鳥取砂丘 にお け る自然エネル ギー評価
―風力および太陽エネルギーー
若
良二 十
,田
川公太朗
*,趙
解春 料
Evaluation of Natural Energy atTotton Sand Dune
― Wind and Solar Energies―
WAKA Ryoti*, TAGAWA Kotaro*, ZHAO JieChun**
キーワー ド:風 カエネルギー
,太
陽エネルギー
,鳥
取砂丘
Key Words:ヽ
Vind Eneこ割
,Solar Energy,TottoSand Dune
1,は
じめ:こ エネルギーは国民生活や経済活動 を支 える基盤であり,そ の供給 は石油,石炭 などの化石燃料 に 依存 している。現在,人
口の増加 および生活の向上か ら,エ
ネルギー消費量 は増加の一途 をた どっ てお り,それに伴 う化石燃料の燃焼 によって炭酸 ガスや窒素酸化物 などが大気 中に多量 につF出され, 地球温暖化や酸性雨の地球規模の環境 問題 が顕在化 してい る。また,発
展途上国やア ジア地域 にお ける石油需要の増加,石油供給 における中東依存度の上昇 などが危惧 されてお り,将
来 におけるエ ネルギー安定供給の確保 が強 く求 め られている。 この ような資源 。エネルギー問題 を解決す る一方策 として,環
境へ与 える負荷 が小 さく,無
尽蔵 で,再
生可能 な自然エネルギーの利用が積極的に推進 されてい る。この うち,風
力および太陽エネ ルギーを利用 した風 力発電および太陽光発電 は,エネルギー密度が希薄であること,気
象条件 によ る影響 を受 けること,経済性 についての課題 があることなどの問題 はあるものの,各
発電技術 は実 用化 レベル に達 してお り,世
界の広範 囲においてエネルギー賦存量の調査が実施 されてい る。 一方,風
力および太陽エネルギーは地域 固有のエネルギーであり,地
域活性化 および街づ くりの 観点か ら,地
域住民 が容易に取 り組 む ことがで きるエネルギー分野である。したがって,風
力およ び太陽エネルギニ利用技術 を地域 に導入す ることは ,地 域における普及啓発や学校における環境教 育 を促進 じ,エ
ネルギー問題 に対す る地域住民の意識 を高めるとい う意義 も有 してい る。 これ までの研究では,風 カエネルギーに着 目し,1998年および 1999年 に実施 した,島取砂丘 におけ る風況精査の結果か ら,鳥
取砂丘 における風力発電の可能性 について検討 した①。 本研究では,風
力および太陽エネルギ ーに着 目し,鳥
取砂丘 における風況精査 (継続)お
よび 日 射測定 を行い,そ
の結果か ら風力および太陽エネルギー密度 に関す る評価 を行 った。 半鳥取大学教育地域科学部 地域設計学講座 ・ ホ鳥取大学大学院教育学研究科 教科教育専攻120
若 良二 ,田 川公太朗,趙 解春:′亀取砂丘における自然エネルギー評価2.調
査 目的 本調査では,「鳥取大学乾燥地研究センター」 の敷地内において,風
速 風向および全天 日射 量,日照時間を観測 し,鳥取砂丘における風況 特性および 日射特性 を明らかにする。 さらに, 風力および太陽エネルギー密度を算定 し,両者 のエネルギー密度の相関関係を究明することを 目的とする。 図1.観
測地点の栂略的な位置3.観
測方法 図1に観測地点の概略的な位置 を示す。観測 は鳥取大学乾燥地研究 セ ンター (鳥取市浜坂 1390番 地 ;北 緯35度 30分,東
経 134度 15分) の敷地内で行 った。観測期間は,1999年
10月 1日か ら2000年9月 30日 まで とした。 図2に風況観測機器(SecOnd Wind社
製 :NOMADシ
ステ ム)を 示す。本観 測機 器 は,海
岸 か ら内陸側 へ約280mの
位置 に ある標高30mの
砂丘地 に設置 さ れて い る。測 定 部 で あ る二杯型 風 速計 お よび矢 羽根型風向計は, 垂直 に設置 され た 観 測 ポ ー ル (地上高 さ10m)
の先 端 に取 り付 け られ て い る。 観測 で は,風
速 お よび風 向 を測 定 し,1分間平均 (鳥取大学乾燥地研究センターパンフレットより引用) 図2.風
況 観 測 機 器 矢 羽舶
\
型 ト 計 速 風 ・ 十 ・ 日 本 湾 thc Sca orJapan データロガー鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
4巻
第2号
(2KX13) 値 をデータロガーに自動記録 した。 図 3に 太陽エネルギー観測機器 を示す。本観測機器 は,乾
燥地研究セ ンターの屋上に設置 されて いる。観測では,精
密全天 日射計 (英弘精機製MS-801)で
全天 日射量 を測定 し,1分
間積算値 を データロガーに自動記録 した。また,回
転式 日照計 (英弘精機製MS-091)で
日照時間を測定 し, データロガーに自動記録 した。 図3.太
陽エネルギー観測機器回転式 日照計
122
若 良二 ,田 川公太朗 ,趙 解春:′ミ取砂丘における自然エネルギー評価4.評
価項 目 風力および太陽エネルギーに関 して,測
定データか ら得 られ る評価項 目の中で,本
論文で報告す る項 目を以下 に挙 げる。4.1
風カエネルギーに関する評価項 目(1)平
均風速 観測データか ら得 られた1時間平均風速 を,あ
る期間 (日,月
,年
など)に
おいて平均化 し た風速で ある。観測地点 における風速の概要 を把握 し,風
カエネルギー開発の可否 を概略的に 検討す ることがで きる。(2)風
速出現率 ある期間 (日,月,年
)に
おける風速階級の出現割合である。風速の出現特性 を明 らかにす るために重要で ある。本観測では,風
速階級 をlm/s間
隔に設定 した。 ●)風
向出現率 ある期間 (日 ,月,年
)に
おける風 向の出現割合で ある。図4に風配図 を示す。E(東)を0° にとり,時
計回 り方 向に360° の角度 を設定 した。また,風
向は16方位 で表 されてお り,各
風 向の出現率 を百分率で表 した。風 向出現率 によ り,風
向が もっとも頻繁 に出現す る方位,す
な わち,卓
越風向がわかる。 “)風
向別平均風速 各風向の1時間平均風速 を,あ る期間 (日,月,年
)に
おいて平均化 した風速である。風向 出現率 と併せて評価す ることで,風
カエネルギー利用 における主風 向が明 らかになる。 図4.風
配図 (風向16方
位の区分要領) ENE ‐(348.75° ) ( 180°)W
E( 0° ) 11.25° ) ( 270° )鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
4巻
第2号
(2C103) 123
4.2
太陽エネルギーに関する評価項 目(1)全
天 日射量 地表面 に到達す る日射 には,太陽か ら地表面へ直接到達す る直達 日射 と大気 によ り散乱 され て全天空か ら到達す る散乱 日射 がある。 これ らを合 わせた 日射量が全天 日射量 で あ り,単
位時 間,単
位地表面積 あた りに到達す る 日射のエネルギー量 町/(m2.s)](=[W/m2])で
表 され る。 また,全
天 日射量 をある期 間 (日,月
,年
)に
わたって積分 した積算 日射量[MJ/m?]は
, 気候 を表す指標 として重要である。(1)日
照時間太陽の直射光が地表面 を照射 した時間である。
WMO(Wond MeteOЮ
logica1 0ttanization,世界気象機関)で は
,直達日射量が120W/1n2以 上の日射量がある場合に
,「日照がある」と定義
している。5,観
測結果5,1
風カエネルギー5.1.1
平均風違 図 5に 月平均風速の季節変化 を示す。また,1998年
および 1999年 における観測結果①も併せて示 す。月平均風速 は冬期 に大 きく (2月に7,lm/s),夏
期 に小 さく (6月 に3.3m/s)な
ってお り,日 本特有の傾 向が見 られ る。過去2年
間の観測結果 と比較 して も,季
節変化および年平均風速 はほぼ 同 じである。また,地
上高 さ10mに
おける年平均風速 が5.Om/s以
上の場合,風
力発電 が有望視 さ れている②ことか ら,冬
期 を中心 とした 11月 か ら4月 にかけて,風
力発電が期待 で きる。 図5.月
平均風速の季節変化 月5,1.2
風向出現率 図6および図 7に 月別および年間の風 向出現率 を示す。図6において,SSW(南
南西)あ
るいはS(南
)からの風 が年間 を通 して出現 してお り,鳥取砂丘では南寄 りの風 が安定 してい ることがわか る。また,冬
期 を中心 とした10月か ら5月 において,SSW(南
南西)の
風 向出現率 が他の風 向 よ り 年平均風 速 1998寄i 5.Om/s 1999寄i 5.lm/s 2000年 5.lm/s ―件-1998年
-1999年
-2000と
手若 良二 ,田 川公太朗,趙 解春 i鳥取砂丘における自然エネルギー評価 も著 しく大 きくなっている。図 7に おいて
,年
間の卓越風 向はSSW(南
南西)で
あ り,次
にS(南
) である。この よ うに卓越風向が年間 を通 して安定 してい ることは,風
力発電の導入 を検討す る際に 重要 な指針 となる。 図6.月
別の風向出現率 199つ年 12月 W S 2∞ 0年 4月 S 叫 S﹂S
叫
畔S鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
4巻
第2号 (2003) 125
5.1.3
風向別平均風速 風 向別 月平均 および年平均風速 を図8および図 9に 示す。図 8に おいて,冬
期 を中心 とした10月 か ら4月において,N(北
)を
中心 としたWNW(西
北西)か
らNE(北
東)に
かけての月平均風速 が著 しく大 きくなっている。図9において,5.1.2で
示 した風 向出現率 を併せて考慮す ると,南
寄 りの風 は卓越風 向で あるものの,5m/s弱
の風 が吹いてい ること,北
寄 りの風 は字間を通 して出現 率が低 いが,風
力発電 に利用可能 な6m/s以
上の強い風 が吹いていることがわかる。 以上の ことか ら,鳥取砂丘 における風カエネルギーを不U用す る場合,卓越風 向かつ年間を通 して 安定 してい る南寄 りの風 および出現率は低 い ものの冬期 における北寄 りの風 を有効 に利用す ること が重要である。 図3.風
向別月平均風速 N N NE S 1999年10月 NttW、 1? NNE NWペ Nttψ嘔
NWNNW WNW代 W WSW Yアイ
イ
ラ
ラ
SW/
SSW W WSW SWV ENE WNWた \(` E W― ESEwsw rr/
SW/
SS NNW NNE S 1999年11月 S 1999年12月 W E W wsw″●
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Ⅲ\`
ESE wsw▼ ノイノSW/
ラSE SWr WNWA、 W SW SSW NNW NWヘ WNWA、k、 W WSWf SW SSW NNW NW WNW W WSW ・‐メ S 2tXXl年 1月 S 2000年2月 NE .ENE WNW E NVV (/rムENE WNWヽ NNW SS NNヽネ12 NNE NW縫\
: NWぺ SSガ
NE SSE NNW NWへ WNW^\k\ W WSWP SW SSW NE WNW入\く`\ ブ▼ィスENE E `卜`γESE SE SSW NNW(12 NE NWく ヽ9 NE シSE SSE S 2000年9月 数値軸の単位[m/s] WNW^、ゝ 、ヶ″
ENE E W SW/ wsw rクri 洋 `VESESW/
S 2000年,月 S 2000年3月′
.NttEヶ″
ENE FttENE S 年 NE NE 多 メENE S 噂 00 N NNE NE r4/ャィ
ム
ENE S 年 N ∞ 20 NNE バNE多ィ
ム
ENE E SSVV SSW若 良二 ,日 川公太朗 ,趙 解春:′亀取砂丘における自然エネルギー評価
5.2
太陽エネルギー 5。2.1
全天 日射量 図 10に 日積算 日射量 の月平均値 を示す。夏期7月
)における日射量 は,冬
期 (1月)の
場合の約 4.0倍である。また,6月
は梅雨の時期であり,夏
期の他の 月よ りも日射量 は減少 している。これ ら のことか ら,日本の気候条件 に対応 して ,日 射量の季節間格差 が大 きい ことがわかる。また,鳥
取 砂丘 における日射量の年平均値13.2 WIJ/m2は,日本各地 における日射量の平年値0(1971年か ら2000 年 までの平均値 )11.0∼ 15.O A4J/m2の 範囲内にあることか ら,鳥取砂丘 における日射は比較的に良 好であるといえる。 図10.日
積算日射量の月平均値25
0 5 0 5 2 1 1︵
能
、
こ
咽
凛
田
猷
押
田
月 数値軸 の単位:[m/s] 年平均値 13.2M」/m2鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
4巻
第2号
(2003) 図 ■ に1月および7月における時間積算 日射量の月平均値 を示す。いずれの月においても,日射 量は12:00付 近で最大 となってお り,7月における日射量の最大値は,1月の場合の約3.1倍である。 12:00 時刻5.2.2
日照時間 図 12に 月別の 日照時間を示す。日射量の場合 と同様 に,日照時間の季節間格差 も顕著であ り,夏 期 (7月)に
おける日照時間は,冬
期 (1月)の
場合の約5.7倍である。本観測で得 られた年間 日照 時間2227時間は,日本各地 における日照時間の平年値①(1971年か ら2000年 までの平均値)1500∼
2000時間を大 きく上回っており,太 陽エネルギーを利用する上で望 ましい結果である。しか しなが ら,観
測期間が 1年 間と短いことを考 えれば,本
観測で得 られた年間日照時間は,年
々変動 してい る年間 日照時間の最大側であるとい う評価にとどめておくことが妥当であるう。したがって,年
間 日照時間の経年変化を把握するためにも,日 照時間の観測を継続することが必要である。 図12.月
別の 日照時間 年間 日照時間2227時
間‐
│
■
■
■
■
│__
│,│■
■
`│.│││ 2 1 0$
E
ヽ
こ
硼
憮
□
飢
胆
臣
世
400
0 0 0 0 0 0 3 2 1︵
肛
世
︶
肛
世
醸
田
月 図11.1月
および7月にお ける時間積算 日射量 ―Ⅲ…1月 ―◆-7月
10 12128
若 良二 ,田 川公太朗,超 解春:′亀取砂丘における自然エネルギー評価6.風
力および太陽エネルギー密度 風力および太陽エネルギーを定量的に評価するために,そ
れぞれのエネルギー密度 を算出する。 風カエネルギー密度は,空
気密度および風速 を用いて,次
式で表 される。 (風カエネルギー密度)=(1/2)×
(空気密度)× 9風速の3乗
) 風カエ ネルギー密度が風速の3乗に比例す ることは,風
力発電の導入 を検討す る際 において,風
速が大 きい場所 を選定す る所以である。 一方、太陽エネルギー密度 は,積
算 日射量 を積算時間で除す ることにより算出 され る。 図 13に 風 向別風カエネルギー密度 を示す。北寄 りの風 による風カエネルギー密度 は,南寄 りの風 の場合 よ りも約3倍
大 きい。 これは,北
寄 りの風 の風速が南寄 りの風の風速 よ りも大 きく,そ
の風 速の3乗にエネルギー密度が比例す ることか ら,顕著 な差 となって表れた もので ある。米国のDOE
(Depa血1lent of Energy;エネルギー省)で
は,地
上高10mに
おける風 カエネル ギー密度 が150W/
11a2を上回 る場合,風力発電 における事業化 レベルの開発 が可能で あると評価 してい る。したがって,
150W/m2を
上回 る風カエネルギー密度 を有す る方位 は,N(北
)を
中心 として 雨 T(北 西)からNNE
(北北東)にかけての範囲で あり,これ らの方位の風 を有効 に利用す ることで鳥取砂丘 における風力 発電の事業化 は十分 に期待で きる。 図13.風
向別風カエネルギー密度N
図14に風力および太陽エネルギー密度の月別変化 を示す。それぞれのエネルギー密度は,月平均 風速および月積算 日射量を用いて算出 した。風カエネルギー密度は,風
速が強 くなる冬期の方が夏 期よりも大 きくなるのに対 し,太 陽エネルギー密度は,日射量および日照時間が大 きくなる夏期の 数値軸 の単位:[W/m2]鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第