医療事故調査制度について
~大阪府医師会の取り組み~
医療安全推進指導者講習会
平成30年1月20日
主な医療事故と医療事故調査制度の意義
・1999年1月11日、
横浜市大患者取り違え事件
。
・1999年2月10日、
東京都広尾病院
の消毒剤点滴事件。
主治医が医師法21条違反で懲役1年執行猶予3年、罰金2万円
(注射部位の異状が認められた。異状死の外表異状説の根拠)
医師の自己負罪拒否特権(日本国憲法第38条)は否定された。
・2001年3月2日、
東京女子医大
、心臓手術中の人工心肺装置の事故が起こり、
2日後に死亡。人工心肺装置の操作ミスを疑われ、業務上過失致死容疑で逮捕
されたが、一貫して操作ミスを否定。人工心肺装置自体の不備が判明し、無罪。
カルテを改ざんした講師は証拠隠滅で逮捕された。
・2004年12月17日、
福島県立大野病院事件
における医師逮捕。
業務上過失致死(刑法211条)と医師法21条違反で2006年2月18日に逮捕。
2008年8月20日、無罪が確定。
この事件をきっかけに無過失補償制度の議論加速。
1.医療安全
確保
2.医療への
信頼回復
3.刑事介入
の回避
2.医療事故調査制度15年の歴史
1,999
2,001
2,004
2,005 2,008
2,011
2,013
2,014
2,015
2,016
*
国
立
大
学
医
学
部
付
属
病
院
長
会
議
「
医
療
事
故
防
止
策
定
の
作
業
部
会
」
の
設
置
*
厚
労
省
「
医
療
安
全
対
策
会
議
」
事
故
調
査
の
制
度
化
*
日
本
医
療
機
能
評
価
機
構
ヒ
ヤ
リ
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ト
収
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事
業
(
10
月
)
*
19
学
会
共
同
声
明
「
第
三
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機
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の
設
置
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(
9
月
)
*
日
本
内
科
学
会
・
法
医
学
会
・
外
科
学
会
・
病
理
学
会
中
立
的
専
門
機
関
の
設
置
の
提
言
(
2
月
)
*
「
診
療
行
為
に
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連
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た
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亡
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調
査
分
析
モ
デ
ル
事
業
」
*
厚
労
省
「
大
綱
案
」
*
厚
労
省
「
医
療
の
質
の
向
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に
資
す
る
無
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失
補
償
制
度
等
あ
り
方
検
討
会
」
設
置
(
8
月
)
*
厚
労
省
「
医
療
事
故
に
係
る
調
査
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組
み
等
あ
り
方
検
討
部
会
」
設
置
(
2
月
)
*
医
療
事
故
調
査
制
度
創
設
を
含
む
医
療
法
改
正
法
案
(
6
月
)
*
「
医
療
事
故
調
査
制
度
の
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行
に
係
る
検
討
会
」
設
置
(
11
月
)
*
「
医
療
事
故
調
査
制
度
の
施
行
に
係
る
検
討
会
」
取
り
ま
と
め
(
3
月
)
*
「
支
援
団
体
」
公
示
(
8
月
6
日
)
*
「
支
援
セ
ン
タ
ー
」
公
示
(
8
月
17
日
)
*
医
療
事
故
調
査
制
度
開
始
(
10
月
1
日
)
*
医
療
事
故
調
査
制
度
見
直
し
(
6
月
)
3.大綱案(平成20年)と改正医療法(平成26年)の比較
大綱案(平成20年)
改正医療法(平成26年)
医療者を中心とした委員会の判断問題なし
問題あり
再発防止
の共有
行政処分
警察へ通知
・
診療録改竄 ・リピータ医師 ・故意や重大過失 医療機関 医療者による調査 調査結果報告書 医療安全調査委員会 (仮称)(公的機関) 医師法21条に基づく届け出は 不要 医療機関の判断 遺族等 医療機関による調査調査結果報告書
医療機関管理者の判断 医療機関 医療事故調査・支援センター (民間組織)再発防止の共有
遺族等 W H O ドラフトガイドライン 1.非懲罰性 2.秘匿性 3.独立性医療事故調査制度の概要
医療事故発生
医療機関
第三者機関(センター)
支援団体
遺族
②相談・事故報告 ①説明 ③院内調査・報告書作成支援 ④結果説明 ⑤調査報告 ⑥結果報告受理⑩収集した情報の整理及び分析 ⇒ ⑪再発防止に関する普及啓発等
④結果説明 報告 ⑦ 再調査依頼 (2万円) ⑦調査依頼 (10万円)院内事故調査委員会
⑨再調査結果報告⑧センター調査
日本医療安全調査機構
医療事故の定義について
○医療に起因し、又は起因すると疑われるもの
法
律
省
令
通
知
第6条の10
病院、診療所又は助産所の管理
者は、医療事故が発生した場合に
は、厚生労働省令で定めるところ
により、遅滞なく、当該医療事故の
日時、場所及び状況その他厚生労
働省令で定める事項を第6条の15
第1項の医療事故調査・支援セン
ターに報告しなければならない。
○省令事項なし
○「医療」に含まれるものは制度の
対象であり、
「医療」の範囲
に含ま
れるものとして、
手術、処置、投薬
及びそれに準じる医療行為(検査、
医療機器の使用、医療上の管理な
ど
)が考えられる。
○施設管理等の「医療」に含まれな
い単なる管理は制度の対象となら
ない。
○
医療機関の管理者が判断するも
の
であり、ガイドラインでは判断の
支援のための考え方を示す。
医療に起因し、又は起因することが
疑われるもの
医療に起因する(疑いを含む)死亡又は死産の考え方(通知)
(下記)に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産
1.診察:徴候、症状に関連するもの 4.その他:管理者の判断によるもの 2.検査等(経過観察を含む) ・療養に関連するもの ・検体検査に関するもの ・転倒・転落に関連するもの ・生体検査に関するもの ・誤嚥に関するもの ・診断穿刺・検体採取に関連するもの ・患者の隔離・身体拘束・身体 ・画像検査に関連するもの 抑制に関連するもの 3.治療(経過観察を含む) ・投薬・注射(輸血含む)に関連するもの ・リハビリテーションに関連するもの ・処置に関連するもの ・手術(分娩含む)に関連するもの ・麻酔に関連するもの ・放射線治療に関連するもの ・医療機器の使用に関連するもの左記に含まれない死亡又は死産
• 左記以外のもの
(具体例)
1.施設管理に関連するもの
・火災等に関連するもの
・地震や落雷等、天災によるもの
・その他
2.併発症
(提供した医療に関連のない、偶発的に生じた
疾患)
3.原病の進行
4.自殺(本人の意図によるもの)
5.その他(院内で発生した殺人・傷害致死、
等
医療事故の定義について
○当該死亡又は死産を予期しなかったもの
法
律
省
令
通
知
第6条の10
病院、診療所又は助産
所の管理者は、医療事故
が発生した場合には、厚
生労働省令で定めるところ
により、遅滞なく、当該医
療事故の日時、場所及び
状況その他厚生労働省令
で定める事項を第6条の15
第1項の医療事故調査・支
援センターに報告しなけれ
ばならない。
○当該死亡又は死産が予期されていなかったものと して、以下の事項のいずれにも該当しないと管理者が 認めたもの 一 管理者が、当該医療の提供前に、医療従事者等 により、当該患者等に対して、当該死亡又は死産が予 期されていることを説明していたと認めたもの 二 管理者が、当該医療の提供前に、医療従事者等 により、当該死亡又は死産が予期されていることを診 療録その他の文書等に記録していたと認めたもの 三 管理者が、当該医療の提供に係る医療従事者等 からの事情の聴取及び、医療の安全管理のための委 員会(当該委員会を開催している場合に限る。)からの 意見の聴取を行った上で、当該医療提供前に、当該 医療の提供に係る医療従事者等により、当該死亡又 は死産が予期されていると認めたもの ○左記の解釈を示す。 ●省令第一号及び第二号に該当するものは、一般的 な死亡の可能性についての説明や記録ではなく、当該 患者個人の臨床経過等を踏まえて、当該死亡又は死 産が起こりうることについての説明及び記録であること に留意すること。 ●患者等に対し当該死亡又は死産が予期されている ことを説明する際は、医療法第一条の四第二項の規定 に基づき、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解 を得るように努めること。 参考)医療法第一条の四第二項 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い 手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医 療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。当該死亡又は死産を予期しなかったもの
医療事故の遺族への説明事項等について
省
令
遺族への説明事項について
1.医療事故の日時、場所、
状況
2.制度の概要
3.院内事故調査の実施計画
4.解剖又は死亡時画像診断
(Ai)が必要な場合の解剖又は
Aiの同意取得のための事項
通
知
○「センターへの報告事項」の内容を
遺族にわかりやすく
説明
する。
○遺族への説明事項
1.医療事故の日時、場所、状況
・日時 / 場所 / 診療科
・医療事故の状況
◆疾患名 / 臨床経過等
◆報告時点で把握している範囲
◆調査により変わることが前提であり、その時点で
不明な事項は不明と説明する。
2.制度の概要
3.院内事故調査の実施計画
4.解剖又は死亡時画像診断(Ai)が必要な場合の解剖又は
Aiの具体的実施内容などの同意取得のための事項
5.血液等の検体保存が必要な場合の説明
年 月 日 曜日 - (ふりがな) 管理者の氏名 医療事故報告票 報告日 平成 Ⅰ 医療機関 (ふりがな) 医療機関名 所在地 郵便番号 受付年月日 平成 年 月 日( ) 事故報告管理番号 都道 府県 連絡先 (ふりがな) 氏名 所属部署 電話 FAX Eメール 【機構記載欄】 備 考 機構確認者 / 歳 週 日 年 月 日 時 分 年 月 日 時 Ⅱ 事故の内容 調査により変わることが前提であり、報告時点で把握している範囲で記載してください。 その時点 で、不明な事項については不明と記載してください。 患 者 性 別 男 性 女 性 診 療 科 診 療 科 番 号 1 ※ (共通コード参照) 患 者 年 齢 ヵ 月 在 胎 週 数 死 亡 日 時 平 成 死 亡 場 所※ 2 番 号 具 体 的 な 死 亡 場 所 時 間 (共通コード参照) 医 療 事 故 発 生 日 時 平 成 番 号 具 体 的 な 発 生 場 所 時 間 分 (頃 ) (共通コード参照) 医療事故 発生場所※ 2 疾 患 名 医 療 事 故 の 状 況 医 療 事 故 調 査 の 実 施 計 画 と 今 後 の 予 定 そ の 他 管 理 者 が 必 要 と 認 め た 情 報 【機構記載欄】 事故報告管理番号
日本医療安全調査機構
ホームページより
死亡に至るまでの臨床経過を時系列
に整理して、客観的に記載する。
医療機関が行う医療事故調査の方法等
省
令
○病院等の管理者は、医療事故調査を行うに
当たっては、以下の調査に関する事項について、
必要な範囲で選択
し、当該医療事故の原因を
明らかにするために情報の収集および整理を行
う。
1.診療録その他診療に関する
記録の確認
2.
当該医療従事者のヒアリング
3.その他関係者からのヒアリング
4.解剖又はAiの実施
5.医薬品、医療機器、設備等の確認
6.血液、尿等の検査
通
知
○本制度の目的は医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではないこと。 ○調査の対象者については当該医療従事者を除外しないこと。 ○調査項目を以下の中から必要な範囲内で選択 1.診療録その他の診療に関する記録の確認 例:カルテ、画像、検査結果等 2.当該医療従事者のヒアリング *ヒアリング結果は内部資料とし、開示しない。(法的強制力のある場合を除く) その旨、ヒアリング対象者に伝えること。 3.その他の関係者からのヒアリング *遺族からのヒアリングが必要なこともある。 4.医薬品、医療機器、設備等の確認 5.解剖又はAiについては、どの程度死亡の原因が医学的に判断できているか、 遺族の同意の有無、その実施によって得られる情報の重要性を考慮して実施の判断する。 6.血液、尿等の検体の分析・保存の必要性を考慮 ○医療事故調査は医療事故の原因を明らかにするために行うものであること。 *原因も結果も明確な、誤薬等の単純な事例であっても、調査項目を省略せずに丁寧な 調査を行うことが重要であること。 ○調査の結果、必ずしも原因が明らかになるとは限らないことに留意すること。 ○再発防止は可能な限り調査の中で検討することが望ましいが、必ずしも再発防止策が得られる とは限らないことに留意すること。医療機関からセンターへの調査結果報告について
法
律
省
令
通
知
第6条の11
4 病院等の管理者は、医療事故調査
を終了したときは、遅滞なくその結果を
第6条の15第1項の医療事故調査・支
援センターに報告しなければ
ならない。
センターへの報告事項・報告方法 院内調査結果の報告書内容 ●日時 / 場所 / 診療科 ●医療機関名 / 所在地/ 連絡先 ●医療機関の管理者の氏名 ●患者情報(性別/ 年齢等) ●医療事故調査の項目、手法及び結果 ○当該医療従事者等の関係者について匿 名化する。 センターへの報告方法について ○次のいずれかの方法によって行う。 ●書面 又は Web上のシステム ○「本制度の目的は医療安全の確保であり、個人の責任を追及する ものではない」ことを、報告書冒頭に記載する。 ○それ以外の用途に用いる可能性については、あらかじめ当該医 療従事者へ教示することが適当である。 ○以下の事項を報告 ●日時/場所/診療科 ●医療機関名/所在地/連絡先 ●医療機関の管理者の氏名 ●患者情報(性別/年齢等) ●医療事故調査の項目、手法及び結果 ・調査の概要(調査項目、調査の手法) ・臨床経過(客観的事実の経過) ・原因を明らかにするための調査の結果 *必ずしも原因が明らかになるとは限ら ないことに留意すること。 ・調査において再発防止策の検討を行った場合、管理者が講ずる再発防 止策については記載する。 ・当該医療従事者や遺族が報告書の内容について意見がある場合等は、 その旨を記載すること。 ○当該医療従事者等の関係者について匿名化する。 ○医療機関が報告する医療事故調査の結果に院内調査の内部資 料は含まれない。1.医療事故調査報告書の位置づけ・目的 この医療事故調査制度の目的は、医療安全の確保であり、個人の責任を追及す るためのものではない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.医療事故調査の項目、手法及び結果 ・調査の概要(調査項目、調査の手法) ・臨床経過(客観的事実の経過) ・原因を明らかにするための調査の結果(必ずしも原因が明らかになるとは限 らない) ・調査において再発防止策の検討を行った場合、管理者が講ずる再発防止策 ・当該医療従事者又は遺族が報告書の内容について意見がある場合等は、その 旨を記載