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CASBEEを利用した建物に対する環境性能評価の動向

Trend of environmental performance evaluation to building using CASBEE

西澤 秀喜 NISHIZAWA Hideki 1.はじめに 地球温暖化問題は、人の活動に伴って発 生する温室効果ガスが、大気中の温室効果 ガスの濃度を増加させることにより、地球 全体として、地表及び大気の温度が追加的 に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響 を及ぼすものである。そして、その予想さ れる影響の大きさや深刻さから見て、まさ に人類の生存基盤に関わる最も重要な環境 問題の一つであるといえる。 これに対応するため、低炭素社会の構築 が必要であり、建築物に対しても、企画・新築・ 既存・改修といったライフサイクルを通して、 環境性能の改善検討が常に求められている。 2.CASBEEの�要1)

CASBEE [Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency の頭文字] (建築環境総合性能評価システム)は、建物を 環境性能で評価し、ランキングする手法である。 低炭素社会の実現に貢献する、快適で環境負荷 の少ないサステナブルな建築物の推進に資する ため、国土交通省の支援の下、2001 年度に産学 官共同プロジェクトが発足し、(財)建築環境・ 省エネルギー機構(IBEC)に設置された委員会 において開発された。対象や用途に応じていく つかの種類がある。(後段5.で詳述) CASBEE は、評価対象建築物について、「ユー ザーの生活アメニティの向上Q(Quality:環境 品質)」と、「外部へ及ぼす環境影響の負の側面 L(Load:環境負荷)」を同時に考慮し、総合的 な環境性能を評価することが特徴である。(図1) CASBEEにより建築物の環境性能を客観的に評 価できることから、地方公共団体によっては、 建物の建築確認申請時に義務づけ、申請建物の 環境性能に関する審査などに活用されている。 3.CASBEEの評価方法2) CASBEE は、Q(環境品質)及びL(環境負荷) をそれぞれ採点し、その結果を基に算出したBEE (Built Environment Efficiency:建築物の環 境効率)を指標として環境性能を評価する。 CASBEE の評価シートは、汎用の表計算ソフト で提供されており、Q及びLに関する評価項目 (Q1~Q3、LR1~LR3)にそれぞれ入 力すれば、自動的に集計されて結果がグラフと ともに表示される。(図2) BEE は、図3のように横軸にL、縦軸をQと する図にプロットされる。すなわち、Q値が高 くL値が低いほど、よりサステナブルな建築物 であり、勾配等により区分されたSランク(た いへん優れている)から、Aランク、B+ラン ク、B-ランク、Cランク(劣っている)の、 図1 CASBEE の仕組み 図2 CASBEE の基本構成

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どの位置にプロットされたかによって5段階に ランキングされ、星印の数で表現される。(図4) 4�������ファミリー�) CASBEE には、図5に示すようなライフサイク ルに応じた4つの基本ツールと、個別の目的に 応じた拡張ツールがある。また、基本ツールに は、温熱環境などの評価を室内環境の既存の測 定データを用いて評価を可能にした「簡易版」 が策定されており、これらを総称して「CASBEE ファミリー」と呼んでいる。 この他に、2010年9月に文部科学省が取りまと めた「CASBEE 学校」(学校施設における総合的 な環境性能評価手法)がある。これは、CASBEE 新築、CASBEE既存、及びCASBEE改修をベースに、 小・中・高の学校施設における評価ツールとし て再構築したものである。 5�������学校の開発目的�) CASBEE 学校は、学校施設の環境性能を、学校 設置者(市町村教育委員会など)の施設担当者 等が比較的簡易に把握できるよう開発された診 断ツールである。 低炭素社会の構築に向け、これまで以上に学 校施設の環境対策が求められている。市町村な どが多数保有する学校施設は、それぞれの環境 性能がどのような状況にあり、どの学校施設か らエコ化を進めるのが効果的なのか、といった 検討が必要になる。 また、新築・改築・改修にあたり、どこにコ ストを配分すれば効率的に環境性能が向上する のか、といった検討が重要となる。CASBEE 学校 は、こうした企画段階での活用を想定している。 ��������学校の���) CASBEE 学校では、診断を簡易にし、かつ、学 校の実情に即したものとするために、以下の考 え方を導入している。 ①毎年、各学校で「学校環境衛生基準」に基づ き実施されている、教室等の環境測定結果な どの既存のデータを活用できるようにする。 ②各項目の採点に当たり、一般的な設計の校舎・ 体育館であれば、現地調査や図面確認を省略 図3 BEE による環境ランキング 図4 算定結果の出力例 図5 CASBEE ファミリー

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し、既定の値を採用できるようにする。 ③校地内に環境特性が異なる校舎と体育館が併 設されていること、また、全館空調の導入が 極めて少ないことなどの学校施設の特徴に即 したものとする。 なお、高度な専門的知識がなくても評価でき るように工夫されている。 ��������学校の活用5� 文部科学省では、1996年3月に調査研究報告書 「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の 整備について」を公表した。 また、1997年度には、この考え方に基づき、 エコスクールパイロット・モデル事業が創設さ れ、公立学校を対象として文部科学省・農林水 産省・経済産業省・環境省が連携し、学校施設 整備に対し国庫補助等を行ってきた。 さらに、2009年3月には有識者会議により、調 査研究報告書「環境を考慮した学校施設(エコ スクール)の今後の推進方策について~低炭素 社会における学校づくりの在り方~」が取りま とめられ、地球温暖化対策の強化など我が国の 環境対策の推進に寄与するため、新築・改築時 のみならず、既存の学校施設を含めた全ての学 校においてエコスクールを目指す必要があるこ とが提言された。 このようなエコスクールの基本的な考え方の 中に、学習空間、生活空間として健康で快適な ものとすることと、環境への負荷の低減を両立 させることが掲げられており、Q(環境品質) 及びL(環境負荷)によって評価するCASBEE は、 学校設置者のエコスクールへの取り組みを「見 える化」することに役立つと考えられる。 CASBEE学校の具体的な活用方法としては、 ①各学校施設の現状の環境性能の把握 ②エコ改修を計画している学校の、改修後の環 境性能の予測 ③新築・改築を計画している学校の、整備後の 環境性能の予測 などがある。 また、学校のエコスクール化などを題材に、 CASBEE 学校の評価方法・プロセスそのものを用 いて、環境教育に役立てることも考えられる。 ��自治体における CASBEE の義務化状�6� 2010年4月現在、図6のように全国22の自治体 で、一定規模(延床面積2,000㎡または5,000㎡) 以上の新築建物等について、建築確認申請前の CASBEE 評価を含む計画書の提出、及び工事完了 時の完了届けの提出が、条例等に基づいて義務 化されている。 届出結果は、各地方公共団体のホームページ で、建物名・建築主名・設計者名・施工者名な ども含めて一般公開されている。 図6 自治体におけるCASBEE の義務化 1 名古屋市 (2004.4施行) 2 大阪市 (2004.10施行):要綱で 3 横浜市 (2005.7施行) 4 京都市 (2005.10施行) 5 大阪府 (2006.4施行) 6 京都府 (2006.4施行) 7 神戸市 (2006.8施行) 8 川崎市 (2006.10施行) 9 兵庫県 (2006.10施行) 10 静岡県 (2007.7施行) 11 福岡市 (2007.10施行) 12 札幌市 (2007.11施行) 13 北九州市 (2007.11施行):要綱で 14 さいたま市 (2009.4施行) 15 埼玉県 (2009.10施行) 16 愛知県 (2009.10施行) 17 神奈川県 (2010.4施行) 18 千葉市 (2010.4施行) 19 鳥取県 (2010.4施行) 20 新潟市 (2010.4施行) 21 広島市 (2010.4施行) 22 熊本県 (2010.4施行)

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2010年3月末現在、4,884件のCASBEE による評 価が公開されており、今後も導入する自治体が 増えるのに伴って、公開件数が加速度的に増加 するものと見込まれる。 ��評価認証制度7) CASBEE の評価結果を第三者に提供する場合 には、その信頼性や透明性の確保が重要となっ てくる。評価認証制度は、CASBEE による評価結 果の的確性を確認し、その適正な運用と普及を 図ることを目的としている。 認証対象建物は、新築のみならず、既存、改 修、まちづくり、すまい(戸建)を幅広く対象 とする。 なお、(財)建築環境・省エネルギー機構など の5機関が、評価認証制度を実施している。 また、横浜市も「CASBEE 横浜」に基づく認証 制度を持っている。 ��� 環境性能と不動産の資産価値評価 8) 環境性能の高い建物は、数々の省エネシステ ムや耐久性向上などにより、運用費用や修繕費 用が低減され、純収益が増加する可能性がある。 また、将来の環境関連課税や各種規制に対し て、そのリスクが低いとみなされる。結果とし て不動産価値の向上につながる可能性が大きい。 建物の所有者にとっては、その資産価値評価 に繋がる数値データが地方公共団体のホームペ ージで公開されることは、環境性能の高い建物 を建築するための動機付けになる。 なお、環境性能の高い建物に対しては低利融 資を行うケースや、住宅ローンの優遇措置の適 用などもあり、促進策が講じられている。 ���応用課題実習のテーマとして実施 前述の「CASBEE 学校」は、2010 年 9 月に文部 科学省が公開したものである。市町村の教育委 員会などの学校設置者が、既存学校施設の環境 性能の把握や、新築・改修整備の企画等に役立 つように活用することを期待している。 隣接の教育委員会に照会したところ、内容は 理解していたが、実施には至っていなかった。 そこで、学生の応用課題実習のテーマとして 「CASBEE 学校」による学校施設の評価実施を提 案したところ、複数校で実施することとなり、 学生を指導して準備を進めている。 計測・評価の詳細は次報とするが、建物の環 境性能評価ツールとしての「CASBEE ファミリ ー」の活用が、確実に増大していることは間違 いない。 ���まとめ CASBEE は、建築物の総合的な環境性能を評価 し格付けするシステムとして、国土交通省の主 導の下、(財)建築環境・省エネルギー機構 (IBEC)が 2001 年に開発したものである。 地球環境問題への取り組みの重要性を背景に、 建物の環境性能評価ツールとして「CASBEE」の 活用が拡大しており、建築確認申請時の添付資 料や、学校施設の現状把握、また新築・改築に おける環境性能予測などに利用されている。 建物が建設させると、長期間にわたって存在 するため、多量のエネルギーを使用して、多量 の廃棄物を排出する場合がある。したがって、 建物のライフサイクルに対して環境性能を評価 し、快適で環境負荷の少ない、サステナブルな 建築物の推進が必要である。 なお、発注者側から、あらかじめ環境ランキ ングを指定するケースも増えつつある。今や、 建築生産の各段階において、効率的な環境配慮 は必要不可欠なものとなっている。 ��文� 1) 文部科学省、CASBEE 学校・評価マニュアル[2010]、P1 2) 文部科学省、CASBEE 学校・評価マニュアル[2010]、P2 3) 文部科学省、CASBEE 学校・評価マニュアル[2010]、P7 4) 文部科学省、CASBEE 学校・評価マニュアル[2010]、P3 5) 文部科学省、CASBEE 学校・評価マニュアル[2010]、P5-6 6) CMAJ、CMスクール講義ノート 2010、3-⑤、P11 7) CMAJ、CMスクール講義ノート 2010、3-⑤、P13 8) CMAJ、CMスクール講義ノート 2010、3-②、P15

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参照

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