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伊勢田STS学会発表.pptx

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Academic year: 2021

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全文

(1)

多対多敵対的論争状況のモデル化

と科学コミュニケーションへの含意

伊勢田哲治

京都大学

(2)

本発表の目的

•  昨今の

SNSなどで繰り広げられる論争の理念

型(抽象化・図式化したモデル)として「多対

多敵対的論争状況」という論争状況の1つの

類型を構築し、その特徴を調べる。

•  そうした理念型に近いと思われる論争状況が

あったときに、専門家の側にどのような情報

発信が求められるかを考える。

(3)

本発表でやろうとすること、しないこと

•  本発表で行うのは、人間心理についてよく知

られているいくつかの特徴をもとにした、論争

状況の理念型の構築。

•  当然現実の論争にヒントを得てはいるが、そ

れに依存するものではない。

•  将来的にはエージェントベーストシミュレー

ションができるくらいきちんとモデル化したい

が現状はそこまでいっていない。(補足スライ

5)

(4)
(5)

架空事例:集団投与

•  ある致死性の高い疾病

Xに対して、若いころ

に薬剤

Yを投与されることで発症率が劇的に

減るという臨床的・疫学的な知見が得られた。

その知見に基づき、薬剤

Yの集団投与が国際

的に広く行われるようになり、日本でもある学

齢の子供たちに対して全国的な一斉投与が

行われた。

(6)

架空事例:集団投与(つづき)

•  集団投与が行われてしばらくして、投与され

た子供たちの中に重篤な症状

Zを訴える者が

出てきた。家族や支援者らは薬剤

Yの副作用

ではないかと疑い、告発活動を始めた。他方、

当該の重篤な症状

Zと似た症状は特に薬剤

の投与がなくともまれに発生することが知ら

れている。また、国際的にも薬剤

Yについて大

きな副作用はないという知見があり、専門家

ZはYの副作用ではないと主張している。

(7)

この事例をどう扱って行くか

•  この事例に対して思い思いに発言したりお互い

の発言にコメントしたりする人々の集団において、

どのようなことが(同様のシチュエーションや人

間の心理について知られている事実から考え

て)起こりそうかを考えて行く。

•  なお、この架空事例は現実の問題から特徴を取

り出してはいるが、対応する現実の事例そのも

のは他にさまざまなファクターのからむ複雑な問

題なので、これもまた理念型的に構成しなおし、

あくまで「架空事例」として扱う。

(8)

論争状況と「意見の食い違いの洗

い出し」

(9)

多対多敵対的論争状況

•  本発表で提案するのは一種の理念型として

の論争状況

– 論争状況

•  敵対的論争状況vs. 協力的論争状況 •  多対多論争状況vs. 非多対多論争状況 –  多対多敵対的論争状況

•  論争そのものの記述的理念型と「正しい論

争」の規範的理念系を混同しないことは大事。

– どちらも理念型だが正当化の条件が全く異なる

(10)

論争状況

•  意見の食い違う人々がお互いの主張を吟味しあ

う作業が行われている状況

–  事実に関する意見の違い:「症状Zと薬剤Yに因果関 係がある」「因果関係はない」 –  価値に関する意見の違い「致死率の高い疾病を予防 できるなら予防した方がよい」「どちらでもよい」 –  総合的判断の違い:「薬剤Yの使用は当面見合わせ るべき」「見合わせる必要はない」

•  「吟味」はここでは理性的な検討から難癖に類す

るものまで含む広い意味で用いる。

(11)

規範的理念型と記述的理念型

•  論争の規範的理念系において論争における吟

味は意見の食い違いの原因の特定を目指す。

–  意見の食い違いの原因が特定されたのち、食い違い の擦り合わせが行われる

•  記述的理念型においても意見の食い違いの原

因は存在する

–  原因の特定や擦り合わせが目指されるとは限らない

•  今回主に考察するのは記述的理念型としての論

争状況

(12)

意見の食い違いの原因の類型

•  意見の食い違いの原因はお互いに影響しあう4

つのカテゴリーに分類できる(補足スライド

1-4)

–  言葉の使い方についての食い違い •  定義、典型例の想定、適用範囲等 –  事実関係についての食い違い •  誰が何を言っているか、統計的事実、将来予測等 –  価値についての食い違い •  規範、ものごとの優先順位、許容できる過ち –  フレーミングの食い違い •  問題の基本的枠組み、検討範囲、立証責任、許容される推 論 伊勢田ほか編(2013)『科学技術をよく考える』名古屋大学出版会 pp.98-100

(13)

意見の食い違いを大きくする心理的

仕組み

•  代表性発見法(ヒューリステイクス):代表的だと思うものを多く見 積もる→何が代表的かの意見の違いが事実判断の差、フレーミン グの差へ •  利用可能性発見法:すぐ思いつくものを多く見積もる→経験の差が 事実判断の差、フレーミングの差へ •  保守性バイアス:一度形成した意見はなかなか変わらない→出発 点の違いが事実判断・価値判断の差へ •  正常性バイアス:異常事態が生じたときに、正常な状態をよく知っ ている人ほど事態の異常性を小さく評価する→事前知識の多寡が 将来予測の差へ •  観察の理論負荷性:事前の想定にそぐわないものがノイズとして 無視される→フレーミングの差が事実判断の差へ •  認知的不協和の回避:最初の態度決定を合理的なものとするよう に後続の情報が処理され、後続の態度決定がなされる→フレーミ ングの差が事実判断、価値判断の差へ

(14)

架空事例への適用

•  重篤な症状Zの具体例から出発すると、ZとYの前後関係が クローズアップされ利用可能性発見法が働きやすくなる。Y とZの因果関係を前提として責任を追求するというフレーミ ングへ •  薬剤Yの専門家の観点からは正常性発見法が働きやすく なる。新たな副作用を主張する側に専門家も納得するレ ベルでの立証責任を求めるフレーミングへ •  予防しないという「不作為」によって疾病Xを発症させること は許容されるか(義務論vs. 功利主義)。困っている人を目 にしたら帰結や義務はさておいてもその人に寄り添って考 えるのが人としてあるべき姿ではないか(徳倫理vs.行為中 心的倫理)。これらの価値観の差もフレーミングの差につ ながる

(15)

食い違いの洗い出しと解消

•  言葉の使い方についての食い違いは話しているうち に気づくことが多く、気づいてみれば実質的な意見の 違いがなかった、ということはよくある。 •  事実判断の違いは比較的容易に確認できるものもあ る(調べれば分かること、単なる思い違いなど)。 –  「発見法」の違いによる認識の差は、そうした心理メカニ ズムの存在を共有できれば擦り合わせ可能 –  将来予測などについては「相手の見方も十分ありうる」こ とくらいは期待できる –  誰が信用できるかについての食い違いは他の事実判断 に広く影響する重要な食い違いだが、経験的には解消は 非常に困難

(16)

食い違いの洗い出しと解消

•  価値判断の違いは、導出的価値判断について

は事実認識の違いに回収可能。

–  帰結主義、義務論、徳倫理など、判断の根本的視点 がずれている場合、合理的な吟味の方法は非常に 限られる(普遍化可能性テストなど) –  相手の話をきいているうちに相手の価値観に納得が いくことは実際にある –  お互いのずれが価値観のずれであることが分かれば、 (規範的モデルとしては)異なる価値観の人々がどう やって共存するか、という問題設定へ移行することが 可能

(17)

食い違いの洗い出しと解消

•  フレーミングの違いについて、「どのフレーミング

から問題を見るべきか」を合理的に吟味するの

は非常に難しい

–  事実認識の場合と同じく、そのフレーミングに到達す るプロセスでさまざまな「発見法」が使われていること が共有できれば、お互いのフレーミングを相対化する ことは(規範的には)可能 –  場合によってはお互いのフレーミングを包摂するよう なより包括的なフレーミングという形で対立は解消可 能(お互いが重視する事実や価値をすべて重要だと みなす、検討範囲を広くとる、等)

(18)

食い違いの解消の前提

•  ほとんどの「意見の食い違い」は複雑な食い違

いの組み合わせ。

•  「Yの集団投与は中止すべき」と言っている人(Aさん)がい たとして、その人がどういう根拠から何を主張しているのか については無数の可能性があり、「Yの集団投与を継続す べき」と主張するBさんとどこで食い違っているかも無数の 可能性がある。 –  AさんはそもそもYの副作用についての国際的知見を知らないの かもしれないし、知った上で予防原則を適用しているのかもしれ ないし、知った上で既存の研究を信用していないのかもしれない し、認知的枠組みのせいでそうした知見がノイズとして処理され ているのかもしれないし、疾病の予防に価値を見いださないとい う価値観の持ち主かもしれないし、そもそも「集団投与」という言 葉で全く違うものを指しているのかもしれないし…… –  比喩的に言えば、式の数より変数の数の方が多く、しかも変数 の関係が複雑に入り組んでいる

(19)

食い違いの解消の前提

•  正確にどこが食い違っているか明確にするには、協力 的態度が不可欠 –  相手の求めに応じて自分の立場表明の背景を説明する –  お互いに自分の方が正しいということを前提しない –  異なる考え方のさまざまな可能性に対してお互いに想像 力を働かせる –  一致できない問題についても、意見の違いがある中でど ういう合意をとるか、という方向で協力的に考える •  食い違いの発見とすりあわせは時間がかかる作業で もあるので、お互いへ時間的リソースを投資すること をいとわないことも重要

(20)
(21)

食い違いの解消を困難にする状況

•  論争状況にある人々が協力する気がない、

協力が必要な相手だと思っていない

– 

→敵対的論争状況

•  そもそも誰と誰が論争しているのかが不明確

– 

→多対多論争状況はこの一種でもある

(22)

敵対的論争状況

•  議論を勝ち負けととらえ、一種のゼロサム

ゲームとして扱うような論争のありかた、と定

義する

– 自分の当初の意見を少しでも変えることは失点と

なるので基本的に意見は変えない

– 詭弁のような議論で相手を言い負かすのも加点

になるので言い負かしさえできればなんでもいい

– 保守性バイアスや認知的不協和を避けようとす

る心理的傾向はこうしたゼロサム的な考え方を助

長する

(23)

架空事例への適用

•  「薬剤Yは症状Zの原因である」「薬剤Yの集団投与は中止されるべ き」という点について一歩もゆずる気がない論者にとって、以下の ような主張をする論者は「敵」であり、相手の指摘にあわせて自分 の見解を修正することは「負け」となる。 –  「薬剤Yは症状Zの原因ではない」「薬剤Yが症状Zの原因だという十分 なデータはない」「薬剤Yは症状Zの原因ではない可能性もある」等々 –  「薬剤Yの集団投与は継続されるべき」「薬剤Yの集団投与は事実関 係を確認するまで停止して再開されるべき」「薬剤Yの集団投与は中 止されるべきとは限らない」等々 •  「薬剤Yは症状Zの原因ではない」「薬剤Yの集団投与は継続される べき」を出発点として同じような態度をとる論者も当然存在しうる。 敵対的態度をとるかどうかと主張内容は一応独立。

(24)

論争相手の過小評価

•  相手の知的能力を自分より下だととらえる –  正しい結論に達しないのは相手が正しい推論ができてい ないからと考える •  相手の持つ情報を自分の持つ情報の真部分集合と みなす –  自分と相手の事実判断が食い違うのは相手が自分の 持っている情報を持たないからだと考える。 –  科学コミュニケーションでよく出てくる「欠如モデル」はこれ の特別な場合 •  相手の人格を自分より下だと捉える –  相手が自分と異なる規範的主張をするのは隠れた利己 的な意図があるからだと考える、など

(25)

架空事例への適用

•  「薬剤

Yを投与された子供が重篤な症状Zを発症

したという明白な状況から当然両者に関係があ

ることを推測できない人はそもそもその事実関

係についてよく知らないか推論能力に問題があ

る」

•  「個別のエピソードで因果関係が立証できると

思っている人は統計的推論についての知識が

欠けているか推論能力が欠けている」

•  「薬剤

Yに疑念が持たれているのに推進しようと

する人は薬剤

Yに関する利権がからんでいる」

(26)

架空事例への適用

•  しかし、もしかしたら

– 異なるフレーミングで見ているために、薬剤Yの投

与と症状

Zが継起したからといって因果を読み取

るのは性急だと思っているのかもしれない

– 統計的推論の正しい方法については理解した上

で、予防原則の問題としてエピソード的な証拠か

らも行動するべきだと言っているのかもしれない

– 薬剤Yについての利権からではなく、疾病Xの予

防の緊急性についての認識が違うのかもしれな

(27)

敵対的論争と過小評価

•  敵対的であることと相手の過小評価は独立の事

象だが、相互に影響しうる(おそらく認知的不協

和を除去するために)

–  相手の知的能力、情報、人格が自分より下であるた めに食い違っているのなら、当然相手に譲歩する必 要はないし、譲歩するのは負け、というのも分からな くはない。 –  相手に過小評価された側も、過小評価に反発して敵 対的態度をとるようになるかもしれない。 –  逆に敵対的論争を遂行する上では、相手が自分より 全面的に劣っていると主張する方が自分の非妥協的 態度を正当化しやすい。

(28)
(29)

多対多論争

•  多様な立場の一群の人々が一斉に非特定的な

論争的情報発信(自分の立場の主張、他の発言

者の主張の吟味や論難)を行い、情報の流れの

整理や論争全体の統御が行われていない状況、

と定義

–  「非特定的」:そのグループの中の誰にあてた情報 発信であるかが必ずしも明確でないような情報発信 –  古典的な集団討論は一時に一人しか発言できない 形で統御され、発言の非特定性も低くなるため、この 意味での多対多論争ではない

(30)

多対多論争状況は何をもたらすか

•  論争状況そのものについての事実認識、フレーミングのず れ –  その問題についてどういう「陣営」が存在するか –  それぞれの陣営における共通見解は何か –  自分のまわりで発言している個々の人はそのうちのどの陣営 に所属するか –  それぞれの陣営の勢力はどのくらいか →代表性発見法や利用可能性発見法の働く余地が大きい •  個々の発言の解釈のずれ –  どの発言がどの発言に向けられているか –  その発言はどういう基本的立場を前提として行われているか –  それは本発表で言う意味で「敵対的」なのかそうでないのか

(31)

多対多論争状況は何をもたらすか

•  相手の思考プロセスを明らかにすることの困

難さ

– 単一の相手であれば質問を繰り返すことで思考

プロセスを明らかにすることはある程度可能

– 相手が「多」であるとき、1つの「陣営」に見えても

表明されている立場やその立場に至る思考プロ

セスは多種多様。その「陣営」の人々の発言をあ

つめても1つの像を結ぶとは考えにくい。

(32)

架空事例への適用

•  疾病

Xや薬剤Yや症状Zについて多くの人が同時

に発話している状況を考える。

•  全体を見渡して「集団投与を認める派」と「認め

ない派」の二つの陣営があると思う人もいれば、

YとZに因果関係があると思う派」「ないと思う

派」「どちらとも言えないから調べるべき派」「どち

らとも言えないが調べなくてよい派」の4つの陣

営があると思う人もいるかもしれないし、他の分

け方を考える人もいるかもしれない。

(33)

架空事例への適用

•  「集団投与をやめるべきだ」という人の典型例につい ての事前のイメージやたまたま目にした印象の強い 発言は、その「陣営」の典型的主張や人数比などの推 定に大きく影響するだろう(代表制発見法、利用可能 性発見法) –  「やめるべきだ」という主張があまりに多すぎるからバラン スをとるために「続けるべきだ」と主張する、など、この状 況認識はその論者の行動にも影響すると思われる •  「集団投与を続けるべきだという人がいるがそいつはZ の症状の苦しみを何も分かっていない」というような発 言があったとき、それを見た人が自分に当てられた発 言だと解釈し、「わたしはZの症状がつらいことはよく 分かった上で言っているのに」と思うかもしれない。

(34)
(35)

多対多敵対的論争状況

•  ここまで考察してきた効果の相乗効果

– 多対多論争状況においては、論争相手の過小評

価が加速する可能性がある

•  論争相手を過小評価する傾向がある人には、自分と 対立する「陣営」と見なした発言者たちの中でも知的 能力、情報量、人格などの面で特に劣っていると思わ れる相手が目立って見え、それが「敵陣営」全体を代 表するように思えるかも(認知的不協和の回避と代表 性発見法や利用可能性発見法の組み合わせ?)

(36)

多対多敵対的論争状況

•  その意味で「敵陣営を代表する」議論への批

判は、その「陣営」のくくりを認識していない人

にとっては、「言ってもいないことを捏造して

「わら人形論法」で批判してきている」ようにし

か見えないだろう

– せいぜい、まったく代表とはいえない人を特に取

り出して批判しているようにしか見えないかも

(37)

記述的理念型としての妥当性

•  以上のような「多対多敵対的論争状況」とあ

る程度類似した状況が本当に存在するかどう

かは経験的に調べるべき問題

•  ただし、理念型はそのまま成立している必要

はなく、現実における重要なパラメーターや変

数が拾い出せているなど、物差しとして有用

であれば十分意義はある

(38)
(39)

科学コミュニケーションへの含意

•  あなたが架空事例の集団投与についての専

門家であり、国際的に薬剤

Yには大きな副作

用がないという知見が存在するという情報を

広めたいと思っているとしよう。

•  さらに自分が情報発信しようとしているフィー

ルドが敵対的多対多論争状況の理念型にか

なり近いと感じているとしよう。

•  どのようなことに気をつけて情報発信を行う

必要があるだろうか?

(40)

論争状況での科学コミュニケーション

•  まず、「論争状況」であるということ自体から導け

る注意点がある

–  論争者があなたが伝えようとしている情報を知らない ように見えても、知らないのではないかもしれない。 –  論争者がどのような筋道でその情報を無視している かを探り出さないとその相手に対してどういう情報を 提供するべきかも見えてこない。 •  たとえば「専門家は信用できない」という事実認識から専門 家の提供する情報を無視するという態度が出てきているな ら、「専門家は信用できる」という情報を提供する、など

(41)

敵対的論争状況で

•  論争者がここで言う意味で「敵対的」な論争を

行っているように見えるとき(ゼロサムゲームとし

て論争を行っているように見えるとき)

–  意見を変えることが失点だと思っている人に対しスト レートな情報提供はあまり意味がない –  意味のある情報提供のためには、提供のしかた自体 を工夫する必要がある –  生産的な情報提供のためには、自分も状況をゼロサ ム的にとらえてしまっていないか(非専門家の立場に 理解を示すことが負けだと思ってしまっていないか) 振り返りながら進む必要がある

(42)

過小評価状況で

•  論争者が専門家である自分に対し知的能力、

知識、人格などの面で劣っていると評価して

いるように見える場合

– ストレートな情報提供はこの場合もほとんど無意

– 過小評価がなんらかの理由に基づいていると思

われる場合にはそこについて意見交換をするとこ

ろから情報提供をはじめるしかない

– もちろん相手の評価が(部分的にでも)正しい可

能性もあるので謙虚な態度は必要

(43)

多対多状況で

•  多対多論争状況で追加で気をつけるべきこと

–  不特定多数に対して漠然と情報提供したつもりが特 定の個人に対する反論や攻撃ととられることもありう るので注意が必要 –  多対多状況の中の特定の誰かに情報提供しようとし ている場合、相手が論争状況をどうとらえているか、 自分から見て論争状況がどう見えているかという意 見交換は先にした方が不幸な誤解を生まない –  「陣営」の一人としてではなく、相手が自分で発言して いることをベースに相手がどういう思考のプロセスを たどっているかを推測しないと、大きな間違いを犯す 可能性がある

(44)

まとめ

•  現実の論争をある程度抽象化した理念型とし

て「多対多敵対的論争状況」という状況を想

定し、記述した

•  その状況において「集団投与」という架空事

例がどのような論じられ方をするかを考察し

•  その理念型の特徴から、情報提供者としてそ

うした論争にかかわるとき何を気をつける必

要があるかを考察した

(45)
(46)

補足スライド1:言葉の使い方の違い

•  言葉の定義、意味の違い

– 「多発」と言ったときの想定するオーダーの違いな

– ほとんどの場合われわれは定義して言葉を使わ

ない(典型的肯定例、典型的否定例、グレーゾー

ンの構造)

•  何を典型的肯定例(否定例)ととるか、グレー

ゾーンをどこにとるかの差

– 「福島」と言ったとき福島県を指すか原発事故の

直接的影響のある狭い地域を指すかなど

(47)

補足スライド2:事実認識の違い

•  誰が何を主張しているかについての違い

–  不注意 –  協調原理を使って実際の発話から「言おうとしている こと」を導出するプロセスでずれが生じる

•  現在の事実関係についての違い

–  調べればすぐ分かるものvs.調べるのが困難なもの –  持っている情報のずれから導かれる結論のずれへ –  誰が情報提供者として信頼できるかについてのずれ

•  将来予測の違い

(48)

補足スライド3:価値判断の違い

–  基礎的価値判断vs.導出的価値判断 •  基礎的価値判断は同じでも事実認識の違いから導出的価 値判断がずれることはある •  基礎的価値判断:リベラルvs. 保守、帰結主義vs.義務論vs. 徳倫理学 –  許容できる過ちについてのずれ •  「過ちなのだからどこまでも追及すべき」、という人と「許容 できる過ちだからそこまで追及しなくても」という人のずれ –  価値判断とはそもそも何かについてのずれもある? •  主観主義vs.客観主義

(49)

補足スライド4:フレーミングの違い

•  その問題をどういう問題としてとらえるか(基本的な対立構図、主 要な事実関係、主要な価値や利害、問題の範囲) •  何が動かせない所与とするか –  「電力の安定供給」を動かせない所与として扱うかどうかで電力政策 問題の捉え方が異なる •  誰に立証責任があるか –  害があることもないことも立証が難しい場面で、「害がある」という主 張に立証責任があるか、「害がない」という主張に立証責任があるか •  許される推論 –  対人論法、事例からの推論、権威からの推論等をどういう場合に認 めるのか、まったく認めないのか –  統計的相関から因果を推定することはどういう場合に許されるか、 まったく許されないのか •  形而上学・認識論等のレベルでのずれ –  そもそも「事実」は存在するか、など

(50)

補足スライド5:論争プロセスの

ABS化

のためのスケッチ

•  世界は議論対象領域と討論エージェント集合からなる •  個々のエージェントは初期状態で語彙集合、定義集合、事実判断集合、価値判 断集合、フレーミング原理集合を持つ •  個々のエージェントは議論対象領域からランダムにいくつかの「事実関係」を学習 し、価値判断集合とフレーミング原理集合に基づいて事実関係の重要度のランク 付けを行う •  個々のエージェントは発見法を用いて事実判断集合をアップデートする •  個々のエージェントはフレーミング原理集合を用いて重要な事実関係と価値判断 を組み合わせて立場表明を行う •  エージェントはお互いの立場表明の内容をチェックし、自分の判断集合と矛盾す る内容の立場表明を行ったエージェントと「論争状況」に入る •  各エージェントは自分と論争状況にある他のエージェントへ「質問」か「指摘」を行 う。 •  各エージェントは質問に対しては対応する判断を「立場表明」し、指摘に対しては 自分の事実判断、価値判断の集合を一定のルールに従ってアプデートする •  Etc.

参照

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