東北地方太平洋沖地震における新幹線トンネルの被害と復旧
東日本旅客鉄道㈱ 正会員 ○松沼 政明 東日本旅客鉄道㈱ 正会員 齋藤 貴
1.はじめに
2011
年3
月に発生したMw9.0
の東北地方太平洋沖地震に おいて,一部の新幹線トンネルが被害を受けた.被災トンネ ルのうち特に被害が大きかったのは福島トンネルと志賀ト ンネルである(図1).本稿では,これら 2
トンネルの被災概 要および復旧の概要,断面計測による変位の推移について述 べる.2.福島トンネル
福島トンネルは,東北新幹線郡山~福島間に位置する延長
11,705m
のトンネルである.被害を生じた区間の地質は泥岩と凝灰岩の互層となっている
(
図2)
.掘削工法は,上部半断 面先進レール工法,底設導坑先進上部半断面工法で施工され,支保工は
H175
,ctc1.3m
,覆工厚は50cm
,路盤構造は,り ょう盤コンクリートであり(図3),1976
年4
月にしゅん工し た.なお,震央からの距離は153km
である.福島トンネルの被害は,延長約
160m
の区間において,中央 通路部の側壁傾斜,底板損傷等の被害が生じ,さらに中央通 路側のレールが側壁側よりも相対的に高くなる水準変位が 大きく発生した.図4
に中央通路部の変状写真を示す.当該 区間の軌道の高低(レベル測量による相対高さ)データを図5
に示す.図5
中,横軸がキロ程,縦軸がトンネル内に仮の基 準点を設定した場合の軌道の相対高さを示す.下り線の軌道 検測の結果からは,水準変位量(
左右レールの高低差)
は最大 で67mm
であった.これは,中央通路側が側壁側に比べ,相 対的に高くなっていることを示している.3.志賀トンネル
志賀トンネルは,東北新幹線白石蔵王~仙台間に位置する
延長
3,502m
のトンネルである.被害を生じた区間の地質は,泥岩や頁岩,凝灰岩,角礫凝灰岩などが複雑に組み合わさっ た地質,地層構造となっている(図
6).掘削工法は,側壁導
坑先進上部半断面工法のほか,2段サイロットやスプリング サイロット工法が用いられ,支保工はH200,ctc0.9,1.0m,
覆工厚は,
70
,90cm
,インバート構造であり(
図7)
,1976
年3
月にしゅん工した1).なお,震央からの距離は117km
であ る.キーワード 東北地方太平洋沖地震,新幹線,トンネル
連絡先 〒
151-8578
東京都渋谷区代々木2-2-2
東日本旅客鉄道㈱ 構造技術センター TEL03-5334-1288
泥岩 凝灰岩
花崗閃緑岩 花崗閃緑岩
流紋岩
凝灰角礫岩 凝灰角礫岩
被災箇所
福島T入口
福島T出口
泥岩 凝灰岩
花崗閃緑岩 花崗閃緑岩
流紋岩
凝灰角礫岩 凝灰角礫岩
被災箇所
福島T入口
福島T出口
図1 被災トンネル位置図
図2 福島トンネル地質縦断図
図4 福島トンネル中央通路変状
図3 福島トンネル断面図
水準変位 水準変位
図5 福島トンネル被災区間軌道計測結果(下線)
東北新幹線 福島トンネル 下り線
0 40 80 120 160
242k300m 242k350m 242k400m 242k450m 242k500mキロ程(m)242k550m 左レール 右レール
242k297mを基準とした 高さ(mm)
福島T(震央から153km) 志賀T(震央から117km)
新白河
郡山 福島 白石蔵王
仙台
古川
×
震央 北緯38.0度 東経142.5度
0km 20km N
2011.3.11 14:46頃 Mw9.0
泥岩
安山岩 凝灰角礫岩 安山岩 凝灰角礫岩 凝灰角礫岩
砂岩
被災箇所
志賀T入口
志賀T出口 泥岩
安山岩 凝灰角礫岩 安山岩 凝灰角礫岩 凝灰角礫岩
砂岩
被災箇所
志賀T入口
志賀T出口
図6 志賀トンネル地質縦断図
土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)
‑191‑
Ⅵ‑096
志賀トンネルの被害は,延長約
700m
の区間にお いて福島トンネルと同様に路盤部の隆起に伴う中 央通路変状および軌道変状であった.図8
に志賀ト ンネルの中央通路部の変状写真を示す.図9
に志賀 トンネルの主要な変状区間の上下線軌道の高低デ ータを示す.図9
の横軸が線路方向のキロ程(m)
, 縦軸が,左レール,右レールそれぞれの高さ(mm) を示している.なお,高さはトンネル内に仮の基準 となる点を設けて相対的な高さを測定したもので ある.図9
より,志賀トンネルの軌道変位は,3箇 所にピークを持った軌道の隆起であることがわか る.さらに,3箇所とも軌道の中央通路側のレール が側壁側のレールに対して隆起傾向にあった.4.復旧概要
復旧方針として,路盤のはつりおよびスラブ据え なおし,ならびにりょう盤コンクリート下の地山等 への空隙および開口部へのセメントミルク等の充 填を主な工種とした応急復旧により,早期の運転再 開を行い,運転再開後に路盤部および側壁部へのロ ックボルト打設(図
10,11)を行う本復旧とに分けて
実施した.5.断面計測
被害を受けたトンネルの応急復旧による運転再 開にあたり,路盤部及び内空変位の計測監視を継続 実施することとした.志賀トンネルにおける変位測 定断面の例を図
12
に,ロックボルト打設前後の内 空変位計測の例を図13
に示す.図13
の縦軸が内空 変位,横軸が日付である.図13
に示す例では,内 空幅が縮小傾向にあったものが,側壁および路盤部 へのロックボルトの打設により,内空変位の収束が 確認された.6.まとめ
2011
年3
月の東北地方太平洋沖地震において,一部の新幹線トンネルが被害を受けた.当該地震に おけるトンネルの特徴的な被害は,トンネルの一部 区間における路盤部の隆起であった.復旧方法とし て,早期の運転再開を図るために,路盤部の空隙充 填,軌道スラブの据えなおしによる応急復旧を行い,
運転再開後に路盤および側壁下部へのロックボル ト打設による本復旧を実施した.
参考文献
1)
田中康雄:軟弱地質の下半掘削,トンネルと地下,1975.12
図8 志賀トンネル中央通路変状
図7 志賀トンネル断面図
図10 ロックボルト打設パターン
(福島トンネル)
図11 ロックボルト打設パターン
(志賀トンネル)
+ +
ロックボルト L=4m
下 上 下 上
ロックボルト 側壁ロックボルト L=4m
L=6m
+ +
ロックボルト L=4m
下 上 下 上
ロックボルト 側壁ロックボルト L=4m
L=6m
東北新幹線 下り線 高低
-25 0 25 50
309k500m 309k700m 309k900m 310k100mキロ程(m) 左レール
右レール
B C A
309k502mを基準とした 高さ(mm)
図12 路盤高測定位置および内空変位測線
図13 内空変位の推移(図9におけるB区間の例)
図9 志賀トンネル中央通路変状
4 5
D1
5:内空測線 RL+1.5m
4:内空測線 RL+0.1m:図13に示す変位 U3:路盤高測点(上線側壁側)
U2:路盤高測点(上線突起コンクリート上) U1:路盤高測点(上線中央通路側) D3:路盤高測点(下線中央通路側) D2:路盤高測点(下線突起コンクリート上) D1:路盤高測点(下線側壁側)
D1 D1 U1 U2 U3
RL+0.1m 内空 (測線4)
-6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0
2011/3/23 2011/5/12 2011/7/1 2011/8/20 2011/10/9 2011/11/28 2012/1/17 2012/3/7
内空変位(mm) 309k810m
10/25~10/30 路盤RB設置
10/7~10/11側壁RB設置 4/25運転再開
土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)