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坂本 優衣 論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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坂本 優衣 論文内容の要旨

主 論 文

Determining Factors for Independent Walking in Patients Undergoing Cardiovascular Surgery: Differences between Coronary Artery Bypass Grafting, Heart Valve Surgery, and

Aortic Surgery

心臓血管外科手術後患者の自立歩行獲得を決定する要因:

冠動脈バイパス術,心臓弁手術,大動脈手術の違いについて

坂本 優衣,森本 陽介,花田 匡利,矢野 雄大,

澤井 照光,三浦 崇,江石 清行,神津 玲

Healthcare (Basel). 2021 Oct 30; 9 (11): 1475.

https://doi.org/10.3390/healthcare9111475

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:神津 玲 教授)

緒 言

心臓血管外科手術後の長期安静臥床は,術後患者の自立した生活や疾患管理に悪影 響を及ぼす.そのため,術後早期より心臓リハビリテーション(CR)を開始するこ とが推奨される.CR の中心的要素は早期離床と運動療法であり,中でも歩行は自立 した日常生活を送るための基本的な活動であるとともに,その継続は冠危険因子の是 正など心疾患の管理や再発予防のためにも必要である.したがって,術後早期に歩行 の自立を達成することは重要な課題である.

心臓血管外科手術後における自立歩行の決定要因として, 冠動脈バイパス術

(CABG)と心臓弁手術後では,術後腎機能と体液バランスが,また心臓弁手術後患 者では術後心房細動が報告されており,術式によって異なる可能性がある.加えて,

術後の自立歩行とその決定要因に関しては,報告によって検討されている要因や対象 が異なっている.そのため,特に術式ごとの要因を明らかにすることは,適切な術後 管理に役立つ可能性がある.本研究では,心臓血管外科手術後の自立歩行に関して歩 行開始日の決定要因とともに,術式ごとのCR進行への影響を明らかにすることを目 的とした.

対象と方法

本研究のデザインは,単施設の後方視的観察研究で,対象は2013年6月~2016年 12月に長崎大学病院にて心臓血管外科手術後にCRを受けた患者とした.対象患者の 除外基準は18歳未満であること,心臓と大動脈の複合手術を受けたこと,過去11カ 月以内に再手術もしくは全身麻酔で手術を受けたこと,術後脳梗塞の発症,術後院内 での死亡,心臓血管外科手術前または後に,歩行補助具(杖,歩行器など)を使用し

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ても歩行が不可能である患者とした.

全対象者の診療記録から術前および手術,術後経過に関する項目を調査した. 術前 情報は対象者基本情報,心機能,術前診断および併存疾患であり,術後情報は集中治 療室(ICU)在室期間,人工呼吸管理期間,合併症,CR 進行状況,入院期間であっ た.

歩行の自立は,術後200m歩行の達成日と定義し,術後1病日からの期間を調査し た.術後CRは心臓血管外科専属の理学療法士が実施し,その進行の可否は担当医と 相談の上で実施した.対象者は術式ごとにCABG群,心臓弁手術群,大動脈手術群の 3 群に分類し,術後の自立歩行と CR 進行状況を比較するとともに,自立歩行の開始 日に関連する要因を検討した.

結 果

研究期間中の全対象者は763例であり,除外基準に該当する患者を除いた567例を 解析対象者とした.

対象者の内訳は CABG 群 153 例,心臓弁手術群 312 例,および大動脈手術群 102 例であった.歩行開始日と自立歩行達成日は心臓弁手術群,CABG群,大動脈手術群 の順で有意に遅延していた.術後 CR の進行状況は,端座位開始日や立位開始日は CABG群と心臓弁手術群で有意な差を認めなかったが,大動脈手術群は有意に遅延し ていた.

重回帰分析の結果,自立歩行開始日に関連する要因は,以下の通りであった.CABG 群では年齢,術前腎疾患の併存,ICU在室期間,術後呼吸器合併症であり,心臓弁手

術群ではNew York Heart Association機能分類,術前腎疾患または呼吸器疾患の併存,

ICU在室期間,人工呼吸管理期間,術後の心血管合併症,術後呼吸器合併症で,大動 脈手術群ではICU在室期間と術後急性腎不全であった.

考 察

本研究では,術後の自立歩行を決定する要因として,3 群間で共通のものと,各群 で特異的な要因があることが示された.ICU在室期間は3群間で共通の自立歩行の決 定要因であった.この結果は,ICU特有の環境が身体活動の機会や時間を減少させる ことを改めて示した結果であると考えた.また,大動脈手術群は他の2群と比較して 端座位開始から自立歩行達成までのCR進行全体が遅延していた.この結果は,大動 脈手術は他の2群に比べて術後回復に時間を要し,その侵襲の大きさの影響を示した ものといえる.

術後早期に歩行,さらには日常生活活動を再獲得するためのアプローチとして,

CABGや心臓弁手術では,術前からのCRの実施が有効であることが報告されている.

しかし,大動脈手術における術前からの介入は,大動脈破裂の危険性や緊急手術が多 いため困難である.したがって,大動脈手術さらには術後の全身状態不良によって ICUでの管理が長期化するような患者は,従来のCRに加えてベッド上での運動療法 の工夫や新たな介入戦略の必要性が示唆された.各術式に適した介入方法については,

さらなる研究が必要である.

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