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修士論文研究計画書

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20040615J

研究計画書

(2004年6月15日版)

東京大学大学院 人文社会系研究科

社会文化研究専攻 社会情報学コース

社会情報学専門分野

31-36133 坂h基彦

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1

. 研究テーマ

1.1. 研究題目

オンライン空間における自我(the self)とアイデンティティ(identity)形成および自己表出欲求:オン ラインコミュニティにおけるアバタ(avatar)とミニホムピ(minihompy)利用の日韓比較を通じて

1.2. 研究キーワード

オンラインコミュニティ,オンライン空間,アバタ(avatar),アイデンティティ,自我形成,自己表出 欲求,コミュニケーション形態,現実世界と仮想世界の関係,日韓比較

2

. 背景

高度情報化社会と呼ばれる今世紀に入り,日本でも光ファイバーやADSLに代表される高速インターネッ ト網が急速に普及し,インターネットの利用や,オンライン空間との接触の方法が急激に変容しつつある。 具体的に言えば,従来のパソコン通信から初期インターネットの段階までの電話回線を通じての接続では, データ伝送速度に限界があったため,テキストを中心とした断続的な接触が行われてきた。しかし,高速イ ンターネット網が普及するにつれ,流通する情報の中心は画像や動画へと移行し,接触形態も常時接続へと 変容していった。そして,このようなオンライン空間との接触の方法の変化の中で,オンライン空間におけ る人間の行動様式は大きく変化してきている。 さて,一般的にオンライン空間(サイバースペース,インターネット空間など,さまざまな語で呼ばれる が,本論文では意味を広く捉えるためにオンライン空間という語を用いることにする)においては,主体 (自然人・法人)は匿名性に裏打ちされた言論・行動の自由を与えられるという認識が一般的である。それ ゆえ,インターネットの登場以前は極めて限られた主体のみが行ってきた情報の発信が,インターネットが 普及した現在では数多くの主体により自由で広範囲に行われている。 しかし,オンライン空間は匿名性の支配する空間である,と簡単に結論づけるわけには行かない。確かに 匿名掲示板や匿名チャット,そして内部告発など,匿名性を最大限に活用した活動もしばしば見られる。ま た,ネットオークションなどのオフライン世界(現実世界)との関連性が高い(貨幣や物理的商品など,オ フライン世界においての価値や意味を持つ)分野では,オフライン世界とほとんど変わらないほどの実名性 を要求する場合もある。また,一方では,匿名性が確保されているオンライン空間においても,敢えてそこ で自我を持ったり,自己表現をしたいというユーザの欲求も存在する。その欲求を満たしているのが日韓両

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国のいくつかのポータルサイトで採用されているアバタであり,また,韓国のコミュニティサイト最大手の サイワールド(CYWORLD,싸이월드)で用いられているミニホムピ(minihompy,미니홈피)1) である と言える。 上述のアバタやミニホムピを取り扱う分析手段は数多く存在する。経済的な効果の側面,マーケティング の側面,また,ファッション(衣装学)の側面からのアプローチなどの側面から,特に韓国では多くの学位 論文が書かれている。また,コミュニティサイトに限らず,オンラインゲームやいわゆる出会い系サイトな ど,自我や自己表出がしばしば行われているサイトも存在する。しかしながら,本研究においては,オンラ イン世界,特に経済的な要因が少なく,オフラインとの関連性も比較的薄いと思われるコミュニティサイト に焦点を絞り,自我や自己表出に対する欲求について考察する。その手掛かりが,まさにアバタとミニホム ピなのである。 また,本研究では日本と韓国を比較しながら議論を進めるが,これは,a韓国においてインターネットの 普及率や利用率を見ても,世界有数の先進国と比肩,いや,それ以上の急速な発展と社会的変容が引き起こ されており,s高速インターネット網が急速に普及したため,オフライン世界の事象(経済,政治,文化な ど)の影響を受けながら,一種独特のオンライン文化が展開されているためであり,オンライン文化やオン ライン世界における現象や各種サービスが日本,ひいては世界に先駆けているという理由によるものであ る。また,日韓比較をしながらオンライン世界における現象を分析することによって,dあるオンラインコ ミュニティにおける現象やトレンドが,果たしてオンライン世界の特性によるものなのか,それとも日本と 韓国という国の違いによるものなのかを区別する手掛かりになる。これは,オンライン世界における一般的 な議論を進める上で不可欠である。また,日本よりも韓国の方が高速インターネット網の普及が早かったた め,社会的な現象やオンライン世界での動きが日本よりも顕著に見られるという点から,韓国を主研究対象 とし,日本を比較のための副研究対象としたい。

3

. 研究目的

本研究の目的は,まず,aオンライン世界における人間行動を自我形成と自己表出の両側面から分析する ことにより,オンライン世界が帯びている特質を明らかにし,sオンライン世界で形成される自我および自 己表出と,オフライン世界での自我および自己表出との関係性(類似点や相違点)を整理することにある。 1) ミニホムピとは,ミニホームページの縮約語と解釈してもよいものと思われる。このサービスを利用す ると,予め用意されているフォーマットに従って日記,掲示板,写真集などのページを簡単に作ることがで きる。また,ミニホムピを所有しているユーザ同士がイルチョンメッキ(일촌맺기,直訳的な意味では血縁 に入るの意)を行うことによって,ウェブリングや更新状況表示などが新たに作成され,ユーザ同士がまさ にネットワークを形成することに対して大きな助けとなっている。また,コミュニティサイトを運営するこ ともでき,さまざまなコミュニケーション要素が有機的・複合的に結び付いたサービスが提供されている。

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そして,これらの結果を踏まえ,dオンライン世界とオフライン世界において主体が,現段階ではどのよう な位置を占めており,今後,どの方向に向かって変化していくのか,また,変化していくべきなのかに関す る分析をすることにある2) 。

4

. 先行研究

アバタに関しては,日本ではまだ一般的に定着していないため,日本ではめぼしい論文はほとんどないの が現状である。韓国においても,サイバーコミュニケーション学会,社会学会,言論学会などの学会で正式 に発表された論文は数少ない。しかしながら,修士学位論文の中にはアバタを主題として,設問調査や統計 を扱ったものもあり,これらは水準は高くはないものの,研究の際には大きな助けになると思われる。ま た,ミニホムピに関しては,最近になってサーヴィスが開始され,ブームとなってまだ間もないために学術 的に扱った論文は韓国においても皆無である。しかしながら,韓国青少年開発院から,インターネットが青 少年に与える影響や,インターネット中毒に関する研究が報告書として発行されており,これを参考に研究 を進めることができるであろう。各種の白書や,研究機関の報告書も基礎的な資料として活用できるが,あ くまでも数値的なデータしか得られないため,あくまでも参考程度に利用することにする。 なお,細部的な研究に入る前には自我形成やアイデンティティ,オンライン世界に関し,一般的に書かれ た基礎文献を読み,整理する必要がある(これらの文献は現在,読みながら整理している段階である)。日 韓文化比較論に関しても同様である。これらの文献は7参考文献・資料の項にまとめて掲げたので,そちら を参照していただきたい。

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. 問題点と仮説

オンライン世界での自我形成および自己表出に関する行動は,従属−自律,匿名性−実名性の二軸によっ て生ずる四象限によって整理できると考えており,図示すると次ページの図のようになる(あくまでも試案 であるので修正される可能性もあることに留意されたい)。そして,ここで特徴的な象限は第一象限であ り,黄色で着色した仮面性の次元である。すなわち,匿名性−実名性の軸のみでは切り取れず,従属−自律 の軸を加えて初めて切り取ることのできる次元が仮面性の次元である。これまでは,オンライン世界での人 間活動を匿名性−実名性という軸に沿ってのみ分析する傾向が強かったが,ここに仮名性という象限を導入 することにより,匿名性−仮名性−実名性という三つの段階を考えることができる。そしてこの三つの段階 が,そのままオンライン上で自我形成からアイデンディディ確立,自己表出へという動きに沿っているので はないかと考えている。 2) 詳細は5問題点と仮説の項を参照されたい。

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また,現在でも,オンライン世界での自我やアイデンティティは一時的なもので,ニセモノの自我に過ぎ ず,ホンモノの自我はあくまでもオフライン世界のものであるという認識が支配的である。しかしながら, オンライン世界での自我やアイデンディティがオフライン世界での自我やアイデンディティと異なる場合も ある。それはもちろん匿名性に身を隠した攻撃性かも知れないし,現実世界から逃避するために創り出した (場合によっては性別までも変えて)自我やアイデンティティかも知れない。しかし,インターネットへ接 続されている時間が長くなり,オンライン世界で過ごす時間が長くなると,はたして上述の理論は正しいの か疑わしくなる。仮に覚醒時間中,オンライン世界で過ごす時間が10時間,オフライン世界で過ごす時間が 3時間という人物Qがいたとしよう。オフライン世界では食事を摂り,最小限の活動をするのみであり,精 神活動のほとんどの時間はオンライン世界でのチャットやゲーム,そして仕事や学業(最近はインターネッ トを用いて講義を行う場合も増えているし,いわゆるSOHOで仕事をしている人物ならばなおさらインター ネット利用時間は長くなる)に費やされているとしたら,オンライン=ニセモノ,オフライン=ホンモノと いう図式が成立すると主張することは難しい。オンライン世界でのQと,オフライン世界でのQが全く異な る自我を発露し,アイデンティティを確立しているとすれば,Qはいわば二重の自我・アイデンティティを 持った人物として扱われなければならないのではないだろうか。換言すれば複数の自我の両立が可能なの だ。残された問題は,このことをオフライン世界の大部分の人が認めるかどうかに尽きるのである。

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. 研究方法

4でも述べたように,研究しようとしている分野に直結する先行研究が少ないため,まずは一般的・基本 的な(古典的な)文献を読むことによって,自我や自己表出,アイデンティティに関する概念を整理する。 そして,韓国で出版されたり,図書館に保管されている文献を読んで,基本的な状況を把握して整理する。 従属 自律 実名性 匿名性 仮面性 アバタ ミニホムピ 2ch ネットアイドル メールアドレス ホームページ 各種ID 自我形成 自我形成 自己表出 自己表出

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なお,先行研究の少ない分野であるため,研究対象の範囲をあまりにも広げてしまうと収集がつかなくなる ため,文献も比較的豊富であり,韓国でアバタやミニホムピ文化を牽引しているのが小学校高学年から高校 生であることも考慮し,若年層(10代から20代)を研究の対象とすることとする。 そして次の段階として,アバタやミニホムピなどのサービスを提供している会社の担当者にインタビュー 調査を行う。その内容は,主にサービスを開始した経緯および契機や,社会動向をどう読んでいたか(そし てそのサービスが成功すると考えたか),今後はどのように発展していくと(させていこうと)考えている かに関するものであり,可能であれば主に利用している年齢層や,利用時間や利用回数などの数値的データ も参考にしたい。ただ,変化の激しい分野でもあり,社外秘の部分も多いため,各企業へのインタビュー調 査にも限界がある。 さらに,文献によってのみ研究を進めることも可能であるが,日韓の若年層(10代から20代)に対し,深 層調査(in-depth interview)を行って,オンライン世界に関してどのように考えているか,また,利用し ているか,そして自己表出の場としてどれほど活用しているかなどに関する意見を聴取したい。数値的な データを得ることは時間的に難しいので,日韓各数名から十名程度に協力してもらい,自由に自分の意見を 話してもらう,自由回答での調査を予定している。 そして,最終的にはオンライン世界をオフライン世界との関連でどこに位置づければよいのか,そして今 後,どの方向に向かって動いているのかを,図式化・理論化によって整理したいと考えている。

7

. 参考文献・資料

7.1. 西洋書

Alexander, Cynthia J. and Pal Lesile A., ed., Digital democracy : policy and politics in the wired world, Toronto : Oxford University Press, 1998.

Amsden, Alice H., Asia's next giant : South Korea and late industrialization, Toronto : Oxford University Press, 1989.

Dertouzos, Michael L., What will be : how the new world of information will change our lives, 1st ed., New York : Harper Collins Publishers, 1997.

Henslin, James M., ed., Down to earth sociology, 9th ed., New York : The Free Press, 1996.

Jones, Staven G., ed., Cybersociety : computer-madiated communication and community, California : Sage Publications, 1994

Loader, Brian D., ed., Cyberspace divide : equality, agency, and policy in the information society, London : Routledge, 1998

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Lull, James, Media, communication, culture : a global approach, 2nd ed., Cambridge : Polity Press, 2000 Slevin, James, The internet and society, Cambridge : Polity Press, 2000

Staubhaar, Joseph D., Media now : communications media in the information age, 2nd ed., California : Wadsworth / Thomas Learning, 2000.

Wang, Georgette, Servaes, Jan, and Goonasekera, Anura, ed., The new communications landscape : demystifying

media globalization, London : Routledge, 2000

7.2. 日本書

7.2.1. 一般書籍 赤城昭夫『インターネット社会論』東京:岩波書店,1996年. 池田謙一編『ネットワーキング・コミュニティ』東京:東京大学出版会,1997年. 池田謙一『社会科学の理論とモデル5 コミュニケーション』東京:東京大学出版会,2000年. 伊藤亜人『暮らしがわかるアジア読本 韓国』東京:河出書房新社,1996年. 伊藤守・西垣通・正村俊之編『パラダイムとしての社会情報学』東京:早稲田大学出版部,2003年. エリック・エリクソン,岩瀬庸理訳『アイデンティティ:青年と危機』東京:金沢文庫,1982年. (Ericson, H, Eric, Identity : Youth and crisys, No date.)

エリック・エリクソン,小此木啓吾訳編『自我同一性:アイデンティティとライフ・サイクル』東京:誠 真書房,1973年.(Ericson, H, Eric, Psychological issues : Identity and the life cycle, 1959.)

遠藤薫『電子社会論』東京:実教出版,2000年. 桂英史『メディア論的思考:端末市民の連帯意識とその深層』東京:青弓社,1996年. 喜多千草『インターネットの思想史』東京:青土社,2003年. 公文俊平『ネティズンの時代』東京:NTT出版,1996年. 粉川哲夫『メディアの牢獄:コンピューター化社会に未来はあるか』東京:晶文社,1982年. 児島和人編『講座社会学8 社会情報』東京:東京大学出版会,1999年. ジークムント・フロイト,竹田青嗣編,中山元訳『自我論集』東京:筑摩書房,1996年. シェリー・タークル,日暮雅通訳『接続された心:インターネット時代のアイデンディティ』東京:早川 書房,1998年.(Turkle, Sherry, Life on the screen, 1995.)

ジャン・ピアジェ,滝沢武久訳『思考の心理学』東京:みすず書房,1968年.(Piaget, Jean, Six études de

psychologie, 1964.

ゲオルク・ジンメル,北川東子編訳,鈴木直訳『ジンメル・コレクション』東京:筑摩書房,1999年. 月尾嘉男・浜野保樹・武邑光祐編,『原典メディア環境 1851―2000』東京:東京大学出版社,2001年.

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デイヴィット・ライアン,河村一郎訳『監視社会』東京:青土社,2002年.(Lyon, David, Surveillance

society : monitoring everyday life, 2001.

デジタル著作権を考える会『デジタル著作権』東京:ソフトバンク,2002年.

デリック・ドゥ・ケルコフ,片岡みい子・中澤豊訳『ポストメディア論』東京:NTT出版,1999年. (Derrick de Kerckhove, The skin of culture investigating the new electronic reality, 1995)

名和小太郎『サイバースペースの著作権:知的財産は守れるのか(中公新書1320)』東京:中央公論新 社,2002年.

ニコラス・ネグロポンテ,西和彦監訳・解説,福岡洋一訳『ビーイング・デジタル:ビットの時代』東 京:アスキー,1995年.(Negroponte, Nicholas, Being digital, 1995.)

西垣通・NTTデータシステム科学研究所編『情報都市論』東京:NTT出版,2002年. 花田達朗『メディアと公共圏のポリティクス』東京:東京大学出版会,1999年.

ハワード・ラインゴールド,沢田博監訳『バーチャル・リアリティ』東京:ソフトバンク,1992年. (Rheingold, Howard, Virtual reality, 1991.)

パトリシア・ウォレス,川浦康至・貝塚泉訳『インターネットの心理学』東京:NTT出版,2001年. (Wallace, Patricia, The psychology of the internet, 1999.)

ベネディクト・アンダーソン,白石さや・白石隆訳『増補 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流 行』東京:NTT出版,1997年.(Anderson, Benedict, Imagined communities : Reflections on the origin and

spread of nationalism, 1983.

ポール・レヴィンソン著,服部桂訳『デジタル・マクルーハン:情報の千年期へ』東京:NTT出版, 2000年.(Levinson, Paul, Digital McLuhan : a guide to the information millennium, 1999.)

マーシャル・マクルーハン,栗原裕・河本仲聖共訳『メディア論:人間の拡張の諸相』東京:みすず書 房,1978年.(McLuhan, Marshall, Understanding Media : The Extensions of Man, 1964.)

マーシャル・マクルーハン・エリック・マクルーハン『メディアの法則』東京:NTT出版,2002年. (McLuhan, Marshall and Elick, Laws of media : the new science, 1988.)

マイケル・ハウベン・ロンダ・ハウベン,井上博樹・小林統訳『ネティズン:インターネット,ユース ネットの歴史と社会的インパクト』東京:中央公論社,1997年.(Hauben, Michael and Ronda, Netizens : on

the history and impact of usenet and internet, 1997.

マイケル・ベネディクト編,NTTヒューマンインターフェース研究会・鈴木圭介・山田和子共訳『サイ バースペース』東京:NTT出版,1994年.(Benedict, Michael, Cyberspace : first steps, 1991.)

前川徹・中野潔『サイバージャーナリズム論:インターネットによって変容する報道』東京:東京電機大 学出版局,2003年.

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水越伸・河上進責任編集『別冊本とコンピュータ3 コリアンドリーム!:韓国電子メディア探訪』東 京:大日本印刷,2000年. 水越伸・NHK[変革の世紀]プロジェクト編『NHKスペシャル変革の世紀2 インターネット時代を 生きる』東京:NHK出版,2003年. 無藤隆・高橋惠子・田島信元編『発達心理学入門1 乳児・幼児・児童』東京:東京大学出版会,1990 年. 無藤隆・高橋惠子・田島信元編『発達心理学入門2 青年・成人・老人』東京:東京大学出版会,1990 年. ユルゲン・ハーバーマス,細谷貞雄・山田正行訳『[第2版]公共性の構造転換:市民社会の一カテゴ リーについての探求』東京:未來社,1994年.(Habermas, Jürgen, Strukturwandel der Öffentlichkeit :

Untersuchungen zu einer Kategorie der bürgerlichen Gesellschaft, 1990.

吉田純『インターネット空間の社会学:情報ネットワーク社会と公共圏』東京:世界思想社,2000年. 吉見俊哉・花田達朗編『社会情報学ハンドブック』東京:東京大学出版会,2004年. 7.2.2. 白書および政府刊行物類 財団法人インターネット協会監修『インターネット白書2002』東京:インプレス,2002年. 財団法人インターネット協会監修『インターネット白書2003』東京:インプレス,2003年. 総務省編『平成13年版情報通信白書』東京:ぎょうせい,2001年. 総務省編『平成14年版情報通信白書』東京:ぎょうせい,2002年. 総務省編『平成15年版情報通信白書』東京:ぎょうせい,2003年. 7.2.3. 雑誌 NTTインターコミュニケーションセンター企画『InterCommunication 1999年冬号』No.27,第8巻第1 号,東京:NTT出版,1999年. NTTインターコミュニケーションセンター企画『InterCommunication 1999年秋号』No.30,第8巻第4 号,東京:NTT出版,1999年. 青土社『現代思想 2001年1月号』第29巻第1号,東京:青土社 青土社『現代思想 2002年9月号』第30巻第11号,東京:青土社

7.3. 韓国書

7.3.1. 一般書籍

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강원대학교 사회학과.『현대 한국사회의 이해』. 춘천 : 강원대학교 출판부, 2002. 김종길.“사이버 커뮤니케이션의 현실과 인터넷 기반 공동체의 가능성.”『浩山 김경동교수 정년 기념논 총 현대사회와 인간 제3권 진단과 대응의 사회학』. 서울 : 박영사, 2002, pp351-406. 라도섬.『블랙인터넷』. 서울 : 자우 ON & OFF, 2001. 서울특별시교육청.『초등학교 교사용 정보통신윤리교육 프로그램 : 사이버 윤리 어떻게 가르칠까?』. 서 울 : 서울특별시교육청, 2001. 서이종.『지식정보사회의 이론과 실제 (서울대학교 사회발전연구총서 제8권)』. 증보판. 서울 : 서울대학 교출판부, 1998. 서이종.『인터넷 커뮤니티와 한국사회』. 서울 : 한울아카데미, 2002. 성동규.『사이버커뮤니케이션』. 서울 : 세계사, 2002. 심마니라이프 편집팀.『한국 인터넷 현장 리포트』. 서울 : 심마니, 2001. 정태영.『디지털 사이언스④ 사이버스페이스 문화 읽기』. 서울 : 나남, 1997. 이승영・김승일.『한국인이 모르는 일본 일본인이 모르는 한국』. 서울 : 무한, 1999. 임희섭.『나남신서312 한국의 사회변동과 가치관』. 서울 : 나남, 1994. 조선일보사.『조선일보 연감 2002』. 서울 : 조선일보사, 2001. 조선일보사.『조선일보 연감 2003』. 서울 : 조선일보사, 2002. 7.3.2. 白書および政府刊行物類 교육부・한국교육학술정보원.『2000 교육정보화백서』. 서울 : 교육부・한국교육학술정보원, 2000. 김기태.『청손년 생활실태 연구 5 : 연구보고 00-R20 인터넷의 청소년에게 미치는 영향 및 대안연구 : 인터 넷 미디어교육 시안제시를 중심으로』. 서울 : 한국청소년개발원, 2000. 김영지.『청손년 생활실태 연구 7 : 연구보고 00-R22 청소년 웹진(Webzine) 활용의 실태와 의미에 관한 연 구』. 서울 : 한국청소년개발원, 2000. 도준호・조동기・황상재 외2인.『연구보고 00-31 인터넷의 사회・문화적 영향 연구』. 과천 : 정보통신정 책연구원, 2000. 맹영임・서정아・김민.『연구보고 02-R05 청소년 대중스타 수용실태 연구』. 서울 : 한국청소년개발원, 2002. 문화관광부.『문화산업백서 2003』. 서울 : 문화관광부, 2003. 문화관광부.『청소년백서 2002』. 서울 : 문화관광부, 2002. 문화관광부・한국문화관광정책연구원.『2003 문화정책백서』. 서울 : 문화관광부・한국문화관광정책연구 원, 2004. 문성원.『연구보고 03-R26 자살사이트의 생성 및 운영 : 심리적 측면을 중심으로 한 사례 연구』 서울 : 한

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7.4. インタビュー

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7.4.1. 日本 バワードコム,サイト名:Cafesta ヤフージャパン,サイト名:Yahoo! JAPAN(現在交渉中) 7.4.2. 韓国 다음커뮤니케시션즈(ダウムコミュニケイションズ),サイト名:Daum SK커뮤니케시션즈(SKコミュニケイションズ)サイト名:CYWORLD(現在交渉中)

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. 卒業論文要旨(参考)

近年のインターネットの急速な普及に伴い,オンライン上に展開される空間の体をなしている[場]が [サイバースペース]と呼称され,[仮想]という接頭辞が付いているとはいえ,ひとつの[空間]として 認識されるに至っている。そしてこの[空間]が帯びている性質は,これまでの現実空間が帯びていたそれ と異なるものであり,この[空間]の中で新たな[文化]が生成されつつあることは,おぼろげながら誰の 目にも明らかである。しかし,これらの[空間]や[文化]がいかなる性質を帯びているのか,また,現実 世界とはどのような関係にあるのか,に関して,論理的裏付けに基づいた明確な分析および説明は十分には なされていないように思われる。もちろん,アメリカではこれらに関する研究がなされており,デジタル文 化やサイバースペースでのガヴァナンスに関する論文が散見される。 しかし,私は上述のような問題を分析するための対象として,大韓民国(以下,韓国と表記)に注目して いる。インターネットの普及率や利用率を見ても,世界有数の先進国と比肩,いや,それ以上の急速な発展 と変容が引き起こされている。高速インターネットが急速に普及した韓国においては,現実世界の事象(経 済,政治,文化など)の影響を受けながら,一種独特の[サイバースペース]そして[インターネット(オ ンライン)文化]が展開されているのである。また,これらの仮想空間での事象が現実世界にフィードバッ クされ,社会の変容を引き起こしていることも見逃すことができない事実である。 韓国国内においても,サイバーコミュニケーション学会や社会学会などがこれらの現象を扱ってはいるも のの,研究の層の薄さを否定することはできない。また,私はソウル大学社会科学学部社会学科への一年間 の留学を経て,韓国においてインターネットが果たしている役割や,サイバースペースで起こっている様々 な事象について,講義や学生の発表,そして教官との対話などを通じて実感してきた。そして,これらの内 容を踏まえた上で,卒業論文において現実世界における事象を基礎とし,サイバースペース,そしてイン ターネット(オンライン)文化に関する分析を試みた。さらにこれと同時に,これら仮想空間における事象 の現実世界に対してのフィードバックに関しても説明を試みた。以下,簡単に卒業論文を要約する。

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卒業論文では,現在,世界でも最高水準のインターネット普及率を達成しているといわれる大韓民国(以 下,本要旨では韓国と表記する)の電子情報化に関して論じた。 これまでは韓国の電子情報化というと,韓国の電子情報化を1980年代のいわゆる[アジア成長神話]と, これに継起する1990年代のいわゆる[アジア危機],そしてその後の復活を賭けて政府が主導した構造改革 を中心に扱った,多分に経済産業的な議論がなされてきた。しかし,卒業論文ではそのような枠組みを崩す べく,電子情報化という抽象的な概念を市民の観点から捉えるために,市民が最も身近に電子情報化を感ず ることができるインターネットに限定して論を展開している。議論の対象はインターネットの普及率や利用 実態の整理,および日本との比較から,インターネット上の仮想空間における文化,現実空間と仮想空間の 関係までを含む広範なものとなっているが,論の中心はインターネット上の仮想空間における文化である。 まず,インターネットの利用実態に関して数値上の整理を行うと,韓国のインターネット利用率は 56.6%,世帯のコンピュータ利用率は76.9%であり,参考までに日本の各々36.3%,45.5%と比べると非常に 高い水準にあると言える。このような高い水準に達した要因の基盤にあるのは,経済危機とその際に政府が 採用した政策である。時宜に適したという偶然性も大きかったものの,情報化を国家再建の新機軸として据 え,海外からの新技術を躊躇なく取り入れ,高速インターネット網が普及した結果,このような高い水準に 達したと見るのが妥当である。また,市民の観点から見れば,PC房(PCバン)と呼ばれる独特の利用形態 が利用率の向上に大きな役割を果たしてきた。日本ではインターネットカフェと訳されることが多いが,こ れは一時間1,000ウォン(約100円)で高速インターネット網に接続されたコンピュータを利用できる施設で ある。低所得層や10代から20代にかけての若年層が気軽にインターネットに接続できる環境が,インター ネットの普及率に貢献しているのである。インフラ面ではこのP 房の他に,ウェッブメール環境(各自のコ ンピュータで電子メールをやりとりするのではなく,インターネット上のサイトで電子メールをやりとりす る方式)の一般化や,都市部で見られる公衆インターネットなどの要因を挙げることができよう。 また,インターネットをどのような目的で利用しているか,すなわちそのコンテンツに関して言及する と,非常に特徴的な姿が見えてくる。まず,若年層ではインターネットの利用の中心はオンラインゲーム (高速インターネット網を利用して不特定多数の人と対戦する)やチャット(動画が用いられることも多 い)である。そして,オンラインゲームでは,ゲームの世界でも現実社会と類似の仮想社会や階層が成立し たり,ゲームのアイテムを現金取り引きすることにより仮想空間と現実空間が接触したり,ゲーム中毒に陥 る(そして死亡したケースもある)若者も少なくない。また,チャットに関しても,単に文字だけをやりと りするだけではなく,仮想空間でアバタと呼ばれる仮想のキャラクターを自らの分身のように扱い,匿名性 を維持しながらも,個人の個性やアイデンティティは維持するという一見矛盾したシステムを採用してい る。そしてここでも現実空間との接点がある。これらのアバタに着せる服やアクセサリー類は,基本的なも のを除いてはすべて有料で販売されており,100ウォン(約10円)のメガネから5,000ウォン(約500円)の ウェディングドレスに至るまで2,000種類を超える多様なアイテムが販売されているのである。ここでは,

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オンラインゲームやチャットにおいて,原理的に匿名性をもつインターネット上の仮想空間において個人の アイデンティティを模索し,作り出すという作業が行われていることに着目すべきである。もちろん,仮想 空間でのアイデンティティは現実空間と同一である必要は全くない。しかしながら,仮想空間でもアイデン ティティを要求する心理には,インターネットや仮想空間を現実とはまったく関係のない,外部空間・別世 界と捉えず,すでに自ら,またはもうひとつの自分の息づく場所として認識され,その認識が人間の感覚の 奥深くまで入り込んでいることを示唆している。 また,アンチサイトも韓国のインターネット文化を語る上では欠かせないものである。アンチ(anti)と いう言葉からも分かるとおり,これらは,何らかの団体や会社,または個人(芸能人や有名人)に反対・対 抗する目的で作られたインターネットサイトのことである。これらのアンチサイトが仮想社会でのサイバー 共同体のみで完結している場合もあるが,現実空間で示威など何らかの活動を行うことも多いし,また逆に 現実空間で活動する団体がサイバー共同体を構成していることもある。当然,匿名性がもたらす様々な弊害 (風説の流布や攻撃的な発言など)も散見されるが,韓国が完全な文民政権に移って未だ10年余りであり, このようなサイトが存在するということは,民主主義や国民の市民意識の向上のために避けられなかった事 態であろう。偶然,そこにインターネットという道具があったがためにアンチサイトという現象として社会 に表出したが,仮に存在していなかったとしても,同様の運動は,仮に効率性や範囲が落ちたとしても社会 に巻き起こっていたはずである。アンチサイトに関して言うならば,インターネットはあくまでも効率的な 運用のための[道具]として使用されているに過ぎず,その中でインターネットに特有の現象(匿名に起因 する問題など)が起こったとしてもそれは本質的な問題ではないと解釈するのが適当である。 以上のような韓国のインターネット文化を説明するタームとして,[草の根的活動]と[社会変革]が挙 げられる。 まず,前者から整理すると,ポータルサイトのコミュニティ機能に限らず,アンチサイトもオンライン チャットも,いずれもオンラインコミュニティの一種であると考えることができる。ここでは,それまでは 現実社会で多くの人手と費用を使わなければ実行できなかった社会運動を手軽に安価に行うことができる し,同じ話題を共有できる友人をなかなか探し出せなかった者はチャットで話の合う友人を見つけることが できる。つまり,現実空間よりも手軽なコミュニティとして認識されている傾向がある。換言すれば,時間 や空間を拘束されないが所属していられる集団,そして小さいけれども活動を続けられる集団としての認識 である。 また,後者に関して述べると,これまでの過去の因習からの離脱がこの重要な要因である。韓国も社会が 成熟しつつあり,これまでの既存の価値観や権力構造などに異議を唱える傾向が強まっている。そのような 中で,これまでの因縁(血縁,地縁,学閥など)から自由でありたい,という欲望が高まっている。しか し,誰かとつながっていたい,何らかのコミュニティに所属して拠り所にしたい,という心理から,オンラ インコミュニティやサイバー共同体の類に参加するのである。そこには,それまでの古いいわば[絆(ほだ

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し)]から離れ自由な関係を謳歌するという[現実社会と仮想社会を使い分ける二重構造]が成り立つ。生 まれながらの絆に拘束されず,自らが決める人間関係の新しい類型としてこれらの現象を捉えることができ る。 また,チャットに関する部分でも触れたが,匿名性を維持しながらも,自らの個性やアイデンティティを 発揮したいという,一見すると相矛盾する論理の裏側には,現実社会でのアイデンティティは匿名性の楯に 隠しながら,仮想社会でのアイデンティティをまったく現実社会のそれとは異なって設定したい,仮想空間 では自分を自分の思った通りに創り出し,自由に振る舞いたいという欲望があるのである。また,実際には 韓国特有の住民登録番号制度によって,匿名性は保障され難いのだが,逆にそうであるからこそアバタとい う仮面を要求していると言えるかも知れない。 すなわち,オンライン上のアイテムやアバタを現金で取り引きするという行為までを含めて考えると,現 実社会と仮想社会の間を簡単に往来するのが,現代のインターネットを利用する韓国人の一般的な態度・意 識なのである。また,ひょっとすると,仮想世界と現実世界の間を往来しているという意識すらないほど, 人間の奥深くまで[現実社会+仮想社会の二重構造]が染みつき,またそのような状況に馴化されているの が,現在の韓国における一般市民の認識だと言える。 韓国の電子情報化(本論文ではインターネットの普及)は,経済危機を克服する手段の一環として行わ れ,また偶然的な条件が重なったこともあり,1990年代後半を通じて世界に類を見ないほど急速に進展し た。収入が低くコンピュータを所有できなくとも,市民はPC房を利用してインターネットに接続すること ができた。その結果,市民はインターネットをコミュニケーションの道具として使うことはもちろん,社会 運動の[場]として(アンチサイト),共同体を構成する[場]として(オンラインコミュニティやサイ バー共同体),自分とは異なったアイデンティティを持った[もうひとりの自分]の息づく[もうひとつの 空間]として(オンラインチャットやオンラインゲーム)利用するに至った。しかしその仮想世界は,住民 登録制度や貨幣による取引など,現実世界に担保され分離しきれない空間として存在しているのが実情であ り,このことを市民自身がほとんど意識していないのである。

参照

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