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ストッキングとタイツの着用時の紫外線防御能
(2014 年 7 月 22 日受付;2014 年 11 月 7 日受理)
塩原 みゆき*# 榊原 沙耶** 川端 博子**
*㈱エフシージー総合研究所 **埼玉大学
UV Protection Efficiency of Pantyhose and Tights while Being Worn
Miyuki SHIOBARA*#, Saya SAKAKIBARA**, Hiroko KAWABATA** *FCG Research Institute, Inc., Tokyo, Japan
**Saitama University, Saitama, Japan Abstract
UV protection pantyhose are in the market, but the effectiveness of the ultraviolet radiation (UV) protection on these stretchy products while being worn was not yet to be clarified. The purpose of this study is to examine the UV protection efficiency on items made of stretchy fabric, namely the pantyhose and tights, while being worn. Samples correlating to items being worn were fitted on the mannequin legs to monitor the transmittance, UPF, and porosity on the three parts of the body: the ankle, the calf, and the thigh. It was found that the UV protection efficiency of pantyhose and tights that stretch when worn was greatly influenced by porosity, and that the UV protection efficiency decreased as porosity increased. The fine yarn of pantyhose with high porosity did not possess any UV protection efficiency, and the UV protection was found useless. In case of tights, it was clarified that items with higher porosity were influenced by lightness rather than hue, and the lower the lightness, the higher the UV protection efficiency. Black color indicated adequate UV protection efficiency when porosity was less than 10%. UV protection efficiency of tights showed correlation with weight, but not with denier.
(Received July 22, 2014 ; Accepted November 7, 2014) Key words: UV protection, pantyhose, tights, UPF, porosity, transmittance
(Journal of the Japan Research Association for Textile End-Uses, Vol.56, pp.148-154, 2015)
―― 要 旨 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― UV 加工を施したストッキング類が市販されているが,これら伸縮性のある商品の着用時の効果 については明らかではない.本研究では,伸縮性のあるアイテムのうち,ストッキングとタイツに ついて,着用時のUV 防御能を持つ条件を調べた.試料を脚部ボディに履かせ,「足首」「ふくらは ぎ」「大腿部」の3 か所から直接,着用時のサンプルを採取し,透過率,UPF,空隙率を測定した. 着用時に伸張するストッキングやタイツ類の UV 防御能には空隙率が大きく影響し,空隙率が大きい ほどUV 防御能は低下した.ストッキングでは糸が細く空隙率が大きいため,UV 防御能を有せず, UV 加工を施しても効果が認められないことが分かった.タイツでは,空隙率が大きくなると色相 よりも明度の影響を受け,明度が低いほどUV 防御能が高い.黒色の場合は,空隙率が 10%以下で あればUV 防御能を有することが分かった.また,タイツの UV 防御能はデニールではなく重さと 相関があることが確認された. キーワード:UV 防御,ストッキング,タイツ,UPF,空隙率,透過率 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.緒 言 近年,紫外線(以下,UV)による肌への影響 が認知されるようになり,UV 防止化粧品だけで なく,衣類でのUV 防御に期待した商品も多く出 回っている.肌に対するUV 防御は,肌に負担が かからない方法が基本であり,衣服による防御は 最も安全でかつ効果的な方法である.しかし,夏 場は肌を露出するため,露出する部分のUV 防御 にはUV 防止化粧料など直接,肌に塗布する方法 が一般的に行われている.この化粧料塗布に代わ るものとして,露出された脚部分のUV 防御法と して期待できるのが,ストッキングやタイツとい った脚にフィットするレッグウエア類である.こ れまで塩原らは,衣服のUV 防御について布帛を 使った実験を行い,ポリエステルは UV-B(280 ~315 nm)防御能に優れているが,UV-A(315 ~400 nm)については綿と同様,効果は期待でき ないこと,色については明度が低いほどUV 防御 能は高くなるが,同じ明度であれば黄色の効果が 最も高いこと,蛍光増白剤は白布のUV-A の防御 能を高めること,蛍光増白剤入り洗剤での洗濯の 繰り返しで,綿白布はUV-A 防御能を有するよう になることなど,綿とポリエステル布についての 基本的なUV 防御能に関する知見1)- 4)を得てきた. 伸縮性のある素材,特に,着用により脚にフィッ トして空隙が広がるストッキング類に対しては, 仲島らによる高校生が行った ESR を用いた教育 実践的な報告5)はあるものの,着用伸張率を測定 するなどした基本的な研究はない.しかしながら, このようなアイテムに対してもUV 加工を施した 機能性繊維を標榜する商品が上市されるなどして いるが,着用時の効果については明らかではない. 本研究は,伸縮性のあるアイテムについて着用 されることを前提として,伸張を考慮して実際の 着用における UV 防御能を検証するものである. UV 加工を施されたストッキングを含むストッキ ングとタイツを試料として,着用によるストッキ ング類の伸張を加味して試料の透過率を測定し, UPF 値と明度,空隙率からストッキングとタイツ がUV 防御能を持つ条件を調べた. 2.試 料 2-1 ストッキング 試料としたのは,ポリウレタン弾性糸にナイロ ン糸を巻いたSCY(シングルカバリングヤーン), DCY(ダブルカバリングヤーン)の複合弾性糸を 用いたパンティストッキングで,ゾッキ(サポー ティ糸100%で編まれたもの)あるいは交編(サ ポーティ糸とナイロン糸の交編),色は各々Black とBeige で,UV 防御加工(以下,UV 加工)を 施したものと,施さないもの3 社 7 種のストッキ ングで,試料の諸元は,商品表記をもとに表1 に まとめた. 2-2 タイツ 商品表記による試料の諸元は,表2 の通りであ り,全ての試料のサイズは「M~L」と表記され ているもので,UV 加工はされていない.使用糸 の太さは 25~80 デニールまでの 5 タイプとし, 色の影響は 30 デニールの同メーカーの同じシリ ーズの商品(試料 No:B30,I30,Y30,P30) で比較することとし,これまでの研究3)でUV 防 御能が高いYellow を含む Black,Ivory,Pink の 4色とした. 3.実 験 着用状態の試料を作成し,伸張前の試料を対照 に,これらの試料の透過率,空隙率,明度,重量 の測定を行った. 3-1 着用状態の試料の作成 ストッキングやタイツを履いた状態に想定され Table 2 Sample tights.
る伸張状態で固定するために,プラスティックフ ィルムで図1 のような挟み込み台紙を作った. 試料の採取は,図2 の脚部ボディ(New Kypris 94R REGULAR,製造元:KIIYA)に実際に着装 させ,履いている状態が保たれるように挟み込み 台紙に両面テープで固定した.採取部位は「伸張 時」試料として,「足首」「ふくらはぎ(足首から 22 cm)」「大腿部(足首 から54 cm)」の 3 部位の 前後左右側面の4 か所で ある.3 部位の周径は, 足首(22.2 cm),ふくら はぎ(33.8 cm),大腿部 (47.1 cm)である.対 照にした伸張していない 試料については,「平置 き」試料として,「伸張時」 で採取した箇所に相当す る3 部位につき各 2 枚ず つを採取した. 3-2 透過率の測定と UPF6)の算出 蛍光発光の影響を受けないUV Transmittance Analyzer7)(Labsphere, UV-1000)を用いて,試
料の透過率を測定した.表中にある UVA,UVB の透過率は,それぞれUVA が 315~400 nm,UVB が280~315 nm の 1 nm毎の透過率の平均値とし た.測定は1 つの試料につき同一部分を 3 回測定 した平均値を採用した.測定した透過率を用い, (1)式より UPF は算出される.
400 290 400 290)
(
)
(
)
(
・Δλ
λ
・
λ
・
・Δλ
λ
・
λ λT
S
E
S
E
UPF
er er (1) Eλ:太陽放射スペクトル (W/m2/nm) メルボルン (38°S) 1990/1/17 正午 Ser (λ):ISO/CIE 標準紅斑作用スペクトル6) T(λ):試料布の透過率 Δλ:波長間隔 (nm) UPF は,2006 年に CIE(172:2006)国際指 標となった唯一の布のUV 防御指標(Ultraviolet Protection Factor)であり,UPF 15-24 が Good Protection,UPF 25-39 が Very Good Protection, UPF 40 以上が Excellent Protection の 3 段階で 評価される. 3-3 空隙率の算出 白紙上にBlack のストッキングならびにタイツ を載せ,表面画像を実体顕微鏡で撮影した.表面 画像の輝度分布(0-255 階調)を閾値 128 で 2 値 化処理し,(2)式の通り,白画像処理された部分 を空隙面積として全面積(1200 ピクセル×1600 ピクセル)に対する白画像の割合を空隙率とした. Beige の空隙率は,Blackの同一製品の値とした. 空隙率(%)= 全面積 白画像面積 × 100 (2) 3-4 明度の測定 カラータイツの明度測定は,測色色差計(Color Meter ZE6000,日本電色工業)を用い,測色条件 はC 光 2 度入射で行い,CIE L*a*b*表色直読式 で行った.明度は L*値で表わされ,理論的には L*=0 は黒,L*=100 は白となる. 3-5 重量の測定 試料作成時に使用した脚部ボディに着用させ, 足首から63 cm 間の脚全体部分を採取し,重量を 測定した. 4.結果と考察 4-1 ストッキングのUV 防御能 表3 に「伸張時」の,表 4 に「平置き」の UPF とUVA,UVB の透過率と空隙率を示す.測定し た試料の中からG2 を例として,透過スペクトル を図3 に示す. 着用時を想定した「伸張時」,伸張していない「平 置き」のいずれの場合も,「足首」「ふくらはぎ」 「大腿部」と空隙率が大きくなるにつれて透過率 は高くなり,それに相反して UPF は小さくなっ た.すべてのストッキングで,Beige より Black の透過率が低く,UPF は大きくなり,濃色である ことがUV 防御に有効であるが,その差はごくわ ずかであった.本試料のうち,伸張していない「平 置き」の場合は,最もUPF の大きいもので 27.6 (A3 Black : UV 加 工 な し ) と Very Good Protection の効果があったが,伸張した着用時の 条件になると,最も高いもので2.7(F2 Black: UV 加工なし)と 10 分の 1 以下になり,ストッキ Fig. 1 Sample frame.Fig. 2 Leg mannequin and Size.
ングではUV を防御する効果がないことが分かっ た.また,試験したストッキングの中にはUV 加 工を施したものもあったが,伸張していない「平 置き」の場合でも,加工なし試料より UPF が高 いというものでもなく,さらに伸張時の UPF は 加工なしとほとんど変わらず,UV 加工の製品に 効果があるという結論には至らなかった. 4-2 タイツの UV 防御能 Black タイツの試料について,表 5 に「伸張時」 のUPF と UVA,UVB の透過率と空隙率を示す. 加えて,試料の代表として図4 に K30 の「伸張時」 と「平置き」の透過スペクトルを示す.
Table 3 UV protection effects of sample pantyhose (stretched) and their porosities.
Table 4 UV protection effects of sample pantyhose (before stretched) and their porosities.
Fig. 3 Transmittance spectrum of pantyhose (sample G2 Beige).
Table 5 UV protection effects of sample tights (stretched) and their porosities.
Fig. 4 Transmittance spectrum of tights (sample K30).
伸張していない「平置き」の場合では,今回測 定したBlack タイツ全ての試料において,代表と して示した図4 の K30 と同じく,UV 領域の透過 率はほぼ0%となり,UPF は 40 を超えた.Black タ イ ツ は着 用 しな い 状態 で あ れば ,Excellent Protection に相当する非常に優れた UV 防御能 を示した.しかし,着用時を想定した「伸張時」 条件では,表 5 に示す通り,同じ試料であれば, 「足首」「ふくらはぎ」「大腿部」と空隙率が上が るほど透過率が高くなり UPF が小さくなった. また,同じ試料の同じ部位で比較すると,デニー ル(糸の太さ)が大きくなるほど透過率は低下し, UPF が大きくなった.タイツの着用時の UPF は, ストッキングとは異なり,最も高いもので 42.9 (F80:「足首」)と UPF40 を超える試料(部位) もあり,「ふくらはぎ」部分でもUPF15 を超える 試料(K30: UPF21.7)もあり,伸張しても UV 防御能が期待できる試料もあることが分かった. 表6 に同一メーカー(同デニール)のカラータ イツの「伸張時」と「平置き」の UPF と UVA, UVB の透過率と空隙率を示し,部位を代表して 「ふくらはぎ」の透過スペクトルを図5 に示す. タイツのUV 防御能は,色のみを変えた同タイ ツで比較すると,色が変わることで透過率とUPF に違いが生じ,Ivory,Yellow,Pink,Black の順 で透過率が低くなり,UPF は大きくなった.伸張 しない「平置き」では Ivory だけが UVA 領域で 他の色よりやや透過率が高かった.「伸張時」では, Ivory と Yellow がほぼ同じで,次いで Pink,Black と,Black が他の 3 色に比べて透過率が概ね低い 傾向にあった. 4-3 UPF と明度,デニール,空隙率の関係 4-3-1 UPF と明度の関係 4 色のカラータイツの UV 防御能に色の違いが 見られたことから,図6 にカラータイツの明度と UPF の関係を示す. 伸張率が異なる「足首」部位と「大腿部」とで は,伸張して空隙率が上昇する分だけ「大腿部」 の UPF は大きく低下するが,明度が高いほど UPF は低下する傾向にある.これまでの研究では 伸張しない布帛について,Yellow の UV 防御能が 高いという知見を得ている 3).今回の試験でも伸 張率が小さく空隙率が大きくならない「足首」部 分では,明度の高いYellow が明度の低い Pink よ りも UPF が高く,布帛と同じ結果が得られた. しかし,さらに空隙率が大きくなると,Yellow の 色の効果よりも空隙率の影響により,Yellow の UV 防御能の有効性は確認できないことが分かっ た. 4-3-2 UPF と重さ,デニールの関係 タイツのUV 防御能は,デニール(糸の太さ) が大きくなるほど高くなる傾向にあったので,デ ニールや使用する繊維の量に相当する重さと関係
Fig. 6 Relationship between L* and UPF of color tights (30 denier).
Table 6 UV protection effects of sample color tights and their porosity.
Fig. 5 Transmittance spectrum of 30 denier color tights at the thigh. Bold line: stretched
があるか検討した.図 7 に「大腿部」での UPF とデニールの関係,図 8 に同じく,「大腿部」で のUPF と重さの関係を示す. 図7 に示すように,タイツの UPF はデニール とは相関が低かった(r=0.45).しかしながら, 図 8 の通り,UPF は重さと有意な相関を示した (r=0.73).つまり,タイツの UV 防御能に影響 する因子は,デニール(糸の太さ)というよりタ イツの重さであり,このことは糸の太さだけでな く,タイツの重さと関係する厚さや空隙率も影響 している表れと考えられる. 4-3-3 UPF と空隙率の関係 伸縮性のあるストッキングやタイツは,着装す ることで空隙率が大きくなり,伸張しない試料と 伸張した後の試料とでは,その UPF は大きく変 化し,伸張による空隙率の変化が UPF に大きく 影響していることが分かった.そこで,評価した ストッキングとタイツ,全てのBlack 試料につい て,「伸張時」および「平置き」について,UPF と空隙率の関係を図9 に示す. 図9 に示す通り,空隙率 10%以上では,ストッ キングとタイツのUPF と空隙率は 2 次関数で表 わすことができ,r2=0.78 と UPF は空隙率と有 意に相関することが分かった.着装することで空 隙 率 が 大 きく な る ストッ キ ン グ やタ イ ツ 類が UPF15 以上の UV 防御能を有するためには,空 隙率10%以下でなければないことが分かった.ス トッキングは糸が細く,空隙率が10%以下になる ものは見られないことから,空隙率10%以下の条 件を満たすのはストッキングにはなく,より糸が 太いタイツ類のみであった.また,UPF と空隙率 の関係について,これまでの研究で得られている 知見は,ポリエステル白布について空隙率が10% 以下であれば UPF15 以上であり 1),素材につい ては,ナイロンはポリエステルより UVB 防御能 が低いということである 1).本試験で,タイツ類 が UV 防御能を有するためには空隙率 10%以下 である必要があるという知見が得られたのは,タ イツ類の素材がポリエステルに比べ UVB 防御能 が 低 い ナ イロ ン で あるに も か か わら ず , 色が Black であったということが大きい要因の一つで あると考えられる. 5.結 論 伸縮性のあるアイテムの実着用を想定して,着 用によるストッキング類の伸張を加味して,実際 に着用した時のストッキングとタイツがUV 防御
Fig. 7 Relationship between denier and UPF of black tights at the thigh.
Fig. 8 Relationship between weight and UPF of black tights at the thigh.
Fig. 9 Relationship between porosity and UPF of pantyhose and tights.
能を有する条件を検証した.その結果,以下の結 論が得られた. 1) 着用時に伸張するストッキングやタイツ類 のUV防御能には,空隙率が大きく影響し, 「足首」「ふくらはぎ」「大腿部」と空隙率 が大きくなるほど,UV 防御能は低下する. 2)ストッキングはタイツに比べて糸が細く, 空隙率の大きさから UV 防御能を有するこ とができない. 3) UV 加工を施したストッキングは,着用時に 空隙率が大きくなることから,UV 防御能は 認められなかった. 4)タイツは空隙率が大きくなると色相より明 度の影響が大きくなり,明度が低いほどUV 防御能は高くなる. 5)タイツが UV 防御能を有したのは,着用時 の空隙率が10%以下の Black のみであった. 6)タイツの UV 防御能はデニール(糸の太さ) には相関せず,重さに相関する. 謝辞:実験の遂行にあたり,埼玉大学理工学部研 究科 森安裕二教授より機器の利用において,お 力添えを頂戴しましたこと深謝します. 引用文献 1) 佐々木,塩原,三島,加賀見,竹下,齊藤; 繊学誌,64,163(2008). 2) 佐々木,塩原,竹下,齊藤;照学誌,93,300 (2009). 3) 塩原,齊藤,佐々木,竹下;繊学誌,65,229 (2009). 4) 塩原,竹下,佐々木,齊藤:繊消誌,50,1080 (2009). 5) 仲島,梶原:奈良教育大学教育実践開発研究 センター研究紀要,21,193(2012).
6) CIE 172; 2006 UV Protection and Clothing.
7) Labsphere Co. Technical Note, UPF Analysis of Textiles, p.7-8.