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マウス膵β細胞株MIN6を用いたコエンザイムQ10によるアポトーシス抑制効果の検討

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Academic year: 2021

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平成25年 2月

角啓佑 学位論文審査要旨

主 査 谷 口 晋 一

副主査 山 本 一 博

同 渡 邊 達 生

主論文 マウス膵β細胞株MIN6を用いたコエンザイムQ10によるアポトーシス抑制効果の検討 (著者:角啓佑) 平成25年 米子医学雑誌 掲載予定 参考論文

1. Screening criteria of diabetes mellitus and impaired glucose tolerance of the Japanese population in a rural area of Japan: The Tottori-Kofu study

(糖尿病の診断基準と日本の農村地帯における耐糖能異常について-鳥取江府study) (著者:大倉毅、谷口晋一、井上和興、山本直哉、松澤和彦、藤岡洋平、角啓佑、

伊澤正一郎、武地幹夫、尾崎米厚、重政千秋) 平成21年 Yonago Acta medica 52巻 105頁~114頁

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学 位 論 文 要 旨

マウス膵β細胞株MIN6を用いたコエンザイムQ10によるアポトーシス抑制効果の検討 膵β細胞のインスリン分泌にはミトコンドリアが重要と考えられており、遺伝的にミト コンドリア機能障害が起こるミトコンドリア糖尿病では、インスリン分泌不全が生じる。 また、膵β細胞は増殖能の低い細胞であり、その量的・機能的低下にはアポトーシスの関 与が重要と考えられている。ミトコンドリア糖尿病の治療法は、インスリン注射以外に確 立されていないが、いくつかの臨床研究にてコエンザイムQ10の有効性が報告されている。 しかし、その基礎的な有効性やメカニズムを研究した報告はまだない。ミトコンドリア病 における中枢神経症状に対してはコエンザイムQ10の有効性の報告があるが、そのメカニズ ムはコエンザイムQ10の抗酸化作用とミトコンドリアへのATP供与作用によると考えられて いる。これらの背景から、ミトコンドリア糖尿病へのコエンザイムQ10の作用機序は膵β細 胞に対するアポトーシス抑制効果ではないかと考えた。そこでマウス膵β細胞株である mouse insulinoma cell line 6 (MIN6)を用いて、強力なアポトーシス誘導剤であり、ミ トコンドリアストレス剤であるstaurosporine(STS)によるミトコンドリアストレスを与 え、コエンザイムQ10による膵β細胞のアポトーシス抑制効果について検討を行った。 方 法 培養したMIN6をコントロール群、STS単独投与群(:前投与なし)、コエンザイムQ10投 与群(:コエンザイムQ10 30 μMを4時間前投与したもの)、Benzyloxycarbonyl-Val-Ala-Asp fluoromethylketone(Z-VAD-fmk;以下は単にZ-VADとする)投与群[:Z-VAD(汎caspase阻 害剤としてSTSによるアポトーシスを阻害することで知られている)30 μMを1時間前投与 したもの]の4群に分けた。コントロール群以外にSTS 0.5 μMを投与し、アポトーシスを誘 導した。細胞生存率を測定するwater soluble tetrazolium 8(WST-8)アッセイ、電気泳 動法によるDNA断片化の観察、アポトーシスの早期段階(フォスファチジルセリンの細胞膜 表面への提示)を測定するアネキシン5免疫染色、ウエスタンブロッティング法による活性 型caspase 3の観察を行った。

結 果

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3 た。しかし、コエンザイムQ10投与群では、細胞生存率は76%(P < 0.01; vs. STS単独投与 群)、Z-VAD投与群の細胞生存率は60%(P < 0.05; vs. STS単独投与群)と有意に細胞生存 率を上昇させた。STS投与15時間でアポトーシスの最終段階であるDNAの断片化がみられた が、これはコエンザイムQ10投与群及び、Z-VAD投与群において抑制された。また、アポト ーシスの早期段階にみられるフォスファチジルセリンの細胞膜表面への提示についてアネ キシン5染色を用いて観察したところ、コントロール群ではアネキシン5陽性細胞の割合が 0%であったのに対して、STS単独投与群では6時間後に15%の細胞がアネキシン5陽性であり (P < 0.05; vs. コントロール群)、アポトーシスの早期段階が観察されることがわかっ た。一方で、コエンザイムQ10投与群ではアネキシン5陽性細胞は1%(not significant; vs. コントロール群)、Z-VAD投与群では3%(not significant; vs. コントロール群)まで低 下していた。ウエスタンブロッティング法によって、STS単独投与群では12時間後に活性型 caspase 3の発現が観察されたが、コエンザイムQ10投与群及びZ-VAD投与群では活性型 caspase 3の発現が低下していた。 考 察 STS投与によって細胞生存率はコントロール群の半分以下に低下したが、これはフォスフ ァチジルセリンの細胞膜表面への提示、活性型caspase 3の発現、DNA断片化を介している ことから、MIN6において有効なアポトーシス刺激であったと考えられた。これらはコエン ザイムQ10投与によって抑制されており、コエンザイムQ10はSTSによるアポトーシス刺激か らの膵β細胞保護効果を持つことが示された。ミトコンドリア病の中枢神経症状に対する コエンザイムQ10の有効性については、ミトコンドリアへのATP供与作用を介していると考 えられている。今回の研究においても、コエンザイムQ10によるATP供与作用を介したミト コンドリアへの直接保護効果の可能性が推測されるが、詳細な作用経路の解明は今後の検 討課題である。今回の研究によって、コエンザイムQ10はミトコンドリアストレスによって 引き起こされるアポトーシスから膵β細胞を保護するという、基礎的なメカニズムの一部 が初めて証明された。今後更なる研究によって、より詳細なメカニズムを解明することで コエンザイムQ10の臨床応用も期待できると考えられた。 結 論 コエンザイムQ10は、膵β細胞に対するアポトーシス抑制効果を持つことが示された。

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審 査 結 果 の 要 旨

本研究は、マウス膵β細胞株であるMIN6を用いて、コエンザイムQ10の膵β細胞に対する アポトーシス抑制効果を検討したものである。MIN6に対してstaurosporine投与によるアポ トーシスが誘導されることを確認した。staurosporine投与前にコエンザイムQ10を投与し た細胞では、WST-8アッセイによる細胞生存率の上昇、DNA断片化の抑制、フォスファチジ ルセリンの細胞膜表面への提示の抑制、ウエスタンブロッティング法による活性型caspase 3の発現低下を認めており、コエンザイムQ10は膵β細胞に対するアポトーシス抑制効果を 持つことが示された。本研究は、コエンザイムQ10によるアポトーシス抑制効果の基礎的メ カニズムを解明し、今後の臨床応用への可能性を示唆するものであり、明らかに学術水準 を高めたものと認める。

参照

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