• 検索結果がありません。

評論・社会科学 84号(よこ)(P)/3.金子

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "評論・社会科学 84号(よこ)(P)/3.金子"

Copied!
30
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

教材開発(1)

──中学校用教材ソフト『ニュージーランド』

──

1

.は じ め に

本研究の目的は,社会系のメディア・シンセシス(ハイパー・メディアの統 合された)教材開発を,中学校社会科の大単元の作成を通じて試みることにあ る(1) ところで,中学校社会科学習指導要領によれば,地理的分野では世界の国ま たは地域を 2∼3 選んで学習することとされることに注目した。各社の地理的 分野の教科書(2)では 3 か国が例示されている(3)。各社の教科書の内容を検討し てみた結果(4),これら 3 国は例示であるのに,例示された国それ自体について の学習に終始しているか,逆に例示された国自体もさることながら他国(外 国)についての学習として任意の国のある側面のみを強調するか,いずれにし ても,中学校ではじめてなされる本格的な他国(外国)学習として内容的に不 十分なことに気がついた。同時に,教科書で提供される他国(外国)について の情報は紙面,紙数の制約もあって不十分であることが明らかになった。各教 科書とも教科書以外の情報にアクセスすることが可能である(5)としているが東 京など一部の地域を除けば他国(外国)の大使館や資料館にアクセスするにし ても,中学生にとって,さらには教師にとっても直接的には不可能に近い。ま たコンピュータ(CP)それ自体が中学校に普及したといってもハードとソフ トの両面で,設置されたままで更新されていないか不十分な現状が多いとき く。 ―159 ―

(2)

そこで,本研究においては,上記の,中学校地理的分野の課題に答え,なお かつ,中学校の,十分というにはほど遠い CP の環境などを念頭に置き,直接 的な研究目的と具体的な取り組みとを以下の 3 点とした。 研究目的 1) 内容面では,中学校社会科地理的分野の世界の国と地域の内 容を一新し,他国(外国)について,地理に基礎をおきながらも歴史や公民の 視点をも導入し,総合的な他国(外国)学習の可能な学習内容の構成を行う。 具体的な取り組みとしては,中学校用教材ソフト『ニュージーランド』およ び学習指導案『ニュージーランド』を開発することとした。『ニュージーラン ド』は,シリーズの第 1 弾として,内容面では,南半球にあり夏冬など日本と 正反対であり,マオリの人々とヨーロッパ系などの人々から形成されてきた歴 史を持ち,社会的理想や政治理念の実現などで先駆けをなし,さらには,戦争 ・外交・貿易などを通じて日本や世界と結びついていることなどを取り上げる ことで,他国(外国)理解を通じた総合的でグローバルな視点からのニュージ ーランドの学習とした(6) 研究目的 2) 方法面では,CP を用いて OS フリーで相互に互換性のある教 材を開発することで,Windows でも Mac でも,また少々古いシステムを用い ている場合でも,使用可能なソフトの開発を行う。 具体的な取り組みとしては,中学校用教材ソフト『ニュージーランド』の開 発は基本的には Mac にバンドルされているテキスト・エディット(Windows のメモ帳に相当)を使用し,その閲覧(教授・学習)には Safari(Windows で は Internet Explorer などに相当)を使用した。このことで,相互互換性を担保 しようとした。 研究目的 3) 内容面と方法面の研究目的を具体化したものとして教材ソフ トを開発する。開発したソフトを開発技法を含め,公開することで,普及をは かる。 ―160 ―

(3)

中学校用教材ソフト『ニュージーランド』は,中学校の教師,生徒いずれに とっても慣れ親しんでいる教科書によく似たインターフェイスをもつ。また, 基本的には,クリック 1 つで操作ができ,CP それ自体についての習熟はほと んど必要とされない。

2

.基本的な教材設計

2. 1.システム設計及び各ページ設計のポイント 教材設計にあたり,本研究では,開発の機器としては以下のものを用いた。 1)CP 本体としてカスタマイズ MacPro(MacOS 10.4.7.),シネマディスプ レイ 9177 J/A 20 型を用いた。 2)周辺機器と し て,ス キ ャ ナ ー Epson GT−X 900,プ リ ン タ ー Canon ip 4300,カメラ Fujifilm FinePix V10 を用いた。 ソフト開発にあたり,HTML 作成にはテキスト・エディット(Windows で あれば,メモ帳に相当),教材閲覧には Safari(Windows であれば,Internet

Ex-plorerや Fire Fox などに相当)を用いた。また,バンドルされている iPhoto

のほか,egword universal, Word なども使用した。

開発された教材は CP 内で完結している。教材の普及には CD などのメディ アに焼いて配布可能である。写真は基本的に筆者が撮影したものであり著作権 の制約をうけない。参考あるいは引用した文献にはすべて出典を明記した。 2. 1. 2.各ページ設計 各ページの基本設計は図に模式的に示されている。 タイトル 調べよう・考えよう 本文 写真・図表・地図・資料 目次へ 前のページへ つぎの○○へ 図 各ページの基本スタイル ―161 ―

(4)

1)の「タイトル」は 1∼8 ページの各ページにその内容を端的に示した標題 が掲げられている。 2)の「調べよう・考えよう」は各ページとも 10 前後の発問が示されてい る。答えは,本文に示されているものとそうでないものとがある。発問をクリ ックすると答えと多くの場合その根拠となった文献の引用と出典などが 2)の ウィンドウにでてくる。「戻る」をクリックすると元へ戻る。 3)の「本文」は文字通り本文であり,「タイトル」に関わる内容が簡潔に説 明される。この本文は(すべてではないが)2)の「調べよう・考えよう」の 答えを提供したり,ヒントを与える。 4)の「写真・図表・地図・資料」は,2)の「調べよう・考えよう」の答え を提供したり,ヒントを与える。また,3)の「本文」に関わる写真・図表・ 地図・資料を提供することで具体的なイメージや情報を提供する。さらに,そ れ自体が発問を伴って,2)の「調べよう・考えよう」と同等の役割を果たす こともある。なお,この 4)の「写真・図表・地図・資料」は,CP の画面上 の大きさの制約があり,ページ上に示されているのはタイトルと小アイコンで ある。小アイコンはそれぞれをクリックすると 4)のウィンドウいっぱいに拡 大した画像が示され,読み取りを容易にするよう設計した。読み取りが終わり 「戻る」をクリックすれば元の画面に戻る。 5)の「目次へ 前のページへ つぎの○○へ」は移動のためのボタンが配 置されている。なお,「つぎの○○へ」をクリックすると次のページが前のペ ージと少しずれて表示され,あたかも,教科書のページが重なっているかのよ うな視覚効果がある。「まえのページへ」も同様である。 2. 2.データ設計のポイント 2. 2. 1.全体的なデータ設計 この教材ソフト『ニュージーランド』は,全体として,1)中学校社会科地 理的分野の世界の国または地域の学習にそのまま年間計画に組み込んで使用す る,2)中学校社会科の選択社会科の一部として使用する,3)中学校の総合的 ―162 ―

(5)

な学習の一部として使用する,さらには,4)中学校社会科を一通り学んだ か,学びつつある生徒の中で発展的な学習を希望する生徒に自学自習,または 調べ学習の課題のひとつとして提供する,といったさまざまな位置付けが可能 である。 この教材ソフト『ニュージーランド』は,また,同種の教材を自作しようと する教師にとっては,総合性に配慮されているので,全体を参考に他の国また は地域について類似した教材を CP に基づき,あるいは,CP に基づかないで 作成する実例を提供する。また,使用している教科書が,総合性のない部分強 調型の場合,何をどう補ったらよいかのヒントがえられるものとなっている。 また,教材ソフト『ニュージーランド』は,別記学習指導案の『ニュージー ランド』と完全に対応している。この教材を元にほぼそれに即した授業展開が 可能である。もちろん,教材ソフト『ニュージーランド』を部分的に利用して 行う授業,教材ソフト『ニュージーランド』をさらに発展・拡大した授業な ど,可能性は開かれている。 2. 2. 2.各ページの教材設計 この教材ソフト『ニュージーランド』では,「本文」は学習内容を概観し概 括したり,基本的な事実的知識や用語を提供する。「調べよう・考えよう」は 「本文」の内容にほぼ対応した発問群を提供することで,本文の内容を確認し たり,本文にない内容を付加したり,内容の拡大と深化を通じて事実的知識に 加え,一般化や法則など概念的知識へと高めていくものとなっている。「写真 ・図表」は,本文や発問,さらには答えやその説明について具体的なイメージ や理解を与える。「地図・資料」は,本文や発問,さらには答えやその説明に ついて空間的・時間的な位置付けを与える。「写真・図表・地図・資料」は, 各種のデータの読み取りと内容との関連付けとから,一般化や概念さらには法 則に対して裏付け(根拠)を提供するようになっている。 ―163 ―

(6)

3

.具体的な教材設計

3. 1.『ニュージーランド』の基本的な構想 1)第 1 に,教材ソフト『ニュージーランド』の学習は,地理的分野の学習 を基本としながらも,あえて地理的分野に限定せず,歴史的内容及び公民的内 容をも加えた。これら 3 つの領域の間のバランスをとることで,日本の生徒た ちには他国(外国)についての多面的,多角的な理解をはかった。基本は地理 (空間)的な認識であるが,同時に,歴史(時間)的な認識と公民(普遍)的 な認識とを生徒たちに獲得させるものとして構想した。 2)第 2 に,『ニュージーランド』の学習は,一見,ローカルな問題や課題を 取り上げているように見えるが,ニュージーランドの問題や課題は歴史,地 理,政治,経済,社会,文化などいずれを視点として取り上げようとしても, それらはグローバルな問題や課題と相互に連関していたり依存しており不可分 なものとしてあるのだという,グローバルな見方・考え方を生徒たちに獲得さ せるものとして構想した。 3)第 3 に,他国(外国)であるニュージーランドとそこに生きる人々と, 自国である日本とそこに生きる人々とは,差異をもっているが同時に共通点や 類似性ももっていることを生徒たちに発見させようとしている。 4)第 4 に,保護・保全すべき文化や遺産は,決して世界遺産だけではな く,生活にかかわる文化や遺産もあること,そして世界遺産から生活遺産まで 文化遺産や自然遺産としてさらには危機遺産として,どの国や地域にも存在し ていることに生徒たちの目を開かせようとした。 3. 2.『ニュージーランド』のねらい 『ニュージーランド』のねらいは大きくわけて内容面と方法面とに分けられ る。 内容面のねらいは,以下の 2 点である。 1)社会科本来の総合的性格をもった教材開発を行うことである。そのこと ―164 ―

(7)

は,すでに小・高で始まっている社会科の廃止につながる解体・分化の動向に 警鐘を鳴らし,総合性をもった社会科の内容とその枠組みの提示,内容への分 析的なアプローチ能力の獲得がいかにして可能であるかを示すことでもあ る(7) 2)中学校社会科のレベルにあった,グローバルな問題や課題を考える機会 を与えることである。グローバル教育はかつてから取り組まれてきた国際理解 教育をその中に包括するものである(8)。だからといって,いきなりグローバル な認識が育成できるものとはいえない。そこで,グローバルな認識につながる 国際理解の場として,国際理解教育の原点でもあった他国(外国)理解からス タートしてグローバルな認識のゴールを目指すことはできないかと考えた。そ れは,他国(外国)が一国だけで成り立っているのではなく,当該国にとって の(日本を含むこともありうる)他国(外国)との結び付きにおいて成り立っ ていることを認識させることである。 方法面のねらいは,以下の 2 点である。 1)OS を問わない教材ソフトを開発することである。OS としては,代表的

なもの と し て Windows(Win)と Macintosh(Mac)が あ る。主 流 は Win OS であるが,教材開発上,Mac は操作性その他で扱いやすい。このため,過去 の先行研究においても開発は Mac で行い動作確認を Win でもおこない,その ことによって開発された教材ソフトの汎用性を担保する根拠としてきた。今回 の教材開発も基本的にはこの延長上にある。しかし,OS 自体がどんどん変化 し,同時に対応したソフトも変化している。この点では,教材ソフトはいった ん開発されたらそれで終わりということにはならず,たえず更新をもとめられ る宿命を負っているともいえよう。そこで,当該時点で OS フリーな教材を開 発することが不可避なのである。 2)モデル的な教材ソフトを開発することである。モデル的教材ソフトとい うとき大きく 2 つのねらいがこめられている。1 つには,開発された教材ソフ トはそれ自体として過不足なく教材として使用可能なものが求められるという ことである。現場の教師にとってとにかく 1 度使ってみようという意欲につな ―165 ―

(8)

がる魅力のある教材を開発することが不可欠である。また,教師もさることな がら,小・中と主たる教材である教科書に慣れ親しんできた生徒にとって,違 和感をもたないインターフェースをもっていることも必要なことである。そし て,一般的な授業において使用可能であるためには,年間計画にそのまま組み 込める教材を開発することが求められる。2 つには,意欲ある現場の教師にと って,既成の教材ソフトをそれぞれの指導にうまく活用することに加えて,各 自がそれぞれの学校や生徒の実情に配慮した教材ソフトを開発したいという意 欲を抱くのは当然のことであろう。しかし,そこに立ちはだかる問題はといえ ば,市販の教材ソフトの場合完成度が高すぎてとてもそれを自作できないし開 発に費やす時間も経費も見出せないのが現状である。そこで,本研究の教材ソ フト開発では,主要な(そのまま使える)スクリプトも開示すること,研究に 協力してくれる教師に教材ソフト CD を提供し追試や改善・改良のための協 力を求めることも考えている。

4

.中学校社会科学習指導案『ニュージーランド』

中学校社会科学習指導案『ニュージーランド』 (1)小単元『ニュージーランド』 (2)小単元の目標 世界の国々または地域の事例としての『ニュージーランド』について,教材 ソフト『ニュージーランド』を活用して学習することによって以下の点につい ての目標を達成する。 1)態度・意欲に関する目標 CPソフトで喚起された興味・関心をもとにイ ンターネットを用いたり,図書館などで,ニュージーランドについて調べるよ うになる。新聞の広告あるいは旅行代理店のパンフレットなどからニュージー ランドの旅行についてのプランを見つけ,地図帳などのうえで訪問地などに印 をつけながら模擬海外旅行をすることができるようになる。 2)方法・技能に関する目標 CPソフトを活用してニュージーランドについ ―166 ―

(9)

ての学習を遂行できる。CP ソフトの本文の説明からその要点を把握できる。 CPソフトの「調べよう・考えよう」の各発問について予想を行い,解答を確 認することができる。(さらには,解答に関連した出典を読解することも考え られる。ただし,この部分は生徒には難しいことが予想されるので,教師が出 典の資料をもとに解答し,解説することが考えられる。)また「写真・図表・ 地図・資料」からの事実やデータの読み取りや,関連付けができる。 3)知識・理解に関する目標 CPソフトを活用してニュージーランドについ ての事実的な知識や理解を獲得し(学習指導案の応答/説明/作業),それら をもとに,関連した概念や用語(学習指導案の概念/用語)を習得する。さら に,他国(外国)理解(グローバルな課題や文化遺産の理解を含む)に関する 一般化や概念化を行うことができる(学習指導案の到達目標)。 3)小単元の構成(全 4 時間) 1 ニュージーランドを知る 1時間目 2 ニュージーランドの自然 3 ニュージーランドの人々と歴史 I マオリ 2時間目 4 ニュージーランドの人々と歴史 II 探検と移住 5 ニュージーランドの文化と生活 3時間目 6 ニュージーランドの政治と社会 7 ニュージーランドの経済と産業 4時間目 8 ニュージーランドと世界の結び付き 4)到達目標(概念的知識)(以下の 1∼8 は 3)の小単元の構成のページと対 応している。) 4)−1 各ページの到達目標(概念的知識) 1 ある国の地理的特質は,その国の絶対的及び相対的な位置,時間帯, 国土とその形状や面積,総人口や人口分布,中心的都市などによって示 される。 2 ある国の自然は,地形,地質や成因,気候や降水量などの気候,植物 相や動物相などによって規定され,固有の自然には国立公園や世界遺産 ―167 ―

(10)

になっているものもある。 3 ある国の人々の中には他の人々に先立ってその地へ移住し,定着し, 伝統的な社会や文化を形成した人々がいる。 4 ある国の人々の中には他の人々より後でその地へ移住し,定着し,新 しい社会や文化を形成した人々がいる。 5 ある国の文化と生活は,伝統的な文化や生活と新しい文化や生活とが 複合して今日の様相を作り出している。 6 ある国の政治や社会は,そこに生じたり持ち込まれたある政治的及び 社会的な理念を,その国に合わせていかにして実現していくかにかかっ ている。 7 ある国の経済や産業は,その国の自然的条件を基礎としながら,世界 の国々との関係や,その関係を保証したり妨げたりする条件によって規 定されることが多い。 8 ある国は,外交や戦争などの政治的側面で,輸出や輸入あるいは観光 などの経済的側面で,世界の国々と対立したり,結び付いたりしてい る。 4)−2 各時の到達目標(概念的知識) 1+2 ある国の自然は,地理的に固有な性格をもち,その中には世界遺産 になっているものもある。 3+4 ある国の人々は,その国土に何らかの時期に定住することになった 人々によって成り立っている。 5+6 ある国の文化や政治は,ある伝統を保持し,同時に,ある理念を何 らかの形で現実化してきている。 7+8 ある国の経済や外交は,世界の国々との関係によって成り立ってい る。 4)−3『ニュージーランド』の到達目標(概念的知識) 1+2+3+4 ある国は,固有の国土と定住する人々から成り,その国土を 保護・保全しようとしている。(国土と人々<国立公園や世界遺産) ―168 ―

(11)

5+6+7+8 ある国は,固有の伝統と文化をもち,世界の国々との結び付 きの中で成り立っている(ローカルな伝統と文化<グローバルな結合) 5)学習の展開(本展開とその資料の記載にあたって,記述のスペースの節約 のためニュージーランドは NZ と略記している箇所がある。) 1 ニュージーランドを知る(1 時間目前半) M. Q.ニュージーランドの地理的特質はどんな自然的・人文的条件によって規定されているのか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 1. 1. NZへの旅行の広告が,日本 の秋から冬にかけてのものが多 いのはなぜか? 1. 2. NZと日本はどのような位置 関係にあるのだろうか? 1. 3. NZで正午を迎えたが,さ て,太陽はどこに見えるのだろ うか?(NZ の伝統的な家の向 きはどうなっているか?) 1. 4. NZで真夜中を迎えたが,さ て,南の方向を知るにはどうし たらよいだろうか? 1. 5. NZと日本の時差はどうして 決まるのか?(NZ と日本の時 差はどれくらいか?) 1. 6. NZはなぜ世界で一番早く新 年を迎えるのか? 1. 7. NZでは北島と南島とでは, 北島の方がなぜ人口が多いのだ ろうか?(NZ の総人口はどの くらいか?)(オークランドは 地図上のどこか?)(首都ウェ リントンの緯度はどの く ら い か?)(ウェリントンは地図上 のどこか?) 1. 8. NZのまわりの国々はどんな 共通の歴史をもっているのだろ うか? 1. 1. 1. 2. 1. 3. 1. 4. 1. 5. 1. 6. 1. 7. 1. 8. ・南半球と北半球とでは季節が半年ずれてい る。 ・日本の冬は NZ の夏である。 ・NZ は日本から約 9000 km 離れている。 ・NZ はオーストラリアの東約 1600 km にある。 ・NZ では正午の太陽は真北に見える。 ・NZ では伝統的な家は北向きにつくられてい る。 ・南十字星をさがすと,そちらから南の方向が わかる。 ・時差はそれぞれの国が日付変更線からどれだ け離れた経度にあるかによってきまる。 ・NZ と日本の時差は標準で 4 時間,夏期で 3 時間である。 ・NZ は領土の中に日付変更線に近いチャタム 諸島を含んでいるからである。 ・北島の方が気候が温暖で住みやすい。 ・NZ の総人口は約 400 万人である。 ・NZ の人口の約 3 分の 1 が北島のオークラン ドに住んでいる。 ・ウェリントンの緯度は南緯 40 度である。 ・NZ のまわりのフィジーほかは,かつては, 植民地であった。 北半球 南半球 季節 位置 正午 方位 南十字星 日付変更 線 時差 領土 人口 総人口 首都 緯度 植民地 M. Q.ニュージーランドの地理 的特質はどんな自然的・人文的条 件によって規定されているのか? ○ニュージーランドの地理的特質は,NZ が南 半球にありオーストラリアから で も 1600 km も離れ,世界で一番早く一日(一年)が始まる 時間帯に属し,南北に長くイギリスよりもやや 大きい形状や面積,約 400 万人の総人口や北に 偏った人口分布,人口的には中心的な都市オー クランドや南北の中央に建設された首都ウェリ ントンなどによって示される。 ―169 ―

(12)

資料 1. 1.NZ と日本を示す世界地図 1. 2. NZ と日本を示す世界地図 1. 3. NZ の 1952 年建造の木 造住宅の見取り図(植村善博『図説 ニュージーランド・アメリカ比較地誌』ナカニシヤ出版 2004 p. 37)1. 4.なし 1. 5. NZ と日本の位置(緯度と経度)1. 6.チャタム諸島(斉藤達雄 世界 で最初に二一世紀を迎える国−日出(ひい)づる島々の話 日本ニュージーランド学会編『ニュー ジーランド入門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 76−77)1. 7. NZ と日本の位置(緯度と経度)NZ 略図 1. 8.オセアニア州の地図〈ルピナス(写真)〉 2 ニュージーランドの自然(1 時間目後半) M. Q.ニュージーランドの自然はどのようか,また,それはどのように人々によって利用されてい るのか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 2. 1.(NZ の 国 土 の 特 色 は 何 か?)NZ を取り巻いているの はどんな海なのだろうか? 2. 2. NZの北島はどうやってでき たのだろうか? 2. 3. NZの南島はどうやってでき たのだろうか? 2. 4. NZにある氷河がつくったフ ィヨルドとはどんな所なのだろ うか?ほかに,氷河がつくった 地形にはどんなものがみられる か? 2. 5. NZの南島の西と東とでは気 候はどうちがうか? 2. 6. NZの春夏秋冬はいつなのだ ろうか? 2. 7. NZはかつてどんな鳥の王国 であったのか?ほかにどんな動 物や植物がみられるのか? 2. 8. NZの国立公園はどんなとこ ろだろうか? 2. 9. NZの世界遺産はどんなとこ ろだろうか? 2. 1. 2. 2. 2. 3. 2. 4. 2. 5. 2. 6. 2. 7. 2. 8. 2. 9. ・NZ は島国である。 ・NZ はタスマン海などの海洋によって取り巻 かれている。 ・北島はタウポ火山帯とよばれる火山によって つくられた。 ・オークランド市内には丘のような火山が点在 している。 ・南島の大部分は造山活動によってつくられ た。 ・南島の山脈はサザンアルプスとよばれる。 ・フィヨルドとは氷河が消え去ったあと海水が 入り込んでつくった地形である。 ・氷河がはこんでいた岩石が堆積したモレーン という地形がみられる。 ・中央をサザンアルプスが南北に縦断している ため,西側はきわめて多雨だが,東側は乾燥 している。 ・NZ では日本のようにはっきりとした四季は ない。 ・天敵がいないので大型化した飛べないモアや ペンギンがいた。 ・寿命が 100 年のトカゲ(トァタラ)がいる。 ・寿命が 1000 年になる樹木(トタラ)や 1500 年になる樹木(カウリ)がある。 ・NZ の国立公園は自然をいかした 公 園 で あ る。 ・NZ の世界遺産は自然遺産(テ・ワヒポウナ ム−南西 NZ)(NZ の亜南極諸島),複 合 遺 産(トンガリロ国立公園)がある。 島国 海洋 火山帯 火山 造山活動 山脈 氷河 フィヨル ド モレーン 気候 動物相 植物相 国立公園 世界遺産 自然遺産 複合遺産 M. Q.ニュージーランドの自然 はどのようか,また,それはどの ように人々によって利用されてい るのか? ○ニュージーランドの自然は,南北に長く,火 山,造山活動,氷河などによってつくられ,南 島ではサザンアルプスによって大きく東西で異 なる気候がみられ,寿命の長い植物や動物など が存在し,固有の自然には国立公園や世界遺産 になっているものもある。 ―170 ―

(13)

3 ニュージーランドの人々と歴史 I マオリ(2 時間目前半) M. Q.ニュージーランドにはじめにやってきた人々とその歴史はどのようであったか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 3. 1.はじめて NZ に渡ってきた 人々はどういう人々で,どこか らきたのかだろうか? 3. 2.マオリはどんな狩猟をした のか? 3. 3.マオリはどんな農業をした のか? 3. 4.マオリはどんな道具を使っ ていたのか? 3. 5.マオリの社会はどんな仕組 みをもっていたのか? 3. 6.マオリの宗教や信仰はどん なものだったのか? 3. 7.タプとマナとは何なのか? 3. 8.マオリが闘いに備えて作っ たものは何か? 3. 9.マオリの人々は今どうなっ ているのか? 3. 10.マオリの神話にはどんな 話があるのか? 3. 1. 3. 2. 3. 3. 3. 4. 3. 5. 3. 6. 3. 7. 3. 8. 3. 9. 3. 10. ・8 世紀頃ポリネシア系の人々が渡ってきた。 ・13 世紀頃にハワイキと呼ばれた土地からマ オリが大量に移住してきた。 ・マオリはモアなど飛べない鳥の狩猟をした。 ・マオリはクマラやタロイモなどを栽培した。 ・マオリは石で作った道具(石器)を使ってい た。 ・伝統的なマオリ社会は階級社会で,ほとんど が男系相続であった。 ・マオリ社会ではそれぞれの部族内で部族長, 男,女,奴隷が行う日常の責務が決められて いた。 ・マオリの宗教は,他のポリネシア文化の宗教 とほとんど同じであった。 ・海,空,闘い,農業,その他の神々が住まう 複雑な宗教世界が考えられていた。 ・タプは聖なるものと禁じられたものについて の複雑なおきてであり,タブーという語のも とになった。 ・マナは個人の魂の力,威信である。 ・マオリは闘いに備えてパといわれる砦を丘の 上にひな壇状に作った。 ・オークランドでは小さな火山がパとして用い られた。 ・NZ のエスニックグループの 1 つとなってい る。 ・マオリの神話にはマウイという名の半神半人 の話があり,ポリネシア文化圏に伝承されて いる話と同様である。 ポリネシ ア系 マオリ 移住 狩猟 栽培 石器 階級社会 部族 宗教 タプ タブー マナ パ エスニック グループ 神話 文化圏 M. Q.ニュージーランドにはじ めにやってきた人々とその歴史は どのようであったか? ○ニュージーランドの人々の中には他の人々に 先立ってその地へ移住し,定着して狩猟や農業 を行い,伝統的な部族社会や複雑な宗教世界を もった文化を形成したマオリがいる。 資料 2. 1. NZ の周辺の地図 2. 2. NZ の北島(古澤道子・日比谷香編『ニュージーランドの暮らし 方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 66)(ロンリープラネット『ロンリープラネ ットの自由旅行ガイド ニュージーランド』メディアファクトリー 2004 pp. 58−59)ニュージー ランドの地震の震央(植村善博『図説 ニュージーランド・アメリカ比較地誌』ナカニシヤ出版 2004 p. 13)2. 3. NZ の南島(古澤道子・日比谷香編 前掲書 2. 2. p. 66)(ロンリープラネット 前掲書 2. 2. p. 56)2. 4.フィヨルド(佐藤圭樹『ニュージーランドすみずみ紀行』凱風社 1999 pp. 37−38)2. 5.南島の気候(古澤道子・日比谷香編 前掲書 2. 2. p. 67)(佐藤圭樹 前掲書 2. 4. pp. 53−54)2. 6. NZ の春夏秋冬パーマストン・ノースのクリモグラフ(植村善博『図説 ニュージ ーランド・アメリカ比較地誌』ナカニシヤ出版 2004 p. 37)2. 7. NZ の動物(上野光一編『るる ぶワールドガイド ニュージーランド』JTB パブリッシング 2005 p. 17)2. 8.ニュージーランド の国立公園(植村善博 前掲書 2.6. p. 27)2. 9. NZ の世界遺産(上野光一編 前掲書 2. 7. p. 17) ―171 ―

(14)

資料 3. 1.マオリ(松下寿久 先史時代のニュージーランド 歴史教育者協議会編『知っておきた いオーストラリア・ニュージーランド』青木書店 1999 pp. 167−168)(古澤道子・日比谷香編『ニ ュージーランドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 74)(ロンリープラ ネット『ロンリープラネットの自由旅行ガイド ニュージーランド』メディアファクトリー 2004 p. 26)3. 2.モア(ロンリープラネット 前掲書 3. 1. pp. 26−27)3. 3 マオリの農業(ロンリープ ラネット 前掲書 3. 1. pp. 26−27)(松下寿久 前掲書 3. 1. p. 168)3. 4.マオリの道具(青柳まち こ 先住民マオリ 青柳まちこ編『もっと知りたいニュージーランド』弘文堂 1997 pp. 38−39) 3. 5.マオリの社会(松下寿久 前掲書 3. 1. p. 169)3. 6.マオリの宗教(ロンリープラネット 前掲書 3. 1. p. 27)3. 7.なし 3. 8.パ(松下寿久 前掲書 3. 1. p. 169)3. 9.マオリの人口〈#ニ ュージーランドのエスニックグループ(植村善博『図説 ニュージーランド・アメリカ比較地誌』 ナカニシヤ出版 2004 p. 11)〉(石出法太 アオテアロアをめざして 歴史教育者協議会編『知っ ておきたいオーストラリア・ニュージーランド』青木書店 1999 p. 163)(内藤暁子 アオテアロ アの先住民マオリ 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 43−44)3. 10.マオリの神話(ロンリープラネット 前掲書 3. 1. pp. 50−51) 4 ニュージーランドの人々と歴史 II(2 時間目後半) M. Q.ニュージーランドに後にやってきた人々とその歴史はどのようであったか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 4. 1.はじめて NZ へやってきた ヨーロッパ人はだれか,いつご ろか? 4. 2.NZという名はだれがつけた のか? 4. 3.もっともイギリス的といわ れる NZ の町は? 4. 4.オランダ人にかわってたく さん入ってきたイギリス人はマ オリの人々とどんな関係であっ たのか? 4. 5.ワイタンギ条約とはどのよ うな条約であったのか? 4. 6.ワイカト戦争(1863 年)と はどんな戦争であったのか? 4. 7. 19世紀の NZ への大量移民 はなぜうみだされたのか? 4. 1. 4. 2. 4. 3. 4. 4. 4. 5. 4. 6. 4. 7. ・はじめて NZ を探検したのはオランダ人のア ベル・T・タスマンで,1642 年である。 ・NZ へヨーロッパ人としてはじめて上陸した のはイギリス人のジェームズ・クックで,1769 年であり,イギリス領であると宣言した。 ・オランダ人である。 ・マオリの人々はアオテアロアとよぶ。 ・もっともイギリス的といわれる NZ の町はク ライストチャーチである。 ・移住者のためにキリスト教の伝道所がつくら れた。 ・1820 年代には亜麻や木材の取引によりヨー ロッパ人とマオリの小さな共同居住地もつく られた。 ・ワイタンギ条約とは,イギリス政府の権限を すべて認めるかわりに,マオリに英国民とし ての完全な平等を認めた条約であった。 ・ヨーロッパ人が多く移住してくることによっ てマオリの人々との間で対立が起こり戦争と なった。 ・オタゴ地方などで金脈が発見されて,ゴール ドラッシュがおこったことも一因であった。 タスマン クック クライスト チャーチ 伝道所 共同居住 地 国民 平等 対立 ゴールド ラッシュ M. Q.ニュージーランドに後に やってきた人々とその歴史はどの ようであったか? ○ニュージーランドの人々の中には他の人々よ り後でニュージーランドを探検し移住し,定着 し,新しい社会や文化を形成したオランダ人や イギリス人などの人々がいる。 資料 4. 1.タスマンとクック(『ロンリープラネットの自由旅行ガイド ニュージーランド』メデ ィアファクトリー 2004 pp. 27−28)(佐藤圭樹『ニュージーランドすみずみ紀行』凱風社 1999 pp. 57−59)4. 2. NZ とアオテアロア(石出法太 アオテアロアをめざして 歴史教育者協議会編 『知っておきたいオーストラリア・ニュージーランド』青木書店 1999 p. 162)4. 3.クライストチ ャーチ(写真)4. 4. NZ への移住とマオリとの戦争(ロンリープラネット 前掲書 4. 1. p. 285 より ―172 ―

(15)

5 ニュージーランドの文化と生活(3 時間目前半) M. Q.ニュージーランドでは「伝統的な文化と生活」と「新しい文化と生活」とは今日の文化と生 活においてどのような関係になっているか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 5. 1. NZのラグビーチームが試合 前に踊っていたのは何か,どん な意味があるのか? 5. 2.英語とマオリ語,生活の中 でマオリ語が使われているのは 何か? 5. 3.マオリの人々はどんな文化 をもっているのか? 5. 4. NZの学校はどうなっている のか? 5. 5. NZの紙幣に描かれている登 山家とはだれか? 5. 6. NZの人々にとってスポーツ とはどんなものか? 5. 7.〈エピソード〉「アイ・アム ・ケーブルカー」とは何か? 5. 8. NZの地方の路線バスが乗客 以外にも運んでいるも の は 何 か? 5. 9.マオリの伝統的なハンギ料 理はどのようなものか? 5. 10. NZのヨーロッパ系の人々 の家庭での伝統的な料理はどの ようなものか? 5. 11.〈エピソード〉日本にあって NZで見かけない日用品は何か? 5. 1. 5. 2. 5. 3. 5. 4. 5. 5. 5. 6. 5. 7. 5. 8. 5. 9. 5. 10. 5. 11. ・NZ のラグビーチームが試合前に踊っていた のはハカである。 ・ハカはかつてマオリが戦さの前などに戦意高 揚のために歌ったものである。 ・NZ の公用語は英語とマオリ語である。 ・NZ の英語はキーウィ・イングリッシュと呼 ばれる。 ・マオリ語は,すべてではないが,時々地名と して使われている。 ・マオリには個性的な神話や踊りがある。 ・マオリには視覚芸術として木彫装飾がある。 ・マオリには入れ墨の習慣がある。 ・学校は制度としてはさまざまだが,共通して いるのは,5∼6 歳をジュニア 1・2 年,7∼10 歳をスタンダード 1∼4 年,11∼17 歳をフォ ーム 1∼7 年と呼ぶこと,満 5∼15 歳が義務 教育であることである。 ・NZ では子どもたちは満 5 歳になった日にば らばらに入学する。 ・サー・エドモンド・ヒラリーで,1953 年エ ベレスト山初登頂に成功した。 ・ラグビーもさることながら,ゴルフをする 人々がもっとも多く,ヨット,トレッキング など,NZ の人々にとってスポーツは欠かせ ないものである。 ・ケーブルカーが故障したときの,代替バスの 張り紙である。 ・NZ の地方の路線バスは,乗客以外に,新聞 を運んでおり,時には郵便物や現金まで運ん でいる。 ・蒸し焼き料理である。 ・NZ の国民食はかつてはラムやホゲットであ った。 ・NZ の 国 民 食 は 今 日 で は 乳 製 品,果 物,野 菜,ワイン,魚そして蜂蜜などがこれに加え られる。 ・タオルケットやポケットティッシュである。 ハカ 英語 マオリ語 公用語 木彫装飾 入れ墨 義務教育 ヒラリー ゴルフ バス ハンギ料 理 国民食 ラム M. Q.ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で は 「伝統的な文化と生活」と「新し い文化と生活」とは今日の文化と 生活においてどのような関係にな っているか? ○ニュージーランドの文化と生活は,伝統的な マオリ文化や生活とヨーロッパからもたらされ た新しい文化や生活とが複合して今日の多様な 様相を作り出している。 抄出)4. 5.ワイタンギ条約(内藤暁子 アオテアロアの先住民マオリ 日本ニュージーランド学 会編『ニュージーランド入門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 39−41 4. 6.ワイカト戦争(なし)4. 7. NZへの移民(ロンリープラネット 前掲書 4. 1. pp. 30−31 より抄出)NZ 略年表(古澤道子・日 比谷香編『ニュージーランドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 75) ―173 ―

(16)

資料 5. 1.NZ へのラグビーの導入(池本健一『ニュージーランドって,こんなとこ!』新泉社 1997 pp. 84−85)5. 2. NZ の公用語(古澤道子・日比谷香編『ニュージーランドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 65)(石出法太 アオテアロアをめざして 歴史教育者協議 会編『知っておきたいオーストラリア・ニュージーランド』青木書店 1999 pp. 163−164)5. 3. (ロンリープラネット『ロンリープラネットの自由旅行ガイド ニュージーランド』メディアファ クトリー 2004 p. 55)(上野光一編『るるぶワールドガイド ニュージーランド』JTB パブリッシ ング 2005 p. 17)5. 4. NZ の学校制度(田辺眞人 ニュージーランドの暮らしと教育 日本ニュ ージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 143−145より抄出, 一部文言修正)(池本美香 教育とその改革 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入 門』慶應義塾大学出版会 1998 p. 151)5. 5.ヒラリー(岩崎恒雄・斉藤達雄 世界の屋根に初登 項した国民−ヒラリー鑄について 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應義 塾大学出版会 1998 pp. 27−28抄出,一部文言修正)5. 6. NZ のスポーツ(ロンリープラネット 前掲書 5. 3. pp. 41−42 抄出)5. 7.「アイ・アム・ケーブルカー」(佐藤圭樹『ニュージーランドす みずみ紀行』凱風社 1999 pp. 236−237)5. 8. NZ のバス(佐藤圭樹 前掲書 5. 7. pp. 217−218)5. 9.ハンギ料理(池本健一『ニュージーランド A to Z』丸善 1998 pp. 58−59)5. 10. NZ の家庭料 理(宮崎智世 ニュージーランドの食生活 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入 門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 192−193)5. 11. NZ の日用品(あいはらゆみ『ニュージーラン ドが,いい−逆さま地図の国,滞在記−』第三書館 2000 pp. 182−183) 6 ニュージーランドの政治と社会(3 時間目後半) M. Q.ニュージーランドでは民主的な政治の理念や福祉的な社会の理想はどう実現されてきたの か? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 6. 1. NZでとられている立憲君主 制とは何なのだろうか? 6. 2.総督とは何か,また,イギ リス連邦にはどんな国があるの か? 6. 3. NZの国旗はどんなものか? 6. 4. NZの議会はどうなっている のか? 6. 5.世界ではじめて女性が投票 できるようになったのはどこの 国か? 6. 6.かつて NZ が福祉の先進国 とされていたのはなぜか 6. 7.マオリの女王がいるのは本 当か? 6. 8. NZでは女性の地位向上のた めにどんな取り組みがされてき たのだろうか? 6. 1. 6. 2. 6. 3. 6. 4. 6. 5. 6. 6. 6. 7. 6. 8. ・ZN の元首はイギリスの君主とされ,独自の 憲法はないが,1952 年制定のセカンド・ニ ュージーランド・アクトが一般的に NZ 憲法 とされる。 ・総督とは君主にかわり連邦の国々に派遣され る,権限を委任された代理人のことである。 ・イギリス連邦にはオーストラリアなど 14 か 国がある。 ・NZ の国旗は,全体の地を青とし,左上部 4 分の 1 にイギリス国旗のユニオン・ジャック をあしらい,右 2 分の 1 に南十字星をあしら っている。 ・NZ では 1950 年に上院が廃止されて以来, 一院制をとっている。 ・NZ であり,女性に参政権が認められたのは 1893年のことである。 ・社会保障制度が世界に先駆けてつくられ,最 近まで,例えば初等教育のみならず高等教育 まで無償であったが,高等教育が有償になる など,他の面でも後退がみられる。 ・マオリの女王がいるのは本当である。ただし, マオリのいくつかの部族によって認められた 女王で,一定の象徴的役割を果たしている。 ・1873 年女性雇用保護法が出され,世界では じめて 8 時間労働を制度化した。 ・1896 年「女の議会」といわれる全国女性委 員会が作られた。 元首 憲法 総督 連邦 国旗 一院制 女性参政 権 社会保障 マオリの 女王 象徴 8時 間 労 働 ―174 ―

(17)

6. 9. NZでは何歳になったら,運 転免許,喫煙,選挙権,飲酒が みとめられるのだろうか? 6. 9. ・NZ では運転免許は 15 歳から認められる。 ・NZ では喫煙は 16 歳から認められる。 ・NZ では選挙権は 18 歳から認められる。 ・NZ では飲酒は 18 歳から認められる。(1999 年までは 20 歳であった。) 運転免許 喫煙 選挙権 飲酒 M. Q.ニュージーランドでは民 主的な政治の理念や福祉的な社会 の理想はどう実現されてきたの か? ○ニュージーランドの政治や社会は,そこに生 じたり持ち込まれた民主的な政治の理念や福祉 的な社会の理想を世界に先駆けて実現してきた が,後退もみられる。 資料 6. 1.立憲君主制(Web 版『広辞林』第 2 版)6. 2.イギリス連邦(正井泰夫監修/成美堂出 版編集部編『今がわかる時代がわかる 世界地図 2007年版』成美堂出版 2007 p. 13)6. 3. NZ の国旗(高橋康昌 国旗と南十字星 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應 義塾大学出版会 1998 pp. 67−68)6. 4. NZ の議会(上野光一編『るるぶワールドガイド ニュー ジーランド』JTB パブリッシング 2005 p. 16)古澤道子・日比谷香編『ニュージーランドの暮ら し方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 70)6. 5.世界初の女性参政権(石出法太 活躍する女性たち 歴史教育者協議会編『知っておきたいオーストラリア・ニュージーランド』 青木書店 1999 pp. 160−161)6. 6.福祉の先進国(ロンリープラネット『ロンリープラネットの 自由旅行ガイド ニュージーランド』メディアファクトリー 2004 pp. 32−33)6. 7.マオリの女 王(石出法太 前掲書 6. 5. p. 159)6. 8. NZ での女性の地位向上の取り組み(石出法太 前掲書 6. 5. p. 159)6. 9. NZ では何歳から権利があるか(あいはらゆみ『ニュージーランドが,いい−逆 さま地図の国,滞在記−』第三書館 2000 p. 174) 7 ニュージーランドの経済と産業(4 時間目前半) M. Q.ニュージーランドの経済と産業はどのようにその条件を活かしたり,克服して,発展してき たのか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 7. 1. NZの主要な産業は何か? 7. 2. NZの牧畜業を世界と結び付 けることが可能になった発明と は何か? 7. 3. NZではオイルショックなど 経済危機に対してどのような政 策がとられたのか? 7. 4. NZでは消費税は高いのか? 7. 5. NZには鹿の牧場があるとい うが本当か? 7. 6. NZのキウイフルーツの意外 な点は何か? 7. 7. NZのブドウからつくられる 輸出品は何か? 7. 8.〈トピック〉NZ の羊から羊 毛を刈り取る作業,一日に一人 で刈り取った最高記録 は 何 頭 か? 7. 9.〈トピック〉あなたのまわ りにあるかもしれない NZ の林 産加工品とは何か? 7. 1. 7. 2. 7. 3. 7. 4. 7. 5. 7. 6. 7. 7. 7. 8. 7. 9. ・NZ の主要な産業は牧畜業である。 ・18882 年の冷凍船の発明である。 ・NZ の政府はさまざまな政策を打ち出し,経 済改革を断行した。 ・NZ は経済改革の結果経済成長を遂げるにま でいたった。 ・NZ の消費税は 15% である。 ・NZ には鹿の牧場がある。 ・鹿肉は輸出もされている。 ・NZ のキウイフルーツは NZ 原産ではなく, 中国原産である。 ・NZ のブドウからはワインが造られ輸出され る。 ・NZ での羊毛を刈り取る作業の一日(9 時間) 当たりの最高記録は 720 頭である。 ・紙である。「ネピア」は NZ のネピアにある 日本と NZ の合弁会社で作られた製品であ る。 牧畜業 冷凍船 オイルシ ョック 経済改革 経済成長 消費税 鹿肉 キウイフ ルーツ ワイン 羊毛 紙 ―175 ―

(18)

7. 10. NZの農業・畜産を保護す るために空港などでは NZ への どんな持ち込み制限が行なわれ ているか。 7. 10 ・植物やその種子,畜産加工品などの厳しい持 ち込み制限が行なわれている。 持ち込み 制限 M. Q. ニュージーランドの経 済と産業はどのようにその条件を 活かしたり,克服して,発展して きたのか? ○ニュージーランドの経済や産業は,その自然 的条件を基礎とした牧畜や農業を中心とする が,世界の国々との関係や,その関係を保証す る冷凍船の発明で成長したり,オイルショック によって停滞したこともある。 資料 7. 1. NZ の主要な産業(「外務省/各国・地域情勢/大洋州/ニュージーランド」http : //www. mofa.go.jp/mofaj/area/nz/data.html 2007. 2. 9.アクセス)(古澤道子・日比谷香編『ニュージーラン ドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 72)(池本健一『ニュージーラン ド A to Z』丸善 1998 p. 138, p. 141)NZ の農林水産業(二宮健三『データブックオブ・ザ・ワー ルド 2006 年版−世界各国要覧と最新統計−』二宮書店 2006 p. 458 一部修正)NZ の鉱業(二 宮健三 前掲書 p. 458 一部修正)7. 2.冷凍船の発明(池本健一『ニュージーランド A to Z』 丸善 1998 pp. 144−146)7. 3. NZ の経済危機への取り組み(成清美治 世界一の高度福祉国家 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應義塾大学出版会 1998 pp. 122−123) 〈#NZ の鉱業(二宮健三 前掲書 p. 458 一部修正)〉7. 4.消費税率(なし)7. 5.鹿の牧場 (金山等『白雲のたなびく国−ニュージーランド物語−』論創社 1997 pp. 42−43)(古澤道子・日 比谷香編『ニュージーランドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 p. 72) (柳功 羊の話 歴史教育者協議会編『知っておきたいオーストラリア・ニュージーランド』青木 書店 1999 pp. 151−152)7. 6.キウイフルーツ(池本健一 前掲書 7. 1. pp. 198−201 要点要約) 7. 7.(池本健一 前掲書 7. 1. p. 201)7. 8.羊毛刈りの記録(柳功 前掲書 7. 5. p. 151)7. 9.(柳 功 前掲書 7. 5. p. 152)7. 10.空港などの持ち込み制限(なし) 8 ニュージーランドと世界の結び付き(4 時間目後半) M. Q.ニュージーランドはどのように政治面や経済面及びその他の面で世界の国々と結び付いてい るのか? 発問 S. Q. 資料 引き出したい答え A. 概念等 8. 1.ヨーロッパから遠い NZ が ボーア戦争や両大戦に出兵した のはなぜか?派兵された兵士た ちはどうなったのか? 8. 2.イギリスが EEC に加盟 す ると,NZ にとってどんな不利 益が生じたのか?イギリスへの 依存から脱却するために NZ は どうしたのか? 8. 3.フランスが核実験を行なっ たとき,NZ はどういうことを 行なったのか? 8. 4. NZの主要貿易品目と相手国 からどんなことがわかるか? 8. 5. NZが外貨獲得のために力を 入れていることは何か? 8. 1. 8. 2. 8. 3. 8. 4. 8. 5. ・NZ はイギリス連邦に属する国であり,NZ の国民は宗主国イギリスを助けるべく参戦し た。 ・NZ の兵士たちは,たくさんの戦死者をだし た。 ・NZ の対英輸出量が減り,経済的打撃を大き く受けた。 ・NZ はさまざまな経済改革を断行し,英国依 存の経済から脱却した。 ・NZ は核実験への抗議を表すために,閣僚の 一人を乗せた船を実験場に派遣した。 ・NZ の主要輸出品は酪農品,食肉であり,主 要輸入品は自動車,機械である。 ・NZ の貿易相手国はかつてはイギリスであっ たが,今では日本を含むアジアやアメリカで ある。 ・NZ が外貨獲得のために力を入れているのは 観光業や,映画ロケ地の誘致などである。 宗主国 参戦 戦死者 輸出 経済改革 核実験 輸出品 輸入品 貿易相手 国 外貨獲得 ―176 ―

(19)

5

『ニュージーランド』の内容構成の概要

ここでは各ページの内容構成について概要をまとめておきたい。 〈1 ニュージーランドを知る(1 時間目前半)〉では,「M. Q. ニュージーラン ドの地理的特質はどんな自然的・人文的条件によって規定されているのか?」 にたいして「M. A. ニュージーランドの地理的特質は,NZ が南半球にありオ ーストラリアからでも 1600 km も離れ,世界で一番早く一日(一年)が始ま る時間帯に属し,南北に長くイギリスよりもやや大きい形状や面積,約 400 万 人の総人口や北に偏った人口分布,人口的には中心的な都市オークランドや南 北の中央に建設された首都ウエリントンなどによって示される。」といった事 実的知識が獲得される。このページでは,最後の「まとめてみよう」の「1 ある国の地理的特質は,その国の絶対的及び相対的な位置,時間帯,国土とそ の形状や面積,総人口や人口分布,中心的都市などによって示される。NZ に 8. 6. NZの魚介類の輸出先の第 1 位はどこの国か?どんなものを 輸出しているのか? 8. 6. ・NZ の魚介類の 輸 出 先 の 第 1 位 は 日 本 で あ る。 ・NZ は日本へ鯛やホキ,サケ,ホキすり身な どを輸出している。 M. Q.ニュージーランドはどの ように政治面や経済面及びその他 の面で世界の国々と結び付いてい るのか? ○ニュージーランドは,核実験の問題をめぐる 外交や第 1 次第 2 次世界大戦など戦争への参戦 といった政治的側面で,イギリスの EEC 加盟 による輸出減とそれを補うアジアとの貿易ある いは外貨獲得の手段としての観光などの経済的 側面で,世界の国々と対立したり,結び付いた りしている。 資料 8. 1. NZ の参戦(ロンリープラネット『ロンリープラネットの自由旅行ガイド ニュージー ランド』メディアファクトリー 2004 p. 33)(ロンリープラネット pp. 33−34)8. 2.イギリスの EEC加盟と NZ(古澤道子・日比谷香編『ニュージーランドの暮らし方マニュアル THAT’S NZ 2004−2005』舵社 2004 pp. 70−71)8. 3.非核 NZ(あいはらゆみ『ニュージーランドが,いい− 逆さま地図の国,滞在記−』第三書館 2000 pp. 68−70)非核 NZ の電力(植村善博『図説 ニュ ージーランド・アメリカ比較地誌』ナカニシヤ出版 2004 p. 29)8. 4.〈#NZ の主要貿易品目と 貿易相手国(二宮健三『データブックオブ・ザ・ワールド 2006 年版−世界各国要覧と最新統計−』 二宮書店 200 p. 458)〉8. 5. NZ の外貨獲得手段(ロンリープラネット 前掲書 8. 1. pp. 33−34) (上野光一編『るるぶワールドガイド ニュージーランド』JTB パブリッシング 2005 p. 17)(古 澤道子・日比谷香編 前掲書 8. 2. p. 72)8. 6. NZ の魚介類輸出先(中ちえ子 日本で食べられる ニュージーランドの食品 日本ニュージーランド学会編『ニュージーランド入門』慶應義塾大学出 版会 1998 p. 197) ―177 ―

(20)

ついて学んだことをこの文章にあてはめててレポートにしてみよう。」という 指示で概念的知識の 1 の定着がはかられる。 〈2 ニュージーランドの自然(1 時間目後半)〉では「M. Q. ニュージーラン ドの自然はどのようか,また,それはどのように人々によって利用されている のか?」にたいして「M. A. ニュージーランドの自然は,南北に長く,火山, 造山活動,氷河などによってつくられ,南島ではサザンアルプスによって大き く東西で異なる気候がみられ,寿命の長い植物や動物などが存在し,固有の自 然には国立公園や世界遺産になっているものもある。」といった事実的知識が 獲得される。このページでは,概念的知識の 2 の定着がはかられる。 〈3 ニュージーランドの人々と歴史 I マオリ(2 時間目前半)〉では「M. Q. ニュージーランドにはじめにやってきた人々とその歴史はどのようであった か?」にたいしては「M. A. ニュージーランドの人々の中には他の人々に先立 ってその地へ移住し,定着して狩猟や農業を行い,伝統的な部族社会や複雑な 宗教世界をもった文化を形成したマオリがいる。」といった事実的知識が獲得 される。このページでは,概念的知識の 3 の定着がはかられる。 〈4 ニュージーランドの人々と歴史 II(2 時間目後半)〉では「M. Q. ニュー ジーランドに後にやってきた人々とその歴史はどのようであったか?」にたい しては「M. A. ニュージーランドの人々の中には他の人々より後でニュージー ランドを探検し移住し,定着し,新しい社会や文化を形成したオランダ人やイ ギリス人などの人々がいる。」といった事実的知識が獲得される。このページ では,概念的知識の 4 の定着がはかられる。 〈5 ニュージーランドの文化と生活(3 時間目前半)〉では「M. Q. ニュージ ーランドでは「伝統的な文化と生活」と「新しい文化と生活」とは今日の文化 と生活においてどのような関係になっているか?」にたいしては「M. A. ニュ ージーランドの文化と生活は,伝統的なマオリ文化や生活とヨーロッパからも たらされた新しい文化や生活とが複合して今日の多様な様相を作り出してい る。」といった事実的知識が獲得される。このページでは,概念的知識の 5 の 定着がはかられる。 ―178 ―

(21)

〈6 ニュージーランドの政治と社会(3 時間目後半)〉では「M. Q. ニュージ ーランドでは民主的な政治の理念や福祉的な社会の理想はどう実現されてきた のか?」にたいしては「M. A. ニュージーランドの政治や社会は,そこに生じ たり持ち込まれた民主的な政治の理念や福祉的な社会の理想を世界に先駆けて 実現してきたが,後退もみられる。」といった事実的知識が獲得される。この ページでは,概念的知識の 6 の定着がはかられる。 〈7 ニュージーランドの経済と産業(4 時間目前半)〉では「M. Q. ニュージ ーランドの経済と産業はどのようにその条件を活かしたり,克服して,発展し てきたのか?」にたいしては「M. A. ニュージーランドの経済や産業は,その 自然的条件を基礎とした牧畜や農業を中心とするが,世界の国々との関係や, その関係を保証する冷凍船の発明で成長したり,オイルショックによって停滞 したこともある。」といった事実的知識が獲得される。このページでは,概念 的知識の 7 の定着がはかられる。 〈8 ニュージーランドと世界の結び付き(4 時間目後半)〉では「M. Q. ニュ ージーランドはどのように政治面や経済面及びその他の面で世界の国々と結び 付いているのか?」にたいしては「M. A. ニュージーランドは,核実験の問題 をめぐる外交や第 1 次第 2 次世界大戦など戦争への参戦といった政治的側面 で,イギリスの EEC 加盟による輸出減とそれを補うアジアとの貿易あるいは 外貨獲得の手段としての観光などの経済的側面で,世界の国々と対立したり, 結び付いたりしている。」といった事実的知識が獲得される。このページで は,概念的知識の 8 の定着がはかられる。

6

.おわりに

成果と課題

6. 1.内容面の成果と課題 本研究の内容面の成果は以下の通りである。 1)中学校社会科の内容構成として,地理的分野にとどまらない,総合的な性 格をもった社会科本来の単元が開発できた。当初は,選択社会科の投げ込み的 ―179 ―

(22)

な単元の開発を考えていたが,開発に当たり,3 分野及びその相互の関連に留 意することで,正規の地理的分野にも位置付き,かつ,中学校社会科全体を見 据えたカリキュラムに位置付く単元という性格のものとなった。 2)他国(外国)理解という国際理解教育の原点に立ち返りながら,社会科と いう教科の特質をいかすことで,グローバルな視点の導入の場とすることがで きた。地理的な面では,一国の位置付けから一国の地理的な問題に至るまでの 内容を,世界と結び付けることで,グローバルな空間に位置付けて捉えさせる ことができるものとなった。歴史的な面では,一国史から世界史までの内容 を,その歴史を形成した複数の人々の視点から,また,世界という背景のもと で捉えさせることでグローバルな時間に位置付けて捉えさせることができるも のとなった。公民的な面では,一国の政治・経済・社会の諸問題を普遍的な政 治・経済・社会の諸理念の具体化や進展・後退とみることで,政治・経済・社 会の理想や理念の普遍的な見方・考え方へと導き,グローバルな普遍性の尺度 に諸問題を位置付けて捉えさせることができるものとなった。 3)ニュージーランドに関わる個別的な知識の習得にとどまらず,概念的知識 や,それをつなぐ一般化(法則)の習得を明示して行なうことで,中学校にお ける地理的分野の世界の国または地域を選択して行なう学習の内容構成のサン プル(モデル)を提示することができた。今回の場合,任意の世界の国または 地域を扱う場合,それを総合的に(社会科的に)取り扱うとするならば,少な くとも必要不可欠な視点が 8 つあることが明らかになった。 本研究の内容面の課題は以下の通りである。 1)中学校社会科の内容構成として,必要不可欠な視点すべてを教材化したた めに,網羅的になり,いわゆる静態地誌的になってしまった面は否定できな い。今後は,動態地誌的にするなどもう少し変化をつけたものを提示すること が課題である。 2)グローバルな問題もつまるところ,一国の,最終的には一人の人間に立ち 現れてくるものである。その点では,内容面で,事例的内容やストーリー性の ある内容などを取り入れ,生徒にもっと興味・関心を喚起する内容に改良する ―180 ―

(23)

必要がある。 3)生活文化や世界遺産の学習など,もっと事例が多く,自然だけでなく文化 や人間の営みを感じさせるものにすべきではないかと思っている。 6. 2.方法面の成果と課題 本研究の方法面の成果は以下の通りである。 1)CP の特性をいかした電子教科書風の教材ソフトが開発できた。教科書風 であるため,そのインターフェイスは,中学校の社会科の授業を普段は紙媒体 の教科書を用いて授業を進めている教師にとっても,また学習を行なっている 生徒にとってもまったく違和感がないものとなった。また,ページを繰るよう に学習を進めていくことができることもさらに教科書風というこの感覚を強化 している。 2)CP の特性をいかしたハイパーテキストである本教材は,画像や各種資料 などがひとつに統合されたメディア・シンセシス教材でもある。標準的な CP の画面に収まってしまう全 8 ページ(8 画面)のインターフェイスはもしそれ が紙媒体であればその面積をこえる情報をそこに盛り込むことは不可能であ る。ところが,電子教科書である本教材ソフトでは,各ページが基本的に 5 つ の部分に分かれるだけでなく,分かれた部分のさらに文章や,写真などの映 像,それぞれがまた,他の情報をのせたページとリンクしており,その情報の ページを必要に応じて 5 つの部分の中に呼び寄せて開いたり,必要がなくなれ ば閉じたりすることができるように設計してある。教科書風の 1 ページの画面 は,「調べよう・考えよう」では,発問が提示されており,それをもとに生徒 が「本文」や「写真・図表・地図・資料」などを手がかりに調べたり,考えた りすることをうながし,予想(答え)を出した後に,そこをクリックすると, その答えが示され,同時に,多くの場合,その根拠となった原典資料の本文と 出典が提示される。つまり,1 つのページ自体がツリー構造をもっており,異 なる階層の上下や同一階層の行き来により多大な情報とリンクされているので ある。「写真・図表・地図・資料」も小アイコンや見出し文字で示されている ―181 ―

(24)

が,いずれも,クリックひとつで見易い大きさに拡大表示され,教師・生徒が 授業の途上で参照しやすく設計することができた。また,小アイコンや見出し 文字で示すことで,ページに搭載できる写真・図表・地図・資料の数や大きさ は紙媒体の教科書では考えられないほどのものが可能であることを示してい る。 3)本教材の開発を行なった CP は Mac である。本研究者の一連の研究の基礎 も Mac であったが,Mac の OS が 9.2. から 10.X. に変わるとき本研究の基本 的な教材開発ソフトである付属の簡易エディターがシンプル・テキストからテ キスト・エディットに変わった。しかし,いずれもこれらを用いて作成した HTMLは Windows のメモ帳で作成したものと同様のものであり,Windows で も読むことが可能であり,ソフトとして同等に使用できる。(ただし,ごく一 部の画像は,形式的に読めないものがある。)教材ソフトの閲覧(使用)に

は,Mac では閲覧ソフトである Safari, Windows では Internet Explorer や Fire

Foxなどバンドルされているかインターネット上で無償で提供されているソフ トがあればよい。こうした点でこの教材は OS を問わず使用可能な汎用性を有 している。また,それぞれのページはごく簡単なスクリプトから構成されてい るので,同等の教材ソフトを開発したい教師は提供された教材ソフトの任意の ページまたはウィンドウのスクリプトを上記簡易エディターにドロー・アンド ・ドロップしてみればそのスクリプトがわかるので,それをコピーしてデータ の差し替えなどさえすれば独自の教材が作成可能である。すなわち,この教材 ソフトは,簡易性と追試可能性を兼ね備えている。 本研究の方法面の課題は以下の通りである。 1)成果の 1)∼2)をさらにいっそう推し進めることが課題である。教材ソフ トとしては,当面,それ自体としてクローズドなものとして設計することにな るが,使用する教師や生徒にとっては,もっとオープンな感じをもたせる教材 ソフトへと改善・改良していく必要がある。 2)さらに,教材ソフトとしてはクローズドなものであるにしても,教材ソフ トをインターネット上に公開してオープンな教材として教師や生徒に広く使用 ―182 ―

(25)

してもらうことも考えられる。ただし,この場合,資料として引用した文献な どの著作権の問題が発生する懸念がある。 3)次の教材ソフトは内容面でも(たとえばストーリー性をもたせるなど)こ の電子教科書とは少しちがうものを構想している。そうなると,当然方法面で も内容の展開に即応した新たなメディア・シンセシス教材とよべるようなもの にすることが課題である。 *本研究は平成 18・19 年度日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)「メディア・シ ンセシスを用いた社会系教科教材開発の基礎的研究」(課題番号 1850734)及び 2006 年度同志社大学国内研究の成果である。 注 盧 報告者による先行研究は以下の通りである ・金子邦秀 ハイパーカードを用いた社会科教材開発の基礎的研究(1)−『地理へ の挑戦』と『ベトナム戦争』− 『人文学』第 157 号 同志社大学人文学会 pp. 1 −22 1995年 ・金子邦秀 ハイパーカードを用いた社会科教材開発の基礎的研究(2)−『ベルサ イユ条約』と『羊の角蠡』− 『文化学年報』第 45 輯 同志社大学文化学会 pp. 31−44 1996年 ・金子邦秀 ハイパーカードを用いた社会科教材開発の基礎的研究(3)−『19 世紀 の歴史発見』と『アンデスの世界』− 『教育文化』第 5 号 同志社大学文学部教 育学研究室 pp. 20−38 1996年 ・金子邦秀(研究代表者) 平成 6 年度−平成 8 年度基盤研究 C「ハイパーカード を用いた社会科教材開発の基礎的研究」(科学研究費補助金報告書)1997 年 ・金子邦秀 ハイパーメディアによる教材開発(1)−高校日本史「室町時代の人々 の一日コース− 『教育文化』7 同志社大学教育学研究室 pp. 28−41 1998年 ・金子邦秀[歴史の流れを世界の歴史を背景に理解させる中学校のモデル]東アジ アの海をめぐる躍動−一四∼一五世紀の日本と東アジア− 『教育科学社会科教 育』No. 476 明治図書 pp. 94−99 1999年 ・金子邦秀 ハイパーメディアによる教材開発(2)−高校日本史「室町時代の人々 の一月」コース−『教育文化』9 同志社大学教育学研究室 pp. 1−26 2000年 ・金子邦秀(研究代表者)平成 9 年度−平成 12 年度基盤研究 C(2)「メディア・ミ ックスを用いた社会系教材開発の基礎的研究」(科学研究費補助金報告書)2000 年 ・金子邦秀 ハイパーメデイアによる高校日本史の教材開発 浅香勝輔教授退任記 ―183 ―

参照

関連したドキュメント

ニホンジカはいつ活動しているのでしょう? 2014 〜 2015

① 新株予約権行使時にお いて、当社または当社 子会社の取締役または 従業員その他これに準 ずる地位にあることを

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

これらの船舶は、 2017 年の第 4 四半期と 2018 年の第 1 四半期までに引渡さ れる予定である。船価は 1 隻当たり 5,050 万ドルと推定される。船価を考慮す ると、

全ての個体から POPs が検出。地球規模での汚染が確認された北半球は、南半球より 汚染レベルが高い。 HCHs は、 PCBs ・ DDTs と異なる傾向、極域で相対的に高い汚染

しい昨今ではある。オコゼの美味には 心ひかれるところであるが,その猛毒には要 注意である。仄聞 そくぶん