準で有意差が認められ た.また,交互作用において,第 4 因子に 5%水準 で有意差が認められた. 次に,多重比較を行った とろ,第 3 因子では,知識が下位群のユーザと知識 が上位群のユーザとの間では 5%水準で有意差が認 められ,知識が中位群のユーザと知識が上位群のユ ーザの間では 1%水準で有意差が認められた.

第 4 因子では,知識が下位群のユーザと知識が中 位群のユーザとの間では 5%水準で有意差が認めら れ,知識が下位群のユーザと知識が上位群のユーザ との間では 0.1%水準で有意差が認められ,知識が 中位群のユーザと知識が上位群のユーザとの間では 1%水準で有意差が認められた.

利用経験については,単独では各因子に対する有 意差は示されないが,第 4 因子において交互作用が 有意であったことから,知識が上位群の場合,利用 経験が下位群のユーザと利用経験が上位群のユーザ に比べて,知識が上位群で利用経験が中位群のユー ザは第 4 因子を重視する傾向にあることが判明した.

情報セキュリティ技術に関する知識は第 3 因子と第 4 因子に影響を及ぼし,知識が下位群のユーザほど,

第 3 因子と第 4 因子を重視する傾向にあることが判 明した.第 1 因子と第 2 因子に関しては,知識と経 験の二つとも有意な差は認められなかったが,第 1 因子は,有意が 0.06 と交互作用の有意傾向が表れ,

第 2 因子は,5%水準で交互作用の有意差が認めら れた.第 1 因子,第 2 因子においても,第 4 因子と 同様に,知識が上位群の場合,利用経験の頻度によ り重視する傾向が異なる事が判明した.

表 1. 知識によるユーザの分類 下位群 中位群 上位群

知識の 点数

0

1

2

3

4

5

6

7 ユーザ数 29

40

246

149

208

111

76

29 ユーザ数 315 357 216

表 2. 経験によるユーザの分類

下位群 中位群 上位群

利用回数 0

1

2~3

4~5

6~9

10~

19 20 以上 ユーザ数 39

28

143

151

131

220

176 ユーザ数 361 351 176

5. まとめ

ユーザの知識と経験が各因子に対してどの様な影 響を及ぼすか,分散分析と多重比較を行い検証した

結果,ユーザの知識は「ユーザの心象」, 「第3者 から提供される企業の周辺情報」に影響し,ユーザ の経験はどの因子にも影響を及ぼさないが,ユーザ の知識レベルが高い場合にユーザの経験が,「第3 者から提供される企業の周辺情報」に影響する事が 判明した.分散分析の結果,ユーザの知識の差が,

「第 3 者から提供される企業の周辺情報」に影響を 及ぼし,知識のないユーザの意見で因子が構成され ていることから,「第3者から提供される企業の周 辺情報」は情報セキュリティ技術に関する知識のな いユーザ特融の安心の因子だと判明した.

経験の影響に関しては,知識が上位群のユーザの 場合,経験の差で“第 3 者から提供される企業の周 辺情報”に影響が有り,経験が中位群のユーザより 下位群,高位群のユーザのほうが安心の要因として 重視しない傾向にあることを示している.知識が上 位群で経験が下位群の場合,ユーザ自身の知識から 判断する傾向が表れるため影響力が低くいと考えら れる.オンラインショッピングの経験が中位群の場 合,他者との比較を行い利用する企業が安心できる かどうか判断するために,経験が下位群のユーザに 比べて影響力が高くなると考えられる.また,オン ラインショッピングの経験が高位群になると,ユー ザは慣れから利用しているオンラインショッピング を提供する企業は安心できると判断し,第 3 者から の情報を求めないようになると考えられる.しかし,

知識と経験の関係について判明していない点が多い ため今後,考察を行う必要がある.

参考文献

1) Y. Wang and J. Vassileva, “A review on trust and reputation for web service selection,” in ICDCSW ’07: Proceedings of the 27th International Conference on Distributed Computing Systems Workshops. Washington, DC, USA: IEEE Computer Society, (2007).

2) Viklund, J. M. 2003 Trust and Risk Perception in Western Europe: A Cross-National Study Risk Analysis, 23, 727-738.

3) 吉川肇子,白戸智,藤井聡,竹村和久:技術的安全と社会的 安心,社会技術研究論文集, Vol.1, pp.1–8 (2003).

4) 日景奈津子,カールハウザー,村山優子:情報セキュリティ技 術に対する安心感の構造に関する統計的検討, 情報処理学会論文, Vol.48 No.9,pp3193-3203 (2007).

5) 藤原康宏,山口健太郎,村山 優子:情報セキュリティの専門知

識を持たない一般ユーザを対象とした安心感の要因に関する調 査,情報処理学会論文誌,Vol.50 No.9 , pp.2207-2217(2009).

6) 西岡大, 藤原康宏, 村山優子:情報セキュリティ技術に関する

一般ユーザの意見を反映した安心感調査のための質問紙作成手 法 の 提 案 , 情 報 処 理 学 会 論 文 誌 ,Vol.52 No.9 , pp.2500- 2525(2011).

7) Dai Nishioka、Yuko Murayama and Yasuhiro Fujihara: Producing a questionnaire for a user survey on Anshin with information security for users without technical knowledge, 2012 45th Hawaii International Conference on System Sciences pp454-463, (2012)

8) Jennifer, K., Airi, L. and Alex, S. :Privacy: Is There An App For That? , Symposium On Usable Privacy and Security, (2011).

9) 26) Bos N, Olson J, Gergle D and Olson G, Wright W: Effects of four computer-mediated communication channels on trust development.

Proc. CHI 2002, ACM Press pp.135-140, (2002).

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