理 科 ( 化 学 Ⅰ ) 学 習 指 導 案
広島県立教育センター 指導主事 下髙呂 元成 1 場 所 化学教室 2 学年・学級 2年A組 生徒 40名 3 単 元 名 酸化と還元 4 単元について ○ 単元観 本単元は,高等学校学習指導要領の「第6 化学Ⅰ (3)物質の変化 ア化学反応 (ウ)酸化 と還元」に位置付いている。本単元のねらいは,中学校で学習した内容を発展させ,酸化と還 元が電子の授受によることを理解させるとともに,その概念を電池や電気分解の仕組みなどに 関連付けて考察できるようにすることである。 ○ 生徒観 当該クラスの生徒は化学の学習に対する意欲が高く,特に実験では率先して自分が行いたい と考えている生徒も多い。 本単元の内容に関して,中学校では,第1分野「(4)イ(イ)酸化と還元」で,酸化や還元が酸 素の関係する反応であることを学習している。これまでの授業におけるワークシートの記述か ら,酸素の授受による酸化・還元の定義は,ほぼ全員の生徒が理解できていると考えられるが, 様々な化学反応を化学式や化学反応式を基に解釈することはまだ十分でない。 1学期当初から授業の中で,ホワイトボードを活用したグループ協議を行い,協議した内容 を発表する機会を設けている。現在,この活動にも慣れてきて,活発に議論したり,効果的な 学び合いが見られたりしてきた。しかし,自分の考えに自信がもてず,グループ協議に積極的 に参加できていない生徒もいる。 ○ 指導観 本単元のねらいである,酸化と還元が直接見ることのできない電子の授受によることを理解 させるためには,視点を定めて観察,実験を行わせることや,観察,実験の結果を図やモデル, 反応式などを用いながら解釈させる時間を十分確保する必要がある。 本年度の授業において重視しているグループ協議をさらに充実させるために,探究活動を取 り入れ,その活動における評価を改善する。その方策として,ルーブリック(判断基準)を導 入し,生徒個人の記述を適切に評価する。また,ワークシートの記述に対してコメントを付け て返却することにより,生徒それぞれが自分の考えをもつことに自信をもたせたい。 5 単元の目標 酸化還元反応について観察,実験を通して探究し,基本的な概念や法則を理解させるととも に,酸化還元反応を電子の授受という観点で考察できるようにする。6 単元の評価規準 関心・意欲・態度 思考・判断 観察・実験の技能・表現 知識・理解 ・酸化還元反応に関心 をもち,電子の授受と いう観点で意欲的に それらを探究しよう とする。 ・電池,電気分解を酸 化還元反応と関連付 けて,意欲的に探究し ようとする。 ・酸化還元反応の定義と酸化 数の定義の有効性を理解し, 観察,実験などを行い,それ らを基に事物・現象の中に共 通性を見いだし,酸化還元反 応として論理的に考察し,科 学的に判断している。 ・様々な電池,電気分解の事 象の中に酸化還元反応とし ての規則性,共通性を見いだ し,論理的に考察し,科学的 に判断している。 ・酸化還元反応の観察,実 験を行い,その基本的操作 や記録の仕方を習得する とともに,その観察,実験 の過程や結果から自らの 考えを導き出し,的確に表 現している。 ・電池や電気分解を酸化還 元反応としてとらえ,観 察,実験の過程や結果から 自らの考えを導き出し,的 確に表現している。 ・電子の授受や酸化 数の変化から酸化還 元反応を理解し,知 識 を 身 に 付 け て い る。 ・ファラデーの法則 及び電気分解の電気 量と析出量の量的関 係を理解し,知識を 身に付けている。 7 指導と評価の計画(全13時間) 次 学習内容 評 価 関 思 技 知 評価規準(評価方法) 1 酸化と還元(2時間) ●演示実験 二酸化炭素中のマグネシウムの燃焼 ●演示実験 銅と塩素の反応 ○ ◎ ○酸化還元反応に関心をもっている。(行動観察) ◎酸化・還元は,電子の授受及び酸化数の増減で 説明できることを理解し,知識を身に付けている。 (小テスト) 2 酸化剤・還元剤 (2時間) ●実験 代表的な酸化剤と還元剤 (KMnO4と KI,Na2SO3,H2O2) (K2Cr2O7と KI,Na2SO3,H2O2) (H2O2と KI) ◎ ○ ◎代表的な酸化剤・還元剤の反応を確かめる実験 の過程や結果を的確に記録している。(記述分析) ○代表的な酸化剤・還元剤の働きやそれぞれの水 溶液中でのイオン反応式について理解し,知識を 身に付けている。(記述分析) 3 身近な物質の酸化還元反応 に関する探究活動 (2時間) ◎ ○ ◎身近な物質の酸化還元反応についての学習問題 に対する仮説を設定し,その検証方法を考案して いる。(記述分析) ○実験の結果について整理し,考察した内容を表 現している。(発表,記述分析) 4 金属の酸化還元反応 (1時間) ●実験 金属のイオン化傾向 ○ ○実験の結果を基に考察し,金属のイオン化傾向 について適切に判断する。(記述分析) 5 電池(2時間) ●演示実験 局部電池 ●演 示 実 験 正 極 に 金 属 を 使 わ な い 電 池 ○ ○ ○電池について,酸化還元反応と関連付けて探究 しようとする。(行動観察) ○代表的な電池の仕組みや働きについて理解し, 知識を身に付けている。(記述分析) 6 電気分解(3時間) ●実験 電気分解 ◎ ○ ○ ◎電気分解の実験の結果と酸化還元反応を関連付 けて考察し,図やモデル,イオン反応式を用いて 説明している。(記述分析) ○電気分解に関する実験の基本的操作を習得する とともに,安全面や廃液の処理等を適切に行って いる。(行動観察) ○ファラデーの法則(電気分解の法則)について 理解し,知識を身に付けている。(記述分析) 7 学習の振り返り(1時間) ・追究カード(自己評価) ・小テスト ◎ ◎ ◎酸化還元反応と日常生活や社会との関わりや, 本単元の内容について追究したいことなどを記述 している。(記述分析) ◎本単元の学習内容について理解し,知識を身に 付けている。(小テスト) ◎:指導に生かすとともに記録して総括に用いる評価,○:主に指導に生かす評価
8 第3次の展開 (1) 第3次の目標 身近な物質の酸化還元反応に関する探究活動を通して,科学的に探究する方法を習得させる。 (2) 観点別評価規準及びルーブリック(判断基準) 【評価規準(評価方法)】《思考・判断》 ・身近な物質の酸化還元反応についての学習問題に対する仮説を設定し,その検証方法を考案し ている。(ワークシートの記述分析) 仮説の設定におけるルーブリック 《適切な仮説の条件》 ① 学習問題に対する仮説である。 ② 科学的に正しい仮説である。 ③ 既習の事実や科学的概念を仮説の設定の根拠に挙げている。 5 上記の①,②,③の条件をすべて含む仮説を設定し,的確にそれを表現している。 4 上記の①,②,③の条件をすべて含む仮説を設定しているが,その表現が分かりにくい。 3A 上記の①,②の条件を含む仮説を設定し,表現しているが,③の条件が十分でない。 3B 上記の①,③の条件を含む仮説を設定し,表現しているが,②の条件が十分でない。 2 上記の①の条件を含む仮説を設定し,表現しているが,②,③の条件が十分でない。 1 上記の①の条件を含む仮説を設定できていない。 検証方法におけるルーブリック 《適切な検証方法の条件》 ① 設定した仮説を検証することができる方法である。 ② 既習の事実や科学的概念を検証方法の立案の根拠に挙げている。 4 上記の①,②の条件をすべて含む方法を立案し,的確にそれを表現している。 3 上記の①,②の条件をすべて含む方法を立案しているが,その表現が分かりにくい。 2 上記の①の条件を含む方法を立案し,表現しているが,②の条件が十分でない。 1 上記の①の条件を含む方法を立案できていない。 【評価規準(評価方法)】《観察・実験の技能・表現》 ・実験の結果について整理し,考察した内容を表現している。 (発表,ワークシートの記述分析) 考察におけるルーブリック 《適切な考察の条件》 ① 実験結果を整理している。 ② 実験結果を基に仮説を確証,または反証している。 4 上記の①,②の条件を含む考察を行い,的確にそれを表現している。 3 上記の①,②の条件を含む考察を行っているが,その表現が分かりにくい。 2 上記の①の条件を含む考察を行い,表現しているが,②の条件が十分でない。 1 上記の①の条件を含む考察を行っていない。
(3)学習の展開 学習内容 指導の留意事項及び評価規準 【第1時】 《学習問題の把握》・・・生徒実験 『身近な物質の酸化還元反応について解釈し,それを実験によっ て検証する。』 ・清涼飲料水(スポーツドリンク,緑茶又は炭酸飲料),うがい薬 (ポリドンヨード含有)の3種の水溶液をそれぞれ混合し,溶液の 色の変化を観察する。 ・実験結果について全体で確認する。 ・溶液の色の変化の瞬間を見逃さないように 指示する。 ・清涼飲料水とうがい薬に含まれる主な成分 について確認させる。 《仮説の設定》 「なぜ,溶液の色が変化したのか。」について,この現象を説明す る仮説を設定し,ワークシートに記述する。 ・生徒の状況を確認しながら,次のヒントを 出す。 ・生徒個人で考える時間を確保する。 ・個人で設定した仮説について,グループ内で説明し合う。 (グループ協議) ・説明し合う活動の中で,自分の仮説につい て検討させる。(ただし,修正する場合は赤 ペンで修正し,最初の考えは消さない。) 《仮説を検証する方法の立案》 ・グループ内で,仮説を検証するための方法を考える。(いくつか の実験を実施してもよい。) ・各グループの実験方法について,安全面で 問題がないか教師が確認する。 ※身近な物質の酸化還元反応についての仮 説を設定し,その検証方法を考案している。 (記述分析)《思考・判断》 【第2時】 《仮説の検証》・・・生徒実験 ・前時に考えた検証方法について実施する。 ・生徒が考えた実験に必要な試薬を準備して おく。 ・廃液等の処理について説明する。 《考察》 ・実験結果から,グループ内で仮説が確証又は反証されたかどう か話し合い,ホワイトボードにまとめる。 ・グループごとに記述したホワイトボードを示しながら,その内 容を簡単に説明する。(発表) ・ホワイトボードの記入例を示す。 ※実験結果について整理し,考察した内容 を表現している。(発表,記述分析) 《観察・実験の技能・表現》 《まとめ》 ・うがい薬に含まれるヨウ素は酸化剤として働き,清涼飲料水に 含まれるアスコルビン酸は還元剤として働いたことを確認し,実 証された代表的な検証方法についてまとめる。 ・生徒の記述内容や説明について,適切に評 価しながら,この活動について生徒個人でま とめさせる。 ヒント ① 清涼飲料水とうがい薬に含まれる主な成分について再度確認させる。 ② これまでに行った実験の結果を振り返る。 2I-→I 2+2e-(無色→褐色) ③ うがい薬の褐色から,ヨウ素が含まれるのではないかと考えた班には,デンプン水溶液で確認させる。 ④ ビタミンCが還元剤として働いたときのイオン反応式を伝える。 仮説 実験操作と結果 考察(結論)