The JaPanese Jo”rnal げ Psychonomi ‘S‘ience 1986
、
Vol.
5,
No 1.
15−
25「
独 立
」
そ
れ
と
も 「
相
互
作 用
」
一
・
一
一
π メ カ ニ ズ ム の忘
れ ら れ た問
題
星
宗
雄
゜2) 北 海 道 大 学,
Independence
or
interaction
?
The
problem
forgotten
in
the
study ofthe
Stiles
’ π mechanisms.
Muneo
MITsuBosHI
∬oんんaido ひ%勿θ〆5勿
Studies on the independence (Qr
interaction
)of theStiles
’ π 皿 echanig.
ms,
which werepopular in the 1960
,
s,
have declined remarkably in number since the 皿 iddle of the 1970,
s.
Recent inactivity
iu
thatfield
couldbe
ascribe (1
to the cllange in the paradigm in research,
from the paradig 皿 of the trichromatism to that of the opponent
−
colors theory.
It can besaid that the works of Pugh (1976)and King
−
Smitll and Carden (1976)have provided the i皿一
petus for such a change in the paradig皿
.
In the present report
,
referring to theStiles
, π mechanisms,
an attempt was made toreanalyse the results obtained under the classical paradigm
,
particulary the results showingindependence
,
in ter皿 s of the models of 〔ered under the new paradigm.
Key
words :Stiles’
π 皿 echanisms,
independence ,interaction
,
adaptation ,detection
,luminance
system
,
chro 皿 atically−
opPonent system,
■
§
1.
序色覚メ カニ ズムの相互作 用の問 題 (「独立
一
相互 作 用 問 題 :independence−
interaction problem )は, 長い色覚研究の歴史の申で は比較 的 新 しい領 域に属 する
.
も とも との問 題 意識は Stilesの π メ カニ ズムの研究に端 を
発してい るの で
,
その研 究史はせ いぜい40年と言え る.
良 く知られて い る ように,
Stiles
は所 謂2色 閾 法 (two−
color threshold technique )に よっ て 色 覚メカニ ズ ム
(π メ カニ ズムと名 付け られた)の分光 感 度 及びその他の 特 性につ いて尨 大 なデ
ー
タ を提供して来た.
その際当初1
) 本 論 文を作 製する にあた りまし て御 指 導い た だ きま し た北 海道大学文 学 部 相 場 覚 教 授 及び こ の論 文の基 礎 になっ た粗 原 稿 を 読んで いた だ きま した東 京 大 学 教養 学 部 鳥 居 修 晃 教 授に 深謝 致し ま す.
2) 現 住 所 :Vision Research Laboratory
,
KelloggEye ¢enter
,
TheUniversity
ofMichigan,1000
Wal1三St
.
Ann Arbor, MI 48105
,
U.
S、
A、
はその 「独立性」 を前 提とし て多くの仮定が な さ れた が, 後に 「相互作 用」の可 能 性が示 唆 さ れる に到っ たの である.
こ の相互作 用の問 題につ い て は , その後さ まざま な方 法 に よっ て多 くの研 究が な さ れ た が, 現在で はこの相互 作 用 問 題を直 接 中心課 題に据 えた研 究は 殆 ん ど 見当らな い.
こ う し た実状 は 色 覚 研 究の こ の領域 に おい て何 らか の研究パ ラダ イムが変化し た可能性を示 唆して いる.
本 報告の 目的は,
色 覚 研 究の一
領 域に生じ たと思 わ れ る研 究枠組の変 化とその背景の 分 析 及 び新しい理 論 的枠 組の 「古 典 的」 な相互作 用 問 題へ の関 連 性, 特に独 立 性を示 し た研 究 結 果へ の関連性につ い て私 論を述べ ること であ る.
§2.
相互作 用 問題 とその意 味 2・
1
相互作用 問 題 相互作 用 問 題は 元 来 Stilesの π メ カニ ズムの研 究に 由 来 するものである.
従っ て色 覚メ カニ ズム の相互作用16 基 礎 心 理 学 研 究 第5巻 第
1
号 問題 とは即ちπ メ カニ ズムの相互作 用問 題 の こ とで あ る.
3) 相互作 用 問題 とい うの は簡 単に言 え ば,
あるメカニ ズ ム (例え ば ns メカニ ズ ム (後述):ほぼ赤錐体と考え て 良い)の順 応 (adaptation )が,
他の種 類の メ カニ ズム (例 えば π4:ほ ぼ緑 錐 体 と考 えて良い)の順応に よっ て 影 響を受ける か否か, とい う問題である.
閾 値との 関 連 で言 えぱ, ある光 刺 激に対 する閾 値は,
その 時その 刺 激 に対し て最 も感 度の高い (最 も活 動 的active な)メ カニ ズム だけに よっ て決 定される の か, それと も複数の 異な っ た種 類の メ カニ ズム が 閾値の決 定に参 加し てい るのか ど うか とい う問 題に なる.
もし他の種 類の メ カニ ズム に よっ て影 響を受 けなけれ ば, 換 言 す れば当 該 刺 激に対 する閾 値が その時 最 も感 度鰍
ハ
0尸
D ユ む 畚 〉 三 ゜・ = $ 曽 日 ラ a (x
/
\
えO Ao Wave}ength 1.
0 0.
5 の高いメ カニ ズム の活 動 だ けに依 存 するの であ れ ば, そ れ らの メ カニ ズム は 互い に 「独 立 (independence
)で あ る」 と言わ れ,一
方そ うでな け れ ば何 らか の 相 互作 用 (interaction)が存 在 する とい うことに なる。
こ の 時 同一
種 類の メカニ ズム間の相互作用 は普通 「相互作 用」 が ある とは言わ ない.
そ れ は寧ろ 「独立」で あ るこ と を 示 す 示標である.
図1は仮想的なπ メ カニ ズム (π,t,
πのの間に考えられ る い くつか の相互作 用の形を図式的に示し た ものである (Boynton
,1963
).
図1
(a 左 )の実 線は, 相互 作用 が全く ない場合の結果,
図1
(a 右)の 上の実線は 完 全 (線型) 加重, 下の実線は確 率 加重 (probability summation > の場 合に予 測さn る結 果である.
(b
)及 び (c)の点線はゲ t.
v.
i.
(threshold vs intenslty>曲線の 直 線部 及 び 過 渡 部に見ら れる相互作 用である.
これ ら は 全て加 重 (sum−
mation )とい う形の 相互作 用で あるが, 抑制 (inhibi
−
tion)とい う形の相 互 作 用 も 見 ら れ る.
2・
2 相 互作用問題の意 味 (b)26
。3
図2は古 典 的な Young−
Helmholz の 3色説を模 式 的 に表わ し た もの である.
網膜に 3 種類の受 容 器 (R,G
, B >を仮定し,
その興奮が そ れ ぞ れ 大脳に 達 し て, そ こ噛
Color sensat 量on Log Mμ (c)气
z 凶3
Log Mμ 図1.
仮 想 的な π メ カニ
ズム (rra ,πのの間に考え ら れ る さ まざま な形の相互作 用 (加 重) (Boynton,1963.
この図は Enoch,1972
か ら 引 用)3
) 最 近で は 「錐 体 相互作 用 (cone interaction)」 と呼 ばれる こと も多い.
人 間の網 膜 中心窩に は 光 受 容 器 (視 細 胞)と して錐 体以外にない の で, あら ゆる視 覚 的 反応 (visual resPonse )には何らか の形で錐 体が関 与 し てい るこ とは当然であるが, 後 述 するよ うに錐 体 と π メ カニ ズ ム とを完全 な意 味で 同一
視できない の で,
閾 値 (特に2
色閾)で 示 さ れ た相互作用は 「π メ カ= ズムの相互作 用」と呼ぶ方が望 ま しい ように思 わ れる
,
R G B図 2 古 典 的 な Young
−
Hel皿 holtz の 3色 説の模式図
.
各 基 本メカニ ズム (錐 体.
R ,
G ,
B ) か らの信 号 が 「別 個に」,
「分か れて」あるい は 「独 立 」に大 脳に達する とい う点が こ こで は重 要である.
4) Young・
Helmhol.
tz の 3色説では, 大 脳に おい て も そ れ ぞ れ赤の感 覚,
緑の感 覚,
青の感 覚を生 じ る部 位 が異な る と仮 定さ れ る.
Helmholtz (1896
)は第1
及 び第2色 覚 異 常 者 (そ れ ぞ れ 赤 錐 体 及び緑 錐 体が欠 損 して い る と考 えられる)の黄 色の知 覚につ い て, 感 光 色素は欠損(又 は融 合)して い ても, それ ぞ れの 色の感 覚を 生 じ る大 脳部位に到る 「チ ャ ンネル 」は そのま ま 残っ てお り,
ス ペ ク トル の 中 及 び 長 波 長 領 域に反 応 す る感 光 色 素は 1つ で あっ て も, 「赤」 と 「緑」の両方 の チ ャ ンネル (及 び 大 脳 部 位 ) が 活 性 化 されるためで あ る と説明し た,
(Hurvich,1972
,P.606
).
t三星 :「独 立」そ れ とも 「相互作用」
17
,
で 色の感 覚 を生 じ るとい うも の である4).
本 報 告の 主 題 との関連で重要なことは, 普段は余 り強 調 さ れて い ない が,
3種 類の受 容 器からの 興 奮が 「そ れ ぞ れ 別 個に」, 「分かれて」, 「独 立に 」大 脳に 達する, とい う点で ある.
これは言 うまで もな く.
各 受 容 器 (錐 体)の間には 「相 互 作 用が ない」 又は 「独立である」 とい うこ とに他な ら ない.
今 「色の 感覚」を 「閾 値」に代 え (閾 値は寧ろ 明る さ 感覚で ある が,
上に示し た3色モデ ルの 「色の 感 覚」 は 明る さ感 覚をも 含 む 概 念である), さ ら に 閾値が大 脳 レベル で決 定 される とい う仮 定を認め るの で あれば, こ の 3色モ デル は, Stilesがその独 立 性を前 提と し てπ メ カニ ズムの研 究に着 手し た当 時抱い てい た問題 意識と軌 を一
にする もの である.
即ちStiles
は古 典 的な Young−
Helmholtz の 3色 説の 仮 定を踏襲し, 当 時 信 頼できる デー
タのなか っ た所 謂 基 本メカニ ズム (fundamentals,
今日の用 語で は受 容器 又は 錐体に相 当 す る)の特性 (特 に分 光特性)を 明 らかに し よ う と考え ていたこ と は容 易 に 想像でき る.
実際に Stilesは
,
He工mholtz 以 来の 「線 要 素 (lineelerlent )」5) の
概 念を継承
,
発展さ せ, 2色 閾 法に よって得られた各π メ カニ ズム の 分 光 感 度 曲 線を 用い て
,
視感度関数 (琶), 波 長 弁 別, 色 度 弁別楕円 な どの 導出を
試み て いる (Stiles, 1946;Wyszecki & Stiles
,
1982 にその解 説 が ある)
.
§
3。
色覚メ 力ニズ ム の相互作用 に 関する精神 物 理 学 的 研究3
・
1 Stilesの π メ 力ニ ズム5
>Stiles vcよっ て提 唱 さ れた線 要 素 (修 正 線 要 素 modi・
fied
Iine element と呼ばれる)は以 下の式で 表わ される
.
・吋誓
・]
2 +[
95
’tr
・(・)]
2 +[
δ審
・(・・]
2 … , こ こ で, ζ(P
)=
9ξ(P
)(ξは各メカニ ズムに対し て ξψ)≒1
で表わ さ れ る関 数一
→ 本 文 中の ζ一
関 数に対 応1
十9P
する.
従っ て本 脚 注の ζ と本 文 中の ζ と は絶 対 値 が 歟 る・
肩
駅 臨 ・R
・=S
(w ,
・一
附 恥 翫W
’ λ は比較すべ き2
つ の 色 刺 激の 分 光エ ネルギ分 布,
Ra
は赤メカニ ズム の 分 光感度.
G ,
Gi ,
B ,
Ba
につ い て も 同 様 ), ρ,
r,
βはそれ ぞ れ赤, 緑,
青メカニ ズ ムの極限フ ェ ヒナ
ー
比 (li【niting Fechnerfraction
)に比 例 する定 数で
,
ρ:γ:β螺O.
78:1
:4.
46
の 値を取 る.
上の式は刺 激 強 度が 十分 高い場合に は・虚
[
÷
欝
+[
%
“]
2・[
夥
]
2− F2
となる.
いず れの式で も線 要 素 (δ∫)がある一
定の値 (F)に達し た時2つ の色 刺 激 が 弁 別されると仮 定され る.
上に述べ た よ うに色覚メ カニ ズムの相互 作 用 問 題 は 元 来π メカニ ズム の 相互作 用 問 題で あ り,π メカニ ズムを離 れてはこ の問題 を 考 える ことはでき ない.
し か しπ メカ ニ ズム につ い て はSti
工es 自 身の もの (Stiles,
1978)も含 め て他に詳 細 な解 説 が あるので(Marriott,
1962;Enoch,
1972
),
こ こで は最小限の紹介に止 め るこ とにする.
ある順 応フ ィー
ル ド(波長 μ,強 度M
μ)の中心部で テス ト光 (波 長 2)の 閾 値を求め る時,
その閾 値 強 度N
, は一
般に・
v,=
f
(λ, μ,N
μ) と書 ける (Stilesの場 合,一
般に λキμ である の で特に2色 閾 法 two
−
co 「or threshold technique と呼 ぼ れて い る).
この 中で本 主題 との関 連で重要なの は ftf” の関 数 とし ての N えの曲線で あ る。
図3
は,
λ=
475nm,
μ・
=
550n
皿 の時のAr
:− M
μ 曲線である.
こ れ が 前 述 の t.
V,
1.
曲 線である.
全 体 として の曲 線は 114,
の単調 増 加 関数で は な く, 途 中で一
時 水 平 となる部 分 が 見 られる.
その部 分を は さ む 上下 2つ の テン プレー
ト (ブラン チ と も呼 ぽ れる)はそ れ ぞれ 異 なっ たメ カニ ズム の存在を示 して い る.
Stilesはそ れ をπ メ カニ ズム と呼ん だのであ る.
こ の時 重 要 なこ とは, 各テ ン プレー
トは, 位 置こそ 違 え その形は全て 同じである,
とい うことである.
その形 は 特定の 関 数 式 で 表現するのは困 難であるが,
(近 似 式 は脚 注5
)参 照 ) ζ一
関 数と して表に ま とめら れて い る (Wyszecki & Stiles,
1982,
p.
532,
表1
(7.
4.
3)).
C・
一
関数を用いれば 各 (i
番 目の)テ ン プレー
ト は 以下の よ うに統一
的に記 述できる.
』丶「t2=
[πiA・
ζ(ハ4P・
lli
μ)]−
1 (1
) こ こ で πih ili, はそれぞれ ¢ 番 目の テ ンプレー
ト=
π 1σ齢
3 ユ0−
4 18−
5 10−
6ZERO 10’
6 lO−
4 10『
2 FIELD LUMINANCE (ENERGY UNITS )図 3T
.
v.
i
曲線に見られる 2っ の テ ン プレー
ト(A =
475
nm,
rl=
550 nm ) (Stiles,
1961)
18 基 礎 心 理 学 研 究 第 5巻 第
1
号表 1 π メ カニ ズムの 「独 立
一
相互作 用 」問 題 に関 する精神 物理学的 研 究実 験 手 法
sum 皿 ation index
報 告 者
Ikeda
(1963
)Ikeda
(1964
) Boynton et aL (1964
) Boynton et al.
(1966
) 相互作 用の 有 無 × × × ×OOOO
テ ス ト刺 激の大 き さ及び持続時間 30广,
12.
50r
100
nユs 30厂
12.
5−
100ms,
1
250ms
1°
50ms,
after−flash
又はマ ス キン グ spatial sensitization エ ツ ジ効 果 Alpern & Rushton (1965) Yellott& Wandell (1976) Sternheim , Gorinson & Markovitz (1977
)Foster
(1979
) XXOO
O
McKee & Westheimer (197G)Bender
(1973
) Mitsuboshi & Mitsuboshi (1980) Stromeyer (1983) Matthews (1967) Mitsuboshi (1983) 等価背 景 光 Du Croz & Rushton (1966) ×OXO
(×) × ×1
° ×1Q,
10ms P ×3°, 10ms1
°12’
,30ms
O.
6°
,
25ms 仮現 (β)運 動.
l
Foster & Idr三s (1974
)塾
<2’,
10ms 1.
8’
1Hz,
2.
5’
,
20ms2’
50ms
, 時 間加 重3’
10ms
,
5’x1.
76
°,
20ms (5P
×52、
8厂
) 2° 500 皿 s ,O
l
−
,… ・
Krauskopf & Mollon (1971) (×) 1°.
.
.
.
, テス ト刺 激の大 きさは い くつ かを除いて直径の大きさであ る.
○ は相互作 用を示し た結 果,
× は独 立 性 を 示し た 結 果を表わす (○× はそ れ が 刺 激 条 件に依 存し たこ とを示 す)、
(×)は各π メ カニ ズムが それ ぞ れ に 固有の時 間・
空間加重特 性を持っ て いること を示 唆し た結 果を示 す.
メ カニ ズムの テス ト感 度test se且sitlvity 及び フ ィー
ル ド感 度 丘e!dsensitiviy
である.
ζ一
関 数はM
,=
0 の時 ζ= 1M
ρ=
Diμ一
1の時 ζ=,
1 を与え るので,
M.
u=
0の時疏 λは 」番 目の テ ンプレー
ト の絶 対 閾 ( 「「al1一
1) を 表 わし ,一
方・
鳩=lli
μ一
1 の 時 Niユ = 10πiii (絶 対 閾の10
倍 )と な る.
今テス ト波 長 λを 変 え れ ば, (1
)式よ り, 各テンプレー
トは その形を変え ずに,
分 離さ れてい るメ カニ ズムの λに対 する感 度 (πの だ けに従っ て上下に移 動し,一
方 p を変えれ ば, 同様に その形 を 変 える こと な く水 平に平 行 移動すること が予想 さ れる.
こ の仮 定 (移 動 則 DisplacementLaw
と 呼ば れ る)こ そ,
π メカニ ズ ム の独 立 性を示 すものに他 な ら ない (λ又は μが変 化 す れ ぽ・
一
般に他の メ カニ ズムに対 する感度も変化 する か ら, もし相互作用があ れば,
上の よ うな移 動 則は成 立しないはずである)、
3・
2 相互作用問題に関 する精神物理学的研究 上に述ぺ た よ うに ,Stiles
の π メ カニ ズムは一
応 「独 立性」 を前 提と して構 築 された もの であるが, その 「相 互作 用.
」の可能性 を 最 初に示 唆 し たのは他 な らぬ Stiles 自身で ある6).
相互作 用 問 題に関 する研 究は多 数に 上 り,
その 1つ1
つ を 詳 述 する余 裕は ないが, 表1
の よ うに ま とめ ること がで き る (初 期の研 究に つ い ては池 田, 1966 を参照の こ と).
この中で最 も組 織 的で, かつ 後の研 究の先駆的役割を 果た し たの は summation index を用いた研 究で あろ う.
2っ の異 なっ た波 長 を (時 聞・
空 間的に)重ね て テス ト光 と す る技法 (Boynton
,
lkeda & Stiles,
1964;Ikeda
,
1963,
1964) (今日 で は テス ト混 合 法 test 皿ix・
ture technique と呼 ばれて い る)及び summatien
index
とい う極め て明 快 な 分 析 法, そして そ の 結 果の 解 釈は
20
年 以 上 経た今 日でさえ 非 常に示 唆 的である.
さ ら にBoynton,
Das
&Gardiner
(1966
)で 用い ら れた 2つ の異 なっ た波 長の フ ィ
ー
ル ドを重ねる技 法 (フ ィー
ル ド混合法 field mixture technique と呼 ば れる)は, 今 日で
6) Boynton et a1
,
(1964)の論 文に,
その研 究が,
Sti]es が カ ナ ダ国立物理研 究 所 在 任 中に着 手して いたのを 継 承し た もの で ある と銘 記されてい る,
又今日相互作 用 を示 す もの とし て多 くの人々 の関心 を惹い て い る現 象 もStiles
が源 泉となっ て いるものが多い (図 5).
「
三星;「独 立」そ れ と も 「相互作用 」
19
は テス ト混合法に も増し て多 く用い られて いる (例えば
Pugh , 1976)
.
又 抑 制 的 な 相互作 用が 生 じ るか 否かが用い られ たテ ス ト刺 激の 持 続 時 問に俵 存 する とい う結果
(lkeda
,
1963,
1964)は,
現在に到っ て 漸 く一
般 的と なりつ つ ある (例えば
KingS
皿ith
&Carden.
1976).
これ らの研 究で は いずれも相互作用 (加 重 又は抑 制 ) だ け で な く独 立 性を示 す 結 果 も得られて お り
,
特にその刺 激 条 件 (上に述べた テス ト刺 激の持 続 時間, フ rf一
ル ドの 輝 度レ ベ ル,
重 ね合わせ る刺 激の波 長 差等)へ の依存性 を議論の終 着点とせ ず,
寧ろ出発点 とし て積 極 的にその 根底にあるメ カニ ズム と結び付けた点で は現 在の研 究ア プロー
チ その もの で あ る、
After
−
flash effect,
spatial sensitization ある いはedge 効 果 を 利用し た研究 (これ らの研 究で は 主 として
独立的な 結果が得られてい る)は
,
π メカニ ズム の相互作 用 問 題に時 間
・
空 間 的 な 要 因 を 導 入し た点で重要であ る。 特に spatial sensitization は所 謂 受 容野 (receP−
tive field)の表われと されてお り,
そ れ は 又網 膜 あるい は網 膜 以 後の細 胞レ ベ ル に おける 生 理学 的な研 究 結 果 と 密 接に結び付 くこと を 意味し て いる.
今日の こ の 問 題に 関 する精 神 物理学 的 研 究は, 当 時 (1970
年)と 比べ生理 学 的な研 究に より一
層 大 きな影 響を受け て お り,
その意 味で新た な視点 (特に最近の生理 学 的 知 見に照 らし合 わ せ た)か らの再 考 が 必 要であ る と思 わ れる.
§4.
最近の動向 と 反対色シ ス テ厶 表1
に示 さ れ てい るよ うに πメ カニ ズムの相互 作用 問 題に関 する研 究は,
1970
年 代 前 半 を境に,
そ れ 以 後 著し く減少し た。
少 く と も 「独 立か相互作 用か」 とい う問 題 提 起は な さ れ ていない,
そ れ は簡単に言え ば 「相ff作 用 がある のが 当然」 と なっ て しまっ た か らである.
ではこ の ような 急 激 な 変 化の背 景は何か.
前述 し た よ うに今日 の精 神物 理 学 的 研 究は以 前に も増し て生 理学的 な 研 究の 結 果に影響を 受 けてい るの で, (電 気)生 理 学 ある い は解 剖 学 的な新しい発 見 が その背 景に あるこ とは否 定でき な い.
し か し精 神 物理学的研 究に も 「流 れを変 えた」研 究 を求め るこ と がで きる,
それはPugh
(1976) と King−
Smith
&Carden
(1976)である.
奇しく も 同 年に発 表 されたこれ ら2つ の研 究は , その後そ れらに続い た研 究 が複 雑に錯 綜し て い る のとは対 照 的に,
そ れ ぞ れの問 題 意 識の点で かな り異 なっ て いた ように思われる.
メ カニ ズムを 対 象と し, 特に フィー
ル ド加 算 性の観 点か ら分析を行なっ て い る.
若しπ メ カニ ズム が 基 本メ カニ ズム (錐 体 又は受 容 器 )であれば,
その順 応は フ ィー
ル ド刺激 (順 応 刺 激 )か ら吸 収 さ れ た 光 量 子 数 (quantUln catch )だ けに依 存し, フ ィー
ル ドの分 光分 布には依 存し ない はずであ る (単一
変 数の原 理PrinciPle
of Univa−
riance ).
7) 従っ て} 2つ の フ ィー
ル ドを重ね て提 示 する 時, その波長がど れ 程異なっ て い よ う と, その テス ト閾 (当 該メ カニ ズ ム の順 応の 示 標 )に及ぼす効 果は,
各フ ィー
ル ドを 単 独に提 示し た時の効果の加算と し て表わ さ れな けれ ば ならない.
し か し実 際に は条 件に よっ ては加 算 性が成立しない 場 合が 見 ら れ,
Pugh (1976)は その結 果か らStiles
の π1 メ カニ ズムは基本メ カニ ズムで は な い と結 論 付 けて い る,
彼は 図 4に 示 さ れてい る ような 所 謂 「2サ イ ト順 応 (two−
sites adaptation )モ デル」 を提 案し, その モデル に従っ て定 常 的な現 象だけで な く, 時 間的 な要因 を含む ダイ ナ ミヅ クな π! メ カニ ズム の 順 応異常現 象をも うまく説 明して い る6)
.
(ll3)Cone
工st 8iしe 211d sitedetection
4・
1
Pugh 〔1976) Pugh (1976)の問 題 意 識は, Stilesの π メ カニ ズ ムが 果し て 「基 本メ カニ ズム (錐 体 )」である と考えて い いか ど う か,
にあっ た.
彼は 直接 的に は Stiles の π 1 (青〉 図 4Pugh (1976
)の π1 メ カニ ズ ムに関 する2
サ イ ト順 応モ デル.
第 1順 応サ イ トはB 錐体 (こ こで は π 3 を想 定 )の光 量 子 吸 収だけに 依 存し (従っ て単一
変 数の 原理に従う〉,一
方 第2順 応 サ イ トはB錐体と (G
+R
)錐 体 (それ ぞ れπ4,
π5を想 定)の光量子吸収の差に依存する.
(Pugh
,
1976,
著 者に ょり一
部 修正).
7
) Rus hton,
Spitzer
&White
(1973)で は 以 下の ように定 義さ れてい る
.
5‘
The
intrinsic response of
areceptor
depends
uponits
effective quantumcatch
but
not upon what quanta are caught ”.
こ こ で
“
intrinsic response”
と な っ てい るのはカ メな どの網 膜で見 られる網 膜水平細胞か らの フ ィ
ー
ドバッ ク的 なシ ナ プス結 合 が ある ため である
.
又“effec
−
tive quantu 皿 catch ”
は 感光色素に よっ て吸 収され た全て の光量 子がその効 果 (
bleaching
)を 引 き 起こす わけで は ないからである.
8)これ らの問 題につ い て, 過 日著 者に よ る報告が行な わ れ た (文 部 省 科 学 研 究 費公開シ ンポジ ウム , 代 表 者 慶 応大学吉田俊 郎 教授
,1985
年12
月14
日.
於慶応 大 学).
近々 その議 事録 が 公 刊さ れ る予定なので, 詳細 は そ れ を参 照さ れ たい、
20
基 礎 心 理 学 研 究 第 5巻 第1
号 この モ デル の 主眼 点は, π1(青)メカニ ズ ムが基本メカ ニ ズム (錐体 〉では ない とい うこと と同時に, その順 応 に黄 色メ カニ ズム (緑メ カニ ズ ム [π4]十 赤 メ カ ニ ズム [πs])が拮 抗的 に 関 与する と仮 定し て い る こ とである。 この拮抗的なメ カニ ズム は, 後に 通 常の 意味の, 即ち 「色相の打ち消し (hue
cancellation )」 に よっ て示され る所 謂反対色シ ス テム (chromatically−
opponent sys.
tem )と同
一
の メ カニ ズム で あるこ と が示 唆 さ れ た (Pugh
&Larimer,
1980
).
その 後π4(Sigel
&Brousseau,
1982
;Kirk,
1985),
πs(lngling & Martinez,1981)
,
πs「
(Wandel1
& Pugh,
1980b)メ ヵ ニ ズムにっいて同様の 結果が得られて い る (ただし,Sigel
& Pugh (1980)で は πs につ い て,
Reeves (1982
)では π4 につ い てそれぞれ 単一
変 数 的 な結 果 が 得られた),
Wanda11
& Pugh (1980
a,
b
)では, 反 対 色シス テム の関 与がテス ト刺激の持続時 間に依 存 する こと が示さ れ た、
そ れに よ る と持 続時間の長 い テス ト刺 激 (200ms
) を用い る と反 対 色シ ス テ ム の関 与が 生 じるが, 持 続 時 間 が 短い場合 (10ms )に は 反対色シ ス テムは関 与せず, 閾 値は専 らフ ィー
ル ド加 算的 シ ス テ ム (丘e 工d−
additive pathway と呼 ばれ る)だけで決定される.
し か しSigeI
& Brousseau (1982)で は短いテス ト刺激 (10
皿 s)で も t,
v.
i.
曲 線の各ブランチ の「移 動 則 (前 述)」 は成立 しな か っ た.
4・
2King−Smith
&Carden
(1976
) も う1
つ の 流 れの (真の しか し小さい)源は,Sperling
& Harwerth (1971)であるが, その流れ を確立し た のは
King−
Smith &Carden
(1976
)で あ る9).
彼 らは白 色ブイ
ー
ル ド (3200K,
1000 td)上 で , 1°
,
200ms の テ ス ト刺激を提 示し, 分 光 感 度 曲 線を求めた ところ,
ス ペ ク トル の 青,
緑, 赤 領 域で小 さなピー
クを持つ 所 謂「狭 帯 域 (narrow−band
)」 型の曲線が得 られ た,
彼 らは, その うち 緑と 赤 領 域 に おける分 光 感 度を,
Sperling &Harwerth
(1971
)に ならっ て, 赤 錐 体 と緑 錐 体 の 間の 抑制関 係を示すもの と解釈して い る.
その際Sperling
&Harwerth
(1971)で は どこまで も 「錐 体 間の郷制作 用」 とい う枠に止まっ ていたの に対 し,King−Smith
&Carden
(1976
)で は は っ き りと 「反 対 色シ ス テ ム (OP・
ponent
・
color system )」 の表 わ れであると 明 言 し て いる
,
即ち明るい白 色フ ィー
ル ド上で閾 値 を 求め る時, 刺激の検 出は反 対色シ ス テムに よっ てな される とし た の で
あ る
.
King
−Smith
&Carden
(1976
)論文で,
上の よ うに「検 出に おける反 対色シ ス テ ムの 役 割」 を強調し た こ と 以 上に重 要なの は
,
そ れ が刺激 (特に テス ト刺激 )の 時 間・
空 間 特 性に依 存 するこ と を示し た点である。 ま と め ると以 下の よ うにな る.
(1> テス ト刺 激の面積が 小 さい時 (例 えば,
O.
05°
),
あるいは持 続時聞が短い場合 (例えぽ10ms
),
検 出は非 反対色シ ス テム (nonopponent system , 彼 らは 輝 度シ ス テ ム lu皿 inance system と 呼 んで い る)に よ る.
(2
) テス ト刺 激が大 き く (例え ば1°
) 又 持 続 時 間が 長い場 合 (例え ば 200ms ),
検出は 反 対 色シ ス テムに よ る.
(3) 黄 色 (500〜
580n 皿 )の テス ト刺 激に対し て は非 反対色シス テム の 方が 感 度 が 高い.
(4) 白色フ ィー
ル ドは,
特に輝 度シ ス テ ムを順 応 さ せ易い の で相対 的に 反対 色システムの検 出力 (感 度 ) を 増 大 させ る.
こ れ らの研究の大きな特 微は, 刺 激 検 出の刺 激 条 件 依 存の 様相が割合直 接 的に 反 対 色 細 胞 (spectrally−
OP−
ponent ce ]1又は Gouras (1968)の分 類に従え ば トー
ニッ ク細 胞 (tQnic cell)と非 反 対 色 細 胞 (spectrally
−
non−
opPonent cell
,
ま た はGouras
の フ ェー
シ ッ ク細 胞,phasic ce11 )の 反応に結び付 け られてい る点であるlo )
.
こ うし た精 神 物 理 学 的なチ ャ ン ネル と生 理 学 的 な 細 胞 と の聞に1
対1
の対 応 関 係 を敷 く傾 向に対し て は異 論 もあ るが (例え ば Ingling,
1978), 彼らの研 究が以 後の こ の 領 域の研 究に大 ぎな影 響 を 与 えたこ とは否 定できない.
4・
3
そ の後の展 開Pugh (
1976
)及 び King−Smith
& Garden (1976>に端 を 発し た研 究の流 れは
,
その も と も との問題意 識の 相 違に も抱らず, その 後.
圧い に接近 し, 現在は非 常に混み 入っ た状態 と なっ てい る,
その 「源」の判 別 法は簡 単に 苫 え ば,
フ ィー
ル ド混 合 (field
mixture )の技 法が用い られ てい れば Pugh (1976)の, 刺 激 (特に テス ト刺 激 ) の時間・
空 間 特性が強調さ れ ていれ ば King・
S
皿 ith &Carden
(1976)の流 れに属 すると考 えること である,
ど ち ら も「反対 色シ ス テム」 を仮 定して い る点で一
致して お り, こ の接近は必 然 的 な 結 果 と言 え な く もない.
しか し, Pugh (1976)の モデル (図 4)はい わば 「直 列 的」で あ り,
一
方 King−
Smith &Carden
(1976
)の モデルは 「並列的 」である
.
前出の Wandell &Pugh (198010) 最 近の論 文の中には
,
純粋に精神物理学 的な実 験 内容に対し て, 「反対色細 胞 (oppOnent
・
celor cell)」の表 題が 用い ら れて い る もの さえある (例 えば Finkel
−
stein &Hood ,1982
).
1 9) こ の論 文におい て Stilesの π メ カニ ズムへ の 言及 は あるが, それは単に彼 らの モデル とは 相 容れ ない 概 念 として扱 わ れて い る.
三星: 「独立」 そ れとも 「相互作用」
21
[πメカニ ズムの順 応異 常 ]
Pugh (1976) (直列モ デル )
King
−
Smith & Carden (1976> ([検 出に於け る色チャ ンネル と 輝 度チャ ンネル] 図 5 最近の色覚研 究に おける
一
断 面 図 a ,b)やSige1
& Brousseau (1982)で 「並列 的」 な仮 説 が 始めて提 出されたが, その意 味で は両 派 の 接 近はPugh 流の研 究の King
−
Smith & Carden 流の研 究へ の接近 と考える こともで ぎる.
図5は最近の順 応メカニ ズムあるい は刺 激の検 出の メ カニ ズムに 関 する研 究の流 れを模 式 的に 示し た もので あ る.
図に示さ れて い る さ ま ざま な順 応 異 常 現 象, 特にその ダイ ナ ミッ クな側 面 (一
過性第1
及 び第3
色 覚 異常現 象 等)につ いて はここでは 触 れる余 裕は ないが, こ こ で も最近は テス ト刺 激の時 間・
空 間 特 性へ の依 存 性が議 論されて い る(例 えば Reeves,
1981).
これ らの現 象 を 扱っ た個々 の文 献は 今リス トア ッ プで きないが, Mollon (1982)に詳しい引 用 文 献の リ ス トがある の で, それを参 照された い,
§5.
古 典 的 な 相互作用 問題へ の再アプロー
チ5・
1
パ ラダィ厶の変化 この よ う に見て くる と,
古 典 的な 「相互作用問 題」 が 急激に色 覚 研究者の関心 か ら遠ざ か った の は, 反 対色シ ス テム とい う, それ自体 「抑 制 的な相互関 係 」である概 念が前 面に出て きた ため であるこ とが わ か る.
そ れ は又 相互作 用 問題 に おいて3
色 説モ デル から反対 色説モ デル へ と その視 点が変化しつ っ あ るこ と を 意味 する.
伝 統 的 な 反 対 色 説の流 れ を くむ 色 覚 理 論 (例 え ばHur一
vich &Jameson,
1955)は,
主 と して 閾 上の現 象 か ら 構 築されかつ 閾 上 現 象に対して適 用 さ れるこ と が多い.
そ のため に刺激の検出 (絶 対 閾及び増・
減 分閾)との関係に つ い ては余り議論さ れて来 なか っ た よ うに思 われる.
刺 激の検 出(detection
)は, 常 識 的には刺 激の強 度 (又は輝度 )の増
・
減 分(increエnent 又は decrement )に依 存して い る の で, 伝 統 的な反 対 色 説の所 謂 「白一
ne
過程 (w−
bkprocess )」(Hurvich &
Jameson
,1955)の機 能であると考 え られる.
し か し,
それと同 時に Hurvich &Jameson
(1955)は特に色 光の検 出の場 合に は, そこ に 「白
一
黒過程」(あるい はア ク ロ マ テ ィ ッ ク反 応 シ ス テ ム achre
−
matic resPonse system )だけで なく, クロ マ テ ィッ ク反 応シ ス テ ム (chromatic response system )が関 与 す
る ことに 言 及して いる (P
.
605).
彼 らはそ れが閾 値 測 定に よ る分 光感度曲線に見ら れ る い くつ か の不規 則 性
(infiection and irregularities)に表われて い ること を
示 唆し て い る
.
こ うして み る と, 最 近の順 応モ デル の中で仮 定 さ れて い る反 対 色シ ス テム は伝 統 的な反 対 色 説で
仮 定されてい るシ ス テム と 基本的に は軌を
一
に し て い ると考 えてもい い ので はないだ ろ うか (King
・
Smith ,1975及び King
・
Smith & Carden,
1976 に 同様の言 及があ22
墓 礎 心 理 学 研 究 第 5巻 第 1号 5・
2 「独立的な結果 」の再 解釈 古 典 的な相互作 用 問 題で,
「相互作 用 」を示し た sum−
mationindex
に よる研 究は, 前 述し た よ うに, 最近の 順 応モ デル の先 駆 的な役 割を果し たと考 えられるの で, その結 果が それ らの モ デル に よっ て容易に解 釈されるの は 寧 ろ 当 然であ ろ う.
従っ て 再 考を要 するの は,
「独 立 性 」 を 示し た結 果で あ る、
Stiles
の π メ カニ ズムをその出 発 点 として いた点で よ り密 接 な 関係にあ るの はPugh
(1976
)の モ デル である (図 4).
し か し, その モデルは,
時間・
空間的 に 重 ね ら れ た 2 つ の フ ィー
ル ドを用い て得られた結 果か ら構 築 された もの で あ り,一
方独 立 性 を 示 し たA
!pern &Rushton
(1965
)やMcKee
&Westheimer
(1970)の結 果は空 間的に
,
ある いは時 間・
空 間 的に離 れたフ ィー
ル ド の, テス ト閾へ の効 果 を 検 討 した もの で ある.
従っ て必然 的な関 連 性は低いかも知れ ない が, 敢て周辺に提 示された フィー
ル ドか らの光 量 子 吸 収 が, テス ト刺 激 が 直接 提 示される フ ィー
ル ドか らの光量 子 吸収と質的 に 同 じ順 応 効 果 を持つ と仮 定し て議 論を進め て み たい.
Alpern & Rushton (1965)(以 下 AR 実 験と略 す)で は, 各π メ カニ ズム (πエ , π4,
πs)に対して効 果 が 等 価に な るよ うにその強 度 を 調 節された い くつ かの異なっ た波 長の 背景 (フ ィー
ル ド:予め t.
v.
i.
曲 線から求めてお く)をテ ス ト刺激と時 間・
空 間 的に 重 な り合わ な い after−flash
と し て提 示 すると, 当 該 π メ カニ ズムに対し て は その効果 (after
−
flash effect=
閾 値の上 昇 ) が 等し くな ること が 示 さ れ た
.
その ポ イン ト は以 下の点にあ る.
あ るπ メ カニ ズ ム (例 えば π 1)に対して等 価な異な っ た波 長の フ ィー
ル ドはその波 長に よっ て他の メカニ ズ ム (π4 又 は π5)に対して は 感 度が異 なる から, もし何 らかの 相互作用があ れば, 即ち π、メカニ ズムの順 応が π 4 あるい は π 5 の影 響 を 受 ける の であ れば, after・
Hasheffect は 用い られた背 景 (after
−fiash
)の波 長に よっ て異 なる こと が予想 さ れ る が, 実 際には 波 長に依存し なか
っ た
,
この結果は今日の観点か らみ ると も う
一
度 考 えてみ る必 要がある ように思われる
.AR
実験で各π メカニ ズ ムに対し て フ ィ
ー
ル ドを等 価にするとい う手 続 きは,
図 4の Pugh のモ デル では, 第 2順 応サイ ト (second site)
を経た最 終 的 な 出 力の大 き さを 等 価に し た こ と を 意 味
し, 従っ てその よ うなフ ィ
ー
ル ドは第2順 応サイ トで他の メ カニ ズムか らの (反 対 色 的 な) 影 響 を 既に 受 けた後
の光 量 子 吸 収が等し い フ ィ
ー
ル ドであると考える こと がで きる
.
After−
fiash effect が等し く なっ た とい う彼 らの結 果は従っ てそ うした (反 対 色 的 な ) 影 響 を 取 り去っ た後の 結 果と考える こと ができる
.
McKee & Westheimer (1970)〔以 下 MW 実 験と略 す )では, 小 さなディ ス ク刺 激の上で テス ト閾 を 求める 時,
その周 囲に アニュ
ラス刺 激を提 示 する と, ある条 件 下で, テス ト閾が低 下 する現 象 (spatial sensitization と呼ばれる) を 利 用し,一
定の テ ス ト閾の低 下 を 基 準 と し た ア ク シ ョ ン ス ペ ク ト ルが求め ら れて い る.
結 果は テ ス ト と ディ ス ク刺激の波長に よっ て π 4 (又は π5)が分離 さ れてい る時に は 同 じ π 4 (又は π5)の アクショ ンス ペ ク トル となっ た (π1 につ い て は検 討 さ れてい ない),
彼らの結果も 上 と 同様にPugh
モ デル の 第2
順 応サ イ トを経た 最終的 な 出 力 を 基 に して得 ら れ たア クシ ョ ン ス ペ ク トル である と考え るこ と がで きる,
従っ てその結 果は反対色システムの影 響を受 けた分光感度 曲 線と なる 筈である。
し か し実 際に は ア ク シ ョ ン ス ペ ク トル がStiles
の π.
1又は π5と近 似し た (デー
タの数 も少 な く, 又近似の程度も余り良 くな い が).
これは Pugh の モ デ ル を 問 題 とする限り,その モデルの予 想 と矛盾してい る.
これ に対し て はい くつ かの原 因を考 えることができる が (例 え ぽ デ ィス ク 及 びフ ィー
ル ド の輝 度レ ベ ル等),
その第1
は,Stiles
の π メ カニ ズムにその分 光感度 曲 線 が似てい るこ と は決して その結 果 が 独叢的であ るこ と を 意味しない, とい う点である。
Stilesの π メ カニ ズ ム自 体が複 数の基 本メ カニ ズム (錐 体)から成る複 合 的なメ カニ ズム と考え られる か らで ある.
最 近 Stromeyer (1983)は こ の MW 実 験で 得 ら れた ア クシ ョ ン ス ペ ク トルは 錐 体の そ れ よ り巾が 狭い (narrow−band
)こ と を 指摘し て い る,
又Stiles
の π メカ ニ ズム が一
一
般に色 覚 異 常 者から得られた各 (残余)錐 体の分光 感 度 曲 線よ り も広い ことは以前から知 られて い た し, そ れは又 相互作 用 問題 が 生 じて来た 1つ の根 拠ともなっ た もの で ある (Boynt 。n、
1963).
従っ て MW 実 験の結 果 もAR 実験 と 同様に反 対 色 的な相互作 用 を既に含 ん だ 過 程の ア クシ ョ ン ス ペ ク ト ル と考える こと が できる.
同 様の方法で π 1 につ い て検 討して み て, 良 く知ら れ てい る 長波 長 領域で の感 度の上 昇 (lobe
)を 持っ た ア クシ ョ ン ス ペ ク トル が 得 られ る か どうかを検 討して みる必 要 が ある、
第2
は, より最近の い くつ かの結 果は, 前 述し たよ う に , 反 対 色シ ス テム が関 与 する か否か は, 用い られたテ ス ト刺 激の時 間・
空 間 特 性へ の依 存 性 を 示 してい ることである(
Wandell
& Pugh,
1980 a,
b
;Sigel
&Brouseau,
1982 )
.
表 1 に示さ れ てい る よ う に, 相互作 用 問題 で用い ら れて い るテ ス ト刺激は比較的 小 さ く, かつ 持 続 時 間
が短い場 合が多い
.
もし最近の研 究が示 唆し て い る よ うに, 小 さい又は短い テス ト刺 激 が 用い られた時に は加算
三星:「独 立」そ れとも 「相互作用 」
23
卩
的 な結果 が 得られ, 加 算性は 単一
変 数 的 (univariant ) なJi
頂応 (Pugh
の モ デル で は第1
順 応サ イ トだけに よ る 順 応 )を 意味するのであ れば, AR 及 びMW
の実 験 結 果は,
その枠組に完 全に沿う もので ある と 言わな け れ ば な ら ない.
これ らの う ち
,
ど ち らである かを 決め るのは現 在の段 階では困難である よ うに思 わ れる (他に も 叮 能幽 まもち ろ ん考え られる).
π メ カニ ズ ム の分 光 感 度 曲 線との 比 較を試み るの であ れ ば,π1 メ カニ ズム の そ れ を用い る と 良い ように 思われる.
前述した よ うに πu の 分光感 度 曲 線に は長波長領 域に特 徴 的な感 度の上 昇 (lobe
)が あ り,
他方 π1 は他のメ カニ ズ ム (T4 十πs)の関 与を受け てい る 複 合 的な メカニ ズムで あると考え ら れ てい るの で, 若し 得 られた分 光感 度 曲 線に感度の上昇が 見 ら れれぽAR 及 び MW の実験結 果は前 者である 可能 性が 高い (即ち 反 対 色的な影 響を受けた後の アク シ ョ ンス ペ ク トル と考 え られ る.
従っ て厳 密な 意味で独 立 的 な 結 果と は言えない か も知 れ ない).一
方 若し 感度の上昇 が 得られな け れ ば (即 ち π3 メカニ ズム の 分光感度 曲 線 を 示せば), 後者の 解釈の方に有 利とい うことに な ろ う (即ち小さな,
短い テ ス ト刺激が用い られてい る とい う点で, 彼 らの結 果は 独 立 性を示し た結 果 と考 え られる)。
も う1
っ の方 法は,
単純であるが, テス ト刺激の時 間・
空 間 特 性を変 化させ る ことである.
もし大 きい (例 え ば 1°
), 持 続 時間の長 い (例えば20e
ms )テス ト刺 激を 用い て も 同 様の結 果 が得 られる な ら ぽ,
それは AR 及 びMW
実 験の結 果は 用い られたテ ス ト刺 激の (短い)持 続 時 間に帰 すること がで きない こ と を意 味する から, 前 者の 解 釈に有利であ ろう.一
方,
テス ト刺激の特 性に依 存 すれば, 後 者の解 釈に 有 利で ある ことは 言 う まで もない (ただし, after−
fiash
effect 及 び spatia 工sensitization その ものが 大 面 積かつ長 時間 提 示の テス ト刺 激を用い て得られるかど うか は大いに疑 問で ある.
特 に spatia !sensitization は大 面 積の テス ト刺 激に よっ て得ること は困 難で ある).
いずれに し ても もっ と多 くの 波 長を フ ィー
ル ドに 用い て, 得られたア クシ ョ ン ス ペ ク トル の形を よ り厳密 に決 め る必 要がある よ う に思 わ れる (因み に用い ら れ た波 長 数はAR
実 験で は 3波 長, MW 実 験では 5〜6
波 長で あっ た).
King
・
S皿 ith&Carden
(1976
)モデルで は, 用い られ たテス ト刺激の特性 が 強 調 さ れるの で , も し独 立 的な 結果との 関 連が分 析される場創 こは, 上に述べ た議論の うち後 者の議 論に近い もの に な る
.
ただし彼 らの モ デル は謂わば 「並 列 的チ ャ ン ネル モ デル」なの で, もし相互 作用= 反対 色チ ャ ンネル と考 えるの であ れ ば, 非 相互作 用=
非 反 対色 チャ ン ネル ; 輝 度チ ャ ンネル とい う論 理は成 立して も, Pugh モデ ル の よ うに,非 相互作 用= 単
一
変 数 的メ カニ ズム (単一
錐 体) とはな ら ない.
換 言 す れ ば, 小 面 積かつ 短時問 提 示の テ ス ト刺 激は 反対色シ ス テ ム の関 与は受け ない が,
しか し そ れ を 検出する の は Pugh モ デル の ように 各 錐体で は な く, 輝 度シ ス テムである とい うことに な る.
そこでも し輝 度シス テムの分 光 感 度を,
良 くなされて い る よう に, CIE のVca
)で表わすことがで ぎるな らば, 輝 度の 等しい フィー
ル ドは輝 度シ ス テ ムに対 して等 価である と 考える こと がで きる.
従っ て等輝 度 の フ ィー
ル ドを 用い て得 られた何 らかの結 果は, もし そ れ が輝 度シス テ ムだ けの産物であるならば, その波長に は依 存しない はずで あ る。 Mitsuboshi & Mitsuboshi (1980)は等 輝 度 (15 cd /皿 2)のフ ィー
ル ドを用い て, spatial sensitization の大 きさに及ぼす波 長の 影 響 を検 討し, テ ス ト刺激とフ ィー
ル ド の波 長の間に選択 性(specificity )カ:ある ことを 見い出し た.
こ うし た波 長 選 択 的な結果はMitsuboshi
& Mltsuboshi (
1980
)の 実 験 結 果 が King−
Smith &Carden 流の チ ャ ンネルパ ラ レル モデルその ま まの形で は説明で きない こ とを 意 味し て い る
.
その後Mitsuboshi
(
1983
)はエ ヅ ジ効 果でも同様の波 長選 択的 な結 果 を 得,そ れ を説 明 する ため に 「チ ャ ンネル前 明る さ過 程 (pre
−
channel
brightness
process 又は pathway )」11)を仮定して いる
.
「錐 体」は どららか と言えぱ3色 説モ デル を 想 起 させ る し
,一
方 「輝度チ ャ ン ネル」 は 反対色説モデル と強 く結び付い て い る
.
又これがPugh
と King・
S皿 ith&Carden の モ デル に も適 用 されるの であれば,
Pugh
の 流 れを汲む 研究は依 然とし て 3色説の影 を 引い てい るこ とを 示し て い る.
そ れ は, し か し, そも そ もの問題 意識 を考 え れば それ 程不 思 議 なことで はない。
現 在の色 覚 研 究で は, 3色 説 と反 対 色説の 二者 択一
的な議 論は殆ん ど な さ れてい ないが, 上に述ぺ た 問 題 はある意 味でその理 論上の 接点 と なっ て い ると考え ら れ な く も ない.
図6は 短時間 提 示 (10 ms )の テ ス ト刺 激の 検 出 を 説 明する一
モ デル で ある (Sigel&Brouseau
,1982
).
各 錐 体から の 信 号が輝度シス テム (achromatic Process )に入 力す る前に 「自己順 応 (self adapt )」の 過程を組み 入れて い る点が大 変 興 味 深い.
この 自己 順 応の過程は単一
変 数 的 (univariant )な 過程 (即 ちその順 応の程 度が当 該錐体に11
)各錐 体からの信号 が 輝 度チ ャ ンネル (v
/{A) の分 光感度を持つ)に入力 する前に存する と考 え られる仮 説 的
な 過程, そこ で はま だ各 錐体の特 性(例 え ば 分 光 特 性 )
が 保たれてい る と考えられる (図6参照)
,
24 基 礎 心 理 学 研 究 第5 巻 第 1号 図 6 短時聞 提 示 (
10ms
)の テ ス ト刺激の検 出 を説明 する
一
モ デル.
最 終 的に は 「ア ク 卩 マ チ ヅ ク過程 (achromatic process >」に よ っ て 検 出さ
れるが
,
その過 程に入る前に各 錐 体の「 自己順応 (self adapt )」 の段階を組み入 れて い る点が
非 常に興味 深い (Sigel& Brousseau
,1982
).
吸 収 された光量子 数だけに依 存する)で あると考え ら れ る.
そ れは 又各 錐体の独立 性 を 意味 する から, この 「自 己 順応 」 とい う過程は 先に 述 べ た Mitsuboshi (1983)の 「チ ャ ンネル前 明るさ過 程 (pre
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