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情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト--米国,英国そして日本の製造企業の国際比較---香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

調 査

情報システム,生産システムの革新と

原価管理へのインパクト*

*

*

一 米 国 , 英 国 そ し て 日 本 の 製 造 企 業 の 国 際 比 較 一

井 上 信

は じ め に 一 研 究 の 意 図 と 限 定 一 最近の製造企業における情報諸技術

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の進歩は目覚まし しそれにより企業の情報化,システム化は急速に進展してきている。その中心は, コンビュータシステム,ネットワークシステム,データベースシステム及び生産シス テムの弾力化である。本稿の第一の目的は,製造企業のこのような情報化,システム 化の実態を米国,英国そして日本との聞の比較において明らかにすることである。 第二の目的は,最近の製造企業は市場のニーズ(多品種少・中量物流への対応〉を 充分かつタイムリーに反映した弾力的な生産システム(多品種少・中量生産〉の整備 が急務であるといわれており,また企業自体それらのニーズに積極的に取り組んでき ている。米国,英国そして日本の製造企業が,上述の課題に対して実際にどのように 取り組んできているか,生産管理,生産方式及びファクトリーオートメーションの側 面から,具体的に検討することである。 第三の課題は,情報システムのトータル化及び生産システムの弾力化が進展してい る製造企業の原価管理システム(原価計算,原価管理及び意志決定システム〉はどの * 本稿は,昭和60年度文部省科学研究費補助金(一般研究(C))による研究成果の一部で ある。 村 本稿を作成するにあたり多くの方の御陰を蒙っている。大変忙しい中,調査に御協力頂い た米国,英国そして日本の製造企業の方々,調査察の作成に手助けして頂いた東雲学園講師 ノレース・ヴァージン氏,調査の実施,集計等の面倒な作業をして頂いた香川大学経済学部助 手安藤博子氏,技官金海理恵子氏,また資料の整理等をして頂いた四電情報ネットワーク サービス古藤佐知子氏,香川県庁寺西淑子氏,福崎千尋氏である。記して謝意を表します。

(2)

-116- 第60巻 第2号 402 ようになっているのか。米国,英国および日本の比較を通じて,情報システムのネッ トワーク化,生産システムの弾力化, トータル化を反映した原価計算システム,原価 管理システム及び意志、決定支援システムの実態を明らかにするのが

3

番目の目的で ある。 以上の検討を通じて,米国,英国そして日本の製造企業の情報化,ネットワーク化, 生産システムの弾力化, トータル化とそれの原価管理へのインパクト及び原価管理シ ステムの今後の在り方を明らかにする手掛かりを得ることが,本稿の主たる課題であ る。 勿論,本稿では,それぞれの課題が多様であるためそのすべての側面にわたること は不可能であり,限られた一側面を検討するに過ぎなし、。具体的には,コンピュータ システム,ネットワークシステム, データベースシステム,生産システムの弾力化, 生産技術のシステム化, FA化,原価計算システム,原価管理システム及び意志決定支 援システムの一面を取り扱うに過ぎない。 また, 日本企業の調査は,過去になされたいくつかの調査を併用するため,米国, 英国の比較を中心に日本企業の実態は比較基準として用いる場合が多く 3者を同一 レベルで比較することには若干問題があるが,一応国際比較のための全体的見取図を 得ることは出来るのではなかろうか。すなわち,今後日本の製造企業の原価管理シス テムのトータノレシステム化を考えていくための手掛かりを得ることである。 I 調査対象,方法及び回収状況 ここでは,米国,英国そして日本企業の調査対象,方法及び回収状況の概要を示し ておきたい。 l 米国企業 L1 調査対象 Forfune 0985年版)のu..

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に掲載されてい る製造企業

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社をまず抽出した。つぎにu.

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のある最終版

0981

年版〉により Forfune0985年版)の上位

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社と重複し ない企業(415社〉を選び, 415社を売上高ランキングの順位に従って上位から順に等 間隔抽出で

2/3

の会社(すなわち

2

7

7

社〉を選択した。よって,米国企業からは,総

(3)

403 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト -117ー

777社を調査対象に抽出した。

1 2 調 査 方 法

調査の方法は,郵送調査により 1985年 7月777社 に 第 一 回 目 の 調 査 票 を 発 送 し , 未 回 答 企 業 に 対 し て , そ の 後9月と 11月に督促を二回した。

調査票の宛先は, Moodyのlndustrial Manual 1984あ る い は OTC lndustrial Manual 1984, Moody's Handbook oj Common S削 除 (Winter,1984-85 edition),

Moody's Handbook oj OTC Stocks(Spring, 1985)をもとにして, Controller, Comp. troller宛 に , 担 当 者 が い な い 場 合 に はTreasurer, そ し て 以 上 の い ず れ の 人 も 不 明 の 場合には, President宛に調査票を郵送した。

1

3

回 収 状 況 調 査 票 の 回 収 状 況 は , 表- 1のとおりである。回答企業数は, 181社(うち,有効回 表ー1 米国及び英国の製造会業の回収状況

コ ト ¥

有効回答米回答拒否国該当せず 有効回答英回答拒否国該当せず 10 鉱 業 6

。 。

l 3 2 18 食 料 ロロロ 11 8 2 10 26 6 20 繊 京世 2 l

1 8 3 22・24 木製品・パノレプ 6 5

l

。 。

25 出 版 ・ 印 刷 l l 2 2 2 3 26 化 A十L 16 12

11 12 6 27 石 油 ・ 石 炭 6 7

2 3 30 窯 業 ・ 土 石 4 4

2 7

31 鉄 鋼

。 。 。 。 。 。

32 非 鉄 金 属 3 l

。 。

7

33 金 属 製 品 5 4 1 4 5 34 一 般 機 械 7 7

4 16 3 35 電 気 機 械 7 18

l 12 l 36 輸 送 用 機 械 8 8

1 7 2 37 精 密 機 械 8 2

l 3 3 38 船舶製造・修理

。 。 。 。 。 。

39 そ の 他 5 3

11 15 21 メ口〉、 95 81 5 52 126 52 (注〕 国により業種分類の方法等が若干異なるので,国連のISIC(Intemational Standard Industrial Classification of All Economic Activities), Fortune.P:ηnじがal Inter. national Businesses, Times 1000及び日本標準産業分類等を参考にして一部手直しをし た。

(4)

-118- 第

6

0

巻 第

2

4

0

4

答企業

9

5

社,回答拒否の企業

8

1

社,そして該当せず

5

社〕である。従って,有効回 答率は約

1

23% (

9

5

/772

X

1

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)

と有効回答企業数も少なくかっ回答拒否の企業 も一割あるためアメリカの製造企業全体の実態を充分に反映しているかどうか若干疑 問が残るので,米国の製造企業全体について一般化するには充分注意する必要がある。 ただ,この種の国際比較が少ない現在,部分的ではあれ情報システム,生産システム の革新下にある製造企業の原価管理システムの実態を国際的な視座から比較検討する ことは,充分なものではないとしても,意義深いものであろう。 2叶 英国企業

2

1

調査対象

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社のうち製造企業と思われ る

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社を,調査対象に選択した。

2

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2

調査方法 調査の方法は,郵送調査により

1

9

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5

7

月に調査票

5

1

2

通を発送した。その後,未 回答の企業には9月と

1

1

月に二回督促を行った。

調査票の宛先は,

The Times

1

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0

0

に掲載されている各企業の

Chairman

あるいは

Managing

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,それが不明の場合には,

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1985

Graham

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Trotman

に載ってし、る

Chairman

あるいは

ManagingD

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宛に調査 票を郵送した。

2

3

回収率 調査察の回収状況は,表

-1

のとおりである。回答企業数は

2

3

1

社(うち,有効回 答企業

5

2

社..,回答拒否の企業

1

2

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社,そして該当せず

5

2

社〉と回答拒否と該当せず の企業がかなり多い。有効回答率は約

1

13% (

5

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/459

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)

であるが,米国の 場合と同じく有効回答企業数も充分ではなくかっ回答拒否の企業も2割を超えている ため英国の製造企業全体の実態を充分反映しているかどうかについては若干疑問が残 るため,英国の製造企業全体について一般化するには慎重であるべきであろう。 3.. 日本企業の調査対象,方法及び回収率 日本企業の実態については,いくつかの調査を併用しているので調査対象,方法及 び回収率等は,参考文献にあるごとく調査により若干異なる。基本的には,東京証券

(5)

405 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト 119-取引所に上場されている製造企業を対象にしている。回収率については,特に井上の 調 査 0982,1984Jでは回収率も 65%を超えかなり高率であるので, 日本の製造企業 の実状をほぼ反映していると見なすことが出来る。なお,個々の調査対象,方法及び 回収率等については,個別のデータごとに出所を明記す記; II 回答企業の概要 ここでは,各国の製造企業の概要を知るため,回答企業の規模(資本金,売上高, 従業員数及び工場数),事業部制の採用状況,コントローラ制の有無及び上場証券取引 所について考察する。 1 回答企業の規模 上述のように,もともと米国,英国そして日本の製造企業の産業構造は異なるわけ であるが,各国の回答企業の規模の概要は表一2に示すとおりで、ぁ

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表-2からわかるとおり,まず資本金については, 日本の製造企業を1とすると米 (1) 米国,英国及び日本の製造企業の国際比較をするには,各国の産業構成及び企業規模の逮 い等母集団の差異が反映されているので,その面でも充分注意する必要がある。 産業構造の特徴が良くわかるように業種分類を整理すると,各国の回答企業の産業分類 は以下のとおりである。 業 種 分 類 米 国 英 国 日 本 基 礎 資 材 型 40( 42 1%) 20( 385%) 232( 35 9%) 加 工 組 立 型 30( 316%) 7( 13 5%) 28

1

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435%) 生 活 関 連 型 25( 26.3%) 25( 48 1%) 133( 20 6%) d口h 95000.0%) 52000 0%) 646(100..0%) 上記の表からわかるように,基礎資材型の企業の割合は米国で最も多く,ついで英閤,日 本のIJ院になっている。また,生活関連型の企業のウエイトは英国では50%近く,他の国では 20%十台である。加工組立型の企業は日本では40%台と非常に高く,米国で30%余り,英国 では10%台と非常に少ない。特徴的には,米国は基礎資材型,英国は生活関連型,日本は加 工組立裂中心の産業構造であるといえよう。このような産業構造の相違を反映している生 産システムの国別の多様性,特に生産方式の相違等をも考慮する必要がある。(日本企業の 資料の出所は,井上[1984-b)によっている。〉上記の業種分類は,通産省の分類による。 基磯資材型には,鉱業,化学,石油・石炭,窯業・土石,鉄鋼,非鉄金属,金属製品の産業, 加工組立型には,一般機械,電気機械,輸送用機械,精密機械,船舶製造の産業が,そして 生活関連型には,食料品,繊維,木材・木製品,パノレプ,紙,出版・印刷及びその他の産業 が含まれている。(詳しくは, 'IV生産システムの弾力化, トータノレ化」でも検討する。〉

(6)

120- 第60巻 第2号 406 表-2 製造企業の規模

7

「 ¥ ¥

米 国 英 国 平 均 標準偏差 平 均 標準偏差 資 本 金 1,421,202 2,828,450 127.188 355.814 0,000ドノレ〉 古 7G 3073468 5375027 423452 922019 0,000ドノレ) 従 業 員 (人数) 20,456 24,937 6,435 12,145 工 場 数 36 3 501 117 19 7 国44 7,英国40と,米国の回答企業の資本金規模が圧倒的に大きくなっていること がわかる。また,英国の資本金規模も日本の約4倍となっている。これは, 日本の調 査対象企業が東京証券取引所の一部上場企業だけでなく,比較的規模の小さい二部上 場企業をも対象にしていることも反映しているのであろう。 次に,売上高については資本金ほどの差異はなく,日本企業と比べて米国企業は5 5倍,英国企業の場合は

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76倍と,逆に日本企業の平均より低くなっている。これは, 日本企業の自己資本比率が米国,英国の企業に比べて低いことと共に, 日本企業の資 本回転率が,米国,英国企業に比べて高いためであろう。 従業員数については,米国企業は日本企業の

6

倍,英国企業は

19

倍である。また, 工場数については米国企業は10.1倍,英国企業は33倍になっている。回答企業の規 模についての米国,英国そして日本の聞には,以上のような特徴がみられる。 2 組 織 形 態 企業組織としてどのような組織形態をとっているか,すなわち事業部制組織かある いは職能別組織を採用しているかも企業の原価管理システムに重大な影響を与える。 各国の組織形態の実態は,表

-3

のとおりである。 (2) 日本の回答製造企業の規模は,調査により若干異なるが,大部分の調査は東京証券取引所 上場の製造企業を対象にしている。井上Cl984年〕の調査(東京証券取引所上場の全製造企 業)によると,回答企業の規模等は次のとおりである。資本金平均$31,8240,000ドノレ):t 標準偏差$83,484 (1,000ドノレ),売上高平均$555,068 0,000ドル):t標準偏差$1,254, 1000,000ドノレ),従業員数平均3,417(人):t標準偏差7,348(人〉そして工場数は約358(工 場):t標準偏差L76(工場〕である。(為替レートは, 1985年6月の時点のレートで;f:LOO= 335円, $100=250円にて換算した。)

(7)

407 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパタト -121ー 表-3 製造企業の組織形態 米 国 英 国 日 本 事 業 部 制 組 織 58( 61 1%) 40( 76 9%) 203( 31 4%) うち 職 能 別 事 業 部 43( 81 1%) 16( 55 2%) N A 連邦制Ij:事業部 10C 18 9%) 13( 448%) N.A 職 能 別 組 織 11( 11 6%) 8( 154%) 443( 68 6%) 無

E

己 入 26( 27 4%) 4( 7 7%) メ口込 95(100 0%) 52(100 0%) 646000 0%) (注〕 回答企業のうち,事業部制組織採用の有無については記入してレるが,詳細については 無記入である企業が 部あるため,内訳の数字が事業部制組織の数字とあわない。N.Aは 調査項目がないため不明である。日本企業の数値は,井上[1984)による。 表からわかるとおり,英国での事業部制の採用が約77%と最も多く,ついで米国が 約61%と 6割を超えている。日本企業では,事業部制を採用している企業は 314%と 英国,米国の約半分以下であり,製造企業全体の 1/3弱に過ぎない。これは,これま でもよく指摘されてきた事柄であるが,欧米企業で事業部制組織を採用している割合 が非常に高く,逆に日本の企業では職能別組織が多くなっていることを裏付けている。 ただ,採用している事業部制組織の内訳としては,米国では職能別事業部を採用して いる企業が約81%,英国では 55%と,何れの場合も過半数を優に超えているのは注目 すべきことである。

3

コントローラ制 生産システム及び原価管理システムを考える場合,組織形態としてコントローラ制 を採用しているかどうかも,組織面からみて重要な点である。特に,企業の内部統制 のための経理関係業務がコントローラを中心に組織化されている米国においては, コ ントローラ部門は内部統制のための重要な経営管理部門である。米国におけるコント ローラ制の現状は,表

-4

のとおりである。 表-4 コントローラ制(米国のみ) 採 用 43( 45 3%) 採 用 せ ず 4( 42%) 無 記 入 48( 50 5%) i口'- ~t 95(1000%)

(8)

-122ー 第60巻 第2号 408 上記の表からわかるとおり,無記入の企業を除くと 90%以上の企業がコントローラ 制を採用しており,如何にコントローラが米国企業の財務管理組織のなかで重要な役 割を果たしているかが窺える。 4 上場証券取引所 米国の回答企業の証券取引所への上場の実状は,表

-5

のとおりである。表からわ 表-5 上場証券取引所(米国のみ) ニ ュ ー ヨ ー ク 証 券 取 引 所 ア メ リ カ 証 券 取 引 所 そ の 他 の 証 券 取 引 所 非 上 場 無 記 入 A Eコ 計

5

3

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48 2%) 7C 6 4%) 27( 24.6%) 11( 10 0%) 12( 10 9%) 110(100 0%) (注) 複数の証券取引所に上場Lている企業があるため,合計は聞 答企業数を上回っている。 かるとおり,ニューヨーク証券取引所へ上場している企業が回答企業の過半数を越え ている。また,非上場の企業は11社にすぎなし、。 III 情報システムのネットワーク化, トータル化 最近の企業は,情報諸技術

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の急激な発展に対応して,情 報の価値を適切かつ高度に利用するため企業システムのネットワーク化,データベー ス化を基礎に,急速にトータルシステム化を進めている。その中心的な役割を果して いるのは,コンピュータシステム,ネグトワークシステム及びデータベースシステム である。そこで,この節ではコンピュータシステム,オンライン・リアルタイムシス テム及びデータベースシステムの利用状況につきそのアウトラインを見てみよう。 1 コンピュータシステム 1 1 コンビュータシステムの利用状況 各国の汎用コンピュータ

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の利用状況は,表

-6

のとおりで ある。表の結果からわかるように,いずれの国でもほとんどの製造企業はコンピュー タを導入しており,いまだ導入していないのはごく一部の企業にすぎない。

(9)

409 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト 表- 6 コンビュータシステムの利用状況 -123-米 国 英 国 日 本 導 入 済 93( 97 9%) 50( 96 2%) 624( 96 6%) 未 導 2( 2 1%)* 2( 3 9%ゾ 22( 3 4%) 無 記 メロ斗 gt 95000 0%) 52000 0%) 646000.0%) (注) *印は未準入と無記入を合わせた数字である。日本の資料の出所は,井上 0984)に主 る。 1 2 コ ン ビ ュ ー タ シ ス テ ム の サ イ ズ 各 国 の 製 造 企 業 で 使 用 さ れ て い る 汎 用 コ ン ビ ュ ー タ の サ イ ズ は , 表-7の と お り で 表- 7 凡周コンビュータのサイズ 米 国 英 国 日 本 大 芥Z包U 105( 31 1%) 26( 16 9%) 312( 32 0%) 中 型 102( 30 2%) 25( 16 2%) 427( 43 8%) 型 119( 35 2%) 81( 52 6%) 189( 194%) 超 型 ll( 32%) 17( 11 0%) 38( 3 9%) そ の 他

1

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0 3%) 5( 3 3%) 10( 1 0%) メ仁込1 338(100 0%) 154(100 0%) 976000 0%) (注〉 日本の資料の出所は,井上 (984)による。なお,無記入は,米国2社,英国2社であ る。

2

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米 国 で は , 若 干 小 型 の 割 合 が 多 く な っ て い る が , 大 型 , 中 型 , 小 型 の 使 用 割 合 は そ れ ぞ れ ほ ぼ30%強 で あ り , 超 小 型 は 約3 %とごく一部に過ぎなし、。英国では,小 型 の 割 合 が50%を 超 え て お り , 大 型 , 中 型 が 約16%で , 超 小 型 も 11%と , 比 較 的 小 型 (3) 型区分の基準は,次のとおりである。日本の通産省の『コンビュータ白書~ 0983年〉の 基準に従い,以下のとおり分類した。そして,米国,英国については,調査時点の為替レー ト(;f100

=

335円, $1 00

=

250円〉により換算した。 買 取 り 価 格

月 額 レ ン タ ル 料 型 裂 型 型 大 中 小 超 2億5千万円以上 4千万円以上2億5千万円未満 l千万円以上4千万円未満 1千万円未満 555万5千円以上 88万9千円以上555万6千円未満 22万3千円以上88万9千円未満 22万3千円未満 ただ, 日本の通産省のコンピュータの型区分が上述の方法によっているので一応それ に従ったが,国際比較のためにはコンピュータの主記憶容量等計算機のハードウェア, ソフトウェア等の特徴から分類するのが適切かもしれなし、。

(10)

-124ー 第60巻 第2号 410 の コ ン ビ ュ ー タ の 使 用 割 合 が 多 く な っ て い る 。 日 本 で は , 大 型 , 中 型 の コ ン ピ ュ ー タ の 利 用 が 中 心 で あ り , 特 に 中 型 の 割 合 が4割 を 超 え て い る の が 目 立 っ た 特 徴 で あ る 。 また 1社 あ た り の コ ン ピ ュ ー タ シ ス テ ム の 導 入 台 数 は , 米 国 ( 約363台),英関 (約308台 〉 そ し て 日 本 〔 約156台 ) と , 米 国 , 英 国 で の 1社 あ た り 導 入 台 数 が 日 本 の2倍以上になっている。 2 オンライン・リアノレタイムシステム 2 1 オンライン・リアルタイムシステムの矛日用状況 企 業 の 情 報 化 , キ ッ ト ワ ー グ 化 を 支 え て い る オ ン ラ イ ン ・ り ア ル タ イ ム シ ス テ ム

(

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-line real time system)の 米 国 , 英 国 で の 利 用 状 況 は , 表-8の と お り で あ る 。 オ ン 表-8 オンライン・リアルタイムシステムの利用状況 米 国 英 国 導 入 済 85(89 5%) 45(86 5%) 未 導 入 8( 8 4%) 6(116%) 無 記 入 2( 21%) 1( 1 9%) ぷE斗コ 95(100 0%) 52(100 0%) (注) 日本企業については,調査がないので不明である。 ラ イ ン ・ リ ア ル タ イ ム シ ス テ ム は , 米 国 , 英 国 と も 85%以上の企業が採用しており, ネットワーク化が高度に進展していることを示している。

2

2

オ ン ラ イ ン ・ リ ア ル タ イ ム シ ス テ ム の 利 用 分 野 オ ン ラ イ ン ・ リ ア ル タ イ ム シ ス テ ム の 利 用 分 野 は , 表

-9

の と お り で あ る 。 米 国 で 表-9 オンライン・リアルタイムシステムの適用分野 分 野 米 国 英 国 本 社 内 9(10 6%) 4( 89%) 本 社 支 庖 間 33(38 8%) 11(24 4%) 本 社 工 場 間 42(49 4%) 14(31 1%) 会 社 全 事 業 所 53(624%) 26(578%) 子 ぷZミ〉、 社 と の 間 34(40 0%) 15(33 3%) 得 意 先 と の 間 21(247%) 2( 4 4%) { 士 入 先 と の 間 8( 9 4%)

1

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22%) そ の 他 6( 7 1%) 2( 4 4%) 回 生]立

:

i

:

業 数 85 45 (注〕 複数問答可。日本企業については,調査がないので不明である。

(11)

411 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト -125ー は,企業内ネットワークが全社会事業所にわたってオンライン・リアルタイムシステ ム化がなされている企業は624%と過半数を超えており,本社一工場聞のみリアルタ イムシステム化されているのが494%,本社一支庖聞が388%である。企業の情報シ ステムはトータルシステムとして全社的にネットワーク化されるのが理想であり,す でに6割以上の企業がそのようになっている。また,調査対象が製造企業なので,本 社一工場聞のシステム化が次に重視されているのも当然であろう。ついで,本社一支 庖聞とし、う販売面でのリアルタイム化も同様に重視されている。 企業間ネグトワークについては,子会社との間でのネットワーク化が最も進んでお り,得意先との聞のネットワーク化もかなり進行しているのは,販売業務の重要性か らして自然な成り行きであろう。また,仕入先とのネットワーク化はし、まだ充分には 進んでいなく,今後に残された課題のようである。 英国でも基本的には米国と同様の傾向を示しており,企業内ネグトワークでは,全 事業所にわたってネットワーク化されている企業の割合が578%ととび抜けて高く, ついで本社一工場聞が311%,本社一支庖聞が244%と多くなっている。 企業開ネットワークについては,子会社との聞のネットワーク化が33..3%,と高く なっているが,得意先,仕入先等とのネットワーグ化については今後の課題のようで ある。 ネットワーク化の方向は,企業全体,あるいは企業聞を含めたトータルシステム化 を目差しているのは米国,英国とも同様で、あり,傾向的には良く似ているがネットワー ク化の現状には幾分差異がみられ,米国企業のネットワーク化が英国の場合より全体 的に進んでいるようである。 ( 4 ) 3 データベースシステム 企業のトータルシステム化のために,ネットワーク化と共に重要な役割を果たす データベースシステム (databasesystem; DBS)の利用状況,利用分野及び利用して いるデータベース制御システム(databasemanagement system; DBMS)の構造につ いて,その現状を検討してみたい。 (4) データベースの定義は,G

J

Date(1977J, p..4に従った。すなわち rデータベースとは, ある特定組織(enterprise)の応用システムによって使用される記憶された運用データ (operational data)の集まりである。」

(12)

-126- 60巻 第2号 412 3υl データベースシステムの利用状況 各国のDBSの利用状況は,表-10のとおりである。それによると, DBSの利用は, 表-10 データベースシステムの利用 米 国 英 国 日 本 導 入 済 82( 86 3%) 38( 73 0%) 418( 64 7%) 未 導 入 2( 2 1%) 5( 9 6%) 228( 35 3%ゾ 無 記 入 l1( 11 6%) 9( 17 3%) 。( 0%) ぷ口込 95(100 0%) 52000 0%) 646(100 0%) (注) 日本企業の資料の出所は,井上[1984Jによる。なお, 日本企業の未導入のr*Jには, 計画中の12社が含まれている。 米国863%とほとんどの企業が導入しており,英国企業での導入比率は 73.0%となっ ており,日本は64..7%である。 DBSの利用については,国によりかなりの差異がみら れ,特に日本企業でのDBSの利用が遅れていることが目立っている。 3.2 データベースシステムの導入状況 各国における DBSの導入数は,表-11のとおりである。米国の企業で利用している 表-11 データベースシステムの導入状況 米 国 英 国 日 本 1 7( 15 9%) 3( 13 0%) 64( 15 3%) 2 11( 25 0%) 3( 13 0%) 74( 17 7%) 3 5( 11 4%) 4( 17 4%) 99( 237%) 4 2( 4 5%) 2( 8.7%) 60( 144%) 5以上 19( 43 2%) 11( 478%) 121( 28 9%) ぷ口込 44(100 0%) 23000 0%) 418(100 0%) (注) 調査票にデータベース数を記入している企業は,米国44社,英国23社そして日本は418 社である。日本企業の資料の出所は,井上[1984Jによる。一部,集計の関係で構成比が 100%になっていないところがある。 DBS数は 5以上が 432%と圧倒的に多く 2が 25%, 1が約 16%, 3が約 10%と なっている。英国でも,利用しているDBSが5以上という企業の比率が 478%と,多 数のDBSを導入している企業の割合が圧倒的に多く, 3が 174%, 1と2が 130% そして4が 8.7%という割合になっている。日本でも 5以上が 289%と他の国と同 様に最も多くなっているがその比率はかなり少なく, 3が 23..7%,2が 177%そして

(13)

413 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト -127-1と4が 15%前後という数字になっている。 以上,導入比率では,日本が米国,英国に比べて20%位高くなっているが,すでに 導入している企業のDBbの総数は,日本と比べて米国,英国では5以上と多数のDBS を導入している企業が多くなっている。

3

3

データベースシステムの利用分野 次に, DBSを利用している場合,経営,会計の領域でDBSを利用している分野を 検討した。その結果は,表

-14

のとおりである。 表-12 データベースシステムの利用分野 米 国 英 国 日 本 購 買 管 理 67(70.5%) 27(51 9%) 105(16 3%) 生 産 管 理 {)9(726%) 30(57 7%) 169(262%) 販 士% 管 理 73(76..8%) 36(692%) 275(42 6%) 在 庫 管 理 82(863%) 35(67 3%) 257(398%) 人 事 管 理 67(70 5%) 22(42 3%) 207(324%) 財 務 ぷ2午2言 ~t 72(758%) 38(73 1%) 90(139%) 管 理 メ3与2丈 計 62(65 3%) 31(596%) 101(156%) 固 定 資 産 会 計 52(54 7%) 25(48 1%) 27( 4 2%) 資 金 ぷ~ 計 33(34 7%) 10(19 2%) 198(30 7%) そ の 他 5( 5 3%) 7(135%) 48( 74%) 回 答 企 業 数 95 52 646 (注) 複数回答可。日本企業の資料の出所は,井上(1984Jによる。 DBSを利用している分野は,全般的には,米国の方が英国よりも導入比率が高く なっているが,導入分野は米国と英国で、ほぼ似た傾向がみられ,ほとんどの分野で高 い導入割合を示している。具体的な導入分野は,特に,販売管理,在庫管理という消 費者とのインターフェイスの高い分野を中心に購買管理,生産管理,人事管理という 経営管理の分野での利用が多くなっている。それと共に,会計の分野では財務会計, 管理会計および固定資産会計という分野でも同じように広く利用されているのは,注 目しておく必要がある。それに対して, 日本の企業でも利用分野は,米国,英国と良 く似ているが,導入比率はかなり低くなっている。すなわち,販売管理と在庫管理と いう消費者とのインターフェイスの高い分野での利用が多く,続いて人事管理,生産 管理とし、う経営管理の領域で利用されている。また,会計の分野では,資金会計の領

(14)

-128- 第60巻 第2号 414 域での利用が多く,財務会計,管理会計および固定資産会計での利用が少ないのが特 徴的である。

3

4 DBMS

のデータ構造 ここでは,データベースシステムを管理するデータベース制御システム

(

d

a

t

a

b

a

s

e

management s

y

s

t

e

m

;

DBMS)

の利用状況をデータ構造の側面から検討してみよう。

DBMS

は,データモデルの遠いにより1)関係型,

2)

ネグトワーク型,

3)

階層 型に区分される。調査の結果は,表-13のとおりである。米国,英国とも階層型のモ 表-,-13 DBMSのデータ構造 デ ー タ 構 造 米 国 英 国 関 係 型 51( 35.2%) 12( 25 0%) ネ ツ ワ ク 型 2

1

C

14 5%) 8( 16 7%) 階 層 型 72( 49 6%) 21(43 7%) そ の 他 1( 0 7%) 7( 14 6%) i口'- 計 145000 0%) 48(100 0%) (注〕 複数回答可。なお,調査時点が若干古くなるが,日本の企業の商用DBMSの利用状況に 関する調査(山田他[l980})によると,その時点では,関係型16% (3 社),ヰットワ-F型568% (109社),階層型323% (62社〉そしてその他42% (8社〉となっていた。山 田他(1980),20ベージを参!照。しかし,最近急速に関係製作レーショナノレデータベース) の利用がパソコンを中心に増加の傾向にあることは注目に値する。 デルの利用が現在最も多くなっており,ついで関係型モデルの利用が多し、。ネット ワーク型の利用は,いずれの国でも 15%前後である。ただ,米国では関係型モデ、ルの 利 用 が10%位多く,現状では階層型モデルを中心に利用されているが,今後パーソナ ルコンピュータ等の普及により関係型

DBMS

の利用が増加するであろう。

I

V

生産システムの弾力化, トータノレ化 ここで は,企業を取りまく最近の変化(例えば,市場の多様化,消費者ニーズの高 品質化〉等の製造企業への影響を受けて,企業自体が市場の変化等に敏感・迅速に対 応するため採っている生産システムの弾力化, トータル化の実態を考察してみたい。 具体的には,企業の採用している生産管理システム,生産方式,生産システムのFA化 を考察する。 1 生産管理システム

(15)

-129-生産管理の方式は,大きくわけると1)製番方式2)MRP方式(materialrequire -ments planning; MRP), 3)かんばん方式の3つにわけられる;各国の製造企業で 情報シヌテム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト 415 使用されている方式は,表-14のとおりである。 生 産 管 理 の 方 式 米 国 英 国 日 本 製 番 方 式 19( 19 8%) 19( 388%) 232( 47 7%) M R P 58( 60 4%) 24( 49 0%) 174( 35 8%) カ ン パ ン 方 式 9( 9 4%) 2( 4 1%) 54( 11 1%) そ の 他 10( 104%) 4( 8 2%) 26( 5 4%) ぷ口込 計 96000 0%) 49(100 0%) 486(100 0%) 表-14 (注〉 日本企業の数値は,三浦他[19871による。無記入は 27社である。なお,過去の結果と の時系列的な一貫性を保つため,ここでの集計対象は東京証券取引所一部及び二部上場の 製造企業に限った。従って,調査対象企業(926社),回収企業 533社 (うち回答拒否20 社),該当せずcl7社)であり,回収率は586% (533/(926-17))である。(以下,三浦 他[1987Jからの引用は同様である。) 米国では, MRPの利用が最も多く 60%を超えており,ついで製番方式が 20%,そ してかんばん方式は94%である。英国でも, MRPが49%と多く,製番方式は 39%, そしてかんばん方式はごく僅かである。また,日本では製番方式が最も多く利用され, そしてかんばん方式は自動車工業を中心に10%余の企業で利用されて

P

R

M

で)。 い 作 る つ い 以上のことから,米国では生産管理の方式はMRPを中心に利用されており,英国で もMRPが中心であるが,製番方式もかなり利用されていることがわかる。日本では, 英国の場合とは逆に,製番方式を中心にMRPもかなり利用されている。また,かんば ん方式は,輸送用機械器具製造業を中心に組立型の企業で広く利用されている。 生産方式 2 ここでは以下のような基準で各 生産方式は,その分類基準により多様性があるが, 国の生産方式の特徴を考えてみる。生産活動に直接関わる技術的特性からの分類がま ず考えられる。これは,製造企業の基本的特性からする分類で安定的・長期的観点か (5) 詳しくは,門田 0985J を参照のこと。 (6) 日本の輸送用機械器具製造業での生産管理の方式は,かんばん方式 (26社, 51 0%),製 番方式(10社, 19 6%), MRP 02社, 23 5%)と,かんはん方式の利用が特に多くなって いる。(三浦他 0987Jによる。〉 l i -i w

(16)

-130- 60巻 第2 416 らするものである。これに対して,工程管理上の特性からする分類は生産技術に関係 する分類ではあるが,技術革新により生産システムの革新とともに変化する相対的に より流動的・短期的な観点からする分類である。そして製品の種類と生産量よりする 分類は,生産工程と市場の接点からする分類であり,製品の市場的特性からする分類 は消費者のニーズからするものである。 従って,ここでは製造企業の立場から,生産方式の技術的特性による分類から消費 者との接点である市場的特性による分類へと,結果を順次検討していきたい。 21 生産方式(技術的特性) まず,ここでは企業の生産方式の最も基本的な特性である技術的観点から検討して みよう。技術的観点からは,1)電気機械,輸送用機械のような組立生産方式,

2

)

金 属製品のような機械的進行生産方式そして 3) 石油・石炭製品のような化学的進行生 産方式に分類される。 具体的な各国の結果は,表-15のとおりである。米国では,組立生産と化学的進行 表-15 生 産 方 式 ( 技 術 的 特 性 ) 米 国 英 国 日 本 組 立 主主 産 39( 36 1%) 17( 29 3%) 226( 44 1%) 機 械 的 進 行 生 産 15( 13 9%) 11( 19 0%) 136( 26 4%) 化 学 的 進 行 生 産 35( 32 4%) 17( 293%) 105( 20 5%) そ の 他 19( 176%) 13( 224%) 46( 9 0%) i口'- 108(100..0%) 58(100 0%) 513000..0%) (注〉 米国,英国企業では,複数項目にOをしている企業があるため,回答企業数とあわない。 日本企業の資料の出所は,三浦他(1987)による。 生産の企業が多く,機械的進行生産の企業が少なし、。英国でも,傾向的には同様であ るが,比較的機械的進行生産の割合が高くなっており,それだけ組立生産と化学的進 行生産の割合が低くなっている。日本の企業では,組立生産の割合が40%を超えてお り,化学的進行生産,機械的進行生産の11債にその構成比が小さくなっている。 技術的特性による特徴は,米国は組立生産と化学的進行生産中心,英国も同様では あるが機械的進行生産の比率が若干高く, 日本は組立生産中心の産業構造になってい るといえよう。

(17)

417 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト -131 2引2 生産方式(工程管理上の特性〕 工程管理上の特性を基準に生産方式を分類すると,ログト(あるいはパグチ)サイ ズの大きさにより,1)個別生産, 2) 小ロット生産, 3) 大ロット生産,および4) 単種大量生産に分けられる。結果は,表-16のとおりである。 表-16 生 産 方 式 ( 工 程 管 理 上 の 特 性 ) 米 国 英 国 日 本 個 別 生 産 15( 12 6%) 9( 15 2%) 101( 16 8%) 小 ロ ッ ト 生 産 33( 27 7%) 20( 33 9%) 314( 52 3%) 大 ロ ッ ト 生 産 41( 34 5%) 16( 27 1%) 58( 9 7%) 単 種 大 量 生 産 24( 20 2%) 9( 15 3%) 83( 13 8%) そ の 他 6( 5 0%) 5( 8 6%) 44( 7 4%) メE斗3 計 119(100 0%) 59(1000%) 600(100 0%) (注) 複数項目にOをしている企業があるため,回答企業数とあわない。日本企業の数値は, 井上[1982Jによる。 米国では,大ロット生産を中心に小ロット生産,単種大量生産の企業が多く,小ログ ト化の傾向も幾分見られるが,基本的にはいまだ大量生産的傾向が強L、ょうである。 英国では,個別生産と小ロット生産を合わせると約半分の企業がロットサイズを小 さくして生産しており,米国に比べるとより小ログト化の傾向にあることが窺える。 それに対して,日本め企業では,個別生産と小ロット生産を合わせると約80%の企業 が含まれ,小ロット化の傾向が非常に顕著で あり,大ロットあるいは単種大量生産の 企 業 は24%弱に過ぎない。日本の企業は,市場のニーズにより適切かつタイムリーに 対応するため,全体的には,生産は今なお小ロット化の傾向にある。 (7) (l)の産業分類等をも参考のこと。なお, 日本企業の結果を井上 (1982J と比べると,最 近5年間に組立生産は (4L8%(1980)→ 44.1% (1985))に増加している。また,機械的 進行生産も (184% (1980)→ 264% (1985))に急激に増加しており,逆に,化学的進行 生産は (271% (980)→ 20 5% (985)) と減少している。これは,最近の日本経済の産 業構造が r重厚長大」から「軽薄短小」化していることをかなり良く示している。 0980年 の数字は,井上(1982)による。〉 (8) なお,三浦他(1987)では集計項目が一部異なるが, 日本企業の結果は次のとおりである。 個別生産000社, 19 7%),小ロット生産 (243社, 479%),中ロット生産 (90社, 17 8%), 大ロット生産(44社, 8 7%),単種大量生産 (22社, 43%),その他 (8社, 1 6%)となっ てし、る。(無記入6社。〕産業構造が組立生産,機械的進行生産にシフトし,化学的進行生産 が減少している分だけは,少なくとも,小ログト化の傾向が今なお進行している様子であ る。

(18)

132- 第60巻 第2号 418 2 3 生産方式(製品の種類と生産量〉 生産方式を製品の種類と生産量を基準に分類すると,大きくは1)多品種少量生産, 2 )多品種中量生産, 3)少品種大量生産に分けられる。具体的な結果は,表-17の 表-17 生 産 方 式 ( 製 品 の 種 類 と 生 産 量 ) 米 国 英 国 日 本 多 品 種 少 量 生 産 19( 17 9%) 14( 26 4%) 234C39 5%) 多 品 種 中 量 生 産 39( 36 8%) 20( 37 7%) 205( 34 5%) 少 品 種 多 量 生 産 38( 35 9%) 16C 30 2%) 134( 22 6%) そ の 他 10( 9 4%) 3( 5 7%) 20( 3 4%) メ口'- 計 106(100 0%) 53

C

1

00 0%) 593000 0%) (注) 複数項目にOをしている企業があるため,回答企業数とあわなし、。日本企業の資料の出 所は,井上Cl982Jによる。 とおりである。 国別の特徴は,次のとおりである。米国では,多品種中量生産と少品種大量生産の 比率が高くなっているが, これは組立生産と化学的進行生産の比率の大きさと関連し ているようである。また,英国では,多品種中量生産が最も多く,少品種大量生産, 多品種少量生産という順になっている。これも,英国の生産方式の技術的特性をある 程度反映したものであろう。また,日本では,多品種少量生産が約40%と他の国に比 べてとび抜けて高く,多品穏中量生産がついで高くなっている。少品種大量生産は 20%余と他の国に比べて少ない。すなわち, 日本の製造企業は多品種少量生産化が最 も顕箸であり,英国の製造企業では少品種多量生産から多品種少量生産の過程にある ようで,米国では多品種少量生産化は今後の課題のようである; 2 4 生産方式(製品の市場的特性〉 製品の市場的特性を基準にした生産方式の分類によると, 1)注文生産と 2)見込 (9) ここでも若干調査内容が異なるので同一レベルでは比較できないが,参考までに三浦他 0987Jの日本企業の結果を示しておく。製品の種類を基準にすると,多品種生産 (380社, 744%),中品種生産 (61社, 119%),少品種生産(65社, 12 7%),その他(5社, 10%) である。また,生産量を基準にすると,少量生産(232社, 45 7%),中量生産 (118社, 23 2%),大量生産 (144社, 28 4%),その他 (14社, 2 8%)となっている。表-17と対比さ せてみると,製品種類の多様化,製品生産量の少量化とも日本の企業では現在もなお進行中 の様子である。すなわち,日本の製造企業では現在も多品種少量生産化を進めていることが 理解出来る。

(19)

419 情報システ人生産システムの革新と原価管理へのインパクト -133-生産に分けられる。結果は,表 18のとおりである。この基準では,いずれの国でも, 表-18生 産 方 式 ( 製 品 の 市 場 的 特 性 ) 米 国 英 国 日 本 注 文 生 産 47( 45 6%) 24( 42 9%) 239( 46 8%) 市 場 生 産 52( 50 5%) 29( 51 8%) 260( 50 9%) そ の 他 4C 3 9%) 3( 5 3%) 12( 24%) メEh3h 103000 0%) 56000 0%) 511(100 0%) (注) 複数項目にOをしている企業があるため,回答企業数とあわなし、。日本企業の資料の出 所は,三浦他 0987lによる。 (10) 市場生産方式の企業が50%強で,注文生産は43%から45%と余り差異がみられない。 3 生産システムのオートメーション化 こ こ で は , 上 述 の 生 産 方 式 の 変 化 を 技 術 的 に 支 え て い る フ ァ ク ト リ ー オ ー ト メ ー ション(factoryautomation; F A)の側面を検討してみる。具体的には,フレキシブル 生 産 シ ス テ ム(flexible manufacturing systems; FMS)あるいは産業用ロボット (industrial robots)の導入状況および導入生産工程を考察してみたい。 3.1 FMS, ロボットの利用状況 まず, FMSあるいはロボットの導入状況を,表 19によって検討してみよう。 FMSあるいはロボット(あるいは両者〉を導入している企業は,米国で約30%であ る。導入の内訳は, FMSが7社,ロボグトが

5

t

士そして両方導入している企業が2社 となっている。また,英国ではFMS, ロボットを約23%の企業が導入しているが, FMS,ロボットとも各々 3社,両方導入2社と絶対数ではまだ少ない。米国企業での 導入割合が,英国に比べると比較的多くなっている。いずれにしても,導入企業比率 はまだ低く,今後に導入が期待されている。 帥 井 上(1982)の結果によると,日本の製造企業では注文生産(429%),見込生産(522%), その他(両者の併用等)(4 9%)と, 1980年から1985年の5年間に注文生産方式を採用す る企業の比率が若干増加している。業種別に注文生産化の傾向が大きいのは,金属製品(70 6% (1980)→795% (1985)),電気機械 (534% (1980)→61 9% (1985)),輸送用機械 (63 5% (1980)→700% (1985))および繊維 (364% (980)→51 9% (1985))など であり,それらの産業を中心に注文生産方式を採用している企業が増加傾向にあるようで ある。 。1) FMSの定義は,次のとおりである。 FMSとは i工作機械(NC工作機),自動搬送装置 (コンベアベノレト, ロボット,その他),コンビュータを組み合わせたシステムであり,機 械自体,機械問のフレキシビリティ (flexibility)を目差すもので,同一生産ラインでもって 多品種の製品(あるいは部品〕を作ることのできるシステム」をいう。

(20)

134 第60巻 第2号 420 表-19 FMS,産業用ロボッ卜の利用状況 米 国 英 国 日 本 導 入 済 28C 29 5%) 12C 231%) 166C 25 7%) うち F M S 7( 7 4%) 3C 5 8%) 166( 25 7%) ロ ボ y 十 5C 5 3%) 3C 58%) 両 方 導 入 2( 2 1%) 2( 39%) 不 明 14( 14 7%) 4( 77%) 未 導 入 62( 65 3%) 36( 69 2%) 480( 74 3%) 無 se 入 5( 5 2%) 4C 7 7%) iにh3‘

5

十 95000 0%) 52(1000%) 646000 0%) (注〕 日本の製造企業については,井上[1986)によっている。なお,米国,英国の数値のう ちr- Jは,利用しているが具体的な内容 (FMSかあるいはロボットか)を記入してい ない企業数である。また,日本の数値は, FMSの導入状況についてのみ調査したもので ある。 日本の企業については,

FMS

についての調査しかないので単純には比較出来ない が,

FMS

の導入に限ってみていくと,次のようになる。日本の製造企業の

FMS

の導 入割合は約26%となっており,業種的には組立生産,特に輸送用機械と電気機械器具 製造業で広く導入されているようである。そして,

FMS

の導入比率は米国,英国に比 べて遁かに高いことがわかる。なお,産業用ロボット工業会の調査(1986)によると, 日本企業での産業用ロボットの導入は,組立用ロボットを中心に広く利用されている ことがわかる。 32.

FMS

,産業用ロボットの導入工程

FMS

,産業用ロボットの導入工程は,表-20のとおりである。まず,

FMS

の導入 工程は,米国では組立加工工程が最も多く,機械加工,板金・溶接や検査・包装等の 工程が多くなっている。英国でも,組立加工の分野での導入が半分以上を占めている。 日本では,検査・包装と機械加工での導入が中心であるが,組立加工でもかなり導入 されており,板金・溶接および塗装でも一割近くの企業で利用されている。米国と英 ( 12) 詳しくは,井上 0986-b J, 81-82ベージ,および(13)を参照のこと。なお, 日本の 産業用ロボットの製造企業での利用は世界ーといわれ,最も広く利用されている。例えば, 産業用ロボットの出荷額は, 1980年 19,409台(うち圏内 18,239台〉から 1985年 47,820台 (うち国内39,292台〉と飛躍的に導入が進んで、いる。特に,電気,自動車,合成樹脂産業 での利用がとび抜けて多L、。(日本産業用ロボット工業会 0986Jによる。〉

(21)

421 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト -135-表-20 FMS,産業用ロボットの導入工程 米 国 英 国 日 本 主 程 名 F M S & F M S ロボヅト ロボ y F M S ロポ y ト F M S 鋳造・成形工程 1( 3 1) 2(15 3) l(5 6) 15( 2 9) 板金・溶接工程 5(15 6) l(77) 1(12 5) 49( 9 3) 機 械 加 工 工 程 608 8) 3(231) 2(28 6) 2(111) 122(23 2) 塗 装 工 程 3( 9 4) 104 3) 2(11 1) 2(25 0) 43( 8 2) 組 立 加 工 工 程 12(37 5) 4(308) 3(42 8) 10(55 5) 4(50 0) 10409 8) 検査・包装工程 5(15.6) 205 4) lC14 3) 1 (12 5) 44(28 2) そ の 他 l(7 7) 306 7) 148(28 2) メ口h 32 13 7 18 8 525 (注〕 日本の製造企業につレては,井上(1986Jによってレる。なお, 日本の数値は.FMSの導入状況 についてのみ調査したものである。また,英国の企業では.FMSとロボyトの両方を導入している のは2社であるが,具体的な工程は無記入のため不明である。 国のロボット導入工程は,傾向的には良く似ている。それに対して,日本産業用ロボッ ト工業会 [1986Jによると, 日本企業では組立用ロボットを中心に導入されている様 (13) 子である。 V 原価管理システム ここでは,情報化,ネグトワーク化,データベース化及び生産システムの弾力化, オートメーション化が進展している製造企業の原価管理システムの実態を把握した い。具体的には,原価計算システム,原価管理!システムおよび意志決定支援システム の問題を検討する。 l 原価計算システム 1 1 原価計算の方式 原価計算の方式は,1)時間的観点, 2) 製品原価の観点,および 3) 生産形態の 観点より区分できる。 L1 1 原価計算の方式(時間的観点〉 原価計算の方式を時間的観点から分類すると, 1)実際原価計算と 2)標準原価計 (13) 日本産業用ロボグト工業会(1986Jによると,産業用ロボットの用途(利用分野〉は,鋳 造用(2%),ダイカスト用(3%),樹脂加工用(6%),熱処理用(2%),鍛造用(2%), プレス用(6%),溶接用(5%),塗装用(2%),メッキ用(1%),切削研削加工用(11%), 組立用 (40%),入出荷用 00%),検査測定用 (8%),その他 (2%)となっている。

(22)

-136ー 第60巻 第2号 422 算 に 区 分 さ れ る 。 結 果 は , 表-21の と お り で あ る 。 各 国 別 の 特 徴 と し て は , 英 国 , 米 表-21 原価計算の方式(時間的観点) 米 国 英 国 日 本 実 際 原 価 計 算 25( 27 2%) 11( 22 5%) 303( 53 9%) 標 準 原 価 計 算 64( 69 6%) 37C 75 5%) 227( 40 4%) そ の 他 3C 3 2%) 1c 2 0%) 32( 5 7%) l口h 92000 0%) 49(100 0%) 562000 0%) (注) 日本企業の「その他」は,両者の併用である。日本企業の数値は,井上[1982Jによる。 なお,無記入の企業数は,米国15社,英国9社そして日本46社である。 国 で は7割 前 後 が 標 準 原 価 計 算 を 利 用 し て お り , 日 本 で は 標 準 原 価 計 算 の 利 用 は 約4 割 に 過 ぎ な い 。 す な わ ち , 英 国 , 米 国 で は 標 準 原 価 計 算 を 採 用 し て い る 企 業 が 中 心 で あるが, 日 本 で は 実 際 原 価 計 算 と 標 準 原 価 計 算 を 利 用 し て い る 企 業 が 混 在 し て お り , ど ち ら か と 言 え ば 実 際 原 価 計 算 の 利 用 が 多 く な っ て い る 。 112 原 価 計 算 の 方 式 ( 製 品 原 価 の 観 点 ) 原 価 計 算 の 方 式 を 製 品 原 価 の 観 点 か ら 分 類 す る と , 1 ) 全 部 原 価 計 算 , 2)直 接 原 価 計 算 に 分 け ら れ る 。 結 果 は , 表-22の と お り で あ る 。 直 接 原 価 計 算 の 利 用 は , 英 国 表-22原価計算の方式(製品原価の観点) 米 国 英 国 臼 本 全 部 ・ 原 価 計 算 3

1

C

64 6%) 12( 60 0%) 332( 66 9%) 直 接 原 価 ' 計 算 15( 312%) 8( 40 0%) 147( 29 7%) そ の 他 2( 4 2%) O( 0%) 17( 34%) ぷEL3 計 48(100 0%) 20(100 0%) 496(100..0%) (注〉 日本企業の「その他」は,両者の併用である。無記入等の企業数は,米国53社,英国34 社そして日本112社である。日本企業の数値は,井上 0982Jによる。 (15) が40%と 最 も 多 く , つ い で 米 国 そ し て 日 本 の 順 に な っ て い る 。 (14) 日本では,標準原価といった場合でも,予算原価が用いられている場合がかなりある。詳 しくは,井上 (1983J,298-303ベージを参照のこと。 Schwarzbach 0985Jによると,米国で利用されている原価計算は標準原価計算(66%), 実際原価計算(10%),実際と標準の併用(19%),正常原価 (2%),実際原価・標準原価 および正常原価 (2%),その他c1%)となっている。 ( 15) なお,加登0984Jによると,米国では経営管理目的に直接原価計算を利用している企業 は(75社, 728%),製品原価算定目的に直接原価計算を利用しているのは(66社, 64.1%) となっている。

(23)

423 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト

137-113

原価計算の方式(生産形態の観点) 原価計算の方式を生産形態の観点、から分類すると,1)単純総合原価計算, 2)組 別総合原価計算, 3)個別原価計算に区分される。結果は,表一23のとおりである。 表ー23 原価計算の方式(生産形態の観点) 米 国 英 国 日 本 単純総合原価計算 1l( 33 3%) 12( 52 2%) 76C 13 1%) 組別総合原価計算 4C 12 1%) 3C 13 0%) 26

1

C

44 8%) 個 別 原 価 計 算 17( 51 5%) 6( 26 1%) 142( 24 4%) そ の 他 1( 30%) 2( 8 7%) 103C 177%) メ口'- 言十 33(100 0%) 23(100 0%) 582000 0%) (注) 日本企業の「その他」は,上記の併用である。日本企業の数値は,井上 0982Jによる。 無記入等の企業数は,米国64社,英国 31社そして日本 26社である。 米国では個別原価計算が50%を超えており,ついで単純総合原価計算が多くなってい る。英国では,単純総合原価計算が50%を超えており,ついで個別原価計算が多く なっている。何れにしても,米国,英国では組別総合原価計算の利用企業の割合は少 ない。日本では,逆に,組別総合原価計算を利用する企業の割合が最も多く,個別原 価計算の利用が次に多く,単純総合原価計算は最も少な(で L2 原価計算の目的 ここでは,製造企業で利用している直接原価計算の目的と標準原価計算の目的を検 討する。 L2 1 直接原価計算の目的 原価計算の目的には,1)価格決定, 2)原価管理, 3)財務諸表の作成, 4)予 算編成・統制への役立ち, 5)経営計画, 6)記帳の迅速化,等の目的が考えられる。 調査の結果は,表-24のとおりである。直接原価計算の目的で最も多いのは,いずれ の国においても原価管理への役立ちで, 1/3以上を占めている。次に多いのは,価格 (J時 このような各国別の特徴は,充分に分析してみる必要がある。単純に生産形態と原価計算 の方式を対応させるだけでは不充分であろう。特に,米国,英国については具体的な内容に 立ち入った考察が必要で、ある。 なお,加受(1984)によると,米国では個別原価計算 (22社, 21 4%),総合原価計算 (48 社, 466%),オベレーション・コスティング(個別と総合の混合ないし併用) (20社, 19 4%)そしてその他 (13社, 12.6%) となっている。

(24)

-138- 第60巻 第2号 424 表一24直接原価計算の目的 米 国 英 国 日 本 価 格 決 定 75( 19 6%) 58( 26 2%) 125( 32 4%) 原 価 管 理 14

4

C

37 7%) 77( 34 9%) 127( 33 0%) 財 務 諸 表 の 作 成 34( 8 9%) 2

1

C

9 5%) 23( 6 0%) 予 算 編 成 ・ 統 制 68( 178%) 42( 19 0%) 105( 27 3%) 経 営 計 回 54( 14 1%) 15( 6 8%) 記 帳 の 効 率 化 4( 1 1%) 4( 1 8%) そ の 他 3( 0 8%) 4( 1 8%) 5( 1 3%) ぷ口為 382000 0%) 221(100 0%) 385(100 0%) (注) 復数回答可。日本企業は,三浦他 0987Jによる数字で,標準直接原価計算の利用目的 である。なお,実際直接原価計算の目的は,価格決定 (253%),原価管理 (414%),財 務諸表の作成(109%),予算編成・統制U(19 9%),その他 (2.5%)と,原価管理と財務 諸表作成目的への利用が若干多くなっている。なお,無記入等の企業数は,米国30社,英 国14社そして日本は315社である。 決 定 で あ り , 特 に 日 本 で 重 視 さ れ , あ と 英 国 そ し て 米 国 のIJ債で重要と考えられている。 予 算 編 成 ・ 統 制 ( 経 営 計 算 を 含 め る と 〉 、 へ の 利 用 も そ れ ぞ れ か な り の 割 合 で 利 用 さ れ て お り , 財 務 諸 表 の 作 成 目 的 に は , 米 国 , 英 国 で は10%弱 と , 日 本 に 比 べ る と 多 く 利 用されている。

L2 2

標 準 原 価 計 算 の 目 的 標 準 原 価 計 算 の 利 用 目 的 は , 表-25の と お り で あ る 。 利 用 目 的 は , 米 国 で は 原 価 管 表一25標準原価計算の目的 米 国 英 国 日 本 価 格 決 定 48( 27 9%) 23( 359%) 125( 32 5%) 原 価 管 理 56( 32 6%) 22( 34 4%) 127( 33 0%) 財 務 諸 表 の 作 成 11( 64%) 2( 3 1%) 23( 6 0%) 予 算 編 成 ・ 統 制 28( 16 3%) 7( 10 9%) 105( 27.3%) 経 営 計 函 25( 14.5%) 8( 12 5%) 記 帳 の 効 率 化 4( 2 3%) O( 0%) そ の 他 O( 0%) 2( 3 1%) 5( 1. 3%) { ! コh 計 172 (1000%) 64000.0%) 385(100..0%) (注〉 日本企業の数字は,三浦他(1987)によるもので,標準砲接原価計算の利用目的の数字 である。なお,実際標準原価計算の目的では,価格決定 (257%),原価管理 (261%), 財務諸表の作成 (195%),予算編成・統制U(278%),その他 (09%)という比率になっ ており,財務諸表目的への利用が直接標準原価計算の利用目的に比べて10%余り多くなっ ている。逆に,原価管理目的や価格決定目的への利用は,数%減少している。なお,無記 入等の企業数は,米国65社,英国41社そして日本は315社である。米国,英国と日本の 質問項目とは,内容が一部異なっており, 日本の質問項目には「経営計画j,r記I娠の効率 化」という項目はない。

(25)

425 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト i噌 QU Qd 理目的が約1/3と最も多く,ついで価格決定,予算編成・統制や経営計画への利用の 順になっている。英国では,価格決定への利用が最も多く,原価管理にも向じ程度に 利用されている。また,経営計画,予算編成・統制にもかなり利用されている。日本 でも,若干質問項目が異なるが,原価管理,価格決定及び予算編成・統制への利用が 主要な目的である。 1.

3

原価の構成 ここで'ii,各国の製造原価の要素別の構成比とそれらの費目のうちでどのような要 素が重視されているかを検討してみる。 131 製造原価の構成比 国別の製造原価の構成比(平均値)は,表-26のとおりである。直接材料費につい 表-26 製造原価の構成比 米 国 英 国 日 本 直 接 材 料 費 54 1% 544% 592% 直 接 労 務 費 14 2% 17 7% 12 1% 外 注 加 工 費 90% 31% 83% 動 カ 費 91% 50% 52% 減 価 償 却 費 60% 5 1% 35% そ の 他 費 目 76% 14 7% 11 7% 製 造 原 価 100.0% 100..0% 1000% (注〉 日本企業の数値は,井上[1983)による。回答企業数の合計は,米国 95社,英国 52社 そして日本は608社である。なお,平均値は, ~ (回答企業の各原価要素の構成比)/~(回 答企業〉で計算した。 ては,米国,英国ではほぼ同じであるが, 日本では若干高くなっている。直接労務費 は英国が最も高く,米国そして日本の順になっている。外注加工費は,米国, 日本が 高く,英国では半分以下である。動力費については,米国で高く,英国と日本は少な い。減価償却費は,高いIJ僚に米国,英国そして日本である。 L3.2 原価要素の重要性 それでは,次に,各企業で要素別の原価の管理上どのような原価費目を重視してい るか,表-27により検討してみよう。 直接材料費c1位入直接労務費

(

2

位〉と,二つの費目が原価管理上重視されてい るのは構成比の大きさからして当然であり,いずれの国でも同様である。ただ,英国

(26)

-140ー 第60巻 第2号 426 表-27原価要素の重要性 米 国 英 国 日 本 直 接 材 料 費 4 13(1) 4 02C1) 4 60(1) 直 接 労 務 費 3 42C 2) 3 53( 2) 3 18C 2) 外 注 加 工 費

o

28(0)

o

3l(10) 1 69C 3) 間 接 材 料 費

o

66( 7)

o

59C 9)

o

62C 8) 間 接 労 務 費 L98C 3) 1 98( 3) 1 12C 4) そ の 他 工 場 経 費

o

89( 6)

o

76( 6)

o

48( 9) 減 価 償 却 費

o

58( 8)

o

61( 8)

o

77C 6) 販 古7G 費

o

47( 9)

o

73( 7)

o

75(7) 動 カ 費 1 08C 4)

o

82( 5) 1 03( 5) 支; 払 リ手 息

o

22(1)

o

20Cll)

o

23(11) 一 般 管 理 費 1 05( 5)

o

94( 4)

o

4100) (注〕 表 中 ( )内の数字は,各国の要素別費用の原価管理上の重要度を示す順位である。回 答企業数は,米国83社,英国49社,日本608社である。井上(1982)による。なお,得 点の計算方法は,調査票に各企業で原価管理上重要視している原価費目を l位から 5位ま で順位を付けてもらい, 1位→ 5点, 2位→ 4点, 3位→ 3点, 4位→ 2点, 5位→ l点 を与え, ~ (原価費百毎の得点)/~ (問18への回答企業)で各原価費目毎の得点を計算し た。 での直接労務費の割合が最も高く, 日本が最も低くなっているのは(米国は両者の中 間にある),それぞれの国のロボット化, FMS化 を 含 め た フ ァ グ ト リ ー オ ー ト メ ー ションの現状を反映したものであろう。ただ,その結果は減価償却費の構成比には充 分反映されていないようである。以下の順位は,米国と英国では 3位間接労務費, 4位 動 力 費 5位一般管理費(英国では4i立と 5位が逆), 6

t

立その他の工場経費とほ ぼ同様の傾向にある。それに対して, 日本では自動車製造企業に典型的に見られるよ うに部品等の購入を特定の外注メーカーに固定的に依存している企業の割合が多く, 従って品質等の技術的問題をも含めてトータルな指導・協力関係にあることなどを強 く 反 映 し て 外 注 加 工 費 (

3

位〉の管理を重要視しているのであろう。

4

位 間 接 労 務 費 (742%)を重視しているのは,米国と英国の場合と同様である。その他では,動力 費 (5位 入 減 価 償 却 費 (6位〉や販売費(7位〉の管理が,日本の企業では,比較的 重要視されているのが目立った特徴で-ある。 2 原価管理システム ここで、は,原価管理の目的,組織,予算管理と原価管理の関係,原価管理の課題, 原価低減の手法の問題を検討する。

(27)

427 情報システム,生産システムの革新と原価管理へのインパクト 141-2 1 原価管理の目的 通産省の答申「コスト・マネジメント」でも,原価管理の中心は事後的な原価統制 (コスト・コントロール)から事前管理的な側面の強い原価低減(コスト・リダクショ ン)に移っているといわれて久しいが,その現状を検討してみたい。結果は,表-28 表-28 原価管理の重点 米 国 英 国 日 本 原 価 統 制

l

79( 65 3%) 47( 56 6%) 99( 69 2%) 原 価 低 減 39C 32 2%) 30( 36 1%) 42( 29 4%) モラーノレの向上 3( 2 5%) 3C 3 6%) N A そ の 他 O( 0%) 3( 3 6%) 2( 14%) メ口斗 5 121000 0%) 83(100 0%) 143(100..0% ) 〔注) 回答なLの企業数は,米国4社,英国ではゼロである。日本企業の数値は,吉川武男 [ 1978Jに上る。 N Aは調査項目がないため不明である。また,無記入を除いて構成比を 算出した。 のとおりである。ここでは,英国で原価低減を重視する企業の比率が他の国に比べて 10%位高くなっているが,ほぼ 2/3の企業が原価統制に重点をおいた原価管理をし ているという現状は,いす。れの国て、も同じで、ぁ

Z

2.2 原価管理の組織 2.2..1 原価管理組織の有無 ここでは,原価管理を実施するための組織形態を尋ねた。原価管理のための専門部 署を経営組織上設けているかどうかについての回答は,表-29のとおりである。 表によると,日本では原価管理の専門部署を設けている企業が90%を超えており, 英国で70%,そして米国でも 50%を超えている。日本での原価管理組織の整備が最も 進んでおり,英国そして米国の順に原価管理の組織が整備されていることがわかる。 ( I司 日本企業の調査は, 1978年におこなわれた結果なので若干現在の実態とは異なってきて いるようである。すなわち,日本の製造企業では,近年の市場ニーズの多様化,生産システ ムの

FA

化,多品種少量生産化に対応するため,最近は原価管理における原価企画,原価見 積など原価計画の側面の管理が重要性を増してきているようである。このことは,東京理科 大学・原価工学研究室(1985),三浦他 [1987)の郵送調査及び筆者の面接調査でもその傾 向が窺える。なお,原価企画,見積そのものについては,東京理科大学の田中雅康氏が精力 的に研究されている。(東京理科大学・原価工学研究室0985),田中 0987-a), (1987-b) 他。〉

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