体系書式講座[講義編]
不動産登記法
テキストサンプル
SU10483
0 0 0 1 9 2 1 1 0 4 8 3 9力を有する登記である。また,申請すべき登記は所有権の移転登記であり名変登記を 省略できる例外には該当しないことが分かる。 よって,本件では,事実関係2に基づく登記申請の前提として共有者甲野太郎の名 変登記を申請することになる。 【設問18-2】 登記権利者となる乙野二郎が仮登記後(平 14.2.10)住所を移転した(平 16.8.20) ことによる不一致であるので登記名義人の住所を移転後の住所に変更する名変登記の 申請が必要となることがわかる。本件で名変登記の対象となる登記は甲区3番仮登記 であり現に効力を有する登記であることが分かる。また,申請すべき登記は所有権の 移転登記であり名変登記を省略できる場合でないことも明らかである。 よって,本件では,仮登記の本登記の前提として甲区3番仮登記の名変登記を申請 することになる。 【設問19】 連続性のない場合の対応(名変登記の可否・要否) 次の各設問の事実関係に含まれる論点を指摘し,申請の3要素への影響を答えよ。 (A不動産の登記記録) 表題部 省略 権利部(甲区) 1番 省略 2番 所有権移転 平成14年2月1日受付第2110号 原因 平成14年2月1日売買 所有者 甲地 甲野一郎 3番 所有権移転 平成21年9月2日受付第7666号 原因 平成21年9月2日売買 所有者 乙野二郎 権利部(乙区) 1番 抵当権設定 平成14年2月1日受付第2111号 原因 平成14年2月1日金銭消費貸借同日設定 債権額 金3,000万円 債務者 甲野一郎 抵当権者 株式会社大手町銀行 【設問19-1 (名変登記の可否)】 (事実関係) 1 甲野一郎及び乙野二郎は,平成21年9月2日,A不動産の2分の1を代金 1,000 万円で乙野二郎に移転する売買契約を締結した。甲区3番の登記は,当該売買契約に 基づきなされたものであるが,誤って所有権全部の移転登記がされたものである。 2 甲野一郎は,平成21年9月20日に甲地から乙地へ住所を移転した。 【設問19-2 (名変登記の要否(名変登記の省略))】 (事実関係) 1 平成21年9月1日,株式会社大手町銀行は,株主総会において,商号を株式会社 三崎銀行に変更する決議をし,翌日,管轄登記所において商号変更の登記を完了した。 2 甲野一郎は,平成22年7月20日,A不動産の乙区1番抵当権によって担保され ている貸金債務の全額を株式会社三崎銀行に弁済した。
1 解法公式 前問(P228)参照。 2 着眼点及び論点の発見 【設問19-1】 甲区3番所有権移転登記を所有権一部移転登記に是正する場合である。本件の是正 登記は,移転分量の誤りであるため是正前後で同一性を有し更正登記を申請すること ができる。本件の更正登記の登記権利者は一部登記名義が回復する前登記名義人甲野 一郎となり,登記義務者は権利の一部を失う現登記名義人乙野二郎となる。申請情報 の内容として提供(答案用紙に記載)する申請人の住所は,申請時点の最新の住所で なければならず登記権利者甲野一郎については,事実関係2による住所移転後の住所 となる。その結果,申請情報の内容として提供した登記権利者の住所と登記記録から 認定できる登記権利者の住所が一致しないことになり,そのまま申請をすれば当該申 請は却下されることになる(25④)。よって,本件では申請人について連続性がない場 合の対応が論点となることが判明する。 【設問19-2】 乙区1番抵当権が,債務者から債務全額の弁済を受けたため消滅の付従性により消 滅し,抹消登記を申請する場合である。登記権利者は抵当権の負担から免れる現在の 所有者乙野二郎となり,登記義務者は抵当権者株式会社大手町銀行である。申請情報 の内容として提供(答案用紙に記載)する申請人の名称(商号)は,最新の名称でな ければならず登記義務者株式会社大手町銀行については現在の商号である株式会社三 崎銀行を申請情報の内容とする。その結果,申請情報の内容として提供した登記義務 者の名称と登記記録から認定できる登記義務者の名称が一致しないことになり,その まま申請をすれば当該申請は却下されることになる(25⑦)。よって,本件では申請人 について連続性がない場合の対応が論点となることが判明する。 3 論点への対応 【設問19-1】 登記権利者となる甲野一郎が甲区2番の移転登 記後(平 14.2.1)住所を移転した(平 21.9.20) ことによる不一致である。しかし,本件で名変登 記の対象となるのは甲区2番の移転登記であるが 甲区3番で所有権移転登記がなされているため現 に効力を有しない。 よって,名変登記を申請することはできず,変 更を証する情報を提供して,便宜,更正登記を申請し,その後に名変登記を申請する ことになる。なお,書面申請であると電子申請であるとを問わず,変更があったこと を確認することができる住民票コードを提供すれば,変更を証する情報の提供を省略 することができる(令 9,規 36Ⅳ,同附 15Ⅰ)。 【設問19-2】 登記義務者となる株式会社大手町銀行は, 抵当権設定後(平 14.2.1)商号を変更した(平 21.9.1)ことによる不一致であるため登記名 義人の名称(商号)を変更後の商号に変更す る名変登記を申請する必要があることがわか る。本件で名変登記の対象となるのは乙区1 番の抵当権設定登記であり,現に効力を有す る登記であるが,申請すべき登記が所有権以 外の権利の抹消であり,加えて登記義務者に 名変事由が生じている場合であるので変更を証する情報を提供し,名変登記を省略し て直ちに抹消登記を申請することが可能となる。 甲野 × 乙野 申 請 変更を 証する情報 利 乙野 × 三崎 ・ 代 申 請 変更を 証する情報 利
<別紙 No.19 住民票の写し> 住民票 氏名 性別 生年月日 続柄 住民となった日 甲野太郎 男 昭和 15 年8月1日 省略 平成 16 年8月2日 世帯主 省略 住所 東京都練馬区上石神井三丁目2番1号 平成 16 年8月2日転入 平成 16 年8月4日届出 筆頭者 省略 本籍 省略 前住所 東京都江戸川区東葛西五丁目1番1号 この写しは,住民票の原本と相違ないことを証明する 平成 22 年6月1日 東京都練馬区長 何某 印 <別紙 No.20 戸籍の附票> 平成参年弐月壱日 編成 年 月 日 改製 年 月 日 消除 本 籍 東京都千代田区大手町一丁目三番地 氏 名 甲野太郎 番号 記載事由 住所 住所を定めた年月日 名 1 昭和六拾参年九月 拾八日転居届出 東京都江戸川区東葛西 五丁目一番一号 昭 和六 拾参 年 九 月 拾五 日 2 平成拾六年八月四 日転入届出 東京都練馬区上石神井 三丁目二番一号 平成拾六年八月弐日 3 4 5 ① 6 太郎 <別紙 No.21 本店移転,商号変更を証する会社の登記事項証明書> 履歴事項一部証明書 東京都港区新橋一丁目3番2号 株式会社乙 会社法人等番号 0001-00-000000 株式会社甲 平成22年6月1日変更 商号 株式会社乙 平成22年6月3日登記 東京都港区三田三丁目1番1号 平成22年4月1日移転 本店 東京都港区新橋一丁目3番2号 平成22年4月3日登記 登記記録に 関する事項 平成18年4月1日東京都渋谷区道玄坂二丁目1番1号から本店移転 平成18年4月15日登記
第2章
包括移転登記
第1節 相続
《相続・遺贈に関する検討手順》 1 相続の開始原因(民 882) ある者(登記名義人)の死亡 失踪宣告における死亡擬制時 普通失踪:失踪期間満了時 (民 31) 特別失踪:危難の去ったとき 2 法定相続の補充性 遺言相続 > 法定相続 3 法定相続の場合の検討手順 (1) 相続財産 (2) 相続人 ① 推定相続人の判断 第1 子(民 887Ⅰ) ・養子 普通養子は実父母,養父母双方の相続人(民 727) [昭 55 記述(配偶者の子と縁組)][昭 56 記述] 特別養子は養父母のみの相続人(民 817 の9) ・婚外子 婚外父子関係 認知により法的親子関係発生(民 779) 婚外母子関係 分娩の事実により当然に発生 (最判昭 37.4.27) ・胎児 生まれたものとみなす(民 886ⅠⅡ) 第2 直系尊属(民 889Ⅰ①) 親等の近いものが先(民 889Ⅰ①但書) 普通養子が被相続人のときは,実父母と養父母は同順位相続人 特別養子が被相続人のときは,養父母のみが相続人(民 817 の9) 第3 兄弟姉妹(民 889Ⅰ②) 配偶者(民 890) 法律上の配偶者のみ (内縁関係が一方当事者が死亡した場合,内縁の配偶者には相続権はなく, 財産分与の請求も認められない(最判平 12.3.10, Cf.内縁の解消の場合は民 768 類推適用)) 血 族 相 続 人 同 順 位② 相続権の否定 イ 相続放棄(民 939) [昭 55 記述][平 8 記述][平 12 記述][平 15 記述][平 19 記述(共同相続登記後)] 最判昭 53.2.24 利益相反行為 ※ 二重の資格を有する相続人(Ex.養子である弟)の相続放棄は,他の資格(兄弟 姉妹)での相続放棄としての効力を有する(昭 32.1.10 民甲 61 号回答)。 ロ 相続開始以前の死亡(民 887ⅡⅢ) [昭 55 記述][平 12 記述][平 15 記述][平 18 記述] 同時死亡を含む(死亡の先後が不明の場合,同時と推定(民 32 の 2)) ハ 相続欠格(民 891) 要件 被相続人,他の相続人の生命侵害(同①②) 被相続人の遺言の妨害(同③④⑤) ※ 自己に有利な遺言の破棄・隠匿は⑤にあたらない(最判平 9.1.28) 効果 当然発生主義 相対効 AB間の子CがAを殺害した場合,Aの相続については欠格事由に あたるが,Cの子Dの死亡によりその相続人となる場合には,欠格 事由にはあたらない(Bの相続については欠格事由にあたる。)。 ニ 廃除(民 892,同 893)[平 12 記述] 対象:遺留分を有する推定相続人 → 兄弟姉妹は対象ではない(民 1028)。 効果 相対効 推定相続人の廃除(民 892,同 893) 要件 消極 カ 推定相続人の廃除の審判の確定 サ 取消しの審判確定(民 894) 相続放棄(民 938,同 915) 要件 消極 ※1 未成年者の相続放棄を法定代理人がする場合,その法定代理人が自らの相続放棄をしてい ない限り,利益相反行為(民 826)となる(最判昭 53.2.24)。 ※2 撤回することはできないが総則又は親族編の規定による取消は可能(民 919ⅠⅡ)。 カ 自己のために相続の 開始があったことを 知ったこと サ 単純承認 (民 920) キ カから 3 ヶ月以内に 家裁に相続放棄を申述 したこと ※1 タ 法定単純承認 事由(民 921) ハ 単純承認の 取消しを家裁 に申述 ※2 (民 919ⅡⅣ) ナ 相続放棄の取消 しを家裁に申述 (民 919ⅡⅣ)※2 マ 時効消滅等 (民 919Ⅲ)
代襲相続(民 887ⅡⅢ,同 889Ⅱ)[昭 55 記述][平 12 記述] ・被代襲者 子,孫以下の直系卑属,兄弟姉妹 (直系尊属,配偶者については代襲は生じない。) ・代襲者 被相続人の直系卑属,または兄弟姉妹の子 被代襲者が直系卑属の場合,代襲者も被相続人の直系卑属 → 被代襲者が被相続人の養子である場合,被代襲者の縁組前 の子は代襲者とならない(民 727 参照)。 被代襲者が兄弟姉妹の場合,代襲者も被相続人の傍系卑属 相続開始時に存在(胎児としてでもよい) 子である代襲者に被相続人,被代襲者との間で代襲原因があれば,再代襲が生 じる。兄弟姉妹については再代襲は生じない。 (3) 相続分(共同相続の場合) 法定相続分(民 900(昭 56.1.1 以降に開始した相続に適用(昭 55 法 51 号附Ⅰ)), 同 901) 配偶者と子 配偶者と直系尊属 配偶者と兄弟姉妹 1:1 2:1 3:1 数人あるときは相等しい。 ただし,非嫡出子は嫡出子の 1/2([昭 55 記述][昭 56 記述][平 18 記述]), 父母の一方のみを同じくする(半血)兄弟姉妹は父母の双方を同じくする(全血) 兄弟姉妹の 1/2 代襲者は被代襲者の相続分を「株分け」[平 18 記述] 相続分の修正 ・遺言による指定(民 902) ・特別受益(民 903,同 904)[平 12 記述][平 15 記述] ・寄与分(民 904 の2) ・相続分の譲渡(民 905) ・遺産分割(民 906~)
4 遺言相続の場合の検討手順 (1) 遺言相続の要件 最判平 9.11.13 最判昭 39.3.6 最判昭 62.4.23 平 4.11.25 民三 6568 号回答 遺言相続 要件 積極 消極 ※1 遺贈については遺言の効力発生時にその効力が生じ,権利が移転する(物権的 効果説)。 ※2 第 2 遺言を単に撤回しても,当初の遺言の効力は回復しない(民 1025 本文)。 ※3 遺言後の日を原因日付とする第三者への売買による所有権移転登記が錯誤によ り抹消されている場合,遺言による遺贈を原因とする所有権移転登記は受理され る(平 4.11.25 民三 6568 号回答)。 ※4 包括遺贈の承認・放棄には法定相続に関する規定(民 915~同 940)の規定が適 用される(民 990)。 ※5 特定遺贈による不動産上の権利の移転を第三者に対抗するには,登記を要する (最判昭 39.3.6)。ただし,遺言執行者が指定されている場合,相続人の処分は 絶対的に無効であり,受遺者は登記なくして遺贈による権利取得を第三者に対抗 することができる(最判昭 62.4.23)。 ア 遺言の 方式具備 (民 960) サ1 遺言時に遺言能力(満 15 歳以上)欠如(民 961) イ 遺言者の 死亡(民 985Ⅰ) ※1 サ2 遺言時に意思能力欠如 タ 被後見人の遺言の制限(民 966)に抵触する事実 ナ 共同遺言(民 975) ハ 遺言が条件付(民 985Ⅱ) マ1 第 2 遺言による撤回(民 1022) マ2 生前処分,遺言書破棄による 撤回擬制(民 1023,同 1024) [平 11 記述] ※2 A 条件成就 (民 985Ⅱ) ヤ 受遺者の遺贈の放棄(民 986) ※4 B 第 2 遺言の 詐欺強迫取消 (民 1025 但書) C 第2遺言を撤回 する第3遺言が 第1遺言の復活を 希望することが 明らか(最判平 9.11.13) ※2,※3 ラ 相続欠格事由(民 965・同 891) ワ 遺言者の死亡以前に受贈者が 死亡(民 994) ン1 相続人から第三者への処分 ン2 第三者の対抗要件の具備 ※5
(2) 遺言の効果(遺言の解釈) 解釈の基準:遺言者の意思 ① 文言 ② 受益者の地位 ※ 受益者の地位の検討方法は法定相続の場合と同様 (遺言者が別段の意思表示をしていない限り,代襲の検討は不要) 文言 受益者 登記原因