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駿河湾の深海に生息するタラバガニ類

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Academic year: 2021

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C A N C E R , 1 (19 9 1) 1 卜 13

駿河湾の深海 に生息するタラバガニ類

原 泰 彦 昨今 は水族館 ブームで, あち こちに新 しい水族 館 が オープ ンして いる. マ グロ類 を飼育 して い る 所 もあれば, 世界最大 のサ メで あるジンベイザ メ を飼育 してい る所 もあ る. 水槽 の大 きさ も千 トン 規模 にな ってい る. 建物 や水槽 はい くらで も大 き くで きるが, そ こで飼育 す る動物 はそれ ほどおい それ と手 に入 れ るわ けにはいかない. それで も世 界 中か ら種 々様 々な海洋生物 が 日本 に入 って きて い る. 飼育 が容易 な種類 で人 目を引 きそ うな種類 はそのほとん どが どこかの水族館 で飼育 されてい るとい って も過言 で はない. どこの水族館 もオ リ ジナ リテ ィーを求 め, 一方 で人 々の 目を引 きそ う な展示生物 を探 して い るのであ る. 東海大学海洋科学博物館 は静 岡県清水市 の羽衣 伝説 で有名 な三保 の松原 のあ る三保半 島の先端 に 所在 してい る. 目の前 には日本 で一番深 い湾 と し て有名 な駿河湾があ り, 三保 か ら船 で10- 20 分 も走 れば水深 は1000m を越 え る. 私 たちの身近 にいて まだ何処 の水族館 も飼育 し て いない生物 がた くさんいる. 深海生物 で あ る. 深海生物 と言 うと, どうして も大 きな口を もった 奇妙 な姿 の深海魚 な どを連想 して しま う. そんな 深海魚 を飼育 で きればよいのだが, まだまだ深海 生物 の飼育 は もちろん確実 に捕 らえ るすべ さえな いのが現状 であ る. 当館 は深海生物 の飼育 ・研究 を行 うには最適 の 場所 であ ると考 え られ, 今 まで に も深海生物 の飼 育 を試 みた ことが あ るが, 冷却設備 が不十分 であ ることも原因の一 つ とな り, 十分 な成果 を上 げ る ことがで きなか った.

1989

年 の春 に水 温 を

1- 5

o

C

に維 持 で きる冷 却設備 が完成 したので, 再度深海生物 の飼育 を試 み ることに した. ここで は採集 で きた多数 の深海 生物 の うち タラバ ガニ類 につ いてその現状 を報告 す る. ll 駿河湾で は, 現在数隻 の漁船 が主 にエ ゾイバ ラ ガニ

P aralom is m ultispina

(本種 の肉 は ミル クの よ うなにおい と味がす るところか ら漁師 は本種 を ミル クと呼んで い る) を対象 と した篭漁 を行 って いる. そ こで, 当館 で は焼津 を基地 と して操業 し てい る漁船 に同乗 させて もらい収集 を行 った. な お, 試験操業 のため県 よ り特別採輔 の許可 を受 け た. 採集 には漁船 と同 じ篭網 を使用 したが, 網 目は 2cm で漁船 の12cm に比 べ小 さ く して あ る. 採 集地点 は湾 口近 くの ほぼ中央付近 にあ る石花海 と 図1 船上 に引 き上げ られた龍網 図2 イガグ リガニモ ドキ

(2)

12 駿 河 湾 の深 海 に生 息 す る タ ラバ ガニ頬 呼 ばれて い る浅瀬 の北東 で, 水深 が急激 に深 くな る傾斜 面 の水 深

800- 1000m

の所 で あ る. 篭 は 餌 とな るマ グロの頑 を入 れて海底 に下 ろ し, 翌 日 引 き上 げ るのであ る (図1).

1989

11

∼1990

5

月 の調査 で採集 され た タラバ ガニ類 はイバ ラガニ属 の- リイバ ラガニ

L ithodes longispina

, イバ ラガニモ ドキ

L ithodes

aequispina

, エ ゾイバ ラガニ属 のエゾイバ ラガニ

P aralom is m ultispin

a , ゴ カ ク エ ゾ イ バ ラガ ニ

P aralom is verrillii

, ヒ ラ ア シ ェ ゾ イ バ ラ ガ ニ

P aralom is crist

ata, イ ガ グ リガ ニ モ ドキ

P

aral-om is hystrixoides

の 2 属 6 種 であ った. この うちイガグ リガニモ ドキ (図2) は駿河湾 で は初 めての記録 にな る もの と思 われ る. 駿河蒋 か らは これ ら6種 以外 にニ ホ ンイバ ラガニ属 の ニホ ンイバ ラガニ

N eolithodes nipponensis

, イバ ラガニ属 のイバ ラガニ

L ithodes turritus

, エ ゾイ バ ラガニ属 のイガ グ リガニ

P aralom is hystrix

, ツ ブェ ゾイバ ラガニ

P aralom is dofleini

, の4種 が 現在 まで に報告 されて いる. 当館 には

1987

年 に 駿河湾 にて刺網 で採集 されたエ ゾイバ ラガニ属 の コフキエ ゾイバ ラガニ

P aralom is jaPonica

, の標 本 (図 3 ) が あ るので これ まで に知 られた駿河湾 産 の タラバ ガニ類 は総計 で3属

11

種 とな る. これ らの タラバ ガニ類 の分布密度 や生息場所 に つ いて は一 部 を除 き詳細 は ほ とん ど不 明 で あ る が, 篭漁 を して いる漁船 の漁獲物 や乗船 しての印 象 で はエ ゾイバ ラガニが最 も多 く, それ以外 の種 類 は極 めて少 な いよ うで あ る.

10

年 程度 まで こ の海域 で職漁 の対象 であ った, 大型 で美 味 なイバ

10

c m 図3 コフキエゾイパラガ二 ラガニモ ドキ も現在 で は少 ない. 漁師 は本種 を タ ラバ と呼んでお り, 駿河湾産 の深海性 タラバ ガニ 類 の中で は ミル ク臭 が最 も少 ない とい う. この事 か ら現在比較 的多獲 されているエ ゾイバ ラガこの 資 源量 が今度 どの様 に推 移 す るか興 味 が もたれ る. 調査 は今年度

(1990

年度) も調査海域 を変更 して行 って い る. 現在 まで の調査 で 甲長2cm の エゾイバ ラガニが多数確認 されて いることか ら, 本種 は湾内で再生産 しているもの とみな され る. しか し, 他 の種類 につ いて は- リイバ ラガこの子 供 が捕 れ るとの漁師か らの情報 はあ るが詳細 は不 明で あ る. 今年 にな って今 までの調査 で は採集 さ れた ことのないニホ ンイバ ラガニ (図4 ) が採集 され, イガ グ リガニモ ドキ も一度 に数十尾採集 さ れてい る. 現在 当館 の水槽 には漁船 よ り購入 した タラバ ガニ類 が展示 されて いる. これ らは深海産 で はあ るが水温 さえ低 くしてお けば飼育 は比較 的 容易で, 一年以上存在 してい る固体 もあ る. しか し, 脱皮途 中で死亡す る固体 が多 く, 脱皮前後 の 成長 な どの資料 はなかなか得 る事 がで きない. 野 外 での調査 と並行 して飼育 によるタラバ ガニ類 の 生態 につ いて も何 らかの知見 を得 たい と考 えてい る. 幼生飼育 につ いて もこれまで に六 リイバ ラガ この幼生 を得 たが1週 間程 で全滅 して しま った. 再度挑戦 したい と思 っている. 他 の タラバ ガニ類 につ いて も同様 であ る. なお養殖研究所 の小 西光 一博士 には幼生 の形態等 に関す る種 々の情報 を提 供 して頂 いた. これ ら深海性 タラバ ガニ類 の飼育 は水族館 での深海生物 の展示 ・ 飼育へ の挑戦 に端 図4 ニホ ンイパラガニ

(3)

毎 原 泰 彦

を発 した もので あ ったが, 今後 は幼生 の飼育 ・ 育 えて いる. 成 を含 め, 駿河湾 にお けるタラバ ガニ類 の生態 ・

生活史 ・ 分布等 につ いて知見 を得 て行 きたい と考 (東海大学海洋科学博物館)

参照

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