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雑誌名 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要. 特別号

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ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科 学習指導の構想 : 小学校第1学年 鬼遊びの実践か

著者 當房 省吾

雑誌名 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要. 特別号

巻 6

ページ 141‑152

発行年 2016‑03‑02

URL http://hdl.handle.net/10232/00029447

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Bulletin of the Educational Research and Development, Faculty of Education, Kagoshima University

2016, Special Issue No.6, 141-152

報 告

ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の 構想

ー小学校第1学年 鬼遊びの実践からー

當 房 省 吾 [鹿児島大学教育学部附属小学校]

The concept of physical education method to define contents of teaching ball games:

Through the lesson practice of oniasobi on the first grade in elementary school

TOBO Shogo

キーワード:指導内容の明確化、競争目的、競争課題、局面、ゴール型

1. はじめに

 子どもたちの体力の低下や運動習慣の二極化が叫ばれる中で,体育科・保健体育科では,現行の 学習指導要領において,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の育成を一層充実することが求め られている。2011年度から完全実施となった現行小学校学習指導要領では,改訂の方針の一つと して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を培う観点を重視し,各種の運動の楽しさや 喜びを味わうことができるようにするとともに,児童の発達の段階を踏まえ指導内容の明確化を図 ることが示された。それに伴い,各運動領域においては,指導内容が整理され,身に付けたい具体 的な内容が2学年のまとまりで示されており,それらを基に授業づくりがなされている。

 授業づくりに際しては,現行学習指導要領で,「体つくり運動」以外のすべての指導内容について,

2学年のいずれかの学年で取り上げたり,年間に取り上げる運動種目を弾力化したりして指導に当 たることが求められている。中でもボールゲーム注 1)では,指導内容が第3学年から「ゴール型」

「ネット型」「ベースボール型」の「型」表記で示された。これは,「種目」固有の技能ではなく,ボー ルゲームに共通する課題の解決に必要な技能や知識を「学習内容」として位置付け,当該単元や学 年で学習したことが次の単元や学年の学習に転移しながら,学びを連続・発展させることを期待し ている。つまり,このことは,多くの人が生涯にわたって様々なスポーツ(球技)にかかわる可能 性を考えるとき,種目固有の技能ではなく,攻守の特徴や型に共通する動きや技能を系統的に身に 付けていく大切さを示している。

 一方で,実際に1単位時間の授業を具体的・計画的につくっていくためには,学習内容を身に付 けるために,「どの学年で」「どんな内容を」「どのような教材で」「どのように」学ばせるかを明確 にしなければならない。そのためには,まずは,2学年ごとのまとまりで示されている指導内容を,

6年間を通じてどの学年で,どんな内容を,どのようなつながりをもって学ばせるか整理する必要 がある。とりわけ,ボールゲームにおいては,先述のとおり,現行の学習指導要領において,ゲー ムにおける攻め方や守り方の特徴,すなわち実際のゲームの中で直面するさまざまな情況にかかわ

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鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016)

る技能や知識を重視し,「ボールを持たない動き」と「ボール操作の技能」からゲームパフォーマ ンスを高めるという戦術的な観点から,特に小学校第3学年からの指導内容が「型」(ゴール型,ネッ ト型,ベースボール型)に分類されている。このことは,これまでのボールゲームの中からある特 定の「種目」を選び,その種目特有の動きや技能を教える立場から,ボールゲームに共通する動き や技能を「学習内容」として系統的に学ばせる立場へと移行してきたと考えられる。これらは,現 行学習指導要領にも反映されており,具体的には,技能の指導内容において2学年のまとまりごと に「ボール操作」及び「ボールを持たないときの動き」で構成されている。

 しかし,これらの型に共通する動きや技能が,何のために,どうして必要なのか,また,それら がどのようにつながり,発展していくのかを捉えていない限り,学習する子どもたちは,ゲームの 状況を無視してただ教わった動きを繰り返したり,自分の行動を選択することができなかったりす ると考える。特にボールゲームでは,個別の技能の積み上げや学習内容のつながりをもたない無意 図的なゲームでは,学習内容を発展させることはできず,本来授業を通して味わわせたい運動の特 性や魅力に十分に触れられないまま,学ぶ意欲を連続・発展させることにつながらないことが予見 される。

 図1は,平成26年度全国運動能力,運動習慣等調査報告書(文部科学省,2014)の中の,小学 校第5学年男女児童に対する質問項目【(2)体育の授業は楽しかったか,(3)体育の授業でもう一 度やりたいか(あてはまるものをすべて選んでください)】において,領域ごとの得点差を示した ものである。小学校第5学年男子においては,「楽しかった」と答えた領域は,第1番目にボールゲー

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當房 省吾:ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の構想

ムであった。一方,「もう一度やりたい」と答えた領域は,「楽しかった」の得点が1番目に高かっ たボールゲームではなく,器械運動が第1番目となった。また,小学校第5学年女子においては,

「楽しかった」と答えた領域の第1番目は水泳,第2番目がボールゲームであった。一方,「もう一 度やりたい」と答えた領域の第1は,男子同様に器械運動であった。授業において子どもたちが「楽 しかった」と高く評価した領域については,同様に「もう一度やってみたい」と高く評価するので はないかと予想される。しかし,平成26年度全国運動能力,運動習慣等調査報告書においては,ボー ルゲームにおいて,水泳を除く他の領域に比べ,小学校第5学年男女ともに「楽しかった」と答え た得点が高かったが,「もう一度やりたい」と答えた得点の高低差が大きかった。

 これらの結果は,ボールゲームにおける授業づくりの難しさを示しているともいえる。鈴木・廣 瀬ら(2003)は,現実の授業場面においては,「攻め方や守り方を工夫する」ことの具体的な中身

(学習内容)が不明確である場合が少なくなく,授業で設定されるめあてが「声に出してがんばる」

とか「今日は絶対勝つ」といった精神的なめあてに留まり,目指すべき方向や内容を伴った具体的 なめあてとなっていないケースがあり,これらの問題は,つまるところ「攻める」あるいは「守る」

ことが具体的に「何のために」,「何を」,「どうすること」であるかが押さえられていないことに起 因すると指摘している。また,清水ら(2014)は,教員に対するアンケート調査から,種目を教え ない場合,ボール運動で何を学ばせればよいか分かりづらい,ボール運動の中でどのような力をつ けさせるのか明確にできないため,実際に「何を」「どのように」指導してよいか戸惑いがうかが えるとしている。さらに,鈴木(2012)は,「型ゲーム」という表記が結局のところ,そのゲーム の参加者が実際に向き合わねばならない競争課題を端的に言い当てていないとしている。そのよう なボールゲームにおける授業づくりの難しさから,子どもたちは好きな領域としてボールゲームを あげ,一生懸命取り組む一方,ボールゲームの本質的な楽しさを味わい切れなかったり,学んだこ とが次の単元へと生かされなかったりして,自分やチームの高まりを実感しづらくなっていること が考えられる。

 そこで,本研究では,現行学習指導要領の中のボールゲーム(ゴール型)において,2学年のま とまりで示されている指導内容を,学習者でありゲームに参加するプレイヤーでもある子どもたち にとっての面白さ(魅力,価値)や学び手である子どもたちの学びの連続・発展の文脈を考えなが ら整理した授業づくりを構想し,一単元をつくるまでの実践を通して,ボールゲームの授業づくり のあり方を検討することを目的とする。

2. ボールゲームにおける指導内容の明確化

 ボールゲームにおける指導内容を整理することを考えるとき,手がかりにしたいことは,先も述 べたとおり,型に共通する動きや技能が,何のために,どうして必要なのか,また,それらがどの ようにつながり,発展していくのかということである。そこで,まずは,そもそも学習者でありゲー ムに参加するプレイヤーでもある子どもたちにとって,ボールゲームの何が面白い(魅力,価値)

のかを問い直すことが必要である。このことに係わり,鈴木・廣瀬ら(2008,2010)の研究知見を

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鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016)

参考にした。鈴木・廣瀬ら(2008,2010)によると,実際にゲームに参加しているプレイヤーの立 場に立って考えてみるとき,まずもって意識されるのは,相手方との間で「何を競り合うのか」(=

競争目的)であること,また,ボールゲームの歴史の中で競争目的をめぐる競り合いにかかわる人々 は,「結果の未確定性」を維持しつつ競り合いが行われるように配慮しながら,その直接的な対象 となる課題(=競争課題)を定め,それがやがてルールとして整備されてきたこと,そして,今日,

広く知られているさまざまな技術・戦術は,この特定の競争課題を解決するために後から工夫され た技法(=競争方法)であることを指摘している。さらに,どんなボールゲームにおいても常に①ボー ルを目的地に移動させること②プレイヤーが目的地まで移動することのいずれかを目指していると した。その上で,ボールゲームにおける競争課題の解決過程は,「的入れ」「突破」「突破+的入れ」

「突破+進塁」の4タイプに大別されるとしている。一方,松田(2009)は運動固有の楽しさをボー ルゲームの局面で捉え,局面が1つしかない易しいボールゲームから,局面が3つある複雑なボー ルゲームへという配列が検討できると述べている。

 これらのボールゲームに対する研究知見を基に,ゴール型における指導内容を明確にしていくこ とにした。まず,ボールゲームのおもしろさは,相手との「競い合い」であり,ゴール型では「ボー ル(自分)を目的地へ移動させる」ことが競争の目的であると確認した。次に,ゴール型の攻防の 局面は「ボールを運ぶ」「相手をかわす」「的に入れる」という3つであり,この攻防の局面の中で 生じる競争の課題を解決するために必要となってくる技能がゴール型共通の技能と捉えた。そして,

学習の発展や発達の段階を考慮して,各学年(1〜6学年)における指導内容を以下の視点で整理 した。つまり,低学年では「ボールを運ぶ」という1つの攻防局面を突破していくための学習から,

次第に「ボールを運ぶ」「相手をかわす」「的に入れる」という複数の局面が混在する状況を突破す るための学習へと発展していく。さらに,各学年で整理した指導内容を身に付けさせるために,単 元の中で生じる子どもの「つまずき」を想定し,中核となる学習課題を設定した。

 以上の考えを基に,ゴール型の指導内容を明確にする道筋を以下の図2にまとめた。そして,こ の図2の道筋で指導内容を整理したものが表1,表2である。

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當房 省吾:ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の構想

表 1 ゴール型における指導内容の系統表試案(技能)

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(7)

鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016)

表 2 ゴール型における指導内容の系統表試案(思考・判断,態度)

* 1  「思考・判断」については,作戦にかかわる内容を段階的に指導するために,主に2学年のまと まりにおいて,前の学年では動き方やゲームの特徴を知り,簡単な攻め方を見付ける段階で,

後の学年では,友達と協力して連携したり,チームの特徴に合った作戦を立てたりするなどの 段階と捉えて指導内容を整理している。

* 2 5年生では「効果的な攻め方の理解・選択」 ,6年生では,5年生に学習を基に「チームの特徴 に応じた攻め方の理解・攻め方を考える」という内容を設定した。

3. 指導内容を身に付けさせる教材設定

 体育の授業において,指導内容を身に付けるなど諸目標を達成するためには,学習者にふさわし い教材が準備されて学習が展開されなければならない。ゴール型において明確にした指導内容をよ りよく身に付けさせるための教材については,以下の考え方を基に設定した。

3.1. 指導内容を身に付けさせる運動教材の設定の基本的な考え方

 運動教材の設定を行うに当たって,岩田(1994)の教材づくりの過程とその内容的・方法的視点 を参考にし,図3の過程で設定した。その際,以下の2つの視点を考慮した。1つ目は,前述の中 核となる学習課題を含んだ内容的側面である。2つ目は,子どもの実態,学習機会の平等性,おも しろさの確保に留意し,学習意欲を高めることが可能かといった方法的側面である。この2つの視 点を基に,素材を加工・修正することで,より効果的な教材を設定することが可能になる。また,

このことは,学習指導要領解説にも述べられている「易しいゲーム・簡易化されたゲーム」を設定 することといえる。

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(8)

當房 省吾:ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の構想

表3 第

1・2学年おける:ゴール型の指導内容

3.2. 指導内容を身に付けさせる運動教材の設定の実際

 表3は,学習指導要領解説の低学年のボールゲームの指導内容を1・2年のつながりを意識して 整理したものである。それらを基に第1学年の鬼遊びにおける教材設定を図4のように行った。

4.第1学年「鬼遊び」の授業実践

 これまで述べてきた考え方等を基に実践を行った。この実践は,第1学年単元「すりぬけおにあ そび」(全9時間)で行った。

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(9)

− 148 −

鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016)

4.1. 実践単元について

 本単元「すりぬけおにあそび」は,2015年9月から10月の期間にかけて行った。授業実践した 学級は,F小学校第1学年男子17名女子18名計35名である。なお,鬼遊びのコートについては,

横幅12mの3コートを用意した。チームについては男女混合チームで,人数は5から6名で構成し,

合計6チームで対戦する形式をとった。単元の目標は以下のとおりである。(アが関心・意欲・態度,

イが思考・判断,ウが技能である。)指導計画は表4のとおりである。

ア 「つかまらないようににげたい」「たくさんのともだちをつかまえたい」などの思いや願いをも つことができる。

イ 相手のいない場所を見付けるなどよい動き方に気付き,まねをしたり,ジグザグに進むなど簡 単な攻め方を見付けたりすることができる。

ウ 相手をかわしながらゴールを駆け抜けたり,素早く動いてタッチしたりすることができる。

4.2. 実践の実際

 第1時,第2時において確認した遊び方やきまりを基に,第3時では「相手(鬼)のいない場所

単元 第

1

学年 すりぬけおにあそび 第

2

学年 ボール運びおにあそび 技能

① 相手のいない場所を見付けて走る。

② 身をかわして逃げる。

③ よく見て素早く追いかけてタッチする。

④ かわしながらボールを持って走る,ボールを味 方にパスする。

⑤ 相手の動きに合わせて追いかけてタッチする。

思考 判断

① よい動き方に気付き,まねをする。

② 簡単な攻め方を見付ける ③

2

3

人で連携するなど簡単な攻め方を見付けて 挑戦することができる。

態度

① 鬼遊びに進んで取り組むことができる。

② 運動の順番やきまりを守り,友達と仲良くゲームをすることができる。

③ 用具の準備や片づけを,友達と一緒にすることができる。

④ 危険物が無いか,ゲームをする場が十分あるかなどの場の安全に気を付けることができる。

時間 1 2 3 4 5 6 7 8 9

過程 つかむ・見通す 挑戦する・工夫する 生かす

課 題 の 追 究 過 程

学 習 の め あ て の 設 定 試 し 遊 び

す り ぬ け お に あ そ び 大 会

技 ① ② ③

思 ① ② ① ②

態 ④ ③ ② ①

評 価

* 1

・きまり

・コート

・遊びの約束

・学習の進め 方

よいうごきをまねっこして,みんなでたのしくあそぼう 感覚づくりの運動 ・とうぞくおに→子取りおに→タグ 取おに

じょうずに あいてを

かわすには どうすれば いいだろうか。

もっと みんなが たの しむことができる きま りを くふうしてみよ もっと たくさん

たからを とるために は,どううごけばいいだ ろうか。

・相手のいない場 所を見つける

・ジグザクに動く

・宝2個コーン

・しっぽ3本

・鬼ゾーン拡大

・取ったタグの得点

・2人で一緒に動く

・横やななめ,前や 後ろに動いてみる

リ エ ン テ ー シ ョ ン

単元 第

1

学年 すりぬけおにあそび 第

2

学年 ボール運びおにあそび 技能

① 相手のいない場所を見付けて走る。

② 身をかわして逃げる。

③ よく見て素早く追いかけてタッチする。

④ かわしながらボールを持って走る,ボールを味 方にパスする。

⑤ 相手の動きに合わせて追いかけてタッチする。

思考 判断

① よい動き方に気付き,まねをする。

② 簡単な攻め方を見付ける ③

2

3

人で連携するなど簡単な攻め方を見付けて 挑戦することができる。

態度

① 鬼遊びに進んで取り組むことができる。

② 運動の順番やきまりを守り,友達と仲良くゲームをすることができる。

③ 用具の準備や片づけを,友達と一緒にすることができる。

④ 危険物が無いか,ゲームをする場が十分あるかなどの場の安全に気を付けることができる。

時間 1 2 3 4 5 6 7 8 9

過程 つかむ・見通す 挑戦する・工夫する 生かす

課 題 の 追 究 過 程

学 習 の め あ て の 設 定 試 し 遊 び

す り ぬ け お に あ そ び 大 会

技 ① ② ③

思 ① ② ① ②

態 ④ ③ ② ①

評 価

* 1

・きまり

・コート

・遊びの約束

・学習の進め 方

よいうごきをまねっこして,みんなでたのしくあそぼう 感覚づくりの運動 ・とうぞくおに→子取りおに→タグ 取おに

じょうずに あいてを

かわすには どうすれば いいだろうか。

もっと みんなが たの しむことができる きま りを くふうしてみよ もっと たくさん

たからを とるために は,どううごけばいいだ

・相手のいない場

ろうか。

所を見つける

・ジグザクに動く

・宝2個コーン

・しっぽ3本

・鬼ゾーン拡大

・取ったタグの得点

・2人で一緒に動く

・横やななめ,前や 後ろに動いてみる

リ エ ン テ ー シ ョ ン

表4 第1学年単元「すりぬけおにあそび」の指導計画

*1 評価欄の番号については,附表4.1に示した学習内容の番号と同じである。

附表4. 1. 第1学年及び第

2学年の鬼遊びにおける学習内容

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當房 省吾:ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の構想

を見付けること」を中核となる学習課題としながら,本時のめあてを,「つかまらずに,走り抜け るには,どんなことに気を付ければいいだろうか」と設定した。そして,ゲームⅠからゲームⅡに 入る前に,思考の高まりを目的にした学び合いを導入した。そこで,相手(鬼)が均等に並んでい る場面と片方に偏っている場面の2つ場面を比べながら,「どちらの方がつかまらずに走り抜ける ことができそうか」「それはなぜか」と問うことで,動きのよさに気付かせた。子どもたちからは,

相手(鬼)が片方に偏っているときの方が「すき間がいっぱいある」「すうっと抜けれそう」など の発言があり,相手と相手の間のすき間を走り抜ければつかまらず得点が取れることに気付いて いった。ゲームⅡでは,それらの気づきを生かし,すき間を見付けて走る抜ける姿が増えていった。

一方で,相手のタグを取って捕まえたいという思いも生まれ,終末の振り返りの際に,「もっと守 りもうまくなりたい」「鬼の人数が少ないので,鬼と攻めと同じ人数でやってみたい」などの声も 上がった。

 第4時では,第3時に出てきた子どもたちの意見を基に,攻めと鬼の数を同数の3対3にする規 則で行った。さらに,守りをうまくなりたいという願いを受けて「相手をつかまえるには,どうす ればいいだろうか」というめあてを設定した。つかまえる動きを学ばせたいので,第4時では,「① 相手をよく見る②膝を曲げる③手を広げる④相手の動きに合わせて自分も動く」ことを中核となる 学習課題としながら,子どもたちに働きかけた。ゲームⅠからゲームⅡに入る前の見合い・話合い の場面では,よい動きをしている子ども(膝を軽く曲げて構える,手を横に広げるなど)の示範と 教師の示範(膝を伸ばして棒立ちしている,手を上に広げるなど)とを比べて感じたことを発表さ せた。子どもたちからは,「膝を曲げた方が(横に)すぐ動けそう」「手を上にあげるとしっぽ(タ グ)に届かないから,手を上ではなくて横に広げた方がいい」「ずっと相手を見て,横に動いたら 自分も横に動くといい」などの意見が出された。子どもたちは,守るときの姿勢や目線などに気付 き,ゲームⅡでは,第3時までと比べてタグを取ってつかまえることができる子どもが増えた。中 には,初めてタグをとることができた子どももおり,「やった!」と歓声を上げて喜ぶ姿も見られた。

終末の振り返りの際に,「もっと攻めも鬼も上手になりたい」「今日はつかまったので,次は絶対に うまく逃げたい」などの声が上がった。

 第5,6時では,鬼の次第に上手になってきたため,「攻めるときにもっと上手に動きたい。」「攻 めるときのコツをもっと見付けたい」という声が上がった。そこで,攻めるときの動きに焦点化し 学習を進めた。第5,6時において,子どもたちの攻め,守りの動きにこれまでにない変化が見ら れた。攻める側においては,前時までは「すき間が分かった(見えた)」瞬間に走り抜ける動きが 多かったが,すき間が生まれたと分かっても鬼の状態(自分の方をよく見て構えている,自分との 距離が近い,相手の足が速いなど)を見て,「いつ」動き出そうかと待ってみたり,右や左にゆさぶっ たりするなどの動きが出てきた。また,守る側もねらう子を決めて粘り強くついて行ったり,つか まえるのが無理だと判断して次の守りの準備を整えたりする動きが見られた。つまり,1年生なり に相手と駆け引きをしながら鬼遊びを楽しむ姿が増えていった。さらに,終末の振り返りでは,教 師の「きまりはどうする。このままでいいかな。」という問いかけに対して「もっと鬼遊びをおも

(11)

鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016)

しろくしてみたい」という声がたくさん上がった。

 第7,8時は,第6時に上がった「もっとおもしろい鬼遊びをしたい」という意見を基に,教師 が用意したいくつかの規則の中から,「鬼が取ったタグもチームの点数に入れていい」という規則 が選ばれた。鬼が取ったタグも得点化されたために,攻めと鬼との駆け引きがより多くなった。ま た,特に守りの際に,「ここはぼくに任せて」「今,惜しかったね」などとチームでアドバイスした り,称賛したりする姿も増えてきた。

 最後の鬼遊び大会では,見応えのある駆け引きが多く見られた。例えば,前後や左右にゆさぶり ながらすき間が空く機会を待ち,一人がすき間をねらった瞬間に次々と走り抜ける動きや全く反対 の方向を向いてゆっくりと進んでいたかと思いきや,空いたと分かった瞬間に180°向き直り,空 いている場所へと駆け込む動き,両手をいっぱいに広げ,一生懸命タグを取りに行く動きなどが見 られた。その姿は,まさに相手との間で「空いている場所を取ること」を競い合っており,その競 い合いの中に楽しさを見付けながら学びを発展させていたと捉えられる。

5. 本研究の成果と課題

 本研究を通して得られた成果について,以下に挙げる。

○ ゴール型における指導内容を明確にするための道筋を設定したことで,次の学年や単元を見通 しながら指導内容を整理することができた。

○ 今,この学年で,この実態で,どのような教材を設定することが妥当かを見通すことができ,

ねらいに沿った運動教材を設定できた。

○ 授業実践を通して,ねらいとしていた動きを身に付けると同時に,「相手のいない場所を見付 けて,鬼をかいくぐりながら突破していく」「突破させないようにタグを取って侵入を防ぐ」こ とを楽しみながら学習を進める姿があった。

 また,課題としては,以下の通りである。

● ゴール型における指導内容の整理を「競争目的」を手掛かりにしながら進めたが,指導内容の 整理が妥当であったか,指導した内容が次の単元や次の学年でどのように生かされていいくのか を,授業実践を蓄積しながら横断的に検証する必要がある。

● 授業実践の中で,子どもたちは何に楽しさを感じていたのか,指導した内容がどれぐらい身に 付いているのかなどを検証するために,質問紙による形成的振なり返りや動画による分析など検 証の方法を工夫する必要がある。

● 整理した指導内容を基に,設定できそうな教材も含めた6年間の指導計画(ゴール型)を修正 していく必要がある。

● 他の型でも,設定した道筋を基に指導内容を明確にしながら実践を積み重ねる必要がある。

6. おわりに

 本研究では,現行学習指導要領の中のボールゲーム(ゴール型)において,2学年のまとまりで

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當房 省吾:ボールゲームにおける指導内容を明確にした体育科学習指導の構想

示されている指導内容を,子どもたちにとっての面白さ(魅力,価値)や学びの連続・発展の文脈 を考えながら整理した授業づくりを構想・実践することを通して,ボールゲームの授業づくりのあ り方を検討することを目的とした。授業実践の中では,「勝ったか負けたか」という勝敗はもちろん,

それ以上に「相手につかまらないように突破する(させない)」ことに楽しさの中心をおいて鬼遊 びに熱中する姿が見られた。本実践後に,子どもたちから「鬼につかまらないように動く方法をた くさん見付けた」「つかまえる動きがたくさんできた」「まだまだやりたかった」「もう一度やって みたい」「来年も鬼遊びをしたい」という声がたくさん上がった。そのことは,まさに,相手と競 い合う事柄がうまく導き出され,ボールゲームの本質的な楽しさを味わい,自分の高まりを実感し ている姿であると同時に,学んだことを次へと生かそうという意欲をもつ姿であるともいえる。私 たち教師は,体育の授業を通して,目の前の子どもたちに「これからもっと運動したい」「もっと できるようになりたい」という思いをもたせ,生涯にわたって運動に親しむための資質・能力を育 成していくことを願ってやまない。そのような授業をつくるためには,「何を(指導内容)」「何で

(教材)」「どのように(指導方法)」指導していくのかということを明確にし,意図的・計画的に授 業を展開していく必要がある。そうすることが,目標−内容−方法がつながった授業づくりに結び 付き,よりよい学習指導が展開できると期待される。今後は,当該学年(単元)で子どもが身に付 けるべき内容は何か,それをどんな教材で学ばせるのかということはもちろんのこと,ゲームの状 況に応じた教師の働きかけや学習評価のあり方(指導と評価の一体化も含めて)などを研究・実践 する必要がある。

〈注〉

1) 本稿では,学習指導要領解説等における「ゲーム」「ボール運動」「球技」を総称して,「ボールゲー ム」と呼ぶことにする。

〈引用・参考文献〉

文部科学省(2008),学習指導要領解説体育編,東洋館出版

文部科学省(2010),学校体育実技指導資料第8集 ゲーム及びボール運動,東洋館出版

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鈴木理,土田了輔,廣瀬勝弘,鈴木直樹(2003),「ゲーム構造からみた球技分類試論」,体育・スポー ツ哲学研究,25−2,pp.7-23

清水茂幸・清水将,根木地淳・松村毅・菅原純也,加賀智子・高橋走,(2014),体育的学力の向上 を目指した授業の構想〜ボール運動ゴール型ゲームを中心として認識学習〜,岩手大学教育学部プ ロジェクト推進事業教育実践研究論文集,1, pp.7-10

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鈴木直樹・鈴木理,土田了輔・廣瀬勝弘・松本大輔(2010),だれもがプレイの楽しさを味わうこ とのできるボール運動・球技の授業づくり,教育出版

松田恵示(2009),「戦術学習」から「局面学習」へ−新しいボール運動系の学習指導の考え方−,

体育科教育57(4),pp.20-24

岩田靖(1994),教材づくりの意義と方法,高橋健夫編,体育授業を創る,大修館書店,pp.26-34 高橋健夫・岡出美則・友添秀則・岩田靖(2002),体育科教育学入門,大修館書店,pp.73-80

参照

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