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大型風車「ダウンウィンド 2 MW機」の開発 ─日本の環境に適合した風力発電システム─

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Academic year: 2021

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風力発電システムは,化石燃料代替エネルギーおよび地 球環境改善の観点から,国内においても,その重要性はます ます高くなってきている。これに応じた経済性と信頼性の高い 風力発電システムを作るためには,風車本体設備,変電設 備などのシステムおよび構成機器のそれぞれが,国内の地形, 風の特性,雷や台風などの環境,風力発電所への資材の搬 入制約,電力系統の制約に適合した経済性と信頼性を持つ 必要がある。 日立製作所は富士重工業株式会社とともに,株式会社 ウィンド・パワー・いばらき「ウィンドパワー日立化成風力発電 所」に2MWの大型風力発電システムの量産機を設置し運転 を開始した。この量産機は日本の環境に適合するために, ロータ型式はダウンウィンド型を採用した。さらに,据付け時 の搬入や電力系統への連系などにも配慮して改良を加え, 高品質の電力をより効率的に発電することができる安定した 運転を実現している。 1.はじめに 二酸化炭素(CO2)の排出量抑制および地球温暖化防止 に有効な風力発電の導入への期待が高まる中で,風力発電 システムの発電効率向上,風力発電設備の大型化,建設工 法の合理化,工期短縮,修理や点検の簡易化により,風力 発電の発電コストを低減し,発電事業として成立しやすくす る検討が進められてきた。 日立製作所は,富士重工業株式会社と2008年2月に,茨 城県神栖市において大型風車ダウンウィンド 2MW機の量産 機(以下,量産機と記す。)を完成し運転を開始した(図1参 照 )。量 産 機には,IEC( International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)の風力発電システムの国際 規格を超えた基準を適用した。日本の環境により適合した風 力発電システムとして,台風や雷,山岳地の風,狭隘(あい) な道路環境,据付けに用いる重機などの搬入,電力系統へ の連系などに配慮した各種の改良を加えている。

大型風車「ダウンウィンド 2MW機」

の開発

―日本の環境に適合した風力発電システム―

Development of 2-MW Downwind Turbine

松信 隆

Takashi Matsunobu

五十川 満

Mitsuru Isogawa

二見 基生

Moto Futami

長谷川 勉

Tsutomu Hasegawa

佐藤 和彦

Kazuhiko Sato

加藤 裕司

Hiroshi Kato

(a)

(b)

(c)

図1 大型風車ダウンウィンド 2MW機の量産1号機「SUBARU 80/2.0」および発電システム

株式会社ウィンド・パワー・いばらき「ウィンドパワー日立化成風力発電所」の大型風力発電システム「SUBARU 80/2.0」(ブレード直径80 m,出力2,000 kWのダウン ウィンド 2MW機の量産機)を(a)に,高圧IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を(b)に,2,000 kW交流励磁型同期発電機を(c)にそれぞれ示す。

52

Vol.91 No.03 306-307

2009.03

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53 ここでは,日本の環境に適合した風車をコンセプトに開発 したダウンウィンド 2MW機の量産のベースとなる株式会社 ウィンド・パワー・いばらき「ウィンドパワー日立化成風力発電所」 の風車本体,系統連系設備の設計,および建設工事につい て述べる。 2.開発の概要 量産機の主要機器の配置は,ロータ(ブレード)と発電機な どがタワーの頂部に搭載され,ロータの回転軸が水平方向に あることを基本としている。ロータと発電機などは,風向に合わ せて水平面内において方向を変えることができる。ロータ型式 を,ダウンウィンド型としたことが最大の特徴である。大型風車 においては,ロータをタワーより風上に配置したアップウィンド風 車が一般的であるが,量産機では,ロータをタワーより風下に 配置している(図2参照)。量産機の主要仕様を表1に示す。 量産機には,日本の環境に,より適合し得るように,IECの 風力発電システムの国際規格「IEC61400シリーズ」に規定さ れる風車などに比べ,下記の改良を加えた。 (1)複雑・山岳地の吹上風を捕らえて発電量を増加 (2)耐風速(台風・停電時の強度)を向上 (3)IEC規格を超えた正極雷への耐性を確保 (4)電力系統への連系を容易にする電力制御の採用 (5)搬入・据付けを容易にする分割式ナセル,タワーの採用 (6)保守補修性の向上,ナセル質量の低減 3.量産機の特徴 3.1 風車システム 3.1.1 ロータ ロータは,ブレード,主軸,ブレードを軸に固定するハブで 構成される。ブレードの取付角がピッチ角で,これを固定した ものが固定ピッチ方式であり,風の状態に応じて風の捕らえ 方をコントロールするのが可変ピッチ方式である。量産機では, この可変ピッチ方式を採用している。 ダウンウィンド型では,ブレードの旋回領域がタワーの風下 側に位置するため,ブレードが1回転するごとにタワーの後流 (Wake)の領域を通過するため,ブレードへの変動荷重と騒 音を発生させる可能性がある。しかし,タワーと十分に離隔距 離を置いた位置で,ブレードを旋回させることにより,風速変 動の影響を少なくし,ブレードの変動荷重と騒音の課題が解 決できることを解析および実証機の運転によって確認している (図3参照)。 feature article (a)ダウンウィンド 風向き 風向き (b)アップウィンド 図2 風車型式の比較 ダウンウィンド型は,ブレードをタワーより風下に設置する風車型式であり,アッ プウィンド型では,ブレードがタワーよりも風上に置かれる。量産機は,ダウンウィ ンド方式固有の安定性を活用し,特に山岳地や丘陵地において高効率で安定 した発電出力を実現する。 表1 量産機の主要仕様 量産機は,ブレード頂の高さ120 mの国産最大級となる大型風車である。 ダウンウィンド 2MW機に おけるブレード通過位置 図3 タワーの後流解析1) 量産機は,タワーの後流(Wake:タワーの風下側の風速が低下する領域)の 影響を軽減するために,タワーとブレードの離隔を確保している。 分類 項目 仕様 ロータ径 80 m ハブ高さ 80 m 基本仕様 定格出力 2,000 kW 定格風速 13 m/s カットイン風速 4 m/s カットアウト風速 25 m/s 発電機型式 交流励磁型同期機 発電機 極数 4極 周波数 50 Hz 速度制御 可変速 制 御 出力制御 ピッチ制御 緊急ブレーキ ピッチ制御 ヨー制御 アクティブヨー 環境条件 耐雷強度 250 kA

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54 Vol.91 No.03 308-309 2009.03 電力・エネルギー分野の最新開発技術 3.1.2 ナセル ナセルは,ロータの主軸,増速機,発電機を搭載する構造 物である。ナセルは,タワーの頂部にタワーの中心軸回りで回 転可能な形で取り付けられ,ヨー駆動機構により,風の利用 効率を高めるため,風の向きと一致するように制御される(図 4参照)。 3.1.3 タワー タワーは,円錐(すい)形の管状の鋼製タワーとし,輸送性 を確保する観点から4個の分割構造としている。タワー基部は 補機の設置スペースとして利用している。タワー内には,電力 ケーブルと制御用の光ファイバなどを設置している。 3.1.4 発電機システム 発電機は,回転子と固定子それぞれに巻線を備えた4極空 冷式発電機を使用した。この種の発電機は交流励磁型同期 発電機と呼ばれる。電力変換器で回転子の磁界を制御する ことで,広いロータ速度範囲に追随した運転が可能となる。 送電系統の電圧を安定させるために,系統から発電機を見 た力率で,遅れ0.9から進み0.95の範囲内での制御を可能と した。系統の周波数変動は50±3 Hz以内に追随できる(図5 参照)。

また ,1,400 V定 格 の IGBT( Insulated Gate Bipolar Transistor)は,発電機端の電圧を一般の風力用発電機の 660∼690 Vに対して約2倍の1,400 Vに高電圧化し,ナセル に設置される発電機とタワー基部に設置されるIGBT間の送 電電力損失を低減している。 3.1.5 耐雷システム 直撃雷対策として,レセプタクル,避雷針,棟上げ導体へ の雷電流を,引き下げ導線を用いて接地まで導く。ブレードに は,先端に取り付けた無垢(むく)のアルミ鋳物製大型レセプ タクルとブレード中間点の両面に取り付けた円形レセプタクル を組み込んだ3) 。IEC保護レベルⅠで基本設計するとともに,正 極雷にも耐えるように,電流波高値250 kA,全電荷350 Cに 設定している。 3.2 輸送および建設技術 一般道路における橋梁(りょう)設計上の耐荷重および 1,000 kW級風車の搬入質量に合わせ,ナセルを40 t以下の 単位で搬入可能なように分割できる構造としている。量産機 では,350 tクローラクレーンの使用を目標にナセル部の小型 軽量化および工法の改善を適用している。さらに建設時に整 地が必要となる地上部分の面積を縮小するため,高さ80 m の位置でブレードをハブに取り付ける工法を適用した(図6 参照)。 図4 量産機のナセル部 軽量化に配慮するとともに,ダウンウィンド風車としての風向を考慮した流線型 としている。この写真において風は,右から左に向かっている。 ACR PWM ACR PWM 電力系統 主回路 風車制御装置 電気制御装置 システム 有効電力・ 無効電力 制御 速度・位相 検出 システム有効電力 直流電圧制御 発電 電力 検出 系統側 変換器 発電機側 変換器 交流励磁式同期機 ギヤ 風車ロータ システム無効電力 有効電力指令

注:略語説明 PWM(Pulse Width Modulation), ACR(Automatic Current Regulator)

図5 発電制御の構成 発電システムの有効電力・無効電力制御2) により,電力系統連系に配慮した 発電出力を実現する。 図6 高さ80 mでのブレード組立 直径80 mのブレード地組(地上で3枚のブレードを組み立てるプロセス)スペー スを縮小することが可能となる高所でのブレード組立工法を開発した。

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55 4.設置条件と発電量増加 風力発電の経済性の向上には,発電量の増加が重要で ある。特に山岳地の多い日本国内においては,地形による発 電量の変化にも配慮が必要である。 山の斜面における風の流れは,山の斜面を吹き上げる際 に風速が増加し,風力発電に有効な状態となる(図7参照)。 ダウンウィンド風車が吹上風環境下で運転される場合の出 力P(V)は次式で与えられる4) P (V)=min

PRate’

3 ×Po

〔PR a t e:定格出力,Po:定格パワーカーブ(水平風による), γ:吹上角,α:チルト角〕 cos(γ+α) cosγ×cosα タワーの風下にロータが位置するダウンウィンド風車のロー タ回転軸は,風上に向かって下を向いている(チルト角)ため に,風向とロータ軸との間の角度誤差はアップウィンド風車に 比較して少ない。前述した式によれば,吹上角が+6.0度であ る場合,ダウンウィンド風車は,アップウィンド風車に比較し,約 7.6%の発電量増加が期待できる。 5.おわりに ここでは,大型風車ダウンウィンド 2MW機のベースとなる量 産機について述べた。 量産機の運転により,当初,システム設計の段階で検討・ 計画していた項目についての貴重な運転データが得られた。 これらのデータを基に解析,評価し,今後の設計に反映して, よりいっそうの技術開発に努めていく考えである。日本特有の 課題である地形,台風,雷などの制約に適合しやすい大型 風力発電システム技術を普及させることを目標に,風力発電 事業者の方々の理解と協力を得ながら,風力発電の立地が 難しかった地域へ風車の設置を推進していきたい。 feature article 500 250 300 350 400 450 500 550 600 650 700 750 800 850 水平距離(m) 高さ m 図7 山の斜面における風の流れ4) 風力発電にとって有効な吹上風が山の斜面に沿って発生する。 1)永尾:2 MW大型風車「SUBARU80/2.0」の開発,日本風力エネルギー協 会誌通巻77号(2006.6) 2)日立製作所,電力優先制御による発電機制御,特許第2555407号広報 3)永尾:ダウンウィンド型風力発電,ターボ機械(2006.11)

4)S. Yoshida:Performance of Downwind Turbines in Complex

Terrains,Wind Engineering Vol. 30,No.6(2006)

参考文献 執筆者紹介 松信 隆 1983年日立製作所入社,電力グループ 電機システム事業 部 FH推進部 所属 現在,風力発電システムの取りまとめに従事 長谷川 勉 1982年日立製作所入社,電力グループ 電機システム事業 部 FH推進部 所属 現在,風力発電システムの取りまとめに従事 電気学会会員 五十川 満 1972年日立製作所入社,電力グループ 電機システム事業 部 FH推進部 所属 現在,風力発電システムの取りまとめに従事 電気学会会員 佐藤 和彦 1982年日立製作所入社,電力グループ 日立事業所 新エ ネルギーシステムエンジニアリンググループ 所属 現在,風力発電システムの開発に従事 二見 基生 1987年日立製作所入社,日立研究所 情報制御研究セン タ インバータイノベーションセンタ 所属 現在,風力発電システムをはじめとするパワーエレクトロニ クスシステムの開発に従事 電気学会会員 加藤 裕司 1985年富士重工業株式会社入社,エコテクノロジーカン パニー 風力発電プロジェクト 所属 現在,風力発電システムの開発に従事

参照

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