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<論文>Ali ad-Dimisqi の商業書 : とくに商品学的部分について 利用統計を見る

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(1)

部分について

著者

風巻 義孝

著者別名

Kazamaki Yoshitaka

雑誌名

経営論集

1

ページ

21-44

発行年

1975-06-30

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005921/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

じめ,池内信礼 政 策

All ad-Dimisqi の商業 書

とくに 商品 学的 部 分に つ い て 5 ) 風  巻  義  孝 21 も のは ,「All ad-Dimisqi の『商業 の美 最古の商業書  商業 学の入門 書『商業学を学ぶ』 のな か で,“商業 学の起源と発達” のコ 1) ラムを執筆された福田敬太郎氏もふれておられるように,商人 が自分の経験 を覚書にして,直接後継者に指針 とし て与えた ものから始まった商業に関す る体系的 な著作のなかで丿 世界最古の商業 学的文献 として伝えられ」てい る 善良 な商品 と粗悪な商品との弁 識 ならび に商 品 詐欺師 の偽造 に関 す る指 針』 とい う手 記 」であ る とい う事実 は, 商業 学 の 世界 では かな り広 く知 られ てい る。All ad-Dimisqi の, この先 駆 的 な著作 の存 在な らびにそ の内容 の片 鱗 が, ド イ ツ の簿 記・ 会計史 の研 究 家 とし て著名 なペ ソド ル フPenndorf (1873∼1941 )に よっ て, 商 学・ 経営学 2)       3) の分野 に初 め て 紹介 されて から, ち ょうど, 半 世 紀た ち, 増地庸 治 郎氏を は 佐 々木吉 郎 とい った方 々に よっ て そ れ がわ が国につ たえ ら れてからも久しい。平井泰太郎氏が,『経営学文献解説』において,「世界に 於て,何か商業又は計算に関する最初の文献 であ るかは説が分かれて居る。 人に依ってはエジプト乃至はバビ ロニア, アッシ リア以来 の金石を探 り,又 はギリシ ヤ, = −-7の古文書を尋ね,或はフ ィレンツ ェの商人Pegolotti F.B. 以来 の数 々の私家 の手記或はManuscript の類に遡る。しかし ながら学 者は,Al-Dimiski: Das Buck des Hinweises auj       6 )des Handels ……(以下略)より論を進める事が多い」 とその独訳のフルタ イトルを掲げ ておられるように, 商業 学な り経営学 の広 範かつ系統的な文献 史的研究の領域で 乱 それは世界に現存する最古 の商業書とみなされてきた。 こ0 ような認識は,今 日のアカデ ミズ ムにおいてもひきつがれ,最近刊の 体系的学術書,久保村隆字乱 荒川祐吉両氏 編『商業学一 現代流通の理論と 』 に お い て も,“ 商 業 お よ び 流 通 研 究 の史 的 展 開 ”の 冒頭 で「 商 業 ・

(3)

沸 り 雨 のj 解 匈? け 浪 痙 の 麻 中-> 表 に 士 い ー^ ぷ で ょ い_  こ の 吝 [宙 で は ヽ^ 貼.i ら

μ│I u ぺ ” ― ワ│ ノLJ. ≫ にi ・-.j ふ こ/; r 八. ・―‘ ` CJ ≫  ̄I-I ` > ― ・ -J /l― ∼ に ` u - -jJ `/L ゛ ・ ゛`z  ’゛丿 ゛t- ’゛´

れ は す で に 古 代 シ 文 化 に お い てB.C. 2000 年 の 昔 に 大 規 模 な 商 業 活 動 か あ っ た こ と を 知 っ て お り , 従 っ て 商 業 ・ 流 通 研 究 も そ こ ま で 遡 り 得 る と 考 え ら れ る 」 と し な が ら 乱 た だ ち に 引 続 い て 「 し か し , 今 日 実 際 に 残 さ れ て い る 最 古 の 商 業 文 献 は9 ∼10 世 紀 ご ろ ア ラ ビ ア 人 デ ィ ミ ス キ (All ad-Dimisqui ) に よ っ て 書 か れ た 『 商 業 の 美 , 良 き 商 品 と 悪 し き 商 品 の 知 識 な ら  7 』 び に 商 品 詐 欺 師 の 偽 造 に 関 す る 指 針 』 と い う 書 物 で あ る と い わ れ て い る 」 と し ,14 ∼15 世 紀 頃 イ タ リ ア で 続 出 し た 商 業 な り 流 通 の 端 緒 的 研 究 の 系 譜 に 属 す る も の と の 位 置 づ け が 与 え ら れ て い る 。 こ の 著 作 が , 「 実 務 上 の 経 験 的 知 識 の 集 成 」 に と ど ま る も の で あ っ た か , ま た は そ れ を 超 え る も の で あ っ た か の 評 価 は 別 と し て 乱 そ れ が 商 業 に か か お る 単 な る 断 片 的 な 記 載 の 域 を 超 え た , 現 在 ま で に 確 認 さ れ て い る 世 界 で 最 も 古 い 単 行 の 商 業 書 で あ る こ と は 間 違 い な か ろ う 。 All ad-Dimisqi の 著 作 と い わ れ る , こ の ア ラ ビ ア の 商 業 書 の 主 要 な 内 容 の 一 っ が , 商 品 に 関 す る 記 述 で あ っ て , そ れ が 商 品 学 の 先 駆 的 な 文 献 で あ る こ と を わ が 国 の 商 品 学 界 で 初 め て 指 摘 し た の は , 柳 川 昇 氏 で あ っ た 商 品 学 を , 重 商 主 義 時 代 の 古 典 的 な 商 業 学 , 即 ち , 体 系 的 商 取 引 学 と の か か お り で 論 じ た 論 文 , “ 商 品 学 の 発 達 一 特 に そ の 所 謂 古 典 時 代 を 中 心 と し て ー ” の な か で , 「 商 品 に 関 す る 叙 述 は 時 間 的 に 遥 か に 遡 っ て 見 る こ と が で き る 」 と , 氏 は 述 べ て 「 ペ ソ 白 レ フ に よ れ ば 最 古 の 商 業 学 に 関 す る 著 書 は9 世 紀 よ り12

世 紀 に 至 る ア ラ ビ ア の 商 業 繁 栄 時 代 に 著 わ さ れ た るAll ad-Dimisgi : DasBuch

des Hinweises auf die Schonheiten des Handels und d 祐Kf

侃 址nis der guten und schlechten Waren und die Fdlschungender Bet

れiiger an ihnen で あ り , 本 書 は そ の 書 名 の 示 す 如 く 商 品 に 関 す る 凡 ゆ る 偽 朧 行 為 の 鑑 別 な る 実 用 目 的 に 照 応 し た る 商 品 の 叙 述 を 以 て そ の 第 一   8 ) 部 と な し た と 云 わ れ 」 と 紹 介 し て い る 。  こ の 本 が , 商 品 研 究 の 歴 史 な り 商 品 学 の 生 成 , 発 展 の 歴 史 を あ と づ け る に あ だ っ て の 数 少 い 貴 重 な 文 献 の 一 つ で あ り , そ の 表 題 か ら 推 し た だ け で 乱 9)      10 ) 極めて示唆に富む内容が期待されることは,最近も,星宮啓, G. Grundke 等,内外の商品学者 のなかに,All ad-Dimisqi  の名と著書 のフル タイトル をあげ ている著作があ るこ とからも十分に うかがうことはで きる。し かし な

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All ad-Diniisqiの商業書 23 が ら, 経営 学 , 商業 学, 商 品 学 の各分野 か らふ れてい る これ ら の文献 は, モ の典拠 が一つ と思 わ れ るに もかかわ らず,著 者名 の表 記や, 著 作 年 代 が まち まちであ ‰ タ イト ル の表 現 に も若干適 正を欠 く も の もあ り, そ の構 成 や内 11) 容に までた ちい っ て ふれ てい る部分 は, 最近Leitherer の論 著を 紹 介し た 岡 12) 下 敏氏 の論文 が, 他 よ り梢 々詳しい とはい え, そ の数 が少 ない ば か りか一般 に 簡略 な も のに と ど まっ てい る。 文  献 All ad-Dimisqi  の商業書の存在を指摘し,そ の内容を紹介する典拠 とな ってきたPenndorf や最近さらにやや詳し くつたえてい るLeitherer の論

文は,いずれ 乱Hellmut Ritter  の論文,Ein ,arabisches Ha け,dhuch    13)der Handelswissenscha 穴(1917 )を よりどころとし てい る。 この論文は,91 ページにわたる長さを もち,All ad-Dimigqi の商業書の紹介ならびに, 書誌学的な解説とともに,そ の内容 の大部分を翻訳し た ものである。しかし 14) ながら, 彼の紹介に先立ってEilhard Wiedemann の手に よってこの商業

書 の一部, 主 とし て い わ ゆ る Warenkunde  の部分娯 Beitrdge zurGeschichte der Natur 扨issenschaften に寄稿 されているため, リッタ ー め論文では,重複を さけて, この部分の翻訳は欠落し てお り,取扱われてい る商品名を列挙す る程度 の簡単な説明にとどまってい る。  したがって, AH ad-Dimi:Sqiの商業書 の全容をとらえ ようとするために は, Ritter の論文だけ では不十分であって, Wiedemann の紹介 と併せて検 討するこ とが要請 され,とくに,商品学の剖;分 の内容をしるためには,後者 の文献は不可欠なも のと言わざるをえない。  筆者は, さきに,Ritter の論文 のコピーは入手し てあったが,このたび, 幸いにし て,Wiedemann の論著を 右手にする機会に恵 まれた ので,本書の 仝貌 の紹介は他日にゆずるとし て 乱 商品学ないしはそれと関連 の深い前半 の部分だけでもとりあえず紹介して, 筆者がこれ までとりくんで きた分野で あ る商品学 の文献史的研究 の進展のための素材 として提供し ようレ 著者All ad-Dimi&qi この本 の著者 の名は,主としてRitter −Penndorf 経由でっ たえられてお

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りな がら,All" adしDimi如i とい う表示 のほ か にA に)imisqui (Penndorf,佐 々木) やAll ad-Dimisgi (柳川) とい っ た表示 もつ かわ れて い る。 後者 が。 15) い か か る文献 に 依拠して い るか は, 詳 か でぱ な いが, 他 に, 英 語 の文献 で,A に)imashqi と表示し た も のを 含 めて, そ0 も とに なっ た ア ラビ ア語は同 一 のも のであっ て 乱 基 本的 には ヨ ー=t ツパ 系 の文字 にお きか え 翻字す る に亦 だ っ て の表示 方 法に差 が出 た も のと解し て よかろ ‰ Ritter

の表示 に よれば, 著 者 の名 は, 尊称 を 合 めて,Scheih abi]i 1-Fadi .       16)Ga'far b.

'All ad-Dimisqi とし るさ れて お り, Wiedemann に よれば, そ 17) れは,Scheich を 別 掲した うえ, Abu'l Fadl Ga'far Ibn ‘All al Dimaschqi と書 か れてい る。 Scheih

また ぱScheich とは, 家長 ,族 長 の尊称,abu 1 ……b ,Abu'l …

…Ibn と は,父 , 誰 々 の息子 とい うい わゆ る父 称 であ り,Fadl  とは 優れ た とい う意 味 の敬称 で あ る か ら, これ らを 省 略 すれ ば, こ の部分 は,父 , ガ

フ ァ ール の息子 とい うこ と にな る。 AH ad-Dimisqi  とい う表示 とAll al-Dimaschqi とい う綴 りとで は,一 見か な り違 うよ うに も思 われ るが,ad と,

い わ ば リェ ーゾソ す るとこ ろ であ る か ら, い ず れ の表示 で も よい こ とに なる。Dimigqi,

また はDimashqi と表 示 さ れ てい る のは,yaban 日 本 に対 す る3^abani

日本 の, 日本人 とい う意味 の場合 と同 様, ダマス ク の, ダ マス ク人 の意味 であ るか ら, フ ルネ ー ムを, 尊称, 敬 称 をぬ かし て単 純化 す れば, 父 。 ガフ ァ ール の息子, ダ マス クの ア リ ーとい うこ と に な る。 レ オナル ド・ ダ ・ ヴィソ チ は, ヴィソ チ村 のレ オ ナル ドであ り, 中浜万 次郎 は,土 佐 中浜 の 万 次郎 であ る よ うに, ダマ ス ク の アリ ーは, アn ーと名 だけ を呼 ぶこ とは ま だし 乱 ダ マス ク の人 とい う意味 にあ た る, 例 え ばデ ィ ミス キとい う呼 名 だ け で, あ た か もそ の姓 の如 く呼 ぶこ とは好 まし く ない。 All ad-Dimi 禎i ダ マス クの ア リ ーと呼 ば れ る こ の本 の著 者 につい て,彼 が どの よ うな人 物 であっ た かは全 く知 ら れ てい ないし , こ の本 が書か れた時 期 につ い て も正 確 なところ は わか ら ない。 福 田 敬太 郎氏 は,( 当時, 貿易 活 動 18) で巨 富を 積 むこ とがで きた アル ・デ ィ ミス キ と呼 ば れる人 」 と, 述 べ てお ら れ るが, これ とてあ くまで も推定 にす ぎず, 文献 に よる裏付 けは され てい な い。  現 存し てい る この本 は, カ イロ の, ヘ デ ィベKhedive (副王) 文庫 の所 蔵

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All ad-Dimisqiの商業言 25  19) 本 であ って,1318 年 に出 版 され た も のが残 っ てい る。 そ の序文 の記載 事項 か・ ら,二 つ のダ マス ク の手 稿を 合 併 し, 改 訂し た も ので あ るこ とが推 定 され て い るが, オ リジ ナル な労 作 に関 す るそ れ以 上 の手 懸 りは ない模 様 であ る。 こ の本 の, い わば オリジ ナル 版 ともい うべ き二 つ の手稿 が,執 筆, 出 版さ れ た 時 期ないし は著 者 が活 躍し てい た で あろ う時期 に関 し,10 世紀mm) 9 ∼10 世紀( 荒川), 10∼13 世 紀( 佐々木) など の説明 もみかけ られる が, Al-Kindi を はじ め とす る本書 の引 用 文献 の著 者 の生存 年 代や,記 載内容 にで てく る イ ン ド の貨幣 の鋳造年 代, 等 か ら推 定 さ れた ところ によ れば, 著 者 は, ほ ぼ回, 教 暦で250∼570 年, 西暦 では,9 世 紀 か ら12 世紀 の開 に生存し た人 物 では な 20) い か とい わ れてい る。 こ の時 期 は, まさ に アラビ ア商業 の繁栄 時 代 にあ た る 昿 引例 な どか ら推 し て, お そ らくは 東西 交 通 の十字 路 の位 置 にあ た り, 海 路 ・陸路 の接点 にもあ た ってい て, 当 時, ア ラビ アにおけ る商業 の中 心的 な 位 置 にあ っ た今 日 のシ リア地 方, な か んず く, そ の中心 地であ っ 仏 特 にダ 21) マス クにおい て, こ の本 は著 述 された もの と推定 さ れて いる。 書名一 商業 の美……−  ダ マ ス ク の ア リ ー,AH ad-Dimisqi の 著 作 とい わ れ る こ の ア ラ ビ ア の 商 業 書 <Ritter は ㈲業 学 の手引 書 と呼び,Wiedes ゛11 )は’商業 ’商品 学書 と呼 んで い る> の フ ル タ イ トル は , 次 の よ う な も の で あ る。

Kitab al-i俎ra ila mahasin at-tiga:ra wa ma'rifat 京ajjid al-a'rad waradi'iha wa 丘u岫回al-mudallisin f 出a.

このタイトルを,Ritter は,前述 の如 く,Das Buch des Hinweisesauf

die Schonheiten des Handel s und die Kenntnis der gutenund schlechten Waren und die Fdlschungen der Betr 榴-er an

23)ihnen

と訳し てお り,他方, Wiedemann は,Wer んdes Hinweises aufdie Vorzuge des Handels und der Kenntnis der besten und

schlechten Qualitdten der War en, sowie die Nachahm 割ngen der  24)Fdlscher

と訳串し ている。わが国では,mahasin at-tigara の部分を訳出 したところ のSchonheiten des Handels T商業 の美」とい う部分を採 り,

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い わばメーV タ イトル,あるいは略称で呼ば れ ている場合 があ る。 ところで,mahasin とい う語は, hasan よい,きれい な, とい う意味 の言葉から派生 した もので,美点,長所といった意味 のほかに功績,効果 といった意味も含 まれてい るので, より一般的概念 とし ては商業 の貢献 な り役割 といった とこ ろ となろ う。 また, ma‘rifat とい う語 乱 知 るところ のものであれば知識 であ り,知 るところ のこ とであれば認識 なり識別 とい う意味 と亙呪 いずれ

を採るかは微妙な ところ で あ ろ う。さらに, 冒頭 のKitab al-i§ara がdesHinweises とドイツ語訳されたためか,偽造に関する指 針との和訳がみられ るが,偽造0 ための手引書と逆に うけ とられるこ とは よもや ない とはいえ, 誤解を うけ かねない表現を とることはなるべく避けた方 がよかろ うと思われ る。  このような点を検討し,かつ,本 の内容 とも照応させた ところでは,この 本 のタイトルは,さしずめ,「 商業の役割,商品の優劣 の識別,ならびに 詐 欺 者に よるその偽造に論及した本」 といったところがおおむね妥当な表現と なろ う。 項目の配列  こ の本は,全体で72ペ ージから成 り立っていた模様で, RitterとWiede-mann 両者の訳出や紹介を総合すると,ほぼ次 のような内容構成 となってい る。 Ritter の論文に は, 原著 の章や節の表題 と思われるものが訳出されて はいるが, どれが章にあたり,どれが節にあたる も0 かが,その表示形式か らだけでは判別し難いので,項目 の順序 のみに従っ てこれを 配列することに した。 また,これらの表題0 大部分は,ドイツ語訳か らの再訳であるが,ア ラビア語 の原語が翻字で紹介されていて,直接, より適 切な訳語が見出せる ものや本文内容 との関連で直訳を とらない方が妥当 なものにおい ては,それ ぞれそ のような方法を とってみた。なお<  >内ぱ内容 から判断し て筆者が 挿入した注記 である。 ≪ 財≫ の実 体について 多くの財貨に よる富 の称賛 なぜく もの云わぬ≫ 財貨<貨幣>が必要か

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All ad-Dimi§qiの商業書 27 いかにし て く もの云 わぬ≫ 財貨<貨幣=貴金属> を検査し,そ の良し悪しを 識別するか 商品について あらゆる商品 に関する標準価格 の認識 商品 の品質 の良し悪しについて 宝石一芳香一香料一繊維一金属一食料そ の他一不動産一生 存物 資産入手 の方法につ いて 強権による取得につ いて 熟達した手段 の(技術的な)さまざまな方法による取得につ いて 強権 と熟達 との結合 による取得について 職業について 商人 に対する必要な忠告一 崇高にし て全能 なる神 のお ゆるしを もってー 商業 のすばらしさ 商人 の第一 の様式,蔵持商人(集散地商人)について 第二 の旅商はいかに振舞 うべきか 第三 の船持商(輸出商人)はいかに振舞 うべきか 商人 の欲望 に思惑をかけ る人 々をいかに用心すべきか 愛想 のよい詐欺者をいかに用心せねばならぬか やま師やかた りをいかに用心せねばならぬか 信心ぶって俗世 の幸福をえ ようとする偽善者をいかに用 心せねば ならぬ加 資産 の保全 資産 の支出 の際に何 に用 心せねばならぬか そ の際, どう支出するかについての注意 資産 の保護に必要 なこ と 資産 のぞんざいな扱いや浪費 の防止 25)  これ らの見出し か らうかがえる本書の内容を,Ritterを典拠にし てPenn-  26 )     27)dorf やLeitherer は,商品学的 な部分をはじめ とし て四分し ているが,経 済理論的部分が商品学的部分や商業学的 部分と一部パ 学的部分をはさんで, 前後に二分されていて,貨幣 の成立 など商品総論に先 立つ部分は回 らかに経済理論的部分とみなす方 が妥当であ ることなどか ら,

(9)

こ のような四分には若干無理があ る ように思 われる。そこで,項目の配列 の 順序を尊重しつつ,かつ,論理 の展開 と内容上 の関連に力点をおいて,やや 細 分し てグル ープ化を試みると,ほぼ次のような内容 の配列 となろう。

1

2

3

4

5

6

7

8

財 貨幣 商品総論 商品各論 財産の取得方 法 商業 の役割 と方法 投機に関する警告 資産の保全 頁 2 ・^ Oi QJ  <T>1 CO つ J   ︵ j ' T t < L O 56 こ の 本 が , 前 に も ふ れ た よ う に , 二 つ の 手 稿 を 合 わ せ た も の と す る な ら ば , そ の 項 目 や 内 容 か ら 推 し 測 る と , 恐 ら く は , 財 一 貨 幣 一 商 品 総 論 一 商 品 各 論 ま で の 第 一 部 と , 財 産 の 取 得 方 法 一 商 業 の 役 割 と 方 法 一 投 機 に 関 す る 警 告 一 資 産 の 保 全 ま で の 第 二 部 と か ら 成 り 立 っ て い る と み る の が お お か か 妥 当 で あ る ‰ そ し て , 前 編 に あ た る 第 一 部 は , ま さ に 商 品 学 的 部 分 で あ り , 後 編 の 第 二 部 は , い わ ば 商 業 学 的 部 分 で あ る と 云 え よ う 。 Ritter を は じ め , こ れ ま で の 紹 介 者 が 採 っ て い る 円 部 分 の う ち , 経 済 理 論 的 部 分 や , 忠 告 的 部 分 と 云 わ れ て い る も の は , 他 の 二 つ の 部 分 , 即 ち , 商 品 学 的 部 分 と 商 業 学 的 部 分 と き り は な し て , そ れ ら と 併 存 す る 性 格 の も の で は な く , む し ろ , 経 済 理 論 的 な 方 法 な り , 忠 告 的 な 方 法 が , 商 品 学 や 商 業 学 的 な 部 分 の 内 容 と し て 盛 り 込 ま れ て い る と み な す こ と の 方 が , 適 当 で は な か ろ う か .  < な 払 “ 財 産 の 取 得 方 法 ” ま で を 第 一 部 と 解 す る こ と 乱 十 分 に 推 定 し う る .>  筆 者 は , こ の よ う に , こ の 本 の 内 容 構 成 を 大 き く 二 分 し て , 商 品 学 的 部 分 で あ る 第 一一 部 と 商 業 学 的 部 分 の 第 二 部 と か ら 成 り 立 っ て い る と 考 え る . も っ と 乱 商 品 学 を 広 義 の 商 業 学 の な か に 含 め れ ば ,Ritter の 論 文 の タ イ ト ル の よ う にeirl ar 計)isches Handbuch der Handelswissenschaft と な る わ け 

. −  ・

昏 ?   }.− ・t・ ●● ●= j  ●_ ●t ●● = ,.● s ●争 ミ ー ー一--  .ミ ー l四   ●   か一!二i..  ●-● だ が , 他 万 , 冊 品 字 的 鄙 分 の 相 対 的 な 独 目 性 を 強 調 ず る 立 場 に 立 つ 単 零 の 側

(10)

All ad-DimiSqi の商業書 29

にくみす る考 え方 はWiedemann  のみだし のよ うにarabische Handels-und AVarenlehre

とい う表 現 の中 に,見 出す こ とが で きる と も云 え よ う。 ともあ れ, 本 書は, 中 世 ア ラ ビア の商 品学 な り商業 学 の, 内容 な り水 準を 知 るため の貴 重 な文献 であ る こ とは 間違 い ない こ とであ り, 出来 うべく んば い ず れは, そ の全容 が詳 し く 紹介 さ れ る べ きも のであろ う。 し かし, Ritter やWiedemann の論 著そ れ 自 体 が, ア ラビ ア学 なりイス ラ ム学 の幅広 い 文献 学 を土 台 にし た ものであ っ て, こ の分野 の文献 との接 触 に もとぼし く,非 力 な 筆 者に とっ ては, これを わず か な歳月 で 消化す る こ とは, 到底 不可 能 であ る ば か りか, 仮 にこ の よ うな背 景 とは,一 応 き りは なし て, そ の内容 を 論 ず る にし て 乱 商業 学 の歴 史 な り, 経済 思 想 の歴 史 のなか で論 旨を 正 確 には あ く し てい くこ とで さ 七 時 日 の余 裕 が必要 な ので,今 回 は, 全 体 の概 要 には, 一 応ふ れて はお くが, まず主 とし て, 筆 者 の継 続的 な研究 領域 であ る, 第一 部, 商品 学 の部 分に重 点を 置 い て紹 介す る こ とにし た い。 財産の実体  こ の本 の 冒 頭 で, 原 著 者 は , ま ずmal (Besitz )〔財, 財産〕 と い う語 と, そ の実 体 (haqiqat al-mal ) に ふ れ て い る。 彼 の分 類 に よる と, 財 は4 つ の 類 型 に 分 け ら れ る 。 1.

mal as 一samit (Der “vStumme ” Besitz)〔物云 わぬ財=貨 幣〕  こ れ は , 金 , 銀 , な ら び に , す べ て の鋳 貨 で あ る 。 2.

'ard (Die Ware )〔 動産 =商品 狭m )〕 そ れ 自 体 , 使 用 対 象 な り販 売 対 象 とな る も の。 宝 石 , 鉄 , 銅 , 鉛 , 木 材 な ど, そ の他 こ れ ら か ら の 製 品 。 3.

'qar (Der Grundbesitz )〔不動 産〕  更 に 細 分 さ れmusaqqaf (iiber-dachter Grundbesitz )〔家屋 類〕 と し て , 家 , 旅 館 , 露 店 , 浴 場 , 製 粉 場 , 印

刷 所 , 製 陶 工 場 , パ ソ 焼 か ま ど, 皮 な め し 工 場 , 宮 廷 な ど, とmuzdara (wirtschafts land) 〔農場類つ とし て ,畑 ,ぶ ど う園 , 牧 場, 林 , 泉 や 水 利 権

を と も な う池, な ど に 分 け ら れ る 。 4.

hajawan (Die lebenden Wesen )[ 生存物つ  金, 銀 をStumme Besitz と表 現 す る の に対 応 し て,“redenden ”くBesitz 物 を 云 う財, と ベ ド ゥ イ ン 人 は 名 づ け て い る 。 こ れを 三 つ に 分 け ,a. raqiq (Sklaven) 奴 隷 (男,女) と,h.

(11)

(Weide-vieh)牧 用 家蓄 (羊,牛,山羊,水牛ならびに放牧され役用に使用されないらくだ)と 例を あ げ てい る。  財 の概 念 と分 類 な どにつ い ては, ア リス トテレ ス を はじ め, さ まざ まな説 が となえ られ てい る ところ であっ て, 経済 思想 史 の うえ で の位置 づけを 論じ る紙 幅は ない が, こ の項 で, 筆者 が最 も注 目し た い のは, 金 , 銀 そ の他 の鋳 貨を,mal as 一samit (物云わぬ財) と呼 ぶこ とで あ る。 原 著 書 自身, 後 に, 物 云 わ ぬ財 は なぜ 必要 か, と貨 幣 の生 成 過程 とそ の機能 を 説 明 し てい るが,simt (沈黙) とは, まさ に, 使 用を直 接 目的 とし た財 貨 では な く, 貨幣 とし て, そ の使用 価 値か ら独立し た状 態 にあ るこ れ ら の財 貨 を象 徴 す る表現 とし て まこ とにふ さ わし い ものであ り,貨 幣 の本 質 に対 す る洞察 の深 さを 示 す言 葉 であ る といえ よ う。 

さ ら に, 同 様 に, 狭義 の商品を さ す言葉‘ard (Ware ), a'rad (Waren )力≒a 十rada (歩きまわるの意)か ら成 り立 っ てい て, 本来, 動 く も の=動産を 意

味 す る言葉 であ る のに対し, a‘qar がqa'd (坐 る)か ら きた 言 葉 で, まさにgrundbesitz (不動産)に ふさわし い表 現を とっ てお り, 論理 がpi ゴス λoroa 言 葉を 原義 とし てい るよ うに, 極め て, 率直 で かつ象 徴的 な言 葉 で概念 規定 を し てい るこ とに も, 驚嘆 させ られ る。 富の称揚  次いで,注 目したいことは,豊かな財産を所有 するこ とを称 揚し, ( 富は 29―1) 好 まし い資質 と気高い天性のあらわれである。」として, それを賛えているこ とであ る。 また「あ る人 の富がた とえ相続 された ものであって 乱 それは, 昔からの裕福で気高い家柄を示すものであ り, また, もし, 彼自身がこれを 取得し た場合には, 彼のけだかい努力 と, 豊かな知 性 と,完全無欠 な洞察力 29−2) を示 す ものであ る。」とも述べている。これらの言葉を通じ て,当時,経済的 な実力 では, まさに世界に冠 たる地位にあった アラビ ア商人 の心意気が如何 にさかんなものであったかがうかがえ よう。また楽天的 とさえ思われるよう なそ の富に対 する賛美は,古今東西 の財富観のなかで 乱 ひ ときわユニーク なものであ り, ギリシ ア・ロ ーマ時代には,往々にし て精神的,肉体的なも のの下位におかれていた物質財,即ち富たるものに対し て, そ の倫理的なき ずなを解 き放っ て正当な地位を与えたものであっ て, アラビ ア経済思潮のお

(12)

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All ad-Dimisqi の商 業書 31 貨幣について  なぜ“もの云わぬ財貨”が必要か との見出し で貨幣O 必要性を説いた部分け,Ritter をはじめ,Penndorf やLeitherer などに よっ て,これまで経済理論 的 な 成 果 と し て 高 い 評 価 を え て き た と こ ろ で あ る が, そ こ で は, ま さ し く 評 判 30) どおりの説得力 のある,大要次 のよ うな順序だてた論理が展開されている。 即ち,著者は,あ らゆる生物に とって は さ てお 乱 まず人 間 に とっ て, そ の属性 に よっ てさ まざまに 分け られ る厖大 な数 にお よぶ需 要 が存在 する こ とか ら説 きはじ め, そ のなか で, 一方 に おい て, い わ ば衣食 住 のたぐいり よ

うに必然 的 な(tabi‘ija, darurija)需 要 があ る とと もに,他方 ,戦闘 のため の

防 具 や武器, 病気 の際 の薬 剤や水 薬 の よ うな臨 時的 で , 流動 的 な(wad'ija丿 'aradija)需 要 も含 まれ るこ とにふ れ てい る。  次 い で, こ の ような物を仕 上げ る まで には, 一 連 のさ まざ まな技能を必 要 とす る も のであ って, 作物 の栽 培 の際 は, 播 種 や 植付 け, 除草, 濯水, 間 引, … …最 後 に, 刈入 れや採集 と云 っ た こ とを せ ねば な らぬが, 完全 な利用 に至 る まで には,更 に, はるか に多 く の技 能 が必 要 であ る と述 べ てい る。 そ し て, 穀物 の場合 は, 収 穫 のあ とに おい て もな お, 脱穀し, 箕で吹 分け, 節 にかけ, 精 製し, 粉 にひ き, こし, こね, パソ に焼 上げ られ てはじ め て最終 的に 食品 とし て役立つ のであ る。 亜麻 の場 合 も同 様 に, 水 に浸し て柔 らかく し た あ と, なお, 乱 れた束を 振 り分け, 砕 き, 麻 こ きでくしけ ず り, 紡 ぎ, 練 り, そ れ か ら織 物 に必 要 な作業 に と りか か らね ば な らぬし, そ の うえ色 ぬ きを し, さ らし, 縫 合 され て, 衣 料 に役 立 て られ る。 こ のよ うに, 沢山 の工 程 かお る こ とを 例示し た うえ,個 々 の人 び とが こ れ ら の技 能 のすべ てに と り く み, 最初 か ら最後 まで熟 達す る とい うこ とは到 底 不可 能 であ る とし, 具体 的 な例をあ げ てさ まざ まな職種 の成 立 と相互 依存 か らなる 分業 と協業 との関 係 を 説明し てい る。  ところ で,人 び とは こ の ような依存 関係 には あ る が相互 の需 要は,一方 と 他方 とが必 ずし も時 間的 に一 緒に満 たさ れ る とは限 らないし, 量的 に もまた 両 者 が同 じ 大 きさであ る とは限 らない。 次 に, 人 は, さ まざま な種類 に わた っ た個 々 の事物 の価 値がい か なる も のであ る か, ま た, 他 のそ れぞ れ の物 の

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任意の部分と,ある商品がいかなる量的関係にあるか, 更 に, 任意の手仕 事 の出来ばえが,他 の手仕事 のそれといかなる価値関係にあ るかを知 らない。 そこで,人 びとは,そ れぞれ の事物に対し て価格を設定し, それによってそ れ らの価値の差を知 りうる という物体の必要に気付く。そ の結果, 今, 何 か ある物を販売対象 とし て,あ るいは使用対象 とし て必要 とする ときには, 誰 で 乱 計測手段 とし てあ らゆる物にあてはまる物質でそ の価値をは かるこ と ができるようになる。 もし,こ のようなものがないならば,誰 で もが交換 の 相手 の必要 とするあ る種 のものを,油な り穀物 なりを所持し てなければ なら ないことにな り,A とB との相互に必要な物を,同時に手元 に持合せている とい うこ とはなかなか起 り難 いものであ り,し かも,A とB との価値が, 正 確 に合致するとい うような都合 のよいことは,そ う起るものではないから, 交換取引は成立し難い, と述べ,貨幣 の成立 の論理的な過程 と, そ の交換 手 段,支払手段そし て価値測定手段 とし ての機能について解説し ている。  こ のような物云 わぬ財=貨幣 の重要性について認識し て以来,先人 たちは, 他 の事物に価格を設定し うるような物体を捜し求めた。植物や動物 などの生 物が考えられたこ ともあったが,それらは,耐久性がなく, 損傷しやすい の で棄却された。金属のなかから鋳造しやすく,堅 い鉱物 が選ばれたが, 鉄, 銅は, いずれも誘び易 い とい う理由で, また鉛は黒く変色し,容易に軟 らか くなり変形し易 い とい うこ とで棄却された。同様に銅は一方 では緑青が付着 するのを常 とする故 に棄却 されてはいるか,他方,銅貨 とし て鋳造され取引 に使用されてもい る。 し かし, 金と銀 とが, 楽に鋳貨 の形状に鋳造し, 展 延,融合, 分割され, 容易 にそれぞれ思うままの形態にされる故を以 て,他 のどの金属よりも優 れているとい う点で,全 ての人び との意見 の一致を みて いる。さらに, それらは,美しい光沢を持ち, 臭気や臭味による妨げ もなく, 地 中に埋めても変 化なく,図柄をつけ たりそれを保持するに適七, 変造,偽 造を予防するため の,し るしを永続的 にとどめることができる。そこで, 両 者が貨幣に鋳造されて, あ らゆる事物に対する支払手段 となる。なかで も金 ぱ,美しい光沢 とすぐれた緻密さを持ち,変質するこ とかく, 最 も長期にわ たって地中に埋蔵で きレ かつ,度重なる熔融にも耐え ることができる。そこ で, 金の一定 の量を, 銀の特定 のなにがし かの量 と同等 の関係におき, 両者 ともが,あらゆる事物に対す る支払手段 となる。このような関係につい て理

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All ad-Dimisqiの商業書 33 解 するこ とに よう て, 各 人 は, そ れぞ れ の希望 す る ときに, 必 要 な ものを 購 入 す るこ とがで きる よ うに なる。  彼は, こ の よ うな論 理 展開 で,mal as samit 物云 わぬ財 =貨 幣 の成 立 に つ い て述べ てい る。 こ れ が, 貨 幣 論 とし て, 如何 なる立場 に たつ もの であ る かを論じ るこ とは, 本稿 の目的 で も筆 者 の任務 で もない が, 分業 関係 の成立 か ら交換 手段 とし ての貨 幣 の機 能を 論じ, さ らにそ の支 払手段 とし て の機能 を 経 て価 値 の測 定 手段 とし て の機能 を論 じ, 一般的 等価 物=貨 幣 材 料 とし て の金, 銀 の適 性, な か んず く金 の もっ 優 越 性につ い て論 を進 め てい く論 理 の 展 開は, 使 用価 値 か ら独立 し た貨 幣 なる「 商 品」を「 物云 わ ぬ財 」 と表 現し た アラビ ア民 族 の優 れ た抽 象 力 に象 徴さ れる ように, 優 れて明 快 な もの 七あ っ て, そ の理 論的 な水 準 私 高 く評 価 され る べ きものに違 い なか ろ う。 商品の価格や品質などを知る必要について  商品の個別的 な記述 に先だ ち,著 者は,商品総論とで も云 うべ き包括的 な いしは前提的 な記述とし て, 先 ず, 諸商品(a'rad)の取扱い,取引 き に あ だっての留意事項 とし て価格や品質を知る必要などを述べている。彼は,大 別して三点に心を用 いるべ きであると云っている。そ の第一点は, 商品 の購 入 ないしは仕入にあたっ ての留意事項であって, それは, さらに二つの方法 に よって行なわれるとし て, 個別商品の標準(平均)価格の認識 と,商品 の 品質の良し悪し ならびに詐欺者 がそれに手をつけ る偽造についての識別 の必 要 性をとりあげ ている。 第二点 とし ては,「それぞれの技術につ いては,信 用し うる専門家0 助力を 要す る」と予言者が云ったように,専門的 な信頼し うる人々からの手助けを受け, その忠告を聞くべ きことを述べている。そし て, 第三点 とし ては,商品の損傷や変質, さらには各種の盗難 の防 止に留意 すべ きことに も触れてい る。  まず, 標準価格について論じ でいる点についてかいつ まんで述べ よう。先 ずはじめに, その取引地点 が問題 となるこ とが指摘されている。同一 の商品 でも一つ の地方 の中位 の標準的 な価格水準が,他 の地方 のそれとは異なるも のであ り,集散地からの遠近や,有名な特産地のものであるか否かなどによ っ ても異るものであ るとし て, そのもつ地域性についてインド産のやなぎご 32) お り や , 真 珠 の 場 合 を 例 に 説 明 し て い る 。 通 常 の 変 動 の , ま た 時 に は , 損 害

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を こ うむ るほ どの異常 な上下 の変 動 の基 準 とし て認定 で き る標 準価 格仙 人 は, 故 国 に おけ る,そ の商品 の過去 の価 格を 手 懸 りとし て,自 分自身 の熟練 に よっ て評 価 す るこ とが で きるが, それ ぞ れ の商 品 な りそ れぞ れ の購入対 象 ご とに, 専門 家 に よっ て知 られ た特定 の標 準 価格 があ る 故,正 確 には,そ れ らの信 頼 し うる専門 家 に問 い合 わせ るこ と もで き よう と述 べ てい る。 そし て, と くに注 目す べ きこ とに ,「そ の際 ,そ の商品 が 安定 し た 状態 にあ るのか, 危険 な状態 に さ らされ ている のか, また そ れが豊 富 であ る か欠 乏し てい る も 33) のか といっ た こ とを常 に考 慮し て推定 の結論 を み ちび かなけ れば ならない 。」 と商 品 の供 給面 で の安定 性 が基準 とな る価 格 の推定 に とっ て重要 な顧慮 事項 であ る こ とを 指 摘し てい る。  次 い で, 著 者は, 価 格 の上昇 や下 降 をあ らわ す若干 の 相場用 語(例えば,hada'a

si 'ruh [beruhig <Ruhe ]<心の平静一休息−いっぷ <>といった) の,い

わ ば , テ クニ カル・ タ ームを 紹介 し たあ と, 価 格 の変 動 の通 例 と,経験 の豊 か な商 人 昿 つ れづ れ「 安 値か ら高 値に な る と き買 っ て 乱 逆に, 高値 か ら 安 値 に な る ときは買 うな」 と云 っ ている よ うな,価 格 変動 と売買 の機会 との 34) 関 係 につ い て も詳し い説 明を行 なっ てい る。  商 品 の品質 の良 し悪し と, 詐欺 者 が犯 す偽造 を 識 別 し, と りわけ 商品 のそ れぞ れ の種類 ご とにそ れを知 るため に は, 数 多 くの方 法 か お る。 例え ば, 宝 石 につ い て云 え ば,Al-Kindi (∼873)を は じ め と し た 先 駆的 な学者 た ちが一 群 の論 著を あ らぬし ,そ の なかで, 宝 石 の価 格 ,称 賛 に価 す る性質 。 35) 原 産 地, 採取方 法等を取 扱っ てい る。 ま七 芳 香 と薬 香 や香 辛料 につ いて も 同 様 であ る。古 代 の医 者や 哲学者 や ,数多 くの近年 の学者 たちが ,こ れ らを 対 象 とし た労 作を 持っ ている。そ れ らのな かに は ,そ れぞ れ の性質 ,用途 , 個 々 の 品 種 の 優 劣 , 産 地 , し た が っ て, そ の ギ リ シ ア 名 , ペ ル シ ア名 , ア ラ 36) ビ ア名を記述し ている。 このように,商品 分野ご とに,これまでもかなりの 文献 があ るこ とを指摘し たうえ,香料だげ につい てみて 乱 近年は,まさに3,000 もの薬種が数えあげられるほどであ るから, そ れらの有用 な,または 有害 な性質を 述べるだけでも長 ながとし たもの となり,織物や,道具類など, 同 様に沢山 の種類のある尤のについて 乱 いちいち,その良 否をたし かめる 方法を 提示するとなると,非常に厖大 なものとなって本書 の意図からはずれ てし まうので,大量に売買され,取引される商品のみに限定し て述べると,

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All ad-Dimi§qiの商業書 35 各論 へのこ とあ りか なさ れてい る に と どま り, 品質 の良し 悪し な り偽造を 識 別す る方 法に つ い ての具体的 な記 述 は, 各 論 の方 に ゆだ ね られて い る。  なお / 標準 価格 の認謝 , な らび に 瀧 品 品質 の良 し 悪レ を 見 出し とし た 節 で,以 上 の ような主 旨の内容 を 詳述 す るに 先 立 ち,留 意事項 の第三 点,につ い ては,‘商品 につ い て’とい う最 初 の総 括的 な 節 のな かで梢 々詳 し く述 べ て い る0 で, これ につ い て,若 干 ふ れて お こ う。 著 者は 商 品 の損傷 や 変質を 防 ぐため に は, どの よ うな物力≒ 正 し くは, 商 品 のそ れぞ れ の種類 ご とに,量 的 に どの く らい損傷し や すい もの なの か, そ の原 因 とし て背後 に存 在す る事 物 は何 か, また, ど の ような処 置をし た ら よい か,そ れ が夏で あ るか冬 であ る かに従 い, ま た旅 行中 か,家 に おい て かに, さ らに大 量 のものに適 用す る のか少量 の場 合 であ る のかに応 じ て知 っ てい るこ とが必 要であ る と述べ てい る。 そし て, 塵 や湿気 水 の場合 と露 の場 合 か おる が一 や,寒 さな どに 対する商品保護の方法とし て床板を敷いた り羊皮 で覆っ たりする具体的な方 法を述べ, とくに高価な商品については,一層注 意深い処 置とし て,一度, 包装 と紐締めがなされたうえに,棉屑を のせ, さらにその うえに よく練 りあ げ たフェルトを置いて全体をしばった うえ,なお,その うえをフックク,をぬ っと材料で覆い,全 体を さらになめし皮でっ つんで帯でし めると,そ の包装 37) 方 法を詳し く記述し でいる。そし て最後にこ の種 の配慮 とし て,横領,窃盗, 強盗に対する用心についてふれ,不誠実 な人 たちに対し ては,封印 と荷印 と を用い,商品を数えて,そ の量,重さ,数を記号化して用いるならば,それ らの形跡を調べることに よっ て, かくされた状況を追跡し て,そこへ導いて い くこ とができると述べ,窃盗に対し ては,堅い戸,よい錠前,高い壁によ っ て,器 用なものでも道がみいだせない ような確かな場所に保管するこ とで あ り,強 盗に対し ては,海送 の場合は,確 かな装備 と,多くの武器や水夫 な どの乗組員たちを もっか大 きな装甲 された船 によ り,また,陸送の場合は, 信頼し うる立派な案内者か,しっ か りと監視し 正しい知識を持っ た信用し う 38) る随行者に よっ て防 ぐことができる と述べている。この ように商品総論 とも い うべき部分で,価 格と品質 とを知 る必要を提示 するとともに,包装,荷印 といった問題に もふれているこ とは,商品学 の歴史のうえで 亀注目すべきこ とといえ よう。

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商品各論 H. Ritter が,「 こ の本 の最大 の,そ し て最 も重要 な部 分 を 形 成し , そこ 39」 に,彼, 固有 の著 作 上 の特 性を あ らわし てい る」 と評 価し て い る ところ の商 品 学的 な記述 は ,商 品 の概 念を 最 も狭 義 に解釈 し, 原著 者 がa'rad と呼 ん で い る部 分 の各 論だけ に限定 し て 乱 本 書 の, ほぼ 三分 の一 を 占 め て お り, 不 動産や 家畜を ぱ じ め とし た生 存物 につ いて の記 述や ,貨 幣 とし て流 通し てい る金, 銀に つ いて の識 別 法 な どの記 述を も含 めれば, 広 義 の商 品各 論 的な 記述 が,全 体 のち ょ うど4 割 を 占 めて いる。既 に述 べ た よ うに, Ritterの論文 に おいては, こ れ ら の部 分 の紹介 な り論 述は 極め て簡単 に な さ れて い るに す ぎ ず, と くにa'rad につ いて は取扱 わ れて いる商 品名 だけ は, ほぼ そ の全 貌を し るこ とが で きる 凪 そ の記述 内容 とな る と,貨 幣 とし て 別掲 され て いる金 , 銀 の記 述 か ら類 推 す る以 外 はほ とん ど 手 懸 りがない0 に反 し, Wiedemann の方 は ,宝石 ,香 料 の大 部 分, 繊 維,金 具,食 料 の うち の代 表的 な 商品 につ いて は,そ の記 述 の全 容 を紹 介し てい る模様 であ るが, Ritter論 文 で名称 だ け はで てい るか な り沢 山 の商品, とくに二 次的 に加工 され た商 品 につ い て の 紹介 が省略 され てい るし ,不 動産 や家畜 な ど の生 存物 に つ い て の記載 もみあ た らない。 し た がっ て狭 義の商品a'rad に限 定し て 乱 そ の記 述 内容 を網 羅 的に紹 介 す るこ とは, 資 料 の制約 から も不可 能 であ るが ,本 稿 の紙 数 の うえ で も制約 があ る ので, そ こ七取扱 わ れて いる主要 な 商品 名一 項 目− と,代 表 的 な記 述 事例を 紹介 し な が らそ の記述 内容 の特色 につ い て論 述 す るに とどめ たい。 な お, 金 , 銀は ,貨 幣mal as-samit (もの云わぬ財) の ところ で取 扱 われ てい る ので,狭 義 の商 品a'rad, の項 目 のな かには 入 れ られ ていな い。 主 とし てRitter の文献 に記載 されてい る商品名 を そ の翻字 法 に従っ て紹 40) 介 すれば, 次 の とお りであ る。<ただし分類では,筆者の責任で香料を一括した。> 宝 石 lu'lu'

またはdurr (Perle)真 珠, jaqut (Korund )鋼 玉 ,zumurrud (Sma-ragd )エ メラル ド, mas (Diamant )ダ イヤ モソ下 ,firuzag (Tiirkis)トル コ 石 ,margan (Koralle)さ ん ご,'aq 呵(Karneol)ル ビ ー, lazward (Lazurstein

)る り, 八az‘(Onyx )し まめ の う。   香 料   

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All ad-Dimisqi の 商業 書 37misk (Moschus )Jlf香 , ‰nbar (Λmbra ) り ゅ う ぜ ん 香, kafur (Kampfer ) 樟 脳 , 廠d (Aloe ) ろ か い, qaranful (Gewurznelken ) 丁 字,

sunbul  (Narde )甘 松, sandal (Sandelholz ) 白 檀 ,za'faran (Safran ) サ フ ラ ン 。

〔saqat as一sagir (Kleinen Spezereien ) 小 薬 香 〕ruwand (Rhabarber ) 大 黄 。  

〔saqat al-kabir (groBen Spezereien ) 大 薬 香 〕nil

(Indigo ) 藍 ,baqqam (Sappanholz ) 蘇 方 ,fulful (Pfeffer ) 胡 楸 ,luban (Weihrauch ) 乳 香, mastaki (Mastixgummi ) マ ス チ ッ ク ・ ゴ ム ,dar sini at-ta'am (Speisezimt ) 肉 桂 ,al (Togariholz ) う こ ん, za 心

(Ingwer ) し ょ う が , zurunbad (Zitwerwurzel )義 述 ,hulan ミan (Galgant ) 良 蓋・qust (Kostwurij ) ミ ル ラ・ladan (Ladumun ) 香 木 ,ihlilig (Myro-balanum

) 樫 の 実 。  繊 維kagid

(Papier ) 紙, kattan (Leinen ) 麻, qutn (Baumwolle ) 木 棉 ,suf  (Wolle ) 当 毛, su'ur as-sat (.Ziegenhaare) 山 羊 の 毛 ,ibrisam (Seid い

絹 ,dib 磁 (A ぶs ) 経 子 /hazz (Chazz ) ? , sjqlatun (Cyklaton )? ,'attabi (Tabin ) タ ビ ネ ッ ト ,musma ト(einfarbiger Seidenstoff ) 絹 の 単 色

生 地, dabiqi (Dabiqistoff ) ? ,Sarb (Scharb ) ? ,

nasafi (Nasafi )? ,abrad (Wollzenge ) 毛 製 品, lubud (Filze ) フ ェ ル ト, busut, tanafis  (Teppiche ) じ ゅ う た ん, manatir (Regenmantel ) 雨 衣 ,a ぶilla (Unter-panzer

) 内 装 衣 。  金 属armahen

(Eisen ) 鉄fulad (Stahl ) 鋼, nahas-ahmar (Kupfer ) 銅 ,tutija (Messing) 真 鎗 ,isbadruh (Bronze ) 青 銅, rasas (Blei) 鉛 ,qal'i  (Zinn ) 錫 ,zibaq (Quecksilber ) 水 銀 。 

食 料 な ら び に 類 似 品 qamh

(Weizen ) 小 麦, 詐言r (Gerste ) 大 皮, daq ≒ (Mehl) 穀 粉 ,zeit  (Oliveol ) オ リ ー ブ 油 ,hall (Essig ) 酢 ,siraq (Sesamol ) ご ま 油 ,sabun  (Seife ) 石 鹸 , ‘asa], rubub (Honig und Fruchtsafte ) 密 お よ び 果 汁 ,sukkar

油iad wa ahmar (weiBer und roter Zucker ) 白 砂 糖 , 赤 砂 糖 ,fawakih jabisa (trockene Friichte ) 乾 燥 果 実, lahm wa sahm (Fleisch

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unt Fett)肉 と脂,≒ubn jabis (trockener Kase) 乾 燥 チ ニズ, hatab, fahm, tibn (Holz, Kohle, Stroh)木材 。炭 ,藁 。 

商 品 の各 論的 な記述 の うち,宝石 , 香料 といっ た, 当 時 の価値 ある貿易 商 品 に詳 し く, そ れにひ きかえ,繊 維 , 食料 といっ た部門 に あ て られてい る紙 数 の割 合 が, 相対的 に梢 々少 な く,生 産財的 な性 格 の 金 属に もわず かなペ ー ジ数し かあ て られ てい ない が,そ れ は当 時 の ア ラビ ア商人 が取 扱っ た商 品を , 直接 に反映 し た もめであっ て,そ の ような時 代 的背 景 に立 て ば, おそ ら く, こ の よ うな 商品 構成 ぱ妥当 な ものであ っ た と云 え よ う。  取 扱 わ れてい る商品は,19 世 紀以 降 の「 近代 」商品 学 の原 料学 的 な性格を 色濃 くそ なえ た もの とは異 な り,繊 維 のな かで 乱 総 子 , タビ ネ ット, フ ェ ル ト, じ ゅ うた ん とい った二 次的 な加 工 品 か ら, さ らに は, 雨衣 や内装 衣 と い っ た三 次 的 な縫製 品 まで含 まれてい た り,食 料 の部門 で 乱 果 汁,乾 燥果 実, チ ーズ とい っ た加工品 が含 まれ てい るこ とは注 目す べ きこ とであっ て, 取 引量 の多 い 商品 の場 合は, そ の加工 度合 の高 さに こだ わ らず, 最終消費 財 に までそ の記 述 が及 んでい る とい う点 で は, むし ろ 現代 の商品 学 と共通性を もっ てい る と さえ いえ よ ‰ 記述内容  個 別 的 な商 品記 述は,全 般的 に みて 簡潔 に な さ れてい る とは云 え ようが, 量的 に みて ,個 々の商品 ご とに か な りの差 が み られ る と と もに, 記 述内容O 重点 の お きか たにおい て 乱 そ れぞ れ,著 し い 特 色を もっ てい る。 香料や繊 維 の場 合 は,大 部分 の商品 はそ の種類 と品 質 の良 否 , 優劣 や そ の検査方法 に 記述 内容 がほ と んど限定 さ れてい る。例え ば ,「 び ゃ くだ ん(白檀)には,赤 と白 との二 種 かお り,赤 は薬 剤に, 白 ば薬 剤 と香 料 に使 用 さ れる。 最良 の も のは, maqasiri (黄び ゃくだ ん) で あ っ て , そ の 香 りと 色 で 識 別 す る 。 最 も 41) 劣悪 な もの は,hawwari (ポプラ種のもの)で あ る。」 と記 されて お り,麻 の 場合 は,「 そ の品質 は,正し い 重 さか ら判 る。 重 い ものは麻 屑や 茎を わず か し か含 んでい ない ものであ る。秤量 がで きな くて 乱 そ の気 に なれば ,繊 維 の品質 は,観 察 に よっ て も識 別 で きる。人 は, 手 触 りで 検査 す る。品質 の卓 越し た ものほ ど,し なや かで,やお ら か く, 光 沢 が ある 。劣 悪 な品質 とし て みわけ られ る欠 点 は, きめ の粗 さで あ り,taqmil (小虫)がつ い た り, 繊 維

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All ad-Dimi§qiの商業書 39  42) が さけ て い た り, 茎苧麻 屑を 沢山含 んでい る もの であ る 。」と記 し てい る。  こ の ように, 品 種や品質 の良し 悪し , な らびに , そ れ らを判 断 す る基 準や 検 査方 法を 中 心 とし た記 述は, 本書 の商 品 記 述 のな か で, 最 も標準的 なス タ イル とい え よ う。そし て,原 著者 は,こ の ような品 質を, 1. 外 観 の観察 に よ っ て, イ。美 し い ,清純 な, 新鮮 な,潤 んだ,とい っ た 稀 々抽象 的,観念的 な 表 現で示 し た り,n. 一 般 的 な色 の濃 淡(dichte Farbe )や, 明 度(hoch∼,tief

∼)や , 採 度(bliite∼)を も区 別し た個 別的 な さ まざ まな 色調 で示 し てい るほ か, ハ。 縞 があ る とか,穴や こ ぶがあ る とか, 丸 い かゆ がん でい るか と いっ た形 状 に つ い て もふ れてい る。 次い で ,2. 手 触 り, 即 ち 触感 に よるレ 滑 らか な もの か, ざ らざ らし た ものか,軟 ら かい 七〇 か堅 い ものか とい う よ うな点 や ,3. 各 種 の香料 の香 りや ,に おい といっ た嗅 覚 へ の依存 は も ち ろ ん のこ と,4. 重 さの正 確 な 秤量 に よる判断 乱 商 品検 査 にあ だっ て の 重要 な手懸 りとし て あげ て い る。5. 麻や木 綿 な ど繊 維 のし な や か さとい っ た, 弾 力性 な り伸 縮 性や, ダ イ ヤモン ド の堅 牢 度 といっ た性 能的 な面 も取 りあげ てい る ほ か,6. ろ かい はイン ド産 , りゅ うぜ ん香 はオ ーマソ産 が良 い と い っ た よ うに, 品 質 の良 し悪 し と 産地 と の関係 に もふ れてい る。 また, 7. 品 種 のちがい や 産 地 のち がい などに よっ て異 なる商 品 の呼 称 ,名称 につい て も ふ れてい る。 さ らに 原 著 者が,九 点,を おい て解 説を し てい る のは,8. ネ ガ テ ィブ な要素 とし て の爽雑物 な どの混 入 など の状 態 であ る。 そ こ では, イ。 成 熟ヤ 乾 燥 の度 合や , 湿気 の多 寡 とい っ た点や , かび や 虫食い に お かされ た ものの有 無 といっ た調 整 の状態 , 口。 こし ょ うの外皮 や 麻 の茎 といっ た商 品 に 付帯し た屑 の類 や, ハ,土 ,石,そ の他 の塵 の類 等 の異物 に至 る爽 雑物 の 有 無や多寡 とい っ た点 もあげ られてい る。  商品 の検 査 , 鑑 定の方 法 の うえ で注 目し たい こ とは, 視 覚や 触覚,場合 に よっ ては嗅 覚 や 聴覚 に わ たる直接的 な検 査方 法 だけ に とど ま らず, やす りを かけ てみ る とか 試金石 で検 査を す るとか焔 に か ざし て み る といっ た, 簡便 な 試 験に よる観 察 から, 銀を ルッボ に入 れ て 熔融 す る と か, 金を粉 砕し 塩 と混 ぜ て陶 器 のい れ もので約20 時間 も火 に かけ る とい っ た, か な り手 のこん だ化 43) 学 的 な試験方 法 までし る されてい る。 さ らに, 金 , 銀 といっ た貴 金 属を はじ め , ダ イヤ, 水晶 , ガ ラス といっ た ものの判 別 に, 比 重 の測 定 を用 いる とい うように ,定 量 的 な方 法 の適 用 が みられ る のは 当然 と云 え ようが, 藍 につい

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て の記述 の最後 の部 分 にお い て,「 藍を 検査し ,不 純物 の量を きめる ため に は ,人 は少量 を秤っ て火 に かけ る。 藍 は もえて上昇 し てし ま う凪 粘 土 や 砂 の ような,そ れに含 まれ てい る不 純 物 は, 毛見かす の炭 とし て残 る。 そ れ は。 44) さ らに と り出 され, 秤量 され , そ こ か ら比 例的 な割合 の数量 示 決定 され る。」 と述 べて お り, 不純 物 ない し は偽交 的 な添加 物 の有 無 だけ で な く, そ の量 的 な 関係 拡 定量 分 析 の手 法 で明 らかに す るこ とを 述 べてい る こ とは,注 目 に 値 し よ ‰   「 また真 珠に対し て損 傷作 用 のあ る のは, す べて の油 とあ らゆ る酸 性 の物 質 , と り わ け レ モ ン 液 の 如 き も の で あ り , ま た , 火 に よ る 熱 や , ざ ら ざ ら し 45) たものとの摩 擦である。」 と, そ の保存上の注 意が述べられてい る部分や, 「 箭香に対し有害なのは,水 と空気である。それ故に,人 は,それを注意深 46」 く容器に入れ,かつ,蝋ぬ りの布地で包んでおかな くてはな らない。」とし て いる部分のように, 宝石や香料, 金属(さび)などめ記述のなかに 乱 商品 の劣 化防止,商品保管にかかおる内容 が含 まれているものがないわけ ではな いが,食料類 の記述内容はその品質の良 否,優劣 より乱 むしろ,その輸送。 貯蔵にあだっての商品保管 のうえ での留意事項 に力点がおかれ,量的に 乱 モの大半の紙数がさかれている。小麦を保存するためには,貯蔵する穀粒 の 精選 と乾燥が配慮されなければな らないが,同時に倉庫の選定について もふ れて,「 倉庫のあ らゆる部分執 乾 燥していなけ れば ならない。壁 も床 乱 主 とし て床 がとくに湿気から自由でなけ ればならない。 舗装 された床が, と りわけ ,この目的に合っている。 湿度の高い地方 では,穀物類を貯蔵するに あたって,腐敗の進行す る危険 のない温度に下げるよう調整 される。そ のた めには,入口や倉庫に光を とり入 れる開口部は,東側に位置し なければなら ない。何故なら,この方向 からは,あ らゆる風向の風のうち,湿気を, もっ と も わ ず か し か 含 ん で い な い 風 が 吹 き , 腐 敗 を ひ き お こ す 度 合 が も っ と も 少 47) ない か らであ る。」と詳し い 説 明を 行 なっ てい る。 さ らに, 穀類 の貯蔵 の際 の 損害 の うちの大 半 は, か ず み に よる ものであ る故, そ れを 防 ぐため に は,倉 庫 は, 舗装 され た厚い 壁 を そ なえ た ものにし, 特定 の時 間, 猫を そ のなか に 入 れ る とか, ねず み と りを 仕 掛け た りす るほ か, 殺 鼠剤を 使用 す る こ とを 述 べ てい る。 殺 鼠剤 とし て あげ てい る 事 例は,ク リス マス ロ ーズく きんぽ うげ の 勁ト でプロトアネモニンを含む>や,一 酸化 鉛,硫化枇 素<硫黄と枇素 の共融物 で

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AH ad-Dimisqi の商業書 41 あるかもし れない。>などを粉 に す りつ ぶし, 練 っ た穀粉 や パゾ に混 入し た もの であっ て, こ の ような化 学物質 が使用 され てい るこ とは注 目す べ きこ とであ ろ う。 こ れ らを 含 めて, 商品 保管 とい う問 題 が, 穀物 を ぱじ め食料 の分野 に おい ては 当時 と くに重要 な課 題 であ っ た こ とは東 欧な どに おけ る,商 品 学 の 今 日の動向 との かか わ りな ど か らも 極め て興 味深 い こ とであ る。  さん ごは,生 産地 におい て は, 10/2 コ シフ トRatl を基 準 に取 引し , そ れ に 従っ て, 値付け がされ る。 そ の代 り, エ ジ プト やシ リアや イラ クでは ,そ れ に仕 上 げ 加 工 が され てい る 場 合 は ,1,020 Dirham, ま た , 未 加 工 の 場 合 48) は,1,100 Dirham を単 位 とし て支 払 が され る 。」 と述 べ,箭 香 容 )場合 に も, 「10V2mitqal を単 位 とし て取 引 し , これ に対 し て 値付け が され る。」 と記 さ れてい る ように, 商品 の取 引単 位, な り値付 け が され る基 準量 を記 載し てい る事 例があ る。 加工 の有 無に よっ て取 引基 準 とな 右単 位 が異 るこ とを も含め , 今 日使 か ねて い る1 オンス と か,1 ダ ース とい っ た取 引単 位 の根 源を 探 る う え で も興 味あ る事例 であ るが, この よ うな取 引 基 準 とな る単 位数量 とい うも のが, 商 品記 述 にあ たっ て 重要 な 内容 の一 つ であっ た こ とを ,改 めて確 認 さ せ る もの であ る と云 え よう。  商品 の取 扱 い にあ たっ て知っ て お か なけ れば な らない 知識 とし て, 価格 と 品質 の両面 の あ るこ とを 総論的 な部 分 で 提起し てい るだけ あ って, 原著 者は 。 商品 の各 論的 な個 別的 な記 述にあ たっ て 乱 主 とし て宝石 類 の部 分で, 標準 価 格的 な基準 を, い くっ か例示 し てい る。 真 珠 につ い て,「durr は宝石 に 属 す。そ れはlu'lu' <真珠一般をさす> の大 きい ものであ って, そ れは, あ た か も天 界 に おけ る大 きな 星の よ うな もので あ る。 最良 の品種 はal qarr であ り,そ れは, す べて の側 か らみ て完全 に 丸 い 姿を もっ た ものであ り,美 しい 光 沢と 輝 きを そ なえ た清純 な色 あい の もので あ る。 こ の ような性質を もっ か そ れぞ れ の宝 石は,rath (潤) と呼 ば れ る。 重 さが1 M ト1 mitqal =約4.5g ) の,こ の ような真 珠の価格 は,300 D イdinal)く デナリ……古代pi ーマの銀礼 一・ …による>,上 述 の性 質を もち,識 別 がで きない ほ ど完 全 に同じ 大 き さ で,lM ず つ の重 さを 持つ一対 の真 珠 の場 合 は,700D 以 上 に 値す る。 一対 で1M の重 さの ものは,両 方 で100 D であ り, さ らにVsM の重 さの もの一つ で は 50)20 D バ/sM の ものは5 D であ る。」と, そ の大 き さと価 格 との間 の幾 何級数 的 な関係 が示 され てい て興 味深 い 。

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こ の よ うに , 個 別 商 品 の各 論 的 な 記 述 に お い て は , 宝 石 , 香 料 , 繊 維 , 金 属 , 食 料 と い っ た 商 品 群 の 内 部 に おい て は , 個 々 の 商 品 記 述 の形 式 や 内 容 に 多 く の共 通 性 が み ら れ る が , 異 な る 商 品 群 相互 の 間 で は , 既 に 引 用 し た 事 例 に み ら れ る よ うに , そ れ ぞ れ か な り異 なっ た ユ ニ ー夕 な 内 容 を 持 ち , 全 休 を と 粘し て の 叙 述 様 式 の 統 一 に 留 意 す る よ り 乱 紙 数 の 関 係 もあ っ て か , む し ろ , 商 品 群 の 性 格 に 対 応 し て , 力 点 の お き か た を 加 え た 叙 述 様 式 を 採 っ て お り, そ れ が 本 書 の特 色 の 一 つ と なっ て い る。 し た が っ て , い な , そ れ故 に こ そ , 多 く の 商 品 学 書 に み ら れ る よ うな 平 板 な 商 品 記 述 に 陥 ら ず に , ア ラ ビ ア 商業0 輝 か し い 繁 栄 の 時 代 を 象 徴 す る よ うな , 当 時 の科 学 の水 準 と 商人 の 経 験 や 知 恵 を 集 約 し た 躍 動 感 に あ ふ れ た ダ イ ナ ミ ッ ク な 叙 述 と な っ て い る の で は な い だ ろ うか 。  < 付>  本論文は,昭和50 年5 月31 日, 福岡で開 催され九日本 商品 学 会第26 回全同大会 に おけ る研究報 告を骨 子 とし て加箪したものである。 な 執 当初 の研 究計画 が大幅に進 捗し, より詳 細にわた る内容 を報 告することができ, かっ 予定 よりも早 く論文 に まと めることができたのは, 経営学部内 規により本年度 から ともか くも実 施さ れることと なった特別研究制度 の適 用を うけ たことに よる成果 であるこ とを付記 し てお く。なお, アラビ ア語 の翻字法は こ とわ りのない限り旧式 では あるがRitter 文 献 の方式 を採っ た。 <文 献>I ) 福田敬太郎「商業学 の起源 と発達」久 保村隆祐・原田俊夫 編『 商m 学を学 ぶ』 有斐閣(1973), 5 頁。2

)B. Penndorf, Die geschichtlich Ent 加icklung der Handel swis sen- schaften

bis zum Ende des 19. Jahr hunderts. ZuY Ent 面cklung der Be- triebswissenschaftslehre ,Festorabe fiir R バヨtern, Berlin/Leibzig /Wien 

(1925), S.8.3 ) 増地 庸治郎『経営経 済学』(経済学 全集36 )改造社(1929 ), 9頁。4 ) 池 内信行『経営 経 済学の本質』同文 館(1929), 48∼49 頁。5 ) 佐々木 吉郎 『経営経 済学の成立』巌松堂 (1930), 74∼75 頁 。6 ) 平井泰太郎『 経営 学文献 解説』千 倉書房 (1932), 75頁 。7) 荒川祐吉,「商業 お よび商業学 の史的展開」 久保村隆祐 ・荒 川祐 吉編『商業学 一 現代流通 の理論 と政策- 』有斐閣 (1974)バ30頁。8 ) 柳川昇 「商品学 の発達一 特にそ の所 謂古 典時代を中 心 とし てー 」『東京帝

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All ad-Dimisqi の商業 書 43

大経済学論集』11−5 (1941), 36∼37頁。9

) 星宮啓『近代商品学入門』邦光書房(1969), 15頁,註(10)。10

)G. Grundke, Grundriss der allge附einen W αren知nde, Bd I. 3. Aufl 。 Leipzig 臼968九 S.18n

) E. Leitherer, Geschichte der handels-und absatzwirtschaftlichen Lite-  ratμr, Koln/Opladen (196]), SS.44∼46.

12) 岡 下 敏 「 ド イ ツ 会 計 史 の 一 齢 8 ―1 /2 (1973), 104∼106 頁 。

ドイ ツ商業 学成立 の背 景」『青山 経営論集』

13)H. Ritter,“Ein arabisches Handbuch der Handelswissenschaft", Der  Islam ,7 (1917), SS. 1∼91.14

)E. Wiedemann, Aufsdtze zur αrabischen Wissenschaftsseschichte, Bde, Hildesheim /New York (1970), I −ss.sss ∼ssg ,n −ss.5 ∼24 収録 の, Beitrage zur Geschichte der Naturwissenschaften, χχχ (1912), SS.  229∼235 お よびXXXII (1913), SS,35 ∼54.15

)S. D. Goitein, A mediterranean society, California(1967 ), vol. 1, pp. 149"  ∼150. 16)H. Ritter, 前掲13 ), S.2.17 )E. Wiedemann, 前 掲14), I −S.854, U −.5.18 ) 福 田敬 太郎,前 掲1).19 )H. Ritter, 前掲13), S.2. 20) 21 )22 ) jj りI5j り り り う り う りJ 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 Jt2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3

H. Ritter,前掲13), S.2.E. Wiedemann 前掲U), I−S.854.H. Ritter,前掲13), S.3. 同上, S.2. 同上。E. Wiedemann ,前掲14), I−S.854H. Ritter,前掲13), S.4.B. Penndorf, 前掲2).E. Leitherer, 前掲11), S.45.H 。Ritter,前掲13), S.26,SS.45∼46. (本文2 ∼3 ページ) 同上,SS. 46∼47. (本文3 ページ) 同上, SS.47∼50. (本文4 ∼6 ページ) 同上, SS.53∼54. (本文9 ∼10ページ) 同上, S.54. (本文10ページ) 同上,S.55. (本文11ページ) 同上,SS.55∼56. (本文11∼12 ページ)

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135 )36 )37 )38 )39)40)41)42)43 )44)45)46 )47 )48)49).50 ) 同 上 , 同 上 , 同 上 , S.56. (本 文12 ∼13 ペ ージ )S.56. ( 本 文13 ペ ージ )ss. 53 ∼54. (本 文9 ∼10 ペ ージ ) 同上,S.54. (本文10ページ) 同上,S.19. 同上, ss バ7 ∼18.E. Wiedemann, 前掲1匍n-s. 10 同上, n −S.15. 同上,n −SS.6∼7. 同上, n −S.12. 同上,I −S.856. 同上,n −S.9. 同 上 , 同 上 , 同 上 , 同 上 , n −S.18.1 −S.858.n −S.9.1 −SS.855 ∼856.

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