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57 世 界 拡 与 状 況 概 観 御 説 明 類 今 回 げ 相 伸 鈍 由 影 響 検 索 多 ヒ 幾 限 保 護 避 仲 介 昇 結 果 端 望 枠 組 収 キ 作 長 図 緩 和 自 由 良 ょ 保 護 別 生 避 へ 応 考 保 護 バ 共 政 策 課 世 界 拡 地 域 別 長 mas

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証券レビュー 第55巻第12号

投

 資型クラウドファンディングの

世界的拡大と規制

の関与

松

 

尾

 

順

 

介

はじめに

  御紹介ありがとうございました。また、このよ うな場を設けていただきありがとうございます。   今日は「投資型クラウドファンディングの世界 的拡大と規制の関与」についてお話しさせていた だきます。   クラウドファンディングと申しますと、三年ぐ らい前は、コンピューター用語のクラウドとどう 違うのかとか、スペルはどう綴るのかなどと言わ れるような状況でしたが、最近では、メディア等 で取り上げられることも多くなり、かなり耳にな じんできたように思います。実際に新聞見出しの 検索をしましても、かなり頻繁に取り上げられて いることがわかります。   そ こ で 今 日 は、 資 料 2 ペ ー ジ の と お り、 最 初 に、クラウドファンディングが世界でどのように 伸びているのかについてお話しします。タイトル には「世界的拡大」と付けたのですが、絶対的な 金額が大きいというより、最近急速に伸びている ことを指したものと理解していただければと思い

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 ます。そして、アメリカ、イギリス、日本のクラ ウドファンディングに対する規制の状況を概観し た 上 で、 規 制 上 の 問 題 に つ い て 御 説 明 し た い と 思っています。   クラウドファンディングと言いましてもいろい ろな種類があり、今回取り上げるのは投資型と言 われているものです。このタイプは相対的に伸び が鈍く、その理由の一つとして規制の影響がある のではないかと見られます。   インターネットでクラウドファンディングを検 索しますと、日本では寄付型のものがかなり多く ヒットします。寄付型の場合、手数料を幾ら取っ て も 制 限 は か か り ま せ ん。 し か し、 投 資 型 の 場 合、投資家保護のための規制が避けられず、それ が仲介コストの上昇をもたらすこととなりがちで す。結果的に、端からリターンが望めず、投資と いう枠組みの中に収まらないようなスキームしか 作れないことになってしまいます。   投資型クラウドファンディングの成長を図るた めには、できるだけ規制を緩和して自由にやらせ るのが良いのでしょうが、そうしますと、投資家 保護がおろそかになって、別の問題が生じること が 避 け ら れ ま せ ん。 し た が い ま し て、 ク ラ ウ ド ファンディングへの対応を考えるに当たっては、 規制と投資家保護をどのようにバランスさせるか という公共政策的な課題が関わってくるように思 います。

一

 、クラウドファンディングの



世界的拡大

(地域別のクラウドファンディングの成長)   massolution と い う 会 社 が 発 表 し て い る 二 〇 一 五 年 の デ ー タ ブ ッ ク に 基 づ き、 ク ラ ウ ド フ ァ ン

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証券レビュー 第55巻第12号 投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 ディングの成長の状況を見ていきます。世界のク ラウドファンディングについてデータを集計して いるのは、この会社ぐらいしか見当たりません。   資料3ページをご覧下さい。二〇一四年のクラ ウドファンディングによる資金調達額は、合計で 約一六〇億ドルです。一ドル=一二〇円として計 算しますと、約二兆円ということになろうかと思 います。全世界でこの規模ですので、それほど大 きなものではないと言うことができます。   地域別に見ますと、北米がほぼ六割を占めてお り、圧倒的に北米中心のマーケットであることが わ か り ま す。 ア ジ ア は、 二 〇 一 二 年 で は 全 体 の 一・ 二 % に と ど ま り 取 る に 足 り な い 存 在 で し た が、二〇一四年には約二〇%まで急成長し、ウエ イトが高まってきています。他方、欧州は、二〇 一二年の約三五%から二〇一四年の約二〇%まで 一五ポイントほどウエイトが下がり、わずかです がアジアに抜かれた形になっています。現在は、 北米、アジア、欧州でマーケットを分け合ってい る状況にあります。具体的なことは別にして、ア ジアにおいては中国が数字を伸ばしていると説明 されています。なお、この表の中で日本がどのよ うな位置を占めているかは、日本についてほとん ど言及されていないのでよくわかりません。 (活発な一一分野の資金調達額の割合)   分野別の資金調達額にはかなりのばらつきがあ ります。資料4ページの表は、二〇一三年と二〇 一四年における分野別の資金調達額の割合を見た も の で す。 ビ ジ ネ ス・ 起 業 が 約 三 割 か ら 四 割 と なっています。この分野はくくりが広いため、大 きな割合を占めるのはある意味で当然のことでは ないかと思います。次に、社会奉仕が約二割を占 めていますが、途上国の子どもたちのために学校

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 を作るなど、寄付型のものが多いのではないかと 思います。その後に、約一割の映画・演劇、数% の音楽・レコーディング、科学・技術などが続き ます。 (種類別のクラウドファンディングの成長)   次に、ビジネスモデル別のクラウドファンディ ングの成長です。資料5ページをご覧下さい。   日本でもよく見られるのは寄付型ですが、二〇 一二年に四割近くあったのが、二〇一四年は一割 強ぐらいまで低下しました。寄付型も金額は増え ているのですが、全体の金額が増加する中で割合 は低下傾向をたどっています。寄付型の中では、 例えば途上国の学校建設にお金を提供し、リター ンは求めないというようなものが多くなっていま す。その他、京都大学の山中伸弥教授がノーベル 賞の受賞前にiPS細胞の研究資金を募っておら れたことが思い出されますが、そのようなものも 寄付型に属します。   エクイティ型は、金額は伸びていますが、割合 は、 二 〇 一 二 年 が 四・ 四 %、 二 〇 一 三 年 が 六・ 五%、二〇一四年が六・八%で、全体の中ではや や伸びが低いように思われます。この点には規制 が影響していると想像しています。なお、エクイ ティ型には、日本でミュージックセキュリティー ズが運営しているようなファンド型も含まれてお り、日本で投資型と言われているものは、基本的 にこのエクイティ型に含まれると理解してよいの ではないかと思っています。   次は貸付型(レンディングタイプ)です。この タ イ プ の 割 合 が 非 常 に 高 い の が こ の 表 の 特 徴 で す。昨年、アメリカで、レンディングクラブとい う 企 業 が 上 場 し た こ と が 大 き な 話 題 に な り ま し た。これは、貸し手と借り手をインターネット上

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証券レビュー 第55巻第12号 で結びつけるタイプのクラウドファンディングで す。今ではこれが七割近くを占めており、非常に 大きなウエイトを占めています。   なお、日本でも、日本クラウド証券のように貸 付型をうたっているところがあります。しかし、 これは、匿名組合契約によってお金を集めてファ ンドを作り、金銭消費貸借契約によってそのお金 を借り手に提供するというスキームであり、資金 の集め方に着目しますと、エクイティ型に含める のが適当ではないかと思います。ここで貸付型と されているのは、あくまでも貸し手と借り手をイ ンターネット上で結びつけるタイプのものです。   成果還元型は、資金の提供に対して報酬を提供 す る も の で す。 報 酬 に は、 物 の 場 合 も あ れ ば、 サービスの場合もあります。日本で購入型と言わ れているものがここに含まれるのではないかと思 います。インターネットを見ていましたら、小津 安二郎監督の名作をリマスターするために資金を 集め、プロジェクトがうまくいったら、資金提供 者にリマスターCDを提供するという話が載って いました。このようなものがここに含まれます。   混合型は、これらの複数のタイプをミックスし たものです。例えば、投資型と言いましても、金 銭的なリターンだけでなく、株主優待のおまけの ようなものを提供することをうたって、人気を呼 んでいるものもあります。   最後に、ロイヤリティ型があります。これは、 知的財産の使用権に出資し、リターンを得ようと するタイプのものです。金額も割合もまだ小さい の で す が、 こ れ か ら 伸 び る こ と が 見 込 ま れ る た め、新しく一つの項目としてつけ加えられたよう です。

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 (一件当たりの調達額)   一件当たりどれぐらいの資金を集めているのか をタイプ別に示したのが資料6ページの表です。   寄付型は、約三〇〇〇ドルですから、三〇万円 から四〇万円程度といったところです。成果還元 型と貸付型もほぼ同様です。エクイティ型は、ア メリカと欧州・アジア・オセアニアで差がありま す が、 ア メ リ カ 以 外 で は だ い た い 三 〇 万 ド ル に なっています。日本円にしますと四〇〇〇万円程 度の規模になります。 (クラウドファンディングの法規制)   massolution の 二 〇 一 三 年 版 の デ ー タ ブ ッ ク で、 各 国 の ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 業 者 に 対 し て、クラウドファンディングがやりやすいか、逆 に規制が重くのしかかっていてやりにくいか、ま た、規制上問題がないかといったことを調査した 結果が掲載されていますので、そのあたりを御紹 介 し た い と 思 い ま す。 資 料 7 ペ ー ジ を ご 覧 下 さ い。   まず、寄付型については、規制の問題があって やりにくいという国は全くありません。また、貸 付型、報酬型(成果還元型)もほとんどの国で問 題がないとされています。   と こ ろ が、 エ ク イ テ ィ 型 に 関 し て は、 ア メ リ カ、カナダに○がついていません。このことは、 これらの国では、制度上の課題があってクラウド ファンディングをやりにくい面があることを意味 しています。他方、イギリスには○がついていま すので、法制度がそれほど桎梏になっていないこ とを表しています。なお、この表に日本は載って おりませんので、日本に関しどのような回答が寄 せられたかはわかりません。   この調査結果は、アメリカにおけるJOBS法

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証券レビュー 第55巻第12号 制定の背景として、エクイティ型のクラウドファ ンディングにやりにくい面があったことを示唆し ているように思います。他方、イギリスでは、二 〇一四年にクラウドファンディングに対して規制 改革が行われましたので、その後、クラウドファ ンディングがやりにくくなったのではないかと思 います。それぞれの国の制度改革がどのように評 価されているか非常に興味がありますが、二〇一 五年版にはこのような表は載っておりませんので その点を知ることはできません。

二、米国の規制

⑴   JOBS法の制定   資料8ページのとおり、アメリカでは、二〇一 二 年 の J O B S 法( Jumpstart Our Business  Startups Act ) の 制 定 に よ っ て、 ク ラ ウ ド フ ァ ン ディングに対する規制が緩和されました。この法 律は、元来、クラウドファンディングの促進のみ を対象とするものではなく、小規模の成長企業が 資金調達を容易にできるようにすることを目的と したもので、根底にはIPO市場の低迷に対する 懸 念 が あ り ま す。 I P O 市 場 の 低 迷 の 要 因 と し て、従来の証券規制が重荷になっているのではな いかという主張がなされ、そのような問題意識を 背景にJOBS法の制定に至ったものです。   この法律は、クラウドファンディングを含む六 つ の 部 分 か ら 成 っ て お り、 そ の う ち の Title III ( 第 三 章 ) が ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ に 関 す る 規 定 に な っ て い ま す。 正 式 の 名 称 は、 「 二 〇 一 二 年 オンラインを通じた資本調達並びに詐欺及び非倫 理 的 情 報 非 開 示 の 抑 止 に 関 す る 法 律 」( Capital  Ra is in g O nli ne Wh ile De te rr in g Fr au d an d Unethical Non-Disclosure Act of 2012 )です。こ

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 の 名 前 の 頭 文 字 を 取 り ま す と、 Crowdfund Act に な り ま す。 い ず れ に せ よ、 Title III が Crowd   funding を 規 定 し た も の で、 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ングを容易にするというのが立法の趣旨です。 ⑵   JOBS法制定前の規制の状況 (概要)   J O B S 法 が 制 定 さ れ る 前 に、 全 く ク ラ ウ ド ファンディングのような形での資金調達ができな かったかと申しますと、そうではありません。し かし、不特定多数の人から資金を集めて、その資 金をプロジェクトに投資し、その収益を出資者に 分配しようとしますと、連邦証券規制上、証券の 募集に該当しさまざまな規制がかかってきます。 このことが投資型クラウドファンディングの障害 になっていました。 (レギュレーションA)   具体的に申しますと、募集を行う場合、一九三 三年証券法及び一九三四年証券取引所法により、 SECへの登録及び発行開示・継続開示が義務付 けられます。資料9ページをご覧下さい。   ただし、レギュレーションAに基づき、アメリ カ国内とカナダの未公開企業に関しては少額免除 の規定が設けられています。これにより、一年で 総 額 五 〇 〇 万 ド ル を 超 え な い 募 集 を 行 う 場 合、 フォーム1-Aによる簡易な書式でSECに届け 出 を 行 っ た 上、 目 論 見 書 に 相 当 す る 募 集 回 状 に よって勧誘を行うことが可能とされています。し かし、こうした方式によっても、クラウドファン ディングのように少額の資金調達を行う事業者に はコストが大きいと言われていました。

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証券レビュー 第55巻第12号 (レギュレーションD)   この他、レギュレーションDにも免除規定が置 かれています。規則五〇四、五〇五、五〇六がそ れに該当します。資料 10ページをご覧下さい。   一つ目の規則五〇四は、一二ヶ月間の募集総額 が一〇〇万ドル以下であれば適用されます。金額 的にはクラウドファンディングによる資金調達の 規模に該当しますが、一般的勧誘又は一般的広告 の禁止という別の要件があるため、その適用除外 を 受 け る 必 要 が あ り ま す。 し か し、 そ の た め に は、各州の規制を遵守するという別のハードルを 乗り越える必要があるため、かなり難しい面があ るようです。   二つ目の選択肢として規則五〇五があります。 一二ヶ月間の募集総額が五〇〇万ドル以下ですか ら、この点のハードルは低いのですが、適格投資 家以外の購入者が三五名以下でなければなりませ んので、クラウドファンディングには使いにくい 面があります。さらに、先ほどと同様、一般的勧 誘又は一般的広告の禁止要件もかかってきます。   三つ目の選択肢として規則五〇六があります。 この場合、募集総額の規定はありませんが、三五 名以下の適格投資家以外の投資家が、金融及び事 業に関する知識と経験を有する者である場合に適 用 さ れ る も の で す の で、 や は り こ れ も ク ラ ウ ド ファンディングには使いにくい面があります。一 般的勧誘又は一般的広告の禁止要件がかかってく るのは、先ほどと同様です。   結局、どの規制も使いにくいために、新たな法 律でクラウドファンディングに関する規定を設け る 必 要 が あ る と い う 流 れ に な っ た よ う に 思 い ま す。

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 ⑶   クラウドファンディング法の概要 (公募に関する規制の適用除外要件)   ここから、 JOBS法 Title III のクラウドファ ンディングに関する規定のうち、主だったところ を見ていきます。資料 11ページをご覧下さい。J OBS法三〇二条は、公募に関する規制の適用除 外要件を四つ定めています。   一つ目は、全ての投資家に対して売却した証券 の総額が、直前一二ヶ月間を合算して一〇〇万ド ル以下であることです。   二つ目は、いずれかの投資家に対して売却した 証券の総額が、直前一二ヶ月間を合算して、当該 投資家の年収又は純資産が一〇万ドル未満の投資 家 の 場 合 は、 二 〇 〇 〇 ド ル、 年 収 又 は 純 資 産 の 五 % 相 当 額 の い ず れ か 大 き い 額 を 超 え ず、 そ し て、当該投資家の年収又は純資産が一〇万ドル以 上の場合は、年収、又は純資産の一〇%相当額を 超えないことです。このように年収又は純資産を 基準として投資家を区別し、それぞれについて投 資上限を設けることによって、無理な投資をさせ ないための配慮がなされています。   三つ目は、証券法四A条⒜の要件を遵守するブ ローカー又はファンディング・ポータルを通じて 取 引 を 行 う こ と で す。 つ ま り、 ク ラ ウ ド フ ァ ン ディングのホームページを運営する者は、ブロー カー又はファンディング・ポータルでなければな らないということです。   四つ目は、発行会社が証券法四A条⒝の要件を 遵守することです。   以上の四つの要件を満たしますと、証券法五条 の適用が除外されることになります。 (仲介者の義務)   資料 12ページのとおり、仲介者には次のような

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証券レビュー 第55巻第12号 義務が課されます。   一 つ 目 は、 ブ ロ ー カ ー 又 は フ ァ ン デ ィ ン グ・ ポータルとして登録することです。   二つ目は、適用ある自主規制機関、つまりSE Cに登録することです。   三つ目は、SECが定める開示内容を提供する ことです。   四つ目として、仲介者は以下のことを確保する 必要があります。すなわち、SECが設ける基準 に 従 っ て 投 資 家 が 投 資 家 教 育 情 報 を 検 討 す る こ と、投資全額を失うリスクを冒していることを理 解し、かかる損失を負担することができることを 投資家が積極的に確認すること、新興企業・中小 企業への投資に一般的に伴うリスクの水準、流動 性の欠如のリスク、SECが定めるその他の事項 に関する理解を確認するための質問に投資家が対 応することです。   この他のものも含め、仲介者には一二項目の義 務が課されています。 (発行会社の義務)   発行会社に対しては、事業内容及び事業計画、 財務状態、資金使途などに関する情報提供の義務 が 課 さ れ ま す。 ま た、 重 要 な 情 報 の 不 実 開 示 が あった場合、証券購入者は発行会社に対し、損害 額について管轄裁判所に訴訟を提起することがで きるとされています。 (SECの役割)   資料 13ページのとおり、JOBS法三〇二条で は、SECは、法制定後二七〇日以内に、証券法 四条⑹及び四A条を実施するために必要または適 当と判断する規則を発するものと定められていま す。しかし、御存じのとおり、この規則はまだ発

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 せられておらず、クラウドファンディングに関す るSECの運用がどのようになるのかまだわから ない状況です。   JOBS法三〇四条は、ファンディング・ポー タ ル の 登 録 制 を 定 め た も の で す。 フ ァ ン デ ィ ン グ・ ポ ー タ ル と は、 他 人 の 勘 定 に よ る 証 券 の オ ファーまたは売却に係る取引において、仲介者と し て 行 為 す る 者 で あ っ て、 投 資 助 言・ 推 奨 の 提 供、ファンディング・ポータル上の証券の投資勧 誘などの行為を行わない者と定義されています。 また、ファンディング・ポータルは、SECの検 査、エンフォースメントその他の規則制定権限に 引き続き服すること、登録証券業協会の会員であ ること、SECが定めるその他の要件に服するこ と と い う 要 件 を 満 た せ ば、 ブ ロ ー カ ー・ デ ィ ー ラーとして登録する義務を免除されます。 ⑷   まとめ   資料 14ページをご覧下さい。少額の証券発行に 関してクラウドファンディング法が制定され、従 来の開示規制が緩和されました。規制コストを引 き下げて、投資型クラウドファンディングを拡大 促進するという意図がここから読み取れます。し かし、まだSECの規則が公表されておらず、わ からないところが多いため、これがどのように市 場拡大に寄与するかは不透明な状況です。

三、英国の規制

⑴   従来の英国の規制   イ ギ リ ス で は、 ア メ リ カ に 先 行 し て ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 規 制 が 導 入 さ れ ま し た。 資 料 15 ページをご覧下さい。規制は、二〇一三年四月に 設立された金融行為監督機構(FCA)によって

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証券レビュー 第55巻第12号 担われています。FCAは、投資型(エクイティ 型 ) ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ と 貸 付 型 ク ラ ウ ド ファンディングの双方に責任を負うとされていま す。   イギリスでは、集団投資スキーム(UCIS) を利用したクラウドファンディングに対し、以下 のような規制が行われています。すなわち、UC I S へ の 投 資 勧 誘 は、 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル な 顧 客、認定されたもしくは洗練された投資家として 自己申告している投資家、又は富裕層として認定 さ れ た リ テ ー ル 顧 客 に 制 限 さ れ て お り、 一 定 の ハードルが設けられています。これが投資型クラ ウドファンディングにとってかなり厳しい制約に なっているのではないかと思います。   日本では、投資型クラウドファンディングの中 でも、集団投資スキームを利用したものが多く、 株式型はほとんどありませんが、イギリスでは、 UCISによるクラウドファンディングは非常に 少ないように見受けられます。どうやらこの規制 が ハ ー ド ル に な っ て、 U C I S が や り に く い た め、必然的に株式型にシフトしているのではない かと想像されます。   逆に、株式型については、今までそれほど厳し い規制が行われていなかったように思われ、この ことが、先ほどの各国の法規制に関する表におい て、イギリスでエクイティ型に○がついていた背 景にあるのではないかと推察されます。 ⑵   クラウドファンディングに関する新たな規制 (投資型クラウドファンディングの定義)   二〇一四年三月、FCAは投資型クラウドファ ンディングに関する新規制を導入しました。この 規制について、FCAはレビューを公表していま すので、以下、このレビューに沿ってイギリスの

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 規制の概要を紹介したいと思います。資料 16ペー ジをご覧下さい。   ここでは、投資型クラウドファンディングにつ いて、事業者によって発行された非上場株式及び 債券に対して、クラウドファンディング・プラッ トフォームを通じて投資するものと定義されてい ます。ここには、日本と異なって債券が含まれて います。この点がイギリスのひとつの特徴となっ ています。   また、ここで発行された証券は、登録された株 式市場に上場されず、相当なリスクを有するもの と さ れ て お り、 レ ビ ュ ー で は「 非 流 動 性 証 券 」 (簡単に換金できない証券)と呼ばれています。   FCAは、この種の証券がインターネットその 他の手法を通じて売買可能であるため、投資型ク ラウドファンディング・プラットフォームによる か否かにかかわらず、消費者保護の観点から、こ れらの証券の分売に関する規制を導入すると述べ て い ま す。 こ こ で 注 目 さ れ る の は、 「 イ ン タ ー ネットその他の手法を通じて」と言っており、必 ずしもインターネットに限定していない点です。 この後、御紹介する日本の規制と比較して、この 点がイギリスのもうひとつの特徴であることがお わかりいただけると思います。 (直接募集の対象となる消費者)   資料 17ページのとおり、業者は、一定の基準を 満たす消費者に対してのみ、直接募集を行うこと ができると定められています。その基準とは、流 動性の欠如など規制上の助言を受けた者、富裕層 もしくは洗練された投資家として認定された者、 又 は こ の 種 の 証 券 に 対 す る 投 資 額 が 純 資 産 の 一 〇%以下であることが確認された者のいずれかに 該当する者です。しかし、最後の基準は、金融資

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証券レビュー 第55巻第12号 産ではなく純資産の一〇%とされていますので、 か な り 曖 昧 な と こ ろ が あ り ま す。 ま た、 「 私 は き ち ん と 規 制 上 の 助 言 を 受 け た 」 と 自 己 申 告 す れ ば、ほぼ誰でも直接募集の対象になりうるように も見受けられます。   なお、FCAは、顧客が規制上の助言を受けて いない場合、そのリスクを認識しているかどうか を確認することを業者に義務づけています。 (クラウドファンディング事業の認可申請)   資 料 18ペ ー ジ か ら 19ペ ー ジ の と お り、 F C A は、クラウドファンディング事業の認可申請書を 受理する際、五つのステップを踏んで、FCAの 求める情報を提供するよう要求しています。   一つ目は、規制に即した適切かつ詳細な事業計 画とそれに関連するリスク、予算、経営資源を提 出することです。   二つ目は、適切な非財務的資源を有すること、 すなわち、役員会は金融規制に関して適切な知識 と経験を有していなければならないということで す。   三つ目は、申請書類の提出に際して適切な資金 を有していることです。これは、将来の資金調達 計画であってはなりません。   四つ目は、インターネットを多く使うことが見 込まれますので、稼働中または適切に準備された 段階にあるウエブサイトを有しており、認可され た場合、それがどのように稼働するのかを明示す ることです。   五つ目は、申請に際して、FCAの認可基準及 び条件項目について理解しており、完全な申請書 類を提出することです。   FCAは、過去において業者がほとんど空白の 申請書類を提出するなど、不適切なケースに直面

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 してきたが、それに対してきちんと指導を行って きたと述べています。 (投資型クラウドファンディング ・ プラットフォー ムに対する監督)   資料 19ページのとおり、FCAは、投資型クラ ウドファンディング・プラットフォームに対する 監督として、当該業者の上級経営者の採用、ウエ ブサイトへのモニタリング、月次業務報告書の精 査などを行っています。このような監督手法を採 用したことで、適格な顧客だけが投資できるよう に な っ た こ と に 加 え、 投 資 対 象 資 産 の 属 性、 パ フォーマンス、投資者の転売機会に関して、金融 商品の勧誘が透明、公正かつ誤解を生じさせない ものであることを確保する効果があったとされて います。   FCAは、潜在的投資者が情報を得た上で投資 決定を行えるよう、これらのプラットフォームが 適切な情報開示を行っているかの確認に尽力して いると述べています。さらに、人々が知識を共有 できるようにするため、プラットフォームは投資 家が投資機会についてコメントできるようにして おく必要があるとも述べています。市場関係者に よれば、幾つかのサイトでは投資家の否定的なコ メントが消去され、リスクの適切な警告が看過さ れるように仕向けられる可能性があるということ が指摘されています。 ⑶   ウエブサイト及び勧誘に関するレビュー (確認された問題点)   資料 20ページのとおり、ウエブサイト及び勧誘 に関するレビューでは、二〇一四年四月から一〇 月までの間、二五のウエブサイト(貸付型及び投 資型クラウドファンディングの双方を含む)で、

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証券レビュー 第55巻第12号 透明、公正かつ誤解を生じさせない金融商品勧誘 ルール及び規定に対する違反が見られたと述べて います。ここでFCAが見出した問題点は三つで す。   一つ目は、バランスの欠如です。利益が強調さ れている一方、明らかにリスク指標が欠如してい たと指摘されています。   二つ目は、情報の不十分さ、欠落又は選り好み で す。 潜 在 的 に 誤 解 を 生 じ さ せ る も の、 あ る い は、投資について非現実的な楽天的印象を与える ものが含まれていたとされています。   三つ目は、重要情報の過小評価です。例えば、 全く損失が出ていないという表示によってリスク 警 告 が 消 去 さ れ た り、 適 切 な リ ス ク 警 告 が パ フォーマンス情報より目立たないようになってい た り す る と い う 表 示 上 の 問 題 が 指 摘 さ れ て い ま す。 (対応)   資料 21ページのとおり、FCAがウエブサイト に必要な変更を加えるよう業者を指導した結果、 業者は速やかに修正を実行したとされています。 また、FCAは、二〇一四年八月、ソーシャルメ ディアによる金融商品の勧誘に対する監督手法に 関 す る コ ン サ ル テ ー シ ョ ン を 公 表 し、 フ ェ イ ス ブック等を通じた情報提供についても規制を行う こととしました。 ⑷   評価   イギリスの投資型クラウドファンディングは、 二〇一二年は三九〇万ポンド、二〇一三年は二八 〇〇万ポンド、二〇一四年は八四〇〇万ポンドと なり、増加傾向をたどっています。資料 22ページ のとおり、FCAは、二〇一四年の新規制導入後 もクラウドファンディング市場が拡大し続けてい

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 る こ と を 確 認 し た 上 で、 新 た な 規 制 は 適 切 で あ り、それを変更する必要性は認められないと評価 しています。   しかし、イギリスの新たな規制はやや規制強化 的な面を含んでおり、二〇一五年、二〇一六年の 数字を見ないと、新たな規制が本当にうまくいっ ているのかはにわかには判断しにくいように思い ます。

四、日本の規制

⑴   概要   資料 23ページのとおり、日本ではクラウドファ ンディングは、二〇一三年六月に閣議決定された 『 日 本 再 興 戦 略 』 に お い て 成 長 戦 略 の 一 つ と し て 位置づけられたことから注目されるようになりま した。その後、金融審議会「新規・成長企業への リスクマネーの供給のあり方等に関するワーキン グ・グループ」での審議を経て、昨年五月に金融 商品取引法(以下では「金商法」と呼びます)が 改正され、投資型クラウドファンディングの枠組 みが整備されました。それを受けて、株式型につ いては日本証券業協会(以下では「日証協」と呼 びます)において、また、ファンド型については 第 二 種 金 融 商 品 取 引 業 協 会( 以 下 で は「 二 種 協 会」と呼びます)において、それぞれ自主規制規 則が制定されました。   日本では、これまで株式型クラウドファンディ ングはほとんど行われておらず、今後出てくるの かどうかも見込めないところがあります。投資型 クラウドファンディングは、ファンドを通じて行 われるケースが一般的であり、二種協会の規制が 基本ルールになると言っても過言ではないと思い ます。したがいまして、以下では、簡単に金商法

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証券レビュー 第55巻第12号 の 特 徴 を 整 理 し た 上 で、 二 種 協 会 の 集 団 投 資 ス キームに関する規制に焦点を合わせてお話しした いと思います。 ⑵   改正金融商品取引法の特徴   資 料 24ペ ー ジ の と お り、 改 正 金 商 法 に お い て は、少額の有価証券の募集等の要件が、資金調達 額が合計一億円未満、投資者一人当たり払込金額 五〇万円以下と規定されました。また、第一種少 額電子募集取扱業務(株式型)及び第二種少額電 子募集取扱業務(ファンド型)という新たな業務 の類型が定められました。そして、少額電子募集 取扱業者の最低資本金が、第一種は従来の五〇〇 〇万円から一〇〇〇万円に、第二種は従来の一〇 〇〇万円から五〇〇万円に引き下げられ、自己資 本規制は課さないこととされました。もっとも、 業 務 管 理 体 制 の 整 備、 重 要 情 報 の 提 供 に つ い て は、引き続き規定が置かれておりますので、緩和 されたのは基本的には資本金の部分ということに なります。   なお、株式型クラウドファンディングで発行さ れる株式は非上場株式であり、そのままでは投資 勧誘を行うことができません。この点、新たな非 上場株式の取引制度として、今般、日証協におい て 株 主 コ ミ ュ ニ テ ィ 制 度 が 導 入 さ れ ま し た。 コ ミュニティのメンバーに限って投資勧誘を行うこ とができることとされ、限定的ではありますが、 非上場株式に流動性を付与することが可能となり ました。 ⑶   二種協会規則   以下では、二種協会規則に関しポイントを説明 します。資料 25ページ~ 27ページをご覧下さい。 もっとも、その内容を理解することは容易ではな

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 く、この規則を見ただけで新規参入業者はかなり 尻込みしてしまうのではないかと思います。 (定義)   電子募集取扱業務は、非上場有価証券又は集団 投資スキーム持ち分の募集・売り出し又は私募の 取り扱いでインターネットを通じて行う業務と定 義されています。また、電子申込型電子募集取扱 業 務 は、 電 子 募 集 取 扱 業 務 の う ち、 ホ ー ム ペ ー ジ、電子メールによって有価証券の取得の申し込 みをさせるものと定義されています。さらに、第 二種少額電子募集取扱業務は、電子募集取扱業務 のうち、一ファンドあたり一億円未満かつ投資者 一人当たり五〇万円以下のものと定義されていま す。 (重要情報提供義務と禁止行為)   こ れ ら の 業 者 は 重 要 情 報 提 供 義 務 を 負 っ て お り、投資者が適正かつ円滑に取引を行うために必 要と認められる情報をホームページ等で提供する ことが求められています。また、訪問又は電話で の 勧 誘 は 禁 止 さ れ て い ま す。 さ ら に、 Skype の よ うなものを使用することも禁止されています。こ の背景には、未公開株詐欺が訪問や電話を通じて 多くなされたことがあるようです。 (体制整備)   二種協会の規則で特徴的なのは、募集又は私募 の 取 り 扱 い に 関 す る 体 制 整 備 に 関 す る と こ ろ で す。業者は、募集又は私募の取り扱いに関する審 査の独立性を確保するため、必要な人的構成の確 保、つまり専門の審査部門の設置が求められてい ます。業者はせいぜい数人ぐらいしか人を抱えて

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証券レビュー 第55巻第12号 いません。にもかかわらず、専門の審査部門が必 要で、かつ、営業部門から独立したものでなけれ ばならないとされているわけです。   かつて私は、山一証券で引受審査部に勤務した ことがあります。一万人の社員を抱えていた山一 証券でも、審査担当者はたしか二十人程度しかい ませんでした。大手でさえ一万分の二十人であっ たことを考えますと、このウエイトの高さは相当 なものであると言えます。   さ ら に、 適 切 な 審 査 の 実 施、 顧 客 へ の 情 報 提 供、 内 部 管 理 体 制 の 整 備 な ど が 規 定 さ れ て い ま す。内部管理体制の整備に関しても、統括管理責 任者一名を定めることが求められています。

五、日米英三ヶ国の違い

  日米英の三ヶ国において、プラットフォームの 運営業者、投資者に対する規制、情報開示、業者 の体制整備という四つの点でどのような違いがあ るのか、以下で簡単に整理しておきたいと思いま す。資料 29ページをご覧下さい。 (プラットフォームの運営業者)   日 本 は、 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 運 営 業 者 に つ い て、資本金規制を置きつつ、最低基準を緩和する ことによって参入促進を企図しています。イギリ スでは資本金規制を導入しその充足を求めていま す。他方、アメリカでは、ブローカー又はファン ディング・ポータルとしての登録が求められます が、資本金に関する規制は設けられていません。 国ごとに規制のあり方は異なりますが、いずれの 国も、運営業者に対して認可又は登録を求めてお り、誰でも簡単に参入できるわけではないという 点は共通しています。なお、日本では最低資本金

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 基準が引き下げられましたが、これが本当に参入 規制の緩和と言えるのかどうか、私はやや疑問に 思っています。 (投資者に対する規制)   投資者に対する規制は、日本とアメリカでは、 金額要件を設定し、上限以下の投資に限るとされ ているところが共通しています。これは、日本が アメリカに倣ったためであると思います。他方、 イギリスではそのような金額要件は設定されてお らず、洗練された投資者としての自己申告に委ね られています。いずれにせよ、投資者に対する規 制を設けている点は共通していますが、日本やア メリカのように金額で縛るというやり方が適切な のかどうかについては疑問を持っています。 (情報開示)   情報開示については、日米英のいずれもかなり 詳細に規定しており、情報開示によって市場の公 正性、透明性を確保するという方向性は一致して いると思います。もっとも、この規制がどの程度 重いのか、軽いのか、また、実際にどのように運 用されているのかについて、日本からイギリスや アメリカの実態を見ることは難しいと感じていま す。 (業者の体制整備)   業者の体制整備については、日本だけでなく、 米英もそれなりの規制を導入していますので、必 ずしも日本だけが突出して厳しいというわけでは ありません。この点は、業者の仲介コストに直結 しますので、市場の拡大を左右する要因になりま す。三ヶ国の比較で、現状、特に日本がどうこう

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証券レビュー 第55巻第12号 ということはありませんが、今後の動向が注目さ れるところです。

六、まとめ

  日本についてもう少しだけ補足しておきます。 二種協会に、電子申込型電子募集取扱業務に参入 しようという業者があるのか聞きましたところ、 問 い 合 わ せ す ら ま だ 一 件 も な い と い う こ と で し た。成長戦略の一環としてクラウドファンディン グの制度が導入されましたが、今のところ、笛は 吹いたが誰も踊らないという状態のようです。私 自身は、この枠組みの中で新規に参入する業者は そもそもそう多くないのではないかと感じていま す。   クラウドファンディングでも寄付型や購入型で あれば、幾らでも手数料を取ることができます。 実際、一万円の寄付に対して二〇〇〇円が手数料 という形で、二割ほど手数料を取っているのが普 通ではないかと思います。極端な場合、寄付の九 割を手数料として取ったら詐欺罪になるかと申し ますと、多分そのようなことはありません。例え ば中東の紛争地域の恵まれない子どもたちのため に寄付を行うことを考えた場合、自分で持ってい くのは命がけの場合もあるわけですから、手数料 と し て 九 割 取 ら れ て も 高 い と は 言 え な い わ け で す。したがいまして、寄付型の場合、手数料が高 いか安いかを決めるルールはありません。   他方、投資型の場合、ある程度の手数料を取っ てしまいますと、投資商品として成り立たないと いう問題があります。手数料を決める大きな要因 は規制のコストです。規則で求められた体制の整 備を行った上で、なお安い手数料でクラウドファ ンディングを実施できるのかということが問題に

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 なります。その意味で、資本金の最低基準を少し 引き下げたぐらいで新規参入が実現するかと申し ますと、私はかなり疑問ではないかと思っていま す。   とは言え、クラウドファンディングに対して世 間の注目が高まっていることは確かです。少し変 わ っ た プ ロ ジ ェ ク ト に 資 金 を 提 供 し た い と い う ニーズは存在すると思いますし、多数の人から少 額ずつ資金を調達したいというニーズもやはり存 在すると思います。その間をつなぐのは、必ずし も新規に参入する専門業者である必要はありませ んので、既存の業者が兼業によってクラウドファ ンディングを担うようなあり方ももっと考えるべ きではないでしょうか。   最近、ミュージックセキュリティーズは、都道 府県や地方銀行などと連携しながら、熱心にクラ ウドファンディングの拡大に取り組んでいます。 専業ではなかなか成り立たないビジネスモデルで も、 既 存 の 組 織 と 提 携 す る こ と で 何 ら か の シ ナ ジーを実現することができれば、それをクラウド ファンディングの拡大につなげていくことも可能 になるのではないかと思います。本来であれば、 もっと証券会社に関心を持っていただければよい のですが、残念ながら、今のところ証券会社の関 心はそれほど高くないようです。この点について も、今日お越しの皆さんから御意見をいただけれ ば大変ありがたいと思います。   以上で終わらせていただきます。どうもありが とうございました。 (拍手) 大前常務理事   松尾先生、どうもありがとうござ い ま し た。 今 日 は、 「 投 資 型 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ の 世 界 的 拡 大 と 規 制 の 関 与 」 と い う テ ー マ で、特に日本、アメリカ、イギリスの規制に焦点

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証券レビュー 第55巻第12号 を合わせて詳しく御説明いただきました。   時間を残していただきましたので、御質問等が あればお受けしたいと思います。お手をお挙げい ただきましたらマイクをお回ししますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 質問者A   他にもいろいろな方法がある中で、ク ラウドファンディングについては、皆さん妙に物 わかりがよく、マスコミなどでも盛んに取り上げ られている状況です。しかし、私自身は、広くあ まねくインターネットを通じて資金を集め、それ を専門性の高いビジネスや技術につなぐという、 クラウドファンディングのスキームに対してある 種の違和感を持っています。間にファンドをかま せて、目利きの人が投資対象を選ぶということで あれば納得できますが、資金の出し手と取り手を 直接結びつけるような仕組みに本当に将来性があ るのかという疑問を持っています。そのあたりに ついて、先生の御見解をお聞かせいただければと 思います。 松尾   おっしゃるとおりで、なぜクラウドファン ディングが注目されているのかという疑問はあり ます。資金調達者の属性によってかなりばらつき がありますので、一概には言えないのですが、ク ラウドファンディングの場合、ファンディング以 外のニーズがかなり大きいと思います。クラウド ファンディングと呼ばれていますが、資金調達だ けが主たる目的ではなく、むしろ、資金調達が二 義的な目的である場合もかなりあるように思いま す。   一年前、クラウドファンディングで資金を調達 している幾つかの事業者に対してインタビューを 行いました。特に印象に残りましたのは、クラウ ドファンディングで東日本大震災の復興資金を調 達 し た 事 例 で す。 あ る 酒 造 メ ー カ ー の 方 は、 「 復

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 興資金全体の中でクラウドファンディングを通じ て調達する資金の割合は非常に小さく、これだけ では復興はできない。しかし、こういう取り組み を通じて自社の商品を広く世間に知ってもらい、 ファンを拡大することができる。その意味で、ク ラウドファンディングは、財務部の仕事ではなく 営業部の仕事である。お金を出してくれた人たち とのネットワークを大事にして、末永くつき合っ ていきたい。これまで商圏は地元に限られていた が、 こ れ を 通 じ て 全 国 に 知 名 度 を 広 げ た い 」 と 言っていました。このようなニーズは、東北のみ ならず、全国でもかなりあるのではないかと思い ます。   クラウドファンディングでは、資金を調達する 側にとってもかなりコストがかかります。リター ンとして、一〇〇〇人、あるいは二〇〇〇人の人 に自社商品を送るのは中小企業にとっては非常に 大変なことです。荷造りから宛名書きまで人件費 をかけて行うことになりますと、資金調達コスト は決して安くありません。資金調達コストだけを 考えますと、地元で名前の知られた伝統的な会社 でしたら、地方銀行から借りたほうが安いのでは ないかとも言われます。しかし、クラウドファン デ ィ ン グ を 行 う 会 社 は、 消 費 者 と フ ェ イ ス・ ツー・フェイスの関係を作りたいと考えているよ うですので、単なるファンディングとは考えない 方が良いのではないかと思います。   クラウドファンディングは、自民党が政権に復 帰して、成長戦略の中で位置づけられたことで大 変注目されるようになりましたが、民主党政権の 下でも、ふるさと投資などの形で小口の投資を促 進するという議論が行われていました。私も参加 し た「 ふ る さ と 投 資 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 推 進 協 議 会」では、ベンチャー企業が資金調達できるよう

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証券レビュー 第55巻第12号 な仕組みができないかという議論が行われ、東京 大学は担当部門を作って熱心に取り組んでいると 聞いています。   しかし、ベンチャーの手前の実験段階の新技術 の持ち主がクラウドファンディングで資金を調達 することは、かなり難しいのではないかと感じま す。先ほど山中教授のiPS細胞の例を挙げまし たが、山中教授の場合、その時点でもかなり知名 度がありましたので、応援したいという人はたく さんいたと思います。しかし、一般の人は、新技 術、例えばバイオテクノロジーなどはほとんど理 解できません。したがいまして、ある程度の共感 や理解がないとお金が集まらないクラウドファン ディングのような仕組みは使いづらいのではない かと思います。   一般の人にも理解できる新技術としては、例え ばスマートフォンのアプリの開発のようなものが あると思います。大学生が、こんなアイディアが あるのですが、これで会社を作れませんかという よ う な こ と を 言 っ て く る こ と が あ り ま す。 し か し、そのようなアイディアは、公表しますとまね られてしまいますので、公表を躊躇することが多 いのではないかと思われます。その意味で、やは りクラウドファンディングを通じた資金調達に結 び付けるのはかなり難しいのではないかと思いま す。 質問者B   一点、確認させていただければと思い ます。種類別のクラウドファンディングのご説明 の中で、エクイティ型と貸付型があるというお話 が あ り ま し た。 そ の 関 連 で、 日 本 ク ラ ウ ド 証 券 は、貸付型のクラウドファンディングをうたって いるが、匿名組合契約を活用しているので、むし ろエクイティ型に含めるのが適当であると説明さ れました。金商法や二種協会の規制との関連で、

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 同社の行っている業務はどのように位置づけられ るのでしょうか。 松尾   日本クラウド証券は匿名組合を作って資金 を調達しますので、ファンドに関する二種協会の 規則が適用されることになります。 質問者B   もう一点、資料 20ページの日本の規制 ⑷の②に書いてある情報開示に関連して、特別な 書式又はフォーマットが定められているのでしょ うか。 松尾   大部なものですが、二種協会のホームペー ジに関連する規則と細則が詳細に公表されていま す。 質問者B   相当細かい様式が含まれているという ことですか。 松尾   はい。審査チェック項目なども含め、細か く規定されていますので、それをご覧いただけれ ばと思います。また、資料の参考文献のとおり、 本年九月に刊行された『証券経済研究』第九一号 に、 松 尾 順 介・ 梅 本 剛 正[ 二 〇 一 五 ]「 投 資 型 ク ラウドファンディングに関する規制について」が 掲載されています。御関心があればお読みいただ ければと思います。   なお、二種業協会の規則では、訪問・電話の禁 止など、詳細な規定がなされていますが、運用面 でいろいろと悩ましい点が出てくるのではないか と思います。さまざまなソーシャルネットワーク をどのように取り扱うかも問題になります。二種 協会に聞きましたら、公表された規則だけでは十 分に理解されない部分があるので、運用マニュア ル の よ う な も の を 準 備 し て い る と い う こ と で し た。近いうちに公表されるようですので、細かい と こ ろ は そ れ を ご 覧 い た だ く の が よ い と 思 い ま す。   とは言え、規則を読めばすぐにわかるものでは

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証券レビュー 第55巻第12号 ありません。二種協会の規則を読んで、金融以外 の分野から新規参入するのは難しいのではないか と感じます。場合によっては、規則に沿った社内 体制を整備するために何が必要かなど、大手弁護 士事務所に手数料を支払ってアドバイスをしても らわないといけないことになりそうです。その場 合、その費用が資本金よりも大きくなるようなこ とがあるかもしれません。 大前常務理事   クラウドファンディングに関し、 アメリカと日本では、成長の初期段階の企業の資 金調達を支援するという位置づけの下で調達の上 限金額が定められておりますが、イギリスではそ う し た 上 限 金 額 の 規 制 は 行 わ れ て い な い よ う で す。この点に照らし、日米とイギリスでは、クラ ウドファンディングの位置づけに何らかの違いが あると言えるのでしょうか。また、イギリスの方 がクラウドファンディングの成長の可能性が大き いのではないかとも思いますが、そのあたりはど のようにお考えになりますか。 松尾   規制の字面だけで比較するのはなかなか難 しく、規制の運用の実態をつぶさに見る必要があ るように思います。   この間の流れを見ますと、イギリスでもクラウ ドファンディングに対する規制をやや強化する方 向に向かっているように思います。今日は紹介し なかったのですが、イギリスではクラウドファン ディングを巡っていろいろなトラブルが起きてい るようです。FCAのレビューを見ますと、駆け 出しのベンチャー企業や、通常では資金が調達で きない危ない会社がインターネット上でミニボン ドを募集し、一般の人が高利回りに惹かれてお金 を出しているケースが紹介されています。そのよ うなケースでは、発行会社がデフォルトしたり、 ミニボンドの流動性がなくなったりして、揉め事

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投資型クラウドファンディングの世界的拡大と規制の関与 になるような事態も生じているようです。イギリ スが慎重姿勢に傾いておりますのは、現実にこの ようなケースが生じているためではないかと思わ れます。   アメリカでは、クラウドファンディング法制定 後二七〇日以内にSEC規則が制定されるはずで したが、三年経ってもまだ制定されていない状況 です。その背景については想像で申し上げるしか ないのですが、やはりクラウドファンディングを 巡るトラブルが多かったためではないかと思われ ます。インターネットでクラウドファンディング について検索してみますと、うまくいっている事 例だけでなく、例えば、お金を出したのに思いど おりの物が届かないといったトラブルもかなり起 きているようです。そのようなクレームが消費者 団体に届き、クラウドファンディングは慎重に運 用すべきであるといった意見が出てきているので はないでしょうか。   新しく制度ができたばかりの日本でも、クラウ ドファンディングの運用は慎重に行うべきである という流れになっているように思います。日本で は、未公開株詐欺の問題があって慎重にならざる をえない面もありますが、それだけでなく、イギ リスやアメリカで、思ったよりトラブルが多いこ とも関係しているのではないかと感じています。 大前常務理事   以上をもちまして、今日の「証券 セミナー」はお開きとさせていただきます。   改めまして、松尾先生、どうもありがとうござ いました。 (拍手)  ( まつお   じゅんすけ・ 桃 山 学 院 大 学 教 授 当研究所客員研究員 )



(この講演は、平成二七年十一月九日に開催されました。 )

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証券レビュー 第55巻第12号   松 尾 順 介 氏 略  歴 1959年   神戸市生まれ。 1988年   京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。 1999年   博士号(京都大学・経済学)取得。       山一證券、(財)日本証券経済研究所・大阪研究所主任研究員       などを経て、 2005年4月 桃山学院大学経営学部教授(現代に至る)  同年4月 日本証券経済研究所客員研究員(現在に至る)       京都大学、関西学院大学、大阪市立大学等の非常勤講師を兼任。 著  書 主著   『日本の社債市場』、東洋経済新報社、1999年、 共訳書  マーク・ロー『アメリカの企業統治』、東洋経済新報社、      ヒラリー・ローゼンバーグ『ハゲタカ投資家』、日本経済新聞社、など。

参照

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