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た その後, より高い発電効率を達成するため,1967 年には我が国初の超臨界圧定圧ボイラが運転開始された さらに, 超臨界圧化は急速に進行して,1974 年に建設された発電ユニットにおいては 82% を占めるに至った 1 ) 単機容量 1000 MW 級の超臨界圧ボイラに使用される BFPは, そ

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1.は じ め に

 本稿では,高圧ポンプの主用途である火力発電用ボイ ラ給水ポンプ(以下BFPと呼ぶ)について,その変遷や 構造・技術上の特徴について概説する。  BFPは,火力発電所の心臓部に相当する極めて重要な 補機の一つである。火力発電では,高圧蒸気でタービン に動力を与えて,タービンと直結された発電機が回転す ることによって発電を行う。ここで使われる蒸気は, BFPによってボイラへ高温の水を送り込むことでつくる ことができる。したがって,万一BFPが計画外停止する と,発電を行うことができなくなることから,BFPには 極めて高い信頼性が必要である。  また,近年において,再生可能エネルギーの普及に伴 い,火力発電には,発電系統安定化のための負荷調整機 能,急速負荷変化対応など,過酷な運用方法への対応が 求められている。BFPについても,部分負荷運転や,起 動停止頻度の増大など運転条件が厳しくなり,より一層 の高機能・高信頼性が要求されている。

2.変 遷

2-1 従来型(コンベンショナル)火力向け BFP  BFPは,ボイラへ高温高圧水を送るポンプであるから, その変遷はボイラの大容量化,高温高圧化と密接な関係 がある。  ボイラなど事業用火力発電設備の単機容量は,設備費 率の低減(スケールメリット)を目的として大容量化が 図られると同時に,熱効率の向上を目指して蒸気条件の 高温高圧化が行われてきた1)  日本国内における歴史をたどると,1955年には単機最 大容量は66 MWであったが,1965年に325 MW,1969年 に600 MW,1974年には1000 MW機が運転開始され,急 速に大容量化の道を歩んできた。1980年以降には,単機 容量600 MW以上のユニットが主流となり,1990年以降 には多数の1000 MW級ユニットが建設されている。  蒸気条件の推移に関しては,1959年には我が国初の蒸 気圧力16.6 MPa(タービン入口)のユニットが製作され

ボイラ給水ポンプ(BFP)

Boiler Feed Pump

  * 風水力機械カンパニー カスタムポンプ事業統括 企画管理統 括部

吉 川   成

* Shigeru YOSHIKAWA  ボイラ給水ポンプ(BFP)は,火力発電所の心臓部に相当する極めて重要な補機の一つであり,事業用火力発電設備の 大容量化,高温高圧化,運用方法の変化,と歩調を合せて,改良・進歩の歴史を歩んでいる。BFPの大型化・高圧化の変 遷と主な仕様,従来型超臨界圧火力及びコンバインドサイクル火力それぞれの発電所向けBFPの代表的な構造,材料,軸 封及び軸受の特徴,BFPの大容量・高性能化開発や100%容量BFP開発と納入実績,再生可能エネルギー導入に伴う火力 発電所運用方法の過酷化に適応するBFPの耐力向上のための構造設計改良,並びに原価低減や省スペース化のためのBFP 設計合理化への取組み事例について解説する。

In a thermal power plant, the boiler feed pump (BFP) is one of the critical auxiliary machines that are equivalent to the heart of the plant. In pace with the increases in the capacity of equipment for thermal power generation, improvements to adapt to higher tempera-tures and pressures, and changes in operation method, BFPs have been improving and advancing. This paper explains how BFPs have been upsized and made compatible to higher pressures; main specifications of BFPs; structures and materials of typical BFPs for con-ventional supercritical thermal power plants and for combined-cycle thermal power plants; characteristics of the shaft seal and bearing; technological development for higher capacities and performance; actual development and delivery of 100%-capacity BFPs; improve-ments to the structure design for increasing the stress resistance of BFPs so that they can adapt to more severe conditions in the opera-tion of thermal power plants associated with the spread of renewable energy; and examples of efforts to streamline the BFP design for manufacturing cost reduction and space saving.

Keywords: Feed water pump, High pressure, Efficiency, Super critical thermal power, Combined cycle thermal power, Reliability, Specific speed,

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た。その後,より高い発電効率を達成するため,1967年 には我が国初の超臨界圧定圧ボイラが運転開始された。 さらに,超臨界圧化は急速に進行して,1974年に建設さ れた発電ユニットにおいては82%を占めるに至った1)。  単機容量 1000 MW級の超臨界圧ボイラに使用される BFP は,その要項が流量約 1 700 t/h,吐出し圧力約 30 MPa,軸動力約20000 kWに達する。このような高圧 力を実現するため,BFPの回転速度は5000 ~ 6000 min−1 の高速回転となる。BFPと駆動機の組合せは50%容量の 蒸気タービン駆動(T-BFP)2 台,起動及び予備用の増 速ギア付電動機駆動(M-BFP)1台とするのが一般的と なった。図1に,ボイラ圧力の増大とBFP吐出し圧力の 関係を示す2)  なお当社は,超臨界圧,超々臨界圧(USC注1)発電ユニッ トのいずれも,その国内初号機にBFPを納入している。 また,1000 MW 発電ユニットにも国産としては初めて となるBFPを納入した実績を有する。  1980年代に入り,原子力発電所が多数建設されてベー スロード運用を担うようになったことに伴い,事業用火 力では,中間負荷運用に対応したユニットが多数となり, 中間負荷域においても高効率を維持可能な超臨界圧変圧 貫流ボイラが主流となった。これに伴い,電動機駆動に ついても可変速仕様が要求されるようになり,増速歯車 内蔵の流体継手付きのものが採用されるようになった。  熱効率向上の取組みは,継続して行われており,1989 年 には主蒸気圧力31.1 MPa,主蒸気温度566 ℃の,700 MW 超々臨界圧(USC)プラントが運転開始されている。 注1:Ultra Super Critical

 表1に,このプラントにおけるBFPの仕様を示す2) 2-2 複合サイクル(コンバインドサイクル)火力向け BFP  このような従来型(コンベンショナル)火力発電システ ムの大容量化,高温・高圧化の動きと並行して,1980年代 半ばには,より高効率な火力発電システムとして,ガス タービン燃焼サイクルとその排熱を利用した蒸気ター ビンサイクルを組み合わせた複合サイクル(コンバイン ドサイクル)発電が実用化された。タービン翼の冷却及 び耐熱技術開発が継続して行われ,ガスタービン燃焼温 度上昇によって,発電効率が更に向上し,最新のコンバ インドサイクルプラント(1600 ℃級ガスタービン)では 送電端効率が60%に達するようになった。また,ガスター ビン燃料に二酸化炭素排出量の少ないLNGを使用するこ とと併せて,環境負荷の低い火力発電システムとして, 近年数多く建設されるようになっている。このコンバイン ドサイクルプラントでは,排熱回収ボイラ(HRSG注2)へ 水を送るためのBFPが必要となる。

注2:Heat Recovery Steam Generator

3.BFP の構造

3-1 コンベンショナル火力向け3)  (1)ケーシング構造  超臨界圧や USCプラントの BFPに要求される吐出し 圧力は,30 ~ 35 MPa程度の高圧で,給水温度も180 ℃ 以上の高温となる。BFPは,高圧・高温仕様に適応する ように設計された二重胴バレル型多段ポンプが使用され る。剛性の高い鍛造製の円筒形外胴の中に,内部ケーシン グと回転体が一体となって組み込まれ,外胴の一端が, 吐出しカバーとボルトによって締め付けられた構造を有 する。外胴,吐出しカバー,吐出しノズルの肉厚や,カバー 締付ボルトのサイズ・本数は,設計圧力(吐出し最高使 用圧力)に対して十分な強度を有するよう,発電用火力 技術基準などの公的規格に準拠して設計される。  外胴は単純な肉厚円筒で高圧とその変動に対して安定 しており,吐出しカバーとの間に渦巻ガスケットを挿入 給水ポンプ吐出し圧力 圧力  MPa ボイラ圧力 約38 MPa 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 31 MPa 約30 MPa 約20 MPa 17 MPa 25 MPa 超々臨界圧(USC) 1989年 1967年 超臨界圧 図 1 ボイラ圧力と給水ポンプ吐出し圧力 表 1 700 MW-USCプラントBFP仕様 用途 主給水 起動及び予備 容量 t/h 1200 730 吐出し圧力 MPa 38.05 37.26 回転速度 min−1 6000 6300 水温 ℃ 188.4 184.1 駆動機 蒸気タービン 電動機(流体継手付) 出力 kW 17500 12000 台数 2 1

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3-2 コンバインドサイクルプラント向け3)  (1)ケーシング構造  コンバインドサイクル火力向けのBFPは,廃熱回収ボ イラへ水を送る。要求される吐出し圧力は15 ~ 20 MPa 程度で,給水温度も150 ℃程度と,超臨界圧火力プラン トに比較するとかなり低い。このため,ケーシング構造 は,一重胴輪切り型多段ポンプが多く使用される。ただ し,プラント急速起動や給水温度急変への追従性が要求 されるため,熱応力・変形解析評価が必須の技術となる。 輪切り型ケーシングは,吸込ケーシング・吐出しケーシン グ・中胴・中間抽出ケーシングがケーシングボルトで締 め付けられ,各ケーシング間の接合部は,メタルタッチ でボルトの締付け面圧によってシールするのが基本構造 である。しかしながら,熱変形解析結果によっては,必 要に応じOリングを装着することで熱過渡時にも給水の 外部への漏れを完全に防止する構造を採用する。  (2)内部構造  コンバインドサイクルプラントの排熱回収ボイラは, 高圧・中圧・低圧ドラムの3 段構造が多く,BFPの途中 段から中間圧の給水を抽出して,中圧ドラムへ給水する 構造とする。つまり1台のBFPで中圧・高圧給水を賄う ことができる。吸込ケーシングから中圧・高圧給水の合 計流量を吸い込み,抽出段から中圧ドラムへの給水量を 抽出した後の段においては,高圧ドラムへの給水量だけ を昇圧する。このため,抽出前後段で異なるNs(比速度) の羽根車及びディフューザを適用することが多い。  ポンプ分類は,輪切り構造ディフューザポンプである。 全ての羽根車が一方向に配列されるためスラストバラン して締付ボルトで固定することで,給水の外部への漏れ を防止する。締付ボルトは,油圧式レンチ,ボルトヒータ, あるいはボルトテンショナを使用して伸び管理を行い, 締付力が適正に得られるようにする。  吐出しカバー側又は必要圧力に応じて吸込側から中段 抽出フランジを設けて中間圧力を取り出し,再熱器冷却 スプレーなどに供することが可能である。  (2)内部構造  内部ケーシング及び羽根車などハイドロ部品の構造に は,水平二つ割・羽根車背面合せ・渦巻型のものと,輪 切り型・羽根車一方向配列・ディフューザ型のものがあ る。後者の場合はバランスデイスクなどのスラストバ ランスのための部品が必要となる。  (3)材料  耐圧部品である外胴・吐出しカバーには,鍛造炭素鋼 が用いられ,ガスケット面や高流速部にオーステナイト ステンレス鋼を盛金して侵食を防止する,内部ケーシン グや羽根車には 13Cr あるいは 13Cr-4Ni のマルテンサイ ト系ステンレス鋳鋼が用いられる。  (4)軸封と軸受  国内事業用火力においては高速・高圧条件に対して摩 耗が少なく連続運転に適する非接触型のスロットルブッ シュやフローティングリングが用いられることが多かっ たが,近年,特に海外プラントでは,メカニカルシール が採用されることが多い。軸受に関しては,強制給油方 式が採用される。  図2にコンベンショナル火力向けBFP構造図の代表例 を示す。 吐出しノズル 温度検出用座 吸込フランジ 強制給油軸受 (ラジアル) スロットルブッシュ バランス戻りフランジ ドレン&ウォーミング用ノズル 再熱器スプレー用 中段抽出フランジ スロットルブッシュ 強制給油軸受 (スラスト) 吐出しカバー 外胴 図 2 超臨界圧火力向け二重胴バレル型BFP構造(例)

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ス部品が必要となる。バランス部品には,バランスディ スク型とバランスドラム型の2 種類がある。バランス部 品から漏れた水は,通常吸込側に戻す。バランス部品で は圧力が低下することで水の温度上昇が起る。温度上昇 を加味した水の飽和蒸気圧力が吸込圧を上回ると,水が フラッシュしてそのままポンプ吸込みへ戻るとポンプの 健全な運転に支障を来たす。その場合は,バランス配管 を脱気器へ戻すように配管する。  両吸込として流量を半分にすることで,必要NPSHを 小さくすることができるので,初段だけを両吸込とした 構造のものが多く使用される。  (3)材料  耐圧部品である吸込・吐出しケーシング及び抽出ケー シ ン グ に は,13Cr-4Ni ス テ ン レ ス 鋳 鋼 が,中 胴 に は 13Cr-4Niステンレス鋼が用いられる。  (4)軸封と軸受  軸封装置には,超臨界圧プラント向けBFPと比較する と,若干圧力や周速条件が緩やかなことから漏れ量の少 ないメカニカルシールが採用される。軸受に関しては, 強制給油方式が採用されるが,超臨界圧コンベンショナ ル火力向けに比較すると周速条件が緩やかであることか ら,後述するように自己潤滑方式の採用もある程度まで 可能である。図3にコンバインドサイクル向けBFP構造 図例を示す。

4.BFP の大型化・高性能化

 火力発電設備の大容量化・高圧化に伴い,BFPも大型 化・高圧化の歴史を歩んできた。BFPは,ボイラに要求 される高圧力を作り出すため,火力発電所で使用される ポンプの中でも,最も消費動力が大きくなる。このため, BFPの効率向上は環境負荷軽減のためにも欠かせない命 題といえる。BFP に使用される羽根車は,その比速度 Ns がおおよそ 120 ~ 250(m3/min,m,min− 1)の範囲 の遠心ポンプである。一般的に,この範囲においての比 速度は大きいほうが,また同一比速度においては流量の 多いほうが,ポンプ効率は高くなる。50%容量の主給水 ポンプとしてBFP2台が通常採用されるBFP構成である が,これを100%容量1台とすることで,大容量化・高比 速度による効率向上を図るとともに,省スペース・省資 源化に寄与することも可能となる4)  国内では,500 MW及び600 MW超臨界圧火力向け主 給水ポンプを100%容量 1 台の仕様で設計製作納入した 実績があり,順調に運転されている。また,一部の国・ 地域においては,1000 MWプラントで100%容量主給水 ポンプ1台での仕様が実用化されており,当社も最近こ の仕様に対応した大型 BFP を製作納入した。この BFP の概略仕様を下記に示す。また,このBFPの出荷前の写 真を図4に示す。 中胴 中圧ドラム給水用フランジ 高圧ドラム給水用フランジ 吐出しケーシング 吸込ケーシング 吸込フランジ ケーシングボルト 軸受(スラスト) 軸受(ラジアル) メカニカルシール メカニカルシール バランス部品 図 3 コンバインドサイクルプラント向けBFP構造(例) 図 4 1000 MW超臨界圧火力向け100%容量BFP 16-72 01/251

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 容量3200 t/h×全揚程3800 m×軸動力37700 kW ×回転速度5000 min−1  比速度 約250(m3/min,m,min−1  大容量・高比速度化は,一般的にポンプ効率にとって 有利である。一方,大容量化に伴う軸動力の増大に伴い, 回転速度が 50%容量 BFPと同じである場合,トルクが 大きくなる分,必要な強度を維持するための主軸直径は 従来に比較して太くなる。同一回転速度で同一揚程とす れば羽根車の直径は変わらないので,主軸が太くなる分, 羽根車子午面流路が邪魔された形となる。このため,主 軸の流路表面や羽根車から出た水の流れを減速して圧力 に変換するボリュート及び段間流路を含めたハイドロ形 状について,非定常流れ解析を含むCFD注3を駆使して, 高効率を達成するための最適形状を求めた。  また,主軸径に関しても,主軸強度解析によって50% 容量(従来実績設計)からの軸径増大が最小限となる最 適径を求めた。100%容量BFPの場合は,1台仕様である ので,万一BFPが計画外停止すると,プラント発電容量 を100% 喪失するので,主軸各部が十分な強度を保持で きるように考慮したことは言うまでもない。

注3:Computational Fluid Dynamics

 表2は,代表的出力・規模の発電所に納入したBFPの 性能比較である。BFP 軸動力は,プラント出力の約 3.5 ~ 4%を占めており,大容量化による効率上昇で軸動力 比を低減することも可能である。500 MW仕様の場合は, 100% 1 台とすることによって,BFP 軸動力のプラント 定格出力に対する比の約 0.5 ポイント削減を達成してい る。ただし,同じ出力であっても,水温(密度)や,容量, 全圧力に違いがあるため,一概に軸動力比だけで比較す ることはできない。効率に着目すると500 MWの場合に は,2 台仕様の効率 82%に対して1台仕様で前述のとお り86%と4ポイントの向上が達成されている4)

5.BFP の耐力向上

 近年,太陽光,風力などの再生可能エネルギーが多く 導入されるようになってきた。再生可能エネルギーは, 化石燃料を使わず,発電に伴う二酸化炭素を排出しない ので,地球温暖化防止対策の一つとして今後も普及が進 むと考えられる。一方,太陽光・風力は天候や風況といっ た気象条件によって発電出力が大きく変動するので,電 力系統の安定運用が困難となる短所を抱えている。これ に対して,火力発電所には,より高い需給調整機能を備 えた柔軟な系統運用が求められるようになってきた。具 体的には,負荷変化速度の向上,最低負荷率の低減,起 動時間の短縮である。  このような火力発電所の需給調整対応化に伴いBFPに ついても,起動停止頻度の増大,給水温度変化,小水量 運転頻度の増大など運用条件が過酷化している。これに 対応して,構造,材料,設計面での見直しを行い,BFP の耐力(ロバスト性)向上を図る取組みが行われてきた。 図 5は,上記の運転条件に適合するように構造及び設計 上の対応を適用したBFP構造の一例である。また具体的 な改良対策項目と,対処となる事象や原因について表3 に示す(表中一部の対策は,必ずしも運転条件過酷化対 応に限るものではないが,全般的なBFP機能信頼性向上 の一環として導入してきたものである5))。

6.BFP の合理化

 既に述べたとおり,BFPは火力発電システムの主配管 系統における心臓部の機能を担うものであるから,高度 の機能・信頼性が要求される。一方で,できるだけ廉価 に電力を供給することも,特に電力需要が逼迫していて 新規火力発電所の建設が多く予定されている新興国に とっては重要なことである。このため,発電プラント機 器構成簡素化への協力や機器の原価低減に努めることも ポンプメーカに求められる課題のひとつである。  ここでは,BFPの合理化への取組みをいくつか紹介する。 6-1 ブースタポンプの廃止   超 臨 界 圧 火 力 向 け BFP は,回 転 速 度 が 5 000 ~ 6000 min− 1と高速であり,必要 NPSH(NPSHR)は高 くなる。発電容量が大きくなるほどBFPの流量も増える ので,NPSHR は更に高くなる。これに対して,BFP に 与えられる有効 NPSH(NPSHA)は脱気器の据付高さ で決まり,通常20 ~ 25 m程度である。このため,連絡 配管を介して BFP の上流側にブースタポンプを設置し て,BFPのNPSHRを確保することが通常である。 表 2 代表的BFPの仕様 プラント 定格出力 容量 全圧力 回転速度 軸動力 効率 台数 出力比 MW t/h MPa min−1 kW % % 500 890 29.67 5500 9999 82 2 4.00 500 1630 30.1 5500 17747 86 1 3.55 600 1000 30.1 5500 11157 83.5 2 3.72 600 1860 33.2 5000 22589 85.3 1 3.76 700 1120 30.6 5500 12711.7 85 2 3.63 1000 1650 30.5 5500 18393.3 86 2 3.68 1050 1700 31.2 6000 19279.5 85.5 2 3.67

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 これに対して,BFPの初段羽根車をインデューサ付と してNPSHRを下げ,ブースタポンプと連絡配管を廃止 する設計も一部プラントの起動用 M-BFPにおける実用 例がある。これによって省スペース・省資源化によるプ ラント建設費低減につながっている。図6は,インデュー サ付BFPの構造図例である4) 6-2 フルカートリッジ輪切り型二重胴 BFP  図2,6,7に紹介するBFPは,いずれも内部ケーシン グ(内胴)が上下二つ割構造のものである。この構造の BFPは,図7に示すように,内胴の上半分を分解するこ とで,主軸・羽根車を回転体として組み立てられた状態 で取り出すことが可能なので,発電所現地における点検 作業が容易になるという長所があり,これまで国内外の 発電所に数多く採用されてきた。しかし,内胴は複雑な 構造の鋳鋼であるため,製造原価が高いという短所があ る。これに対して,内部ケーシング(中胴)が輪切り型 のものは,高価な内胴を必要としないことと,同一性能 (圧力)で比較した場合,内部ケーシング直径は若干小 型にできるため,外胴の直径も小さくできるという原価 面での長所がある。しかし,回転体を点検するためには, 一度中胴・回転体を縦置きにした上で,一段ごとに,中胴・ ガイドベーン・羽根車を主軸から抜いていくという作業 が必要になり,現地での点検が困難という短所があった。 これに対して,中胴・回転体に外胴カバー,軸受・軸封 部品を含めた外胴以外の部品を,一体で外胴から抜き出 し可能なフルカートリッジ構造とすれば,フルカート リッジ部を工場へ返送することで,現地での点検を不要 とすることが可能となる。当社では,350 MW超臨界圧 100% 容量(700 MW 超臨界圧 50% 容量と同一)輪切り 型二重胴BFPの製造納入実績を有する。図8はフルカー ① ③ ⑥ ⑤ ② ④ ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ 耐力向上施策箇所を示す各番号の詳細は 表 3 の同番号に記載 図 5 耐力向上施策を適用したBFP構造例 表 3 BFPの耐力向上策 No注4 劣化事象 原因 耐力向上策 ① 吐出しノズルの減肉 高速流,偏流による浸食 内面にオーステナイトステンレス鋼を盛金 ② 内胴高差圧部の浸食 起動停止頻度増大に伴うメタルタッチシール又は自緊式ガスケットのシール性低下 補助Oリングの併用 ③ 初生キャビテーション DSS運用等に伴う小水量運転時間の増大 一段目羽根車入口を小水量設計のものと交換 ④ 小配管取付部のクラック発生 小水量運転時間の増大等に伴う脈動影響 管台を剛性の高い構造に変更 ⑤ 芯ずれによる振動 起動停止頻度増大に伴う配管荷重の変化 振れ止め装置の設置 ⑥ 軸受振動の増大 小水量運転時間の増大等に伴う脈動影響 全円型軸受胴体に変更 ⑦ 軸受メタルの損傷 潤滑油中の異物介在による13Cr鋼特有のワイヤウール損傷 主軸ジャーナル部に炭素鋼を盛金 ⑧ 突変振動発生 ギアカップリング歯面の滑り不良によるトルクロック フレキシブルディスクカップリングに更新 ⑨ スラストデイスクはめあい部のフレッテイング 軸端ナット締付力の低下。デイスク当たり面の経年変形によるデイスク固定の緩み ロッキングスリーブ型軸端ナットの採用つば付スラストデイスクの採用 ⑩ 中段抽水メカ部品の劣化 吸込カバー側に取り付けられ,内胴回転体取り出しに必要ないため長年未点検となる 吐出カバー側から取り出す構造として,抽水管及び抽水メカ部品を廃止 注4:No.は図5中の番号が示す部分

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トリッジ型二重胴輪切り型BFPの組立時と分解時の状態 を示したものである。 6-3 自己潤滑軸受・適用範囲の拡大  BFPは,高回転速度・高出力であるため,軸受給油方 式として強制給油潤滑を用いる。潤滑装置(潤滑ユニット) には主油ポンプ(MOP)と起動及びバックアップ用の補 助油ポンプ(AOP)が設置される。基準給油圧力は0.08 ~ 0.12 MPaである。運転中油圧が低下(0.05 MPa)した 場合,潤滑油給油配管に設置された圧力スイッチ又はト ランスミッタによって警報を発し,同時に補助油ポンプを 自動起動させる。更に油圧が低下した場合(0.03 MPa) は軸受保護安全のために給水ポンプを停止させる。潤滑 装置には,潤滑油を貯蔵する油タンク,油圧調整弁,油 冷却器,切替え式フィルターなどの機器類が設置される。 通常の油タンクは,油ポンプ流量の3倍以上の容量を必 要とする。計装品として,前述の油圧監視のほかに,フィ ルター差圧,油タンクの油面,油温などの監視計器が必 要となる。これらの機器,計装品を備えた給油ユニット は,据付面積や製造原価の点で大きな比率を占めるので 給油方式の合理化を考えることは意義がある(図9)。  強制給油を必要とするのかあるいは自己潤滑方式の採 用が可能なのかの選定基準は,ラジアル軸受部分の周速 やスラスト軸受形式による。超臨界圧火力向けBFPの場 合は,回転速度が5000 min−1級の高速であり,軸動力も 大きいことから,今後も強制給油が必要であると考える。 タービン駆動の場合は,タービン側から潤滑油が供給さ れ,流体継手付き電動機駆動の場合には,流体継手から 潤滑油が供給されるので,ポンプ軸受の潤滑方式が,製 造原価や設置面積に影響を及ぼすことはない。  一方,コンバインドサイクルプラント向けの場合, BFPは通常,2P電動機直結駆動であり,出力も2000 ~ 2500 kW 程度と,超臨界圧火力向け BFP に比較すると 小さい。タービンや流体継手がないことから,別置きの インデューサ バランス戻り バランス配管へ 中段抽出 吐出し吐出し 吸込吸込 図 6 インデューサ付BFP a)組立状態 b)分解時 図 8 フルカートリッジ構造,輪切り型BFP 図 7 内胴分解と回転体取り出し 16-72 02/251

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てはCCS(二酸化炭素分離回収貯蔵)の導入による二酸 化炭素排出抑制などの技術導入が進むと考えられる。こ のような市場環境変化に対応し,火力発電設備の心臓部 ともいえるBFPについても,更なる効率向上,信頼性向 上,原価低減など,その技術開発により一層努力してい く必要がある。 参 考 文 献 1) 火原協会講座 32 ボイラ(平成 17 年度版)概説 1「発電用ボ イラのすう勢と技術開発の現状」(平成18年6月発行,一般社 団法人 火力原子力発電技術協会). 2) 火力原子力発電 入門講座 ポンプ及び配管・弁「Ⅲ ボイ ラ給水ポンプ」(No.595 Vol.57 平成18年4月号,一般社団法 人 火力原子力発電技術協会). 3) 火力発電技術必携(第8版) 「8.ポンプ」(平成27年度改訂版, 一般社団法人 火力原子力発電技術協会). 4) 吉川,「ボイラ給水ポンプ高性能化」,ターボ機械 2008年11 月号. 5) 火原協会講座27 発電設備の予防保全と余寿命診断「2−3 ポン プ」(平成13年6月,一般社団法人 火力原子力発電技術協会). 給油ユニットが必要となり,軸受を自己潤滑方式とする ことができれば,据付面積縮小という面での合理化を図 ることも可能となる。現在は,実績選定基準に基づき, 強制給油方式を採用しているが,自己潤滑機構の改良, 軸受冷却構造の改良によって,自己潤滑方式適用範囲を 広げていくことが可能と考える(図10)。

7.お わ り に

 事業用火力発電に用いられるボイラ給水ポンプ(BFP) の変遷,特徴,技術改良について概説した。BFPは,事 業用火力発電設備の大容量化,高温高圧化,運用方法の 変化と歩調を合わせて,改良・進歩の歴史を歩んできた。 電力需要増大への対応と環境負荷低減の両立を図ってい く中で,火力発電は,今後ますます重要な役割を担うと 考える。我が国などにおいては,再生可能エネルギーと の併用における負荷調整運用柔軟化,産油国などにおい モータ 吸込 吐出し ポンプ 給油ユニット 油タンク クーラー 補助油ポンプ 1780 1400 6700 図 9 ボイラ給水ポンプ 外形図(給油ユニット付) ラジアル軸受 主軸 スラスト軸受 図 10 自己潤滑軸受

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