特集:マスカスタマイゼーション 特集:マスカスタマイゼーション “あなただけの一着”をリーズナブルな価格で提供 東レLaI(ラ・イー)――体型に合わせて パターンを作成し、2週間で納品 東レ株式会社ファッション事業企画部 主任部員 桑原伸二さん
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特集:マスカスタマイゼーション ユニバーサルファッションで工場直結の店舗を開設 品質はプレタ――独自ブランドINOUIで パターンオーダーを展開 井上服装株式会社 代表取締役 井上正人さん8
マスカスタマイゼーション
顧客のニーズに合わせて
リーズナブルな価格でカスタマイズする
知って得する縫いのヒント アタッチメント利用の自己診断 パジャマ編 <JUKI PLAZA> MO−6716Dシリーズ 高速セミドライヘッドインターロックミシン 新しい設備が、新しい可能性をもたらす 油汚れのないドライヘッドは、高品質服づくりに必携 有限会社 プリズ ファッション ネットワーク 代表取締役社長小川正治さん <information/海外拠点便り> ・「CISMA2005」中国国際縫製設備展覧会報告 ・特派員だより……イラン「未開の地」 スクエア 入力機能付き電子サイクルマシン AMS-210E明日のアパレル生産を考える
JUKIマガジン
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20053 2005 Vol.225 2 2005 Vol.225 服が体型に合わない、中高齢者用にセンスのよい服が欲しい、障害者もファッションを楽し みたい……最近こうした声がよく聞かれる。一人ひとりの体型やニーズに合わせた服をリー ズナブルな価格で作る技術=マスカスタマイゼーションが、いま、注目を集めている。
顧客のニーズに合わせて
リーズナブルな価格でカスタマイズする
特集 マスカスタマイゼーション
マスカスタマイゼーション
買い手の好みに合わせて生産する
規格品の量産から
ニーズ対応の多品種少量生産へ
マスカスタマイゼーション
――3つの方向
一般に車を買うときには、車種だけでなく、車体の色 やシート・内装、さらにカーステレオからナビゲーション まで、さまざまなオプションを自由に組み合わせて選択 できるようになっています。納期も、よほど人気の車で ない限り、それほど待たずに納品されます。 規格品を大量に作ることでコストを低く抑える……大 量生産の代名詞のようにいわれた自動車でさえ、いまは 一人ひとりの顧客の好みに合わせて、イージーオーダー のようなことが出来るようになっています。これを実現 したのが、顧客の要望に合わせた一つ一つのパーツを正 しいタイミングで生産ラインに供給する、ジャスト・イン・ タイム(JIT)生産システムです。これも、マスカスタマ イゼーションの一つの形といえるでしょう。 マスカスタマイゼーションとは、一人ひとりの顧客の 要望に合わせて商品を提供することで、衣料品で言えば、 消費者に対して、好みのデザイン・体型に合わせた服を リーズナブルな価格で提供することです。オーダーの一 品生産ではなく、あくまでも量産のような形で行うこと で低価格を実現するところがポイントで、これは、モノ づくりが追求してきた一つの究極の姿でもあります。紳 士服でいえば、イージーオーダーがこれに近い形ですが、 これをデザインやサイズ展開を多様にしたものと考える といいでしょう。 「多目、濃い目、固め!」……これが分かる人はかなり の“通”。いまやラーメンは日本を代表する食文化ですが、 若者たちに人気でいつも行列が出来ているお店は、スー プの油の量、味の濃さ、麺のゆで加減、それにトッピン グの種類……などを客が好みに合わせてオーダーできる ようになっています。 ラーメンは麺とスープだけのシンプルな食品ですが、 こだわりのスープで需要を喚起し、さらに客の好みに合 わせたオーダーにも応じる。ラーメンへの根強い人気は、 優れたマーケティング手法に裏付けられているのです。 マーケットにおける消費者のニーズは、初期は品質か ら始まります。商品の品質が満足できるものになると次 第に注文が増え、やがて大量のオーダーが入るようになり、 量産体制が確立されるようになります。 やがて消費者は、規格化された商品に飽き足らなくなり、 多様な商品を求めるようになります。当初はデザインな ど規格品のバリエーションからの選択肢が増えて消費者 の自由度が広がりますが、その後さらに多様化が進むと、 独自の「個」のニーズに合わせた商品を求めるようにな ります。 自動車産業は、規格化された安価なT型フォードに始 まって、ゼネラル・モーターズに代表される豪華なアメ車 の時代を経て、消費者が求める商品をいち早く供給する ことを可能にしたトヨタのJITによる多品種少量生産シス テムへと変遷してきましたが、この流れは衣料品の分野 でも同様です。 服だけでなく、一般に市場で売られている商品は、最 大公約数的なニーズに合わせて作られていて、必ずしも 一人ひとりのニーズに合わせて作られてはいません。ニ ーズに合った商品を提供するオーダーは、残念ながら価 格的に多くの人が利用できる状況にはありません。そこ で求められるのが、リーズナブルな価格でニーズに合っ た服を提供するサービスであり、そこにマスカスタマイ ゼーションへの期待があるのです。 「いま、個々のニーズに合わせてカスタマイズした商品 が求められるようになっている理由は、大きく3つあり ます。 ①高齢者や障害を持った方々に、もっとおしゃれを楽 しみたいと思っている人が多く、そうしたニーズに 応える仕組みが作られていない ②中高年女性層が楽しめるデザインが少なく、サイズ も既製服ではフィットしない ③規格化された現在のパターンが消費者に合わなくな っている ……という、この3つです」とおっしゃるのは、永年ロ ボットの研究から自動縫製システムの研究を続けてこら れた独立行政法人産業技術総合研究所知能システム研究 部門タスク・インテリジェンス研究グループの小野栄一 さん。 (1) 高齢者・障害者が楽しめる服作り QOL(Quality of Life:生活の質)の向上が叫ばれてい る現在、障害を持つ人たちもおしゃれを楽しみたいと思 っています。そうした人たち用に、おしゃれで履き易く、 着易い衣服が開発されてもいいはずですが、素材もデザ インも選択肢は少ないのが実情です。 「高齢者や障害者用の衣服づくりは、欧米では盛んにプ ロジェクトが組まれて研究されていますが、日本では、 一部の方々が取り組んでいる程度で大きな流れになって はいません。 バリアフリーやユニバーサルデザインが社会的にも認 知され、多少障害があっても外出しやすい環境が徐々に 整いつつありますが、他方で体が不自由だったり、高齢 化して体型が変化してしまったりした方たちの着たい服 がないという状況にあります。衣服のボランティア団体 を立ち上げた岩波君代さんは、『服を作ることは人を知 ること。着る人をよく知らずに服を作ると失敗しやすい』 といいます。採寸からパターン作り、縫製技術者の養成 が急務となっているのです」(小野栄一さん)。 現在、乳房の手術をされた人や手や腕の運動機能に制 限のある人用の、身に着けやすく、美しいボディライン を保つように工夫されたブラジャー「リマンマ」や着脱 エイドブラ(ワコール)、車椅子利用者用のレインウエ ア(東レ)などが販売されていますが、十分とはいえま せん。 東京都立産業技術研究所では、高齢者女子用の人台の 開発が行われています。今後、高齢化が進み、2014年に は65歳以上の人口が25%を超えると言われているなかで、 バリアフリーに対応した服作りのシステム開発は不可欠 の要素と言えるでしょう。 (2) 中高年層が楽しめるデザイン ・サイズの服作り アパレルの世界においてメインターゲットは30代の 図表1 人口構成の推移 独立行政法人産業技術総合 研究所知能システム研究部 門タスク・インテリジェン ス研究グループの小野栄一 さん。 14 12 10 8 6 4 2 0 [ 千 万 人 ] 総人口 15歳から64歳 65歳以上 14歳以下 2000 2010 2020 2030 2040 2050 年3 2005 Vol.225 2 2005 Vol.225 服が体型に合わない、中高齢者用にセンスのよい服が欲しい、障害者もファッションを楽し みたい……最近こうした声がよく聞かれる。一人ひとりの体型やニーズに合わせた服をリー ズナブルな価格で作る技術=マスカスタマイゼーションが、いま、注目を集めている。
顧客のニーズに合わせて
リーズナブルな価格でカスタマイズする
特集 マスカスタマイゼーション
マスカスタマイゼーション
買い手の好みに合わせて生産する
規格品の量産から
ニーズ対応の多品種少量生産へ
マスカスタマイゼーション
――3つの方向
一般に車を買うときには、車種だけでなく、車体の色 やシート・内装、さらにカーステレオからナビゲーション まで、さまざまなオプションを自由に組み合わせて選択 できるようになっています。納期も、よほど人気の車で ない限り、それほど待たずに納品されます。 規格品を大量に作ることでコストを低く抑える……大 量生産の代名詞のようにいわれた自動車でさえ、いまは 一人ひとりの顧客の好みに合わせて、イージーオーダー のようなことが出来るようになっています。これを実現 したのが、顧客の要望に合わせた一つ一つのパーツを正 しいタイミングで生産ラインに供給する、ジャスト・イン・ タイム(JIT)生産システムです。これも、マスカスタマ イゼーションの一つの形といえるでしょう。 マスカスタマイゼーションとは、一人ひとりの顧客の 要望に合わせて商品を提供することで、衣料品で言えば、 消費者に対して、好みのデザイン・体型に合わせた服を リーズナブルな価格で提供することです。オーダーの一 品生産ではなく、あくまでも量産のような形で行うこと で低価格を実現するところがポイントで、これは、モノ づくりが追求してきた一つの究極の姿でもあります。紳 士服でいえば、イージーオーダーがこれに近い形ですが、 これをデザインやサイズ展開を多様にしたものと考える といいでしょう。 「多目、濃い目、固め!」……これが分かる人はかなり の“通”。いまやラーメンは日本を代表する食文化ですが、 若者たちに人気でいつも行列が出来ているお店は、スー プの油の量、味の濃さ、麺のゆで加減、それにトッピン グの種類……などを客が好みに合わせてオーダーできる ようになっています。 ラーメンは麺とスープだけのシンプルな食品ですが、 こだわりのスープで需要を喚起し、さらに客の好みに合 わせたオーダーにも応じる。ラーメンへの根強い人気は、 優れたマーケティング手法に裏付けられているのです。 マーケットにおける消費者のニーズは、初期は品質か ら始まります。商品の品質が満足できるものになると次 第に注文が増え、やがて大量のオーダーが入るようになり、 量産体制が確立されるようになります。 やがて消費者は、規格化された商品に飽き足らなくなり、 多様な商品を求めるようになります。当初はデザインな ど規格品のバリエーションからの選択肢が増えて消費者 の自由度が広がりますが、その後さらに多様化が進むと、 独自の「個」のニーズに合わせた商品を求めるようにな ります。 自動車産業は、規格化された安価なT型フォードに始 まって、ゼネラル・モーターズに代表される豪華なアメ車 の時代を経て、消費者が求める商品をいち早く供給する ことを可能にしたトヨタのJITによる多品種少量生産シス テムへと変遷してきましたが、この流れは衣料品の分野 でも同様です。 服だけでなく、一般に市場で売られている商品は、最 大公約数的なニーズに合わせて作られていて、必ずしも 一人ひとりのニーズに合わせて作られてはいません。ニ ーズに合った商品を提供するオーダーは、残念ながら価 格的に多くの人が利用できる状況にはありません。そこ で求められるのが、リーズナブルな価格でニーズに合っ た服を提供するサービスであり、そこにマスカスタマイ ゼーションへの期待があるのです。 「いま、個々のニーズに合わせてカスタマイズした商品 が求められるようになっている理由は、大きく3つあり ます。 ①高齢者や障害を持った方々に、もっとおしゃれを楽 しみたいと思っている人が多く、そうしたニーズに 応える仕組みが作られていない ②中高年女性層が楽しめるデザインが少なく、サイズ も既製服ではフィットしない ③規格化された現在のパターンが消費者に合わなくな っている ……という、この3つです」とおっしゃるのは、永年ロ ボットの研究から自動縫製システムの研究を続けてこら れた独立行政法人産業技術総合研究所知能システム研究 部門タスク・インテリジェンス研究グループの小野栄一 さん。 (1) 高齢者・障害者が楽しめる服作り QOL(Quality of Life:生活の質)の向上が叫ばれてい る現在、障害を持つ人たちもおしゃれを楽しみたいと思 っています。そうした人たち用に、おしゃれで履き易く、 着易い衣服が開発されてもいいはずですが、素材もデザ インも選択肢は少ないのが実情です。 「高齢者や障害者用の衣服づくりは、欧米では盛んにプ ロジェクトが組まれて研究されていますが、日本では、 一部の方々が取り組んでいる程度で大きな流れになって はいません。 バリアフリーやユニバーサルデザインが社会的にも認 知され、多少障害があっても外出しやすい環境が徐々に 整いつつありますが、他方で体が不自由だったり、高齢 化して体型が変化してしまったりした方たちの着たい服 がないという状況にあります。衣服のボランティア団体 を立ち上げた岩波君代さんは、『服を作ることは人を知 ること。着る人をよく知らずに服を作ると失敗しやすい』 といいます。採寸からパターン作り、縫製技術者の養成 が急務となっているのです」(小野栄一さん)。 現在、乳房の手術をされた人や手や腕の運動機能に制 限のある人用の、身に着けやすく、美しいボディライン を保つように工夫されたブラジャー「リマンマ」や着脱 エイドブラ(ワコール)、車椅子利用者用のレインウエ ア(東レ)などが販売されていますが、十分とはいえま せん。 東京都立産業技術研究所では、高齢者女子用の人台の 開発が行われています。今後、高齢化が進み、2014年に は65歳以上の人口が25%を超えると言われているなかで、 バリアフリーに対応した服作りのシステム開発は不可欠 の要素と言えるでしょう。 (2) 中高年層が楽しめるデザイン ・サイズの服作り アパレルの世界においてメインターゲットは30代の 図表1 人口構成の推移 独立行政法人産業技術総合 研究所知能システム研究部 門タスク・インテリジェン ス研究グループの小野栄一 さん。 14 12 10 8 6 4 2 0 [ 千 万 人 ] 総人口 15歳から64歳 65歳以上 14歳以下 2000 2010 2020 2030 2040 2050 年5 2005 Vol.225
4 2005 Vol.225
DINKS層(Double Income No KidS)まで含めた若い女 性層ですが、こうした世代に加えて、このところ1980年 代に青春時代をすごした40歳∼50歳代のミセス世代が大 きなターゲットになり始めています。 この世代は、川久保玲の「コム・デ・ギャルソン」に 代表されるようなDCブランドを大きな市場に成長させた 世代であり、ファッションに対する関心も強く、従来の 中高年用の衣服とは違った新しいセンスでファッション を求めるようになっています。 そうした世代が、 ・ファッショナブルな素材やデザイン ・新しい体型に合わせたパターン展開 ……を求めており、市場的にも無視できないボリューム になっているのです。 こうしたことを可能にするには、 ・多様なデザインと素材をそろえ ・一人ひとりの顧客の採寸データを取り ・データに基づいてグレーディングを行い ・パターンを作成し ・縫製加工を行う ……という仕組みを作ることが必要です。 このために解決しなければならない問題は ・多様な素材をいかに確保するか、 ・基本的なデザインをどれだけ用意できるか ・採寸の仕組みをどう作るか ……など、課題も多い。 この(1)高齢者・障害者も楽しめる服作りと(2)中高年層 が楽しめるデザイン・サイズの服作り……の2つは、い わばイージーオーダーの仕組みが必要なために、縫製工 場との連動がなければ不可能です。 (3) 体型に合ったパターンの服作り 「アパレルのグッドフィット・テクノロジー」を提案す るビーエム・ディーシステムが同社の3次元人体測定シ ステム(BLスキャナ)を活用して採集したデータを解析 した結果、一番ポピュラーとされる9号サイズにフィッ トする消費者はわずか13%にしか過ぎず、胸の厚みや 腰周りなどでほとんどの消費者が不満を抱いている…… という結果が出ています(近代縫製新聞)。 現在販売されている服はそれぞれアパレルが採用して いるパターンに基づいて作られていますが、生活様式の 変化とともに体型は年々大きく変化しています。基本パ ターンを最新の体型に合わせて修正することが不可欠で すが、日本人の体型測定とパターン作りは遅々として進 まないのが実情です。 仮にアップデートな最新のデータを基にして修正しても、 商品が対象とする年齢層の体型は一様ではないために、 体型に合わないケースがでてきます。たとえば、20∼30 歳代では標準体型でフィットしても、40∼50歳代になると、 上は9号でも下は11号、13号……と上とは異なるサイズ がフィットするというケースも多い。 百貨店でも大阪大丸がパンツのサイズオーダーをキャ ンペーンで展開したり、大丸PBソフールでサイズ間を 埋めるジャケットを企画、伊勢丹などでもLサイズ対応 のセールを行うなど、よりフィットするサイズの展開に 積極的に動いている。 パターンの基本になる最新の体型に合わせた人体測定 データは、社団法人人間生活工学研究センター(HQL) でまとめられた人体計測データベース、コンピュータ・ マネキン(SC3)が発表されており、以下のようなデータ が公表されている。
・日本人の人体計測データ Japanese body size data 1992∼1994 ・成人男子の人体計測データ(JIS L4004_1996)数値デー タと解析 ・成人女子の人体計測データ(JIS L4005_1997)数値デー タと解析 マスカスタマイゼーションによる服作りは、いわば基 本デザインからの展開です。単にグレーディングをする というよりも、障害者も含めてこれまでの標準体型とは 大きく異なる体型も多いため、採寸からパターン作りに は専門的な知識が必要で、専門家の育成が不可欠です。 これが普及に一つの課題になっているのですが、その 採寸の工程をデジカメやパソコンで自動で行えるように しようという仕組みづくりも進められています。 前述のビーエム・ディーシステム社の3次元人体測定 システム(ボディライン・スキャナ:浜松ホトニクス社製) や、サンリット産業の「電子採寸システム・SUBO(スー ボ)」などが開発されており、サンリット産業のスーボ は2003年に「日本IT経営大賞」を受賞しています。 今後、マスカスタマイゼーションがさらに進むためには、 前述のようなさまざまな仕組みの開発が必要ですが、自 動採寸システムもその一つです。 「欧米ではインターネットを介してある程度個別に対応 し た 福 祉 衣 料 を 販 売 す る 店 も 多 く 、 そ れ ら 衣 料 は Adaptive Clothing、Assistive Clothingと呼ばれています。 子供からお年寄り、障害を持つ人用まであり、障害の有 無に関係なくおしゃれを楽しむことが出来る環境が整っ ています」と小野栄一さん。 日本でも、採寸からパターンオーダーの服作りは先進 的な試みが行われています。それらのいくつかをご紹介 しましょう。 東京都立産業技術研究所では、高齢者女子用 の人台の開発が行われています。 ワコール「リマンマ」 東レ「車椅子用スラックス」
自動採寸の仕組みづくり
図表2 異業種交流によるマスカスタマイゼーションの展開 素材研究・ 開発メーカユーザ
素材販売 とりまとめ 情報提供 素材提供者 モデリスト 情報の流れデータベース
素材 パターンデザイン グローバルSCM 物流のデザイン GPS 超コンピュータ データベース ISO,JIS,行政 人体計測 健康管理−>生活を楽しむSOHOも可
素材倉庫 自宅で3次元衣装選び ペットロボがリアルタイム 動作計測、感性に応じた 衣装を着装した ホログラフィ立体表示 素材 素材 素材 製品 ロボ 立体表示 ユーザ バーチャライズド リアリティ 無拘束測定:ペットロボット 人間特性 快適性 モノの流れ 素材倉庫 素材倉庫 医療福祉 デザイン・素材選択 デザイン作成 感性工房 着装シミュレーション バーチャライズド リアティ 立体TV・ホログラフィ 感性工房 着装シミュレーション バーチャライズド リアティ 立体TV・ホログラフィ 縫製5 2005 Vol.225
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DINKS層(Double Income No KidS)まで含めた若い女 性層ですが、こうした世代に加えて、このところ1980年 代に青春時代をすごした40歳∼50歳代のミセス世代が大 きなターゲットになり始めています。 この世代は、川久保玲の「コム・デ・ギャルソン」に 代表されるようなDCブランドを大きな市場に成長させた 世代であり、ファッションに対する関心も強く、従来の 中高年用の衣服とは違った新しいセンスでファッション を求めるようになっています。 そうした世代が、 ・ファッショナブルな素材やデザイン ・新しい体型に合わせたパターン展開 ……を求めており、市場的にも無視できないボリューム になっているのです。 こうしたことを可能にするには、 ・多様なデザインと素材をそろえ ・一人ひとりの顧客の採寸データを取り ・データに基づいてグレーディングを行い ・パターンを作成し ・縫製加工を行う ……という仕組みを作ることが必要です。 このために解決しなければならない問題は ・多様な素材をいかに確保するか、 ・基本的なデザインをどれだけ用意できるか ・採寸の仕組みをどう作るか ……など、課題も多い。 この(1)高齢者・障害者も楽しめる服作りと(2)中高年層 が楽しめるデザイン・サイズの服作り……の2つは、い わばイージーオーダーの仕組みが必要なために、縫製工 場との連動がなければ不可能です。 (3) 体型に合ったパターンの服作り 「アパレルのグッドフィット・テクノロジー」を提案す るビーエム・ディーシステムが同社の3次元人体測定シ ステム(BLスキャナ)を活用して採集したデータを解析 した結果、一番ポピュラーとされる9号サイズにフィッ トする消費者はわずか13%にしか過ぎず、胸の厚みや 腰周りなどでほとんどの消費者が不満を抱いている…… という結果が出ています(近代縫製新聞)。 現在販売されている服はそれぞれアパレルが採用して いるパターンに基づいて作られていますが、生活様式の 変化とともに体型は年々大きく変化しています。基本パ ターンを最新の体型に合わせて修正することが不可欠で すが、日本人の体型測定とパターン作りは遅々として進 まないのが実情です。 仮にアップデートな最新のデータを基にして修正しても、 商品が対象とする年齢層の体型は一様ではないために、 体型に合わないケースがでてきます。たとえば、20∼30 歳代では標準体型でフィットしても、40∼50歳代になると、 上は9号でも下は11号、13号……と上とは異なるサイズ がフィットするというケースも多い。 百貨店でも大阪大丸がパンツのサイズオーダーをキャ ンペーンで展開したり、大丸PBソフールでサイズ間を 埋めるジャケットを企画、伊勢丹などでもLサイズ対応 のセールを行うなど、よりフィットするサイズの展開に 積極的に動いている。 パターンの基本になる最新の体型に合わせた人体測定 データは、社団法人人間生活工学研究センター(HQL) でまとめられた人体計測データベース、コンピュータ・ マネキン(SC3)が発表されており、以下のようなデータ が公表されている。
・日本人の人体計測データ Japanese body size data 1992∼1994 ・成人男子の人体計測データ(JIS L4004_1996)数値デー タと解析 ・成人女子の人体計測データ(JIS L4005_1997)数値デー タと解析 マスカスタマイゼーションによる服作りは、いわば基 本デザインからの展開です。単にグレーディングをする というよりも、障害者も含めてこれまでの標準体型とは 大きく異なる体型も多いため、採寸からパターン作りに は専門的な知識が必要で、専門家の育成が不可欠です。 これが普及に一つの課題になっているのですが、その 採寸の工程をデジカメやパソコンで自動で行えるように しようという仕組みづくりも進められています。 前述のビーエム・ディーシステム社の3次元人体測定 システム(ボディライン・スキャナ:浜松ホトニクス社製) や、サンリット産業の「電子採寸システム・SUBO(スー ボ)」などが開発されており、サンリット産業のスーボ は2003年に「日本IT経営大賞」を受賞しています。 今後、マスカスタマイゼーションがさらに進むためには、 前述のようなさまざまな仕組みの開発が必要ですが、自 動採寸システムもその一つです。 「欧米ではインターネットを介してある程度個別に対応 し た 福 祉 衣 料 を 販 売 す る 店 も 多 く 、 そ れ ら 衣 料 は Adaptive Clothing、Assistive Clothingと呼ばれています。 子供からお年寄り、障害を持つ人用まであり、障害の有 無に関係なくおしゃれを楽しむことが出来る環境が整っ ています」と小野栄一さん。 日本でも、採寸からパターンオーダーの服作りは先進 的な試みが行われています。それらのいくつかをご紹介 しましょう。 東京都立産業技術研究所では、高齢者女子用 の人台の開発が行われています。 ワコール「リマンマ」 東レ「車椅子用スラックス」
自動採寸の仕組みづくり
図表2 異業種交流によるマスカスタマイゼーションの展開 素材研究・ 開発メーカユーザ
素材販売 とりまとめ 情報提供 素材提供者 モデリスト 情報の流れデータベース
素材 パターンデザイン グローバルSCM 物流のデザイン GPS 超コンピュータ データベース ISO,JIS,行政 人体計測 健康管理−>生活を楽しむSOHOも可
素材倉庫 自宅で3次元衣装選び ペットロボがリアルタイム 動作計測、感性に応じた 衣装を着装した ホログラフィ立体表示 素材 素材 素材 製品 ロボ 立体表示 ユーザ バーチャライズド リアリティ 無拘束測定:ペットロボット 人間特性 快適性 モノの流れ 素材倉庫 素材倉庫 医療福祉 デザイン・素材選択 デザイン作成 感性工房 着装シミュレーション バーチャライズド リアティ 立体TV・ホログラフィ 感性工房 着装シミュレーション バーチャライズド リアティ 立体TV・ホログラフィ 縫製7 2005 Vol.225 6 2005 Vol.225
“あなただけの一着”
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東レLa
I(ラ・イー)―― 体型に合わせてパターンを作成し、
2週間で納品
中高年世代になると服のデザイン・素材が限定され、既成のパターンでは体型が合わない…… そんな不満を持つ人たち向けに、欲しい服を体型に合わせてオーダーする東レのパイロットシ ョップ“LaI(ラ・イー)”は、リピート客に支えられて好調だ。 東レ株式会社ファッション事業企画部主任部員 桑原伸二さん 東急線自由が丘駅から1分、人通りの多いしゃれた商店 街に落ち着いたお店が並ぶ。前面のガラスを通して、店内 に置かれた洋服が見えるが、並べられている商品は少ない。 小売とは少し違う雰囲気の落ち着いたお店が東レのパイロ ットショップ「LaI」である。 東レは、96年に「エクセーヌプラザ青山」内に最初のF FB(ファッションファクトリーブティック)をニット素材 で開設し、翌年、自由が丘に布帛素材の「La I」を開設し た。 「当社はもともと関係会社の「ACS」でアパレル用の CADソフトを開発していましたが、そこでのノウハウを ベースにマルチメディアを活用した事業を手がけたいと考 えていました。当時、「ACS」とともに、お客様がパソ コンの画面上で着用イメージが確認できるシステムを開発 していました。最新のコンピュータグラフィックス技術を 導入し、3次元で立体的にパターンを見せるシステムです。 これを利用してお客様にOne to On提案ができるのではな いかということで、La I自由が丘店を始めました」と同社 ファッション事業企画部主任部員の桑原伸二さん。 画面上で着用イメージが確認できるシステムは、仕込み 作業の量が想定以上に多く、現在は使われていない。しか し、One-to-oneの提案を利用するお客さんも増えて、自由 が丘にも進出した。 仕組みはこうだ(次ページ図)。 お客さんがお店にこられると、店内にあるデザインを見 て選択し、さらに素材を選択する。その後採寸し、工場に 送って縫製。2週間後に仕立て上がりをお渡しする。受け るのは、中心価格はそれぞれジャケット69,000円、ドレス 69,000円、コート98,000円、スカート34,000円、パンツ 42,000円……とオーダーと比べてもきわめてリーズナブル だ。 ターゲットを世帯の年収が1,500万円以上と考えて背後 に田園調布や等々力など高級住宅街を抱える自由が丘に出 店したが、ブライダルゲストやフォーマル、学校行事用の 服の準備などにも利用されることも多く、意外と若い方に もご利用いただいているという。 「一度ご利用いただいたお客様は、サイズデータがありま すので、採寸の必要もありません。そのためか、リピート でご利用いただくケースが増えて、60%近くになっていま す」とお店を預かる折原由佳さん。 最大のポイントは、事前にどれだけのデザインや素材を 用意できるかだが、「毎シーズン新しいデザインを20∼30 型ご用意していますので、デザインストックは、500型近 くになります。このお店だけでなく、百貨店や専門店のO EMなどもしており、さまざまな情報を取り入れて、常に 鮮度のあるデザイン提案を行っています。デザインについ ては、毎年、残すものと、入れ替えるもの、手を加えて改 善するもの……がそれぞれ1/3ずつ。素材についても毎 シーズン新しいものをイタリアを中心に買い付けています」 と桑原さん。 何よりもメリットは、イージーオーダーと違って、デザ インを選んでからもディテールを変更できること。 「お年を召した方は、上下でサイズが違いますので、既製 服では合いません。その点、この仕組みをご利用いただけ ば、サイズはぴったり対応しますし、デザインもテーラー エリをへちまエリにしたい、ジャケットの裾を長めにして ほしい……などお客様のご要望に自由にお応えすることが 出来ますので、その良さをお分かりいただく方がリピート してくださいます」(同)。 価格的にはオーダーの半額で “私だけの一着”が出来 る。この価格ならば、「メインターゲットは40−50代で60 %を占めますが、30代のお客様も少なくありません」(折 原さん)というのもうなずける。ちょっとした贅沢の範囲 なのである。 お店として難しいのは、デザインや素材の準備と並んで、 縫製加工を担当する工場に技術者が少なくなっていること。 「パターンが作れて、丸縫いが出来ることが条件になりま すが、その技術者が少なくなっているのが厳しいですね」 と桑原さん。 素材は常に400種類を確保しているが、デザインを新し くすることで、同じ素材を生かすような工夫も必要だ。 そして最大の課題は、PR活動。ボリューム的にもメイ ンの市場ではないので大きく宣伝費をかけられない。バッ クにあるメインターゲットの住む高級住宅街に焦点を合わ せて地域タウン誌等を利用したPRを展開するが、お客様 の大半は口コミによる来店である。 それだけにお店での接客も、販売と言うよりも、ファッ ションコーディネーター、あるいはカウンセリングという 役割が求められる。 “ブランドより、自分らしさを生かした服が欲しい”と 考える消費者も増えている。カスタマイゼーション……一 人ひとりの消費者のニーズに合った服を作るという動きは、 ボリューム的に決してメインの市場にはならないが、既成 のマーケットのニッチを埋める確実な市場になることは間 違いなさそうだ。 特集:マスカスタマイゼーション用意するサンプル5,000点
1/3∼2/3を毎年リニューアル
「2010年を目標に、あと5,6店舗広げ たい」東レ株式会社ファッション事業 企 画 部 主 任 部員桑 原 伸 二さん。 自由が丘の駅前通りにある、「LaI(ラ・ イー)」。落ち着いた雰囲気で高級 感を演出している。 「リピートのお客様が 多いですね」とお店を 預かる折原由佳さん。“個”のニーズに合わせて
One-to-Oneの商品提案
ターゲットは家族年収1,500万円以上
高いリピート率
オ ー ダ ー の 仕 組 み 。 ① デ ザ イ ン 選 択 ↓ ② 素 材 選 択 ↓ ③ 採 寸 ↓ ④ お 仕 立 て ↓ ⑤ で き あ が り の 流 れ で 2 週 間 で 完 成 す る 。 用意されているデ ザインから選択す る。選択肢の多さ が特徴だ。課題は多様な素材の確保
2010年までに5,6店舗を展開したい
東レ「LaI(ラ・イー)」 創業・開店:平成15年 所在地:東京都目黒区自由が丘2-10-10 商品:婦人服パーソナルオーダー HP:http://www.toray.co.jp/LaI/7 2005 Vol.225 6 2005 Vol.225
“あなただけの一着”
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リーズナブルな価格で提供
東レLa
I(ラ・イー)―― 体型に合わせてパターンを作成し、
2週間で納品
中高年世代になると服のデザイン・素材が限定され、既成のパターンでは体型が合わない…… そんな不満を持つ人たち向けに、欲しい服を体型に合わせてオーダーする東レのパイロットシ ョップ“LaI(ラ・イー)”は、リピート客に支えられて好調だ。 東レ株式会社ファッション事業企画部主任部員 桑原伸二さん 東急線自由が丘駅から1分、人通りの多いしゃれた商店 街に落ち着いたお店が並ぶ。前面のガラスを通して、店内 に置かれた洋服が見えるが、並べられている商品は少ない。 小売とは少し違う雰囲気の落ち着いたお店が東レのパイロ ットショップ「LaI」である。 東レは、96年に「エクセーヌプラザ青山」内に最初のF FB(ファッションファクトリーブティック)をニット素材 で開設し、翌年、自由が丘に布帛素材の「La I」を開設し た。 「当社はもともと関係会社の「ACS」でアパレル用の CADソフトを開発していましたが、そこでのノウハウを ベースにマルチメディアを活用した事業を手がけたいと考 えていました。当時、「ACS」とともに、お客様がパソ コンの画面上で着用イメージが確認できるシステムを開発 していました。最新のコンピュータグラフィックス技術を 導入し、3次元で立体的にパターンを見せるシステムです。 これを利用してお客様にOne to On提案ができるのではな いかということで、La I自由が丘店を始めました」と同社 ファッション事業企画部主任部員の桑原伸二さん。 画面上で着用イメージが確認できるシステムは、仕込み 作業の量が想定以上に多く、現在は使われていない。しか し、One-to-oneの提案を利用するお客さんも増えて、自由 が丘にも進出した。 仕組みはこうだ(次ページ図)。 お客さんがお店にこられると、店内にあるデザインを見 て選択し、さらに素材を選択する。その後採寸し、工場に 送って縫製。2週間後に仕立て上がりをお渡しする。受け るのは、中心価格はそれぞれジャケット69,000円、ドレス 69,000円、コート98,000円、スカート34,000円、パンツ 42,000円……とオーダーと比べてもきわめてリーズナブル だ。 ターゲットを世帯の年収が1,500万円以上と考えて背後 に田園調布や等々力など高級住宅街を抱える自由が丘に出 店したが、ブライダルゲストやフォーマル、学校行事用の 服の準備などにも利用されることも多く、意外と若い方に もご利用いただいているという。 「一度ご利用いただいたお客様は、サイズデータがありま すので、採寸の必要もありません。そのためか、リピート でご利用いただくケースが増えて、60%近くになっていま す」とお店を預かる折原由佳さん。 最大のポイントは、事前にどれだけのデザインや素材を 用意できるかだが、「毎シーズン新しいデザインを20∼30 型ご用意していますので、デザインストックは、500型近 くになります。このお店だけでなく、百貨店や専門店のO EMなどもしており、さまざまな情報を取り入れて、常に 鮮度のあるデザイン提案を行っています。デザインについ ては、毎年、残すものと、入れ替えるもの、手を加えて改 善するもの……がそれぞれ1/3ずつ。素材についても毎 シーズン新しいものをイタリアを中心に買い付けています」 と桑原さん。 何よりもメリットは、イージーオーダーと違って、デザ インを選んでからもディテールを変更できること。 「お年を召した方は、上下でサイズが違いますので、既製 服では合いません。その点、この仕組みをご利用いただけ ば、サイズはぴったり対応しますし、デザインもテーラー エリをへちまエリにしたい、ジャケットの裾を長めにして ほしい……などお客様のご要望に自由にお応えすることが 出来ますので、その良さをお分かりいただく方がリピート してくださいます」(同)。 価格的にはオーダーの半額で “私だけの一着”が出来 る。この価格ならば、「メインターゲットは40−50代で60 %を占めますが、30代のお客様も少なくありません」(折 原さん)というのもうなずける。ちょっとした贅沢の範囲 なのである。 お店として難しいのは、デザインや素材の準備と並んで、 縫製加工を担当する工場に技術者が少なくなっていること。 「パターンが作れて、丸縫いが出来ることが条件になりま すが、その技術者が少なくなっているのが厳しいですね」 と桑原さん。 素材は常に400種類を確保しているが、デザインを新し くすることで、同じ素材を生かすような工夫も必要だ。 そして最大の課題は、PR活動。ボリューム的にもメイ ンの市場ではないので大きく宣伝費をかけられない。バッ クにあるメインターゲットの住む高級住宅街に焦点を合わ せて地域タウン誌等を利用したPRを展開するが、お客様 の大半は口コミによる来店である。 それだけにお店での接客も、販売と言うよりも、ファッ ションコーディネーター、あるいはカウンセリングという 役割が求められる。 “ブランドより、自分らしさを生かした服が欲しい”と 考える消費者も増えている。カスタマイゼーション……一 人ひとりの消費者のニーズに合った服を作るという動きは、 ボリューム的に決してメインの市場にはならないが、既成 のマーケットのニッチを埋める確実な市場になることは間 違いなさそうだ。 特集:マスカスタマイゼーション用意するサンプル5,000点
1/3∼2/3を毎年リニューアル
「2010年を目標に、あと5,6店舗広げ たい」東レ株式会社ファッション事業 企 画 部 主 任 部員桑 原 伸 二さん。 自由が丘の駅前通りにある、「LaI(ラ・ イー)」。落ち着いた雰囲気で高級 感を演出している。 「リピートのお客様が 多いですね」とお店を 預かる折原由佳さん。“個”のニーズに合わせて
One-to-Oneの商品提案
ターゲットは家族年収1,500万円以上
高いリピート率
オ ー ダ ー の 仕 組 み 。 ① デ ザ イ ン 選 択 ↓ ② 素 材 選 択 ↓ ③ 採 寸 ↓ ④ お 仕 立 て ↓ ⑤ で き あ が り の 流 れ で 2 週 間 で 完 成 す る 。 用意されているデ ザインから選択す る。選択肢の多さ が特徴だ。課題は多様な素材の確保
2010年までに5,6店舗を展開したい
東レ「LaI(ラ・イー)」 創業・開店:平成15年 所在地:東京都目黒区自由が丘2-10-10 商品:婦人服パーソナルオーダー HP:http://www.toray.co.jp/LaI/9 2005 Vol.225 8 2005 Vol.225
ユニバーサルファッションで
工場直結の店舗を開設
品質はプレタ――独自ブランドINOUIでパターンオーダーを展開
ユニバーサルデザインの考え方を導入し、障害者や高齢者のニーズにこたえる服作りをし たい……と川中支援事業に応募して工場直結の店舗を開設した井上服装さん。技術をベー スにカスタマイゼーションで改革を目指す。 井上服装株式会社 代表取締役 井上正人さん 「縫製工場は下請けです。いいときは仕事がたくさんあ りますが、いまは海外の残りや難しい仕事だけが来る。閑 散期がだんだん長くなり、自立できるようにしなければ工 場はつぶれてしまう……そう思って行き着いたのが、パタ ーンオーダーでした」と井上服装社長井上正人さん。自立 への道を探って研究を始めたのは4年前のことである。 「下請けではなく、自分で作るというのが一番の方法で すが、販路がないので難しい。オーダーならできると組合 の学校に通ってパターンを勉強しましたが、一から自分で パターンをひくのは至難の業です。そこで、パターンオー ダーを導入し、パタンナーが作ったというCAD(JCシス テム)をレンタルで採用した」(同)。 試行錯誤を重ねているときに、雑誌で目にしたのがユニ バーサルファッションの記事。井上さんは“これだ”と思 い、NPOユニバーサルファッション協会の研究会に参加し、 2003年には、経済産業省の川中自立支援事業に応募し採用 される。これで店舗開設の計画が現実のモノとなってきた。 そして、2004年には“UNIFA”マーク使用権も取得する。 当初の予定では梅田大丸に出店する計画だったが、大丸 の都合でそれがキャンセルになり、川中自立支援事業の予 算を大丸開店以外に使用することの許可を取って、工場に 隣接した店舗「しえん」を開設した。店舗の広さは23平方 米。ミセスをターゲットにしたサイズオーダーと、ユニバ ーサルファッションのオーダーが営業品目である。 ユニバーサルと言うことになると、対象は高齢者・障害 者にも広がる。単に採寸してグレーディングするだけでは すまなくなる。根本的な体型から変わってくるからである。 そこで、HQL(人間生活工学研究センター)の体型デー タや“高齢者女子衣料開発用人台”なども導入し、体型の 研究や高齢者用衣料の開発にも取り組んだ。採寸をサポー トするシステムとして、サンリット産業が開発した電子採 寸システム「SUBO(スーボ)」も採用した。 もともと同社が手がけていたのは、イトキンの「クリス チャンオジャール」など40∼50代用のプレタ。その技術を ベースに開店したが、店で待っているだけでは商売になら ない。そこで、呉服の見本市などに参加してバッグやアク セサリー等と一緒にオーダーの展示もしてみたが、「無地 の素材や地味なデザインを持っていったために反響はいま ひとつ。有料老人ホームでも展示販売を試みたがどちらも 大きな商売にはならない」(同)。 しかしそこで教えられることも多かった。それは、高齢 者向けの衣類は、普通の衣類と違って上着はお尻が隠れる くらいに長いほうがよい、エリの開きも小さく、ボタンは かけやすく外しやすいものが不可欠と知ったという。これ らがやがて、井上さんの服作りのベースになっていく。 結局、独自のブランドとしてミセスのパターンオーダー “INOUI”を立ち上げ、季節ごとに70−80種類のデザイン を用意。 店舗では、展示されている衣料やカタログから好みのデ ザインと素材を選択してもらい、その後採寸し、同時に電 子採寸システムを利用して写真撮影を行う。このデータを 基にして裏の工場でパターンに起こし、縫製加工して約2 週間後に完成・引渡しである。 デザインは外部のデザイナーに依頼しているが、受注に 当たってはデザインや細部の変更も自在に対応する。必要 ならば、裏の工場からパタンナーも参加して一緒に検討で きるので、お客様の信頼も高い。そして、縫製加工は生え 抜きの一級技能士・岩本数生さんが担当。ユニバーサルフ ァッションとはいえ、仕上がりはプレタのオーダーである。 「ユニバーサルファッションと言うのは、高齢者や障害 を持つ方のためのファッションということではなく、どな たでも体型に合わせた洋服をおつくりしますということで す。ところがユニバーサルファッションというと、どうし ても障害者のためのファッションというイメージが強く出 てしまい、一般の中高年層の方があまりご利用くださらな い。それが大きな課題です」と井上さん。 店舗の業務は、高齢者・障害者用の衣料の製作とサイズ オーダーの衣料品の製作である。後者の、サイズオーダー の事業は、ジャケットで38,000∼72,000円、パンツが23,000 ∼42,000円、スカートで21,000∼46,000円と“プレタ”クラ スとは思えないリーズナブルな価格だが、ユニバーサルフ ァッションのイメージに押されてお客さんはもう一つ。 閑散期にINOUIの既製品を作りこむことで、受注の隙間 を埋める仕組みは出来上がったが、サイズオーダーの部分 をいかにPRできるか? ユニバーサルファッションで注 目を集めた同社の、今後の大きな課題でもある。 特集:マスカスタマイゼーションさまざまなデザインを開発
一級技能士の技術で自在に縫製
「縫製工場は下請け。中国で出来な い難しい仕事だけしかこなくなると 厳しい。それを克服するのは自分で 始めるしかない」井上服装㈱代表取 締役社長井上正人さん。 住宅街にある工場直結の 店舗「しえん」。 23平方米の店舗にはINOUIブランド製品が展示 されている。右側で採寸が行われる。 前あきを大きくとったパンツ。 ファスナーはタック線に隠れ るので外から見えない。 工場で生産するのはプレタの服。質の高い作業が行われている。 一般的なグレーディングとは 違う独特のパターン作りのノ ウハウがたくさんある 井上服装株式会社 創業:昭和35年、会社設立:昭和45年 社長:代表取締役 井上正人 社員:17名 生産アイテム:婦人服 所在地:大阪市東住吉区田辺町4-14-25自立への道を探って
ユニバーサルファッションへ
ターゲットは60−70代女性
プレタの技術でデザインを用意
ユニバーサルファッションの限界
広げたい“サイズオーダー”のイメージ
MO-6100Dドライヘッドロック ミシンも導入されている。 電 子 採 寸 シ ス テ ム。手前のケース にカメラが隠され ていて、奥に立っ て撮影する。立ち 位置に足型が付け られている。 (株)アップルが開発した高齢者用 の人台。基本的な体型が分かる。9 2005 Vol.225 8 2005 Vol.225