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セミマクロ分析から見る景気の先行き

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株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも のではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和証券 ㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2020 年 10 月 7 日 全 8 頁

セミマクロ分析から見る景気の先行き

緩やかな景気回復が続くも、需要の頭打ちで雇用が大幅減の可能性

経済調査部 研究員 小林 若葉

[要約]

 新型コロナウイルスの感染拡大および緊急事態宣言などの活動自粛要請が企業活動に 与えた影響の大きさは業種によってまちまちである。感染拡大による影響が顕在化し た 3 月以降、製造業では輸送機械工業などが、非製造業では生活娯楽関連サービスなど が全体の企業活動の低下に大きく寄与した。  輸送機械工業の生産の減少は、経済活動の制限・自粛の影響により国内外の自動車販売 が人為的に抑制されたことが背景の一つだ。しばらくはペントアップ需要が発現する ことが期待できるものの、ペントアップ需要剥落後の自動車販売は雇用・所得環境の回 復の鈍さなどから低迷することが見込まれる。また感染拡大の長期化が予想される中 では、移動や接触を伴う消費自粛は続くとみられる。生活娯楽関連サービスは当面、感 染拡大前の水準まで回復することは難しいだろう。  自動車産業は裾野が広いといわれているが、サービス業の生産波及効果もそれに匹敵 する大きさである。輸送機械工業や生活娯楽関連サービスなどの業種で長期にわたり 経済活動水準が元に戻らなければ、幅広い業種で雇用調整が一段と進められる可能性 には注意が必要である。

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1. コロナ禍での企業の生産・営業状況

感染拡大による企業活動への影響の大きさは業種に偏り 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出は個人消費や生産などを人為的に大 きく抑え、企業活動に多大な悪影響をもたらした。企業活動は宣言の全面解除後の 6 月から回 復傾向にあるものの、その度合いは業種によって大きく異なる。 図表 1 では鉱工業生産指数と第 3 次産業活動指数について、各月の 2020 年 2 月からの乖離率 を業種別寄与度で示している。これを見ると、感染拡大による影響が顕在化した 3 月以降、製 造業では①輸送機械工業、②資本財関連業種(汎用・生産用・業務用機械工業)、③鉄鋼・非鉄 金属工業、非製造業では①生活娯楽関連サービス、②卸売業・小売業、③運輸業,郵便業、がと りわけ指数を押し下げた。 鉱工業生産指数は 5 月を底に回復傾向にあるものの、8 月時点で 2020 年 2 月の水準の 9 割弱 にとどまる。製造工業生産予測調査によると、企業は 9 月以降も回復が続くことを見込んでい るが、予測調査には上方バイアス1があるため、実際の改善ペースは図表 1 で示すよりも緩やか なものとなろう。他方、第 3 次産業活動指数は 6 月に急速に上昇したものの、7 月は小幅に低下 した。製造業、非製造業ともに業況回復の足取りは重いとみられる。 本稿では、上記 2 指数を特に押し下げた 6 業種に注目し、これらの現状や見通しといったセ ミマクロの分析を通じてボトムアップ的に景気動向を捉える。さらに、6 業種の活動水準が感染 拡大前を下回る状態が長期化した場合の生産・雇用への影響についても検討する。 図表 1:鉱工業生産指数と第 3 次産業活動指数の業種別寄与度 1 製造工業生産予測調査によると、9 月は前月比+5.7%、10 月は同+2.9%の見通しだが、経済産業省が予測 指数のバイアスを補正した試算値(最頻値)は、9 月は前月比+2.8%である。 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 鉱工業生産指数 その他 化学工業 電気・情報通信機械工業 鉄鋼・非鉄金属工業 汎用・生産用・業務用機械工業 輸送機械工業 鉱工業 (2020年2月対比、%、%pt) 先行き 2020年 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 3月 4月 5月 6月 7月 第3次産業活動指数 その他 医療,福祉 運輸業,郵便業 小売業 卸売業 生活娯楽関連サービス 第3次産業総合 (2020年2月対比、%、%pt) 2020年 (注)8月の化学工業の伸び率は化学工業(除.医薬品)と同等とした。鉱工業生産指数の先行きは製造工業生産予測指 数による。鉱業は8月実績から横ばいとした。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成

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2. 6 業種の事業環境の現状と見通し

【輸送機械工業】足元ではペントアップ需要発現も、所得減少などが需要下押し 自動車など輸送機械工業の出荷の 7 割弱は国内向けが占めるものの、成長余地が大きい海外 需要の影響も強く受けている。海外向けでは米国の割合が比較的高く2、とりわけ 4、5 月は米 国向けの自動車輸出台数が大幅に減少した。 そこで日米の自動車販売台数を実質金利や所得などを用いて推計 3すると、日本では 4-6 月 期、米国では 1-3 月期と 4-6 月期に実績値が推計値を大幅に下回った(図表 2)。両者が乖離し た要因の一つとして、経済活動の制限・自粛の影響により生産や販売が大幅に抑制されたこと が考えられる。7-9 月期以降にペントアップ需要(繰越需要)が発現することを示唆していたが、 実際、7-9 月期の販売台数は日米ともに推計値を上回った。 ただしペントアップ需要はいずれ剥落し、経済実態に即した水準に落ち着くだろう。日米の雇 用者報酬の改善ペースは緩やかなものにとどまる見込みであり、米国では金融機関の貸出態度 がリーマン・ショック後の最高水準付近まで厳格化した4。日米の自動車販売台数が感染拡大前 を安定して上回るには相当な時間がかかり、輸送機械工業の生産水準も低水準にとどまろう。 図表 2:日米の新車販売台数推計の要因分解 2 貿易統計(財務省)によると、2019 年の輸送用機器の輸出金額は米国向けが 30%、EU 向けが 14%、中国向 けが 8%を占める。 3 推計方法等について、詳しくは佐藤光・橋本政彦・小林若葉「サイクル面から見た景気の先行き 米中景気 の底入れと半導体需要の回復が追い風に」(2020 年 2 月 25 日、大和総研レポート)を参照。 4 なお、米国の金融機関の貸出態度の先行きについては、リーマン・ショック後と同様のペースで改善すると 想定しているが、リーマン・ショック時の米国の景気後退期間は 6 四半期に及んだ一方、コロナショックによ る経済の悪化は 1 四半期にとどまる見通しだ。経済の落ち込みが一時的なものであり、金融危機に至っていな いことから、貸出態度の緩和ペースが想定よりも速まる可能性はあろう。 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 (年) 日本 ダミー計 自動車価格 消費者態度指数(雇用環境) 実質金利 実質雇用者報酬 定数項 推計 新車登録台数 (前年比、%、%pt) 先行き -40 -30 -20 -10 0 10 20 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 (年) 米国 実質雇用者報酬 実質金利 消費者センチメント(雇用) 金融機関の貸出態度 推計 自動車販売台数 (前年比、%、%pt) 先行き (注1)推計期間は日本:1983年4-6月期から2019年10-12月期まで、米国:1996年1-3月期から2019年10-12月期まで。日本の ダミー変数は1989年~2019年の消費税導入・増税前後の半年間、2009年、2011年に導入したエコカー補助金期間中とその後半 年間、2011年の東日本大震災発生後半年間で作成した。 (注2)2020年7-9月期以降の未公表の指標については、日米ともに所得、インフレ率は大和総研の予測による。日米の名目金 利、日本の消費者態度指数と自動車価格、米国の消費者センチメントは直近値から横ばい、米国の金融機関の貸出態度は2020 年7-9月期を底に、リーマン・ショック時に最も悪化した2008年7-9月期以降と同様のペースで回復すると想定している。 (出所)日本銀行、内閣府、総務省、日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会統計、BEA、FRB、ミシガン大学、 Autodata Corp.、Haver Analyticsより大和総研作成

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【資本財関連業種】国内外の稼働率は感染拡大前より低い水準で頭打ちとなる可能性 資本財関連出荷は国内・海外向けともに大きく落ち込んだ(図表 3 左)。国内に関しては、緊 急事態宣言の発出等を受け、4、5 月に製造業の設備稼働率は大幅に低下した(図表 3 右)。7 月 は上昇に転じており、今後も企業の設備稼働率は需要回復が進むにつれて上昇するだろう。た だし個人消費などの需要回復ペースは緩やかなものにとどまるとみられることから、稼働率の 上昇は感染拡大前よりも低い水準で一服する可能性が高い。先行き不透明感が払拭できない中 では、能力増強などを目的とした設備投資計画の多くは先送りされるだろう。実際、設備投資の 先行指標となる機械受注(船舶・電力を除く民需)は低水準にとどまる。 図表 3:資本財関連の出荷内訳(寄与度、左)、設備稼働率と機械受注(右) 資本財の外需に関して、日本の一般機械輸出額を国・地域別に見ると、中国向けは 4 月から堅 調に推移しており、7 月には 2019 年平均を明確に上回った(図表 4 左)。他方、欧米向けは 4、 5 月に大幅に落ち込んだ後、持ち直している。ただし、欧米の生産回復は足元でやや鈍化してお り、設備稼働率は底を打ったものの依然低水準だ(図表 4 右)。そのため、資本財輸出の回復も 緩やかなペースにとどまろう。 図表 4:一般機械輸出変化の国・地域別寄与度(左)、欧米の設備稼働率(右) -25 -20 -15 -10 -5 0 3月 4月 5月 6月 7月 輸出 国内 (2020年2月対比、%pt) 2020年 60 70 80 90 100 110 120 130 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (年) 機械受注 民需(船舶・電力を除く) 製造工業稼働率指数(右軸) (兆円) (2015年=100) (出所)内閣府、経済産業省統計より大和総研作成 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 中国 米国 EU (2019年平均対比、%pt) 2020年 60 65 70 75 80 85 19/01 19/05 19/09 20/01 20/05 20/09 (%) (年/月) 米国 EU (注)季節調整値。左図のEUは英国を除く27ヶ国で、季節調整は大和総研。右図の米国は月次データ、EUは四半期デー タ。EUの7-9月期は見込み。 (出所)財務省、FRB、欧州委員会統計より大和総研作成

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【鉄鋼・非鉄金属工業】鉄鋼業の先行きは自動車生産の回復が鍵 鉄鋼・非鉄金属工業のうち、コロナ禍においてはとりわけ鉄鋼業の落ち込みが大きい。鉄鋼業 の出荷の約 9 割は国内向けだ。4-6 月期における鋼材受注の内需向けの減少を用途別に見ると、 自動車用の大幅減が寄与している(図表 5 左)。このため鉄鋼生産の回復には自動車生産の動向 が鍵となるが、先述したように自動車生産はペントアップ需要剥落後に低迷する可能性が高い。 鉄鋼業の在庫率が低下傾向にあることは目先の生産の下支え要因になる(図表 5 右)ものの、 自動車生産の増勢が鈍れば鉄鋼業の回復の足かせとなろう。 図表 5:4-6 月期 鋼材受注の前年比変化の用途別寄与度(左)、鉄鋼業の出荷在庫バランス(右) 【生活娯楽関連サービス】外出自粛が続き、企業活動水準は感染拡大前を当面下回る見込み 生活娯楽関連サービスの中では、飲食店等や娯楽業の落ち込みが特に大きい(図表 6 左)。こ れらに関連する消費額は、グーグル社が位置情報データを集計して日次で公表している小売店・ 娯楽施設(レストランやテーマパーク等)の人出の動きに概ね連動している(図表 6 右)。人出 は 7、9 月の連休中や 8 月のお盆の期間には感染拡大前の水準を上回ったものの、7 月以降のそ の他の期間はベンチマークを 10%前後下回って推移している。先行きについて、連休中などは 外食費を中心にサービス消費が一時的に増加するとみられるものの、感染収束やワクチン開発・ 供給の目途が立たない中では一定の感染症対策が必要となるため、接触を伴うサービス業の本 格回復は当面見込みにくいだろう。 図表 6:生活娯楽関連サービス指数変化の内訳(左)、小売店・娯楽施設の人出と消費の推移(右) 70 90 110 130 150 60 70 80 90 100 110 120 130 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 生産 在庫率(右軸、逆目盛) (2015年=100) (年) -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 建築 用 土木 用 その 他 建設 用 産業 機械 用 電気 機械 用 船舶 用 自動 車用 その 他 製造 業用 (%pt) 建設用 ← → 製造業用 (注)左図のデータは普通鋼鋼材受注量(内需)。 (出所)経済産業省、日本鉄鋼連盟統計より大和総研作成 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 3月 4月 5月 6月 7月 宿泊業 飲食店,飲食サービス業 洗濯・理容・美容・浴場業 その他の生活関連サービス業 娯楽業 その他 生活娯楽関連サービス (2020年2月対比、%、%pt) 2020年 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 (月/日) (ベンチマークからの乖離、%) 小売店・ 娯楽施設の 人出 外食費 教養娯楽 サービス費 (注)右図は日次データ。小売店・娯楽施設の対象はレストラン、カフェ、ショッピングセンター、テーマパーク、博物 館、図書館、映画館など。ベンチマークは2020年1月3日から2月6日の曜日別中央値。太線は7日移動平均値。 (出所)総務省、経済産業省、Google統計より大和総研作成

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【卸売業・小売業】卸売業は生産回復の鈍さが重石に/小売業は自動車・衣服等の回復が鈍い 卸売業の活動指数は近年、鉱工業出荷指数との連動性が非常に高く、製造業の影響を強く受け ている(図表 7 左)。感染拡大を受けて製造業の出荷が減少し、卸売業の業況は急速に悪化した が、足元は持ち直しつつある。ただしこれまで見てきたように、先行きの生産・出荷の回復ペー スは鈍化が見込まれることから、卸売業の業況改善ペースも緩やかなものにとどまろう。 小売業の販売額は緊急事態宣言の全面解除に伴って 4 月を底に回復基調にある(図表 7 右)。 小売販売額の内訳を見ると、自動車小売業、織物・衣服・身の回り品小売業、燃料小売業などの 回復は鈍い。自動車販売は先に見た通りペントアップ需要剥落後は販売台数の水準が再度低下 する可能性がある。織物・衣服・身の回り品小売業に関しては、消費者が自宅で過ごすことが増 えたために衣服や履物を新調する頻度が低下したと考えられる。そして燃料小売業は、自動車 で遠出する機会が減少したことなどからガソリン需要が減少したとみられる。後述するように、 公共交通機関と比べて感染リスクの低い自動車の利用は持ち直しが早かったものの、高速道路 の交通量は未だに感染拡大前の水準を割り込んでいる。 図表 7:卸売業の活動指数と鉱工業出荷指数(左)、小売販売額推移の要因分解(右) 【運輸業,郵便業】公共交通機関の利用者数は低調さが続く可能性 運輸業,郵便業のうち、事業環境がとりわけ悪化したのは鉄道業や道路旅客運送業である。 新幹線利用状況や日本最大規模の高速バスターミナルであるバスタ新宿の利用者数を見ると、 緊急事態宣言の全面解除を受けて 6 月、7 月にやや改善したものの、その後は感染が再拡大した ことなどで低迷が続き、足元でも前年比▲70%~▲60%程度にとどまる(図表 8)。他方、高速 道路の交通量は前年比で▲10%程度まで回復しており、シルバーウィーク中(9 月 19 日~22 日) は首都高速以外が前年を上回った。7 月 22 日に開始された Go To トラベルキャンペーンは交通 機関と宿泊がセットの旅行商品の総額が対象であるため、運輸業には追い風となるはずである。 だが、感染を避けるために自家用車を利用する人は多いとみられ、公共交通機関の利用は 8 月 以降もさほど広がっていないようだ5 5 旅客機による輸送実績は回復傾向にあるものの、直近の 8 月では国内線で前年比 7 割~8 割程度減と低水準 75 80 85 90 95 100 105 110 16 17 18 19 20 (年) 鉱工業出荷指数 第3次産業活動指数 卸売業 (注)右図の小売販売額は季節調整値。 (出所)経済産業省統計より大和総研作成 (2015年=100) -15 -10 -5 0 5 3月 4月 5月 6月 7月 8月 その他小売業 燃料小売業 機械器具小売業 自動車小売業 飲食料品小売業 織物・衣服・身の回り品小売業 各種商品小売業 小売業計 (2020年2月対比、%、%pt) 2020年

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図表 8:移動手段別の利用状況

3. 企業活動の先行きと生産の業種間波及効果を通じた影響

緩やかな回復は続くものの、需要の頭打ちで雇用は大幅減の可能性も 前章で見たように、コロナ禍で企業活動の落ち込みの大きかった 6 業種6は、社会経済活動と 感染拡大防止の両立が進む中で緩やかな回復基調をたどるだろう。ただし個人消費や輸出など の需要は一定の感染症対策が継続されることもあって感染拡大前の水準を上回ることは難しく、 企業の生産・営業活動も感染拡大前より低い水準で頭打ちとなることが見込まれる。 これら 6 業種の企業活動の低迷が長期化した場合、国内生産や雇用にどの程度の影響をもた らすのだろうか。図表 9 では、産業連関表を用いて「輸送機械」「はん用・生産用・業務用機械」 「鉄鋼・非鉄金属」「商業」「運輸・郵便」「対個人サービス」の生産額がそれぞれ 10%変化した 際の業種別の生産額と就業者数の変化を示した。これらの業種分類は、順に「輸送機械工業」「資 本財関連業種」「鉄鋼・非鉄金属工業」「卸売業・小売業」「運輸業,郵便業」「生活娯楽関連サー ビス」にそれぞれ概ね対応する。たとえば、輸送機械の生産額が 10%減少した場合、生産の波 及効果を通じてプラスチック・ゴム製品の生産額が 0.4 兆円、就業者数が 2 万人減少するとい うことが分かる。図表 9 の一番右の列に目を向けると、輸送機械のほか、商業や対個人サービ スの生産波及効果が大きい。自動車産業は裾野が広いといわれているが、商業や対個人サービ スでもそれぞれ対事業所サービスや飲食料品などを中心に幅広い業種との取引があるようだ。 他方、雇用への波及効果は対個人サービスの生産額が減少するケースで最も大きい。対個人サ ービスの生産額が 10%減少した場合、同業種の就業者数は 88 万人減、その他の業種で 30 万人 で推移している。詳しくは山口茜・和田恵「消費データブック(10/5 号) 個社データ・業界統計・POS デー タで足元の消費動向を先取り」(2020 年 10 月 5 日、大和総研レポート)を参照。 6 ①輸送機械工業、②資本財関連業種、③鉄鋼・非鉄金属工業、④生活娯楽関連サービス、⑤卸売業・小売 業、⑥運輸業,郵便業。 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 3 4 5 6 7 8 9 10 (月) 高速道路 交通量 NEXCO3社+本州四国連絡橋 首都高速 阪神高速 (前年比、%) -100 -80 -60 -40 -20 0 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (月) 新幹線 利用状況 東海道 山陽 北陸 九州 (前年比、%) -100 -80 -60 -40 -20 0 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (月) バスタ新宿 利用者数 (前年比、%) (注)左図は月次データ、その他は週次データ。新幹線利用状況の9月分は東海道は23日、山陽と北陸は22日、九州は21 日までのデータ。高速道路交通量のゴールデンウィークとお盆期間、シルバーウィークの前後の週は集計日数が異なる。 (出所)国土交通省、JR東海、JR西日本、JR九州より大和総研作成

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減と、1 業種のみの生産額減少で合計 118 万人の就業者が失われる計算である。生活娯楽関連サ ービスの活動指数の水準は 7 月時点で感染拡大前との比較で▲26%(図表 10 左)であることか ら、労働需要の減少分を全て雇用調整で対応する場合、現時点で 300 万人以上の職が失われて いたことになる。実際の就業者数は感染拡大前対比で▲100 万人程度(図表 10 右)であり、産 業連関表を用いた試算結果を大幅に下回る減少幅であった。背景には、波及効果の顕在化には ラグがあるほか、企業が従業員を休業させたり所定外労働時間を抑制したりしたことや、雇用 調整助成金の拡充などの政策効果があったと考えられる。 もっとも、感染拡大は長期化が予想されており、その間の各種需要は感染拡大前の水準を下回 るとみられる。対個人サービスなどの業種で長期にわたり経済活動水準が元に戻らなければ、 幅広い業種で雇用調整が一段と進められる可能性には注意が必要である。 図表 9:6 業種の生産額がそれぞれ 10%変化した場合の業種別生産額・就業者数への影響 図表 10:6 業種の生産・活動指数推移(左)と就業者数推移(全産業、右) 農 林 漁 業 飲 食 料 品 プ ラ ス チ ク ・ ゴ ム 製 品 鉄 鋼 ・ 非 鉄 金 属 は ん 用 ・ 生 産 用 ・ 業 務 用 機 械 輸 送 機 械 電 力 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 商 業 運 輸 ・ 郵 便 情 報 通 信 対 事 業 所 サ ビ ス 対 個 人 サ ビ ス 自 業 種 を 除 く 全 産 業 計 輸送機械 0.0 0.0 0.4 1.2 0.1 9.3 0.2 0.5 0.2 0.1 0.5 0.0 4.5 はん 用・生産用・業務用機械 0.0 0.0 0.1 0.8 3.9 0.0 0.1 0.2 0.1 0.1 0.3 0.0 2.5 鉄鋼・非鉄金属 0.0 0.0 0.0 6.4 0.0 0.0 0.3 0.3 0.2 0.1 0.2 0.0 1.7 商業 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.1 0.3 9.8 0.3 0.6 1.3 0.0 4.1 運輸・郵便 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.1 0.1 5.1 0.1 0.5 0.0 1.9 対個人サー ビス 0.3 0.8 0.1 0.0 0.0 0.0 0.3 0.6 0.3 0.2 0.5 5.6 3.9 輸送機械 0 0 2 1 0 18 0 6 2 0 5 0 22 はん 用・生産用・業務用機械 0 0 1 1 17 0 0 3 1 0 3 0 12 鉄鋼・非鉄金属 0 0 0 7 0 0 0 3 2 0 2 0 9 商業 0 0 0 0 0 0 0 113 3 2 13 0 24 運輸・郵便 0 0 0 0 0 0 0 1 40 0 5 0 10 対個人サー ビス 8 3 0 0 0 0 0 7 2 1 5 88 30 (注)2015年基準。 (出所)総務省統計より大和総研作成 生 産 額 変 化 ( 兆 円 ) 就 業 者 数 変 化 ( 万 人 ) -140 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0 3月 4月 5月 6月 7月 (2020年2月対比、万人) 2020年 (注)左図の先行きは製造工業予測指数による値。 (出所)経済産業省、総務省統計より大和総研作成 -50 -40 -30 -20 -10 0 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 輸送機械 資本財関連 鉄鋼・非鉄金属 生活娯楽関連サービス 卸売業・小売業 運輸業・郵便業 (2020年2月対比、%) 先行き 2020年

図表 8:移動手段別の利用状況  3.  企業活動の先行きと生産の業種間波及効果を通じた影響  緩やかな回復は続くものの、需要の頭打ちで雇用は大幅減の可能性も  前章で見たように、コロナ禍で企業活動の落ち込みの大きかった 6 業種 6 は、社会経済活動と 感染拡大防止の両立が進む中で緩やかな回復基調をたどるだろう。ただし個人消費や輸出など の需要は一定の感染症対策が継続されることもあって感染拡大前の水準を上回ることは難しく、 企業の生産・営業活動も感染拡大前より低い水準で頭打ちとなることが見込まれる。  こ

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