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学校から社会への移行期における学生の学びと成長

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【資 料】

学校から社会への移行期における学生の学びと成長

―正課・正課外活動のバランスと社会人基礎力,アイデンティティとの関連に注目して―

井芹 まい*  河村 茂雄**

本研究は,学校から社会への移行期における大学生が,授業やアルバイトなどの正課・正課外活動を行う際,

その活動量を時間数ではなく重要度で捉えることで,どのようなバランスで活動することが社会人基礎力の能力 向上につながるのか,そして生き方理解へとつながっていくのかを検討したものである。研究型A大学の大学3, 4年生249名を対象に,質問紙調査を実施した。その結果,1)活動の重要度に応じて4クラスタの学生タイプ に分類され,社会人基礎力得点との関連から,先行研究の仮説を一部支持する結果となったこと,2)正課活動 と正課外活動とを多領域にわたり積極的に取り組むタイプは,自我同一性地位との関連においても,同一性達成 地位の者が多くみられたこと,の2点が明らかとなった。最後に,大学生の正課・正課外活動への取り組みと得 られる学びに関して,先行研究と比較しながら総合的に考察された。

キーワード:正課・正課外活動,社会人基礎力,アイデンティティ

【問題と目的】

知識基盤社会となった今日,情報化・グローバル化 が進む中,社会の変化に対応した資質・能力の育成が 求められている。学校教育を受けた子どもや若者が変 化の激しい現代社会に適応していけるのかという問題 は,学生が授業を受け学習に熱心に取り組むだけでは 済まず,それ以上のもの,すなわち仕事や人生に適応 していくための能力の育成として課せられている(溝 上,2015)。学校から社会・職業への学生の円滑な移 行を支えるためには,資質・能力は教育で暗に形成さ れるという話ではなく,明示的に育成していく(溝上・

中間・山田・森,2009)ことが必要となってくる。

このような必要性から,近年各省によりさまざまな 能力目標が提唱されている。具体的には,国内では文 部科学省から「生きる力(中央教育審議会,1996)」「学 士力(中央教育審議会,2008)」「基礎的・汎用的能力

(中央教育審議会,2011)」,経済産業省から「社会人 基礎力(経済産業省,2006,2010)」,内閣府から「人間

力(内閣府, 2003)」などである。国際的には,OECD が国際比較調査における比較可能な指標の開発を目指 し て,多 国 間 の 研 究 者 か ら な るDeSeCo(Definition and Selection of Competencies)プロジェクトを立ち上げ,

成 果 を キ ー・ コ ン ピ テ ン シ ー と し て 発 表 し て い る

(Rychen & Salganik,2003 立田監訳,2006)。松下

(2014)はこれらを“新しい能力”と呼び,まずは教 育的に育成可能なものとそうでないものの守備範囲を 画定することが不可欠である,と述べている。

この新しい能力の中でも「社会人基礎力(経済産業 省,2006,2010)」は,日常的な他者との関わりで半 ば「常識」的に身に付けてきたものを再定義し,育成・

評価していくことを目指したものである。社会人基礎 力は理想的な社会人としての必要十分条件ではなく,

社会人として周囲に受容されるための「必要条件」だ けを議論して誕生した経緯があり,「社会的能力(social skills)」,「一般的能力(generic skills)」と共通性の高い コンセプトとして12の能力要素が抽出され,「前に踏 み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」

「チームで働く力(チームワーク)」という3種類に 大別されている(諏訪,2013)。社会人基礎力が提唱 されてからは,大学教育のラーニングアウトカムの視

*  早稲田大学

** 早稲田大学教育・総合科学学術院

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点からさまざまな調査研究が実施され,評価の指標の 1つとして幅広く活用されている(秋元,2012;北島・

細田・星,2012;松本・森山,2012;山田・押江・田 中,2010)。

ところで,これまでの学生の資質・能力育成に関す る研究は,主に正課・正課外活動における取り組み方 の視点から整理がなされてきた(Kuh,1995,2003; 原田・石本・王・山根・日潟・田仲,2016;畑野・溝 上,2013;三保,2013;溝上,2009;大野,2003;田 島,2010;山田,2004ほか)。例えば溝上(2009)は,

大学生の学びと成長に関して,全国調査により「よく 遊び・よく学ぶ」学生の能力特性に関して論じている。

具体的には,(1)授業・授業外学習をバランスよく行 う学生は自らの成長を実感していること,(2)授業外 の大学生の過ごし方が授業での知識・技能の獲得に効 果的であること,の2点を実証したうえで,活動量の 差異を主に時間の多さ(時間数)の観点から論じてい る。しかしながら,日常的な生活と生き方(キャリア)

とのつながりを理解する学生が少ないとし,課題であ ることを述べている。その後,畑野・溝上(2013)は,

大学生の学びの量的な側面である「授業・授業外の学 習領域にまんべんなくかける時間の多さ(時間数)」と,

質的な側面である「学生の主体的な授業態度(関与)」 の両面を測ることが学生の学びを検討するのに重要で あることを示し,「授業内学習時間」「授業外学習時間」

「自主学習時間」と「主体的な授業態度」との相関の 強さの違いから,時間数では測定されない学習の質的 な違いについて明らかにしている。さらに近年の研究 において,原田ら(2016)は,正課外活動を行う大学 生の活動時間数と学びの変数としての「自我同一性」

「汎用的技能」との関連を検討したところ,相関が.2 以上を示さなかったが,活動種類数と「自我同一性」

「汎用的技能」との関連を検討した結果,1~2年生 の段階では「自我同一性」および「汎用的技能」にお いてほぼ無関連であるが,3~4年生になると複数領 域において.2以上の正の関連を示すことを明らかに している。以上より先行研究を概観すると,学生が正 課・正課外活動を行う際,学びと成長に必要となるバ ランスの良さとは,活動領域にかけるある程度の「時

間の多さ(時間数)」は必要であるものの,最終的に 生き方とのつながりを理解するためには,活動の種類 数や,活動領域への主体的な態度である「関与」の仕 方が影響するのではないか,ということが予想できる。

大野(2003)も,生き方理解としてのアイデンティテ

ィ形成(Erikson,1959)に作用するためには授業と

授業外の活動のバランスが重要と述べるが,ここでの バランスとは時間の多さではなく,複数の活動領域に 対して自分がどのように重要性を感じているのか,そ の上でどのようにかける時間に優先順位をつけて取り 組んでいくのか,という意味において用いられている ものと考えられる。

さらに,学生の正課・正課外活動における取り組み の成果として,技能・態度の習得から生き方理解まで を含めた検討をする場合,大学の種別や学年特有の様 相を想定したサンプリングの実証的研究が少ないのが 現状である。たとえば溝上(2009)は,大学偏差値別 の学生タイプの割合を出しており,「よく遊び・よく 学ぶ」タイプは偏差値が上位の大学には有意に多くみ られなかったことを示している。偏差値が上位にのぼ る大学の多くは“研究型大学”に分類され,学力を重 視する風潮が色濃く残っているゆえに,人間性の鍛錬 の部分は個人の自主性に任されている風潮があると予 想される(郭,2015)。将来グローバルに活躍できる 人材育成を視野に入れた大学教育の目的からすれば,

社会に出てから実践力として活用できる社会人基礎力 のような能力を,研究型大学の学生にこそ明示し,育 成していく必要性があるのではないかと考えられるの である。

以上のことから本研究では,将来展望が明確になり やすい(原田ら,2016)と予想される大学3~4年生 を対象に,活動量としての時間の多さ(時間数)では なく,活動領域の種類や関与の仕方によって活動タイ プを分類することで,研究型大学の大学生における社 会人基礎力の獲得の度合い,および生き方理解として のアイデンティティ形成の実態を詳細に明らかにする ことを目的とした。

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【方 法】

調査対象 研究型A大学の大学3,4年生249名(男 子127名,女子122名)を対象とした。平均年齢は 21.06歳(SD=.90)であった(Table 1)。

Table 1 被験者属性

3年 4年 合計

男子 68 59 127

女子 75 47 122

合計 143 106 249

調査時期 2013年7月上旬から8月上旬に,各尺度 からなる無記名の個人記入形式の質問紙を大学の講義 後,あるいは友人による配布の協力等を経て実施した。

実施に当たっては,「回答はコンピューターにより 統計的に分析するため,迷惑がかかることはありませ ん」と教示し倫理的配慮を行った。

測定用具

ⅰ)山田(2004)や溝上(2009)を参考にして,大学 生の日常生活における活動重要度を尋ねる項目を作成 した。具体的には,「授業・講義」「ゼミ」「部活・サ ークル」「アルバイト」「自己研鑽のための活動(例:

ボランティア活動・読書など。大学内外を問わない。)」 の5領域で構成される。評定は「5.重要である」~「1. やっていない」の5件法である。なお,本研究におけ る「アルバイト」は,先行研究を参考に,正課外活動 に含まれるものとして定義した。 

ⅱ)北島・細田・星(2011)の「社会人基礎力尺度」

36項目に,先行研究でα係数の低かった「ストレス コントロール」「傾聴力」「課題発見力」の項目につい て,本研究者と心理学を専門とする大学教員,および 大学院生3名により検討して新たに3項目加えたもの を用いた。教示文は,“あなたが所属している集団で の行動についての質問です。”とした。評定は,「6. 非常にあてはまる」~「1.全くあてはまらない」の 6件法である。

ⅲ)加藤(1983)の「自我同一性地位判定尺度」12 項目を用いた。目標の自覚と努力を表す『一般的な現 在の自己投入の水準(“私は今,自分の目標をなしと

げるために努力している”など)』4項目,疑問・迷 いと決断を表す『一般的な過去の危機の水準(“私は,

自分がどんな人間なのか,何をしたいのかということ をかつて真剣に迷い考えたことがある”など)』4項目,

意欲と探索を表す『一般的な将来の自己投入の希求の 水準(“私は,一生懸命に打ち込めるものを積極的に 探し求めている”など)』4項目からなり,これらの3 側面から自我同一性の形成プロセスを捉えて達成の程 度を示したものである。評定は,「6.まったくそのと おりだ」~「1.全然そうではない」の6件法である。

【結 果】

1 )大学生の正課・正課外活動の重要度タイプの作成,

および社会人基礎力との関連

まず,大学生の正課・正課外活動における活用重要 度を尋ねる5領域を「重要である=2点」~「重要で ない=-2点」,「やっていない=0点」という形で得 点換算し,標準得点化した。そのうえで階層クラスタ 分析(Ward法)を行い,解釈可能な4つのタイプを 抽出し,“活動の重要度タイプ”を作成した(Figure 1)。

各タイプの特徴は以下のように命名した。まずCL1 は授業の重要度得点が低く,それ以外の得点が高いた め,「授業以外の重要性高群」とした。続いてCL2は 自己研鑽の重要度得点が低く,それ以外の得点は高い ため「自己研鑽以外の重要性高群」とした。CL3はア ルバイトの得点が低く,それ以外の得点が高いため,

「アルバイト以外の重要性高群」とした。CL4は,部 活動・サークルの重要度得点はほかに比べて若干低い が,すべての得点が高いため,「すべての重要性高群」

とした。

続いて,社会人基礎力尺度においては井芹・河村

(2016)の「チームワーク」「シンキング&アクション」

「リーダーシップ」得点を採用した(Table 2)。これ ら3つの得点を合算し,社会人基礎力得点(総合)と した。大学生の活動の重要度タイプごとの社会人基礎 力の能力要素の得点差を調べるために一要因分散分析 を行ったところ,一部有意な得点差がみられた。具体 的にはシンキング&アクション得点において,CL2「自

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Figure 1 大学生の正課・正課外活動の重要度タイプ分類(階層的クラスタ分析・Ward法)

Table 2 因子分析結果(社会人基礎力尺度)

M SD h2

Ⅰ チームワーク       α=.91

25自分の意見を持ちながら,メンバーの意見も共感を持って受け入れている。 4.52 1.02 .85 .00 -.10 .47 27立場の異なるメンバーの背景や事情を理解している。 4.37 1.07 .75 -.08 .07 .48 26なぜそのように考えるのか,メンバーの気持ちになって理解している。 4.37 1.08 .74 -.11 .14 .51 24先入観や思い込みをせずに,メンバーの話を聞いている。 4.22 1.11 .70 -.02 -.11 .53 23相槌や共感等により,メンバーに話しやすい状況を作っている。 4.58 1.10 .69 -.12 .06 .49 31メンバーに迷惑をかけないように,ルールや約束・マナーを理解している 4.76 1.03 .68 -.06 .10 .44 30周囲の人間関係や忙しさを把握し,状況に配慮した行動をとっている。 4.45 .96 .66 .05 .04 .59 32メンバーに迷惑をかけたとき,適切な事後の対応をしている。 4.64 1.03 .66 -.01 .05 .31 33規律や礼儀が求められる場面では,礼節を守ったふるまいをしている。 5.00 .99 .60 .06 -.06 .40 29自分にできること,他のメンバーができることを判断して行動している。 4.59 .84 .50 .10 .09 .44 38グループでの自分のタイプや癖を理解している。 4.86 .90 .48 .15 -.14 .37 36ストレスを感じても,考え方を切り替え,コントロールしている。 4.35 1.13 .46 .06 -.08 .36 22内容の確認や質問等を行いながら,メンバーの意見を理解している。 4.41 .91 .45 .06 .24 .32 28周囲から期待されている自分の役割を把握して,行動している。 4.43 1.07 .42 .29 .09 .26

Ⅱ シンキング&アクション  α=.89

9 困難な状況から逃げずに目標に向かって取り組み続けている。 4.36 1.05 .06 .84 -.26 .26 7 目標達成に向かって粘り強く取り組み続けている。 4.51 1.11 -.07 .76 -.06 .60 8 とにかくやってみようとする果敢さを持って課題に取り組んでいる。 4.54 1.07 .04 .71 -.17 .60 3 自分の役割や課題に対して自発的・自律的に行動している。 4.51 1.00 .07 .62 .08 .45 11 現状を正しく認識するための情報収集や分析をしている。 4.09 1.05 .00 .61 .03 .44 14目標達成までの計画と実際の進み具合の違いに留意している。 4.03 1.14 -.16 .61 .13 .46 2 困難なことでも自分の強みを生かして取り組んでいる。 4.45 .92 .27 .60 -.16 .40 10目標達成のために現段階での課題を的確に把握している。 4.28 1.00 -.03 .57 -.01 .62 13目標達成までのプロセスを明確化し,実用性の高い計画を立てている。 3.95 1.14 -.11 .56 .26 .62 16複数のもの・考え方・技術等を組み合わせ,新しいものを作り出している。 3.82 1.16 .07 .49 .06 .57 18目標達成を意識し,新しいものを生み出すためのヒントを探している。 4.08 .98 -.02 .48 .08 .45 15計画の進み具合や不測の事態に合わせて,柔軟に計画を修正している。 4.18 1.08 -.06 .45 .27 .39 17従来の常識や発想を転換し,新しいものや解決策を作り出している。 3.84 1.19 .09 .40 .09 .50

Ⅲ リーダーシップ      α=.83

20メンバーがどのような情報を求めているかを理解して伝えている。 3.97 1.04 .03 -.09 .80 .51 19グループでの取り組みで,メンバーに情報をわかりやすく伝えている。 4.11 1.09 .02 -.03 .78 .47 4 メンバーの協力を得るために,メンバーの行動の必要性や目的を伝えている。 4.24 1.02 -.08 .17 .67 .35 21話そうとすることを自分なりに理解したうえでメンバーに伝えている。 4.57 1.03 .22 -.08 .55 .20 6 グループの目標を達成するために,積極的にメンバーに働きかけている。 4.11 1.12 .00 .39 .45 .24

因子間相関 -

.48 -

.60 .50 -

(5)

己研鑽以外の重要性高群」,CL3「アルバイト以外の 重要性高群」よりも,CL4「すべての重要性高群」の 方が高かった。また,社会人基礎力の総合得点におい て,CL3「アルバイト以外の重要性高群」よりもCL4

「すべての重要性高群」の方が高い傾向がみられた

Table 3)。

2 )正課・正課外活動の重要度タイプとアイデンティ ティとの関連

はじめに,水本・山根(2011)を参考に「自我同一 性地位判定尺度」による類型化を行った。まず「一般 的な現在の自己投入の水準」「一般的な過去の危機の 水準」「一般的な将来の自己投入の希求の水準」の各 項目の素点を合計し項目数で除したものを「投入」得 点,「危機」得点,「将来」得点とし,これらの中央値

(「 投 入 」:Mdn=4.25,「 危 機 」:Mdn=4.25,「 将 来 」: Mdn=4.00)を基準に高低で2分割した。そして,「投入」

低群で「将来」低群を「同一性拡散」,「投入」低群で

「将来」高群を「モラトリアム」,「投入」高群で「危 機」低群を「早期完了」,「投入」高群で「危機」高群 を「同一性達成」と分類した。

続いて,正課・正課外活動の重要度タイプと自我同 一性地位との関連を調べるために,4タイプの度数分 布を算出しx二乗検定を行ったところ,双方に有意な 偏りがみられた(x2=17.75,p<.05df=9)ため,残 差分析を行った。その結果,CL1「授業以外の重要性 高群」においては,同一性地位の分類に有意な偏りが みられなかった。CL2「自己研鑽以外の重要性高群」

においては,同一性拡散地位の度数が有意に高く,同 一性達成地位の度数が有意に低い傾向がみられた。

CL3「アルバイト以外の重要性高群」においては,モ ラトリアム地位の度数が有意に高い傾向がみられた。

CL4「すべての重要性高群」においては,同一性達成 地位の度数が有意に高く,同一性拡散地位の度数が有 意に低かった(Table 4)。

Table 3 活動の重要度タイプごとの社会人基礎力の能力要素の平均値

N=60CL1) CL2

N=57) CL3

N=70) CL4

N=62F値 多重比較 チームワーク 4.52 4.52 4.41 4.68 1.40 n.s.

(.69) (.67) (.69) (.68)

シンキング&アクション 4.20 4.03 4.14 4.45 4.08** CL2,CL3<CL4

(.71) (.73) (.62) (.67)

リーダーシップ 4.17 4.21 4.10 4.33 .86 n.s.

  (.80) (.83) (.79) (.87)

社会人基礎力(総合) 12.80 13.16 12.17 13.18 2.69† CL3<CL4

(1.71) (1.80) (1.83) (2.05)

()内は標準偏差, **p<.01,†p<.10

Table 4 活動の重要度タイプごとの社会人基礎力と自我同一性地位との関連

CL1 CL2 CL3 CL4 合計

同一性達成 度数 23 13▽ 18 29▲ 83

% 9.24% 5.22% 7.23% 11.65% 33.33%

調整済み残差 .94 -1.92† -1.59 2.59**

早期完了 度数 11 12 11 11 45

% 4.42% 4.82% 4.42% 4.42% 18.07%

調整済み残差 .06 .67 -.60 -.08

モラトリアム 度数 9 9 19▲ 13 50

% 3.61% 3.61% 7.63% 5.52% 20.08%

調整済み残差 -1.13 ‐.92 1.74† .20

同一性拡散 度数 17 23▲ 22 9▽ 71

% 6.83% 9.24% 8.84% 3.61% 28.51%

調整済み残差 -.04 2.25* .64 -2.82**

合計 60 57 70 62 249

**p<.01, *p<.05,†p<.10

(6)

【考 察】

本研究では,学校から社会への移行期における研究 型大学の大学生の正課・正課外活動の取り組み方を,

時間数ではなく重要性の度合いによって捉えることで,

活動タイプにおける社会人基礎力の獲得の度合い,お よび生き方理解としてのアイデンティティ形成との関 連を明らかにすることを目的とした。結果をもとに以 下の2点について考察していく。

1 )大学生の正課・正課外活動の重要度タイプの作成,

および社会人基礎力との関連

本研究における大学生の正課・正課外活動の重要度 タイプは4タイプの様相に分かれた。先行研究の溝上

(2009)との比較により,同様の結果になった点,お よび異なっていた点に関して述べる。

まず先行研究と同様の結果となったのは,CL1およ びCL4タイプの学生群の出現である。CL4「すべて の重要性高群」は,溝上(2009)の“よく遊び・よく 学ぶ”学生に該当し,社会人基礎力の総合得点が高く,

その中でも「自分の役割や課題に対して自発的・自律 的に活動している」「目標達成までのプロセスを明確 化し,実用性の高い計画を立てている」などのシンキ ング&アクション得点,すなわち“主体的な学習態度

(畑野・溝上,2013)”が身に付いている学生と予想 される。一方でCL1「授業以外の重要性高群」は,大 学は勉強する場だというよりも,部活・サークル・ア ルバイトなどを通して対人関係を磨いたり,人的ネッ トワーク,社会人意識を形成したりすることに重きを 置く昔ながらの学生タイプ(溝上,2009)であると予 想される。CL1タイプの学生は,部活・サークルや自 己研鑽の活動に比べて,他の領域への重要性が低く,

両者の落差が大きいという特徴をもつ。ゆえに,溝上

(2009)の述べる“授業外の過ごし方が授業での知識・

技能の獲得に効果的に作用する”状態にはなっていな い可能性が考えられる。

続いて先行研究と異なっていたのは,CL2および CL3のタイプの学生群の出現である。CL2「自己研鑽 以外の重要性高群」およびCL3「アルバイト以外の重

要性高群」は,CL4「すべての重要性高群」に比べ社 会人基礎力の中でもシンキング&アクションの得点が 相対的に低い。このタイプの学生は,授業,ゼミ,部 活・サークルなど,大学のカリキュラムにおいて必然 性のある活動に対しては重要と感じているものの,“自 己研鑽”や“アルバイト”など,授業外の活動に対し てはあまり重要と感じていないことが予想される。す なわち,シンキング&アクション得点のような“主体 的な学習態度(畑野・溝上,2013)”に関する能力要 素は,CL4の学生タイプに比べて低く評価しているこ とが想定される。

さらに,CL3はCL4に比べて社会人基礎力総合得 点も相対的に低いことが明らかとなった。その原因と して,大学生の活動タイプにおける“アルバイト経験 の意味づけ”の重要性が予想される。たとえば田島

(2010)は,アルバイトにおける役割形成が大学生の 主体性の自覚と有意味な社会的定位に関連しているこ とを示している。また三保(2013)は,キャンパス外 の活動としてアルバイトに注目し,学生の勉強との両 立の様相を分析した結果,「勉強大事群」よりも「両 方大事群」において,アルバイトに対して抱く社会的 機能が主体的な学びや自己成長のための学びに大きく 影響していることを明らかにしている。これらのこと により,大学3~4年生において社会人基礎力に差異 が生まれる大学生活の過ごし方としては,授業外の学 習,特にアルバイト活動を重要視しながらも,同時に 授業についても重要視する姿勢にあることが考えられ る。

2 )正課・正課外活動の重要度タイプとアイデンティ ティとの関連

大学生の正課・正課外活動の重要度タイプと自我同 一性地位との関連を調べた結果,CL4「すべての重要 性高群」では同一性達成地位の者が多く存在した。こ のことにより,溝上(2009)の述べる「よく遊び・よ く学ぶ」学生群は,生き方理解に関しても日常生活と のつながりを意識できている可能性が示唆される。

一方CL2「自己研鑽以外の重要性高群」では,同一 性拡散の者が多く存在し,同一性達成地位の者が少な

(7)

かった。自己研鑽のための活動とは,溝上(2009)に おける“自主学習”や,畑野・溝上(2013)における

“主体的な授業態度“の側面をもつことが予想される。

したがって,この活動に重要性を感じにくい学生タイ プは,生き方理解に関してもつながりを意識しにくい 様相が推測される。

またCL3「アルバイト以外の重要性高群」では,モ ラトリアム地位の者が多く存在する傾向がみられた。

アルバイト活動は,大学生の役割形成や主体的な自覚 を生起させる契機となる(田島,2010)ことから,ア ルバイト活動に重要性を感じにくいタイプは,主体的 な自己や社会的定位を獲得するために社会的な役割を もって自己投入することができておらず,生き方理解 においてもモラトリアム心性に陥る可能性が示唆され る。

最後にCL1「授業以外の重要性高群」では,アイデ

ンティティとの関連において人数に偏りがみられなか った。この要因として,CL1は他の群と比べて活動を 重要と感じている領域と他の領域との意識の間に落差 があり,個人の重要性の範囲を複数に広く意識してい るというよりは,限定して活動している可能性が推測 される。授業と授業外という領域の異なる場面での知 識・技能の獲得が相互作用する状態とはなっていない

(溝上,2009)傾向にあり,活動重要性の高い領域で の自分とそうでない自分とを切り離して捉えている可 能性が考えられる。すなわち,アイデンティティ形成 に作用するための自己の捉え直しは途中段階にあり,

偏りという形での様相とならなかったのではないかと 推測される。

【まとめと今後の課題】

本研究では,学校から社会への移行期における研究 型大学の大学生の正課・正課外活動への活動重要度タ イプと社会人基礎力の獲得の度合い,および生き方理 解としてのアイデンティティ形成の実態を明らかにし た。結果,各タイプの様相は以下のようになると考え られる。

「授業以外の重要性高群」の学生は,部活動・サー

クルや自己研鑽の活動に比べて他の領域への重要性が 低く,両者の落差が大きいという特徴をもつ。授業外 の過ごし方が授業での知識・技能の獲得に効果的に作 用する状態にはなりづらく,社会人基礎力の身に付き 方に今回の結果で有意な差はみられなかった。また,

活動重要性の高い領域での自分とそうでない自分とを 切り離して捉えている可能性が考えられ,アイデンテ ィティ形成に作用するための自己の捉え直しは途中段 階にあると考えられる。

「自己研鑽以外の重要性高群」の学生は,授業,ゼ ミ,部活・サークルなど,大学のカリキュラムにおい て必然性のある活動に対しては重要と感じているもの の,授業外の自発的な活動に対してはあまり重要と感 じていない可能性がある。ゆえに,主体的な学習態度 に関する能力要素は低く評価していることが想定され る。また生き方理解に関しても,正課・正課外活動と のつながりを意識しにくい様相が考えられる。

「アルバイト以外の重要性高群」の学生は,授業以 外の活動に対してはあまり重要と感じておらず,主体 的な学習態度に関する能力要素は低く評価しているこ とが想定される。正課外活動の中でもアルバイト活動 は,先行研究より,大学生の主体性の自覚と有意味な 社会的定位の獲得を促進することや,勉強との両立が 学びと成長に作用することが分かっているが,このよ うなアルバイト経験への意味づけを肯定的に意識しづ らいことが原因となり,社会人基礎力を総合的に低く 評価していることが考えられる。さらに,社会的な役 割をもって自己投入することができておらず,生き方 理解においてもモラトリアム心性に陥る可能性が示唆 される。

「すべての重要性高群」の学生は,溝上(2009)の

“よく遊び・よく学ぶ”学生に該当し,社会人基礎力 の総合得点が高く,その中でも「自分の役割や課題に 対して自発的・自律的に活動している」「目標達成ま でのプロセスを明確化し,実用性の高い計画を立てて いる」などのシンキング&アクション得点,すなわち 主体的な学習態度が身に付いている。そして,生き方 理解に関しても日常生活とのつながりを意識できてい ることが予想される。

(8)

本研究は,大学3~4年生という自己のアイデンテ ィティ形成に意識がより向かう時期において,学生の 正課・正課外活動への取り組み方のタイプ分類を行う ことにより,複数の活動領域への関与の重要性や,知 識・技能の獲得度合い,および生き方理解の過程が可 視化されたことに意義があると考えられる。社会への 移行期における大学生は,将来の自分のキャリアを模 索する重要な時期(Erikson,1959)であるがゆえに,

生き方の選択を迫られ,そのために長い時間や労力が 費やされる可能性がある。多くの時間を取られがちな 正課・正課外活動への関与をあきらめることで,刹那 的に生き方の選択をしがちな今日,それらの活動が重 要であると感じ,同時進行で複数領域にバランスよく 折り合いをつけて活動する学生タイプは,知識・技能 の獲得や自己の生き方理解を深めている可能性が明ら かとなったのである。

しかしながら今回の調査結果では,詳細な臨床像を 提言するには限界がある。質的にインタビュー調査を 進めるなどして,生き方理解に変化がみられた学生を 分類することにより結果の妥当性を検証していく必要 性があるだろう。今後の課題としたい。

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(2017年5月31日受稿,2017年9月25日受理)

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What Students Can Learn to Acquire in the Transitional Phase from College to Work:

Relations among Regular and Extra-curricula Activities, Fundamental Competencies for Working Persons and Ego-Identity

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This study examined what type of students, as they prepare for life after graduation, tend to acquire Fundamental Competencies for Working Persons as well as understanding of functional living. 249 college juniors and seniors took a questionnaire regarding their values and priorities of regular and extra-curricula activities such as class attendance and part- time jobs. Results showed that 1) there were 4 student types clustered by their prioritized activities, which partly supported related previous research hypotheses, and 2) one of the student types (active in various regular and extra-curricula activities) had a greater number of students who established their Ego-Identity. The results were examined through comparisons with previous research results on student regular and extra-curricula activities and experiential learning.

Keywords: regular and extra-curricula activities, Fundamental Competencies for Working Persons, Ego-Identity

参照

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