日本における同性婚の阻害要因に関する研究――多様性を尊重する日本社会を目指して

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日本における同膨叡)阻害要因に関する研究 ―多様陛を尊重ナる日本社会を目指して 教科・領域教育専攻 社会系コース 山根 拓 序章 本研究の趣旨 本研究では、関連する論文や著作吻等の先行 研究の分析と、国内外の最新情勢の背景分析に より、 日本における同陛婚実現の阻害要因につ いて考察し、それら要因の影轡新ロと同陛婚実 現、さらに性の多様陛を尊重する日本社会の方 向性について論じる。 本研究により、同性パートナーの1衝~」保障に 対する意識が各国で異なる背景を探究し、人類 共通の普遍的課題としての「人権保障の拡充」 を実現するための方向性を論じることの意義は 大きし、 この研究を通じて、日本における同陛 パートナーの法的保障の実現に向けた議論に、 よりー層の拍車を掛けられるようにした/、 第I 章 問題の所在 人が形成していく親密な関係性を法的に保護 するものが「婚姻家族」制度である。ライフコ ースが多様化し、Iズ-xTQ+の権利についての認 識が高まるなかで、かつては社会的排除の対象 にされがちであった個人や家族が受容されつつ ある。それが実態として表れたのが、事実婚関 係にある異I生カップルや同陛パートナーである。 日本の現行法は、婚姻した夫婦とその子から 成る家族をーつのモデルとして想定し、男女関 係共観子関係に関するルール作りをしている。 一方で、同性パートナーを含む法律婚ではない パートナーについては、基本的に法律は関与し なし、婚姻することにより、婚姻の持つ有形無 指導教員 麻生 多聞 形の利益を享受できるが、同性パートナーは婚 姻を許されていな'I このため、日常生活の様々 な部面において、不利益を被っている。 本稿で取り扱う問題とは、基本的人権が最大 限尊重されるべき日本において、同性パートナ ーが女融因できないという不平等状態にあり、深 刻な不利益を被っているにもかかわらず、これ まで政府や国会が、同陛パートナーの婚姻をは じめとする諸権利を保障する法律や制度を整備 してこなかった立法不作為という事実である。 第2 章 同性愛・同性婚をめぐる日本国内の状況 日本では、欧米に比べ同陛愛には寛容である と語られることが多八歴史的にみると、1907 年の旧刑法制定により、同性愛行為を取り締ま る規定は廃止された。しかし、日本で同陛愛が 正当な行為として認められたわけではなかった。 1910年代、西洋の同性愛概念が輸入されると、 同性愛は「変態性欲」として問題化された。同 性愛概念の普及とともに、同陛愛は、近代文明 とは相容れない道徳的退廃として認識され、同 性愛嫌悪(ホモフォビア)が強まった。 戦後、同陛愛を異常視する見方が徐々に大衆 化していくなか、1970 年前後に、異議が申立て られるようになった。80年代にはェイズ流行へ の対策のためゲイ支援の団体が発足し、90 年代 には文化・芸術分野でゲイ・ブームが起きた。 日本社会において、同性愛をめぐる差別と偏 見、法的問題が顕在化したのは、1990 年代にな -211 -

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ってからである。その代表的な事例が、同陛愛 者団体への公共宿泊施設禾棚拒否事件、ヘイト クライムの発生、アウティング事件である。 そして近時、同性婚が認められないのは憲法 24 条1項、14 条の趣旨に反するとして、14 組 の同陛パートナーにより、全国5 地裁に国賠訴 訟が提起された。国会では、通称「LGBT 差別 解消法案」、民法改正案を含む「婚姻平等法案」 が提出され、司法・立法において現在、審理・ 審議が続いている。また国際社会からも、 LGBTQ + に関する様々な改善勧告を繰り返し 受けており、政府の早急な対応が求められる。 地方では、渋谷区などが先行してパートナー シップ宣誓制度を導入しているが、法的拘東力 の面や限定的な適用対象者など、課題もある。 第3章 同性婚に関する解釈及び阻害要因に関 する先行研究の整理 現行憲法下で同性婚が認められるかどうかと いう憲法解釈につき、通説的見解では同性婚は 容認できないと解されてきた(同性婚禁止説)。 これに対し、憲法制定当時は同嵐昏が想定さ れておらず、故に憲法24 条は同性婚を禁止す ることを予定しているものではないことを論拠 に、同陛婚が認められる余地があるとの学説(同 性婚許容説)も増えてきている。しかし、異陛 婚を前提とする通説的見解や現行の婚姻制度を 克服するまでには至っておらず、同性婚に対す る統一的見解は示されていなし~ 次に、同陛婚の阻害要因に関する先行研究と して、米国、フランス、台湾、そして日本にお ける同性婚の阻害要因に関する研究を中心にレ ビューした。そこでは、法的・政治的・社会的 側面から様々な阻害要因を系統的に整理した。 第4 章 同性婚実現の阻害要因の考察 前章までの事実関係と先行研究の整里を踏ま え、 日本において同膨昏(ないし同陛パートナ ーの権秘呆障)を阻害すると考えられる要因に 関し、近時の動向べ識者α現解にも言及した上 で、私見を示した。 先行研究で示された法的側面からの要因I幼日 え、政治的側面から、従来からの政府見解の維 持、同陛愛嫌悪を背景とする政治家による同陛 愛に対する偏見や無理解を、社会的側面から、 研究者の同陛愛言説が与える社会的影響、雫β の当事者による「LGBTQ+活動家」 への批判・ 非難、学校教育における「隠才したカリキュラム」 としての異性愛主義の刷り込みを指摘した。 第5章 性の多様性を尊重する日本社会に向け た方向性 本稿における結論は、以下3 点である。① [LGBT 差月晴平消法案」の早急な法案審議とそ の成立を求める、②同性婚の実現を最終目標と する、③同性婚以前にまず、法制度としての「登 録パートナーシップ制度」を創設し、現在の婚 姻制度・戸籍制度と同等の衝り・利益を同性パ ートナーに保「章することが望まし11 " 終 章 阻害要因として一番大きいのは、国民の心陛 に潜在的に存する「同性愛嫌悪」の感情である。 当事者かアライかその周縁かにかかわらず、性 的指向に基づく差別や偏見のない日本社会、そ して婚姻の有無によって法的不利益を被らない 社会の実現のために本稿が役立つことを願う。 教員養成大学における本研究としての意義は、 LGBTQ+ に関する正確な知識を整理し、学校教 育においてLGBTQ+の子どもの存在を前提と して考え、困難を抱える子どもへの寄り添いの 姿勢と適切な対応に対し、改めて目を向けさせ、 セクシュアリティ教育のー環としてLGBTQ+ に関する教育の可能陛に言及したことにある。 - 212 -

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