小1プロブレムの解消に寄与する幼児教育機関の在り方 ―集団の中で個を育てる幼小中の一貫陛に着目して- 人間教育専攻 現代教育課題総合コース 黒田 ゆり 1 .見醍頁の所在 小1プロブレムが指摘され約20 年になる。 その間,国や地方行政は,その問題解決を目指 し,生活科の導入や少人数学級編成・教員の複 数配置などの方策に取り組んできたが,未だに その解決には至っていなし、 集団生活における適応力育成に原因がある と推測されるが,教育現場の幼保小教員が問題 を共有し,問題解決に取り組むことは難しI、 従来の研究では,就学前後の異なる教育の 「差」に着目しており,段差解消が主な着眼点 であった。接続の課題ではなく,幼児期に育む べき力をしっかりと身につけることが小1プロ ブレム解消の一助となることを実証した学術的 研究は不十分である。 2. 石J佼」の目的と方法 (1)田碗の目的 これまで長期にわたり小1プロブレムの問題 が解消されていない現状から,接続期に問題が あるのではなく,幼児期の集団における個の育 ちが小1プロブレムの本質的原因ではないかと 推測される。そこで,本研究では「幼児期に」 「幼児の」「適応力向上」を達成することが 「小1プロブレムの解消」に寄与するという仮 説を基に,幼児期に必要な教育とその具体的方 策を明らかにすることを目的とする。 (2)可多Lの方法 指導教員 藤村 裕一 以下の事柄について段階的に明らかにする研 究方法をとる。 ・幼児教育の現状(保育方法) ・現状の問題 ・現状の問題解決に資する具体的方法及び その有効性(教員の資質向上) ・小1プロブレム解消に向けて幼児教育機 関ができること ①先行研究調査 ②保肩者に対するインタビュー司耀呈 ③保有渚に対する質「聯卿濯呈 ④調査結果を基にした幼保小一貫教育課程の 柱に関する考察 ⑤保育者の意識を変える司修の有効性の検証 ⑥同一小学校区内の幼児教育機関協働体制構 築のための要件を分析 3.本酬究と関重ナるう旨j酬究 (1)小1プロブレムに関する研究 子ども自身が感清をうまくコントロールでき なかったり,環境の変化に対応できなかったり することが小学校低学年の子どもの問題行動や 授業不成立の原因にあると幼稚園教員は認識し ており,その背景にあるのは,社会情勢の変化, 及び幼児教育の側と小学校側が互いの実践を理 解できないでいることである。 従来の研究では,遊びが中心となっている幼 児教育と教科教育に根ざす学校教育の間での教 育内容をめぐる齟齬が,適応問題に焦点化する
形で摩擦につながっている。 (2)小学校へ連続した教育課程の必要性 ほぼ全ての自治体が幼稚園教育と小学校教育 の接続は重要であると認識しているにもかかわ らず,ほとんどの自治体で幼保小連携・接続の ための教育課程に係る取り組みが行われていな い。幼児教育がその後の小学校以降の学校教育 につながっていくために学びの連続性を考慮し たカリキュラムの編成が行政上は整理されてい るが,具体的にどのような育ちをつなぐかは未 だに明瞭でない。 (3)保育形態に関する本質的定義 一斉保育と自由保育という2 項対立概念は, 子どもの活動形態による(対立概念)ではなく, 保育理念を示すものであり,両者はむしろ類イ以 点が多いことが明らかとなった。 (4 )保育者の指導性と幼児の主体陛の関連陛 保育者は子どもの主体的活動を支援する際に 「教え込み」指導となる危険陛について自覚を もつべきであるが,過剰に支援を遠ざけること は,むしろ子どもの育ちにとって逆効果である。 「自発性」は保育者との関係で成り立つ。「自発 性」と「指導陛」は協働的作用関係である。 4.保育現場の実態 (1)保育者0メ呆有形想こ撲1する言L1哉 保育形態に関する相反性の誤認識,理解不 足が明らかになり,一斉保育を保育者主導型で あると捉えているにもかかわらず,自身の保育 実践については,一斉保育であり子ども主体で あると矛盾した回答をしている。このことは, 保育形態の概念の捉え方が曖昧であるため,実 相とズレが生じたものと考えられる。 (2)保育の封本と保育渚の関与マft11哉と封目 保育の主体性や,指導・支援について,共通 の認識はなく,それぞれの保育者の経験値によ る主観であるため,明確な保育観をもたない保 育の実態が浮き彫りになった。保育の実態から は,必ずしも子どもの成長を願う意図的な支援 が行われているとは言えなし、 5.保育者の資質向上に有効な研修の在り方 (1)対言醒「j修7靖効陛 講義型研修では,子どもを主体とする保育観 についての認識は深まったものの,具体的実践 力に必ずしも結びつくわけではないが,専門家 を交えた対話型研修を通じて保育実践力の向上 に結び付くことが明らかとなった。 (2)指彰ミを浦構戊することの有効性 指導案の再構成が下記の通り,事前準備や個 の伸長に有効であることが認められた。 フローチャート式指導案の有効陛 ①保育者中心の保育観から子ども中心の保育へ の保育理念の転換 ②保育理念を実践化する保育理論の理解・実行 ③内面的な子どもの成長を見取る保育者の保育 観の転換 ④複数の子どもの反応・行動を事前予測するこ とによる個への対応力の向上 6.小1プロブレムの解消方策 小1プロブレムの解消の方策としては接続 に着目するのではなく,集団の中で個を育てる 幼保小の一貫した教育が有効であることが示唆 された。さらに,単園だけではなく小学校区全 園が共通理解し同じように取り組むための要イ牛 は,協調領域と競争領域を識別し,各園の独自 性は競争領域として侵すことなく,協調領域に おいて協働で保育改善に取り組むことである。